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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162868
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】輻射暖房機能付きボイラ装置
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20231101BHJP
   F24D 5/00 20220101ALI20231101BHJP
   F24H 15/204 20220101ALI20231101BHJP
   F24H 15/33 20220101ALI20231101BHJP
   F24H 6/00 20220101ALI20231101BHJP
【FI】
F24D3/00 B
F24D3/00 K
F24D5/00 A
F24H15/204
F24H15/33
F24H6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073562
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】中島 耕司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】大塚 栄明
【テーマコード(参考)】
3L070
3L071
【Fターム(参考)】
3L070AA01
3L070BB01
3L070BC02
3L071AA05
3L071AC01
3L071AD03
(57)【要約】
【課題】温水暖房の能力を変更しても、室温への影響が小さい輻射機能付き暖房ボイラを提供する。
【解決手段】筐体2内に温水を貯湯する缶体10と、缶体10を加熱するバーナ13と、バーナ13の燃焼が行われる燃焼室15と、温水を加熱する熱交換器20と、熱交換器20の上方に設置され熱交換器20を通過した後の燃焼ガスを集合させる排気室17と、熱交換器20をバイパスして燃焼室15と排気室17を接続するバイパス排気路50とを備え、室温センサ77の検出温度Tが目標室温Taより低いほどダンパ53の開度θが開方向になるようにし、室温センサ77の検出温度Tが目標室温Taを含む目標室温Taより高いほどダンパ53の開度θが全閉状態を含む閉方向になるようにし、温水温度センサ21の検出温度が目標温水温度になるようにバーナ13の燃焼制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に温水を貯湯する缶体と、
前記缶体を加熱するバーナと、
前記缶体の下部内側に形成され前記バーナの燃焼が行われる燃焼室と、
前記バーナの燃焼により発生した燃焼ガスから熱回収し前記温水を加熱する熱交換器と、
前記熱交換器の上方に設置され前記熱交換器を通過した後の燃焼ガスを集合させる排気室と、
前記排気室を通過した後の燃焼ガスを機外に排出する排気筒と、
外部の暖房端末と前記缶体とを温水往き管と温水戻り管とで接続した暖房回路と、
前記暖房回路に前記温水を循環させるポンプと、
前記熱交換器をバイパスして前記燃焼室と前記排気室を接続するバイパス排気路と、
を備え、
前記バイパス排気路は前記筐体より外側へ放熱可能とし、
前記バイパス排気路の放熱量を調整できる開度調整可能に形成されたダンパと、
前記筐体が設置された室内の温度を検出可能な室温センサと、
前記暖房回路に循環させる前記温水の温度を検出する温水温度センサと、
前記バーナの燃焼制御と前記ダンパの開度の制御とを行う制御部と、
前記制御部と通信可能に接続された操作部と、
をさらに備え、
前記ダンパは、
前記ダンパの開度が開方向ほど前記筐体より外側への放熱量が大きく、前記ダンパの開度が全閉状態を含む閉方向ほど前記筐体より外側への放熱量が小さくなる特徴を有し、
前記操作部は、
前記室内への目標室温を設定する室温設定手段と、
前記温水の目標温水温度を設定する水温設定手段と、
を備え、
前記制御部は、
前記室温センサの検出温度が前記目標室温より低いほど前記ダンパの開度が開方向になるようにし、
前記室温センサの検出温度が前記目標室温より高いほど前記ダンパの開度が全閉状態を含む閉方向になるようにする開度制御部を有し、
前記温水温度センサの検出温度が前記目標温水温度になるように前記バーナの燃焼制御を行う燃焼制御部を有する
ことを特徴とする輻射暖房機能付きボイラ装置。
【請求項2】
前記開度制御部は、
前記室温センサの検出温度が上昇して前記目標室温に近づくにつれ第1開度に近づく第1ダンパ制御を実行可能とした
ことを特徴とする請求項1に記載の輻射暖房機能付きボイラ装置。
【請求項3】
前記開度制御部は、
前記室温センサの検出温度が上昇して前記目標室温に近づくにつれ前記第1開度より開方向の第2開度に近づく第2ダンパ制御を実行可能であり、
前記室温センサの検出温度が上昇して前記目標室温に近づくにつれ前記第2開度より開方向の第3開度に近づく第3ダンパ制御を実行可能であり、
前記操作部は、
前記第1ダンパ制御と、前記第2ダンパ制御と、前記第3ダンパ制御のうちいずれか1つを選択する輻射能力設定手段を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の輻射暖房機能付きボイラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用の暖房用のボイラ装置に関し、特に輻射暖房機能を備え、輻射暖房用バーナと温水暖房用バーナとを1つのバーナで兼ね備える輻射暖房機能付きボイラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房用のボイラ装置としては、図10に示すように、缶体110に備えた温水戻り口124に、温水戻り管133が接続され、缶体110に備えた温水出口123に接続した温水往き管132にポンプ136と気水分離器145を備え、温水戻り管133と温水往き管132とは図示しない暖房端末に接続される。さらに、缶体110の下部に備えたバーナ113の燃焼により、高温の燃焼ガスは熱交換器120にて熱交換され、缶体110の温水を所定の温度に加熱して、排気室117を経由したのち排気筒118より筐体102の外部へ排出されるものであった。これによって、前記暖房端末に所定の温水を循環させ暖房することができた。
このようなボイラ装置としては、例えば特許文献1があった。
【0003】
一方、温水暖房機能と輻射暖房機能とを備えたものとしては、図11図12に示すように、バーナ201と連通した耐熱透明体から成る燃焼筒203を備え、上方には筒状の赤熱体204が垂下して備えられ燃焼ガスで加熱されて赤熱し、燃焼筒203の後方を反射板206で囲んだ輻射室を形成して、赤熱状態を室内に反射させて輻射暖房を行う暖房機において、器具外に設置された放熱器によって温度が低下した温水を、前記燃焼ガスによって内部に有する熱交換器223と循環ポンプ239で所定の温度に加熱し循環させ、温水暖房を行う温水熱交換器内蔵型ストーブ200があった。
このような温水熱交換器内蔵型ストーブとして、例えば特許文献2があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3845240号公報
【特許文献2】特許第4021631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、北海道札幌市など寒冷地エリアの大都市圏における近年の住宅事情は、核家族化や高齢化の進展により以前ほど広いリビングの必要性が薄れたり、あるいは在宅ワーカーの増加など広いリビングが確保できないなどの傾向が進みつつある。
また、二重窓や断熱性能の向上など、寒冷地ならではの住宅構造により、以前のような大能力の暖房の必要性が薄れてきている。
このような中において、寒冷地エリアにおける暖房ニーズとしては、リビング用には広さに合わせた適度な暖房能力の輻射暖房と、全館用には温水式のセントラル暖房が、新たなライフスタイルの暖房ニーズとして浮かび上がっている。
【0006】
しかしながら、図11に示す従来の温水熱交換器内蔵型ストーブ200では、輻射暖房を行うバーナ201を備え、図12に示す第1ダンパ230を開にして(第1開口229を開にして)温水熱交換室224に燃焼ガスを流通させると温水暖房が可能となり、第1ダンパ230を閉にすると温水暖房が停止する構成のため、温水暖房も輻射暖房も両方を使っているときに、すなわち第1ダンパ230を開のまま、温水暖房の能力を強に変更しようとしてバーナ201の火力を強に変更すると輻射暖房の能力も強に変更され室温が上昇してしまい、または、温水暖房の能力を弱に変更しようとしてバーナ201の火力を弱に変更すると輻射暖房の能力も弱に変更され室温が下降してしまい、使いづらく改善の余地があった。
【0007】
本発明はかかる背景を鑑みてなされたものであり、温水暖房の能力を変更しても、室温への影響を少なくするようにできる輻射機能付き暖房ボイラを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、請求項1では、筐体内に温水を貯湯する缶体と、前記缶体を加熱するバーナと、前記缶体の下部内側に形成され前記バーナの燃焼が行われる燃焼室と、前記バーナの燃焼により発生した燃焼ガスから熱回収し前記温水を加熱する熱交換器と、前記熱交換器の上方に設置され前記熱交換器を通過した後の燃焼ガスを集合させる排気室と、前記排気室を通過した後の燃焼ガスを機外に排出する排気筒と、外部の暖房端末と前記缶体とを温水往き管と温水戻り管とで接続した暖房回路と、前記暖房回路に前記温水を循環させるポンプと、前記熱交換器をバイパスして前記燃焼室と前記排気室を接続するバイパス排気路と、を備え、前記バイパス排気路は前記筐体より外側へ放熱可能とし、前記バイパス排気路の放熱量を調整できる開度調整可能に形成されたダンパと、前記筐体が設置された室内の温度を検出可能な室温センサと、前記暖房回路に循環させる前記温水の温度を検出する温水温度センサと、前記バーナの燃焼制御と前記ダンパの開度の制御とを行う制御部と、前記制御部と通信可能に接続された操作部と、をさらに備え、前記ダンパは、前記ダンパの開度が開方向ほど前記筐体より外側への放熱量が大きく、前記ダンパの開度が全閉状態を含む閉方向ほど前記筐体より外側への放熱量が小さくなる特徴を有し、前記操作部は、前記室内への目標室温を設定する室温設定手段と、前記温水の目標温水温度を設定する水温設定手段と、を備え、前記制御部は、前記室温センサの検出温度が前記目標室温より低いほど前記ダンパの開度が開方向になるようにし、前記室温センサの検出温度が前記目標室温より高いほど前記ダンパの開度が全閉状態を含む閉方向になるようにする開度制御部を有し、前記温水温度センサの検出温度が前記目標温水温度になるように前記バーナの燃焼制御を行う燃焼制御部を有することを特徴とした。
【0009】
請求項2では、前記開度制御部は、前記室温センサの検出温度が上昇して前記目標室温に近づくにつれ第1開度に近づく第1ダンパ制御を実行可能としたことを特徴とした。
【0010】
請求項3では、前記開度制御部は、前記室温センサの検出温度が上昇して前記目標室温に近づくにつれ前記第1開度より開方向の第2開度に近づく第2ダンパ制御を実行可能であり、前記室温センサの検出温度が上昇して前記目標室温に近づくにつれ前記第2開度より開方向の第3開度に近づく第3ダンパ制御を実行可能であり、前記操作部は、前記第1ダンパ制御と、前記第2ダンパ制御と、前記第3ダンパ制御のうちいずれか1つを選択する輻射能力設定手段を有することを特徴とした。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、缶体内の実水温の変化や温水暖房の目標温水温度の変更により、バーナの火力が変わっても、室温が維持されるようにダンパの開度が変更されるので、室温への影響を少なくすることができる。
【0012】
また、筐体が設置された室内の室温が変化したり、輻射暖房の目標室温の設定を変更して、ダンパの開度が変わっても、バーナの火力は目標温水温度が維持されるように火力が変更されるので、温水暖房への影響は少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態を説明する輻射暖房機能付きボイラ装置の概略構成図
図2】本発明の第1の実施形態を説明する要部ブロック図
図3】本発明の第1の実施形態を説明する要部拡大図
図4】本発明の第1の実施形態を説明するフローチャート
図5】本発明の第1の実施形態の検出温度と開度の関係の説明図
図6】本発明の第2の実施形態を説明する輻射暖房機能付きボイラ装置の概略構成図
図7】本発明の第2の実施形態を説明する要部ブロック図
図8】本発明の第2の実施形態を説明するフローチャート
図9】本発明の第2の実施形態の検出温度と開度の関係の説明図
図10】従来のボイラ装置の実施形態を説明する概略構成図
図11】従来の温水熱交換器内蔵型ストーブの実施形態を説明する概略構成図
図12】従来の温水熱交換器内蔵型ストーブの実施形態を説明する要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる輻射暖房機能付きボイラ装置1の第1の実施形態を図1を参照して説明する。なお、各図において、共通する構成要素や同種の構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
【0015】
1は、輻射暖房機能付きボイラ装置1で、内部に一定量の温水が貯湯され、送風ファン14からの燃焼用空気の供給を受けて燃料(灯油またはガス)を燃焼させる燃焼機器としてのバーナ13と、バーナ13の燃焼により発生した燃焼ガスから熱回収し前記温水を加熱する熱交換器20と、熱交換器20の上方に設置され熱交換器20を通過した後の燃焼ガスを集合させる排気室17と、排気室17を通過した後の燃焼ガスを機外に排出する排気筒18を有しているものである。
【0016】
熱交換器20は、内部に一定量の温水を貯留する円筒状の缶体10と、缶体10の下部内側に形成されバーナ13の燃焼が行われる燃焼室15と、燃焼室15と排気室17を連通し、バーナ13の燃焼により発生した燃焼ガスを通過させる複数本の煙管16とで構成されている。
【0017】
21は缶体10の上下略中央に取り付けられた缶体10内の温水の温度(缶体温度)を検出する温水温度センサ21である。
【0018】
さらに、缶体10の側周面には、缶体10上部に缶体10内に貯湯されている温水を循環するための温水出口23が設けられ、缶体10下部に循環した温水を缶体10に戻し入れるための温水戻り口24が設けられており、温水出口23に接続した温水往き管32と、温水戻り口24に接続した温水戻り管33の間に図示しない暖房端末が接続され、温水往き管32には、暖房端末に温水を循環させるポンプ36と、温水中に生じた気泡の分離を行う気水分離器45とが接続され、暖房回路34が形成されている。
【0019】
一方、熱交換器20をバイパスして燃焼室15と排気室17をバイパス排気路50で接続し、さらにバイパス排気路50は輻射暖房機能付きボイラ装置1の正面に筐体2から露出した状態で設置され、バイパス排気路50の放熱部51は筐体2より外側へ放熱可能とした。
【0020】
これにより、バーナ13の燃焼ガスの一部は、燃焼室15から煙管16を経て熱交換器20にて熱交換し缶体10内の温水を加熱したのち排気室17へ流れ、排気筒18より器具外へ排出される。
また、バーナ13の燃焼ガスの一部は、燃焼室15からバイパス排気路50を流通し、放熱部51から燃焼ガスの熱を放出して排気室17へ流れて合流し、排気筒18より器具外へ排出される。
これにより、輻射暖房機能付きボイラ装置1の温水暖房と器具正面への輻射暖房が1台で可能になる。
【0021】
さらに、バイパス排気路50と排気室17に連通するダンパ室54を設け、ダンパ室54の内部にバイパス排気路50の放熱量を調節できる開度調整可能に形成されたダンパ53が設けられている。燃焼ガスは、ダンパ室54のバイパス排気路50側のバイパス排気路50の流出口50bから入り、ダンパ53を通過し、ダンパ室54の排気室17の流入口17aへ流れる。
【0022】
図3に示すように、ダンパ53は、制御部60からの信号を受けて、ダンパモータ55及びダンパ53に連結した駆動軸56により、ダンパ53の開度を、開度90度の全開状態と、開度0度の全閉状態と、それらの中間の開度に設定することができるものである。
ダンパ53の開度が全開状態と全閉状態の中間の状態(例えば開度が30度)のときは、バイパス排気路50はダンパ53の開度が全開状態より少ない燃焼ガスが流通し、放熱部51による輻射暖房と暖房回路34による温水暖房が併用できる排気状態となる。
ダンパ53が全開状態のときは、バイパス排気路50に流れる燃焼ガスが最大となり、放熱部51による輻射暖房が最大となり、同時に暖房回路34による温水暖房も併用できる排気状態となる。
一方、ダンパ53が全閉状態のときは、バイパス排気路50は閉塞され、暖房回路34による温水暖房を優先した排気状態となる。
【0023】
71は輻射暖房機能付きボイラ装置1に設けられた操作部71で、この操作部71に設けた室温設定手段75と水温設定手段76と表示部72が設けてある。
室温設定手段75は、放熱部51による輻射暖房能力を示すもので、具体的には目標室温Taを設定するものである。
水温設定手段76は、暖房回路34による温水暖房の暖房能力を示すもので、缶体10内の目標温水温度Twを設定するものである。
表示部72は、室温設定手段75による設定状態と、水温設定手段76の設定状態とを表示するものである。
【0024】
図2に示すように、60はバーナ13の燃焼制御とダンパ53の開度調整を行うマイコンからなる制御部60で、入力側には温水温度センサ21と室温センサ77が接続され、出力側にはバーナ13、送風ファン14、ポンプ36、ダンパモータ55が接続されている。
また、制御部60と操作部71とが通信可能に接続されている。
【0025】
次に、本発明の第1の実施形態の作用について図4図5に基づいて説明する。
ステップS1では、室温設定手段75による目標室温Taがセットされ、ステップS2で室温センサ77の検出温度Tを読み込む。
室温設定手段75によって設定される目標室温Taは、制御部60によって例えば12℃から30℃の範囲で設定できる。
【0026】
ステップS3では、検出温度Tがダンパ53を全開にする温度である全開温度TL以下であるか判定し、検出温度Tが全開温度TL以下である場合はステップS4へ遷移し、ダンパ53の開度θを90度すなわち全開状態とし、ステップS2へ遷移する。全開温度TLは予め、例えば目標室温Ta-10℃に設定されている。
ステップS3で、検出温度Tが全開温度TLを超える場合は、ステップS5へ遷移する。
【0027】
ステップS5では、検出温度Tが目標室温Ta以上であるか判定し、検出温度Tが目標室温Ta以上である場合はステップS6へ遷移し、ダンパ53の開度θを0度すなわち全閉状態とし、ステップS2へ遷移する。
ステップS5で、検出温度Tが目標室温Ta未満の場合は、ステップS7へ遷移する。
【0028】
ステップS7では、開度制御部78によりダンパ53の開度θ(度)は、目標室温Ta、検出温度T、全開温度TLに基づいて、次の式1で表される開度θに変更し、ステップS2へ遷移する。
θ=(Ta-T)/(Ta-TL)×90 (式1)
式1は、検出温度Tが検出温度Tより高い目標室温Taに近いほど開度θが閉方向に変化し、逆に、検出温度Tが検出温度Tより低い全開温度TLに近いほど開度θが開方向に変化することを意味する。
【0029】
具体的に説明すると、室温センサ77の検出温度Tが8℃で、目標室温Taが使用者によって例えば25℃に設定されている場合、検出温度Tが全開温度TL(例えば目標室温Ta-10℃=15℃)より低いため、ダンパ53の開度θはステップS4によりθ=90度の全開状態に設定され、放熱部51からの輻射暖房は最大能力で暖房する。
室温センサ77の検出温度Tが20℃で、目標室温Taが例えば25℃の場合、開度θは式1を用いて、θ=(25-20)/(25-(25-10))×90度となりθ=45度となり、バイパス排気路50はダンパ53の開度θが全開状態より少ない燃焼ガスが流通し、放熱部51による輻射暖房と暖房回路34による温水暖房が併用できる排気状態となる。
さらに、室温センサ77の検出温度Tが25℃で、目標室温Taを例えば25℃から例えば23℃に変更した場合、検出温度Tが目標室温Taより高いため、ダンパ53の開度θはステップS6によりθ=0度の全閉状態に設定される。これにより、放熱部51からの輻射暖房は最小能力となる。
このとき、バーナ13の燃焼に変更はなく、よって暖房回路34を流通する温水温度は変化しないため、温水暖房への影響はないものである。
【0030】
一方、温水暖房側は、使用者が水温設定手段76により暖房回路34を循環する缶体水温の目標温水温度Twを好みの温度に設定すると、温水温度センサ21の検出温度と設定した目標温水温度Twの差に応じて、温水温度センサ21の検出温度が、目標温水温度Twとなるように、バーナ13がオンオフ制御によって燃焼制御される。
例えば、温水温度センサ21の検出温度が目標温水温度Tw未満であれば、バーナ13がオンとなり、温水温度センサ21の検出温度が目標温水温度Tw以上であれば、バーナ13がオフとなって、暖房回路34に接続された図示しない放熱器が目標温水温度Twに応じた暖房能力に維持される。
したがって、使用者が水温設定手段76により缶体水温の目標温水温度Twを下げると、前記放熱器の暖房能力が低下し、前記放熱器を設置した室内の室温が低下し、逆に、目標温水温度Twを上げると、前記放熱器の暖房能力が上昇し、前記放熱器を設置した室内の室温が上昇するものである。
【0031】
ここで、温水暖房の目標温水温度Twを変更した場合の作動について説明する。
【0032】
今、水温設定手段76によって缶体水温の目標温水温度Twを変更して、例えば50℃から45℃に変更した場合、燃焼制御部79によってバーナ13の火力が下がって暖房回路34を流れる温水温度が下がり、暖房回路34に接続された放熱器の暖房能力が低下する。
このとき、上記の水温設定手段76の変更により放熱器の暖房能力が低下し、また、燃焼ガスの温度の低下による放熱部51の温度低下により、室温センサ77の検出温度Tが例えば22℃から20℃に変化したとすると、目標室温Taが例えば25℃であれば、ダンパ53の開度θは(25-22)/(25-(25-10))×90度=27度から、(25-20)/(25-(25-10))×90度=45度に開方向に変化し、より多い燃焼ガスが流通して輻射暖房の効果が増大する方向となり、室温への影響を少なくするようにできるものである。
【0033】
一方、水温設定手段76によって缶体水温の目標温水温度Twを変更して、例えば50℃から55℃に変更した場合、燃焼制御部79によってバーナ13の火力が上がって暖房回路34を流れる温水温度が上がり、暖房回路34に接続された放熱器の暖房能力が上昇する。
このとき、上記の水温設定手段76の変更により放熱器の暖房能力が上昇し、また、燃焼ガスの温度の上昇による放熱部51の温度上昇により、室温センサ77の検出温度Tが例えば22℃から24℃に変化したとすると、目標室温Taが例えば25℃であれば、ダンパ53の開度θは(25-22)/(25-(25-10))×90度=27度から、(25-24)/(25-(25-10))×90度=9度に閉方向に変化し、流通する燃焼ガスが少なくなり輻射暖房の効果が減少する方向となり、室温への影響を少なくするようにできるものである。
【0034】
次に、輻射暖房の目標室温Taを変更した場合の温水暖房への影響について説明する。
制御部60は、室温センサ77の検出温度と目標室温Taに基づいてダンパ53の開度θを開方向または閉方向に制御する。目標温水温度Twは、室温センサ77の検出温度と目標室温Taとは独立した水温設定手段76によって設定され、バーナ13の火力は、温水温度センサ21の検出温度と目標温水温度Twに基づいて燃焼制御を行うので、温水暖房への影響は少ないものである。
【0035】
次に、第2の実施形態について図6から図9を参照して説明する。なお、各図において、共通する構成要素や同種の構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
【0036】
第2の実施形態と第1の実施形態との構成の違いは、操作部71に輻射能力設定手段80が設けてある点である。
輻射能力設定手段80は、放熱部51による輻射暖房能力を設定するもので、具体的には目標室温Taにおけるダンパ53の開度θが異なる3つの輻射レベルから1つを設定するものである。
表示部72は、室温設定手段75による設定状態と、水温設定手段76の設定状態と、輻射能力設定手段80の設定状態を表示する。
【0037】
第2の実施形態では、輻射暖房能力が異なる複数のダンパ制御仕様がある。
第1ダンパ制御81は、室温センサ77の検出温度が上昇して目標室温Taに近づくにつれ第1開度(例えば開度θ=0度(全閉状態))とするものである。
第2ダンパ制御82は、室温センサ77の検出温度が上昇して目標室温Taに近づくにつれ第1開度より開方向の第2開度(例えば開度θ=θ1、0<θ1)とするものである。
第3ダンパ制御83は、室温センサ77の検出温度が上昇して目標室温Taに近づくにつれ第2開度より開方向の第3開度(例えば開度θ=θ2、0<θ1<θ2)とするものである。
【0038】
第1ダンパ制御81は、室温センサ77の検出温度が上昇して目標室温Taに近づくにつれ開度θ=0度(全閉状態)とするもので、最も輻射暖房が控え目な作動である。
第3ダンパ制御83は、室温センサ77の検出温度が上昇して目標室温Taに近づくにつれ開度θ=θ2とするもので、最も輻射暖房を積極的に行う作動である。
第2の実施形態の輻射能力設定手段80は、第1ダンパ制御81と、第2ダンパ制御82と、第3ダンパ制御83と、から1つを設定するものである。
第1ダンパ制御81は輻射レベル「弱」に相当し、第2ダンパ制御82は輻射レベル「中」に相当し、第3ダンパ制御83は輻射レベル「強」に相当する。
【0039】
第2の実施形態の作用について図8図9に基づき説明する。
ステップS8では、室温設定手段75による目標室温Taのセットと、輻射能力設定手段80による輻射レベル「強」・「中」・「弱」のいずれかれ1つがセットされる。
ステップS9で室温センサ77の検出温度Tを読み込む。
【0040】
ステップS10では、検出温度Tがダンパ53を全開にする温度である全開温度TL以下であるか判定し、検出温度Tが全開温度TL以下である場合はステップS11へ遷移し、ダンパ53の開度θを90度すなわち全開状態とし、ステップS9へ遷移する。全開温度TLは予め、例えば目標室温Ta-10℃に設定されている。
ステップS10で、検出温度Tが全開温度TLを超える場合は、ステップS12へ遷移する。
【0041】
ステップS12では、輻射能力設定手段80の輻射レベルが「弱」に設定されているか判定し、「弱」の場合は、ステップS13に遷移し、「弱」でない場合はステップS16へ遷移する。
ステップS13で、検出温度Tが目標室温Ta以上の場合は、ステップS14へ遷移し、ダンパ53の開度θを0度すなわち全閉状態とし、ステップS9へ遷移する。
ステップS13で、検出温度Tが目標室温Ta未満の場合は、ステップS15へ遷移する。
【0042】
ステップS15では、ダンパ53の開度θ(度)を、目標室温Ta、検出温度T、全開温度TLに基づいて、式1で表される開度θに変更し、ステップS9へ遷移する。
【0043】
ステップS16では、輻射能力設定手段80の輻射レベルが「中」に設定されているか判定し、「中」の場合は、ステップS17に遷移し、「中」でない場合はステップS19へ遷移する。
ステップS17で、検出温度Tが目標室温Ta以上の場合は、ステップS14へ遷移し、ダンパ53の開度θを0度すなわち全閉状態とする。
ステップS17で、検出温度Tが目標室温Ta未満の場合は、ステップS18へ遷移する。
【0044】
ステップS18では、ダンパ53の開度θ(度)は、目標室温Ta、検出温度T、全開温度TL、開度θ1に基づいて、次の式2で表される開度θに変更し、ステップS9へ遷移する。
θ=(Ta-T)/(Ta-TL)×(90-θ1)+θ1 (式2)
式2で、開度θ1は目標室温Taより低い検出温度Tが目標室温Taに近づいたときに設定される開度である。
式2は、検出温度Tが検出温度Tより高い目標室温Taに近いほど開度θが開度θ1に近くなるように変化し、逆に、検出温度Tが検出温度Tより低い全開温度TLに近いほど開度θが開方向に変化することを意味する。
【0045】
なお、ステップS17で、検出温度Tが目標室温Ta以上の場合はステップS14へ遷移し、検出温度Tが目標室温Ta未満の場合はステップS18へ遷移するとしたが、検出温度Tが上昇して目標室温Ta+1℃以上となった場合にステップS14へ遷移し、検出温度Tが下降して目標室温Ta-1℃未満となった場合にステップS18へ遷移して、ヒステリシス制御を行い、上昇方向と下降方向とで制御の切り替え挙動にヒステリシスを持たせることで、チャタリング防止を図ってもよいものである。
【0046】
ステップS19で、検出温度Tが全閉温度Th以上の場合は、ステップS14へ遷移し、ダンパ53の開度θを0度すなわち全閉状態とする。
ステップS19で、検出温度Tが全閉温度Th未満の場合は、ステップS20へ遷移する。
【0047】
ステップS20では、ダンパ53の開度θ(度)は、全閉温度Th、検出温度T、全開温度TLに基づいて、次の式3で表される開度θに変更し、ステップS9へ遷移する。
θ=(Th-T)/(Th-TL)×90 (式3)
式3は、検出温度Tが検出温度Tより高い全閉温度Thに近いほど開度θが閉方向に変化し、逆に、検出温度Tが検出温度Tより低い全開温度TLに近いほど開度θが開方向に変化することを意味する。
【0048】
これにより、温水暖房の目標温水温度Twを変更して、バーナ13の火力(燃焼)が変わっても、検出温度Tが維持されるようにダンパ53の開度θが変更されるので、室温への影響を少なくすることができるものである。
【0049】
また、輻射暖房の目標室温Taの設定を変更して、ダンパ53の開度θが変わっても、バーナ13の燃焼は、目標温水温度Twが維持されるように火力が保たれるので、温水暖房への影響を少なくすることができるものである。
【0050】
なお、第1の実施形態と第2の実施形態とで説明したダンパ53は、駆動軸56を軸とした開き戸の形態で説明したが、シャッターなどの引き戸の形態でもよいものである。この場合、開度θに相当するものとして引き戸の開口面積を指定してもよいものである。
【0051】
なお、この実施形態では上向きに取り付けられたバーナ13を構成する燃焼機器で説明したが、これに限定されることなく、例えば横向きに取り付けたガンタイプバーナを構成する燃焼機器でもよい。
【0052】
なお、操作部71を輻射暖房機能付きボイラ装置1に設けたが、輻射暖房機能付きボイラ装置1の外部に設けてもよいものである。
【0053】
なお、バイパス排気路50に向けて図示しない対流ファンの風を当てて、器具外へ温風を吹き出すことで温風暖房も行うことができ、当業者の設計の範囲で行っても良いものである。
【0054】
なお、本実施形態で用いたその他の構成は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 :輻射暖房機能付きボイラ装置
2 :筐体
10 :缶体
13 :バーナ
15 :燃焼室
17 :排気室
18 :排気筒
20 :熱交換器
21 :温水温度センサ
32 :温水往き管
33 :温水戻り管
34 :暖房回路
36 :ポンプ
50 :バイパス排気路
53 :ダンパ
60 :制御部
71 :操作部
75 :室温設定手段
76 :水温設定手段
77 :室温センサ
78 :開度制御部
79 :燃焼制御部
80 :輻射能力設定手段
81 :第1ダンパ制御
82 :第2ダンパ制御
83 :第3ダンパ制御
T :検出温度
Ta :目標室温
Tw :目標温水温度
θ、θ1 :開度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12