(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162862
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20231101BHJP
B01D 53/74 20060101ALI20231101BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20231101BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20231101BHJP
F01N 3/02 20060101ALI20231101BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20231101BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/74
B01D53/92 240
B01D53/92 300
B01D53/22
F01N3/02 101G
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073550
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】福村 琢
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦幸
(72)【発明者】
【氏名】安田 圭吾
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4D006
4G146
【Fターム(参考)】
3G091AA06
3G091AB05
3G091AB11
3G091AB15
3G091BA36
3G091GB09Y
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3G091HB05
4D002AA02
4D002AA09
4D002AA12
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4D002AC04
4D002AC07
4D002AC10
4D002BA04
4D002BA12
4D002BA13
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4D002BA20
4D002CA13
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4D002EA01
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4D002GB03
4D002GB06
4D002GB20
4D002HA03
4D002HA08
4D006GA41
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4D006PB19
4D006PB64
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC12
4G146JC13
4G146JC25
4G146JC27
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の回収にて燃焼排ガスの水蒸気濃度を低減しつつ、エネルギー効率を高めること。
【解決手段】ガス処理システム(1)は、エンジン(3)から排出される排ガス(g)が供給され、供給された排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部(50)と、エンジンから供給される燃焼排ガスを海水(a)との間で熱交換して冷却する冷却器(23)と、冷却器を経由した後の排ガスを加熱する再熱器(24)とを備えている。再熱器は、冷却器を経由する前の排ガスによって、冷却器を経由した後の排ガスを加熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器から排出される燃焼排ガスが供給され、供給された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部と、
前記燃焼器から供給される前記燃焼排ガスを冷媒との間で熱交換して冷却する第1間接熱交換器と、
前記第1間接熱交換器を経由した後の前記燃焼排ガスを加熱する第2間接熱交換器と、を備えたガス処理システムであって、
前記第2間接熱交換器は、前記第1間接熱交換器を経由する前の前記燃焼排ガスによって、前記第1間接熱交換器を経由した後の前記燃焼排ガスを加熱することを特徴とするガス処理システム。
【請求項2】
前記第1間接熱交換器及び前記第2間接熱交換器は、単一のタンクの内部に設けられ、前記タンク内に流れる前記燃焼排ガスが前記第1間接熱交換器で冷却され、且つ、前記第2間接熱交換器で加熱されることを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項3】
前記タンクは、前記第1間接熱交換器での前記燃焼排ガスの冷却により凝縮した水分を貯留する貯留部を備えていることを特徴とする請求項2に記載のガス処理システム。
【請求項4】
前記第1間接熱交換器及び前記第2間接熱交換器は、前記燃焼排ガスが流れる配管で接続され、
前記配管には、前記第1間接熱交換器での前記燃焼排ガスの冷却により凝縮した水分を排出する分岐管が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項5】
前記二酸化炭素回収部は、前記燃焼排ガスを、二酸化炭素を含む透過成分と、前記透過成分よりも二酸化炭素濃度の低い非透過成分とに分離する分離装置を備えていることを特徴とする請求項1または請求項4に記載のガス処理システム。
【請求項6】
前記分離装置は、第1分離部および第2分離部を含み、
前記第1分離部は、前記燃焼排ガスを、二酸化炭素を含む第1透過成分と、前記第1透過成分よりも二酸化炭素濃度の低い第1非透過成分とに分離し、
前記第2分離部は、前記第1透過成分を、前記第1透過成分よりも二酸化炭素濃度の高い第2透過成分と、前記第2透過成分よりも二酸化炭素濃度の低い第2非透過成分とに分離し、前記第2透過成分を前記透過成分とし、
前記第1間接熱交換器及び前記第2間接熱交換器は、前記第1分離部から前記第2分離部に前記第1透過成分が流れる流路に設けられることを特徴とする請求項5に記載のガス処理システム。
【請求項7】
前記第1間接熱交換器に冷媒を供給する冷媒供給部と、前記冷媒供給部を制御する制御部とを更に備え、
前記制御部は、前記燃焼器の運転負荷に応じて前記冷媒供給部が供給する冷媒の供給量及び温度の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1または請求項4に記載のガス処理システム。
【請求項8】
前記燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素以外の不純物の少なくとも一部を処理する前処理部と、
前記第1間接熱交換器に冷媒を供給する冷媒供給部と、前記冷媒供給部を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記前処理部の運転負荷に応じて前記冷媒供給部が供給する冷媒の供給量及び温度の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1または請求項4に記載のガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの二酸化炭素を回収するガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各国でカーボンプライシングや炭素税が検討され、二酸化炭素(CO2)排出削減技術の必要性が増しており、二酸化炭素排出源からの二酸化炭素分離回収についての技術開発が行われている。具体例を挙げると、火力発電やバイオマス発電のボイラ燃焼排ガス、船舶エンジンの燃焼排ガス、ごみ焼却設備の燃焼排ガス等を対象にした二酸化炭素分離システムが検討されている。
【0003】
特に海運業界では、二酸化炭素排出削減の規制が年々強化されている。具体的には、新船に関するエネルギー効率設計指標(EEDI:Energy Efficiency Design Index)に加え、既存船のエネルギー効率指標(EEXI:Energy Efficiency Existing Ship Index)も決定され、重油を燃料とする既存船のCO2排出削減ニーズが顕在化している。
【0004】
ここで、特許文献1は、燃焼器から排出される燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置を開示している。特許文献1において、燃焼排ガスを室温程度まで冷却することで、燃焼排ガスに含まれる水分を除去している。これにより、二酸化炭素を吸着する吸着剤にて水分の吸着量を少なくすることができ、吸着剤での二酸化炭素の吸着性能が低下することを抑制可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような二酸化炭素の回収では、燃焼排ガスの冷却にて、エネルギー消費量の低減を図ることが求められる。また、二酸化炭素を回収する装置では、二酸化炭素回収段階での吸着剤や分離膜の劣化を抑制すべく燃焼排ガスの水蒸気濃度の低減が求められる。よって、二酸化炭素の回収技術にあっては、燃焼排ガスの水蒸気濃度の低減と、高エネルギー効率とを両立することが求められる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素の回収にて燃焼排ガスの水蒸気濃度を低減しつつ、エネルギー効率を高めることができるガス処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガス処理システムは、燃焼器から排出される燃焼排ガスが供給され、供給された前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部と、前記燃焼器から供給される前記燃焼排ガスを冷媒との間で熱交換して冷却する第1間接熱交換器と、前記第1間接熱交換器を経由した後の前記燃焼排ガスを加熱する第2間接熱交換器と、を備えたガス処理システムであって、前記第2間接熱交換器は、前記第1間接熱交換器を経由する前の前記燃焼排ガスによって、前記第1間接熱交換器を経由した後の前記燃焼排ガスを加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1間接熱交換器によって冷却及び水分を除去した後の燃焼排ガスを第2間接熱交換器で加熱して二酸化炭素回収部に供給される燃焼排ガスの水蒸気濃度を低減することができる。しかも、第2間接熱交換器による加熱では燃焼器から排出される燃焼排ガスの熱を利用でき、ヒータ等の他のエネルギー供給が必要な手段を用いずにエネルギー消費量の低減を図ることができる。更に、第2間接熱交換器による加熱にて第1間接熱交換器で冷却される前の燃焼排ガスを熱源とする、言い換えると、第1間接熱交換器による冷却前の燃焼排ガスを第2間接熱交換器で冷却している。従って、第1間接熱交換器における冷却での熱交換量を抑制でき、これによっても、エネルギー消費量の低減を図ることができる。このように、本発明においては、二酸化炭素回収部における処理での燃焼排ガスの水蒸気濃度の低減と、効率的なエネルギー消費との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係るガス処理システムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る前処理部の機能ブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態のガス処理方法のフロー図である。
【
図4】第2の実施の形態に係るガス処理システムの一部を示す概略構成図である。
【
図5】変形例にかかる冷却再熱部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るガス処理システムの一例を示す概略構成図である。なお、本実施の形態に係るガス処理システムとしては、燃焼器として船舶に使用されるエンジンから排出される排ガスの二酸化炭素を回収するシステムを考える。ただし、これに限られず、本実施の形態に係るガス処理システムは、火力発電プラントや化学工業プラント、廃棄物焼却施設における排ガスの処理に適用可能である。
【0012】
図1は、実施の形態に係るガス処理システムの一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、ガス処理システム1は、燃焼排ガス(以下、「排ガス」と称する)gの発生源となるエンジン(燃焼器)3と、前処理部10と、冷却再熱部20と、二酸化炭素回収部50とを備えている。
【0013】
エンジン3は、主機エンジンであってよく、補機エンジンであってもよい。主機エンジンは、主として船舶が航行中に稼働される。補機エンジンは、主として船舶が停泊中に稼働される。エンジン3には、燃料タンク(不図示)に貯留される燃料が供給される。エンジン3は、運転負荷として回転数を検知する機能を備え、検知結果を後述する通信部63を介して制御部61に出力する。なお、本実施の形態のガス処理システム1を各種プラント等に適用する場合には、エンジン3に代えてボイラを用いてもよい。
【0014】
前処理部10は、冷却再熱部20に流入する排ガスgの前処理を実施する。前処理部10は、排ガスgに含まれる二酸化炭素(CO2)以外の不純物の少なくとも一部を処理する。不純物には、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)または粒子状物質(PM(Particulate matter))が含まれてよい。
【0015】
図2は、前処理部の構成の一例を示す図である。前処理部10は、窒素酸化物処理装置12、排ガス排熱利用装置13、除塵装置14、及び硫黄酸化物処理装置15を備えている。なお、前処理部10は、上記各装置12~15の少なくとも1つを有する構成に変更してもよい。
【0016】
窒素酸化物処理装置12は、エンジン3から供給される排ガスgに含まれる窒素酸化物(NOx)を処理する。窒素酸化物(NOx)を処理するとは、窒素酸化物(NOx)を除去することを指してよい。窒素酸化物処理装置12は、脱硝装置であってよい。該脱硝装置は、例えば選択式触媒還元脱硝(SCR(Selective Catalytic Reduction))装置である。なお、前処理部10が窒素酸化物処理装置12を有することに代えて、エンジン3が排気再循環(EGR(Exhaust Gas Recirculation))の機能を有していてもよい。窒素酸化物処理装置12は、選択性触媒還元脱硝装置を用いる際、エンジンの運転負荷に応じて投入する触媒を用いる場合には触媒量、反応活性剤を用いる場合には反応活性剤の添加量を検知する機能を備え、検知結果を後述する通信部63を介して制御部61に出力する。
【0017】
排ガス排熱利用装置13は、エンジン3と除塵装置14との間に設けられ、排ガスgの熱を吸収して蒸気を発生させる。排ガス排熱利用装置13は、エコノマイザであってよい。
【0018】
除塵装置14は、冷却再熱部20に供給される前の排ガスgに含まれる粒子状物質(PM)を除去する。除塵装置14は、電気集塵機(ESP(Electrostatic Precipitator))、ディーゼル・パーティキュレート・フィルタ(DPF(Diesel Paticulate Filter))または活性炭フィルタであってよい。
【0019】
硫黄酸化物処理装置15は、窒素酸化物処理装置12及び除塵装置14を経た後の排ガスgに含まれる硫黄酸化物(SOx)を処理する。硫黄酸化物(SOx)を処理するとは、硫黄酸化物(SOx)を除去することを指してよい。ガス処理システム1が船舶に搭載される場合、硫黄酸化物処理装置15は、該船舶に搭載される湿式のスクラバであってよい。
【0020】
図1に戻り、冷却再熱部20は、単一のタンク21と、タンク21の内部に設けられる冷却器(第1間接熱交換器)23及び再熱器(第2間接熱交換器)24と、ミストセパレータ25とを備えている。
【0021】
タンク21は、排ガスgが流入するタンク入口26と、タンク21内で後述する処理が実施された排ガスgが流出するタンク出口27とを備えている。タンク入口26に流入する排ガスgは、エンジン3から排出及び供給されて前処理部10で処理された排ガスgとされる。
【0022】
タンク21内にて、タンク入口26の下方に再熱器24が配置され、再熱器24の下方に冷却器23が配置されている。また、タンク21の底部には滴下した凝縮水Wを貯留する貯留部28が形成される。よって、タンク21において、上から下に向かって、タンク入口26、再熱器24、冷却器23、貯留部28の順番に並んで配置されており、かかる並び順に排ガスgが流れて通過するよう設けられる。
【0023】
貯留部28は、再熱器24及び冷却器23の直下から横方向にはみ出す大きさに設けられている。タンク21内にて、貯留部28に貯留された凝縮水Wに接した排ガスgは折り返され、
図1中左側にて上向きに形成されたタンク出口27から流出する。冷却器23内における排ガスgが冷却凝縮する際の凝縮水と副生ガス(例えば、未反応のアンモニア)との気液接触に加えて、貯留部28にて、貯留された凝縮水Wに排ガスgが接することで、排ガスg中に混入する副生ガス(例えば、未反応のアンモニア)を溶解回収して除去することができる。
【0024】
タンク出口27には中継配管29が接続され、中継配管29の中途にミストセパレータ25が設けられている。また、中継配管29におけるミストセパレータ25の下流側に第1温度センサ31が設けられている。第1温度センサ31は、タンク出口27及びミストセパレータ25を通過後、再熱器24内に流入する前の排ガスgの温度を測定する。
【0025】
再熱器24には、タンク21を内外に貫通する管状の再熱器入口33及び再熱器出口34が設けられる。冷却器23には、タンク21を内外に貫通する管状の冷却器入口35及び冷却器出口36が設けられる。再熱器24及び冷却器23は間接熱交換器とされ、例えば、プレート式、多管式、スパイラル式の間接熱交換器により構成される。
【0026】
冷却器23の冷却器入口35には、冷媒供給管37が接続され、冷却器出口36には、冷媒排出管38が接続されている。冷媒供給管37には、冷媒供給部となる海水ポンプ40が設けられている。また、冷媒供給管37における海水ポンプ40より上流側には、海水aの温度を測定する第2温度センサ42が設けられている。
【0027】
海水ポンプ40の作動によって冷媒となる海水aが海から汲み上げられ、冷媒供給管37を通じて冷却器23に海水aが供給される。冷却器23は、導入された海水aと、タンク21内を流れる排ガスgとの間で熱交換する。冷却器23の熱交換によって排ガスgが冷却され、排ガスgに含まれる水分が凝縮されて貯留部28に滴下する。冷却器23の熱交換によって温度上昇された海水aは、冷媒排出管38に排出されて海に戻される。排ガスgから受熱した海水aは、海に戻す前に船内の他熱源として排熱利用してもよい。
【0028】
ここで、間接熱交換器となる再熱器24にて、高温側入口がタンク入口26とされ、高温側出口がタンク21内における再熱器24と冷却器23との間の位置とされる。また、再熱器24にて、低温側入口が再熱器入口33とされ、低温側出口が再熱器出口34とされる。一方、間接熱交換器となる冷却器23にて、高温側入口がタンク21内における再熱器24と冷却器23との間の位置とされ、高温側出口がタンク出口27とされる。また、冷却器23にて、低温側入口が冷却器入口35とされ、低温側出口が冷却器出口36とされる。
【0029】
再熱器24の再熱器入口33には、中継配管29の下流側が接続され、再熱器24の再熱器出口34には、排ガス排出管46が接続されている。排ガス排出管46には圧縮機やブロアにより構成される昇圧部47が設けられる。また、排ガス排出管46における昇圧部47より下流側には二酸化炭素回収部50が設けられる。昇圧部47の作動によって排ガスgが圧縮され、排ガスgが昇圧されて二酸化炭素回収部50に供給される。
【0030】
再熱器24は、冷却器23及びミストセパレータ25を経由した後の排ガスgと、タンク21内に流入して冷却器23を経由する前の排ガスgとで熱交換する。再熱器24の熱交換によって、排ガス排出管46に排出される排ガスgが加熱され、該排ガスgの相対湿度が低減する。また、再熱器24の熱交換によって、タンク入口26からタンク21内に流入した直後の排ガスgが冷却される。よって、タンク21内にて、冷却器23を経由する前に排ガスgは温度低下される。
【0031】
二酸化炭素回収部50には、排ガス排出管46から排ガスgが供給される。二酸化炭素回収部50は、供給された排ガスgから二酸化炭素を回収可能であれば、種々の装置や方法を採用することができる。例として、二酸化炭素回収部50は、ゼオライトや活性炭等の吸着剤により二酸化炭素を吸着して回収する装置や、二酸化炭素濃度の差によって選択的に排ガスgを透過する分離膜を用いた分離装置を利用できる。分離装置によって、排ガスgを、二酸化炭素を含む透過成分と、該透過成分よりも二酸化炭素濃度の低い非透過成分とに分離する。分離装置は、後述する第2の実施の形態のように膜分離を2回行ってもよいし、膜分離を1回としてもよい。
【0032】
また、ガス処理システム1にあっては、制御部61、記憶部62及び通信部63を更に備えている。
【0033】
制御部61、記憶部62及び通信部63を有する装置として、プログラマブルコントローラ(PLC)やパーソナルコンピュータ(PC)を例示することができる。制御部61は、中央処理装置(CPU)等からなり、ガス処理システム1の各部の制御を介して全体を制御する。制御部61は、記憶部62に記憶されているプログラムに従い、記憶部62や通信部63から入力される情報に対する各種の演算処理や、海水ポンプ40による冷却器23への海水aの供給量を制御する機能等を有する。
【0034】
例えば、制御部61は、エンジン3の回転数を入力してエンジン3の運転負荷としてMV値(%)を求め、該MV値に応じて海水ポンプ40の回転数を増減し、海水ポンプ40による海水aの供給量を制御する。他の例として、制御部61は、前処理部10における窒素酸化物処理装置12(
図2参照)の触媒量や反応活性剤の添加量を入力して窒素酸化物処理装置12の運転負荷としてMV値(%)を求める。かかるMV値に応じて海水ポンプ40の回転数を増減し、海水ポンプ40による海水aの供給量を制御部61が制御する。
【0035】
記憶部62は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等を備えている。RAMは、制御部61の作業領域として用いられたり、通信部63から出力された情報等が制御部61を介して記憶される。ROMでは、制御部61が各種の演算、制御を行うためのプログラムや、アプリケーションとして機能するためのプログラム、データ等が記憶される。
【0036】
通信部63は、通信インターフェースとして有線又は無線通信によって測定結果、データ、指令信号等を送受信する。通信部63は、エンジン3や、窒素酸化物処理装置12(
図2参照)、各温度センサ31、42、それ以外の不図示の各種センサ(船舶の各種センサも含む)から出力された検知結果、測定結果、データ、指令信号等を取得して制御部61に出力する。また、通信部63は、制御部61にて求めた海水ポンプ40の回転数を取得し、指令信号等として海水ポンプ40に出力する。
【0037】
次いで、第1の実施の形態のガス処理システム1における排ガスgの処理方法について説明する。
図3は、第1の実施の形態のガス処理方法のフロー図である。本実施の形態の排ガスgの処理方法では、
図3に示すように、前処理ステップS01、第1冷却ステップ(第1熱交換ステップ)S02、第2冷却ステップ(第2熱交換ステップ)S03、副生ガス除去ステップS04、水分除去ステップS05、加熱ステップ(第3熱交換ステップ)S06、及び二酸化炭素回収ステップS07が行われる。
【0038】
前処理ステップS01では、エンジン3から排出される排ガスgが前処理部10に供給されて処理される。前処理ステップS01では、
図2に示すように、前処理部10の窒素酸化物処理装置12にて、排ガスgから窒素酸化物(NOx)が除去され、二酸化炭素回収部50(
図1参照)での劣化防止を図っている。また、窒素酸化物処理装置12は、例えば、運転負荷を求めるために反応活性剤の添加量を検知し、通信部63を介して制御部61に出力する。
【0039】
前処理ステップS01では、窒素酸化物処理装置12を経由した後の排ガスgが排ガス排熱利用装置13に供給され、排ガスgの熱を吸収して蒸気を発生させる。また、排ガス排熱利用装置13を経由した後の排ガスgが除塵装置14に供給される。除塵装置14によって、排ガスgに含まれる粒子状物質(PM)が除去され、二酸化炭素回収部50での粒子状物質よる汚損及び劣化防止を図っている。
【0040】
前処理ステップS01では、除塵装置14を経た後の排ガスgが硫黄酸化物処理装置15に供給される。硫黄酸化物処理装置15によって、排ガスgに含まれる硫黄酸化物(SOx)が除去され、二酸化炭素回収部50での劣化防止を図っている。
【0041】
前処理ステップS01の実施後、第1冷却ステップ(第1熱交換ステップ)S02が冷却再熱部20にて実施される。第1冷却ステップS02では、前処理部10から排出される排ガスgが冷却再熱部20のタンク入口26からタンク21の内部に供給される。タンク21の内部に供給された排ガスgは、再熱器24を経由することで、後述する第2冷却ステップS03で冷却された排ガスgと熱交換して冷却される。
【0042】
第1冷却ステップS02の実施後、第2冷却ステップ(第2熱交換ステップ)S03が冷却再熱部20にて実施される。第2冷却ステップS03では、タンク21の内部にて再熱器24を経由した排ガスgが冷却器23に供給され、冷却器23を経由することで冷媒となる海水aと熱交換して冷却される。冷却器23による排ガスgの冷却によって、排ガスgに含まれる水分が凝縮して滴下され、貯留部28に凝縮水Wとして回収及び貯留される。
【0043】
第2冷却ステップS03の実施中にて、ガス処理システム1ではエンジン3の回転数が変化すると、該回転数の増減に応じてエンジン3から排出される排ガスgの供給量が増減される。かかるエンジン3の回転数は通信部63を介して制御部61に出力され、制御部61ではエンジン3の回転数に基づきエンジン3の運転負荷(例えばMV値(%))が算出される。
【0044】
また、制御部61では、エンジン3の運転負荷に応じて、海水ポンプ40によって冷却器23に供給される海水aの供給量が制御される。かかる制御にて、制御部61では、例えば、記憶部62に記憶された過去の実測データに基づく入出力テーブルや換算式、演算プログラムによって、エンジン3の運転負荷の算出値に応じた海水ポンプ40の回転数が算出される。そして、制御部61で算出した回転数で駆動するよう海水ポンプ40が制御部61によって制御される。これにより、冷却器23を流れる排ガスgの流量等に応じて、冷却器23に供給される海水aの供給量が調整され、冷却器23により冷却された排ガスgの水蒸気濃度や温度が目標値(目標範囲)に制御される。
【0045】
なお、第2冷却ステップS03は、第1温度センサ31及び第2温度センサ42の測定結果に応じ、海水ポンプ40による海水aの供給量を調整するよう制御部61にて制御してもよい。
【0046】
第2温度センサ42は海水ポンプ40によって冷却器23に供給される海水aの温度を測定し、第2温度センサ42の測定結果が通信部63を介して制御部61に出力される。冷却器23は海水aの温度に応じて海水aの供給量当たりの熱交換量(冷却性能)が変化するので、例えば、排ガスgの供給量等の条件が同じであれば、海水aの温度が低いほど海水aの供給量を少なくすることができる。よって、制御部61に入力された海水aの温度の測定結果に応じ、制御部61にて海水ポンプ40の回転数を補正する演算が行われる。そして、かかる演算結果に応じて制御部61により海水ポンプ40の回転数が制御され、冷却器23に供給される海水aの供給量が増減される。これにより、冷却器23による冷却された排ガスgの水蒸気濃度や温度をより良く制御できる。
【0047】
第1温度センサ31は冷却器23及びミストセパレータ25を経由した後の排ガスgの温度を測定し、第1温度センサ31の測定結果は通信部63を介して制御部61に出力される。冷却器23より下流側の排ガスgの温度を測定することで、測定値と目標値(目標範囲)との差が制御部61によって算出される。そして、制御部61で算出された差に応じ、制御部61にて海水ポンプ40の回転数を補正する演算が行われる。かかる演算結果に応じて制御部61により海水ポンプ40の回転数が制御され、冷却器23に供給される海水aの供給量が増減される。これにより、冷却器23による冷却された排ガスgの水蒸気濃度や温度をより良く制御できる。
【0048】
第2冷却ステップS03の実施後、副生ガス除去ステップS04が冷却再熱部20にて実施される。副生ガス除去ステップS04では、冷却器23内における排ガスgが冷却凝縮する際の凝縮水と副生ガス(例えば、未反応のアンモニア)との気液接触に加えて、タンク21の内部にて冷却器23を経由した排ガスgが貯留部28の凝縮水Wの水面に接触するよう流れる。これにより、排ガスg中に混入する副生ガスとなる未反応のアンモニアが凝縮水Wに溶解及び回収され、排ガスgに混入した未反応のアンモニアの一部が除去される。貯留部28の凝縮水Wに接した排ガスgは上向きに折り返され、タンク出口27を経てタンク21から流出する。
【0049】
ここで、閉塞されたタンク21内に排ガスg及び凝縮水Wの両方が収容されるので、排ガスgの温度に応じて凝縮水Wの温度も概ね一致した状態となる。よって、第2冷却ステップS03での排ガスgの温度制御によって、凝縮水Wの温度も制御できる。一方、未反応のアンモニアにあっては、凝縮水Wの温度が低下するほど、大きな溶解度を示す。従って、第2冷却ステップS03での排ガスgの温度制御により、凝縮水Wの温度制御も可能となり、副生ガス除去ステップS04にて排ガスgに混入した未反応のアンモニアの除去量を制御することもできる。
【0050】
副生ガス除去ステップS04の実施後、中継配管29を流れる排ガスgに飛散する水滴をミストセパレータ25にて捕捉する水分除去ステップS05が実施される。
【0051】
水分除去ステップS05の実施後、加熱ステップ(第3熱交換ステップ)S06が冷却再熱部20の再熱器24にて実施される。加熱ステップS06では、ミストセパレータ25で水分を除去された排ガスgが再熱器入口33から再熱器24に供給される。再熱器入口33から供給された排ガスgは、再熱器24にて上述した第1冷却ステップS02でタンク入口26からタンク21に供給された排ガスgと熱交換して加熱される。この加熱によって、排ガスgは温度上昇し、かかる温度上昇に応じて相対的に水蒸気濃度が低下される。加熱された排ガスgは、再熱器24から再熱器出口34を経て排ガス排出管46に流出する。
【0052】
加熱ステップS06の実施後、二酸化炭素回収ステップS07が二酸化炭素回収部50にて実施される。二酸化炭素回収部50には、昇圧部47の作動によって排ガスgが圧縮された状態で供給される。
【0053】
ここで、二酸化炭素回収部50に供給される排ガスgは、冷却器23による冷却にて水分が除去され、且つ、再熱器24による加熱によって水蒸気濃度が低下された状態となる。これにより、二酸化炭素回収部50が吸着剤により二酸化炭素を吸着する場合、吸着剤の劣化を防止することができる。また、二酸化炭素回収部50が分離膜を用いて二酸化炭素を回収する場合、分離膜の劣化を防止することができる。
【0054】
なお、上述した排ガスgの処理方法にて、排ガスgの水蒸気濃度や温度、未反応のアンモニアの除去量の制御にあたり、エンジン3の回転数に基づきエンジン3の運転負荷を算出したが、これに限られるものでない。例えば、前処理部10における窒素酸化物処理装置12の運転負荷に応じて、海水ポンプ40の回転数を制御して冷却器23への海水aの供給量を制御してもよい。窒素酸化物処理装置12の運転負荷は、触媒を用いる場合には触媒量、反応活性剤を用いる場合には反応活性剤の添加量となり、エンジン3からの排ガスgの排出量に応じて増減する。また、窒素酸化物処理装置12の運転負荷は、通信部63を介して制御部61に出力され、制御部61にて、該運転負荷に応じた海水ポンプ40の回転数が算出されて制御される。
【0055】
これにより、エンジン3の運転負荷に応じた制御に代え、または、エンジン3の運転負荷に応じた制御と併せて窒素酸化物処理装置12の運転負荷に応じた制御を行うことでも、排ガスgの水蒸気濃度や温度、未反応のアンモニアの除去量を制御することができる。
【0056】
ここで、上記第1の実施の形態におけるガス処理システム1での具体的な作動条件につき、以下に一例を挙げて説明する。
【0057】
エンジン3は、国際海事機関(IMO)による船舶用燃料油硫黄分規制により、湿式脱硫装置が不要となる低硫黄燃料を使用する船舶エンジンとする。かかるエンジン3を用いる場合の条件は以下となる。
エンジン3から排出直後の排ガスgの温度:350~400℃
エンジン3から排出直後の排ガスgの圧力:20kPa程度
窒素酸化物処理装置12:脱硝装置として選択式触媒還元脱硝(SCR)
排ガス排熱利用装置13:エコノマイザ
除塵装置14:電気集塵機
排ガス排熱利用装置13の出口温度:175℃程度
【0058】
冷却再熱部20にて、冷却凝縮により排ガスg中の水蒸気濃度を低減すると共に、窒素酸化物処理装置12にて副生された未反応のアンモニア10~20ppmを溶解除去する必要がある。エンジン3の出力が十数MW相当にて、排ガスgの組成は以下となる。
二酸化炭素:6%、窒素:75%、酸素:13%、水蒸気:6%、アンモニア:20ppm
【0059】
かかる排ガスgの冷却再熱部20に流入する際の流量を80,000Nm3/h、温度を175℃、冷却器23での冷媒を海水aとする。この場合、再熱器24及び冷却器23の熱交換入出温度、排ガスgの水蒸気濃度は以下となる。
再熱器24の高温側入口(タンク入口26)の温度:175℃
再熱器24の高温側出口(タンク21内)の温度:152℃
再熱器24の低温側入口(再熱器入口33)の温度:25℃
再熱器24の低温側出口(再熱器出口34)の温度:50℃
再熱器出口34から流出する排ガスgの水蒸気濃度:25%
冷却器23の高温側入口(タンク21内)の温度:152℃
冷却器23の高温側出口(タンク出口27)の温度:25℃
冷却器23の低温側入口(冷却器入口35)の温度:15℃(海水温)
冷却器23の低温側出口(冷却器出口36)の温度:100℃(海水温)
タンク出口27から流出する排ガスgの水蒸気濃度:99%
【0060】
排ガスgを25℃に冷却した後の凝縮水量は3442L/h、水温25℃の凝縮水に対するアンモニア(気体)溶解度は63.4mL/1.0L-H2Oとなる。排ガスg中のアンモニア流量は80,000Nm3/h×0.002%=1.6Nm3/hとなる。凝縮水全てにアンモニアを溶解させた場合、3442L/h×63.4mL/1.0L-H2O=218L/hまでアンモニアを溶解可能となる。よって、排ガスg中に含まれる、1.6Nm3/hのアンモニアの15%程度は溶解除去が可能となる。
【0061】
以上のように、上記第1の実施の形態によれば、再熱器24によって排ガスgを加熱するので、二酸化炭素回収部50に供給される排ガスgの水蒸気濃度を低減でき、二酸化炭素回収部50における吸着剤等の劣化や性能低下を防止することができる。
【0062】
しかも、二酸化炭素回収部50に供給する排ガスgの再熱器24による加熱では、タンク21に流入した際の高温の排ガスgの熱を利用でき、ヒータ等の加熱手段を用いずにエネルギー消費量の低減を図ることができる。更に、再熱器24による加熱での熱交換によって、冷却器23に供給される前の排ガスgを冷却でき、冷却器23での熱交換量を抑制することができる。これにより、海水ポンプ40の駆動量を少なくでき、これによっても、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
【0063】
このように、上記第1の実施の形態においては、二酸化炭素回収部50における処理での排ガスg中の水蒸気濃度の低減と、効率的なエネルギー消費との両立を図ることができる。更に、再熱器24及び冷却器23の熱交換に要する動力は、海水ポンプ40の動力だけでよく、エネルギー消費量の低減をより良く実現することができる。
【0064】
また、タンク21の内部に再熱器24及び冷却器23を収容しつつ、タンク21に凝縮水Wを貯留する貯留部28を設けたので、単一の冷却再熱部20に複数の機能を持たせることができる。更に、貯留部28の凝縮水Wによって、排ガスg中に混入する副生ガスとなる未反応のアンモニアを溶解して回収することも可能となる。
【0065】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0066】
本発明の第2の実施の形態について
図4を参照して説明する。
図4は、第2の実施の形態に係るガス処理システムの一部を示す概略構成図である。
図4に示すように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態の冷却再熱部20を二酸化炭素回収部100に組み込んで構成している。
【0067】
第2の実施の形態における二酸化炭素回収部100は、第1分離部101、第2分離部102、吸引機104、バルブ105及び圧縮機106を有している。ここで、第1分離部101及び第2分離部102を含んで分離装置110が構成される。分離装置110は、排ガスgを透過成分Tcと非透過成分Ncとに分離する。透過成分Tcは、二酸化炭素(CO2)を含む。非透過成分Ncの二酸化炭素濃度は、透過成分Tcの二酸化炭素濃度よりも低くなる。
【0068】
第1分離部101は、排ガスgを第1透過成分Tc1と第1非透過成分Nc1とに分離する。第1透過成分Tc1は、二酸化炭素を含む。第1非透過成分Nc1の二酸化炭素濃度は、第1透過成分Tc1の二酸化炭素濃度よりも低くなる。
【0069】
第1分離部101は、分離膜を用いており、かかる分離膜が有機材料または無機材料により構成されることが例示できる。第1分離部101において、有機材料の分離膜としては、高分子や樹脂からなる中空糸状の多孔質材料を用い、無機材料の分離膜としては、酸化シリコン(SiO2)またはアルミノ珪酸塩(所謂ゼオライト)からなる中空糸状の材料を用いることが例示できる。第1非透過成分Nc1は、排ガスgのうち、第1分離部101を構成する有機材料や無機材料を透過しなかった成分である。
【0070】
第2分離部102は、第1透過成分Tc1を第2透過成分Tc2と第2非透過成分Nc2とに分離する。第2透過成分Tc2の二酸化炭素濃濃度は、第1透過成分Tc1の二酸化炭素濃度よりも高くなる。第2非透過成分Nc2の二酸化炭素濃度は、第2透過成分Tc2の二酸化炭素濃度よりも低くなる。
【0071】
第2分離部102は、分離膜を用いており、かかる分離膜は有機材料により構成されることが例示できる。第2分離部102において、有機材料の分離膜としては、高分子や樹脂からなる中空糸状の多孔質材料を用いることが例示でき、第1分離部101の有機材料と同じ材料であってよく、異なる材料であってもよい。第2透過成分Tc2は、第1透過成分Tc1のうち、第2分離部102を構成する有機材料を透過した成分である。第2非透過成分Nc2は、第1透過成分Tc1のうち、第2分離部102を構成する有機材料を透過しなかった成分である。
【0072】
第2の実施の形態においては、透過成分Tcは第2透過成分Tc2である。また、非透過成分Ncは、非透過成分Ncは、第1非透過成分Nc1及び第2非透過成分Nc2の両方とするが、第1非透過成分Nc1及び第2非透過成分Nc2の少なくとも一方であってよい。
【0073】
吸引機104は、第1非透過成分Nc1と第2非透過成分Nc2とを吸引する。吸引機104は、吸引ブロワであってよく、吸引ポンプまたは真空ポンプであってもよい。バルブ105は、吸引機104により吸引される第1非透過成分Nc1の吸引量を調整する。第1非透過成分Nc1と第2非透過成分Nc2とは、それぞれ別の吸引機104で吸引されてもよい。
【0074】
圧縮機106は、排ガスgの第2透過成分Tc2を圧縮する。圧縮機106は、第2透過成分Tc2の二酸化炭素を液化してよい。圧縮機106は、例えばコンプレッサである。圧縮機106により圧縮された二酸化炭素は、例えば、深冷分離法等によって適宜回収される。
【0075】
第2の実施の形態において、冷却再熱部20は、第1分離部101で分離された第1透過成分Tc1が第2分離部102に流れる流路に設けられる。よって、排ガスgのうち、第1分離部101で分離された第1透過成分Tc1が冷却再熱部20で処理される。冷却再熱部20の処理では、第1透過成分Tc1が冷却器23(
図1参照)にて冷却されて第1透過成分Tc1に含まれる水蒸気が凝縮滴下され、再熱器24(
図1参照)にて第1透過成分Tc1が加熱されて相対湿度が低減される。これにより、第2分離部102における有機材料の分離膜にて、熱劣化を防止でき、且つ、水蒸気濃度が高くなることに起因する分離膜の性能低下を抑制することができる。
【0076】
本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0077】
上記各実施の形態では、冷媒として海水aを用いつつ冷媒供給部を海水ポンプ40とした構成としたが、これに限定されるものでない。例えば、冷媒供給部が、吸収式冷温水機やターボ冷凍機により構成されるようにしてもよい。
【0078】
冷媒供給部が吸収式冷温水機により構成される場合、冷却器23に冷媒として供給する冷水の温度を制御部61によって制御することができる。これにより、冷却器23での熱交換量を容易に調整することができる。また、吸収式冷温水機を用いた場合、冷却器23から排出される温水(冷水)が100℃となるので、廃熱温水として吸収式冷温水機の再生器加熱源として活用でき、吸収式冷温水機の投入エネルギー削減を図ることができる。
【0079】
また、第1の実施の形態にて、冷却器23及び再熱器24をタンク21の内部に設けたが、
図5に示すように、冷却再熱部20がタンク21を利用しない構成としてもよい。
図5は、変形例にかかる冷却再熱部の概略構成図である。
図5の変形例において、再熱器24の高温側出口24aは、配管120を介して冷却器23の高温側入口23aに接続される。かかる配管120には、再熱器24の高温側を経由した後、冷却器23で冷却前の排ガスgが流れる。
【0080】
冷却器23の高温側出口23bは、配管121を介して再熱器24の低温側入口となる再熱器入口33に接続される。かかる配管121には、冷却器23による冷却後の排ガスgが流れる。配管120には、ブロア122が設けられ、配管120、121を流れる排ガスgを圧送している。
【0081】
配管121には分岐管124が設けられる。分岐管124は、冷却器23による排ガスgの冷却により凝縮した水分をドレンとして排出する。分岐管124は、冷却器23及び配管121より底部に位置し、冷却器23内部に滞留する構造を有しないこと及び配管勾配を持つことで、冷却により凝縮した水分が流路閉塞なくドレンとして排出する構造を有する。分岐管124では、排ガスg中に微量に存在する酸性成分がドレンに溶解して排出される。かかる酸性成分での腐食を回避するため、分岐管124は、耐食性に優れるステンレス(例えば、SUS312LやSUS329等の二相ステンレス)で構成したり、耐食コーティングを施した金属で構成することが例示できる。
【符号の説明】
【0082】
1 :ガス処理システム
3 :エンジン(燃焼器)
10 :前処理部
21 :タンク
23 :冷却器(第1間接熱交換器)
24 :再熱器(第2間接熱交換器)
28 :貯留部
40 :海水ポンプ(冷媒供給部)
50 :二酸化炭素回収部
61 :制御部
100 :二酸化炭素回収部
101 :第1分離部
102 :第2分離部
110 :分離装置
120 :配管
121 :配管
124 :分岐管
Nc :非透過成分
Nc1 :第1非透過成分
Nc2 :第2非透過成分
Tc :透過成分
Tc1 :第1透過成分
Tc2 :第2透過成分
W :凝縮水
a :海水(冷媒)
g :排ガス(燃焼排ガス)