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特開2023-162861歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162861
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/12 20060101AFI20231101BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61C17/12
A61C19/00 H
A61C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073547
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151427
【氏名又は名称】株式会社東京技研
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】庄司 欣央
(72)【発明者】
【氏名】田邉 友樹
(72)【発明者】
【氏名】新田 尚也
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA13
4C052GG02
4C052GG14
4C052GG24
4C052LL07
4C052NN07
(57)【要約】
【課題】使用される吸引アームの数に拘わらず、個々の吸引アームで診療に必要な吸引能力を達成する。
【解決手段】歯科用口腔外吸引システムは、複数の吸引アーム1と、通気管50、51を介して複数の吸引アーム1とそれぞれ接続され、複数の吸引アーム1から外気を吸引する吸引機3と、複数の吸引アーム1に対応して設けられ、通気管50、51の開閉を行う複数の弁装置と、を備えている。吸引機3は、モータで駆動されるポンプ30と、吸引機3による吸引圧が所定の目標圧力となるように、モータの回転数を制御する制御装置31と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に開口する吸引口をそれぞれ有する複数の吸引アームと、
通気管を介して前記複数の吸引アームとそれぞれ接続され、前記複数の吸引アームから外気を吸引する吸引機と、
前記複数の吸引アームに対応して設けられ、前記通気管の開閉を行う複数の弁装置と、を備え、
前記吸引機は、
モータで駆動されるポンプと、
前記吸引機による吸引圧が所定の目標圧力となるように、前記モータの回転数を制御する制御装置と、を有する
歯科用口腔外吸引システム。
【請求項2】
前記吸引機は、
前記吸引圧を検出する圧力センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記圧力センサによって検出される前記吸引圧が前記目標圧力となるように、前記モータの回転数を制御する
請求項1記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項3】
前記目標圧力は、
第1目標圧力と、前記第1目標圧力よりも高い第2目標圧力と、を含み、
前記制御装置は、
前記第1目標圧力及び前記第2目標圧力のうち、使用者によって選択された一方の値に基づいて、モータ制御を行う
請求項2記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項4】
前記複数の吸引アームのそれぞれは、
使用者によって操作され前記吸引アームによる吸引をオン及びオフするための吸引スイッチを有し、
前記制御装置は、
前記吸引スイッチによって前記吸引アームによる吸引がオンされたことを契機に、モータ制御を開始する
請求項2記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項5】
前記複数の弁装置の全てが、全閉状態から一定量だけ開いた所定開度へと動作することで、前記複数の吸引アームが設置された室内の換気を行う換気モードを有し、
前記制御装置は、
前記換気モードがオンされたことを契機に、モータ制御を開始する
請求項4記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記換気モードの実行中、前記圧力センサによって検出される前記吸引圧に基づいて、前記吸引アームの異常監視を行う
請求項5記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項7】
前記複数の吸引アームのそれぞれは、
使用者によって操作され前記吸引アームによる吸引をオン及びオフするための吸引スイッチを有し、
前記吸引スイッチの操作によって前記吸引アームによる吸引がオンされた場合、前記吸引スイッチが操作された前記吸引アームに対応する前記弁装置である対象弁装置は、全閉状態から全開状態へと切り替わる
請求項1記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項8】
前記吸引スイッチの操作によって前記吸引アームによる吸引がオンされると、前記対象弁装置は、前記吸引機に対してオン指令を出力し、
前記制御装置は、
前記オン指令の入力数に応じて、前記モータの回転数を制御する
請求項7記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項9】
前記吸引機は、
前記吸引圧を検出する圧力センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記オン指令の入力数と、前記圧力センサによって検出される前記吸引圧とに基づいて、前記吸引アームの異常監視を行う
請求項8記載の歯科用口腔外吸引システム。
【請求項10】
外気を吸引する複数の吸引アームが通気管を介して吸引機にそれぞれ接続され、使用者によって操作され前記吸引アームによる吸引をオン及びオフするための吸引スイッチを前記複数の吸引アームのそれぞれが有し、前記複数の吸引アームに対応して前記通気管の開閉を行う複数の弁装置が設けられた歯科用口腔外吸引システムの制御方法において、
前記吸引機は、
モータで駆動されるポンプを含み、
前記吸引スイッチによって前記吸引アームによる吸引がオンされたことを契機に、前記ポンプを駆動させ、
前記吸引機による吸引圧が所定の目標圧力となるように、前記モータの回転数を制御する
歯科用口腔外吸引システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歯科用口腔外バキューム装置(以下「吸引アーム」という)が記載されている。診療室には、複数台の吸引アームが設けられている。
【0003】
個々の吸引アームは、通気管を介して、診療室外の空間、例えば機械室に設置された吸引機に接続されている。吸引アームは、吸引機が駆動することにより、吸引アームの先端部に開口する吸引口から外気を吸引する。吸引機は、モータで駆動されるポンプを含み、所定の目標回転数を維持するように、モータの回転数が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5627095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吸引を行う吸引アームの数が増えると、吸引機の吸引圧が低下するため、個々の吸引アームから吸い込まれる外気の流量が低下してしまう。そのため、診療に必要な吸引を行うことが難しくなってしまうことがある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、使用される吸引アームの数に拘わらず、個々の吸引アームで診療に必要な吸引能力を達成することができる歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る歯科用口腔外吸引システムは、
先端部に開口する吸引口をそれぞれ有する複数の吸引アームと、
通気管を介して複数の吸引アームとそれぞれ接続され、複数の吸引アームから外気を吸引する吸引機と、
複数の吸引アームに対応して設けられ、通気管の開閉を行う複数の弁装置と、を備え、
吸引機は、
モータで駆動されるポンプと、
吸引機による吸引圧が所定の目標圧力となるように、モータの回転数を制御する制御装置と、を有する。
【0008】
また、本発明の一態様に係る歯科用口腔外吸引システムの制御方法は、
外気を吸引する複数の吸引アームが通気管を介して吸引機にそれぞれ接続され、使用者によって操作され吸引アームによる吸引をオン及びオフするための吸引スイッチを複数の吸引アームのそれぞれが有し、複数の吸引アームに対応して通気管の開閉を行う複数の弁装置が設けられた歯科用口腔外吸引システムの制御方法であって、
吸引機は、
モータで駆動されるポンプを含み、
吸引スイッチによって吸引アームによる吸引がオンされたことを契機に、ポンプを駆動させ、
吸引機による吸引圧が所定の目標圧力となるように、モータの回転数を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用される吸引アームの数に拘わらず、個々の吸引アームで診療に必要な吸引能力を達成することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムを示す構成図である。
図2図2は、歯科用口腔外吸引システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、歯科用口腔外吸引システムの動作を示すシーケンスチャートである。
図4図4は、第2の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムを示す構成図である。
図5図5は、歯科用口腔外吸引システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システム及び歯科用口腔外吸引システムの制御方法を説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1及び図2に示すように、歯科用口腔外吸引システムは、複数の吸引アーム1、複数の弁装置2、及び吸引機3を主体に構成されている。図1では、3台の吸引アーム1、及び3台の弁装置2が例示されているが、これに限定されない。
【0013】
吸引アーム1のそれぞれと吸引機3とは、通気管50、51を介して接続されている。具体的には、吸引アーム1と弁装置2との間は第1通気管50で接続され、各弁装置2と吸引機3との間は、共通の第2通気管51で接続されている。3台の吸引アーム1、及び3台の弁装置2は、診療室内に設置されている。吸引機3は、診療室とは別の空間、例えば機械室などに設置されている。第2通気管51は床下に敷設されている。後述する様に、吸引アーム1が診療室の天井から吊り下がるように配設される場合、第2通気管51は、天井裏に敷設されてもよい。
【0014】
個々の吸引アーム1は、診療室の床上に立設されている。なお、吸引アーム1は、診療室の天井から吊り下がるように配設されてもよい。吸引アーム1は、いわゆる垂直多関節型の態様を有し、複数のアーム部が関節を介して接続され姿勢変換可能に構成されている。吸引アーム1の先端部には、吸引口10が開口している。吸引アーム1の内部には、吸引口10からアーム基部まで連続する内部管路(図示せず)が形成されている。内部管路の一端は吸引口10に接続して外部空間に開口し、内部管路の他端は第1通気管50に接続している。
【0015】
個々の吸引アーム1は、使用者によって操作される吸引スイッチ11を有している。吸引スイッチ11は、吸引アーム1による吸引をオン及びオフするための操作スイッチである。吸引スイッチ11は、例えば近接センサで構成されるが、これに限定されない。吸引スイッチ11に対して手をかざすことで、吸引スイッチ11は、所定の信号を弁装置2に出力する。
【0016】
複数の弁装置2は、複数の吸引アーム1と一対一となるように、複数の吸引アーム1と対応して設けられている。個々の弁装置2は、第1通気管50の開閉を行う。弁装置2は、例えば診療室の床上に設置されているが、弁装置2の全部の要素又は一部の要素は、床下に設置されてもよい。吸引アーム1が診療室の天井から吊り下がるように配設される場合、弁装置2は、天井面に敷設されてもいいし、弁装置2の全部の要素又は一部の要素が天井裏に設置されてもよい。
【0017】
弁装置2は、開閉弁20と、モータ21と、制御基板22と、第1スイッチ23と、第2スイッチ24とを備えている。
【0018】
開閉弁20は、第1通気管50を開閉する。モータ21は、開閉弁20を回転させることにより、開閉弁20の開閉を行う。モータ21は、例えばシンクロナスモータである。
【0019】
制御基板22は、弁装置2を制御する。具体的には、制御基板22には、吸引スイッチ11からの信号が入力される。制御基板22は、この信号に基づいて、開閉弁20の開閉状態を制御する。また、制御基板22は、この信号に基づいて、吸引機3を動作させたり、吸引機3の動作を停止させたりするための信号を出力する。
【0020】
開閉弁20が全閉状態に制御されると、開閉弁20は最小開度である0°となり、流れに対して直交する向きとなる。また、開閉弁20が全開状態に制御されると、開閉弁20は最大開度である90°となり、流れに対して平行する向きとなる。
【0021】
制御基板22には、第1スイッチ23及び第2スイッチ24からの信号が入力される。第1スイッチ23は、モータ21を逆転させて開閉弁20を回転させたときに、開閉弁20が最小開度に到達したことを検出するスイッチである。第2スイッチ24は、モータ21を正転させて開閉弁20を回転させたときに、開閉弁20が最大開度に到達したことを検出するスイッチである。制御基板22は、第1及び第2スイッチ23、24から出力される信号に基づいてモータ21の回転及び停止を切り換え、開閉弁20の開閉状態(開度)を制御する。
【0022】
吸引機3は、第1及び第2通気管50、51を介して複数の吸引アーム1とそれぞれ接続されている。吸引機3は、複数の吸引アーム1から外気を吸引する。
【0023】
吸引機3は、モータ(図示しない)で駆動されるポンプ30と、モータの回転数を制御する制御装置31とを有している。ポンプ30が動作することにより、吸引口10の周囲の外気が、吸引アーム1、第1通気管50、及び第2通気管51を介して吸引される。吸引された空気は、不図示のフィルタによって診療などで生じた切削塵埃などが除去された後、外部の空間に排出される。
【0024】
また、吸引機3は、圧力センサ32を備えている。圧力センサ32は、ポンプ30による吸引圧を検出するセンサである。例えば、圧力センサ32は、フィルタ近傍に配置されている。圧力センサ32によって検出された信号は、制御装置31に入力される。
【0025】
以下、図3を参照し、第1の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムの制御方法を説明する。以下の説明では、診療室の3つの吸引アーム1に対応する、3つの弁装置2を、第1弁装置2A、第2弁装置2B、及び第3弁装置2Cとして区別する。
【0026】
歯科診療に伴い、吸引アーム1を利用した吸引を行う場合、使用者は、吸引アーム1に設けられた吸引スイッチ11に手をかざし、吸引アーム1による吸引をオンする操作を行う。これにより、吸引スイッチ11からオン信号が出力される。以下の説明では、第1弁装置2Aに対応する吸引アーム1に設けられた吸引スイッチ11が操作されたものとする。
【0027】
吸引スイッチ11から出力されたオン信号は、第1弁装置2Aの制御基板22へと入力される(S210)。第1弁装置2Aの制御基板22は、吸引機3に対して、吸引機3を動作させるためのオン指令を出力する(S211)。
【0028】
吸引機3の制御装置31にオン指令が入力されると、制御装置31は、ポンプ30のモータ制御を開始して、ポンプ30を駆動する(S100)。具体的には、制御装置31は、圧力センサ32によって検出される吸引圧が、予め定められた目標圧力(一定圧力)を維持するように、モータの回転数を制御する(圧力一定制御)。目標圧力は、診療時の吸引アーム1の使用において吸引口10から必要な流量の外気が吸引されることを念頭に設定されている。このように、吸引機3の制御装置31は、吸引スイッチ11によって吸引アーム1による吸引がオンされたことを契機に、モータ制御を開始する。
【0029】
また、第1弁装置2Aの制御基板22は、モータ21を駆動して、第1弁装置2Aの開閉弁20を全開状態に設定する(S212)。
【0030】
第1弁装置2Aの開閉弁20が全開状態となることで、吸引スイッチ11がオンされた吸引アーム1の吸引口10から外気が吸引され、第1通気管50、第1弁装置2A、及び第2通気管51を通って吸引機3に入る。吸引された外気は、吸引機3の内部のフィルタを通って清浄化されて、外部に排気される。吸引スイッチ11が操作された吸引アーム1では、第1弁装置2Aの開閉弁20が全開状態に設定されているので、診療に必要な流量で吸引口10から外気が吸引される。
【0031】
さらに、歯科診療に伴い、新たな吸引アーム1が利用される場合、使用者は、吸引アーム1に設けられた吸引スイッチ11を操作する。これにより、吸引スイッチ11からオン信号が出力される。以下の説明では、第2弁装置2Bに対応する吸引アーム1に設けられた吸引スイッチ11が操作されたものとする。
【0032】
吸引スイッチ11から出力されたオン信号は、第2弁装置2Bの制御基板22へと入力される(S240)。第2弁装置2Bの制御基板22は、吸引機3に対して、吸引機3を動作させるためのオン指令を出力する(S241)。
【0033】
吸引機3の制御装置31にオン指令が入力されるが、既にポンプ30は駆動されているので、制御装置31は、ポンプ30の駆動を継続する(S102)。制御装置31は、圧力センサ32によって検出される吸引圧が目標圧力を維持するように、モータの回転数を制御する(圧力一定制御)。
【0034】
また、第2弁装置2Bの制御基板22は、モータ21を駆動して、第2弁装置2Bの開閉弁20を全開状態に設定する(S242)。
【0035】
第2弁装置2Bの開閉弁20が全開状態となることで、吸引スイッチ11がオンされた吸引アーム1の吸引口10から外気が吸引され、第1通気管50、第2弁装置2B、及び第2通気管51を通って吸引機3に入る。吸引された外気は、吸引機3の内部のフィルタを通って清浄化されて、外部に排気される。吸引スイッチ11が操作された吸引アーム1では、第2弁装置2Bの開閉弁20が全開状態に設定されているので、診療に必要な流量で吸引口10から外気が吸引される。
【0036】
このように本実施形態によれば、吸引機3の吸引圧が一定となるように制御されている。診療において同時に使用される吸引アーム1の数が増え、吸引アーム1の吸引圧が低下したとしても、目標圧力を維持するようにモータの回転数が可変制御されることとなる。これにより、診療に使用される吸引アーム1の数に関わらず、個々の吸引アーム1から吸引される外気の流量を一定に維持することができる。個々の吸引アームで診療に必要な吸引能力を得ることができ、使用者にとって使い勝手よいシステムを提供することができる。
【0037】
上述した第1の実施形態は、以下に示すような代替的な方法を採用することができる。
【0038】
目標圧力は、診療時に必要な吸引力を得るための第1目標圧力の他、この第1目標圧力よりも高い第2目標圧力を含んでもよい。そして、制御装置31は、第1目標圧力及び第2目標圧力のうち、使用者によって選択された一方の値に基づいて、モータ制御を行ってもよい。これにより、使用者のニーズに応じた目標圧力を設定することができる。
【0039】
上述した実施形態では、圧力センサ32によって検出される吸引圧に基づいて、圧力一定制御を実現した。しかしながら、1個の吸引アーム1を作動したときの吸引圧の低下量は予め予測できる。そこで、制御装置31は、弁装置2から入力されるオン指令の入力数に応じて、モータの回転数を増減させてもよい。
【0040】
(第2の実施形態)
以下、図4を参照し、第2の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムについて説明する。第1の実施形態と重複する説明は省略し、相違点を中心に説明を行う。
【0041】
第2の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムは、操作リモコン4をさらに備えている。
【0042】
操作リモコン4は、換気モードをオン及びオフするための装置である。換気モードは、複数の吸引アーム1の吸引力を利用して、診療室内の換気を行うモードである。操作リモコン4は、診療室内において使用される。
【0043】
操作リモコン4は、リモコンスイッチ40と、送信機41とを備えている。リモコンスイッチ40は、使用者に操作され、換気モードのオン及びオフを切り換えるための操作スイッチである。使用者がリモコンスイッチ40を操作した場合、送信機41は、リモコンスイッチ40の操作に応じた所定の信号、具体的には、換気モードのオン信号又は換気モードのオフ信号を出力する。
【0044】
本実施形態の弁装置2は、受信機25をさらに備えている。受信機25は、操作リモコン4から送信される信号を受信する。受信機25は、操作リモコン4からの信号を無線で受信する構成であるが、有線方式であってもよい。
【0045】
弁装置2の制御基板22には、吸引スイッチ11からの信号、及び受信機25が受信した操作リモコン4からの信号が入力される。制御基板22は、これらの信号に基づいて、開閉弁20の開閉状態を制御する。また、制御基板22は、これらの信号に基づいて、吸引機3を動作させたり、吸引機3の動作を停止させたりするための信号を出力する。
【0046】
また、制御基板22は、開閉弁20が全閉状態にある状態においてモータ21を所定時間(微少時間)だけ駆動することで、開閉弁20を微少量だけ開いた状態(微少開状態)へと設定することができる。開閉弁20が微少開状態に設定されると、開閉弁20は所定の微少開度となる。
【0047】
以下、図5を参照し、第2の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムの制御方法を説明する。なお、第2の実施形態に係る歯科用口腔外吸引システムの制御方法が、第1の実施形態のそれと相違する点は換気モードでの動作を含む点である。
【0048】
まず、3つの吸引アーム1を利用して診療室の換気を行う場合、使用者は、操作リモコン4のリモコンスイッチ40を用いて、換気モードをオンする操作を行う。これにより、操作リモコン4の送信機41から、換気モードのオン信号が送信される。
【0049】
操作リモコン4から送信された換気モードのオン信号は、第1から第3弁装置2A、2B、2Cの各受信機25によって受信される(S200、S230、S260)。受信された換気モードのオン信号は、それぞれの制御基板22へと入力される。
【0050】
第1から第3弁装置2A、2B、2Cの各制御基板22は、吸引機3に対して、吸引機3を動作させるためのオン指令を出力する(S201、S231、S261)。なお、吸引機3に対するオン指令の出力は、全ての弁装置2A、2B、2Cが行わず、予め設定された一つの弁装置のみが行ってもよい。
【0051】
吸引機3の制御装置31にオン指令が入力されると、制御装置31は、ポンプ30のモータ制御を開始して、ポンプ30を駆動する(S105)。具体的には、制御装置31は、圧力センサ32によって検出される吸引圧が目標圧力を維持するように、モータの回転数を制御する(圧力一定制御)。このように、制御装置31は、操作リモコン4によって換気モードがオンされたことを契機に、モータ制御を開始する。
【0052】
また、第1から第3弁装置2A、2B、2Cの各制御基板22は、モータ21を所定時間だけ駆動して、弁装置2の開閉弁20を微少開状態に設定する(S202、S232、S262)。
【0053】
各弁装置2A、2B、2Cの開閉弁20が微少開状態となることで、各吸引アーム1の吸引口10から外気が吸引され、第1通気管50、弁装置2A、2B、2C、及び第2通気管51を通って吸引機3に入る。吸引された外気は、吸引機3の内部のフィルタを通って清浄化されて、外部に排気される。このとき、各弁装置2A、2B、2Cが微少開状態に設定されているので、個々の吸引アーム1では、吸引口10から僅かな流量で外気が吸引される。
【0054】
モータ制御を開始すると、制御装置31は、圧力センサ32によって検出される吸引圧に基づいて、吸引機3の異常監視を行う(S106)。換気モードがオンされると、吸引アーム1から外気が吸引される。診療室内には診療器具をはじめ、様々な物があるため、これらの物が予期せずに吸い込まれてしまう可能性がある。また、第2通気管51の異常又は管路の閉塞、吸引機3のフィルタの目詰まりなども考えられる。そこで、制御装置31は、圧力センサ32によって検出される吸引圧の変位に基づいて、吸引機3の吸引異常を判定する。吸引機3の異常を判定した場合、制御装置31は、図示しない警報ランプを点灯する、或いは警報音を出力するなどのアラームを行うとともに、アラームのログを記録する。また、制御装置31は、モータの回転数を低減させて、過負荷によるモータ温度上昇を抑制する。
【0055】
一方、吸引異常を判定しない場合、吸引機3の制御装置31は、上述した通り、所定の目標圧力を維持するように、モータの回転数を制御する(圧力一定制御)。
【0056】
つぎに、歯科診療に伴い、吸引アーム1を利用した通常の吸引を行う場合、使用者は、吸引アーム1に設けられた吸引スイッチ11に手をかざし、吸引アーム1による吸引をオンする操作を行う。これにより、吸引スイッチ11からオン信号が出力される。以下の説明では、第1弁装置2Aに対応する吸引アーム1に設けられた吸引スイッチ11が操作されたものとする。
【0057】
吸引スイッチ11から出力されたオン信号は、第1弁装置2Aの制御基板22へと入力される(S210)。第1弁装置2Aの制御基板22は、吸引機3に対して、吸引機3を動作させるためのオン指令を出力する(S211)。
【0058】
吸引機3の制御装置31にオン指令が入力されると、制御装置31は、ポンプ30の駆動を継続する(S107)。制御装置31は、圧力センサ32によって検出される吸引圧が目標圧力を維持するように、モータの回転数を制御する(圧力一定制御)。
【0059】
また、第1弁装置2Aの制御基板22は、モータ21を駆動して、開閉弁20を全開状態に設定する(S212)。
【0060】
第1弁装置2Aの開閉弁20が全開状態となることで、吸引スイッチ11がオンされた吸引アーム1の吸引口10から外気が吸引され、第1通気管50、第1弁装置2A、及び第2通気管51を通って吸引機3に入る。吸引された外気は、吸引機3の内部のフィルタを通って清浄化されて、外部に排気される。吸引スイッチ11が操作された吸引アーム1では、第1弁装置2Aの開閉弁20が全開状態に設定されているので、診療に必要な流量で吸引口10から外気が吸引される。一方、吸引スイッチ11が操作されていない吸引アーム1では、第2及び第3弁装置2B、2Cの開閉弁20が微少開状態に設定されたままなので、吸引口10から僅かな流量で外気が吸引されるままの状態が維持される。
【0061】
このように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏するとともに、以下に示す効果をさらに奏する。
【0062】
このように本実施形態によれば、操作リモコン4を操作して換気モードをオンすることで、診療室にある全ての弁装置2を開状態へと一斉に切り換え、全ての吸引アーム1で一斉に吸引を行うことができる。吸引アーム1毎に吸引スイッチ11を操作する必要がないので、使用者の利便性を向上させることができる。
【0063】
換気モードでは、全ての弁装置2において、開閉弁20が微少開状態に設定されるので、吸引口10からは僅かな流量で外気が吸引される。これにより、吸引口10における騒音を低減でき、長時間にわたり換気を継続することができる。加えて、吸引機3の回転数を下げる必要もないので、診療において吸引アーム1を利用する場合には、吸引アーム1の吸引力が低下することなく、必要な性能を達成することができる。
【0064】
以上に示すように、本実施形態に係る歯科用口腔外吸引システム及びその制御方法によれば、診療室内の換気を積極的に促すことができ、快適な診療環境を実現することができる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、吸引機3の制御装置31は、操作リモコン4によって換気モードがオンされたことを契機に、モータ制御を開始している。しかしながら、換気モードがオンされることなく、吸引スイッチ11によって吸引アーム1による吸引がオンされた場合には、吸引機3の制御装置31は、通常通り、吸引アーム1による吸引オンを契機に、モータ制御を開始することとなる。
【0066】
上述した第2の実施形態は、以下に示すような代替的な方法を採用することができる。
【0067】
上述した実施形態では、リモコンスイッチ40によってオン、オフされる換気モードは1種類であるが、歯科用口腔外吸引システムは、「弱」及び「強」からなる2種類の換気モードを備えていてもよい。この場合、使用者は、リモコンスイッチ40によって、「弱」及び「強」の2種類の換気モードのうち、いずれか一方の換気モードを選択することができる。
【0068】
例えば、「弱」の換気モードがオンされた場合、各弁装置2の制御基板22は、モータ21を所定時間だけ駆動して、開閉弁20を微少開状態に設定する(上述したS202、S232、S262と同様)。一方、「強」の換気モードがオンされた場合、各弁装置2の制御基板22は、モータ21を駆動して、開閉弁20を全開状態に設定する、といった如くである。このとき、吸引機3の制御装置31は、換気モードの種類に拘わらず、常に同一の目標圧力となるようにモータの回転数を制御する。
【0069】
ただし、「弱」及び「強」の換気モードの切り換えは、開閉弁20の開閉状態によって切り換える方法に限らず、吸引機3におけるモータの回転数を切り換える方法であってもよい。例えば、吸引機3の制御装置31は、「弱」の換気モードがオンの場合には、相対的に低い目標圧力(第1目標圧力)を維持するようにモータの回転数を制御し、「強」の換気モードがオンの場合には、相対的に高い目標圧力(第2目標圧力)を維持するようにモータの回転数を制御する、といった如くである。また、開閉弁20の開閉状態を切り換える方法と併せて、吸引機3におけるモータの回転数を切り換える方法を行ってもよい。
【0070】
操作リモコン4は、リモコンスイッチ40に代えて、或いはリモコンスイッチ40とともに、診療室内の環境を示す状態量、例えば二酸化炭素濃度を検出する環境センサを備えていてもよい。この場合、操作リモコン4は、環境センサの検出結果に応じて、例えば二酸化炭素濃度が一定閾値以上となった場合に、換気モードをオンする信号を送信してもよい。
【0071】
また、操作リモコン4は、二酸化炭素濃度が第1閾値以上となった場合に、「弱」の換気モードをオンする信号を送信し、二酸化炭素濃度が第2閾値以上となった場合に、「強」の換気モードをオンする信号を送信してもよい。これにより、診療室内の環境に応じて吸引アーム1から吸引される流量が変更されるので、適切な換気量を自動的に調整することができる。
【0072】
また、換気モード中に異常監視を行う以外にも、吸引アーム1の吸引スイッチ11がオンされた以降も、異常監視を行ってもよい。通常、吸引スイッチ11が操作され、新たな吸引アーム1が動作するとき以外は、吸引圧の変動は少ないと予想される。そこで、残余の吸引スイッチ11が操作されていないにも関わらず、吸引圧が変動したときには、異常を判定してもよい。
【0073】
また、第1の実施形態と同様、制御装置31は、圧力センサ32を使用せずに、弁装置2から入力されるオン指令の入力数に応じて、モータの回転数を増減させてもよい。
【0074】
本発明の実施形態は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 吸引アーム
10 吸引口
11 吸引スイッチ
2 弁装置
20 開閉弁
21 モータ
22 制御基板
23 第1スイッチ
24 第2スイッチ
25 受信機
3 吸引機
30 ポンプ
31 制御装置
32 圧力センサ
4 操作リモコン
40 リモコンスイッチ
41 送信機
図1
図2
図3
図4
図5