(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162910
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 40/00 20200101AFI20231101BHJP
B62J 35/00 20060101ALI20231101BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B62J40/00
B62J35/00 Z
B62J35/00 F
B62J23/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073621
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】足立 真史
(57)【要約】
【課題】エアクリーナに多量の液滴が進入することを抑制しつつ運転者に対してエアクリーナの吸気音を効率よく聞かせることが可能な鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】エアクリーナ10は、エンジンの上方に位置する。上部カバー90は、平面視でエアクリーナ10の少なくとも一部に重なるように、エアクリーナ10の上方の位置に設けられる。エアクリーナ10は、上方を向いて開口する吸気口11を有する。燃料タンク8およびタンク保護部材70は、エアクリーナ10と上部カバー90との間の位置に設けられる。上部カバー90は、平面視でエアクリーナ10の吸気口11に少なくとも一部が重なるカバー開口部91を有する。燃料タンク8およびタンク保護部材70の少なくとも一部は、平面視で、エアクリーナ10の吸気口11と上部カバー90のカバー開口部91とが重なる共通開口領域CRに重なる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの上方の位置に設けられるエアクリーナと、
平面視で前記エアクリーナの少なくとも一部に重なるように、前記エアクリーナの上方の位置に設けられるカバーと、
前記エアクリーナと前記カバーとの間の位置に設けられる遮蔽部材とを備え、
前記エアクリーナは、上方を向いて開口するように形成されかつ前記エンジンに供給されるべき空気が導入される吸気口を有し、
前記カバーは、平面視で前記エアクリーナの前記吸気口に少なくとも一部が重なるように形成された開口部を有し、
前記遮蔽部材の少なくとも一部は、平面視で、前記エアクリーナの前記吸気口と前記カバーの前記開口部とが重なる共通開口領域に重なる、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記遮蔽部材の少なくとも一部は、平面視で、前記共通開口領域の全体に重なる、請求項1記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
燃料タンクをさらに備え、
前記遮蔽部材は、前記燃料タンクの少なくとも一部により構成された、請求項1または2記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
燃料タンクと、
前記燃料タンクを保護するタンク保護部材とをさらに備え、
前記遮蔽部材は、前記燃料タンクおよび前記タンク保護部材のうち少なくとも一部により構成された、請求項1または2記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記エアクリーナと前記カバーとの間には、前記遮蔽部材を迂回しつつ前記エアクリーナの前記吸気口から前記カバーの前記開口部まで連続して延びるように形成された音伝達空間が形成された、請求項1~4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記音伝達空間は、前記カバーと前記遮蔽部材との間に位置する隙間空間を含み、
前記カバーおよび前記遮蔽部材のうち少なくとも一方には、前記隙間空間を第1の空間と第2の空間とに仕切る仕切り部が設けられ、
前記第1の空間は、前記カバーの前記開口部を通して前記カバーの上方の空間に連通する空間であり、
前記第2の空間は、前記隙間空間のうち前記第1の空間を除く空間である、請求項5記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記カバーの前記開口部の開口面積の合計は、前記エアクリーナの前記吸気口の開口面積の合計以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記カバーの前記開口部は、第1の開口部および第2の開口部を含み、
前記第1の開口部および前記第2の開口部の各々は、平面視で前記エアクリーナの前記吸気口に少なくとも一部が重なるように形成され、
前記遮蔽部材は、平面視で前記カバーの前記第1の開口部のうち少なくとも一部に重なるように構成されるとともに、平面視で前記カバーの前記第2の開口部のうち少なくとも一部に重なるように構成された、請求項1~7のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよびエアクリーナを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エアクリーナは、エンジンに清浄な空気を導入する。エンジンを備える鞍乗型車両の走行時には、エアクリーナから吸気音が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-172097号公報
【特許文献2】特開2009-73287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアクリーナから発生する吸気音が運転者に疾走感を与える吸気音である場合、その吸気音を運転者に積極的に聞かせることにより、運転者は鞍乗型車両の運転を楽しむことができる。また、エアクリーナから発生する吸気音がエンジンの動作状態に応じて変化する場合、その吸気音を運転者に積極的に聞かせることにより、運転者はエンジンの動作状態を把握しつつスロットル操作およびハンドル操作等を行うことができる。
【0005】
特許文献1には、エンジンの後方にエアクリーナボックスが設けられた鞍乗型車両の一例が記載されている。その鞍乗型車両においては、エアクリーナボックスの側壁に吸気口が設けられている。また、エアクリーナボックスの側壁の吸気口をさらに鞍乗型車両の側方から覆うようにサイドカバーが設けられている。サイドカバーには、エアクリーナボックスから発生する吸気音を運転者に聞かせるためのサイドカバー開口が形成されている。
【0006】
上記のサイドカバーは、シートの直下に位置し、鞍乗型車両に搭乗する運転者の頭部からは比較的離れた位置にある。また、サイドカバー開口は、車両の側方を向くように形成されている。そのため、特許文献1の鞍乗型車両に関して、当該鞍乗型車両に搭乗する運転者は、実際には、エアクリーナボックスから発生した吸気音を聞きとることが難しい。
【0007】
一方、特許文献2には、エンジン上部に吸気ボックス(エアクリーナボックス)が設けられた鞍乗型車両の構成の一例が記載されている。その鞍乗型車両においては、吸気ボックスの空気導入口(吸気口)の上方の位置にキーシリンダを覆うカバーが設けられている。カバーには、上方を向く開口部が形成されている。このような構成により、吸気口において発生する吸気音は、カバーの開口部を通して運転者によって聞き取られる。
【0008】
特許文献2には、カバーの開口部における吸気音の集音効果を高めるために、吸気ボックスからカバーの開口部に向かって延びるダクトを設ける構成がさらに記載されている。しかしながら、そのダクトは、カバーの開口部に向かって開口するとともに、当該ダクトの上方の空間と当該ダクトの下方の空間(吸気ボックスの内部空間)とを連通するように形成されている。そのため、上記の構成では、カバーの開口部に雨水等の液滴が進入する可能性がある。また、ダクトの内部には、塵埃を捕集するためのダクトフィルタが設けられている。しかしながら、ダクトフィルタでは、ダクトを通して吸気ボックスに液滴が流入することを阻止できない。
【0009】
本発明の目的は、エアクリーナに多量の液滴が進入することを抑制しつつ運転者に対してエアクリーナの吸気音を効率よく聞かせることが可能な鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一局面に従う鞍乗型車両は、エンジンと、エンジンの上方の位置に設けられるエアクリーナと、平面視でエアクリーナの少なくとも一部に重なるように、エアクリーナの上方の位置に設けられるカバーと、エアクリーナとカバーとの間の位置に設けられる遮蔽部材とを備え、エアクリーナは、上方を向いて開口するように形成されかつエンジンに供給されるべき空気が導入される吸気口を有し、カバーは、平面視でエアクリーナの吸気口に少なくとも一部が重なるように形成された開口部を有し、遮蔽部材の少なくとも一部は、平面視で、エアクリーナの吸気口とカバーの開口部とが重なる共通開口領域に重なる。
【0011】
その鞍乗型車両においては、エンジンの上方の位置にエアクリーナが設けられる。鞍乗型車両に設けられるエンジンは、当該鞍乗型車両に搭乗する運転者の両足の間またはその前方に位置する。したがって、上記の配置によれば、エアクリーナは、鞍乗型車両のうち運転者の頭部に比較的近い部分で、運転者の頭部よりも下方に位置する。
【0012】
上記のように、エアクリーナの吸気口は上方を向いて開口する。また、カバーの開口部の少なくとも一部は、平面視でエアクリーナの吸気口に重なる。そのため、エンジンの動作時には、エアクリーナの吸気口で発生する吸気音が、カバーの開口部の少なくとも一部を通してカバーの上方に向けて出力される。したがって、運転者はエアクリーナから発生する吸気音を聞きやすい。
【0013】
また、上記の鞍乗型車両においては、エアクリーナとカバーとの間の位置に、少なくとも一部が平面視で共通開口領域に重なるように遮蔽部材が設けられている。この場合、遮蔽部材は、カバーの開口部に進入する雨水等の液滴がさらにエアクリーナの吸気口に進入することを低減する。
【0014】
これらの結果、エアクリーナに多量の液滴が進入することを抑制しつつ運転者に対してエアクリーナの吸気音を効率よく聞かせることが可能になる。
【0015】
(2)遮蔽部材の少なくとも一部は、平面視で、共通開口領域の全体に重なってもよい。この場合、カバーの開口部からカバーとエアクリーナとの間の空間に進入する液滴の大部分は、遮蔽部材により受け止められ、平面視でエアクリーナの吸気口から外れた領域に流れる。それにより、雨水等の液滴がエアクリーナの吸気口に進入することが防止される。
【0016】
(3)鞍乗型車両は、燃料タンクをさらに備え、遮蔽部材は、燃料タンクの少なくとも一部により構成されてもよい。
【0017】
燃料タンクは、内部に燃料を貯留するための燃料貯留空間を有する。遮蔽部材のうち平面視で共通開口領域に重なる部分には、燃料貯留空間が含まれる。この場合、燃料タンクの燃料貯留空間は、特定の周波数を有する音をよく吸収する吸音部として機能する。それにより、運転者の嗜好に沿わない特定の周波数を有する音がカバーの開口部から出力されることを低減することができる。
【0018】
また、燃料タンクの燃料貯留空間の吸音機能は、燃料貯留空間内部の状態、すなわち燃料が充填されているかどうかに応じて変化する。それにより、カバーの開口部から出力される吸気音は、燃料貯留空間内部の状態に応じて変化する。したがって、運転者は、エアクリーナから発生する吸気音を聞くことにより燃料の残量を把握することが可能になる。
【0019】
(4)鞍乗型車両は、燃料タンクと、燃料タンクを保護するタンク保護部材とをさらに備え、遮蔽部材は、燃料タンクおよびタンク保護部材のうち少なくとも一部により構成されてもよい。
【0020】
この場合、燃料タンクおよびタンク保護部材のうち少なくとも一部が遮蔽部材として利用されるので、エアクリーナに液滴が進入することを低減するための部材を燃料タンクおよびタンク保護部材とは別に用意する必要がない。したがって、部品点数の増加および構成の複雑化が抑制される。
【0021】
(5)エアクリーナとカバーとの間には、遮蔽部材を迂回しつつエアクリーナの吸気口からカバーの開口部まで連続して延びるように形成された音伝達空間が形成されてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、カバー、エアクリーナおよび遮蔽部材は、エアクリーナの内部の空間と、カバーの上方の空間との間の流体の流れを制限する構造、いわゆるラビリンス構造を形成する。それにより、音伝達空間は、所定の鉛直断面においてカバーの開口部とエアクリーナの吸気口との間でジグザクに形成される。したがって、雨水等の液滴がカバーの開口部から遮蔽部材とカバーとの間に進入する場合でも、その液滴がエアクリーナの吸気口にさらに進入することが低減される。また、エアクリーナの吸気口で発生した吸気音が音伝達空間を通してカバーの開口部から出力される。
【0023】
(6)音伝達空間は、カバーと遮蔽部材との間に位置する隙間空間を含み、カバーおよび遮蔽部材のうち少なくとも一方には、隙間空間を第1の空間と第2の空間とに仕切る仕切り部が設けられ、第1の空間は、カバーの開口部を通してカバーの上方の空間に連通する空間であり、第2の空間は、隙間空間のうち第1の空間を除く空間であってもよい。
【0024】
この場合、エアクリーナの吸気口で発生した吸気音の一部が第1の空間に伝播されると、その吸気音の一部は、隙間空間内で第2の空間に拡散することなくカバーの開口部に導かれる。それにより、カバーの開口部から出力されるべき吸気音の音量が著しく低下することが防止される。
【0025】
(7)カバーの開口部の開口面積の合計は、エアクリーナの吸気口の開口面積の合計以下であってもよい。
【0026】
エアクリーナの吸気口から上方に向けて出力される吸気音の音量を第1の出力音量と呼ぶ。また、カバーの開口部から上方に向けて出力される吸気音の音量を第2の出力音量と呼ぶ。第1の出力音量は、エアクリーナの吸気口の開口面積の合計に応じて定まる。第2の出力音量は、カバーの開口部の開口面積の合計に応じて定まる。
【0027】
エアクリーナの吸気音の出力経路において、エアクリーナの吸気口はカバーの開口部よりも上流に位置する。そのため、カバーの開口部の開口面積の合計がエアクリーナの吸気口の開口面積の合計よりも大きい場合、出力音量は、カバーの開口部の開口面積の合計によらずエアクリーナの吸気口の開口面積の合計に応じて定まる。
【0028】
一方、カバーの開口部の開口面積の合計がエアクリーナの吸気口の開口面積の合計以下である場合、出力音量は、カバーの開口部の開口面積の合計に応じて定まる。
【0029】
したがって、エンジンに供給されるべき空気の量が確保されるようにエアクリーナの吸気口の開口面積を設定した上で、第2の出力音量が所望の音量となるようにカバーの開口部の寸法を決定することができる。
【0030】
(8)カバーの開口部は、第1の開口部および第2の開口部を含み、第1の開口部および第2の開口部の各々は、平面視でエアクリーナの吸気口に少なくとも一部が重なるように形成され、遮蔽部材は、平面視でカバーの第1の開口部のうち少なくとも一部に重なるように構成されるとともに、平面視でカバーの第2の開口部のうち少なくとも一部に重なるように構成されてもよい。
【0031】
この場合、カバーにおける開口部のレイアウトの自由度が向上する。それにより、運転者が吸気音を聞きやすいように第1の開口部および第2の開口部を設けることにより、運転者により効率よく吸気音を認識させることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、エアクリーナに多量の液滴が進入することを抑制しつつ運転者に対してエアクリーナの吸気音を効率よく聞かせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の側面図である。
【
図3】
図2のエアクリーナ上に燃料タンクが設けられた状態を示す平面図である。
【
図4】
図3の燃料タンクにタンク保護部材が取り付けられた状態を示す平面図である。
【
図5】
図4の燃料タンク上に上部カバーが取り付けられた状態を示す平面図である。
【
図6】
図5のM-M線におけるエアクリーナの上面部分およびその周辺部材の模式的断面図である。
【
図7】
図6のN-N線におけるエアクリーナの上面部分およびその周辺部材の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態に係る鞍乗型車両について図面を参照しつつ説明する。鞍乗型車両の一例として自動二輪車を説明する。
【0035】
<1>自動二輪車の概略構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の側面図である。
図1では、自動二輪車100が路面に対して垂直に起立した状態が示される。
図1以降の各図では、自動二輪車100の前後方向FB、左右方向LRおよび上下方向UDが適宜矢印で示される。前後方向FBにおいて矢印が向かう方向を前方と呼び、その逆の方向を後方と呼ぶ。また、左右方向LRにおいて矢印が向かう方向を左方と呼び、その逆の方向を右方と呼ぶ。さらに、上下方向UDにおいて矢印が向かう方向を上方と呼び、その逆の方向を下方と呼ぶ。
図1以降の各図で方向の矢印とともに示される符号F,B,L,R,U,Dは、前方、後方、左方、右方、上方および下方をそれぞれ表す。
【0036】
図1の自動二輪車100は、金属製の車体フレーム1を備える。車体フレーム1は、メインフレーム1Mおよびリアフレーム1Rを含む。メインフレーム1Mの前端部はヘッドパイプHPを構成する。メインフレーム1Mは、ヘッドパイプHPから後方かつ下方に向かって延びるように形成されている。リアフレーム1Rは、メインフレーム1Mの後端部およびその後端部近傍から後方かつやや上方に向かって延びるように、メインフレーム1Mに取り付けられている。
【0037】
ヘッドパイプHPには、フロントフォーク2がヘッドパイプHPの中心軸を基準として回転可能に設けられている。フロントフォーク2の下端部に前輪3が回転可能に支持されている。フロントフォーク2の上端部には、ハンドル4が設けられている。
【0038】
メインフレーム1MはヘッドパイプHPよりも下方の位置でエンジン5を支持する。エンジン5の上方でかつヘッドパイプHPの後方に位置するようにエアクリーナ10および燃料タンク8が設けられている。エアクリーナ10および燃料タンク8は、メインフレーム1Mにより支持され、少なくとも一部がメインフレーム1Mの上方に位置する。
【0039】
燃料タンク8の一部は、エアクリーナ10の上方に位置する。燃料タンク8には、上方からエアクリーナ10の一部および燃料タンク8の一部を覆うように上部カバー90が取り付けられている。上部カバー90には、左右一対のカバー開口部91が形成されている。
図1では、一対のカバー開口部91のうち左のカバー開口部91のみが示される。上部カバー90の前端部に隣り合うように、キーシリンダ95が設けられている。キーシリンダ95は、メインフレーム1Mに支持されている。燃料タンク8の後方には、シート9が設けられている。シート9は、リアフレーム1Rにより支持され、リアフレーム1Rの上方に位置する。
【0040】
メインフレーム1Mの後端下部から後方に延びるように、リアアーム6が設けられている。リアアーム6は、ピボット軸を用いてメインフレーム1Mに支持されている。リアアーム6の後端部に後輪7が回転可能に支持されている。後輪7は、駆動輪としてエンジン5から発生される動力により回転する。
【0041】
エアクリーナ10は、主としてエアクリーナケースおよびフィルタエレメント(図示せず)から構成される。フィルタエレメントは、エアクリーナケースの内部に設けられている。自動二輪車100の走行時には、自動二輪車100の外部の空気がエアクリーナケースの内部空間に導かれ、フィルタエレメントにより浄化されつつエンジン5に供給される。
【0042】
エアクリーナ10は、エンジン5に供給されるべき空気が導入される吸気口11(後述する
図2参照)を有する。自動二輪車100の外部の空気がエアクリーナ10の吸気口11に導入される際には、吸気音が発生する。吸気音が運転者に疾走感を与える吸気音である場合、運転者はその吸気音を聞くことにより自動二輪車100の運転を楽しむことができる。また、吸気音がエンジンの動作状態に応じて変化する場合、運転者はその吸気音を聞くことにより、エンジンの動作状態を把握することができる。
【0043】
そこで、本実施の形態に係る自動二輪車100においては、エアクリーナ10から発生する吸気音を運転者に効率よく聞かせるために、エアクリーナ10およびその周辺部材の構成に工夫が施されている。以下、エアクリーナ10およびその周辺部材の構成の詳細を説明する。
【0044】
<2>エアクリーナ10およびその周辺部材の構成
(1)エアクリーナ10
図2は、
図1のエアクリーナ10の平面図である。
図2では、
図1のエアクリーナ10がメインフレーム1Mに取り付けられた状態で示される。また、
図2では、エアクリーナ10とともに、
図1のキーシリンダ95およびハンドル4が示される。
図2に示すように、エアクリーナ10は吸気口11を有する。その吸気口11は、上方に向いて開口するように形成されている。また、本例の吸気口11は、平面視でエアクリーナ10の前端部近傍に位置しかつ自動二輪車100の左右方向LRに略一定幅で延びている。
【0045】
(2)燃料タンク8
図1の自動二輪車100の組み立て時には、エアクリーナ10がメインフレーム1Mに取り付けられた状態で、エアクリーナ10の大部分を上方から覆うように、メインフレーム1Mに燃料タンク8が取り付けられる。
【0046】
図3は、
図2のエアクリーナ10上に燃料タンク8が設けられた状態を示す平面図である。
図3では、燃料タンク8の形状が理解しやすいように、燃料タンク8にハッチングを付している。
図3に示すように、本例の燃料タンク8は、平面視でエアクリーナ10の前端部を除くエアクリーナ10の大部分を上方から覆っている。また、燃料タンク8は、平面視でエアクリーナ10の吸気口11の全体に重なる。さらに、燃料タンク8の上面略中央部には、燃料キャップ81が設けられている。
【0047】
燃料キャップ81の一部には、ハーネス82の一端部が接続されている。ハーネス82の他端部は、キーシリンダ95の近傍に設けられたハーネス用の接続部89に接続される。ハーネス82の一部は、平面視で燃料タンク8の一部に重なる。燃料キャップ81および接続部89に接続された状態で、ハーネス82には、着脱作業の容易性を確保するため、および接続状態の安定性を確保するための遊びが設けられる。また、ハーネス82は、フレキシブル性を有する。そのため、自動二輪車100の走行時に、ハーネス82と燃料タンク8とが接触する状態でハーネス82が揺れ動くと、燃料タンク8の表面の一部がハーネス82の接触により摩耗する可能性がある。
【0048】
そこで、本実施の形態では、燃料タンク8とハーネス82との接触を防止するために、燃料タンク8にタンク保護部材70(後述する
図4参照)が取り付けられる。タンク保護部材70は、燃料タンク8の上面の一部を覆う。
【0049】
(3)タンク保護部材70
図4は、
図3の燃料タンク8にタンク保護部材70が取り付けられた状態を示す平面図である。
図4では、燃料タンク8およびタンク保護部材70の形状が理解しやすいように、燃料タンク8にハッチングを付し、タンク保護部材70にドットパターンを付している。さらに、
図4では、吹き出し内に、タンク保護部材70の拡大平面図が示される。
【0050】
図4に示すように、本例のタンク保護部材70は、平面視で燃料タンク8の上面のうち燃料キャップ81の前方に位置する部分に重なるようにかつ燃料タンク8とハーネス82との間に位置するように設けられている。
【0051】
また、タンク保護部材70は、比較的高い剛性を有する樹脂により形成された略板状の単一部材であり、左右一対の音伝達部71、左右一対の配線保持部72および連結部73を有する。一対の配線保持部72は、連結部73の左右に配置されている。各配線保持部72は、連結部73に隣り合う。一対の音伝達部71は、一対の配線保持部72の左右に配置されている。右の音伝達部71は右の配線保持部72に隣り合い、左の音伝達部71は左の配線保持部72に隣り合う。
【0052】
本例の一対の音伝達部71、一対の配線保持部72および連結部73は、略平坦な上面を有する。なお、一対の音伝達部71、一対の配線保持部72および連結部73の各々の上面は、緩やかに折れ曲がった形状を有してもよいし、緩やかに湾曲した形状を有してもよい。
【0053】
タンク保護部材70においては、左の音伝達部71の左側の縁部に仕切り部74が形成されている。また、左の音伝達部71と左の配線保持部72との間に仕切り部74が形成されている。また、左の配線保持部72と連結部73との間に仕切り部74が形成されている。また、連結部73と右の配線保持部72との間に仕切り部74が形成されている。また、右の配線保持部72と右の音伝達部71との間に仕切り部74が形成されている。さらに、右の音伝達部71の右側の縁部に仕切り部74が形成されている。
【0054】
各仕切り部74は、一対の音伝達部71、一対の配線保持部72および連結部73の上面から上方に所定高さ突出するとともに前後方向FBに延びるように形成されている。これにより、タンク保護部材70には、一対の音伝達部71、一対の配線保持部72および連結部73をそれぞれ底部として上方に開口しかつ前後方向FBに延びる複数の溝部が形成されている。
【0055】
タンク保護部材70が燃料タンク8に取り付けられた状態で、上記のハーネス82の一部は、タンク保護部材70の右の配線保持部72を底部とする溝部内に収容される。また、タンク保護部材70は、平面視でエアクリーナ10の吸気口11の大部分に重なる。さらに、タンク保護部材70の一対の音伝達部71は、平面視で左右方向LRに延びる吸気口11を横切るように前後方向FBに延びている。
【0056】
(4)上部カバー90
タンク保護部材70が取り付けられた燃料タンク8上に、
図1の上部カバー90が取り付けられる。
図5は、
図4の燃料タンク8上に上部カバー90が取り付けられた状態を示す平面図である。
図5では、燃料タンク8および上部カバー90の形状が理解しやすいように、燃料タンク8および上部カバー90に互いに異なる種類のハッチングを付している。さらに、
図5では、吹き出し内に、エアクリーナ10の吸気口11と、燃料タンク8と、タンク保護部材70と、上部カバー90のカバー開口部91との位置関係を示す拡大平面図が示される。
【0057】
図5に示すように、本例の上部カバー90は、平面視で燃料タンク8の燃料キャップ81の中央部を取り囲む。また、上部カバー90は、燃料キャップ81とキーシリンダ95との間で前後方向FBに延びている。上部カバー90の前半部は、平面視でエアクリーナ10の一部分、燃料タンク8の一部分、およびタンク保護部材70の全体に重なる。
【0058】
上部カバー90の前半部に、上記の一対のカバー開口部91が形成されている。一対のカバー開口部91は、平面視で車両中心線CLを基準として左右対称となっている。
図5の車両中心線CLは、
図1の自動二輪車100の左右方向LRの中心を通って前後方向FBに延びる仮想直線である。一対のカバー開口部91の各々は、上方または斜め上方に向くように開口し、前後方向FBに延びるように形成されている。本実施の形態においては、一対のカバー開口部91は、一対のカバー開口部91の開口面積の合計が、エアクリーナ10の吸気口11の開口面積以下となるように形成されている。
【0059】
一のカバー開口部91の開口面積は、一のカバー開口部91をそのカバー開口部91が開口する方向に見たときに当該カバー開口部91の内縁で取り囲まれる領域の面積である。また、吸気口11の開口面積は、吸気口11をその吸気口11が開口する方向に見たときに当該吸気口11の内縁で取り囲まれる領域の面積である。
【0060】
各カバー開口部91には、金網92が設けられている。金網92は、自動二輪車100の外部を漂う塵埃がカバー開口部91を通して上部カバー90の下方の空間に進入することを抑制する。
【0061】
図5の吹き出し内に示すように、上部カバー90の各カバー開口部91の一部は、平面視でエアクリーナ10の吸気口11に重なる。ここで、平面視で上部カバー90の各カバー開口部91とエアクリーナ10の吸気口11とが重なる領域を共通開口領域CRと呼ぶ。
【0062】
本実施の形態に係る燃料タンク8およびタンク保護部材70の各々は、平面視で共通開口領域CRの全体に重なるように配置されている。それにより、エアクリーナ10の吸気口11が上部カバー90よりも上方の空間(自動二輪車100の外部)に露出することが防止されている。したがって、雨水等の液滴が、一対のカバー開口部91から上部カバー90の下方の空間に進入する場合でも、その液滴がさらにエアクリーナ10の吸気口11に直接進入することが防止される。
【0063】
図6は、
図5のM-M線におけるエアクリーナ10の上面部分およびその周辺部材の模式的断面図である。
図7は、
図6のN-N線におけるエアクリーナ10の上面部分およびその周辺部材の模式的断面図である。
図6に示すように、エアクリーナ10と燃料タンク8との間には、第1の隙間空間GS1が形成されている。第1の隙間空間GS1は、数mmから数cmの高さを有し、エアクリーナ10の吸気口11を通してエアクリーナ10の内部空間ISに連通している。
【0064】
一方、タンク保護部材70と上部カバー90との間には、第2の隙間空間GS2が形成されている。第2の隙間空間GS2は、数mmから数cmの高さを有し、上部カバー90のカバー開口部91を通して上部カバー90よりも上方の空間に連通している。
【0065】
上記のように、タンク保護部材70は、上方に突出する複数の仕切り部74を有する。それにより、第2の隙間空間GS2は、複数の仕切り部74により、タンク保護部材70の一対の音伝達部71、一対の配線保持部72および連結部73にそれぞれ対応する複数の空間に仕切られる。本例では、上記のように、第2の隙間空間GS2のうち右の配線保持部72に対応する空間にハーネス82が収容されている。第2の隙間空間GS2のうち左の配線保持部72に対応する空間には、ハーネス82は収容されていない。
【0066】
なお、燃料タンク8とタンク保護部材70との間にも、エアクリーナ10と燃料タンク8との間、およびタンク保護部材70と上部カバー90との間と同様に、隙間空間が形成されている。しかしながら、燃料タンク8とタンク保護部材70との間の隙間空間は、第1の隙間空間GS1および第2の隙間空間GS2に比べて無視できる程度に小さい。
【0067】
平面視でエアクリーナ10の吸気口11に重なる燃料タンク8の部分は、タンク上面部8Aおよびタンク下面部8Bを含む。タンク上面部8Aとタンク下面部8Bとの間には、燃料を貯留するための燃料貯留空間FSが形成されている。
【0068】
図7に示すように、エアクリーナ10と上部カバー90との間には、燃料タンク8の前端部およびタンク保護部材70の前端部よりも前方の位置で、第1の隙間空間GS1と第2の隙間空間GS2とを連通させる連通空間GS3が形成されている。
【0069】
第1の隙間空間GS1、第2の隙間空間GS2および連通空間GS3は、エアクリーナ10の吸気口11から燃料タンク8およびタンク保護部材70を迂回しつつ上部カバー90の一対のカバー開口部91まで連続して延びる連続空間を形成する。その連続空間は、エアクリーナ10の吸気口11で上方に向けて出力される吸気音を、上部カバー90の一対のカバー開口部91に伝達する音伝達空間として機能する。したがって、自動二輪車100の走行時には、
図7に太い実線の矢印で示すように、吸気口11から出力される吸気音が、第1の隙間空間GS1、連通空間GS3および第2の隙間空間GS2を通して一対のカバー開口部91から上部カバー90の上方に効率よく出力される。
【0070】
ここで、
図5および
図6に示すように、上部カバー90の一対のカバー開口部91の各々は、当該カバー開口部91の全体が平面視でタンク保護部材70の音伝達部71に重なる。また、上記のように、第2の隙間空間GS2は、タンク保護部材70の複数の複数の仕切り部74により、複数の空間に仕切られている。
【0071】
この場合、吸気音の一部が第2の隙間空間GS2のうちタンク保護部材70の一対の音伝達部71に対応する空間に伝播されると、その吸気音の一部は、第2の隙間空間GS2内で拡散されることなく上部カバー90の一対のカバー開口部91に導かれる。それにより、上部カバー90の一対のカバー開口部91から出力される吸気音の音量が著しく低下することが防止される。
【0072】
特に、上記のタンク保護部材70においては、一対の音伝達部71の各々に対応する空間を仕切るための2つの仕切り部74間の左右方向LRの間隔が、タンク保護部材70の前端部から後方に向かって漸次小さくなっている(
図4の吹き出し内の平面図参照)。そのため、第2の隙間空間GS2においては、一対の音伝達部71に対応する空間を形成する2つの仕切り部74が、第1の隙間空間GS1から連通空間GS3を通して伝達される音をカバー開口部91に収音する。それにより、カバー開口部91においては、吸気音がより高い効率で出力される。
【0073】
図6に示すように、タンク保護部材70の左の音伝達部71の上面は、右から左に向かって斜め下方を向くように傾斜している。また、タンク保護部材70の右の音伝達部71の上面は、左から右に向かって斜め下方を向くように傾斜している。さらに、
図7に示すように、タンク保護部材70の左右の音伝達部71の上面は、後から前に向かって斜め下方を向くように傾斜している。このような構成によれば、カバー開口部91を通して第2の隙間空間GS2に液滴が進入する場合でも、
図7に太い二点鎖線の矢印で示すように、進入した液滴が音伝達部71を伝って吸気口11から外れた領域に円滑に導かれる。
【0074】
<3>効果
(a)上記のように、本実施の形態に係る自動二輪車100においては、エンジン5の上方の位置にエアクリーナ10が設けられる。エンジン5は、自動二輪車100に搭乗する運転者の両足の間またはその前方に位置する。したがって、上記の配置によれば、エアクリーナ10は、自動二輪車100のうち運転者の頭部に比較的近い部分で、運転者の頭部よりも下方に位置する。
【0075】
エアクリーナ10の吸気口11は上方を向いて開口する。また、上部カバー90の一対のカバー開口部91の少なくとも一部は、平面視でエアクリーナ10の吸気口11に重なる。そのため、自動二輪車100の走行時には、エアクリーナ10の吸気口11で発生する吸気音が、上部カバー90の一対のカバー開口部91の少なくとも一部を通して上部カバー90の上方に出力される。したがって、運転者はエアクリーナ10から発生する吸気音を聞きやすい。
【0076】
また、上記の自動二輪車100においては、エアクリーナ10と上部カバー90との間の位置に、平面視で共通開口領域CRの全体に重なるように燃料タンク8およびタンク保護部材70が設けられている。この場合、燃料タンク8およびタンク保護部材70は、上部カバー90の一対のカバー開口部91から進入する雨水等の液滴の大部分を受け止め、受け止めた液滴をエアクリーナ10の吸気口11から外れた領域に流す。それにより、液滴がエアクリーナ10の吸気口11に進入することが防止される。
【0077】
これらの結果、エアクリーナ10に多量の液滴が進入することを抑制しつつ運転者に対してエアクリーナ10の吸気音を効率よく聞かせることが可能になる。
【0078】
(b)上記のように、燃料タンク8は、燃料貯留空間FSを有する。燃料タンク8のうち平面視で共通開口領域CRに重なる部分には、燃料貯留空間FSが含まれる。この場合、燃料貯留空間FSは、特定の周波数を有する音をよく吸収する吸音部として機能する。それにより、運転者の嗜好に沿わない特定の周波数を有する音が上部カバー90の一対のカバー開口部91から出力されることを低減することができる。
【0079】
また、共通開口領域CRの吸音機能は、共通開口領域CR内部の状態、すなわち燃料が充填されているかどうかに応じて変化する。それにより、上部カバー90の一対のカバー開口部91から出力される吸気音は、共通開口領域CR内部の状態に応じて変化する。したがって、運転者は、吸気音を聞くことにより燃料の残量を把握することが可能になる。
【0080】
(c)上記のように、燃料タンク8およびタンク保護部材70は、上部カバー90の一対のカバー開口部91に進入する液滴がエアクリーナ10の吸気口11に進入することを防止するための遮蔽部材として用いられる。これにより、エアクリーナ10に液滴が進入することを低減するための部材を燃料タンク8およびタンク保護部材70とは別に用意する必要がない。したがって、部品点数の増加および構成の複雑化が抑制されている。
【0081】
(d)上記のように、エアクリーナ10と上部カバー90との間には、第1の隙間空間GS1、第2の隙間空間GS2および連通空間GS3からなる連続空間が形成される。その連続空間を形成するエアクリーナ10、燃料タンク8、タンク保護部材70および上部カバー90は、エアクリーナ10の内部空間ISと、上部カバー90よりも上方の空間との間の流体の流れを制限する構造、いわゆるラビリンス構造を形成する。それにより、上記の連続空間は、燃料タンク8およびタンク保護部材70を迂回しつつ吸気口11から一対のカバー開口部91まで連続して延びる。換言すれば、上記の連続空間は、吸気口11から一対のカバー開口部91まで上下方向UDにジグザグに形成されている。
【0082】
したがって、雨水等の液滴が上部カバー90の一対のカバー開口部91に進入する場合でも、その液滴がエアクリーナ10の吸気口11にさらに進入することが低減される。また、エアクリーナ10の吸気口11で発生した吸気音が上部カバー90の一対のカバー開口部91から出力される。
【0083】
(e)エアクリーナ10の吸気口11から第1の隙間空間GS1に向けて出力される吸気音の音量を第1の出力音量と呼ぶ。また、上部カバー90の一対のカバー開口部91から上方に向けて出力される吸気音の音量を第2の出力音量と呼ぶ。第1の出力音量は、エアクリーナ10の吸気口11の開口面積に応じて定まる。第2の出力音量は、上部カバー90の一対のカバー開口部91の開口面積の合計に応じて定まる。
【0084】
エアクリーナ10の吸気音の出力経路において、エアクリーナ10の吸気口11は上部カバー90の一対のカバー開口部91よりも上流に位置する。そのため、一対のカバー開口部91の開口面積の合計が吸気口11の開口面積よりも大きい場合、出力音量は、一対の吸気口11の開口面積の合計によらず吸気口11の開口面積に応じて定まる。
【0085】
一方、一対のカバー開口部91の開口面積の合計が吸気口11の開口面積以下である場合、出力音量は、一対のカバー開口部91の開口面積の合計に応じて定まる。
【0086】
本実施の形態に係る自動二輪車100においては、上記のように、平面視における一対のカバー開口部91の開口面積の合計が、平面視におけるエアクリーナ10の吸気口11の開口面積以下である。したがって、エンジン5に供給されるべき空気の量が確保されるようにエアクリーナ10の吸気口11の開口面積を設定した上で、第2の出力音量が所望の音量となるように上部カバー90の一対のカバー開口部91の寸法を決定することができる。
【0087】
(f)本実施の形態に係る上部カバー90には、吸気音を出力可能な一対のカバー開口部91が形成されている。したがって、運転者が吸気音を聞きやすいように、一対のカバー開口部91の大きさおよび位置を定めることにより、運転者により効率よく吸気音を認識させることが可能になる。
【0088】
<4>他の実施の形態
(a)上記実施の形態に係る燃料タンク8およびタンク保護部材70の各々は、平面視で共通開口領域CRの全体に重なるが、本発明はこれに限定されない。燃料タンク8およびタンク保護部材70の各々は、共通開口領域CRの一部に重なっていてもよい。この場合においても、燃料タンク8およびタンク保護部材70の各々が、平面視で共通開口領域CRに全く重ならない場合に比べて吸気口11からエアクリーナ10の内部に雨水等の液滴が進入することを低減することができる。
【0089】
(b)上記実施の形態に係る燃料タンク8およびタンク保護部材70の各々は、平面視で共通開口領域CRの全体に重なるが、本発明はこれに限定されない。平面視で共通開口領域CRの少なくとも一部に重なる他の部材が存在する場合には、燃料タンク8およびタンク保護部材70の各々は、共通開口領域CRに重ならなくてもよい。この場合、他の部材が平面視で共通開口領域CRの少なくとも一部に重なるので、共通開口領域CRの全体が上方に解放されている場合に比べて吸気口11からエアクリーナ10の内部に雨水等の液滴が進入することを低減することができる。
【0090】
なお、上記の他の部材は、エアクリーナ10への液滴の進入を低減することのみを目的として作製された部材であってもよいし、キーシリンダ95周辺の部材をカバーするために作製された部材であってもよい。
【0091】
(c)上記実施の形態に係る燃料タンク8は、平面視で共通開口領域CRの全体に重なるが、本発明はこれに限定されない。燃料タンク8は、平面視で共通開口領域CRに重ならなくてもよい。
【0092】
この場合においても、タンク保護部材70は、平面視で共通開口領域CRの少なくとも一部に重なる。それにより、燃料タンク8およびタンク保護部材70が平面視で共通開口領域CRに全く重ならない場合に比べて吸気口11からエアクリーナ10の内部に雨水等の液滴が進入することを低減することができる。
【0093】
(d)上記実施の形態に係るタンク保護部材70は、平面視で共通開口領域CRの全体に重なるが、本発明はこれに限定されない。タンク保護部材70は、平面視で共通開口領域CRに重ならなくてもよい。あるいは、ハーネス82が設けられない場合、タンク保護部材70は設けられなくてもよい。
【0094】
これらの場合においても、燃料タンク8は、平面視で共通開口領域CRの少なくとも一部に重なる。それにより、燃料タンク8およびタンク保護部材70が平面視で共通開口領域CRに全く重ならない場合に比べて吸気口11からエアクリーナ10の内部に雨水等の液滴が進入することを低減することができる。
【0095】
(e)上記実施の形態に係る上部カバー90には、一対のカバー開口部91が形成されているが、本発明はこれに限定されない。上部カバー90には、1つのカバー開口部91のみが形成されていてもよい。
【0096】
(f)上記実施の形態に係るエアクリーナ10には、1つの吸気口11のみが形成されているが、本発明はこれに限定されない。エアクリーナ10には、上方を向く2以上の複数の吸気口11が形成されてもよい。この場合、一対のカバー開口部91は、一対のカバー開口部91の開口面積の合計がエアクリーナ10の複数の吸気口11の開口面積の合計以下となるように形成される。
【0097】
(g)上記実施の形態に係るタンク保護部材70には、複数の仕切り部74が形成されているが、本発明はこれに限定されない。タンク保護部材70には、複数の仕切り部74が形成されていなくてもよい。
【0098】
この場合、複数の仕切り部74は、第2の隙間空間GS2が複数の空間に仕切られるように、上部カバー90に一体的に形成されていてもよい。あるいは、仕切り部74は、タンク保護部材70および上部カバー90とは別体で、第2の隙間空間GS2内に設けられてもよい。
【0099】
(h)上記実施の形態は本発明を自動二輪車に適用した例であるが、これに限らず、自動四輪車、自動三輪車もしくはATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)等の他の鞍乗型車両に本発明を適用してもよい。
【0100】
<5>実施の形態の各部と請求項の各構成要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明する。
【0101】
上記の実施の形態においては、エンジン5がエンジンの例であり、エアクリーナ10がエアクリーナの例であり、上部カバー90がカバーの例であり、燃料タンク8およびタンク保護部材70が遮蔽部材の例であり、エアクリーナ10の吸気口11が吸気口の例であり、上部カバー90の一対のカバー開口部91が開口部の例である。
【0102】
また、共通開口領域CRが共通開口領域の例であり、自動二輪車100が鞍乗型車両の例であり、燃料タンク8が燃料タンクの例であり、タンク保護部材70がタンク保護部材の例であり、第1の隙間空間GS1、第2の隙間空間GS2および連通空間GS3からなる連続空間が音伝達空間の例であり、第2の隙間空間GS2が隙間空間の例である。
【0103】
また、第2の隙間空間GS2のうち一対の音伝達部71に対応する空間が第1の空間の例であり、第2の隙間空間GS2のうち一対の配線保持部72および連結部73に対応する空間が第2の空間の例であり、上部カバー90の一対のカバー開口部91のうち一方が第1の開口部の例であり、上部カバー90の一対のカバー開口部91のうち他方が第2の開口部の例である。
【0104】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
【符号の説明】
【0105】
1…車体フレーム,1M…メインフレーム,1R…リアフレーム,2…フロントフォーク,3…前輪,4…ハンドル,5…エンジン,6…リアアーム,7…後輪,8…燃料タンク,8A…タンク上面部,8B…タンク下面部,9…シート,10…エアクリーナ,11…吸気口,70…タンク保護部材,71…音伝達部,72…配線保持部,73…連結部,74…仕切り部,81…燃料キャップ,82…ハーネス,89…接続部,90…上部カバー,91…カバー開口部,92…金網,95…キーシリンダ,100…自動二輪車,CL…車両中心線,CR…共通開口領域,FB…前後方向,FS…燃料貯留空間,GS1…第1の隙間空間,GS2…第2の隙間空間,GS3…連通空間,HP…ヘッドパイプ,IS…内部空間,LR…左右方向,UD…上下方向