(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162899
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】振動減衰装置及び回転機械
(51)【国際特許分類】
F16F 15/18 20060101AFI20231101BHJP
F01D 5/16 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
F16F15/18 Z
F01D5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073609
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大平 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】新藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】野中 吉紀
(72)【発明者】
【氏名】若狭 強志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 満文
(72)【発明者】
【氏名】水野 功一
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202BA02
3G202BB03
(57)【要約】
【課題】減衰性能を向上させることができる振動減衰装置及び回転機械を提供する。
【解決手段】振動減衰装置は、回転体に設けられ、回転体の振動に応じて電力を発生させて自身に電荷を貯留可能であるとともに、自身で発生させた電力により回転体に力を作用可能な制振用圧電素子と、回転体に設けられ、回転体の振動に応じて電力を発生させるセンサ用圧電素子と、回転体に設けられ、センサ用圧電素子で発生した電力に基づく信号に応じて制振用圧電素子を開閉することにより、制振用圧電素子の電流と電圧の位相を揃える制振回路と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に設けられ、前記回転体の振動に応じて電力を発生させて自身に電荷を貯留可能であるとともに、自身で発生させた電力により前記回転体に力を作用可能な制振用圧電素子と、
前記回転体に設けられ、前記回転体の振動に応じて電力を発生させるセンサ用圧電素子と、
前記回転体に設けられ、センサ用圧電素子で発生した電力に基づく信号に応じて前記制振用圧電素子を開閉することにより、前記制振用圧電素子の電流と電圧の位相を揃える制振回路と、
を備える振動減衰装置。
【請求項2】
前記制振用圧電素子は複数設けられ、
複数の前記制振用圧電素子は、前記制振回路に並列に接続されている請求項1に記載の振動減衰装置。
【請求項3】
前記制振用圧電素子は複数設けられ、
前記制振回路は前記制振用圧電素子ごとに複数設けられている請求項1に記載の振動減衰装置。
【請求項4】
前記制振用圧電素子と前記センサ用圧電素子は、前記回転体内において、前記回転体の厚さ方向に重なる位置に設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の振動減衰装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の振動減衰装置と、
前記回転体と、
を備える回転機械。
【請求項6】
前記制振用圧電素子及び前記センサ用圧電素子は、前記回転体の内部に埋め込み形成されている請求項5に記載の回転機械。
【請求項7】
前記回転体は、シート状の複合材料が複数枚積層された積層部を有し、
前記制振用圧電素子及び前記センサ用圧電素子は、前記積層部の内部に埋め込み形成されている請求項6に記載の回転機械。
【請求項8】
前記制振回路に、前記回転体の振動に応じて前記制振回路を開閉させる信号を送信するマイコンと、
前記マイコンを駆動させるバッテリーと、
をさらに備える請求項5に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動減衰装置及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タービン動翼等の機械構造物に利用できる能動振動制御装置が開示されている。能動振動制御装置は、センサ機能およびアクチュエータ機能を有する歪振動子と、同歪振動子からのセンサ信号を検知し演算して上記歪振動子に制振信号を与え同歪振動子をアクチュエータとして機能させる制御手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の能動振動制御装置では、例えば制振対象が回転体の場合、スリップリング等で静止側から給電及び制振信号を伝送する必要がある。しかしながら、回転体の回転数が高い場合には、給電及び制振信号の伝送が困難となる。このため、十分な減衰性能を得られない場合があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、減衰性能を向上させることができる振動減衰装置及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る振動減衰装置は、回転体に設けられ、前記回転体の振動に応じて電力を発生させて自身に電荷を貯留可能であるとともに、自身で発生させた電力により前記回転体に力を作用可能な制振用圧電素子と、前記回転体に設けられ、前記回転体の振動に応じて電力を発生させるセンサ用圧電素子と、前記回転体に設けられ、センサ用圧電素子で発生した電力に基づく信号に応じて前記制振用圧電素子を開閉することにより、前記制振用圧電素子の電流と電圧の位相を揃える制振回路と、を備える。
【0007】
本開示に係る回転機械は、上記の振動減衰装置と、前記回転体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の振動減衰装置及び回転機械によれば、減衰性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第一実施形態に係るガスタービンの側面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係る振動減衰装置が設けられた動翼の模式図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係る動翼の形成材料及び、制振用圧電素子とセンサ用圧電素子の埋め込みを説明する図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係る制振用圧電素子とセンサ用圧電素子の配置を示す模式図である。
【
図5】本開示の第一実施形態に係る制振用圧電素子とセンサ用圧電素子と制振回路との接続を模式的に示す図である。
【
図6】本開示の第一実施形態に係る制振回路によるスイッチングを説明する図である。
【
図7】本開示の第一実施形態に係る制振回路によるスイッチングを説明する図である。
【
図8】本開示の第一実施形態に係る制振用圧電素子の電流及び電圧の位相を揃える作用について説明する図である。
【
図9】本開示の第一実施形態の変形例に係る制振用圧電素子とセンサ用圧電素子の配置を示す模式図である。
【
図10】本開示の第二実施形態に係る制振用圧電素子とセンサ用圧電素子と制振回路との接続を模式的に示す図である。
【
図11】本開示の第三実施形態に係る制振用圧電素子とセンサ用圧電素子と制振回路との接続を模式的に示す図である。
【
図12】本開示の第四実施形態に係る制振用圧電素子とセンサ用圧電素子と制振回路との接続を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係る振動減衰装置20及び振動減衰装置20が設けられたガスタービン1(回転機械)について、
図1から
図8を参照して説明する。
【0011】
(ガスタービン)
図1に示す本実施形態に係るガスタービン1は、例えば、航空推進用ジェットエンジンや発電用ガスタービン等で利用される。ガスタービン1は、圧縮空気を生成する圧縮機2と、圧縮空気に燃料を混合して燃焼させることで燃焼ガスGを生成する燃焼器3と、燃焼ガスGによって駆動されるタービン4と、圧縮機2内の回転体の振動を減衰する振動減衰装置20と、を備える。
【0012】
(圧縮機)
圧縮機2は、ロータ10(回転体)と、ケーシング5と、を有する。
【0013】
(ロータ)
ロータ10は、回転軸11と、動翼段12とを有する。回転軸11は、軸線Oに沿って延びる柱状に形成されている。
【0014】
以下、回転軸11の軸線Oを単に「軸線O」と称する場合がある。また、回転軸11の軸線O方向を単に「軸線O方向」と称し、軸線Oの径方向を単に「径方向」と称し、軸線Oの周方向を単に「周方向」と称する場合がある。
回転軸11は、軸線O回りに回転可能とされている。
【0015】
動翼段12は、回転軸11の外周面上に、軸線O方向に間隔をあけて複数配列されている。各動翼段12は、回転軸11の外周面上で周方向に間隔をあけて配列された複数の動翼13を有する。
また、ロータ10には、ロータ10の振動を減衰する振動減衰装置20が設けられている。ロータ10及び振動減衰装置20の構成の詳細については後述する。
【0016】
ケーシング5は、ロータ10を外周側から覆っている。ケーシング5は、軸線Oを中心とする筒状に形成されている。ケーシング5の内周面には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数の静翼段6が設けられている。これらの静翼段6は、上記の動翼段12に対して、軸線O方向で交互に配列されている。各静翼段6は、ケーシング5の内周面上で、周方向に間隔をあけて配列された複数の静翼6aを有する。
【0017】
(燃焼器)
燃焼器3は、圧縮機2と、下流側(
図1の右側)へ続くタービン4との間に設けられている。圧縮機2で生成された圧縮空気は、燃焼器3内部で燃料と混合されて予混合ガスとなる。燃焼器3内で、この予混合ガスが燃焼することで高温高圧の燃焼ガスGが生成され、燃焼ガスGはタービン4内へと導かれる。
【0018】
(タービン)
タービン4は、タービンロータ7と、タービンケーシング8と、保持環9と、を有する。
【0019】
(タービンロータ)
タービンロータ7は、軸線O方向に延び、軸線O回りに回転可能である。タービンロータ7は、タービン回転軸7aと、複数のタービン動翼段7bと、を有する。
タービン回転軸7aは、軸線Oに沿って延びる柱状に形成される。タービン回転軸7aは、上記の回転軸11と軸線O方向に一体に連結されている。これにより、タービンロータ7は、ロータ10とともに軸線O回りに回転するガスタービンロータを形成する。
【0020】
複数のタービン動翼段7bは、タービン回転軸7aの外周面に設けられており、軸線O方向に間隔をあけて配列されている。各タービン動翼段7bは、タービン回転軸7aの外周面上で周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼(不図示)を有する。
【0021】
(タービンケーシング)
タービンケーシング8は、タービンロータ7を外周側から覆っている。タービンケーシング8は、軸線Oを中心とする筒状に形成されている。タービンケーシング8の内周面には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼段8aが設けられている。これらのタービン静翼段8aは、上記のタービン動翼段7bに対して、軸線O方向で交互に配列されている。各タービン静翼段8aは、タービンケーシング8の内周面付近で、周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼(不図示)を有している。
【0022】
(保持環)
保持環9は、タービンケーシング8の内周面にわたって環状に設けられている。保持環9は、高温高圧の燃焼ガスGが直接タービンケーシング8に接触するのを防止するために設けられている。保持環9は、タービン動翼段7bに対応するようにタービンケーシング8の内周面にタービン動翼段7bの段数と同じ個数が設けられている。
【0023】
(ロータの詳細な構成)
以下、圧縮機2のロータ10の構成の詳細について説明する。
図2に示すように、ロータ10の回転軸11の外周面には、取付部11aが設けられている。取付部11aは、回転軸11の外周面から径方向外側に突出している。取付部11aには、動翼13が取り付けられる。
なお、
図2では、
図1とは反対側から動翼13を図示している。
【0024】
(動翼)
動翼13は、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)によって形成されている。動翼13は、シート状の複合材料14(プリプレグ)が複数枚積層されて形成されている(
図3参照)。動翼13は、「積層部」の一例である。動翼13には、ロータ10の回転に伴って振動が生じる。ロータ10には、動翼13の振動を減衰するために振動減衰装置20が設けられている。
【0025】
(振動減衰装置)
振動減衰装置20は、制振用圧電素子21と、センサ用圧電素子22と、制振回路30と、を備える。
【0026】
(制振用圧電素子)
図3に示すように、制振用圧電素子21は、動翼13を構成するシート状の複合材料14を、制振用圧電素子21の厚さ分相当の枚数だけくりぬくことにより、動翼13の内部に埋め込み形成されている。制振用圧電素子21は、動翼13の振動に応じて電力を発生させて自身に電荷を貯留可能である。さらに、制振用圧電素子21は、自身で発生させた電力により回転体に力を作用させることができる。
【0027】
(センサ用圧電素子)
センサ用圧電素子22は、制振用圧電素子21と同様に、動翼13を構成するシート状の複合材料14を、センサ用圧電素子22の厚さ分相当の枚数だけくりぬくことにより、動翼13の内部に埋め込み形成されている。センサ用圧電素子22は、動翼13の振動に応じて電力を発生させる。
【0028】
図4に示すように、センサ用圧電素子22と制振用圧電素子21は、動翼13内において、動翼13の厚さ方向Dに重なる位置に設けられている。本実施形態では、制振用圧電素子21とセンサ用圧電素子22は、翼面上の同じ位置の裏表に埋め込まれている。
【0029】
(制振回路)
制振回路30は、動翼13の根本側に位置する取付部11aに設けられている。制振回路30は、配線23によって制振用圧電素子21とセンサ用圧電素子22とに電気的に接続されている。制振回路30は、センサ用圧電素子22で発生した電力に基づく信号に応じて制振用圧電素子21を開閉することにより、制振用圧電素子21の電流と電圧の位相を揃える。
図5に示すように、制振回路30は、直流変換部31と、位相調整部32と、信号成形部33と、スイッチ部34と、を有する。
【0030】
(直流変換部)
直流変換部31は、センサ用圧電素子22に直接接続されている。直流変換部31は、センサ用圧電素子22で発生した交流電流を直流電流に変換する。
【0031】
(位相調整部)
位相調整部32は、センサ用圧電素子22に直接接続されている。位相調整部32には、センサ用圧電素子22で発生した電圧が入力される。位相調整部32は、センサ用圧電素子22の電圧の位相を適切に調整するために用いられる。例えば、位相調整部32は、センサ用圧電素子22の電圧の位相を制振用圧電素子21の電流の位相に揃えるように調整する。位相調整部32は、例えばRCフィルタである。
【0032】
(信号成形部)
信号成形部33は、直流変換部31及び位相調整部32に接続されている。信号成形部33は、直流変換部31を介してセンサ用圧電素子22の電力が入力される。信号成形部33は、センサ用圧電素子22の電力によって駆動する。信号成形部33には、位相調整部32を介してセンサ用圧電素子22の電圧が入力される。信号成形部33は、センサ用圧電素子22の電圧を増幅するとともに、電圧の波形を正弦波から矩形波に成形する。
【0033】
(スイッチ部)
スイッチ部34は、信号成形部33に接続されている。スイッチ部34には、信号成形部33によって成形された電圧信号が入力される。スイッチ部34には、例えばFET、MOSFETが設けられており、これらの素子は、入力された電圧信号によって駆動する。スイッチ部34は、制振用圧電素子21に直接接続されている。スイッチ部34は、センサ用圧電素子22で発生した電力に基づく信号に応じて制振用圧電素子21を開閉する。これにより、制振用圧電素子21の電圧の波形が成形されて、制振用圧電素子21の電流と電圧の位相が揃うようになる。
【0034】
(電気系の固有振動数)
電気系全体としての固有振動数が動翼13の固有振動数よりも十分に大きくなるように、上述の振動減衰装置20は設計されている。
【0035】
(作用効果)
以下、振動減衰装置20及び振動減衰装置20が設けられたガスタービン1の作用について、主に
図6から
図8を参照して説明する。
図6、
図7では、制振用圧電素子21と制振回路30のスイッチ部34とが簡略化されたRCL回路が図示されている。
図8には、制振用圧電素子21の電流ip及び電圧Vaの位相の時間t変化が図示されている。
図8では、スイッチ部34の開閉による作用を受けた電圧Vaが実線で表示され、スイッチ部34の開閉による作用を受けていない電圧Vaが破線で表示されている。
【0036】
本実施形態では、振動減衰装置20は、動翼13に設けられ、動翼13の振動に応じて電力を発生させて自身に電荷を貯留可能であるとともに、自身で発生させた電力により動翼13に力を作用可能な制振用圧電素子21と、動翼13に設けられ、動翼13の振動に応じて電力を発生させるセンサ用圧電素子22と、回転軸11に設けられ、センサ用圧電素子22で発生した電力に基づく信号に応じて制振用圧電素子21を開閉することにより、制振用圧電素子21の電流と電圧の位相を揃える制振回路30と、を備える。
【0037】
本実施形態によれば、制振用圧電素子21が動翼13の振動に応じて電力を発生させる。また、センサ用圧電素子22でも、動翼13の振動に応じて電力が発生する。制振回路30は、センサ用圧電素子22で発生した電力に基づく信号に応じて制振回路30を開閉する。
【0038】
制振用圧電素子21は、動翼13の振動によって電流を発生させる電流源として機能と、電荷を貯留するコンデンサとしての機能とを有する。
図6に示すように、スイッチ部34が開の場合、動翼13の振動によって制振用圧電素子21に電力が発生すると、制振用圧電素子21内で電流ipが流れて制振用圧電素子21に電荷Qが貯留される。
【0039】
この状態で、
図7に示すように、スイッチ部34が閉になると、制振用圧電素子21に貯留されていた電荷Qが開放されて、制振用圧電素子21の電荷Qが反転する。すなわち、制振用圧電素子21の電圧Vaの正負が反転する。
【0040】
スイッチ部34の開閉が行われない場合、
図8に示すように、制振用圧電素子21の電流ipと電圧Va(破線の波形)とは、90度位相がずれている。
本実施形態では、スイッチ部34がセンサ用圧電素子22で発生した電力に基づく信号に応じて制振用圧電素子21を開閉する。センサ用圧電素子22は、制振用圧電素子21と同様に動翼13に設けられている。このため、センサ用圧電素子22で発生する電力の周波数は、制振用圧電素子21で派生する電力の周波数に近い値となる。さらに、振動減衰装置20の電気系全体としての固有振動数は、動翼13の固有振動数よりも大きいので、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22で発生する電力の周波数は、ともに動翼13の振動数に近い値となる。このため、スイッチ部34は、制振用圧電素子21の電力の周波数と略同じ周波数で制振用圧電素子21の開閉(スイッチング)を行うことができる。
【0041】
これにより、
図8に示すように、制振用圧電素子21の電流ipの位相の正負が反転したタイミングで、スイッチ部34が開状態から閉状態に変化して、制振用圧電素子21の電圧Vaの位相の正負が反転される。制振用圧電素子21の電圧Vaの位相の正負が反転すると、スイッチ部34が開状態に戻る。このスイッチ部34の開閉動作は、制振用圧電素子21の電流ipの位相が反転する度に行われる。このため、制振用圧電素子21の電流ipと電圧Vaの位相が常時揃うようになる。これにより、動翼13には、制振用圧電素子21から構造速度に比例した制振力が作用する。制振用圧電素子21の制振力により、ロータ10の回転によって生じた動翼13の振動が減衰される。よって、本実施形態の振動減衰装置20によれば、減衰性能を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、振動減衰装置20を駆動させるための電力や制御用の信号を振動減衰装置20自身で供給することができる。このため、スリップリング等を用いて外部から電力を供給する必要がない。さらに、振動減衰装置20は、センサ用のアクチュエータを使用しないので、ロータ10が高速回転する場合も、振動減衰装置20は良好に駆動することができる。また、ダンパ等で動翼13の減衰を付与する機構と比較して、減衰付与箇所の制約が少なくなる。また、振動減衰装置20の基本的な駆動は振動減衰装置20内で完結するため、振動減衰装置20のチューニングの必要が無く、振動減衰装置20は、高いロバスト性を発揮することができる。
【0043】
本実施形態では、制振用圧電素子21とセンサ用圧電素子22は、動翼13内において、動翼13の厚さ方向Dに重なる位置に設けられている。
【0044】
本実施形態によれば、動翼13のモードに対する制振用圧電素子21とセンサ用圧電素子22の歪量が等しくなる。これにより、動翼13の制振が容易となる。したがって、振動減衰装置20の減衰性能をより一層向上させることができる。
【0045】
本実施形態では、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22は、動翼13の内部に埋め込み形成されている。
【0046】
本実施形態によれば、動翼13の表面形状を損なうことなく、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22を回転体に取り付けることができる。これにより、動翼13の空力性能を低下させることなく、振動減衰装置20をロータ10に設置することができる。
【0047】
本実施形態では、ロータ10は、シート状の複合材料14が複数枚積層された動翼13を有し、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22は、動翼13の内部に埋め込み形成されている。
【0048】
本実施形態によれば、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22を厚さ相当の複合材料14を複数枚くりぬいて、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22を埋め込み形成することができる。これにより、動翼13の内部に、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22を容易に設置することができる。
【0049】
なお、第一実施形態では、制振用圧電素子21とセンサ用圧電素子22は、動翼13内において、動翼13の厚さ方向Dに重なる位置に設けられているとしたが、これに限るものではない。
図9に示すように、動翼13の厚みの無い部分については、制振用圧電素子21とセンサ用圧電素子22とが隣接されて同じ面に配置されていてもよい。
【0050】
<第二実施形態>
以下、本開示の第二実施形態に係る振動減衰装置220について、
図10を参照して説明する。前述した第一実施形態と同様の構成については、同一の名称及び同一の符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0051】
図10に示すように、制振用圧電素子21は、1つの制振回路30に複数(例えば2個)設けられている。複数の制振用圧電素子21は、制振回路30に並列に接続されている。また、センサ用圧電素子22は、1つの制振回路30に1つだけ設けられている。
【0052】
本実施形態では、複数の制振用圧電素子21は、制振回路30に並列に接続されている。
本実施形態によれば、振動減衰装置20は、1つの制振回路30によって制御される制振力を増大させることができる。振動減衰装置20は、特定モードの制振力を増大させ、最大化することができる。
【0053】
<第三実施形態>
以下、本開示の第三実施形態に係る振動減衰装置320について、
図11を参照して説明する。前述した第一実施形態と同様の構成については、同一の名称及び同一の符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0054】
図11に示すように、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22は複数設けられ、制振回路30は、複数設けられている。制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22は、1つの制振回路30に1つずつ設けられている。このため、複数の制振用圧電素子21は、それぞれ別の制振回路30によって、独立制御される。
【0055】
本実施形態では、制振用圧電素子21は複数設けられ、制振回路30は制振用圧電素子21ごとに複数設けられている。
【0056】
モード毎に最適な配置が異なるが、本実施形態によれば、振動減衰装置20は、幅広いモードに対して制振効果を付与することができる。
【0057】
第二、第三の実施形態において、制振用圧電素子21、センサ用圧電素子22及び制振回路30は、動翼13外に取り出した配線23間の繋ぎ方で変更可能であり、スイッチボックス等で切り替え可能とすることができる。
【0058】
<第四実施形態>
以下、本開示の第四実施形態に係るガスタービン401について、
図12を参照して説明する。前述した第一実施形態と同様の構成については、同一の名称及び同一の符号を付す等して説明を適宜省略する。
【0059】
図12に示すように、ガスタービン401は、マイコン440と、バッテリー441をさらに備える。マイコン440は、ロータ10の外部に設けられている。マイコン440は、制振回路30に、動翼13の振動に応じて制振回路30を開閉させる信号を送信する。本実施形態では、マイコン440は、制振回路30の信号成形部33に接続されている。マイコン440の動作モードは、無線により静止側から変更可能とされている。バッテリー441は、ロータ10の外部に設けられている。バッテリー441は、マイコン440を駆動させるために設けられている。バッテリー441は、例えば蓄電池である。
【0060】
本実施形態では、ガスタービン401は、制振回路30に、動翼13の振動に応じて制振回路30を開閉させる信号を送信するマイコン440と、マイコン440を駆動させるバッテリー441と、をさらに備える。
【0061】
本実施形態によれば、マイコン440及びバッテリー441が予備的に設けられているため、例えば動翼13の振動が小さくセンサ用圧電素子22の電力が発生しない場合であっても、制振回路30を駆動させて、制振用圧電素子21の電流ipと電圧Vaの位相を揃えることができる。マイコン440は、制振回路30のスイッチ部34を駆動させるために用いられるだけなので、大電力を必要としない。
【0062】
また、動翼13を強力に制振したい場合に、マイコン440に寄り最適なタイミングでスイッチ部34を開閉させることで、振動減衰装置20に高い制振効果を付与し、振動減衰装置20の減衰効果をより一層向上させることができる。
【0063】
また、バッテリー441は、蓄電池であるため、スイッチングに必要な電力以外は、バッテリー441に充電される。バッテリー441に充電された余分な出力は、必要な時にマイコン440の駆動に使用できる。
【0064】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、振動減衰装置20がガスタービン1に設けられている場合について説明したが、これに限るものではなく、振動減衰装置20は、例えば船舶や航空機のプロペラ等の他の回転機械に設けられてもよい。
【0065】
なお、上記実施形態では、振動減衰装置20がロータ10の動翼13に設けられている場合について説明したが、これに限るものではなく、振動減衰装置20は、例えばロータ10の回転軸11等、ロータ10側の他の箇所に設けられてもよい。
【0066】
なお、上記実施形態では、動翼13は、例えばCFRPによって形成されているとしたが、これに限るものではなく、例えば、動翼13は、ステレンス鋼等の金属材料により形成されていてもよい。
【0067】
<付記>
各実施形態に記載の振動減衰装置20,220,320及び回転機械は、例えば以下のように把握される。
【0068】
(1)第1の態様に係る振動減衰装置20,220,320は、回転体に設けられ、前記回転体の振動に応じて電力を発生させて自身に電荷を貯留可能であるとともに、自身で発生させた電力により前記回転体に力を作用可能な制振用圧電素子21と、前記回転体に設けられ、前記回転体の振動に応じて電力を発生させるセンサ用圧電素子22と、前記回転体に設けられ、センサ用圧電素子22で発生した電力に基づく信号に応じて前記制振用圧電素子21を開閉することにより、前記制振用圧電素子21の電流ipと電圧Vaの位相を揃える制振回路30と、を備える。
回転体の例として、例えば圧縮機2のロータ10等が挙げられる。
【0069】
本態様によれば、制振用圧電素子21が回転体の振動に応じて電力を発生させる。また、センサ用圧電素子22でも、回転体の振動に応じて電力が発生する。制振回路30は、センサ用圧電素子22で発生した電力に基づく信号に応じて制振回路30を開閉することにより、制振用圧電素子21の電流と電圧の位相を揃える。これにより、回転体には、制振用圧電素子21から構造速度に比例した制振力が作用する。
【0070】
(2)第2の態様の振動減衰装置220は、(1)の振動減衰装置220であって、前記制振用圧電素子21は複数設けられ、複数の前記制振用圧電素子21は、前記制振回路30に並列に接続されていてもよい。
【0071】
本態様によれば、振動減衰装置220は、特定モードの制振力を増大させることができる。
【0072】
(3)第3の態様の振動減衰装置320は、(1)の振動減衰装置320であって、前記制振用圧電素子21は複数設けられ、前記制振回路30は前記制振用圧電素子21ごとに複数設けられていてもよい。
【0073】
モード毎に最適な配置が異なるが、本態様によれば、振動減衰装置320は、幅広いモードに対して制振効果を付与することができる。
【0074】
(4)第3の態様の振動減衰装置20は、(1)から(3)のいずれかの振動減衰装置20であって、前記制振用圧電素子21と前記センサ用圧電素子22は、前記回転体内において、前記回転体の厚さ方向Dに重なる位置に設けられていてもよい。
【0075】
本態様によれば、回転体のモードに対する制振用圧電素子21とセンサ用圧電素子22の歪量が等しくなる。これにより、回転体の制振が容易となる。
【0076】
(5)第5の態様の回転機械は、(1)から(4)のいずれかの振動減衰装置20,220,320と、前記回転体と、を備える。
回転機械の例として、例えばガスタービン1,401等が挙げられる。
【0077】
(6)第6の態様の回転機械は、(5)の回転機械であって、前記制振用圧電素子21及び前記センサ用圧電素子22は、前記回転体の内部に埋め込み形成されていてもよい。
【0078】
本態様によれば、回転体の表面形状を損なうことなく、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22を回転体に取り付けることができる。
【0079】
(7)第7の態様の回転機械は、(6)の回転機械であって、前記回転体は、シート状の複合材料14が複数枚積層された積層部を有し、前記制振用圧電素子21及び前記センサ用圧電素子22は、前記積層部の内部に埋め込み形成されていてもよい。
積層部の例として、例えばロータ10の動翼13等が挙げられる。
【0080】
本態様によれば、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22を厚さ相当の複合材料14を複数枚くりぬいて、制振用圧電素子21及びセンサ用圧電素子22を埋め込み形成することができる。
【0081】
(8)第8の態様の回転機械は、(5)から(7)のいずれかの回転機械であって、前記制振回路30に、前記回転体の振動に応じて前記制振回路30を開閉させる信号を送信するマイコン440と、前記マイコン440を駆動させるバッテリー441と、をさらに備えてもよい。
【0082】
本態様によれば、例えば回転体の振動が小さくセンサ用圧電素子22の電力が発生しない場合であっても、制振回路30を駆動させて、制振用圧電素子21の電流ipと電圧Vaの位相を揃えることができる。
【符号の説明】
【0083】
1…ガスタービン 2…圧縮機 3…燃焼器 4…タービン 5…ケーシング 6…静翼段 6a…静翼 7…タービンロータ 7a…タービン回転軸 7b…タービン動翼段 8…タービンケーシング 8a…タービン静翼段 9…保持環 10…ロータ 11…回転軸 11a…取付部 12…動翼段 13…動翼 14…複合材料 20…振動減衰装置 21…制振用圧電素子 22…センサ用圧電素子 23…配線 30…制振回路 31…直流変換部 32…位相調整部 33…信号成形部 34…スイッチ部 440…マイコン 441…バッテリー D…厚さ方向 G…燃焼ガス O…軸線