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特開2023-162849歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法
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  • 特開-歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162849
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/12 20060101AFI20231101BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61C17/12
A61C19/00 H
A61C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073533
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151427
【氏名又は名称】株式会社東京技研
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】庄司 欣央
(72)【発明者】
【氏名】田邉 友樹
(72)【発明者】
【氏名】新田 尚也
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA07
4C052AA13
4C052GG24
4C052LL04
4C052NN07
(57)【要約】
【課題】診療室内に設置された複数台の吸引アームを用いて快適な診療環境を作る。
【解決手段】複数の吸引アーム1のそれぞれは、使用者によって操作され吸引アーム1による吸引をオン及びオフするための吸引スイッチ11を有している。吸引スイッチ11の操作によって吸引アーム1による吸引がオンされた場合、吸引スイッチ11が操作された吸引アーム1に対応する弁装置2は、全開状態へと動作する。操作リモコン4によって換気モードがオンされた場合、複数の弁装置2の全ては、全閉状態から一定量だけ開いた所定開度へと動作する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に開口する吸引口を有する複数の吸引アームと、
通気管を介して前記複数の吸引アームとそれぞれ接続され、前記複数の吸引アームから外気を吸引する吸引機と、
前記複数の吸引アームに対応して設けられ、前記通気管の開閉を行う複数の弁装置と、
前記複数の吸引アームが設置された室内の換気を行う換気モードをオン及びオフする操作リモコンと、を備え、
前記複数の吸引アームのそれぞれは、
使用者によって操作され前記吸引アームによる吸引をオン及びオフするための吸引スイッチを有し、
前記吸引スイッチの操作によって前記吸引アームによる吸引がオンされた場合、前記吸引スイッチが操作された前記吸引アームに対応する前記弁装置は、全開状態へと動作し、
前記操作リモコンによって前記換気モードがオンされた場合、前記複数の弁装置の全ては、全閉状態から一定量だけ開いた所定開度へと動作する
歯科用口腔外吸引システム。
【請求項2】
前記複数の弁装置のそれぞれは、
前記操作リモコンから送信される信号を受信する受信機と、
前記通気管の開閉を行う開閉弁と、
前記吸引スイッチから出力される信号、及び前記受信機が受信した信号に基づいて、前記開閉弁の開閉状態を制御する制御基板と、を有する
請求項1記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項3】
前記吸引機は、
モータで駆動されるポンプと、
予め定められた所定の目標回転数を維持するように、前記モータの回転数を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記吸引スイッチによって前記吸引アームによる吸引がオンされたこと、及び前記操作リモコンによって前記換気モードがオンされたことを契機に、モータ制御を開始する
請求項1又は2記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項4】
前記操作リモコンは、
前記使用者に操作され、前記換気モードのオン及びオフを切り換えるためリモコンスイッチを備え、
前記リモコンスイッチの操作に応じて前記信号を送信する
請求項2記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項5】
前記吸引機は、
モータで駆動されるポンプと、
前記吸引機による吸引圧が所定の目標圧力となるように、前記モータの回転数を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記吸引スイッチによって前記吸引アームによる吸引がオンされたこと、及び前記操作リモコンによって前記換気モードがオンされたことに契機に、モータ制御を開始する
請求項1又は2記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項6】
前記吸引機は、
前記吸引圧を検出する圧力センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記圧力センサによって検出される前記吸引圧が前記目標圧力となるように、前記モータの回転数を制御する
請求項5記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項7】
前記目標圧力は、
前記吸引スイッチによって前記吸引アームによる吸引がオンされた場合において前記モータ制御で利用される第1目標圧力と、
前記第1目標圧力よりも低い第2目標圧力と、を含み、
前記制御装置は、
前記第1目標圧力及び前記第2目標圧力のうち、前記使用者によって選択された一方の値に基づいて、前記モータ制御を行う
請求項5記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項8】
前記操作リモコンは、
前記室内の環境を示す状態量を検出する環境センサを備え、
前記環境センサの検出結果に応じて前記信号を送信する
請求項2記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記圧力センサによって検出される前記吸引圧に基づいて、前記吸引機の異常監視を行う
請求項6記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項10】
外気を吸引する複数の吸引アームが通気管を介して吸引機にそれぞれ接続され、使用者によって操作され前記吸引アームによる吸引をオン及びオフするための吸引スイッチを前記複数の吸引アームのそれぞれが有し、前記複数の吸引アームに対応して前記通気管の開閉を行う複数の弁装置が設けられた歯科用口腔外吸引システムの制御方法において、
前記吸引スイッチの操作によって前記吸引アームによる吸引がオンされたことを判定すると、前記吸引スイッチがオン操作された前記吸引アームに対応して設けられた前記弁装置のみを、全開状態へと動作させ、
前記複数の吸引アームが設置された室内の換気を行う換気モードがオンされたことを判定すると、前記複数の弁装置の全てを、全閉から一定量だけ開いた所定開度へと動作させる
歯科用口腔外吸引システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歯科用口腔外バキューム装置(以下「吸引アーム」という)が記載されている。この吸引アームは、吸引をオン及びオフする吸引スイッチを備えている。
【0003】
吸引アームは、通気管を介して、診療室外の空間、例えば機械室に設置された吸引機に接続されている。吸引アームは、吸引機が駆動することにより、吸引アームの先端部に開口する吸引口から外気を吸引する。通気管には、吸引スイッチの操作に応じて通気管を開閉する弁装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5627095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸引アームは強力な吸引力を有していることから、吸引アームの吸引を利用すれば、診療室内の換気を積極的に促すことができ、快適な診療環境の実現に寄与する。
【0006】
しかしながら、従来の吸引スイッチは、弁装置を全閉状態と全開状態とで切り替えることしかできない。そのため、換気をしようと弁装置を全開状態へと設定すると、診療時と同等の流量で吸引アームから外気が吸引されるので、吸引口における騒音も大きく、換気として長時間使用するには不向きであった。また、診療室内には複数の吸引アームがあるため、それぞれの吸引スイッチを操作する必要があり、操作が煩雑となるばかりか、騒音もさらに大きくなってしまう。
【0007】
吸引機の回転数を下げることで、換気時における騒音を減らすことはできる。しかしながら、診療時において吸引アームを利用する場合に、吸引アームから吸引される外気の流量(吸引力)が低下してしまい、必要な性能を達成することが出来なくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、診療室内に設置された複数台の吸引アームを用いて快適な診療環境を作ることができる歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る歯科用口腔外吸引システムは、
先端部に開口する吸引口を有する複数の吸引アームと、
通気管を介して複数の吸引アームとそれぞれ接続され、複数の吸引アームから外気を吸引する吸引機と、
複数の吸引アームに対応して設けられ、通気管の開閉を行う複数の弁装置と、
複数の吸引アームが設置された室内の換気を行う換気モードをオン及びオフする操作リモコンと、を備え、
複数の吸引アームのそれぞれは、
使用者によって操作され吸引アームによる吸引をオン及びオフするための吸引スイッチを有し、
吸引スイッチの操作によって吸引アームによる吸引がオンされた場合、吸引スイッチが操作された吸引アームに対応する弁装置は、全開状態へと動作し、
操作リモコンによって換気モードがオンされた場合、複数の弁装置の全ては、全閉状態から一定量だけ開いた所定開度へと動作する。
【0010】
また、本発明の一態様に係る歯科用口腔外吸引システムの制御方法は、
外気を吸引する複数の吸引アームが通気管を介して吸引機にそれぞれ接続され、使用者によって操作され吸引アームによる吸引をオン及びオフするための吸引スイッチを複数の吸引アームのそれぞれが有し、複数の吸引アームに対応して通気管の開閉を行う複数の弁装置が設けられた歯科用口腔外吸引システムにおいて、
吸引スイッチの操作によって吸引アームによる吸引がオンされたことを判定すると、吸引スイッチがオン操作された吸引アームに対応して設けられた弁装置のみを、全開状態へと動作させ、
複数の吸引アームが設置された室内の換気を行う換気モードがオンされたことを判定すると、複数の弁装置の全てを、全閉から一定量だけ開いた所定開度へと動作させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、診療室内に設置された複数台の吸引アームを用いて快適な診療環境を作ることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムを示す構成図である。
図2図2は、歯科用口腔外吸引システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、開閉弁を説明する図である。
図4A図4Aは、開閉弁の動作状態の一つである全閉状態を説明する図である。
図4B図4Bは、開閉弁の動作状態の一つである全開状態を説明する図である。
図4C図4Cは、開閉弁の動作状態の一つである微少開状態を説明する図である。
図5図5は、歯科用口腔外吸引システムの動作を示すシーケンスチャートである。
図6図6は、第2の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムを示す構成図である。
図7図7は、歯科用口腔外吸引システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法を説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1及び図2に示すように、歯科用口腔外吸引システムは、複数の吸引アーム1、複数の弁装置2、及び吸引機3を主体に構成されている。図1では、3台の吸引アーム1、及び3台の弁装置2が例示されているが、これに限定されない。
【0015】
吸引アーム1のそれぞれと吸引機3とは、通気管50、51を介して接続されている。具体的には、吸引アーム1と弁装置2との間は第1通気管50で接続され、各弁装置2と吸引機3との間は、共通の第2通気管51で接続されている。3台の吸引アーム1、及び3台の弁装置2は、診療室内に設置されている。吸引機3は、診療室とは別の空間、例えば機械室などに設置されている。第2通気管51は床下に敷設されている。吸引アーム1が診療室の天井から吊り下がるように配設される場合、第2通気管51は、天井裏に敷設されてもよい。
【0016】
個々の吸引アーム1は、診療室の床上に立設されている。なお、吸引アーム1は、診療室の天井から吊り下がるように配設されてもよい。吸引アーム1は、いわゆる垂直多関節型の態様を有し、複数のアーム部が関節を介して接続され姿勢変換可能に構成されている。吸引アーム1の先端部には、吸引口10が開口している。吸引アーム1の内部には、吸引口10からアーム基部まで連続する内部管路(図示せず)が形成されている。内部管路の一端は吸引口10に接続して外部空間に開口し、内部管路の他端は第1通気管50に接続している。
【0017】
個々の吸引アーム1は、使用者によって操作される吸引スイッチ11を有している。吸引スイッチ11は、吸引アーム1による吸引をオン及びオフするための操作スイッチである。吸引スイッチ11は、例えば近接センサで構成されるが、これに限定されない。吸引スイッチ11に対して手をかざすことで、吸引スイッチ11は、所定の信号を弁装置2に出力する。
【0018】
複数の弁装置2は、複数の吸引アーム1と一対一となるように、複数の吸引アーム1と対応して設けられている。個々の弁装置2は、第1通気管50の開閉を行う。弁装置2は、例えば診療室の床上に設置されているが、弁装置2の全部の要素又は一部の要素は、床下に設置されてもよい。吸引アーム1が診療室の天井から吊り下がるように配設される場合、弁装置2は、天井面に敷設されてもいいし、弁装置2の全部の要素又は一部の要素が天井裏に設置されてもよい。
【0019】
弁装置2は、開閉弁20と、モータ21と、制御基板22と、第1スイッチ23と、第2スイッチ24と、受信機25とを備えている。
【0020】
開閉弁20は、第1通気管50を開閉する。図3に示すように、開閉弁20は、第1通気管50と第2通気管51とを接続する接続管20aと、上下方向に沿う回転軸周りに回転自在に構成された弁体20bとを備えている。
【0021】
モータ21は、開閉弁20の弁体20bを回転させることにより、開閉弁20の開閉を行う。モータ21は、例えばシンクロナスモータである。
【0022】
制御基板22は、弁装置2を制御する。具体的には、制御基板22には、吸引スイッチ11からの信号、及び受信機25が受信した操作リモコン4からの信号が入力される。制御基板22は、これらの信号に基づいて、開閉弁20の開閉状態を制御する。また、制御基板22は、これらの信号に基づいて、吸引機3を動作させたり、吸引機3の動作を停止させたりするための信号を出力する。
【0023】
図4Aに示すように、開閉弁20が全閉状態に制御されると、弁体20bは最小開度θa(θa=0°)となる。また、図4Bに示すように、開閉弁20が全開状態に制御されると、弁体20bは最大開度θb(θb=90°)となる。
【0024】
制御基板22には、第1スイッチ23及び第2スイッチ24からの信号が入力される。第1スイッチ23は、モータ21を逆転させて弁体20bを回転させたときに、弁体20bが最小開度θaに到達したことを検出するスイッチである。第2スイッチ24は、モータ21を正転させて弁体20bを回転させたときに、弁体20bが最大開度θbに到達したことを検出するスイッチである。制御基板22は、第1及び第2スイッチ23、24から出力される信号に基づいてモータ21の回転及び停止を切り換え、開閉弁20の開閉状態(弁体20bの開度)を制御する。
【0025】
また、制御基板22は、開閉弁20が全閉状態にある状態においてモータ21を所定時間(微少時間)だけ駆動することで、開閉弁20を微少量だけ開いた状態(微少開状態)へと設定することができる。図4Cに示すように、開閉弁20が微少開状態に設定されると、弁体20bは微少開度θcとなる。
【0026】
受信機25は、操作リモコン4から送信される信号を受信する。受信機25は、操作リモコン4からの信号を無線で受信する構成であるが、有線方式であってもよい。
【0027】
吸引機3は、第1及び第2通気管50、51を介して複数の吸引アーム1とそれぞれ接続されている。吸引機3は、複数の吸引アーム1から外気を吸引する。
【0028】
吸引機3は、モータ(図示しない)で駆動されるポンプ30と、モータの回転数を制御する制御装置31と、を有している。ポンプ30が動作することにより、吸引口10の周囲の外気が、吸引アーム1、第1通気管50、及び第2通気管51を介して吸引される。吸引された空気は、不図示のフィルタによって診療などで生じた切削塵埃などが除去された後、外部の空間に排出される。
【0029】
操作リモコン4は、換気モードをオン及びオフするための装置である。換気モードは、複数の吸引アーム1の吸引力を利用して、診療室内の換気を行うモードである。操作リモコン4は、診療室内において使用される。
【0030】
操作リモコン4は、リモコンスイッチ40と、送信機41とを備えている。リモコンスイッチ40は、使用者に操作され、換気モードのオン及びオフを切り換えるための操作スイッチである。使用者がリモコンスイッチ40を操作した場合、送信機41は、リモコンスイッチ40の操作に応じた所定の信号、具体的には、換気モードのオン信号又は換気モードのオフ信号を出力する。
【0031】
以下、図5を参照し、第1の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムの制御方法を説明する。以下の説明では、診療室の3つの吸引アーム1に対応する、3つの弁装置2を、第1弁装置2A、第2弁装置2B、及び第3弁装置2Cとして区別する。
【0032】
まず、3つの吸引アーム1を利用して診療室の換気を行う場合、使用者は、操作リモコン4のリモコンスイッチ40を用いて、換気モードをオンする操作を行う。これにより、操作リモコン4の送信機41から、換気モードのオン信号が送信される。
【0033】
操作リモコン4から送信された換気モードのオン信号は、第1から第3弁装置2A、2B、2Cの各受信機25によって受信される(S210、S240、S260)。受信された換気モードのオン信号は、それぞれの制御基板22へと入力される。
【0034】
第1から第3弁装置2A、2B、2Cの各制御基板22は、吸引機3に対して、吸引機3を動作させるためのオン指令を出力する(S211、S241、S261)。なお、吸引機3に対するオン指令の出力は、全ての弁装置2A、2B、2Cが行わず、予め設定された一つの弁装置のみが行ってもよい。
【0035】
吸引機3の制御装置31にオン指令が入力されると、制御装置31は、ポンプ30のモータ制御を開始して、ポンプ30を駆動する(S100)。そして、制御装置31は、予め定められた目標回転数(一定値)を維持するように、モータの回転数を制御する(回転数一定制御)。目標回転数は、診療時の吸引アーム1の使用において吸引口10から必要な流量の外気が吸引されることを念頭に設定されている。例えば、目標回転数は、モータ性能から規定される最大回転数である。このように、制御装置31は、操作リモコン4によって換気モードがオンされたことを契機に、モータ制御を開始する。
【0036】
また、第1から第3弁装置2A、2B、2Cの各制御基板22は、モータ21を所定時間だけ駆動して、弁装置2の開閉弁20を微少開状態(微少開度θc)に設定する(S212、S242、S262)。
【0037】
各弁装置2A、2B、2Cの開閉弁20が微少開度θcとなることで、各吸引アーム1の吸引口10から外気が吸引され、第1通気管50、弁装置2A、2B、2C、及び第2通気管51を通って吸引機3に入る。吸引された外気は、吸引機3の内部のフィルタを通って清浄化されて、外部に排気される。このとき、各弁装置2A、2B、2Cが微少開状態に設定されているので、個々の吸引アーム1では、吸引口10から僅かな流量で外気が吸引される。
【0038】
つぎに、歯科診療に伴い、吸引アーム1を利用した通常の吸引を行う場合、使用者は、吸引アーム1に設けられた吸引スイッチ11に手をかざし、吸引アーム1による吸引をオンする操作を行う。これにより、吸引スイッチ11からオン信号が出力される。以下の説明では、第1弁装置2Aに対応する吸引アーム1に設けられた吸引スイッチ11が操作されたものとする。
【0039】
吸引スイッチ11から出力されたオン信号は、第1弁装置2Aの制御基板22へと入力される(S214)。
【0040】
第1弁装置2Aの制御基板22は、吸引機3に対して、吸引機3を動作させるためのオン指令を出力する(S215)。吸引機3の制御装置31にオン指令が入力されるが、既にポンプ30は駆動されているので、制御装置31は、ポンプ30の駆動を継続する(S102)。そのため、制御装置31は、目標回転数を維持するように、モータの回転数を制御する(回転数一定制御)。
【0041】
また、第1弁装置2Aの制御基板22は、モータ21を駆動して、開閉弁20を全開状態(最大開度θb)に設定する。
【0042】
第1弁装置2Aの開閉弁20が全開状態となることで、吸引スイッチ11がオンされた吸引アーム1の吸引口10から外気が吸引され、第1通気管50、第1弁装置2A、及び第2通気管51を通って吸引機3に入る。吸引された外気は、吸引機3の内部のフィルタを通って清浄化されて、外部に排気される。吸引スイッチ11が操作された吸引アーム1では、開閉弁20が最大開度θbに設定されているので、診療に必要な流量で吸引口10から外気が吸引される。一方、吸引スイッチ11が操作されていない吸引アーム1では、第2及び第3弁装置2B、2Cの開閉弁20が微少開状態に設定されたままなので、吸引口10から僅かな流量で外気が吸引されるままの状態が維持される。
【0043】
このように本実施形態によれば、操作リモコン4を操作して換気モードをオンすることで、診療室にある全ての弁装置2を開状態へと一斉に切り換え、全ての吸引アーム1で一斉に吸引を行うことができる。吸引アーム1毎に吸引スイッチ11を操作する必要がないので、使用者の利便性を向上させることができる。
【0044】
換気モードでは、全ての弁装置2において、開閉弁20が微少開状態に設定されるので、吸引口10からは僅かな流量で外気が吸引される。これにより、吸引口10における騒音を低減でき、長時間にわたり換気を継続することができる。加えて、吸引機3の回転数を下げる必要もないので、診療において吸引アーム1を利用する場合には、吸引アーム1の吸引力が低下することなく、必要な性能を達成することができる。
【0045】
以上に示すように、本実施形態に係る歯科用口腔外吸引システム及びその制御方法によれば、診療室内の換気を積極的に促すことができ、快適な診療環境を実現することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、吸引機3の制御装置31は、操作リモコン4によって換気モードがオンされたことを契機に、モータ制御を開始している。しかしながら、換気モードがオンされることなく、吸引スイッチ11によって吸引アーム1による吸引がオンされた場合には、吸引機3の制御装置31は、通常通り、吸引アーム1による吸引オンを契機に、モータ制御を開始することとなる。
【0047】
上述した第1の実施形態は、以下に示すような代替的な方法を採用することができる。
【0048】
上述した実施形態では、リモコンスイッチ40によってオン、オフされる換気モードは1種類であるが、歯科用口腔外吸引システムは、「弱」及び「強」からなる2種類の換気モードを備えていてもよい。この場合、使用者は、リモコンスイッチ40によって、「弱」及び「強」の2種類の換気モードのうち、いずれか一方の換気モードを選択することができる。
【0049】
例えば、「弱」の換気モードがオンされた場合、各弁装置2の制御基板22は、モータ21を所定時間だけ駆動して、開閉弁20を微少開状態(微少開度θc)に設定する(上述したS212、S242、S262と同様)。一方、「強」の換気モードがオンされた場合、各弁装置2の制御基板22は、モータ21を駆動して、開閉弁20を全開状態(最大開度θb)に設定する、といった如くである。このとき、吸引機3の制御装置31は、換気モードの種類に拘わらず、常に同一の目標回転数でモータの回転数を制御する。
【0050】
ただし、「弱」及び「強」の換気モードの切り換えは、開閉弁20の開閉状態によって切り換える方法に限らず、吸引機3におけるモータの回転数を切り換える方法であってもよい。例えば、吸引機3の制御装置31は、「弱」の換気モードがオンの場合には、相対的に低い目標回転数(第1目標回転数)を維持するようにモータの回転数を制御し、「強」の換気モードがオンの場合には、相対的に高い目標回転数(第2目標回転数)を維持するようにモータの回転数を制御する、といった如くである。また、開閉弁20の開閉状態を切り換える方法と併せて、吸引機3におけるモータの回転数を切り換える方法を行ってもよい。
【0051】
操作リモコン4は、リモコンスイッチ40に代えて、或いはリモコンスイッチ40とともに、診療室内の環境を示す状態量、例えば二酸化炭素濃度を検出する環境センサを備えていてもよい。この場合、操作リモコン4は、環境センサの検出結果に応じて、例えば二酸化炭素濃度が一定閾値以上となった場合に、換気モードをオンする信号を送信してもよい。
【0052】
また、操作リモコン4は、二酸化炭素濃度が第1閾値以上となった場合に、「弱」の換気モードをオンする信号を送信し、二酸化炭素濃度が第1閾値よりも大きい第2閾値以上となった場合に、「強」の換気モードをオンする信号を送信してもよい。これにより、診療室内の環境に応じて吸引アーム1から吸引される流量が調整されるので、適切な換気を自動的に行うことができる。
【0053】
(第2の実施形態)
以下、図6を参照し、第2の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムについて説明する。第1の実施形態と重複する説明は省略し、相違点を中心に説明を行う。
【0054】
第2の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムにおいて、吸引機3は、圧力センサ32を備えている。圧力センサ32は、ポンプ30による吸引圧を検出するセンサである。例えば、圧力センサ32は、フィルタ近傍に配置されている。圧力センサ32によって検出された信号は、制御装置31に入力される。
【0055】
以下、図7を参照し、第2の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムの制御方法を説明する。なお、第2の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムの制御方法が、第1の実施形態のそれと相違する点は、吸引機3のポンプ30の駆動方法である。
【0056】
操作リモコン4によって換気モードがオンされたことに伴って吸引機3の制御装置31にオン指令が入力されると、制御装置31は、ポンプ30のモータ制御を開始して、ポンプ30を駆動する(S105)。第2の実施形態において、制御装置31は、圧力センサ32によって検出される吸引圧が、予め定められた目標圧力(一定圧力)を維持するように、モータの回転数を制御する(圧力一定制御)。目標圧力は、診療時の吸引アーム1の使用において吸引口10から必要な流量の外気が吸引されることを念頭に設定されている。
【0057】
モータ制御を開始すると、制御装置31は、圧力センサ32によって検出される吸引圧に基づいて、吸引機3の異常監視を行う(S106)。換気モードがオンされると、吸引アーム1から外気が吸引される。診療室内には診療器具をはじめ、様々な物があるため、これらの物が予期せずに吸い込まれてしまう可能性がある。また、第2通気管51の異常又は管路の閉塞、吸引機3のフィルタの目詰まりなども考えられる。そこで、制御装置31は、圧力センサ32によって検出される吸引圧の変位に基づいて、吸引機3の吸引異常を判定する。吸引機3の異常を判定した場合、制御装置31は、図示しない警報ランプを点灯する、或いは警報音を出力するなどのアラームを行うとともに、アラームのログを記録する。また、制御装置31は、モータの回転数を低減させて、過負荷によるモータ温度上昇を抑制する。
【0058】
一方、吸引異常を判定しない場合、吸引機3の制御装置31は、上述した通り、所定の目標圧力を維持するように、モータの回転数を制御する(圧力一定制御)。そして、歯科診療に伴い、吸引アーム1を利用した通常の吸引を行う場合、使用者は、吸引スイッチ11を操作する。以下の説明では、第1弁装置2Aに対応する吸引アーム1に設けられた吸引スイッチ11が操作されたものとする。
【0059】
吸引スイッチ11から出力されたオン信号は、第1弁装置2Aの制御基板22へと入力される(S214)。第1弁装置2Aの制御基板22は、吸引機3に対して、吸引機3を動作させるためのオン指令を出力する(S215)。
【0060】
吸引機3の制御装置31にオン指令が入力されると、制御装置31は、ポンプ30の駆動を継続する(S107)。制御装置31は、圧力センサ32によって検出される吸引圧が目標圧力を維持するように、モータの回転数を制御する(圧力一定制御)。
【0061】
このように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏するとともに、以下に示す効果をさらに奏する。
【0062】
具体的には、吸引機3の吸引圧が一定となるように制御されるので、診療において利用される吸引アーム1の個数に応じて、モータの回転数が可変制御されることとなる。これにより、診療中の吸引アーム1の個数に関わらず、個々の吸引アーム1から吸引される外気の流量を一定に維持することができる。これにより、使用者にとって使い勝手よいシステムを提供することができる。
【0063】
また、換気モードでは、全ての吸引アーム1から微少量の吸引が行われ、吸引スイッチ11が操作されない限り、その状態は変わらない。したがって、圧力センサ32によって検出される吸引圧も一定の値を推移することが予測される。このため、圧力センサ32によって検出される吸引圧の変位から、吸引機3の異常を判定することができる。これにより、吸引アーム1による異物の吸引、吸引機3のフィルタの目詰まりなど、及びそれに伴う機器の故障、並びに吸引機3の過負荷による故障を未然に抑制することができる。
【0064】
上述した第2の実施形態は、以下に示すような代替的な方法を採用することができる。
【0065】
目標圧力は、診療時に必要な吸引力を得るための第1目標圧力の他、この第1目標圧力よりも低い第2目標圧力を含んでもよい。そして、制御装置31は、第1目標圧力及び第2目標圧力のうち、使用者によって選択された一方の値に基づいて、モータ制御を行ってもよい。これにより、使用者のニーズに応じた目標圧力を設定することができるので、使い勝手のよいシステムを提供することができる。
【0066】
また、換気モード中に異常監視を行う以外にも、吸引アーム1の吸引スイッチ11がオンされた以降も、異常監視を行ってもよい。通常、吸引スイッチ11が操作され、新たな吸引アーム1が動作するとき以外は、吸引圧の変動は少ないと予想される。そこで、残余の吸引スイッチ11が操作されていないにも関わらず、吸引圧が変動したときには、異常を判定してもよい。
【0067】
また、第1の実施形態と同様、1種類の換気モードだけでなく、「弱」及び「強」からなる2種類の換気モードを有していてもよい。また、操作リモコン4は、リモコンスイッチ40に代えて、或いはリモコンスイッチ40とともに、診療室内の環境を示す状態量、例えば二酸化炭素濃度を検出する環境センサを備えていてもよい。
【0068】
本発明の実施形態は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 吸引アーム
10 吸引口
11 吸引スイッチ
2 弁装置
20 開閉弁
21 モータ
22 制御基板
23 第1スイッチ
24 第2スイッチ
25 受信機
3 吸引機
30 ポンプ
31 制御装置
32 圧力センサ
4 操作リモコン
40 リモコンスイッチ
41 送信機
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7