(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162851
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】歯科用口腔外吸引アーム
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20231101BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61C19/00 H
A61C13/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073537
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151427
【氏名又は名称】株式会社東京技研
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】庄司 欣央
(72)【発明者】
【氏名】田邉 友樹
(72)【発明者】
【氏名】新田 尚也
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA07
4C052LL04
4C052LL09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吸引音が小さい歯科用口腔外吸引アームを提供する。
【解決手段】歯科用口腔外吸引アームは、空気の吸引口19を先端面に有するヘッド部5を先端に配置した複数のアーム部を含み多自由度を有している。ヘッド部5は、円管状の内カバー52と、内カバーに内挿可能な円筒状のカップ基部61及びメッシュ部6bを有しカップ基部61の一端部に設けられた底部62からなるメッシュカップ6と、カップ基部の内側に装着される円筒状の吸音部材と、吸引口となる吸気誘導部532を有し内カバーの先端に取り付けられるフード53と、を備える。メッシュカップは、カップ基部に吸音部材が装着された状態でメッシュ部が奥側となる姿勢で内カバーに内挿され、吸気誘導部の端部はメッシュカップに装着された吸音部材の底部とは反対側の端部と径方向に干渉する位置にある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の吸引口を先端面に有するヘッド部と、前記ヘッド部を先端に配置して直列に連結された複数のアーム部と、を含み多自由度を有して構成され、
前記ヘッド部は、
円管状に形成された内カバーと、
前記内カバーに内挿可能な円筒状のカップ基部、及びメッシュ部を有し前記カップ基部の一方の端部に設けられた底部からなるメッシュカップと、
前記カップ基部の内側に挿入装着される円筒形状の吸音部材と、
前記吸引口となる吸気誘導部を有し前記内カバーの先端部に着脱可能に取り付けられるフードと、を備え、
前記メッシュカップは、前記カップ基部に前記吸音部材が挿入装着された状態で前記メッシュ部が奥側となる姿勢で前記内カバーに内挿されており、
前記フードの前記吸気誘導部の端部は、前記メッシュカップに挿入装着された前記吸音部材の前記底部とは反対側の端部と径方向において干渉する位置にある歯科用口腔外吸引アーム。
【請求項2】
前記吸気誘導部は縦断面形状が内側に凸の曲線となる漏斗状に形成されており、前記吸気誘導部の前記端部の内径と前記吸音部材の内径とが一致している請求項1記載の歯科用口腔外吸引アーム。
【請求項3】
前記メッシュカップ及び前記吸音部材の前記ヘッド部の軸線方向における向きを第1態様の向きとしたときに、前記メッシュカップを前記第1態様とは逆向きの第2態様にしても前記フードを前記内カバーの先端部に取り付け可能な請求項1記載の歯科用口腔外吸引アーム。
【請求項4】
前記吸音部材と前記底部との間に、前記吸音部材の内径よりも大きい径の空間を有する請求項1又は請求項2記載の歯科用口腔外吸引アーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用口腔外吸引アームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数のアームが直列かつ相対回動可能に接続された多自由度を有する歯科用口腔外バキューム装置(以下、吸引アームとも称する)が記載されている。この吸引アームは、先端アームに、先端側から着脱可能に嵌挿された筒状の吸音材、及びその吸音材が抜け出ることを防止する吸引フードを備えている。
吸引アームは、歯科診療室の治療チェア近くに設置され吸引機に接続される。吸引アームは、吸引機の動作によって先端アームの先端部から口腔外の空気を吸引する。吸音材は、この空気の吸引で生じる音(以下、吸気音)を低減する。吸引アームと吸引機とを含んで歯科用口腔外吸引システムが構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような吸音材を備えた吸引アームは、一般的に、吸音材よりも開口側となる位置にメッシュ部材が配置されている。メッシュ部材は、メッシュの各孔の開口サイズよりも大きい異物の吸気路内への進入を防止し、吸引機が大きい異物を吸い込んで動作に不具合が生じることを防止する。
吸引アームで生じる吸引音は吸引力が強いほど大きく、吸音材を備えていても操作者が騒音と感じてしまう虞がある。そのため、吸引アームは、吸引音ができるだけ小さいことが望まれている。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、吸引音が小さい歯科用口腔外吸引アームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成、手順を有する。
1) 空気の吸引口を先端面に有するヘッド部と、前記ヘッド部を先端に配置して直列に連結された複数のアーム部と、を含み多自由度を有して構成され、
前記ヘッド部は、
円管状に形成された内カバーと、
前記内カバーに内挿可能な円筒状のカップ基部、及びメッシュ部を有し前記カップ基部の一方の端部に設けられた底部からなるメッシュカップと、
前記カップ基部の内側に挿入装着される円筒形状の吸音部材と、
前記吸引口となる吸気誘導部を有し前記内カバーの先端部に着脱可能に取り付けられるフードと、を備え、
前記メッシュカップは、前記カップ基部に前記吸音部材が挿入装着された状態で前記メッシュ部が奥側となる姿勢で前記内カバーに内挿されており、
前記フードの前記吸気誘導部の端部は、前記メッシュカップに挿入装着された前記吸音部材の前記底部とは反対側の端部と径方向において干渉する位置にある歯科用口腔外吸引アームである。
2) 前記吸気誘導部は縦断面形状が内側に凸の曲線となる漏斗状に形成されており、前記吸気誘導部の前記端部の内径と前記吸音部材の内径とが一致している1)に記載の歯科用口腔外吸引アームである。
3) 前記メッシュカップ及び前記吸音部材の前記ヘッド部の軸線方向における向きを第1態様の向きとしたときに、前記メッシュカップを前記第1態様とは逆向きの第2態様にしても前記フードを前記内カバーの先端部に取り付け可能な1)に記載の歯科用口腔外吸引アームである。
4) 前記吸音部材と前記底部との間に、前記吸音部材の内径よりも大きい径の空間を有する1)又は2)に記載の歯科用口腔外吸引アームである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸引音が小さい、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る歯科用口腔外吸引アームの実施例である吸引アーム1を含む歯科用口腔外吸引システムSTを示す構成図である。
【
図2】
図2は、吸引アーム1の先端部分を示す外観図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるS3-S3位置での半体の断面図である。
【
図4】
図4は、吸引アーム1のヘッド部5を示す半断面図である。
【
図5】
図5は、吸引アーム1のヘッド部5の先端部分であるフード53を示す半断面図である。
【
図6】
図6は、フード53に取り付けられるメッシュカップ6を示す図であり、
図6(a)はメッシュカップ6の半断面図、
図6(b)はメッシュカップ6におけるメッシュ部6bの部分平面図、
図6(c)は、
図6(a)におけるA部拡大図である。
【
図8】
図8は、ヘッド部5に吸音部材7を第1態様で取り付ける手順を示す組み立て図である。
【
図9】
図9は、ヘッド部5に吸音部材7を第2態様で取り付ける手順を示す組み立て図である。
【
図10】
図10は、第2態様で組み立てられたヘッド部5Aを説明するための半体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る歯科用口腔外吸引アームを、実施例の吸引アーム1によって説明する。
【0010】
(実施例)
図1は、実施例の吸引アーム1を含む歯科用口腔外吸引システムST(以下、吸引システム)を示す構成図である。
図2は、吸引アーム1の先端部分を示す外観図である。
まず、吸引システムSTの構成及び吸引アーム1の外観について
図1及び
図2を参照して説明する。
【0011】
図1に示されるように、吸引システムSTは、吸引アーム1,弁装置4,及び吸引機3を含んで構成されている。吸引アーム1と弁装置4との間は第1通気管41で接続され、弁装置4と吸引機3との間は、第2通気管42で接続されている。吸引機3には、さらに外部の空間へ排気するための排気管43が接続されている。
吸引アーム1及び弁装置4は、歯科診療室内に設置される。吸引機3は、通常、歯科診療室とは別の機械室などに設置され、第2通気管42は床FLの下に敷設される。
吸引アーム1の先端に配置されたヘッド部5の先端面には吸引口19が開口している。吸引アーム1の内部には一端部が吸引口19に接続し他端部が第1通気管41に接続された通気路AK(
図3参照)が配設されている。
【0012】
弁装置4は、モータ40と開閉弁(不図示)とを有し、この例において診療室の床FLの上に設置されている。弁装置4は床下に設置されていてもよい。
開閉弁は第1通気管41と第2通気管42との間の通気を、モータ40の動作によって開閉する。モータ40の動作は、制御部32によって制御される。
【0013】
吸引機3は、ポンプ31及び制御部32を有する。開閉弁が開状態とされポンプ31が動作することで、吸引アーム1の吸引口19か空気が吸引され、不図示のフィルタによって治療などで生じた切削塵埃,細菌及びウイルスなどが除去された後、排気管43から外部の空間に排出される。制御部32は、ポンプ31を含む吸引システムSTの全体の動作を制御する。制御部32は、吸引機3に備えられていなくてもよい。制御部32の設置場所は限定されない。例えば、弁装置4に備えられていてもよい。
【0014】
吸引アーム1は、診療室の床FLに立設され、複数のアーム部が直列に連結された、いわゆる垂直多関節型の態様を有して人手によって姿勢変換可能な多自由度アームである。
吸引アーム1は、床FL側から、台座10,第1アーム部11,第2アーム部12,第3アーム部13,第4アーム部14,第5アーム部15,及びヘッド部5を有する。
台座10は床FLに固定される座の部分である。
第1アーム部11は、台座10から鉛直上方に延びる管状の支柱である。第1アーム部11は昇降機能を有していてもよい。この例において第1アーム部11は回動しないポール部材であるが便宜的に名称としてアームを用いる。
第1アーム部11の上端部には、第2アーム部12を連結する第1関節21が設けられている。
第2~第4アーム部12~14は、直管状に形成され、それぞれ第1~第3関節21~23において水平方向に延びる第1~第3軸線CL21~CL23まわりに所定のトルク以上で回動可能なように直列に連結されている。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、第4アーム部14には、環状のスイッチリング16が備えられている。スイッチリング16は、周方向の一部が径方向の外方に盛り上がっており、その盛り上がった部分の先端側の面に第1のスイッチである吸引スイッチ161が取り付けられている。
【0016】
図2に示されるように、第5アーム部15は、直列に連結された第1エルボ15a,第2エルボ15b,及び第3エルボ15cを有する。第1エルボ15aは、第4アーム部14に対し第1リンク軸関節151を介して連結され、第1エルボ15a~第3エルボ15cは、第1オフセット関節152,第2オフセット関節153を介して直列に連結されている。
ヘッド部5は、第3エルボ15cに第2リンク軸関節154を介して連結されている。
【0017】
第1エルボ15a~第3エルボ15cは、それぞれ一端面と他端面とが45°傾斜するよう曲がって形成されている。第1リンク軸関節151及び第2リンク軸関節は、それぞれ第4アーム14の軸線及びヘッド部5の軸線まわりに回動可能であり、第1オフセット関節152及び第2オフセット関節153は、備えられたエルボの端面に直交する軸線まわりに回動可能となっている。
これらの多関節構造によって、吸引アーム1は、ヘッド部5を、ほぼ操作者の望む姿勢にすることができ、ヘッド部5の先端を望む方向に指向可能である。
【0018】
ヘッド部5は、先端に向かうに従って外径が拡張する円錐台形状のカバー51を有する。カバー51には、ハンドル17及びリリースボタン156が設けられている。
カバー51の先端部には、フード53が着脱可能に装着されている。
フード53は、カバー51の先端部に対し先端側から挿入すると、周知の係合構造によって所定の挿入位置でロックされる。このロックは、リリースボタン156を押し込むことで解除されるので、リリースボタン156を押してフード53を取り外すことができる。
【0019】
係合構造は、例えば、リリースボタン156に内向きに突出する凸部を形成しこの凸部を内向きに付勢するばね部材を設けておく。一方、フード53には凸部が進入する凹部を形成し、フード53が所定の位置まで挿入されたら、ばね部材の付勢力によって凸部が凹部に進入係合してロックされるようにする。
ロックのリリースは、リリースボタン156をシーソー構造にして、リリースボタン156をばね部材の付勢力に抗する力で押し込むと、シーソー構造の支点反対側の凸部が持ち上がって凹部から離脱するように構成しておく。
【0020】
次に、ヘッド部5の構造を、
図3~
図8を参照して説明する。説明の便宜上、ヘッド部5の先端側を前、根元側(第5アーム15側)を後として、各図に矢印で前後方向が示されている。
【0021】
図3は、
図2におけるS2-S2位置での断面図である。ヘッド部5は、
図3において軸線CL5に対し対称形状であり半体が示されている。
図3に示されるように、ヘッド部5は、カバー51,内カバー52,フード53,メッシュカップ6,及び吸音部材7を含んで構成されている。
図4は、カバー51及び内カバー52の片側断面図である。
【0022】
カバー51は、前側に向かうに従って、徐々に外径が大きくなる円管状に形成されている。内カバー52は、カバー51よりも小さい外径を有する円管状に形成されており、カバー51の内側に同芯で配置されている。内カバー52は、径が拡大する第1段部52a及び第2段部52bを有して、前側に向かうに従って2段階で内径が拡大する円管状に形成されている。
カバー51及び内カバー52は、樹脂で形成されている。樹脂例はPP(ポリプロピレン)である。
【0023】
内カバー52の内側の空間領域を、便宜的に、
図4における最小内径側から前方に向け順に、第1領域AR1,第2領域AR2,及び第3領域AR3とする。第1領域AR1は通気路AKに接続されている。通気路AKは、第5~第1アーム部15~11及び台座10の内部を通り、第1通気管41に接続されている。
【0024】
ヘッド部5は、カバー51と内カバー52との間の前端部に、照明装置18を備えている。照明装置18は、円環状の基板181を有し、基板181の先端側の面には、周方向に離隔して複数の発光素子182が実装されている。複数の発光素子182は、制御部32の制御で点灯/消灯する。
基板181は、カバー51の内面に形成された内周リブ511と内カバー52の外面に形成された外周リブ521とに位置決めされ、前端側から不図示の固定具によって固定された環状の押さえリング512によって挟まれて固定されている。照明装置18の点灯/消灯は、ハンドル17の先端に設けられた照明スイッチ171で切り換えることができる。
【0025】
図5に示されるフード53は、光透過性を有する樹脂(例えば透明のPC)で形成され、円筒状の本体筒部531と、本体筒部531の前端部に形成され外径が拡大した部分である鍔部533とを有する。
鍔部533と本体筒部531とは、吸気誘導部532によって連結されている。
吸気誘導部532は、縦断面形状が内側に凸の曲線となる漏斗状に形成された内面532cを有する。
図3に示されるように、鍔部533は、ヘッド部5の外観として視認され、吸気誘導部532は、ヘッド部5の前方から吸引口19の内面として視認される。
吸気誘導部532の環状の後端部である誘導端部532aは、本体筒部531の内側の空間に進入した位置にある。誘導端部532aの内径d1は、
図7に示される吸音部材7の内径d7と一致している。
本体筒部531の内面の後端部には、雌ねじ部531aが形成されている。
【0026】
図6(a)に示されるように、メッシュカップ6は、内径d6の円筒状のカップ基部61と、カップ基部61の一方の端部を塞ぐ底部62とを有する。メッシュカップ6は樹脂で形成されており、樹脂例はPCである。
メッシュカップ6は、カップ基部61の外周面における前後方向の中央よりやや前寄りの部位に雄ねじ部6aを有する。また、底部62は、軸線CL6を中心とする概ね直径D6の範囲にメッシュ部6bが形成されている。カップ基部61の内周面の底部62に近い位置には、底部62側の内径がわずかに小さくなるように段部6cが形成されている。
【0027】
カップ基部61は、フード53の本体筒部531の内側に挿入可能(内挿可能)であり、雄ねじ部6aは、フード53の雌ねじ部531aと螺合可能である。
メッシュ部6bの形成範囲外縁の直径D6は、フード53の誘導端部532aの内径d1及び吸音部材7の内径d7よりも大きい。
【0028】
図6(b),
図6(c)に示されるように、メッシュ部6bには、複数の貫通孔6b1が、いわゆる丸孔60°千鳥配列で形成されている。貫通孔6b1の前後の開口縁にはそれぞれ面取り部6b3,6b2が形成されている。
【0029】
図7に示されるように、吸音部材7は、例えばプロピレン樹脂の多孔質材によって、内径d7の貫通孔を有する円筒形状に形成されている。
吸音部材7は、外径D7が、メッシュカップ6のカップ基部61における内径d6に対し、わずかに強嵌合となるように設定されている。詳しくは、吸音部材7は、カップ基部61の内側に、第1端部7aが段部6cに当接するまで人手で押し込んで挿入装着できる。また、吸音部材7をカップ基部61から人手で引き抜いて取り外すことができる。カップ基部61に装着された吸音部材7は、カップ基部61から自重では脱落しない程度の強嵌合になっている。
【0030】
上述のカバー51及び内カバー52に対し、フード53,メッシュカップ6,及び吸音部材7を
図3に示される第1態様のヘッド部5として組み立てる手順を、
図3及び
図8を参照して説明する。
【0031】
まず、
図8に示されるように、底部62が後方側となる向きのメッシュカップ6に対し、吸音部材7を、その第1端部7aが段部6cに当接するまで押し込んで装着する。
次いで、矢印DR1に示されるように、フード53の内側にメッシュカップ6を進入させる。そして、フード53の雌ねじ部531aとメッシュカップ6の雄ねじ部6aとを螺合させ、吸音部材7の第2端部7bがフード53の誘導端部532aに当接する位置まで螺進させる。誘導端部532aは、吸音部材7の第2端部7bに対し径方向において干渉する位置にある。
既述のように、吸音部材7の内径d7と、フード53における吸気誘導部532の誘導端部532aの内径d1とは一致している。
これにより、
図3に示されるように、吸気誘導部532の内部に向かうほど内径が縮小する曲面で形成された内面532cと吸音部材7における内径が一定の内周面7cとは、段差なく滑らかに接続する。
【0032】
このように組み立てた、吸音部材7,メッシュカップ6,及びフード53の一体物を、内カバー52の内側に挿入する(
図8:矢印DR2参照)。
挿入された一体物は、
図3に示されるように、メッシュカップ6の底部62が、内カバー52の第1段部52aに当接したとき又は第1段部52aに当接する直前で不図示のロック機構が作用して内カバー52に固定される。
フード53は、光透過性を有する材料で形成されているので、発光素子182から射出した光を通過してヘッド部5が指向する方向を照明できる。
【0033】
図3に示されるヘッド部5の態様である第1態様では、吸引口19側から、吸音部材7、メッシュ部6bの順に配置されている。すなわち、メッシュカップ6は、メッシュ部6bが奥側となる姿勢で内カバー52に内挿されている。
吸引機3の動作によって吸引される空気は、吸引口19から吸い込まれて吸気誘導部532,吸音部材7の内周面7cで囲まれた空間V7の順に通り、メッシュ部6bを通過する。流れる空気は、メッシュ部6bを通過する際に抵抗を受け、他の部位を流れるときと比べて大きな音を発生する。
【0034】
ヘッド部5の第1態様は、メッシュ部6bよりも吸引口19側に吸音部材7が配置されているので、メッシュ部6bで発生した音のうち、吸音部材7に向かう音Sd1が吸音部材7で吸収され、吸引口19へ向かう残りの音Sd2だけが吸引口19から外部へ放出され操作者に聴取され得る。
これにより、吸引アーム1は、外部にいる操作者が聴取する吸気音の音量が減少し、騒音として感じられにくくなっている。
【0035】
また、ヘッド部5において、吸引機3の動作によって吸引される空気は、吸気誘導部532の内面532cで囲まれた空間V532(
図3参照)を通り、急峻な内径変化がなく連続的に接続された内周面7cで囲まれた空間V7に滑らかに誘導される。そのため、外部からメッシュ部6bに至る経路で、気流の乱れは良好に抑制され、吸気誘導部532からメッシュ部6bに至る経路で生じる吸引音は小さい。
【0036】
吸引アーム1は、第1態様で構成されたヘッド部5の替わりに、第2態様で構成されたヘッド部5Aを用いてもよい。
次に、第2態様を
図9及び
図10を参照して説明する。
図10に示されるヘッド部5Aの態様である第2態様では、吸引口19側から、メッシュ部6b、吸音部材7の順に配置されている。すなわち、第2態様は、メッシュカップ6及び吸音部材7のヘッド部5の軸線CL5方向における向きが、第1態様と逆向きになっている。
【0037】
まず、
図9に示されるように、底部62が吸引口19側となる向きにしたメッシュカップ6を、フード53に底部62側から挿入する。そして、雌ねじ部531aと雄ねじ部6aとを螺合させ、底部62がフード53の誘導端部532aに当接するまで螺進させる(矢印DR3参照)。
次いで、吸音部材7を、その第2端部7bがメッシュカップ6の段部6cに当接するまで押し込んで装着する(矢印DR3参照)。
【0038】
このように組み立てた、吸音部材7,メッシュカップ6,及びフード53の一体物を内カバー52の内側に挿入する(矢印DR5参照)。
挿入された一体物は、
図10に示されるように、吸音部材7の第1端部7aが内カバー52の第1段部52aに当接したとき、又は当接する直前で不図示のロック機構が作用して内カバー52に固定される。
【0039】
吸引機3の動作によって吸引される空気は、吸引口19から吸い込まれて吸気誘導部532を通り、メッシュ部6bを通過する。メッシュ部6bを通過した後、吸音部材7の内周面7cで囲まれた空間V7を通り、通気路AKを通り吸引機3に向かう。
【0040】
既述のように、空気は、メッシュ部6bを通過する際に他の部位を流れるときよりも大きな吸引音を生じる。第2態様では、メッシュ部6bは吸引口19の近くにあってメッシュ部6bに対する吸引口19側に吸音部材が配置されていないので、操作者には第1態様よりも大きな吸引音が聴取される。
その一方、第2態様は、メッシュ部6bが吸引口19に近い位置にあるので、操作者は、吸引機3の動作で吸い込まれてメッシュ部6bを通過できなかった不要物を容易に取り除くことができる。
【0041】
吸引アーム1は、設置環境、並びに、歯科治療及び施術の内容に応じて、第1態様及び第2態様のいずれかの態様を選択可能である。吸引音の低減を優先する場合は第1態様のヘッド部5を選択し、メッシュ部6bに引っ掛かった不要物の除去を優先する場合は第2態様を選択するとよい。
吸引アーム1は、ヘッド部として、第1態様のヘッド部5及び第2態様のヘッド部5Aのいずれかを、新たな部品を追加することなく簡単な組み立て作業の違いで選択可能となっている。
【0042】
図3に示されるように、ヘッド部5におけるフード53の誘導端部532aから内カバー52の第1段部52aまでの軸線CL5方向の距離を距離Ltとする。
吸音部材7の軸方向の長さを距離L1とし、メッシュカップ6の底部62から第1段部52aまでの軸線CL5方向の距離を距離L2とし、底部62の厚さを距離L3とすると、
長さL1≒距離L1+距離L2+距離L3
となっている。
また、雌ねじ部531aと雄ねじ部6aとの螺合部分SCが、長さL1の範囲の中央を含むように配置されている。
これにより、同一部材による第1態様及び第2態様の構成選択が可能になっている。
【0043】
図3及び
図10に示されるように、ヘッド部5,5Aは、距離L2がある程度の値に設定されているので、メッシュカップ6の底部62と第1段部52aとの間に空間V67が形成されている。そのため、吸音部材7とメッシュ部6bとは密着していない。
これにより、吸引されて流れる空気が抵抗が大きいメッシュ部6bを通過するときに乱流が生じにくく、メッシュ部6bで生じる吸気音の音量が抑制される。
距離L2の所定値は、例えば、底部62の厚さである距離L3以上に設定するとよい。
これにより、空間V67の容積は十分に増加し、吸引された空気は、吸音部材7の内側の空間V7を通過し、径が拡張した空間V67に入ってからメッシュ部6bに至るまでの間で気流が良好に整えられ流速もある程度低下するので、メッシュ部6bで生じる吸気音の音量をより抑制することができる。
【0044】
第1態様のヘッド部5と第2態様のヘッド部5Aとの吸気音量比較では、同一条件で、第2態様のヘッド部5Aよりも第1態様のヘッド部5の方が、概ね3db低減することが確認できた。
このように、吸引アーム1は、吸気音低減効果が顕著に得られる第1態様であるヘッド部5を提供するに留まらず、メンテナンス性に優れる第2態様であるヘッド部5Aとの選択を、吸引音量低減とメンテナンス性との優先度合に応じて同一部材で可能とするものであり、操作者にとっての利便性が大幅に向上している。
【0045】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0046】
吸音部材7は、素材によっては外径寸法のばらつきが比較的大きくなり、吸音部材7とメッシュカップ6のカップ基部61とを無理なく安定して強嵌合させることができない場合がある。この場合、吸音部材7を、外径D7が、カップ基部61の内径d7よりもばらつきを含めても必ず小さくなる基準寸法で形成し、メッシュカップ6に対し、径方向に遊びをもって挿入装着する態様としてもよい。この場合の吸音部材7の抜け止めは、比較的寸法を安定維持できる軸方向で行う。また、吸音部材7とカップ基部61との間に、隙間を埋める弾性部材(例えば、環状のスポンジ部材)などを介在させて径方向の遊びをなくしてもよい。
第2態様は、吸気音低減よりもメンテナンス性を優先して選択されるので、第2態様では、フード53に対し、吸音部材7を挿入せずメッシュカップ6のみを第1態様とは逆の向きに取り付けてもよい。
【0047】
吸引アーム1は、床FLの上に設置されるものに限定されない。例えば、歯科診療室の天井に対し吊り下げるように設置されるものであってもよい。
また、歯科診療室内を移動可能な筐体内に吸引機3を収容し、その筐体の上部に吸引アーム1を取り付けて、吸引機3と吸引アーム1とを筐体内の通気路で連結して、吸引アーム1と吸引機3を一体化した可動型システムとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 吸引アーム(歯科用口腔外吸引アーム)
10 台座
11~15 第1アーム部~第5アーム部
15a~15c 第1エルボ~第3エルボ
151 第1リンク軸関節
152 第1オフセット関節
153 第2オフセット関節
154 第2リンク軸関節
156 リリースボタン
16 スイッチリング
161 吸引スイッチ
17 ハンドル
171 照明スイッチ
18 照明装置
181 基板
182 発光素子
19 吸引口
21~23 第1関節~第3関節
3 吸引機
31 ポンプ
32 制御部
4 弁装置
40 モータ
41 第1通気管
42 第2通気管
43 排気管
5,5A ヘッド部
51 カバー
511 内周リブ
512 押さえリング
52 内カバー
52a 第1段部
52b 第2段部
521 外周リブ
53 フード
531 本体筒部
531a 雌ねじ部
532 吸気誘導部
532a 誘導端部
532c 内面
533 鍔部
6 メッシュカップ
6a 雄ねじ部
6b メッシュ部
6b1 貫通孔
6b2,6b3 面取り部
6c 段部
61 カップ基部
62 底部
7 吸音部材
7a 第1端部
7b 第2端部
7c 内周面
AK 通気路
AR1~AR3 第1領域~第3領域
CL5,CL6 軸線
CL21~CL23 第1軸線~第3軸線
d1,d7,d6 内径
D6 直径
FL 床
Lt,L1~L3 距離
SC 螺合部分
Sd1,Sd2 音
ST 歯科用口腔外吸引システム
V7,V532,V67 空間