(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162846
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】歯科用口腔外吸引アーム及び歯科用口腔外吸引システム
(51)【国際特許分類】
A61C 13/00 20060101AFI20231101BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61C13/00 M
A61C19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073528
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151427
【氏名又は名称】株式会社東京技研
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】庄司 欣央
(72)【発明者】
【氏名】田邉 友樹
(72)【発明者】
【氏名】新田 尚也
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA07
4C052LL04
(57)【要約】
【課題】ヘッド部の指向方向をより自由に広範囲で変えられる歯科用口腔外吸引アームを提供する。
【解決手段】歯科用口腔外吸引アーム(1)は、曲げ関節又はねじり関節を介して直列に連結された複数のアーム部(11~15)と、複数のアーム部(11~15)の先端アーム部(15)に第1ねじり関節(154)で連結され先端面に吸引口(19)を有するヘッド部(20)とを備える。先端アーム部(15)は先端から2番目のアーム部(14)に第2ねじり関節(151)で連結され、先端アーム部(15)は、互いにねじり関節(152,153)を介して直列に連結された複数のエルボ(15a~15c)を含んで構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ関節又はねじり関節を介して直列に連結された複数のアーム部と、前記複数のアーム部の先端アーム部に第1ねじり関節で連結され先端面に吸引口を有するヘッド部とを備え、
前記先端アーム部は先端から2番目のアーム部に第2ねじり関節で連結され、
前記先端アーム部は、互いにねじり関節を介して直列に連結された複数のエルボを含んで構成されている歯科用口腔外吸引アーム。
【請求項2】
前記複数のエルボは、前記2番目のアーム部側から湾曲角度θaで湾曲した第1エルボ,湾曲角度θbの第2エルボ,及び湾曲角度θcの第3エルボであり、
前記湾曲角度θa,前記湾曲角度θb,及び前記湾曲角度θcの合計が180°になる請求項1記載の歯科用口腔外吸引アーム。
【請求項3】
湾曲角度θa及び湾曲角度θcは45°であり、湾曲角度θbは90°である請求項2記載の歯科用口腔外吸引アーム。
【請求項4】
前記第1エルボ,前記第2エルボ,及び前記第3エルボは、前記2番目のアーム部の軸線と前記ヘッド部の軸線とを一致し得る長さで形成されている請求項3記載の歯科用口腔外吸引アーム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載された歯科用口腔外吸引アームと、
吸引機と、
前記歯科用口腔外吸引アームと前記吸引機とを接続する通気管と、
を備え、
前記歯科用口腔外吸引アームは、内部に、一端側が前記吸引口に開口し他端側が前記通気管と接続した通気路を有し、
前記吸引機の動作で前記吸引口から空気を吸引する歯科用口腔外吸引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用口腔外吸引アーム及び歯科用口腔外吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数のパイプが回動部を介して直列かつ相対回動可能に接続され、先端にフレキシブルパイプとこのフレキシブルパイプに連結された吸引フードとを備えた吸引アームが、歯科診療室の汚染防止装置として記載されている。
特許文献1に記載された吸引アームは、回動部を介した各パイプの回動で吸引フード(以下、ヘッド部)の鉛直方向の高さを任意に設定可能であると共に、フレキシブルパイプによってヘッド部の指向方向を変えることができる。
【0003】
このような吸引アームは、歯科診療室の床に設置されて吸引装置に接続される。そして、吸引装置の動作により吸引フードから空気を吸引して、歯科治療及び施術で生じた切削紛や液体の飛沫などを除去するための口腔外吸引に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された吸引アームは、フレキシブルパイプを曲げることで吸引フードの指向方向を変更できる。
しかしながら、フレキシブルパイプを曲げることで変えられるヘッド部の指向範囲は、比較的狭く限定される。そのため、歯科治療及び施術での利用においては、ヘッド部の指向方向を、より自由に広範囲で変えられる吸引アームが望まれている。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ヘッド部の指向方向をより自由に広範囲で変えられる歯科用口腔外吸引アーム及び歯科用口腔外吸引システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) 曲げ関節又はねじり関節を介して直列に連結された複数のアーム部と、前記複数のアーム部の先端アーム部に第1ねじり関節で連結され先端面に吸引口を有するヘッド部とを備え、
前記先端アーム部は先端から2番目のアーム部に第2ねじり関節で連結され、
前記先端アーム部は、互いにねじり関節を介して直列に連結された複数のエルボを含んで構成されている歯科用口腔外吸引アームである。
2) 前記複数のエルボは、前記2番目のアーム部側から湾曲角度θaで湾曲した第1エルボ,湾曲角度θbの第2エルボ,及び湾曲角度θcの第3エルボであり、
前記湾曲角度θa,前記湾曲角度θb,及び前記湾曲角度θcの合計が180°になる1)に記載の歯科用口腔外吸引アームである。
3) 湾曲角度θa及び湾曲角度θcは45°であり、湾曲角度θbは90°である2)に記載の歯科用口腔外吸引アームである。
4) 前記第1エルボ,前記第2エルボ,及び前記第3エルボは、前記2番目のアーム部の軸線と前記ヘッド部の軸線とを一致し得る長さで形成されている3)に記載の歯科用口腔外吸引アームである。
5) 1)~4)のいずれか一つに記載された歯科用口腔外吸引アームと、
吸引機と、
前記歯科用口腔外吸引アームと前記吸引機とを接続する通気管と、
を備え、
前記歯科用口腔外吸引アームは、内部に、一端側が前記吸引口に開口し他端側が前記通気管と接続した通気路を有し、
前記吸引機の動作で前記吸引口から空気を吸引する歯科用口腔外吸引システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘッド部の指向方向をより自由に広範囲で変えられる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る歯科用口腔外吸引システムの実施例である歯科用口腔外吸引システムSTを示す構成図である。
【
図2】
図2は、歯科用口腔外吸引システムSTが備える吸引アーム1の先端部分を示す外観図である。
【
図3】
図3は、吸引アーム1の回動範囲の概略を示す側面図である。
【
図4】
図4は、吸引アーム1のシリアルリンク構成を説明するためのリンク図である。
【
図5A】
図5Aは、第5アーム部15の第1姿勢のリンクを示す平面図である。
【
図5C】
図5Cは、第5アーム部15の第1姿勢での外観図である。
【
図6A】
図6Aは、第5アーム部15の第2姿勢のリンクを示す平面図である。
【
図6C】
図6Cは、第5アーム部15の第2姿勢での外観図である。
【
図7A】
図7Aは、第5アーム部15の第3姿勢のリンクを示す平面図である。
【
図7C】
図7Cは、第5アーム部15の第3姿勢での外観図である。
【
図8A】
図8Aは、第5アーム部15の第4姿勢のリンクを示す斜視図である。
【
図8B】
図8Bは、第5アーム部15の第4姿勢での外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る歯科用口腔外吸引アーム及び歯科用口腔外吸引システムを、実施例の歯科用口腔外吸引アーム1(以下、吸引アーム1)及び歯科用口腔外吸引システムST(以下、吸引システムST)によって説明する。
【0011】
(実施例)
図1は、本発明の実施の形態に係る歯科用口腔外吸引システムの実施例である吸引システムSTを示す構成図である。
図2は、吸引システムSTが備える吸引アーム1の先端部分を示す外観図である。
図3は、吸引アーム1の回動範囲の概略を示す側面図である。
図4は、吸引アーム1のシリアルリンク構成を説明するためのリンク図である。
関節の回動方向を示している
図1の矢印DR1~DR3及び
図2の矢印DR3~DR7は、それぞれ
図4における矢印DR1~DR7に対応している。
【0012】
図1に示されるように、吸引システムSTは、吸引アーム1,弁装置4,及び吸引機3を含んで構成されている。吸引アーム1と弁装置4との間は第1通気管51で接続され、弁装置4と吸引機3との間は、第2通気管52で接続されている。
吸引機3には、さらに外部の空間へ排気するための排気管53が接続されている。
吸引アーム1及び弁装置4は、歯科診療室内の床FLの上に設置される。吸引機3は、通常、歯科診療室とは別の機械室などに設置され、第2通気管52は床FLの下に敷設される。
【0013】
吸引機3は、ポンプ31及び制御部32を有する。制御部32は弁装置4に備えられていてもよい。
ポンプ31の動作により、第2通気管52から空気が吸引される。第2通気管52は、弁装置4,第1通気管51,及び通気路AK(
図2参照)を介して、吸引アーム1の先端面の吸引口19に接続している。
弁装置4の弁が開き吸引機3が動作することで、外部の空気が吸引口19から吸引機3に吸引される。
吸引機3に吸引された空気は、吸引機3に備えられた不図示のフィルタによって治療などで生じた切削塵埃、細菌及びウイルスなどが除去された後、排気管53から外部の空間に排出される。
制御部32は、ポンプ31及び弁装置4を含む吸引システムSTの全体の動作を制御する。
【0014】
弁装置4は、モータ41と開閉弁(不図示)とを有し、この例において治療室の床FLの上に設置されている。弁装置4は床下に設置されていてもよい。
開閉弁は第1通気管51と第2通気管52との間の通気を、モータ41の動作によって開閉する。モータ41の動作は、制御部32によって制御される。
【0015】
吸引アーム1は、複数のアーム部を備えたいわゆる垂直多関節型であって、人手によって姿勢変換可能なアームである。
図1及び
図4に示されるように、吸引アーム1は、アーム類として、床FL側から、台座10(
図4では省略),第1アーム部11,第2アーム部12,第3アーム部13,第4アーム部14,第5アーム部15,及びヘッド部20を有する。また、吸引アーム1は、関節群として、床FL側から、第1関節21,第2関節22,第3関節23,第4関節151,第5関節152,第6関節153,及び第7関節154を有する。第5アーム部15は先端アーム部15とも称する。
【0016】
台座10は床FLに固定される座の部分である。
第1アーム部11は、台座10から鉛直上方に延びる直管状の支柱である。
図1及び
図4に示されるように、第1アーム部11の上端部に、第1関節21が設けられている。
第1関節21は、第1アーム部11に対し、第2アーム部12を床FLに水平な回動軸線CL21まわりに所定のトルク以上で回動可能なように連結している。
第2アーム部12は直管状に形成されている。
図3に示されるように、第1関節21による第2アーム部12の回動範囲は、鉛直上方に延びる姿勢から
図3の反時計まわりに角度θ1の範囲である。角度θ1は、例えば75°とされる。
【0017】
図1及び
図4に示されるように、第2アーム部12の先端部には、第2関節22が設けられている。
第2関節22は、第2アーム部12に対し第3アーム部13を床FLに水平な回動軸線CL22まわりに所定のトルク以上で回動可能なように連結している。
第3アーム部13は直管状に形成されている。
図3に示されるように、第2関節22による第3アーム部13の回動範囲は、第2アーム部12に沿う姿勢から
図3の時計回りに角度θ2の範囲である。角度θ2は、例えば150°とされる。
【0018】
図1,
図2,及び
図4に示されるように、第3アーム部13の先端部には、第3関節23が設けられている。
第3関節23は、第3アーム部13に対し第4アーム部14を床FLに水平な回動軸線CL23まわりに所定のトルク以上で回動可能なように連結している。
第4アーム部14は、第1~第3アーム部11~13よりも短い直管状に形成されている。
図3に示されるように、第3関節23による第4アーム部14の回動範囲は、第3アーム部13の軸線CL13に対し
図3の時計まわりに角度θ3、反時計まわりに角度θ4の範囲である。角度θ3は例えば165°とされ、角度θ4は例えば45°とされる。
第1~第3関節21~23は、アーム部の軸線に対し直交する方向の回動軸線を有する回動関節である。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、第4アーム部14には、環状のスイッチリング16が備えられている。スイッチリング16は、周方向の一部が径方向の外方に盛り上がっており、その盛り上がった部分の先端側の面に第1のスイッチである吸引スイッチ161が取り付けられている。
【0020】
吸引スイッチ161は、例えば近接センサで構成される。吸引スイッチ161に近接して手をかざすことで、その都度、吸引信号が制御部32に向け出力される。制御部32は、吸引信号に基づいて吸引機3の動作を制御する。
スイッチリング16は、第4アーム部14の所定の抵抗をもって第4アーム部14の軸線CL14(
図2参照)まわりに回すことができ、これにより吸引スイッチ161の周方向の位置を、操作者の好む位置に換えることができる。
【0021】
図2及び
図4に示されるように、第4アーム部14の先端部には、第4関節151が設けられており、第4関節151を介して先端アーム部である第5アーム部15が連結されている。すなわち、第4アーム部14は、先端側から2番目のアーム部となる。
第5アーム部15は、直列に連結された複数のエルボを含んで構成されている。複数のエルボは、第4アーム部14側から、第1エルボ15a,第2エルボ15b,及び第3エルボ15cである。
また、第5アーム部15は、第1エルボ15aと第2エルボ15bとを連結する第5関節152と、第2エルボ15bと第3エルボ15cとを連結する第6関節153とを有する。
【0022】
第4関節151は、第4アーム部14に対し第5アーム部15の第1エルボ15aを、第4アーム部14の軸線CL14まわりに回動可能なように連結している(矢印DR4参照)。
【0023】
第1エルボ15aは、第4関節151に連結された第1端部の連結面と、その反対側の第2端部の連結面とのなす角度である湾曲角度θaが45°をなすように、滑らかに湾曲した形状で管状に形成されている。すなわち、第1エルボ15aは、第1端部の連結面の軸線CL14と第2端面の連結面の軸線CLaとのなす湾曲角度θaが45°となるように滑らかに曲がった湾曲管とされている。
【0024】
第5関節152は、第1エルボ15aに対し第2エルボ15bを、軸線CLaまわりに回動可能なように連結している(矢印DR5参照)。
第2エルボ15bは、第5関節152に連結された第1端部の連結面と、その反対側の第2端部の連結面とのなす角度θbが90°をなすように、滑らかに湾曲した形状で管状に形成されている。すなわち、第2エルボ15bは、第1端部の連結面の軸線CLaと第2端面の連結面の軸線CLbとのなす角度θbが90°となるように滑らかに曲がった湾曲管とされている。
【0025】
第6関節153は、第2エルボ15bに対し第3エルボ15cを、軸線CLbまわりに回動可能なように連結している(矢印DR6参照)。
第3エルボ15cは、第6関節153に連結された第1端部の連結面と、その反対側の第2端部の連結面とのなす角度θcが45°をなすように、滑らかに湾曲した形状で管状に形成されている。すなわち、第3エルボ15cは、第1端部の連結面の軸線CLbと第2端面の連結面の軸線CLcとのなす角度θcが45°となるように滑らかに曲がった湾曲管とされている。
【0026】
第7関節154は、第3エルボ15cに対し、ヘッド部20を、軸線CLcまわりに回動可能なように連結している(矢印DR7参照)。すなわち、第5アーム部15は、第7関節154を介してヘッド部20を軸線CLcまわりに回動可能に連結している。ヘッド部20の軸線CL20は、軸線CLcと一致している。
【0027】
第4関節151~第7関節154は、所定の値以上のトルクが付与されたときに回動可能になっている。第4関節151~第7関節154それぞれの回動可能な角度範囲は、例えば330°である。
第4関節151~第7関節154は、アーム部及びエルボの軸線まわりに捩るように回動するねじり関節である。
【0028】
図2にしめされるように、ヘッド部20は、先端に向かうに従って外径がわずかに拡張する円錐台形状に形成されている。ヘッド部20には、ハンドル17及びリリースボタン156が設けられている。ヘッド部20の先端部には、円環状のフード155が着脱可能に装着されている。
【0029】
フード155は、光透過性を有する樹脂で形成されており、ヘッド部20の先端側から押し込むことで自動的にヘッド部20に位置決めロックされる。フード155は、リリースボタン156を押し込むことでロックが解除されヘッド部20から取り外すことができる。
フード155の先端面の中央部には、吸引口19が開口しており、吸引口19の周囲には、LEDなどの発光素子を有する環状の照明装置18が配置されている。照明装置18は、ヘッド部20の指向する方向にフード155を透して照明する。
【0030】
ハンドル17は、L字形状に突出して形成され、吸引アーム1の操作者が手で握れるようになっている。
ハンドル17の先端部には、照明スイッチ171が取り付けられている。照明スイッチ171は、押しボタンスイッチであって、ハンドル17を握った手の指で押し込まれて照明信号を制御部32に向け送出する。制御部32は照明信号に基づいて照明装置18の点灯/消灯を制御する。
【0031】
吸引アーム1の内部には、ヘッド部20から台座10に繋がる通気路AK(
図2参照)が形成されている。この通気路AKは一端側が吸引口19に接続して外部空間に開口し、他端部側は、第1通気管51に接続している。
【0032】
この構成により、ポンプ31が動作すると、弁装置4の開閉弁が開状態となり、吸引口19から外気が吸引される。吸引された外気は、通気路AK,第1通気管51,弁装置4,及び第2通気管52を通って吸引機3に入り、吸引機3の内部の不図示のフィルタを通って清浄化されて排気管53から外部に排気される。
【0033】
吸引アーム1は、操作者が、ヘッド部20のハンドル17を把持し各関節を回動させるよう任意に動かすことでヘッド部20の指向する方向が好みの方向となるよう姿勢変換し、力が除去されるとその状態を維持する。
これにより、歯科治療及び施術における口腔近傍の空気の吸引を良好に実行でき、治療に伴い口腔近傍の空間に飛散する切削粉塵や体液などの飛沫を良好に除去できる。
【0034】
図2に示されるように、第1エルボ15a~第3エルボ15cは、直線状の部分がなく同じ曲率の円弧状で軸線の方向を第1エルボ15a及び第3エルボ15cでは45°傾け、第2エルボ15bは90°傾けるように曲げる湾曲管である。
第1~第3エルボ15a~15cにおける軸線に直交する方向の内径及び外径は、それぞれ第4アーム部14の内径及び外径とほぼ等しくなっている。
そのため、第4アーム部14の軸線CL14を基準とする、軸線CL14に直交する方向の第2エルボ15bの外形の張り出し量DHは、最大でもほぼ第4アーム部14の外径D14と等しい程度であって極めて小さい。
【0035】
また、第5アーム部15の内部の通気路AKは、第1エルボ15a~第3エルボ15cと同様に滑らかに曲がっている。そのため、吸引された空気は通気路AKの内部を少ない抵抗で良好に流れる。
これにより、吸引アーム1及び吸引システムSTは、吸引効率が高い。
【0036】
また、張り出し量DHが小さいことから、吸引アーム1は、歯科治療及び施術において、ヘッド部20を口腔へ接近する姿勢にしたときに占有空間が小さくて済む。
これにより、吸引アーム1は、他の歯科用機材及び治療の補助者と干渉する可能性が小さく、治療室への設置性と、姿勢制御の操作性がとてもよい。
【0037】
次に、
図4のリンク図を基本として第5アーム部15のとり得る姿勢について、第1姿勢~第4姿勢を代表として示して説明する。
便宜的に、湾曲角度が45°の湾曲管である第1エルボ15a及び第3エルボ15cの軸線の屈曲点を設定してそれぞれ点P1及び点P3とする。同様に、湾曲角度が90°の湾曲管である第2エルボ15bの屈曲点を設定して点P2とする。
【0038】
(第1姿勢)(
図4及び
図5A~
図5C参照)
第1姿勢は、第5アーム部15をできるだけ直線状になるように延ばした態様である。吸引アーム1は、軸線CL14と軸線CL20とを一直線として一致させることができる。
詳しくは、第5アーム部15における第1~第3エルボ15a~15cの湾曲方向を、第1エルボ15a及び第3エルボ15cと、第2エルボ15bとで180°異ならせた態様である。
具体的には、
図4において第1~第3エルボ15a~15cの湾曲角度θa~θcが次のようになる態様である。
【0039】
第1エルボ15aは湾曲角度θa(45°)であり、第2エルボ15bは湾曲角度θb(90°)であり、第3エルボ15cは湾曲角度θc(45°)となっている。
このとき、湾曲角度θa+湾曲角度θb+湾曲角度θcが180°となる。すなわち、第1姿勢において第1~第3エルボ15a~15c全体としての湾曲角度は180°となって湾曲せず、軸線CL14と軸線CL20とが平行になる。
さらに、第1エルボ15a~第3エルボ15cは、直線状の部分がなく同一曲率で円弧状に形成されていることから、軸線CL14と軸線CL20は、ずれることなく一致し、吸引アーム1は、第4アーム部14とヘッド部20が同一直線状に延びる姿勢となる。
【0040】
図5Aで示された第1姿勢のリンク構成を、軸線CL20の先端側(
図5Aの下方側)から見た図が
図5Bであり、
図5Cは、実際の吸引アーム1の第5アーム部15及びヘッド部20の第1姿勢に近い状態を示した図である。
図5Bに示されるように、第1エルボ15a~第3エルボ15cは、同一の仮想平面SFに含まれるよう位置しており、第5アーム部15は、仮想平面SFに対し直交方向に突出して湾曲することなく、空間的にコンパクトに先端のヘッド部20を第4アーム部14から直線状のまっすぐな姿勢にできる。
【0041】
(第2姿勢)(
図6A~
図6C参照)
図6Aに示されるように、第2姿勢は、第1姿勢に対し、第5関節152を180°回転させて、第2エルボ15bの湾曲する向きを反転し、ヘッド部20を軸線CL14に対し直交する方向にした態様である。
すなわち、第2姿勢は、第1~第3エルボ15a~15cの湾曲方向を、第1エルボ15aと、第2エルボ15b及び第3エルボ15cとで180°異ならせた態様である。
【0042】
図6Bは、
図6Aで示された第2姿勢のリンク構成を、軸線CL14の先端側(
図6Aの下方側)から見た図であり、
図6Cは、実際の吸引アーム1の第5アーム部15及びヘッド部20の第2姿勢の状態を示した図である。
図6Bに示されるように、第1エルボ15a~第3エルボ15cは、同一の仮想平面SFに含まれるように位置しており、第5アーム部15は、仮想平面SFに対し直交方向に突出して湾曲することなく、空間的にコンパクトに先端のヘッド部20を第4アーム部14の軸線CL14に対し直交する方向を指向する姿勢にできる。
【0043】
(第3姿勢)(
図7A~
図7C参照)
図7Aに示されるように、第3姿勢は、第1姿勢に対し、第5関節152を180°回動させて、ヘッド部20が第4アーム部14に戻る方向を向くように180°反転させた態様である。
すなわち、第3姿勢は、第1~第3エルボ15a~15cの湾曲方向を、すべて同じ方向にした態様である。
【0044】
図7Bは、
図7Aで示された第3姿勢のリンク構成を、軸線CL14の方向(
図7Aの下方側)から見た図であり、
図7Cは、実際の吸引アーム1の第5アーム部15及びヘッド部20の第3姿勢の状態を示した図である。
図7B及び
図7Cに示されるように、第1エルボ15a~第3エルボ15cは、同一の仮想平面SFに含まれるように位置しており、第5アーム部15は、仮想平面SFに対し直交方向に突出して湾曲することなく、空間的にコンパクトに先端のヘッド部20を、第4アーム部14と平行で第4アーム部14側に反転する姿勢にできる。
【0045】
(第4姿勢)(
図8A及び
図8B参照)
図8Aは、第5アーム部15の第4姿勢の斜視的リンク図である。
図8Aには、第3関節23及び第4アーム部14も含まれている。
図8Aにおいて、第4アーム部14の軸線CL14を含み第3関節23の回動軸線CL23と平行になる平面を仮想平面SF1とする。
図8Bは、
図8Aに対応した実際の第5アーム部15の態様を示している。
【0046】
図8A及び
図8Bに示されるように、第5アーム部15は、第4関節151~第6関節153の回動角度を適宜選択して、軸線CL20の方向を仮想平面SF1に対し任意の方向で斜交させる姿勢にできる。これにより、第5アーム部15は、ヘッド部20をより自由に任意の方向へ指向させることができる。
【0047】
このように、吸引アーム1は、ヘッド部20の軸線CL20を仮想平面SF,SF1に含まれない方向に指向させる場合も、第5アーム部15における第2エルボ15bの最大の張り出し量DHが小さいことから、第5アーム部の占有空間が小さくて済み、空間的にコンパクトにヘッド部20を任意の姿勢にできる。
【0048】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0049】
第1関節21~第3関節23及び第4関節151~第7関節154のいずれかには、回動量を視認把握できる回動目盛りMを設けてもよい。
回動目盛りMは、例えば、
図4における第4関節151及び第5関節152に示されている。このような回動目盛りMを関節に備えることで、ヘッド部20を好みの指向方向にする各関節の角度を記録保存して高精度に再現できる。
【0050】
第1~第3エルボ15a~15cの湾曲角度θa,θb,θcは、それぞれ上述の45°,90°,45°の組み合わせに限定されない。
いずれかの値を負値として合計が0°にできる組み合わせであれば、ヘッド部20の軸線CL20と第4アーム部14の軸線CL14とを少なくとも平行にしてヘッド部20を第4アーム部14と同じ方向に指向させることができる。例えば、角度θa=30°,角度θb=120°,角度θc=30°の組み合わせである。
【0051】
第5アーム部15を構成するエルボの数は、上述の3つに限定されず、4つ以上であってもよい。エルボの数が多いほどより自由な姿勢をとり得る。エルボの数が増えることによりコストアップとなるので、コストアップ抑制を優先する場合は上述の3つであるとよい。
【0052】
吸引アーム1は、床FLの上に設置されるものに限定されない。例えば、歯科診療室の天井に対し吊り下げるように設置されるものであってもよい。
また、歯科診療室内を移動可能な筐体内に吸引機3を収容し、その筐体の上部に吸引アーム1を取り付けて、吸引機3と吸引アーム1とを筐体内の通気路で連結して、吸引アーム1と吸引機3を一体化した可動型システムとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 吸引アーム(歯科用口腔外吸引アーム)
10 台座
11~15 第1アーム部~第5アーム部
15a~15c 第1エルボ~第3エルボ
151~154 第4関節~第7関節
155 フード
156 リリースボタン
16 スイッチリング
161 吸引スイッチ
17 ハンドル
171 照明スイッチ
18 照明装置
19 吸引口
20 ヘッド部
21~23 第1関節~第3関節
3 吸引機
31 ポンプ
32 制御部
4 弁装置
41 モータ
51 第1通気管、 52 第2通気管、 53 排気管
AK 通気路
CLa,CLb,CLc,CL14,CL20 軸線
CL21~CL23 回動軸線
DH 張り出し量
D14 外径
FL 床
M 回動目盛り
SF,SF1 仮想平面
ST 吸引システム(歯科用口腔外吸引システム)
θ1,θ2,θ3,θ4 角度
θa,θb,θc 湾曲角度