(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162882
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】電気モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/18 20060101AFI20231101BHJP
H02K 9/02 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H02K5/18
H02K9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073583
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 真平
(72)【発明者】
【氏名】貴傳名 康生
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605CC01
5H605DD03
5H605DD12
5H609PP01
5H609PP05
5H609PP06
5H609QQ02
5H609QQ23
5H609RR63
(57)【要約】
【課題】ステータで発生する熱を効果的に逃がすことができる電気モータを提供する。
【解決手段】電気モータ10は、ステータコア21と、ステータコア21を覆うインシュレータ22,23と、インシュレータ22,23を介してステータコア21に巻回される巻線24と、を有するステータ20と、ステータ20で発生する回転磁界を受けて回転するロータ30と、ステータ20を収容する筒状壁42を有するハウジング40と、筒状壁42の開口を塞ぐカバー50と、を備える。カバー50は、ロータ30の軸方向において、インシュレータ22に密着している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、前記ステータコアを覆うインシュレータと、前記インシュレータを介して前記ステータコアに巻回されるコイルと、を有するステータと、
前記ステータで発生する回転磁界を受けて回転するロータと、
前記ステータを収容する筒状壁を有するハウジングと、
前記筒状壁の開口を塞ぐカバーと、を備え、
前記カバーは、前記ロータの軸方向において、前記インシュレータに密着している
電気モータ。
【請求項2】
前記インシュレータと前記カバーとは、樹脂材料によって構成されるものであり、
前記インシュレータと前記カバーとの間に第1溶着部を備える
請求項1に記載の電気モータ。
【請求項3】
前記ハウジングと前記カバーとは、樹脂材料によって構成されるものであり、
前記ハウジングと前記カバーとの間に第2溶着部を備える
請求項1又は請求項2に記載の電気モータ。
【請求項4】
前記インシュレータと前記カバーとは、樹脂材料によって構成されるものであり、
前記カバーの熱伝導率は、前記インシュレータの熱伝導率よりも高い
請求項1又は請求項2に記載の電気モータ。
【請求項5】
前記カバーは、前記ロータの軸方向を板厚方向とする板状をなし、
前記カバーにおいて、前記ステータを向く面を第1面とし、前記第1面の反対側の面を第2面としたとき、
前記カバーは、前記第2面から突出する放熱部を有する
請求項4に記載の電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロータがステータの内側に配置されるインナーロータ型の電気モータが記載されている。このような電気モータを駆動するときにステータで発生する熱は、ステータとロータとを収容するハウジングを介して放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした電気モータは、ステータで発生する熱を効果的に逃がす点において、改善の余地が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する電気モータは、ステータコアと、前記ステータコアを覆うインシュレータと、前記インシュレータを介して前記ステータコアに巻回されるコイルと、を有するステータと、前記ステータで発生する回転磁界を受けて回転するロータと、前記ステータを収容する筒状壁を有するハウジングと、前記筒状壁の開口を塞ぐカバーと、を備え、前記カバーは、前記ロータの軸方向において、前記インシュレータに密着している。
【0006】
電気モータにおいて、カバーとインシュレータとは密着しているため、ステータで発生する熱は、ハウジングだけでなく、インシュレータを介してカバーにも伝達される。よって、電気モータは、ステータで発生する熱を効果的に逃がすことができる。
【0007】
電気モータにおいて、前記インシュレータと前記カバーとは、樹脂材料によって構成されるものであり、前記インシュレータと前記カバーとの間に第1溶着部を備えることが好ましい。
【0008】
電気モータにおいて、インシュレータとカバーとは第1溶着部によって溶着されている。このため、電気モータは、インシュレータとカバーとの密着性を高めることができる。つまり、電気モータは、インシュレータからカバーに熱を伝わりやすくできる。
【0009】
電気モータにおいて、前記ハウジングと前記カバーとは、樹脂材料によって構成されるものであり、前記ハウジングと前記カバーとの間に第2溶着部を備えることが好ましい。
電気モータにおいて、ハウジングとカバーとは溶着されている。このため、電気モータは、ハウジングにカバーを接着したり締結したりしなくても、ハウジングとカバーとを一体化できる。
【0010】
電気モータにおいて、前記インシュレータと前記カバーとは、樹脂材料によって構成されるものであり、前記カバーの熱伝導率は、前記インシュレータの熱伝導率よりも高いことが好ましい。
【0011】
電気モータは、カバーの熱伝導率をインシュレータの熱伝導率以下とする比較例に比べ、インシュレータからカバーに伝わる熱量を増加できる。つまり、電気モータは、カバーにおける放熱効果を高めることができる。
【0012】
電気モータにおいて、前記カバーは、前記ロータの軸方向を板厚方向とする板状をなし、前記カバーにおいて、前記ステータを向く面を第1面とし、前記第1面の反対側の面を第2面としたとき、前記カバーは、前記第2面から突出する放熱部を有することが好ましい。
【0013】
電気モータは、放熱部を有しない比較例に比べ、カバーにおける放熱効果をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
電気モータは、ステータで発生する熱を効果的に逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図3は、電気モータのステータの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、電気モータの一実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、電気モータ10は、ステータ20と、ロータ30と、ハウジング40と、カバー50と、複数の軸受61,62と、ケース70と、温度センサ80と、を備える。
【0017】
電気モータ10は、例えば、車両の構成要素を駆動するアクチュエータの駆動源として採用される。詳しくは、電気モータ10は、スライドドア又はバックドアを駆動するアクチュエータ、窓ガラスを駆動するアクチュエータ、シートを駆動するアクチュエータ及びサンルーフを駆動するアクチュエータなどの駆動源として採用される。また、本実施形態の電気モータ10は、ブラシレスモータである。
【0018】
図2及び
図3に示すように、ステータ20は、円環状をなしている。ステータ20は、ステータコア21と、ステータコア21を覆う2つのインシュレータ22,23と、2つのインシュレータ22,23を介してステータコア21に巻回される巻線24と、を有する。また、ステータ20は、巻線24が接続される複数のバスバー25と、巻線24が接続される中性点端子26と、を有する。
【0019】
図3に示すように、ステータコア21は、環状をなしている。ステータコア21は、例えば、複数の電磁鋼板を積層することで構成されている。ステータコア21は、中心部に向かって延びる複数のティース211,212を有する。
【0020】
2つのインシュレータ22,23は、ステータコア21と巻線24とを電気的に絶縁する。2つのインシュレータ22,23は、絶縁性を有するとともに光吸収性を有する樹脂材料によって構成されている。2つのインシュレータ22,23は、ステータコア21を軸方向における一方側から覆う第1インシュレータ22と、ステータコア21を軸方向における他方側から覆う第2インシュレータ23と、を有する。
【0021】
図3に示すように、第1インシュレータ22は、ステータコア21の外径に応じた大きさの環状部221と、環状部221から環状部221の中心に向かって延びる複数の被覆部222と、を有する。また、第1インシュレータ22は、環状部221から被覆部222とは逆方向に延びる第1支持部223及び第2支持部224と、環状部221から軸方向に延びる複数の突出部225と、を有する。
【0022】
複数の被覆部222は、ステータコア21のティース211と同じ数だけ設けられている。被覆部222の形状は、ティース211に対応する形状をなしている。第1支持部223は、3つのバスバー25を支持している。3つのバスバー25は、電気モータ10を駆動するインバータ回路に接続される。第2支持部224は、中性点端子26を支持している。3つのバスバー25及び中性点端子26は導電体である。
【0023】
複数の突出部225は、環状部221の周方向に間隔をあけた状態で配置されている。複数の突出部225は、軸方向から見たときに環状部221に沿う円弧状をなしている。複数の突出部225の形状は、異なっている。例えば、複数の突出部225において、周方向における長さが異なっていたり、軽方向における幅が異なっていたりする。ただし、複数の突出部225の先端面は、軸方向に対して垂直な平面となっている。複数の突出部225の先端面の高さは一定となっている。
【0024】
第2インシュレータ23は、第1インシュレータ22の環状部221に相当する環状部231と、第1インシュレータ22の複数の被覆部222に相当する複数の被覆部232と、を備える。第2インシュレータ23は、第1インシュレータ22と同等の構成であるため、説明を省略する。
【0025】
巻線24は、U層巻線、V層巻線及びW層巻線を有する。U層巻線、V層巻線及びW層巻線は、インシュレータ22,23によって被覆されたステータコア21のティース211に巻回されている。詳しくは、ステータコア21の6つのティース211のうちの2つのティース211にはU層巻線が巻回されている。残る4つのティース211のうちの2つのティース211にはV層巻線が巻回されている。残る2つのティース211にはW層巻線が巻回されている。こうして、U層巻線のうちステータコア21のティース211に巻回された部分はU層コイルとなり、V層巻線のうちステータコア21のティース211に巻回された部分はV層コイルとなり、W層巻線のうちステータコア21のティース211に巻回された部分はW層コイルとなる。以降の説明では、こうしたコイルを「コイル241」という。
【0026】
U層巻線、V層巻線及びW層巻線の一端はそれぞれ3つのバスバー25に接続され、U層巻線、V層巻線及びW層巻線の他端は中性点端子26に接続されている。この点で、本実施形態のコイル241の結線方法はスター結線である。他の実施形態においてコイル241の結線方法はデルタ結線であってもよい。なお、U層巻線、V層巻線及びW層巻線のうち、ステータコア21のティース211に巻回されない部分は、インシュレータ22,23の環状部221,231に沿って配索される。
【0027】
図1及び
図2に示すように、ロータ30は、円柱状をなす回転軸31と、円筒状をなすホルダ32と、円筒状をなす永久磁石33と、を有する。回転軸31は、駆動対象に動力を伝達する駆動ギヤ311を有する。つまり、電気モータ10は、駆動ギヤ311を介して駆動対象に動力を伝達する。ホルダ32は、例えば、樹脂材料によって構成されている。ホルダ32は、永久磁石33を保持した状態で、回転軸31に固定されている。つまり、ロータ30において、回転軸31とホルダ32と永久磁石33とは、一体に回転する。ロータ30は、ステータ20の内側に配置されている。この点で、本実施形態の電気モータ10は、インナーロータ型の電気モータである。回転軸31の軸方向における両端部は、それぞれ2つの軸受61,62に支持されている。2つの軸受61,62は、電気モータ10のケース70に支持されている。そして、ロータ30は、ステータ20で発生する回転磁界を受けて回転する。
【0028】
ハウジング40は、光吸収性を有する樹脂材料によって構成されている。ハウジング40は、円板状をなす底壁41と、筒状をなす筒状壁42と、を有する。底壁41の中央部には、円形の丸孔43が設けられている。筒状壁42は、底壁41の外周縁から軸方向に延びている。つまり、筒状壁42は、軸方向における一方が開口し、軸方向における他方が底壁41によって閉じている。筒状壁42の先端面は、軸方向に対して垂直な平面となっている。筒状壁42は、第1インシュレータ22の第1支持部223が収まる第1凹部421と、第1インシュレータ22の第2支持部224を収容する第2凹部422と、を有する。ハウジング40は、ステータ20とロータ30とを収容する。このとき、ステータ20は、ハウジング40に固定されている。
【0029】
カバー50は、光透過性を有する樹脂材料によって構成されている。カバー50の熱伝導率は、インシュレータ22,23の熱伝導率及びハウジング40の熱伝導率よりも高くなっている。例えば、カバー50を構成する樹脂材料は、金属などの熱伝導率の高い充填剤を含む樹脂材料とすればよい。カバー50は、軸方向を板厚方向とする円板状をなしている。カバー50の中央部には、円形の丸孔51が設けられている。カバー50の丸孔51は、ハウジング40の丸孔43よりも大きくなっている。以降の説明では、カバー50の板厚方向における一方の面を第1面50Bとし、第1面50Bの反対側の面を第2面50Tとする。カバー50は、第2面50Tから突出する複数の放熱フィン52を有する。複数の放熱フィン52は、カバー50を軸方向から見たとき環状をなしている。複数の放熱フィン52は、丸孔51の周囲において、カバー50の径方向に並んでいる。放熱フィン52は「放熱部」の一例に相当している。
【0030】
カバー50は、ハウジング40の開口を覆うようにハウジング40に固定されている。このとき、カバー50は、第1インシュレータ22とハウジング40とに密着している。言い換えれば、
図4に示すように、電気モータ10は、第1インシュレータ22とカバー50との間に第1溶着部91を有するとともに、ハウジング40とカバー50との間に第2溶着部92を有している。第1溶着部91は、ハウジング40の筒状壁42の先端面の全体にわたって設けられている。一方、第2溶着部92は、第1インシュレータ22の突出部225の先端面の全体にわたって設けられている。
【0031】
温度センサ80は、例えば、抵抗温度計である。温度センサ80は、コイル241の温度を把握するための構成である。温度センサ80は、ロータ30の軸方向において、カバー50と対向する位置に配置されている。本実施形態では、温度センサ80は、カバー50の放熱フィン52と対向する位置に配置されている。つまり、温度センサ80は、電気モータ10の発熱源であるコイル241を測定対象とするのではなく、カバー50を測定対象としている。温度センサ80は、不図示の制御基板に実装されている。
【0032】
<電気モータ10の製造方法>
電気モータ10の製造方法は、固定工程と、第1溶着工程と、第2溶着工程と、組立工程と、を備える。
【0033】
固定工程は、ハウジング40に対してステータ20を固定する工程である。固定工程では、ハウジング40の筒状壁42の先端面とステータ20の第1インシュレータ22の突出部225の先端面とが同じ高さに位置するように、ハウジング40に対してステータ20が位置決めされる。本実施形態では、筒状壁42の高さとステータ20の高さとが等しくなっているため、ハウジング40にステータ20を収容することにより、筒状壁42の先端面と第1インシュレータ22の突出部225の先端面とが同じ高さに位置する。ステータ20は、ハウジング40に嵌合させることで固定してもよいし、接着材を用いてハウジング40に固定してもよい。
【0034】
第1溶着工程は、ハウジング40の筒状壁42の先端面とカバー50の第1面50Bとを溶着する工程である。第1溶着工程は、固定工程の後工程である。第1溶着工程では、ハウジング40に対してカバー50を押し付けた状態で、ハウジング40とカバー50とを溶着したい部分にレーザが走査される。すると、カバー50を透過したレーザ光がハウジング40の筒状壁42の先端面で吸収されることにより、ハウジング40とカバー50との境界の温度が上昇する。こうして、
図4に示すように、第1溶着部91が生成されることにより、カバー50がハウジング40に溶着される。
【0035】
第2溶着工程は、第1インシュレータ22の突出部225の先端面とカバー50の第1面50Bとを溶着する工程である。第2溶着工程は、固定工程の後工程である。第2溶着工程は、第1溶着工程の前工程であってもよいし、後工程であってもよいし、同時に実施される工程であってもよい。第2溶着工程では、第1インシュレータ22に対してカバー50を押し付けた状態で、第1インシュレータ22とカバー50とを溶着したい部分にレーザが走査される。すると、カバー50を透過したレーザ光が第1インシュレータ22の突出部225の先端面で吸収されることにより、第1インシュレータ22とカバー50との境界の温度が上昇する。こうして、
図4に示すように、第2溶着部92が生成されることにより、カバー50が第1インシュレータ22に溶着される。
【0036】
組立工程は、ステータ20の内側にロータ30を配置したり、ロータ30を軸受61,62に通したり、電気モータ10の構成部品をケース70内に配置したりする工程である。組立工程は、第1溶着工程及び第2溶着工程の後工程である。組立工程を実施することにより、電気モータ10が完成する。
【0037】
<本実施形態の作用>
電気モータ10の駆動時における伝熱態様について説明する。
図4に実線矢印で示すように、コイル241で発生する熱の一部は、コイル241に接する第1インシュレータ22に伝達される。そして、第1インシュレータ22に伝達される熱は、第1インシュレータ22に密着するカバー50に伝達される。このように、コイル241で発生する熱の一部は、空気層を介さずに、カバー50まで伝達される。そして、カバー50に伝達される熱は、カバー50の第2面50Tから放熱される。
【0038】
実線矢印での図示を省略しているが、コイル241で発生する熱の一部は、ステータコア21にも第2インシュレータ23にも伝達される。ステータコア21に伝達される熱は、ハウジング40との間の空気層を介してハウジング40に伝達された後、ハウジング40から放熱される。第2インシュレータ23に伝達される熱の一部は、底壁41と接する部分からハウジング40に伝達された後、ハウジング40から放熱される。コイル241で発生する熱の一部は、コイル241とハウジング40又はカバー50との間の空気層を介して、ハウジング40又はカバー50に伝達される。そして、こうした熱は、ハウジング40又はカバー50から放熱される。
【0039】
<本実施形態の効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)電気モータ10において、カバー50と第1インシュレータ22とは密着しているため、ステータ20で発生する熱は、ハウジング40だけでなく、第1インシュレータ22を介してカバー50にも伝達される。よって、電気モータ10は、ステータ20で発生する熱を効果的に逃がすことができる。
【0040】
(2)電気モータ10において、第1インシュレータ22とカバー50とは溶着されている。言い換えれば、電気モータ10は、第1インシュレータ22とカバー50との境界に第1溶着部91を有する。このため、電気モータ10は、第1インシュレータ22とカバー50との密着性を高めることができる。つまり、電気モータ10は、第1インシュレータ22からカバー50に熱を伝わりやすくできる。
【0041】
(3)電気モータ10において、ハウジング40とカバー50とは溶着されている。言い換えれば、電気モータ10は、ハウジング40とカバー50との境界に第2溶着部92を有する。このため、電気モータ10は、ハウジング40にカバー50を接着したり締結したりしなくても、ハウジング40とカバー50とを一体化できる。
【0042】
(4)カバー50の熱伝導率は、第1インシュレータ22の熱伝導率よりも高くなっている。このため、電気モータ10は、カバー50の熱伝導率を第1インシュレータ22の熱伝導率以下とする比較例に比べ、第1インシュレータ22からカバー50に伝わる熱量を増加できる。つまり、電気モータ10は、カバー50における放熱効果を高めることができる。
【0043】
(5)電気モータ10は、第2面50Tに放熱フィン52を有する。このため、電気モータ10は、放熱フィン52を有しない比較例に比べ、カバー50における放熱効果をさらに高めることができる。
【0044】
(6)電気モータ10の発熱源であるコイル241を測定対象とする比較例の場合、巻線24の巻回態様によって、温度センサ80からコイル241までの距離が変動しうる。この点で、比較例は、温度センサ80の測定精度に影響が生じるおそれがある。これに対し、本実施形態の電気モータ10は、成形精度の高いカバー50を測定対象とするため、上記事態を回避できる。つまり、本実施形態は、コイル241の温度を精度良く推定できる。
【0045】
(7)ステータ20を囲うハウジング40とカバー50とはともに樹脂材料によって構成されている。このため、ハウジング40とカバー50とを金属材料によって構成する場合に比較して、電気モータ10の軽量化を図ることができる。
【0046】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
・ハウジング40に対するカバー50の固定方法は、レーザ溶着でなくてもよい。例えば、カバー50は、ねじなどの締結部材を用いてハウジング40に固定してもよい。
・カバー50を第1インシュレータ22に密着できるのであれば、カバー50と第1インシュレータ22とは接合されていなくてもよい。この場合、第1インシュレータ22とカバー50との間に熱伝導性の良いグリスを介在させることが好ましい。なお、カバー50と第1インシュレータ22が密着しているとは、第1インシュレータ22からカバー50に効率よく熱が伝わるための条件である。このため、カバー50と第1インシュレータ22とが密着していることには、カバー50と第1インシュレータ22との間に熱伝導性の良いグリスが介在していることを含むものとする。
【0048】
・第1インシュレータ22において、突出部225は、巻線24の配索経路を確保できるのであれば、円筒状をなしていてもよい。言い換えれば、上記実施形態における複数の突出部225は、環状部221の周方向につながっていてもよい。
【0049】
・ハウジング40の材質及びカバー50の材質は、アルミニウムなどの金属材料であってもよい。
・カバー50の熱伝導率は、インシュレータ22,23の熱伝導率よりも高くなくてもよい。同様に、ハウジング40の熱伝導率は、インシュレータ22,23の熱伝導率よりも高くなくてもよい。
【0050】
・放熱フィン52の形状は、適宜に変更可能である。例えば、カバー50の第2面50Tを粗面とすることで、カバー50の第2面50Tを平滑面とする場合よりも、第2面50Tの表面積を広くしてもよい。この場合、カバー50の第2面50Tに設けられた粗面が「放熱部」に相当する。
【0051】
・ハウジング40と第1インシュレータ22とに対するカバー50の接合方法がレーザ溶着でない場合、放熱フィン52は、カバー50の第2面50Tの全域にわたって設けてもよい。
【0052】
・電気モータ10において、ハウジング40は底壁41を有しなくてもよい。この場合、電気モータ10は、ハウジング40の底壁41に相当する第2カバーを備えることが好ましい。第2カバーは、カバー50と同様にハウジング40の筒状壁42に接合されることが好ましい。
【0053】
・電気モータ10は、ステータ20の外側にロータ30が配置されるアウターロータ型の電気モータであってもよい。
・電気モータ10は、コイル241が回転しない電気モータであれば、ブラシレスモータでなくてもよい。例えば、電気モータ10は、ステッピングモータであってもよい。
【0054】
・電気モータ10は、ケース70と温度センサ80とを備えなくてもよい。この場合、軸受61,62はハウジング40に支持されることが好ましく、軸受61,62はカバー50に支持されることが好ましい。
【0055】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
電気モータは、前記ロータの軸方向に対して前記カバーと対向する位置に設置され、前記カバーの温度を測定する温度センサを有することが好ましい。
【符号の説明】
【0056】
10…電気モータ
20…ステータ
21…ステータコア
22…第1インシュレータ(インシュレータ)
221…環状部
222…被覆部
223…第1支持部
224…第2支持部
225…突出部
23…第2インシュレータ
231…環状部
232…被覆部
24…巻線
241…コイル
30…ロータ
31…回転軸
32…ホルダ
33…永久磁石
40…ハウジング
41…底壁
42…筒状壁
50…カバー
50B…第1面
50T…第2面
52…放熱フィン
80…温度センサ
91…第1溶着部
92…第2溶着部