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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162904
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】階間空間の構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20231101BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20231101BHJP
   E04B 1/88 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
E04B1/76 500C
E04B9/00 B
E04B1/76 400A
E04B1/88 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073614
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤井 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】林 利樹
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA01
2E001FA15
2E001GA12
2E001GA29
2E001HA32
2E001HA33
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD09
(57)【要約】
【課題】 気密性を向上させることが可能な階間空間の構造を提供する。
【解決手段】 建物2の外周に沿って配された梁8と、梁8に支持された建物上階部分3の床面材9と、梁8の下方に配された建物下階部分4の天井面材10との間に形成された建物2の階間空間1の構造である。梁8は、少なくとも天井面材10側を向く梁下面8dが断熱材16で被覆されている。梁8の下方には、梁8に沿って配された枠材21が設けられている。枠材21の上端21tが、断熱材16に接触している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外周に沿って配された梁と、前記梁に支持された建物上階部分の床面材と、前記梁の下方に配された建物下階部分の天井面材との間に形成された建物の階間空間の構造であって、
前記梁は、少なくとも前記天井面材側を向く梁下面が断熱材で被覆されており、
前記梁の下方には、前記梁に沿って配された枠材が設けられており、
前記枠材の上端が、前記断熱材に接触している、
階間空間の構造。
【請求項2】
前記天井面材は、複数の野縁によって支持されており、
前記枠材は、第1枠材を含み、
前記第1枠材は、前記複数の野縁の長手方向の両側を支持する野縁受け金物である、請求項1に記載の階間空間の構造。
【請求項3】
前記野縁受け金物は、上片と、下片と、これらを繋ぐ縦材とを含む断面コ字状であり、
前記上片は、前記断熱材に向かって折れ曲がる端部分を含む、請求項2に記載の階間空間の構造。
【請求項4】
前記枠材は、前記複数の野縁と平行に延びる第2枠材を含み、
前記第2枠材は、上片と、下片と、これらを繋ぐ縦材とを含む断面コ字状であり、
前記上片は、前記断熱材に向かって折れ曲がる端部分を含む、請求項2に記載の階間空間の構造。
【請求項5】
前記第2枠材が、前記第1枠材と同じ野縁受け金物である、請求項4に記載の階間空間の構造。
【請求項6】
前記断熱材は、繊維系断熱材である、請求項1又は2に記載の階間空間の構造。
【請求項7】
前記天井面材の上には吸音材が配されており、前記吸音材は、前記断熱材と接触している、請求項1又は2に記載の階間空間の構造。
【請求項8】
前記断熱材は、前記枠材の上端との接触部から建物屋内側へと延びる防湿フィルムで覆われている、請求項1又は2に記載の階間空間の構造。
【請求項9】
前記防湿フィルムは前記梁の上部に向かって立ち上がる立ち上げ部を含む、請求項8に記載の階間空間の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階間空間の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、住宅換気システムが記載されている。この換気システムには、居室の床面と該床面の下階の居室の天井面との間の空間を水平にのびる連結ダクトが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-164241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、床面と天井面との間の空間である階間空間に、湿度の高い外気が流入すると、連結ダクト等の配管に結露が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、気密性を向上させることが可能な階間空間の構造を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物の外周に沿って配された梁と、前記梁に支持された建物上階部分の床面材と、前記梁の下方に配された建物下階部分の天井面材との間に形成された建物の階間空間の構造であって、前記梁は、少なくとも前記天井面材側を向く梁下面が断熱材で被覆されており、前記梁の下方には、前記梁に沿って配された枠材が設けられており、前記枠材の上端が、前記断熱材に接触している、階間空間の構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の階間空間の構造は、上記の構成を採用することにより、階間空間の気密性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の建物の階間空間の構造を示す断面図である。
図2】第1梁を含む階間空間の構造の拡大図である。
図3】第2梁を含む階間空間の構造の拡大図である。
図4】第1枠材を示す斜視図である。
図5】本発明の他の実施形態の階間空間の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0010】
[階間空間の構造(第1実施形態)]
図1は、本実施形態の建物の階間空間1の構造を示す断面図である。本実施形態において、階間空間1の構造は、第1方向x(図1で奥行方向)、第2方向y(図1で水平方向)及び第3方向(図1で上下方向)zの直交座標上で特定される。
【0011】
[建物]
本実施形態の階間空間1が設けられる建物2は、多層階建ての住宅又はビル等である場合が例示される。本実施形態では、建物上階部分3と建物下階部分4とが、建物2の水平方向(図1では、第2方向y)で同一の位置に設けられているが、このような態様に限定されない。例えば、建物上階部分3に対して、建物下階部分4が屋外側に突出していてもよい。
【0012】
本実施形態の建物上階部分3及び建物下階部分4は、例えば、外壁5、天井6、床7及び間仕切り壁(図示省略)等で区画されている。これらの建物上階部分3及び建物下階部分4は、例えば、空気調和機(図示省略)の負荷を低減する観点より、換気に用いられる外気を除いて、外気の流入が抑制された気密空間として構成されるのが好ましい。なお、建物上階部分3及び建物下階部分4は、このような気密空間に限定されない。
【0013】
[階間空間]
本実施形態の階間空間1は、梁8と、建物上階部分3の床面材9と、建物下階部分4の天井面材10との間に形成されている。
【0014】
[梁]
梁8は、建物2の外周に沿って(本例では、外周に沿って連続して)配されている。なお、梁8は、建物2の外周の一部において、部分的に途切れていてもよい。
【0015】
図2は、第1梁8Aを含む階間空間1の構造の拡大図である。図3は、第2梁8Bを含む階間空間1の構造の拡大図である。図2及び図3に示されるように、本実施形態の梁8は、第1梁8Aと、第2梁8Bとを含んで構成されている。本実施形態の第1梁8A(図2に示す)は、第1方向xに延びている。一方、本実施形態の第2梁8B(図3に示す)は、第2方向y(すなわち、図2に示した第1梁8Aと直交する方向)に延びている。これらの第1梁8Aと第2梁8Bとは、例えば、図示しない金物等を用いて互いに接合される。なお、梁8には、第1梁8A及び第2梁8B以外に、他の梁(図示省略)が含まれてもよい。
【0016】
本実施形態の梁8(本例では、第1梁8A及び第2梁8Bを含む)は、H型鋼で構成されているが、特に限定されない。本実施形態の梁8は、上下に延びるウエブ11と、ウエブ11の上端で鍔状に延びる上フランジ12と、ウエブ11の下端で鍔状に延びる下フランジ13とを含んで構成されている。
【0017】
ウエブ11には、その厚さ方向で貫通する孔部(図示省略)が設けられてもよい。このような孔部は、例えば、空気調和機や換気装置等のダクト(図示省略)や電線などを、ウエブ11に容易に貫通させることができる。
【0018】
本実施形態の上フランジ12には、床面材9側を向く梁上面8uが形成されている。本実施形態の梁上面8uには、床面材9が当接(固着)されている。一方、本実施形態の下フランジ13には、天井面材10側を向く梁下面8dが形成されている。
【0019】
[断熱材]
本実施形態の梁8(本例では、第1梁8A及び第2梁8Bを含む)は、少なくとも梁下面8dが、断熱材16で被覆されている。本実施形態の断熱材16は、第1梁8Aを被覆する第1断熱材16A(図2に示す)と、第2梁8Bを被覆する第2断熱材16B(図2に示す)とを含んで構成されている。なお、第1梁8A及び第2梁8B以外に、他の梁が含まれている場合には、その梁を被覆する断熱材(図示省略)がさらに含まれるのが好ましい。
【0020】
図1~3に示されるように、本実施形態の断熱材16(本例では、第1断熱材16A及び第2断熱材16Bを含む)は、梁下面8dだけでなく、階間空間1側に配される梁8の外面(本例では、梁上面8uを除く全ての外面)を被覆している。このような断熱材16は、外気の熱が、梁8を介して階間空間1に伝達されるのを抑制することができるため、階間空間1の断熱性が向上する。さらに、断熱材16は、梁8のウエブ11に形成された孔部(図示省略)等を塞ぐことができるため、外気が階間空間1に流入するのを抑制でき、階間空間1の気密性が向上する。
【0021】
本実施形態の断熱材16(本例では、第1断熱材16A及び第2断熱材16Bを含む)は、階間空間1の断熱性及び気密性を向上することができれば、特に限定されないが、繊維系断熱材(例えば、ロックウール及びグラスウール等)が採用されるのが好ましい。このような繊維系断熱材は、難燃性を有しているため、梁8(階間空間1)の耐火性が向上する。また、梁8への耐火被覆が不要な場合には、断熱材16に、例えば、有機系断熱材(例えば、ポリスチレンフォーム、フェノールフォーム及びウレタンフォーム等)が採用されてもよい。
【0022】
本実施形態の断熱材16(本例では、第1断熱材16A及び第2断熱材16Bを含む)は、梁8(本例では、第1梁8A及び第2梁8Bを含む)の長手方向の全域に亘って被覆するのが好ましい。これにより、断熱材16は、階間空間1の断熱性、気密性及び耐火性が向上する。
【0023】
図2及び図3に示されるように、本実施形態の断熱材16(本例では、第1断熱材16A及び第2断熱材16Bを含む)は、第1被覆部16a、第2被覆部16b及び第3被覆部16cを含んで構成されている。
【0024】
本実施形態の第1被覆部16aは、梁8(本例では、第1梁8A及び第2梁8Bを含む)の梁下面8dに沿って延びており、梁下面8dを被覆している。本実施形態の第2被覆部16bは、第1被覆部16aの建物屋外側2oの端部から上方に延びており、梁8に固着された断熱材26に当接している。このような第2被覆部16bにより、梁8の建物屋外側2oが被覆される。本実施形態の第3被覆部16cは、第1被覆部16aの建物屋内側2iの端部から上方に延びており、床面材9の下面に当接している。このような第3被覆部16cにより、梁8の建物屋内側2i(階間空間1側)が被覆される。これらの第1被覆部16a、第2被覆部16b及び第3被覆部16cにより、断熱材16は、断面コ字状に形成されている。このような断熱材16は、梁8の下フランジ13から上フランジ12までの全域を覆うことができるため、階間空間1の断熱性、気密性及び耐火性が向上する。
【0025】
[床面材]
図1~3に示されるように、本実施形態の床面材9は、梁8(本例では、第1梁8A及び第2梁8Bを含む)に支持されている。本実施形態の床面材9は、建物上階部分3の床7を構成している。
【0026】
本実施形態の床面材9は、例えば、板状(パネル状)に形成されている。本実施形態の床面材9は、ALC等の発泡コンクリートパネルを含んで構成されている。このような発泡コンクリートパネルは、難燃性を有するため、床面材9(階間空間1)の耐火性が向上する。なお、床面材9は、発泡コンクリートパネルを含む態様に限定されない。
【0027】
床面材9には、例えば、パーティクルボード14や、床仕上げ材(図示省略)等が積層されてもよい。また、本実施形態の床面材9には、防湿シート(図示省略)が積層されるのが好ましい。このような防湿シートは、階間空間1から建物上階部分3への湿気の流入を抑制しうる。
【0028】
[天井面材]
図1~3に示されるように、天井面材10は、梁8(本例では、第1梁8A及び第2梁8Bを含む)の下方に配されている。本実施形態の天井面材10は、建物下階部分4の天井6を構成している。
【0029】
本実施形態の天井面材10は、例えば、板状(パネル状)に形成されている。本実施形態の天井面材10は、複数の野縁18によって支持されている。
【0030】
本実施形態の天井面材10は、石膏ボード19を含んで構成されている。このような石膏ボード19は、難燃性を有するため、天井面材10の耐火性が向上する。なお、天井面材10は、石膏ボードを含む態様に限定されない。
【0031】
本実施形態の天井面材10には、例えば、防湿シート(図示省略)が積層されてもよい。これにより、天井面材10は、例えば、冬期において、建物下階部分4からの生活水蒸気が、階間空間1に入ることを抑制することができる。また、天井面材10には、天井仕上げ材(図示省略)が積層されてもよい。
【0032】
天井面材10の上には、吸音材17が配されていてもよい。このような吸音材17は、建物上階部分3と建物下階部分4との間で、騒音が伝達されるのを抑制することができる。吸音材17には、例えば、繊維系吸音材(例えば、ロックウール及びグラスウール等)が採用されうるが、このような態様に限定されない。
【0033】
本実施形態の吸音材17は、梁8(本例では、第1梁8A及び第2梁8Bを含む)に対して、建物屋内側2iに配されている。これにより、吸音材17は、梁8に干渉することなく、天井面材10の上に配置されうる。
【0034】
[野縁]
複数の野縁18は、天井面材10を支持するためのものである。本実施形態の野縁18は、断面略矩形状(図3に示す)に形成されているが、このような態様に限定されない。本実施形態の複数の野縁18は、第2方向yに沿って延びている。複数の野縁18は、第2方向yと直交する第1方向xにおいて、間隔を空けて配置されている。
【0035】
複数の野縁18には、天井面材10の上面が固定される。図1及び図2に示されるように、本実施形態の複数の野縁18は、後述の野縁受け金物20によって支持されている。
【0036】
[枠材]
図1~3に示されるように、本実施形態の階間空間1の構造では、梁8(本例では、第1梁8A及び第2梁8Bを含む)の下方に、梁8に沿って配された枠材21が設けられている。本実施形態の枠材21は、第1枠材21A(図1及び図2に示す)と、第2枠材21B(図3に示す)とを含んで構成されている。本実施形態の第1枠材21A及び第2枠材21Bは、通気性を有さない材料(本実施形態では、金属材料等)で形成されている。
【0037】
[第1枠材]
図1及び図2に示されるように、本実施形態の第1枠材21Aは、第1梁8Aの下方において、第1梁8Aに沿って配されている。本実施形態の第1枠材21Aは、複数の野縁18の長手方向の両側を支持する野縁受け金物20として構成されている。
【0038】
本実施形態の第1枠材21A(本例では、野縁受け金物20)は、複数の野縁18の長手方向(第2方向y)と直交する方向(第1方向x)に延びている。本実施形態の第1枠材21Aは、例えば、外壁5を支持する枠体22に固定されている。
【0039】
図4は、第1枠材21Aを示す斜視図である。図2及び図4に示されるように、本実施形態の第1枠材21A(本例では、野縁受け金物20)は、上片21aと、下片21bと、これらを繋ぐ縦材21cとを含み、断面コ字状に形成されている。これらの上片21a、下片21b及び縦材21cで囲まれる開口部23は、建物屋内側2i(図2に示す)に向けられている。このような第1枠材21Aは、その開口部23に、複数の野縁18の長手方向の両側(端部)がそれぞれ挿入されることにより、複数の野縁18を支持することができる。
【0040】
図2に示されるように、本実施形態の上片21aは、断熱材16(本例では、第1断熱材16A)に向かって折れ曲がる端部分21dを含んでいる。本実施形態の端部分21dは、建物屋外側2oから建物屋内側2iに向かって、上方に傾斜している。このような端部分21dは、開口部23に、複数の野縁18の両側(端部)を円滑に挿入させるのに役立つ。
【0041】
[第2枠材]
図3に示されるように、本実施形態の第2枠材21Bは、第2梁8Bの下方において、第2梁8Bに沿って配されている。このため、第2枠材21Bは、複数の野縁18と平行(第2方向y)に延びている。本実施形態の第2枠材21Bは、例えば、外壁5を支持する枠体22に固定されている。
【0042】
本実施形態の第2枠材21Bは、第1枠材21A(図4に示す)と同様に、上片21aと、下片21bと、これらを繋ぐ縦材21cとを含み、断面コ字状で形成されている。これらの上片21a、下片21b及び縦材21cで囲まれる開口部23は、建物屋内側2iに向けられている。本実施形態の上片21aは、断熱材16(本例では、第2断熱材16B)に向かって折れ曲がる端部分21dを含んでいる。
【0043】
第2枠材21Bは、図2及び図4に示した第1枠材21Aと同じ野縁受け金物20で構成されるのが好ましい。これにより、第1枠材21A及び第2枠材21Bに、共通の部材(野縁受け金物20)を用いることができるため、製造コストを低減することができる。
【0044】
[枠材の上端]
図2及び図3に示されるように、本実施形態の枠材21(本例では、第1枠材21A及び第2枠材21B)の上端21tは、断熱材16に接触している。図2に示されるように、本実施形態の第1枠材21Aの上端21t(端部分21d)が、第1断熱材16Aに接触している。これにより、第1枠材21A及び第1断熱材16Aは、建物上階部分3の床面材9と建物下階部分4の天井面材10との間を、階間空間1の上下方向(第1方向x)に沿って塞ぐことができる。
【0045】
一方、図3に示されるように、本実施形態の第2枠材21Bの上端21t(端部分21d)は、第2断熱材16Bに接触している。これにより、第2枠材21B及び第2断熱材16Bは、建物上階部分3の床面材9と建物下階部分4の天井面材10との間を、階間空間1の上下方向(第2方向y)に沿って塞ぐことができる。
【0046】
このように、本実施形態の階間空間1の構造では、枠材21の上端21tが、断熱材16に接触することで、建物上階部分3の床面材9と建物下階部分4の天井面材10との間を塞ぐことができる。これにより、階間空間1の構造は、梁8と天井面材10との間から、外気が階間空間1に流入するのを抑制することができ、階間空間1の気密性を向上させることが可能となる。このような気密性の向上により、例えば、湿度の高い外気が、階間空間1に流入するのを抑制することができるため、階間空間1に配された空気調和機や換気装置等のダクトの配管に、結露が生じるのを防ぐことが可能となる。
【0047】
さらに、建物上階部分3及び建物下階部分4が気密空間として構成される場合には、それらの間に形成される階間空間1を含めて、建物2内の空間を気密空間として構成することができる。これにより、階間空間1が設けられた建物2は、空調効率を向上させることが可能となる。
【0048】
図2及び図3に示されるように、枠材21の上端21tは、断熱材16に食い込むように配されるのが好ましい。これにより、枠材21の上端21tと断熱材16との密着性を向上させることができ、階間空間1の気密性をさらに向上させることが可能となる。
【0049】
本実施形態の階間空間1構造では、吸音材17が、断熱材16(本例では、防湿フィルム25を介して)と接触しているのが好ましい。これにより、梁8と天井面材10との間の隙間をさらに低減することができ、階間空間1の気密性がさらに向上する。本実施形態では、吸音材17と断熱材16(本例では、防湿フィルム25を介して)とが面接触しているため、気密性をより向上させることができる。
【0050】
[防湿フィルム]
断熱材16(本例では、第1断熱材16A及び第2断熱材16B)は、枠材21の上端21tとの接触部24から建物屋内側2iへと延びる防湿フィルム25で覆われているのが好ましい。このような防湿フィルム25は、断熱材16に防湿性能を付与することができる。これにより、外気に含まれる水分が、断熱材16を介して、階間空間1の建物屋内側2iに浸入するのを抑制できる。
【0051】
防湿フィルム25は、梁8(本例では、第1梁8A及び第2梁8B)の上部に向かって立ち上がる立ち上げ部25Bを含んでもよい。このような立ち上げ部25Bにより、断熱材16は、枠材21の上端21tとの接触部24から梁8の上部に亘って、防湿フィルム25で覆われるため、断熱材16から階間空間1内への水分の浸入がさらに抑制されうる。
【0052】
本実施形態の立ち上げ部25Bは、断熱材16の第1被覆部16aから第3被覆部16cの外側に沿って上方に延び、かつ、床面材9の下面に当接している。これにより、立ち上げ部25Bは、枠材21の上端21tとの接触部24から床面材9までに亘って、断熱材16(第3被覆部16c)を覆うことができるため、断熱材16から階間空間1内への水分の浸入がさらに抑制されうる。
【0053】
防湿フィルム25は、断熱材16に防湿性能を付与できれば、特に限定されない。本実施形態の防湿フィルム25には、例えば、ポリエチレン製のものが採用されうる。
【0054】
[階間空間の構造(第2実施形態)]
これまでの実施形態の階間空間1の構造では、梁8の階間空間1側に配される外面が、断熱材16で被覆される態様が例示されたが、このような態様に限定されない。図5は、本発明の他の実施形態の階間空間1の構造を示す断面図である。
【0055】
この実施形態の階間空間1の構造では、梁下面8dのみが断熱材16で被覆されていている。そして、枠材21の上端21tは、断熱材16に接触している。このような階間空間1の構造では、これまでの実施形態と同様に、建物上階部分3の床面材9と建物下階部分4の天井面材10との間を塞ぐことができるため、気密性を向上させることができる。さらに、この実施形態では、梁下面8dのみが、断熱材16で被覆されるため、梁8の階間空間1側に配される外面を被覆していたこれまでの実施形態に比べて、施工性が向上する。なお、この実施形態において、梁8のウエブ11に孔部(図示省略)が形成される場合には、階間空間1の気密性を維持する観点から、その孔部が塞がれるのが好ましい。
【0056】
この実施形態の断熱材16には、防湿性及び気密性が高められたものが採用されるのが好ましい。これにより、この実施形態では、これまでの実施形態のように、断熱材16を防湿フィルム25(図2及び図3に示す)で覆わなくても、防湿性及び気密性を向上させることができるため、施工性が向上する。なお、断熱材16には、防湿性及び気密性が高められたものであれば、特に限定されない。この実施形態の断熱材16には、梁8への耐火被覆が不要な場合、ゴム発泡体(例えば、EPDMゴムの発泡体など)が採用されうる。
【0057】
[階間空間の構造(第3実施形態)]
これまでの実施形態の枠材21は、第1枠材21A(図2に示す)及び第2枠材21B(図3に示す)で構成される態様が例示されたが、このような態様に限定されない。例えば、枠材21は、例えば、階間空間1に設けられる梁8の配置に応じて、第1枠材21A及び第2枠材21Bのいずれか一方のみで構成されてもよいし、他の枠材(図示省略)が設けられてもよい。
【0058】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0059】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0060】
[本発明1]
建物の外周に沿って配された梁と、前記梁に支持された建物上階部分の床面材と、前記梁の下方に配された建物下階部分の天井面材との間に形成された建物の階間空間の構造であって、
前記梁は、少なくとも前記天井面材側を向く梁下面が断熱材で被覆されており、
前記梁の下方には、前記梁に沿って配された枠材が設けられており、
前記枠材の上端が、前記断熱材に接触している、
階間空間の構造。
[本発明2]
前記天井面材は、複数の野縁によって支持されており、
前記枠材は、第1枠材を含み、
前記第1枠材は、前記複数の野縁の長手方向の両側を支持する野縁受け金物である、本発明1に記載の階間空間の構造。
[本発明3]
前記野縁受け金物は、上片と、下片と、これらを繋ぐ縦材とを含む断面コ字状であり、
前記上片は、前記断熱材に向かって折れ曲がる端部分を含む、本発明2に記載の階間空間の構造。
[本発明4]
前記枠材は、前記複数の野縁と平行に延びる第2枠材を含み、
前記第2枠材は、上片と、下片と、これらを繋ぐ縦材とを含む断面コ字状であり、
前記上片は、前記断熱材に向かって折れ曲がる端部分を含む、本発明2に記載の階間空間の構造。
[本発明5]
前記第2枠材が、前記第1枠材と同じ野縁受け金物である、本発明4に記載の階間空間の構造。
[本発明6]
前記断熱材は、繊維系断熱材である、本発明1ないし5のいずれかに記載の階間空間の構造。
[本発明7]
前記天井面材の上には吸音材が配されており、前記吸音材は、前記断熱材と接触している、本発明1ないし6のいずれかに記載の階間空間の構造。
[本発明8]
前記断熱材は、前記枠材の上端との接触部から建物屋内側へと延びる防湿フィルムで覆われている、本発明1ないし7のいずれかに記載の階間空間の構造。
[本発明9]
前記防湿フィルムは前記梁の上部に向かって立ち上がる立ち上げ部を含む、本発明8に記載の階間空間の構造。
【符号の説明】
【0061】
1 階間空間
2 建物
3 建物上階部分
4 建物下階部分
8 梁
8d 梁下面
9 床面材
10 天井面材
16 断熱材
21 枠材
21t 上端
図1
図2
図3
図4
図5