(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162929
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】エキスパンド装置、半導体チップの製造方法および半導体チップ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231101BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20231101BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20231101BHJP
【FI】
H01L21/78 X
H01L21/78 P
H01L21/78 V
H01L21/78 B
H01L21/68 A
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073645
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳邦
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4E168AE02
4E168CA06
4E168CB03
4E168CB07
4E168HA01
5F063AA26
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5F063CB29
5F063DD31
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5F063FF52
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5F131BA52
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5F131EC33
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5F131EC75
5F131GA03
(57)【要約】
【課題】スキージ部および紫外線照射部の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することが可能なエキスパンド装置、半導体チップの製造方法および半導体チップを提供する。
【解決手段】このエキスパンド装置1は、エキスパンド部208によりエキスパンドされたシート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2に紫外線を照射する紫外線照射部212と、エキスパンド部208によりシート部材W2をエキスパンドさせてウエハW1を複数の半導体チップChに分割させた後、ウエハW1を局所的に押圧するスキージ部213と、紫外線照射部212およびスキージ部213の両方を移動させることが可能な共通の移動機構213c、213dとを備える。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハが貼り付けられた伸縮性を有するシート部材をエキスパンドすることにより前記ウエハを複数の半導体チップに分割するエキスパンド部と、
前記エキスパンド部によりエキスパンドされた前記シート部材のうち前記ウエハの位置に対応する前記シート部材に紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記エキスパンド部により前記シート部材をエキスパンドさせて前記ウエハを前記複数の半導体チップに分割させた後、前記ウエハを局所的に押圧するスキージ部と、
前記紫外線照射部および前記スキージ部の両方を移動させることが可能な共通の移動機構とを備える、エキスパンド装置。
【請求項2】
前記移動機構は、
前記紫外線照射部および前記スキージ部の両方を水平方向のうちの一方向に移動させる第1直線移動機構と、
上下方向に沿って延びる回動軸線回りに、少なくとも前記スキージ部を回動させる回動機構とを含む、請求項1に記載のエキスパンド装置。
【請求項3】
前記第1直線移動機構は、前記回動機構に取り付けられ、
前記回動機構は、前記紫外線照射部および前記スキージ部の両方を前記一方向に移動させることが可能な位置から前記一方向に直交する他方向に移動させることが可能な位置まで前記第1直線移動機構を回動させるように構成されている、請求項2に記載のエキスパンド装置。
【請求項4】
前記エキスパンド部は、前記シート部材をエキスパンドさせるエキスパンドリングを含み、
前記紫外線照射部、前記スキージ部および前記移動機構は、平面視において、前記エキスパンドリングの径方向の内側に配置されている、請求項1に記載のエキスパンド装置。
【請求項5】
前記紫外線照射部による紫外線照射と、前記スキージ部による前記ウエハの局所的な押圧とを、共通の前記移動機構により前記紫外線照射部および前記スキージ部を共に移動させながら並行して実施する制御を行うように構成された制御部をさらに備える、請求項1に記載のエキスパンド装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記移動機構により水平方向のうちの一方向へ前記スキージ部を移動させて前記ウエハの局所的な押圧を行う場合、および、水平方向のうちの前記一方向に直交する他方向へ前記スキージ部を移動させて前記ウエハの局所的な押圧を行う場合の少なくともいずれかの押圧を行う場合に前記紫外線照射部による紫外線の照射を並行して実施する制御を行うように構成されている、請求項5に記載のエキスパンド装置。
【請求項7】
前記紫外線照射部は、前記スキージ部とは別個に共通の前記移動機構に取り付けられている、請求項1に記載のエキスパンド装置。
【請求項8】
前記紫外線照射部は、前記スキージ部内に一体的に設けられた状態で、共通の前記移動機構に取り付けられている、請求項1に記載のエキスパンド装置。
【請求項9】
水平方向における前記一方向に直交する他方向に移動させる第2直線移動機構をさらに備え、
前記第1直線移動機構は、前記第2直線移動機構に取り付けられるとともに、前記回動機構は、前記第1直線移動機構に取り付けられ、
前記紫外線照射部は、前記第1直線移動機構または前記回動機構に取り付けられ、
前記スキージ部は、前記回動機構に取り付けられている、請求項2に記載のエキスパンド装置。
【請求項10】
前記エキスパンド部は、前記シート部材をエキスパンドさせるエキスパンドリングを含み、
前記紫外線照射部、前記スキージ部および前記移動機構は、前記エキスパンドリング外に配置されている、請求項1に記載のエキスパンド装置。
【請求項11】
前記紫外線照射部は、エキスパンド状態の前記シート部材に下方から照射するように構成され、
前記紫外線照射部は、紫外線を発光する紫外線発光部を含み、
前記紫外線発光部は、前記エキスパンド部により前記シート部材がエキスパンドされた前記エキスパンド状態において、前記ウエハを囲んだ状態で前記シート部材に貼り付けられたリング状部材の上面よりも、前記スキージ部の局所的な押圧が行われる前記シート部材の押圧面から下方に離間した位置に配置されている、請求項7に記載のエキスパンド装置。
【請求項12】
レーザ光を照射するレーザ照射部から複数の半導体チップが設けられたウエハにレーザ光を照射することにより前記ウエハ内に改質層を形成する工程と、
前記ウエハが貼り付けられた伸縮性を有するシート部材をエキスパンドするエキスパンド部により前記ウエハを前記複数の半導体チップに分割する工程と、
共通の移動機構により紫外線照射部およびスキージ部を移動させることにより、前記シート部材のうち前記ウエハの位置に対応する前記シート部材に紫外線を照射するとともに、前記ウエハを局所的に押圧する工程とを備える、半導体チップの製造方法。
【請求項13】
ウエハが貼り付けられた伸縮性を有するシート部材をエキスパンドすることにより前記ウエハを複数の半導体チップに分割するエキスパンド部と、前記エキスパンド部によりエキスパンドされた前記シート部材のうち前記ウエハの位置に対応する前記シート部材に紫外線を照射する紫外線照射部と、前記エキスパンド部により前記シート部材をエキスパンドさせて前記ウエハを前記複数の半導体チップに分割させた後、前記ウエハを局所的に押圧するスキージ部と、前記紫外線照射部および前記スキージ部の両方を移動させることが可能な共通の移動機構とを備えるエキスパンド装置によって製造される、半導体チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エキスパンド装置、半導体チップの製造方法および半導体チップに関し、特に、ウエハを複数の半導体チップに分割するエキスパンド部を備えるエキスパンド装置、半導体チップの製造方法および半導体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハを複数の半導体チップに分割するエキスパンド部を備えるエキスパンド装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、被加工物(ウエハ)を複数のチップに分割する拡張手段(エキスパンド部)を備える分割装置が開示されている。この分割装置は、保持テーブルと、UV照射手段と、移動手段とを備えている。保持テーブルは、拡張手段によりエキスパンドされて分割した複数のチップが貼り付けられたエキスパンドシートを保持するように構成されている。UV照射手段は、エキスパンドシートの接着力を弱めるため、保持テーブルに保持されたエキスパンドシートに紫外線を照射するように構成されている。移動手段は、エキスパンドシートに紫外線を照射させるため、保持テーブルに複数のチップが貼り付けられたエキスパンドシートを紫外線照射部に移動させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1の分割装置では、拡張手段によりエキスパンドシートをエキスパンドすることによって、複数のチップを分割するだけでなく、拡張手段によるエキスパンド後、エキスパンドした際に分割されなかったウエハを分割するために、スキージ部を設けることが考えられる。ここで、スキージ部は、拡張手段によるエキスパンド後にシート部材を局所的に押圧することによって、分割されなかったウエハを分割するように構成されている。
【0006】
しかしながら、上記したように分割装置にスキージ部を設ける場合、スキージ部はシート部材を局所的に押圧するように構成されているので、スキージ部によりシート部材のうちのウエハに対応する部分の全体を押圧するために、スキージ部を移動させる移動機構が必要になる。このため、このような場合では、UV照射手段およびUV照射手段に複数のチップが貼り付けられたエキスパンドシートを移動させる移動手段とは別個に、スキージ部およびスキージ部の移動機構が必要になるので、スキージ部およびUV照射手段の両方を分割装置に設けた場合、エキスパンド部を備える分割装置(エキスパンド装置)が大型化するという問題があると考えられる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、スキージ部および紫外線照射部の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することが可能なエキスパンド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるエキスパンド装置は、ウエハが貼り付けられた伸縮性を有するシート部材をエキスパンドすることによりウエハを複数の半導体チップに分割するエキスパンド部と、エキスパンド部によりエキスパンドされたシート部材のうちウエハの位置に対応するシート部材に紫外線を照射する紫外線照射部と、エキスパンド部によりシート部材をエキスパンドさせてウエハを複数の半導体チップに分割させた後、ウエハを局所的に押圧するスキージ部と、紫外線照射部およびスキージ部の両方を移動させることが可能な共通の移動機構とを備える。
【0009】
この発明の第1の局面によるエキスパンド装置では、上記のように、エキスパンド部によりシート部材をエキスパンドさせてウエハを複数の半導体チップに分割させた後、ウエハを局所的に押圧するスキージ部と、紫外線照射部およびスキージ部の両方を移動させることが可能な共通の移動機構を設ける。これにより、共通の移動機構によりスキージ部によるウエハの局所的な押圧と紫外線照射部による紫外線の照射とを行うことができるので、スキージ部および紫外線照射部の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することができる。また、スキージ部はウエハを複数の半導体チップに分割するために、シート部材のうちウエハの位置に対応するシート部材を押圧する。紫外線照射部は、シート部材のうちウエハの位置に対応するシート部材の接着剤を硬化させるために、シート部材のうちウエハの位置に対応するシート部材に紫外線を照射する。したがって、スキージ部により押圧するシート部材の部分と、紫外線照射部により紫外線を照射するシート部材の部分とは共通しているので、スキージ部の移動に合わせて紫外線照射部を移動させて紫外線を照射することにより、シート部材のうちウエハの位置に対応するシート部材に対して、スキージ部によるウエハの分割および紫外線照射部から照射される紫外線による接着剤の硬化の両方を行うことができる。その結果、2つの部材を別々に移動させる場合と比較して、エキスパンド装置の部品点数の増加および装置の大型化を抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面によるエキスパンド装置において、好ましくは、移動機構は、紫外線照射部およびスキージ部の両方を水平方向のうちの一方向に移動させる第1直線移動機構と、上下方向に沿って延びる回動軸線回りに、少なくともスキージ部を回動させる回動機構とを含む。このように構成すれば、紫外線照射部による紫外線の照射およびスキージ部によるウエハの押圧の両方の移動を実現するために必要な移動機構の数が第1直線移動機構および回動機構と比較的少ないので、エキスパンド装置の部品点数の増加および大型化を抑制することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、第1直線移動機構は、回動機構に取り付けられ、回動機構は、紫外線照射部およびスキージ部の両方を一方向に移動させることが可能な位置から一方向に直交する他方向に移動させることが可能な位置まで第1直線移動機構を回動させるように構成されている。このように構成すれば、回動機構による回動により、一方向および他方向の各々において、スキージ部によるウエハの押圧および紫外線照射部による紫外線の照射を行うことができるので、スキージ部による複数の半導体チップの分割および紫外線照射部によるシート部材の接着剤の硬化を十分に行うことができる。
【0012】
上記第1の局面によるエキスパンド装置において、好ましくは、エキスパンド部は、シート部材をエキスパンドさせるエキスパンドリングを含み、紫外線照射部、スキージ部および移動機構は、平面視において、エキスパンドリングの径方向の内側に配置されている。このように構成すれば、他の用途に利用しにくいエキスパンドリング内の空間を有効に利用して紫外線照射部、スキージ部および移動機構をエキスパンドリング内に収容することができるので、エキスパンド装置の大型化をより抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面によるエキスパンド装置において、好ましくは、紫外線照射部による紫外線照射と、スキージ部によるウエハの局所的な押圧とを、共通の移動機構により紫外線照射部およびスキージ部を共に移動させながら並行して実施する制御を行うように構成された制御部をさらに備える。このように構成すれば、紫外線照射部による紫外線照射と、スキージ部によるウエハの局所的な押圧とを効率的に行うことができるので、エキスパンド装置において実施される作業の作業効率を向上させることができる。
【0014】
この場合、好ましくは、制御部は、移動機構により水平方向のうちの一方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合、および、水平方向のうちの一方向に直交する他方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合の少なくともいずれかの押圧を行う場合に紫外線照射部による紫外線の照射を並行して実施する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、水平方向のうちの一方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合にのみ紫外線照射部により紫外線を照射するか、または、水平方向のうちの他方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合にのみ紫外線照射部により紫外線を照射することにより、紫外線照射部による紫外線照射を1回実施することができる。また、水平方向のうちの一方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合、および、水平方向のうちの他方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合の両方で紫外線照射部により紫外線を照射することにより、紫外線照射部による紫外線照射を2回実施することができる。これらにより、紫外線照射部による紫外線照射を実施する回数を1回または2回から選択することができるので、シート部材の接着剤の種類などに合わせて紫外線照射部による紫外線照射を適切な回数実施することができる。
【0015】
上記第1の局面によるエキスパンド装置において、好ましくは、紫外線照射部は、スキージ部とは別個に共通の移動機構に取り付けられている。このように構成すれば、スキージ部内に紫外線照射部を設けるための構成がスキージ部に必要ないので、スキージ部の構造の複雑化を抑制することができる。
【0016】
上記第1の局面によるエキスパンド装置において、好ましくは、紫外線照射部は、スキージ部内に一体的に設けられた状態で、共通の移動機構に取り付けられている。このように構成すれば、スキージ部を配置するスペースだけで紫外線照射部およびスキージ部を配置することができるので、共通の移動機構に必要な紫外線照射部およびスキージ部の配置スペースの増大を抑制することができる。その結果、共通の移動機構の大型化を抑制することができるので、エキスパンド装置の大型化をより抑制することができる。
【0017】
上記第1直線移動機構および回動機構を備えるエキスパンド装置において、好ましくは、水平方向における一方向に直交する他方向に移動させる第2直線移動機構をさらに備え、第1直線移動機構は、第2直線移動機構に取り付けられるとともに、回動機構は、第1直線移動機構に取り付けられ、紫外線照射部は、第1直線移動機構または回動機構に取り付けられ、スキージ部は、回動機構に取り付けられている。このように構成すれば、回動機構上に第1直線移動機構および第2直線移動機構を取り付けないので、回動機構を回動させるために必要なモータの駆動力の増大を抑制することができる。その結果、比較的小型のモータにより回動機構を回動させることができるので、エキスパンド装置の大型化をより抑制することができる。
【0018】
上記第1の局面によるエキスパンド装置において、好ましくは、エキスパンド部は、シート部材をエキスパンドさせるエキスパンドリングを含み、紫外線照射部、スキージ部および移動機構は、エキスパンドリング外に配置されている。このように構成すれば、紫外線照射部、スキージ部および移動機構を配置するためのスペースの制限が緩和されるので、紫外線照射部、スキージ部および移動機構の配置の自由度を向上させることができる。
【0019】
上記紫外線照射部が前記スキージ部とは別個に共通の前記移動機構に取り付けられたエキスパンド装置において、好ましくは、紫外線照射部は、エキスパンド状態のシート部材に下方から照射するように構成され、紫外線照射部は、紫外線を発光する紫外線発光部を含み、紫外線発光部は、エキスパンド部によりシート部材がエキスパンドされたエキスパンド状態において、ウエハを囲んだ状態でシート部材に貼り付けられたリング状部材の上面よりも、スキージ部の局所的な押圧が行われるシート部材の押圧面から下方に離間した位置に配置されている。このように構成すれば、紫外線をシート部材からある程度離した場所から照射することができるので、紫外線がシート部材の特定の箇所に当たらないようにすることができる。その結果、紫外線をシート部材に満遍なく当てることができる。
【0020】
この発明の第2の局面における半導体チップの製造方法は、レーザ光を照射するレーザ照射部から複数の半導体チップが設けられたウエハにレーザ光を照射することによりウエハ内に改質層を形成する工程と、ウエハが貼り付けられた伸縮性を有するシート部材をエキスパンドするエキスパンド部によりウエハを複数の半導体チップに分割する工程と、共通の移動機構により紫外線照射部およびスキージ部を移動させることにより、シート部材のうちウエハの位置に対応するシート部材に紫外線を照射するとともに、ウエハを局所的に押圧する工程とを備える。
【0021】
この発明の第2の局面による半導体チップの製造方法では、上記のように、共通の移動機構により紫外線照射部およびスキージ部を移動させることにより、シート部材のうちウエハの位置に対応するシート部材に紫外線を照射するとともに、ウエハを局所的に押圧する工程を設ける。これにより、共通の移動機構によりスキージ部によるウエハの局所的な押圧と紫外線照射部による紫外線の照射とを行うことができるので、スキージ部および紫外線照射部の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することが可能な半導体チップの製造方法を得ることができる。
【0022】
この発明の第3の局面における半導体チップは、ウエハが貼り付けられた伸縮性を有するシート部材をエキスパンドすることによりウエハを複数の半導体チップに分割するエキスパンド部と、エキスパンド部によりエキスパンドされたシート部材のうちウエハの位置に対応するシート部材に紫外線を照射する紫外線照射部と、エキスパンド部によりシート部材をエキスパンドさせてウエハを複数の半導体チップに分割させた後、ウエハを局所的に押圧するスキージ部と、紫外線照射部およびスキージ部の両方を移動させることが可能な共通の移動機構とを備えるエキスパンド装置によって製造される。
【0023】
この発明の第3の局面による半導体チップでは、上記のように、紫外線照射部およびスキージ部の両方を移動させることが可能な共通の移動機構を備えるエキスパンド装置によって製造される。これにより、共通の移動機構によりスキージ部によるウエハの局所的な押圧と紫外線照射部による紫外線の照射とを行うことができるので、スキージ部および紫外線照射部の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することが可能な半導体チップを得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上記のように、スキージ部および紫外線照射部の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態によるダイシング装置およびエキスパンド装置が設けられた半導体ウエハの加工装置を示した平面図である。
【
図2】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置において加工されるウエハリング構造を示した平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】第1実施形態によるエキスパンド装置に隣接して配置されたダイシング装置の平面図である。
【
図5】第1実施形態によるエキスパンド装置に隣接して配置されたダイシング装置をY2方向側から見た側面図である。
【
図6】第1実施形態によるエキスパンド装置の平面図である。
【
図7】第1実施形態によるエキスパンド装置のY2方向側から見た側面図である。
【
図8】第1実施形態によるエキスパンド装置のX1方向側から見た側面図である。
【
図9】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置の制御的な構成を示したブロック図である。
【
図10】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置の半導体チップ製造処理の前半部分のフローチャートである。
【
図11】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置の半導体チップ製造処理の後半部分のフローチャートである。
【
図12】第1実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部によるウエハの押圧の前の状態を示した側面図である。
【
図13】第1実施形態によるエキスパンド装置において紫外線照射部により紫外線を照射している状態を示した側面図である。
【
図14】第1実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部の押圧部とウエハリング構造とを示した模式図である。
【
図15】第1実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部によるウエハの押圧を行っている状態を示した側面図である。
【
図16】第1実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が一方向に向いている状態を示した平面図である。
【
図17】第1実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が他方向に向いている状態を示した平面図である。
【
図18】第1実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が一方向に移動している際のウエハの押圧を行っている状態を示した側面図である。
【
図19】第1実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が一方向に移動している際のウエハの押圧を行っている状態を示した平面図である。
【
図20】第1実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が他方向に移動している際のウエハの押圧を行っている状態を示した側面図である。
【
図21】第1実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が他方向に移動している際のウエハの押圧を行っている状態を示した平面図である。
【
図22】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置のスキージブレーキング処理の前半部分のフローチャートである。
【
図23】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置のスキージブレーキング処理の後半部分のフローチャートである。
【
図24】第2実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が一方向に向いている状態を示した側面図である。
【
図25】第2実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が他方向に向いている状態を示した側面図である。
【
図26】第2実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が他方向に移動している際のウエハの押圧を行っている状態を示した平面図である。
【
図27】第2実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が一方向に移動している際のウエハの押圧を行っている状態を示した側面図である。
【
図28】第2実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が一方向に移動している際のウエハの押圧を行っている状態を示した平面図である。
【
図29】第3実施形態によるダイシング装置およびエキスパンド装置が設けられた半導体ウエハの加工装置を示した平面図である。
【
図30】第3実施形態によるダイシング装置およびエキスパンド装置が設けられた半導体ウエハの加工装置をY2方向側から見た側面図である。
【
図31】第3実施形態によるダイシング装置およびエキスパンド装置が設けられた半導体ウエハの加工装置をX1方向側から見た側面図である。
【
図32】第3実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部、紫外線照射部および共通の移動機構を示した平面図である。
【
図33】第4実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部、紫外線照射部および共通の移動機構を示した平面図である。
【
図34】第4実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部、紫外線照射部および共通の移動機構を示した側面図である。
【
図35】第4実施形態によるエキスパンド装置においてスキージ部が回動した後のスキージ部、紫外線照射部および共通の移動機構を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1~
図23を参照して、本発明の第1実施形態による半導体ウエハの加工装置100の構成について説明する。
【0028】
(半導体ウエハの加工装置)
図1に示すように、半導体ウエハの加工装置100は、ウエハリング構造体Wに設けられたウエハW1の加工を行う装置である。半導体ウエハの加工装置100は、ウエハW1に改質層を形成するとともに、ウエハW1を改質層に沿って分割して複数の半導体チップCh(
図8参照)を形成するように構成されている。
【0029】
ここで、
図2および
図3を参照して、ウエハリング構造体Wに関して説明する。ウエハリング構造体Wは、ウエハW1と、シート部材W2と、リング状部材W3とを有している。
【0030】
ウエハW1は、半導体集積回路の材料となる半導体物質の結晶でできた円形の薄い板である。ウエハW1の内部には、半導体ウエハの加工装置100における加工により、分割ラインに沿って内部を改質させた改質層が形成される。すなわち、ウエハW1は、分割ラインに沿って分割可能に加工される。シート部材W2は、伸縮性を有する粘着テープである。シート部材W2の上面W21には、粘着層が設けられている。シート部材W2には、粘着層にウエハW1が貼り付けられている。リング状部材W3は、平面視においてリング状の金属製のフレームである。リング状部材W3は、ウエハW1を囲んだ状態でシート部材W2の粘着層に貼り付けられている。
【0031】
また、半導体ウエハの加工装置100は、ダイシング装置1と、エキスパンド装置2とを備えている。以下では、上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とするとともに、下方向をZ2方向とする。Z方向に直交する水平方向のうちダイシング装置1とエキスパンド装置2とが並ぶ方向をX方向とし、X方向のうちエキスパンド装置2側をX1方向とし、X方向のうちダイシング装置1側をX2方向とする。水平方向のうちX方向に直交する方向をY方向とし、Y方向のうち一方側をY1方向とし、Y方向のうち他方側をY2方向とする。
【0032】
(ダイシング装置)
図1、
図4および
図5に示すように、ダイシング装置1は、ウエハW1に対して透過性を有する波長のレーザを分割ライン(ストリート)に沿って照射することにより、改質層を形成するように構成されている。改質層とは、レーザによりウエハW1の内部に形成された亀裂およびボイドなどを示す。このように、ウエハW1に改質層を形成する手法をダイシング加工という。
【0033】
具体的には、ダイシング装置1は、ベース11と、チャックテーブル部12と、レーザ部13と、撮像部14とを含んでいる。
【0034】
ベース11は、チャックテーブル部12が設置される基台である。ベース11は、平面視において、矩形形状を有している。
【0035】
〈チャックテーブル部〉
チャックテーブル部12は、吸着部12aと、クランプ部12bと、回動機構12cと、テーブル移動機構12dとを有している。吸着部12aは、ウエハリング構造体WをZ1方向側の上面に吸着するように構成されている。吸着部12aは、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3のZ2方向側の下面を吸着するために吸引孔および吸引管路などが設けられたテーブルである。吸着部12aは、回動機構12cを介してテーブル移動機構12dに支持されている。クランプ部12bは、吸着部12aの上端部に設けられている。クランプ部12bは、吸着部12aにより吸着されたウエハリング構造体Wを押さえるように構成されている。クランプ部12bは、吸着部12aにより吸着されたウエハリング構造体Wのリング状部材W3をZ1方向側から押さえている。このように、ウエハリング構造体Wは、吸着部12aおよびクランプ部12bにより把持されている。
【0036】
回動機構12cは、Z方向に平行に延びた回動中心軸線C回りの周方向に吸着部12aを回動させるように構成されている。回動機構12cは、テーブル移動機構12dの上端部に取り付けられている。テーブル移動機構12dは、ウエハリング構造体WをX方向およびY方向に移動させるように構成されている。テーブル移動機構12dは、X方向移動機構121と、Y方向移動機構122とを有している。X方向移動機構121は、X1方向またはX2方向に回動機構12cを移動させるように構成されている。X方向移動機構121は、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。Y方向移動機構122は、Y1方向またはY2方向に回動機構12cを移動させるように構成されている。Y方向移動機構122は、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0037】
〈レーザ部〉
レーザ部13は、チャックテーブル部12に把持されたウエハリング構造体WのウエハW1にレーザ光を照射するように構成されている。レーザ部13は、チャックテーブル部12のZ1方向側に配置されている。レーザ部13は、レーザ照射部13aと、取付部材13bと、Z方向移動機構13cとを有している。レーザ照射部13aは、パルスレーザ光を照射するように構成されている。取付部材13bは、レーザ部13および撮像部14が取り付けられるフレームである。Z方向移動機構13cは、Z1方向またはZ2方向にレーザ部13を移動させるように構成されている。Z方向移動機構13cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。なお、レーザ照射部13aは、多光子吸収による改質層を形成できる限り、パルスレーザ光以外の、連続波レーザ光をレーザ光として発振するレーザ照射部であってもよい。
【0038】
〈撮像部〉
撮像部14は、チャックテーブル部12に把持されたウエハリング構造体WのウエハW1を撮像するように構成されている。撮像部14は、チャックテーブル部12のZ1方向側に配置されている。撮像部14は、高分解能カメラ14aと、広画角カメラ14bと、Z方向移動機構14cと、Z方向移動機構14dとを有している。
【0039】
高分解能カメラ14aおよび広画角カメラ14bは、近赤外線撮像用カメラである。高分解能カメラ14aは、広画角カメラ14bよりも視野角が狭い。高分解能カメラ14aは、広画角カメラ14bよりも分解能が高い。広画角カメラ14bは、高分解能カメラ14aよりも視野角が広い。広画角カメラ14bは、高分解能カメラ14aよりも分解能が低い。高分解能カメラ14aは、レーザ照射部13aのX1方向側に配置されている。広画角カメラ14bは、レーザ照射部13aのX2方向側に配置されている。このように、高分解能カメラ14a、レーザ照射部13aおよび広画角カメラ14bは、X1方向側からX2方向側に向かってこの順序で隣接して配置されている。
【0040】
Z方向移動機構14cは、Z1方向またはZ2方向に高分解能カメラ14aを移動させるように構成されている。Z方向移動機構14cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。Z方向移動機構14dは、Z1方向またはZ2方向に広画角カメラ14bを移動させるように構成されている。Z方向移動機構14dは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0041】
(エキスパンド装置)
図1、
図6および
図7に示すように、エキスパンド装置2は、ウエハW1を分割して複数の半導体チップCh(
図8参照)を形成するように構成されている。また、エキスパンド装置2は、複数の半導体チップCh同士の間に十分な隙間を形成するように構成されている。ここで、ウエハW1には、ダイシング装置1において、ウエハW1に対して透過性を有する波長のレーザが分割ライン(ストリート)に沿って照射されることにより、改質層が形成されている。エキスパンド装置2では、ダイシング装置1において予め形成された改質層に沿ってウエハW1を分割することにより、複数の半導体チップChが形成されている。
【0042】
したがって、エキスパンド装置2では、シート部材W2をエキスパンドさせることにより、改質層に沿ってウエハW1が分割されることになる。また、エキスパンド装置2において、シート部材W2をエキスパンドさせることにより、分割されて形成された複数の半導体チップCh同士の隙間が広がることになる。
【0043】
エキスパンド装置2は、ベース201と、カセット部202と、リフトアップハンド部203と、吸着ハンド部204と、ベース205と、冷気供給部206と、冷却ユニット207と、エキスパンド部208と、ベース209と、拡張維持部材210と、ヒートシュリンク部211と、紫外線照射部212と、スキージ部213と、クランプ部214と、を含んでいる。
【0044】
〈ベース〉
ベース201は、カセット部202およびリフトアップハンド部203が設置される基台である。ベース201は、平面視において、矩形形状を有している。
【0045】
〈カセット部〉
カセット部202は、複数のウエハリング構造体Wを収容可能に構成されている。カセット部202は、ウエハカセット202aと、Z方向移動機構202bと、一対の載置部202cとを含んでいる。
【0046】
ウエハカセット202aは、Z方向に複数(3個)配置されている。ウエハカセット202aは、複数(5個)のウエハリング構造体Wを収容可能な収容空間を有している。ウエハカセット202aには、ウエハリング構造体Wが手作業によって供給および載置される。なお、ウエハカセット202aは、1~4個のウエハリング構造体Wを収容するか、または、6個以上のウエハリング構造体Wを収容してもよい。また、ウエハカセット202aは、Z方向に1、2、または、4個以上配置されてもよい。
【0047】
Z方向移動機構202bは、Z1方向またはZ2方向にウエハカセット202aを移動させるように構成されている。Z方向移動機構202bは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。また、Z方向移動機構202bは、ウエハカセット202aを下側から支持する載置台202dを有している。載置台202dは、複数のウエハカセット202aの位置に合わせて複数(3個)配置されている。
【0048】
一対の載置部202cは、ウエハカセット202aの内側に複数(5個)配置されている。一対の載置部202cには、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3がZ1方向側から載置される。一対の載置部202cの一方は、ウエハカセット202aのX1方向側の内側面からX2方向側に突出している。一対の載置部202cの他方は、ウエハカセット202aのX2方向側の内側面からX1方向側に突出している。
【0049】
〈リフトアップハンド部〉
リフトアップハンド部203は、カセット部202からウエハリング構造体Wを取出可能に構成されている。また、リフトアップハンド部203は、カセット部202にウエハリング構造体Wを収容可能に構成されている。
【0050】
具体的には、リフトアップハンド部203は、Y方向移動機構203aと、リフトアップハンド203bとを含んでいる。Y方向移動機構203aは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。リフトアップハンド203bは、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3をZ2方向側から支持するように構成されている。
【0051】
〈吸着ハンド部〉
吸着ハンド部204は、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3をZ1方向側から吸着するように構成されている。
【0052】
具体的には、吸着ハンド部204は、X方向移動機構204aと、Z方向移動機構204bと、吸着ハンド204cとを含んでいる。X方向移動機構204aは、吸着ハンド204cをX方向に移動させるように構成されている。Z方向移動機構204bは、吸着ハンド204cをZ方向に移動させるように構成されている。X方向移動機構204aおよびZ方向移動機構204bは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。吸着ハンド204cは、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3をZ1方向側から吸着して支持するように構成されている。ここで、吸着ハンド204cでは、負圧を発生させることにより、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3が支持される。
【0053】
〈ベース〉
図7および
図8に示すように、ベース205は、エキスパンド部208、冷却ユニット207、紫外線照射部212およびスキージ部213が設置される基台である。ベース205は、平面視において、矩形形状を有している。なお、
図8では、冷却ユニット207のZ1方向の位置に配置されたクランプ部214が点線で示されている。
【0054】
〈冷気供給部〉
冷気供給部206は、エキスパンド部208によりシート部材W2をエキスパンドさせる際、シート部材W2にZ1方向側から冷気を供給するように構成されている。
【0055】
具体的には、冷気供給部206は、供給部本体206aと、冷気供給口206bと、移動機構206cとを有している。冷気供給口206bは、冷気供給装置から供給される冷気を流出させるように構成されている。冷気供給口206bは、供給部本体206aのZ2方向側の端部に設けられている。冷気供給口206bは、供給部本体206aのZ2方向側の端部における中央部に配置されている。移動機構206cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有している。
【0056】
冷気供給装置は、冷気を生成するための装置である。冷気供給装置は、たとえば、ヒートポンプなどにより冷却された空気を供給する。このような冷気供給装置は、ベース205に設置される。冷気供給部206と、冷気供給装置とは、ホース(図示せず)により接続されている。
【0057】
〈冷却ユニット〉
冷却ユニット207は、シート部材W2をZ2方向側から冷却するように構成されている。
【0058】
具体的には、冷却ユニット207は、冷却体271およびペルチェ素子272を有する冷却部材207aと、Z方向移動機構207bとを含んでいる。冷却体271は、熱容量が大きく、かつ、熱伝導率が高い部材により構成されている。冷却体271は、アルミニウムなどの金属により形成されている。ペルチェ素子272は、冷却体271を冷却するように構成されている。なお、冷却体271は、アルミニウムに限定されず、他の熱容量が大きく、かつ、熱伝導率が高い部材であってもよい。Z方向移動機構207bは、シリンダである。
【0059】
冷却ユニット207は、Z方向移動機構207bにより、Z1方向またはZ2方向に移動可能に構成されている。これにより、冷却ユニット207は、シート部材W2に接触する位置、および、シート部材W2から離間した位置に移動することが可能である。
【0060】
〈エキスパンド部〉
エキスパンド部208は、ウエハリング構造体Wのシート部材W2をエキスパンドすることにより、分割ラインに沿ってウエハW1を分割するように構成されている。
【0061】
具体的には、エキスパンド部208は、エキスパンドリング281を有している。エキスパンドリング281は、シート部材W2をZ2方向側から支持することにより、シート部材W2をエキスパンド(拡張)させるように構成されている。エキスパンドリング281は、平面視においてリング形状を有している。なお、エキスパンドリング281の構造については、後に詳細に説明する。
【0062】
〈ベース〉
ベース209は、冷気供給部206、拡張維持部材210およびヒートシュリンク部211が設置される基材である。
【0063】
〈拡張維持部材〉
図7および
図8に示すように、拡張維持部材210は、加熱リング211aによる加熱によってウエハW1付近のシート部材W2が収縮しないように、シート部材W2をZ1方向側から押さえるように構成されている。
【0064】
具体的には、拡張維持部材210は、押圧リング部210aと、蓋部210bと、吸気部210cとを有している。押圧リング部210aは、平面視においてリング形状を有している。蓋部210bは、押圧リング部210aの開口を覆うように押圧リング部210aに設けられている。吸気部210cは、平面視において、リング形状を有する吸気リングである。吸気部210cのZ2方向側の下面には、複数の吸気口が形成されている。また、押圧リング部210aは、Z方向移動機構210dによりZ方向に移動するように構成されている。すなわち、Z方向移動機構210dは、シート部材W2を押さえる位置、および、シート部材W2から離れた位置に押圧リング部210aを移動させるように構成されている。Z方向移動機構210dは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0065】
〈ヒートシュリンク部〉
ヒートシュリンク部211は、エキスパンド部208によりエキスパンドされたシート部材W2を、複数の半導体チップCh同士の間の隙間を保持した状態で、加熱により収縮させるように構成されている。
【0066】
ヒートシュリンク部211は、加熱リング211aと、Z方向移動機構211bとを有している。加熱リング211aは、平面視において、リング形状を有している。また、加熱リング211aは、シート部材W2を加熱するシーズヒータを有している。Z方向移動機構211bは、加熱リング211aをZ方向に移動させるように構成されている。Z方向移動機構211bは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0067】
〈紫外線照射部〉
紫外線照射部212は、シート部材W2の粘着層の粘着力を低下させるために、シート部材W2に紫外線Utを照射するように構成されている。具体的には、紫外線照射部212は、紫外線用照明を有している。紫外線照射部212は、スキージ部213の後述する押圧部213aのZ1方向側の端部に配置されている。紫外線照射部212は、スキージ部213とともに移動しながら、シート部材W2に紫外線Utを照射するように構成されている。
【0068】
〈スキージ部〉
スキージ部213は、シート部材W2をエキスパンドさせた後、ウエハW1をZ2方向側から局所的に押圧することにより、ウエハW1を改質層に沿ってさらに分割させるように構成されている。具体的には、スキージ部213は、押圧部213aと、Z方向移動機構213bと、X方向移動機構213cと、回動機構213dとを有している。なお、Z方向移動機構213b、X方向移動機構213cおよび回動機構213dは、特許請求の範囲の「共通の移動機構」の一例である。また、X方向移動機構213cは、特許請求の範囲の「第1直線移動機構」の一例である。
【0069】
押圧部213aは、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧しつつ、回動機構213dおよびX方向移動機構213cにより移動することによって、ウエハW1に曲げ応力を発生させて改質層に沿ってウエハW1を分割するように構成されている。押圧部213aがZ方向移動機構213bによりZ1方向側の上昇位置Up(
図18を参照)に上昇することにより、シート部材W2を介してウエハW1が押圧される。押圧部213aがZ方向移動機構213bによりZ2方向側に下降位置Lw(
図20を参照)に下降することにより、ウエハW1が押圧されなくなる。押圧部213aは、スキージである。
【0070】
押圧部213aは、Z方向移動機構213bのZ1方向側の端部に取り付けられている。Z方向移動機構213bは、Z1方向またはZ2方向に直線的に押圧部213aを移動させるように構成されている。Z方向移動機構213bは、たとえば、シリンダである。Z方向移動機構213bは、X方向移動機構213cのZ1方向側の端部に取り付けられている。
【0071】
X方向移動機構213cは、回動機構213dのZ1方向側の端部に取り付けられている。X方向移動機構213cは、一方向に直線的に押圧部213aを移動させるように構成されている。X方向移動機構213cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0072】
スキージ部213では、Z方向移動機構213bにより押圧部213aが上昇位置Up(
図18を参照)まで上昇される。スキージ部213では、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧部213aが局所的に押圧しつつ、X方向移動機構213cにより押圧部213aがY方向に移動することにより、ウエハW1が分割される。スキージ部213では、Z方向移動機構213bにより押圧部213aが下降位置Lw(
図20を参照)まで下降される。スキージ部213では、押圧部213aのY方向への移動が終了した後、回動機構213dにより押圧部213aが90度回動する。
【0073】
スキージ部213では、Z方向移動機構213bにより押圧部213aが上昇位置Up(
図18を参照)まで上昇される。スキージ部213では、押圧部213aが90度回動した後、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧部213aが局所的に押圧しつつ、X方向移動機構213cにより押圧部213aがX方向に移動することにより、ウエハW1が分割される。
【0074】
〈クランプ部〉
クランプ部214は、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3を把持するように構成されている。具体的には、クランプ部214は、把持部214aと、Z方向移動機構214bと、Y方向移動機構214cとを有している。把持部214aは、リング状部材W3をZ2方向側から支持するとともに、リング状部材W3をZ1方向側から押さえる。このように、リング状部材W3は、把持部214aにより把持される。把持部214aは、Z方向移動機構214bに取り付けられている。
【0075】
Z方向移動機構214bは、クランプ部214をZ方向に移動させるように構成されている。具体的には、Z方向移動機構214bは、把持部214aをZ1方向またはZ2方向に移動させるように構成されている。Z方向移動機構214bは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。Z方向移動機構214bは、Y方向移動機構214cに取り付けられている。Y方向移動機構214cは、Z方向移動機構214bをY1方向またはY2方向に移動させるように構成されている。Y方向移動機構214cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0076】
(半導体ウエハの加工装置の制御的な構成)
図9に示すように、半導体ウエハの加工装置100は、第1制御部101と、第2制御部102と、第3制御部103と、第4制御部104と、第5制御部105と、第6制御部106と、第7制御部107と、第8制御部108と、エキスパンド制御演算部109と、ハンドリング制御演算部110と、ダイシング制御演算部111と、記憶部112とを備えている。なお、エキスパンド制御演算部109は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0077】
第1制御部101は、スキージ部213を制御するように構成されている。第1制御部101は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを有する記憶部とを含んでいる。なお、第1制御部101は、記憶部として、電圧遮断後にも記憶された情報が保持されるHDD(Hard Disk Drive)などを含んでいてもよい。また、HDDは、第1制御部101、第2制御部102、第3制御部103、第4制御部104、第5制御部105、第6制御部106、第7制御部107、および、第8制御部108に対して共通に設けられていてもよい。
【0078】
第2制御部102は、冷気供給部206および冷却ユニット207を制御するように構成されている。第2制御部102は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。第3制御部103は、ヒートシュリンク部211および紫外線照射部212を制御するように構成されている。第3制御部103は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。なお、第2制御部102および第3制御部103は、記憶部として、電圧遮断後にも記憶された情報が保持されるHDDなどを含んでいてもよい。
【0079】
第4制御部104は、カセット部202およびリフトアップハンド部203を制御するように構成されている。第4制御部104は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。第5制御部105は、吸着ハンド部204を制御するように構成されている。第5制御部105は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。なお、第4制御部104および第5制御部105は、記憶部として、電圧遮断後にも記憶された情報が保持されるHDDなどを含んでいてもよい。
【0080】
第6制御部106は、チャックテーブル部12を制御するように構成されている。第6制御部106は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。第7制御部107は、レーザ部13を制御するように構成されている。第7制御部107は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。第8制御部108は、撮像部14を制御するように構成されている。第8制御部108は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。なお、第6制御部106、第7制御部107および第8制御部108は、記憶部として、電圧遮断後にも記憶された情報が保持されるHDDなどを含んでいてもよい。
【0081】
エキスパンド制御演算部109は、第1制御部101、第2制御部102および第3制御部103の処理結果に基づいて、シート部材W2のエキスパンド処理に関する演算を行うように構成されている。エキスパンド制御演算部109は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。なお、エキスパンド制御演算部109の詳細な構成については、後に詳細に説明する。
【0082】
ハンドリング制御演算部110は、第4制御部104および第5制御部105の処理結果に基づいて、ウエハリング構造体Wの移動処理に関する演算を行うように構成されている。ハンドリング制御演算部110は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。
【0083】
ダイシング制御演算部111は、第6制御部106、第7制御部107および第8制御部108の処理結果に基づいて、ウエハW1のダイシング処理に関する演算を行うように構成されている。ダイシング制御演算部111は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。
【0084】
記憶部112は、ダイシング装置1およびエキスパンド装置2を動作させるためのプログラムが記憶されている。記憶部112は、ROM、RAMおよびHDDなどを含んでいる。
【0085】
(半導体チップ製造処理)
図10および
図11を参照して、半導体ウエハの加工装置100の全体的な動作について以下に説明する。
【0086】
ステップS1において、カセット部202からウエハリング構造体Wが取り出される。すなわち、カセット部202内に収容されたウエハリング構造体Wをリフトアップハンド203bにより支持した後、Y方向移動機構203aによりリフトアップハンド203bがY1方向側に移動することによって、カセット部202からウエハリング構造体Wが取り出される。ステップS2において、吸着ハンド204cによりウエハリング構造体Wが、ダイシング装置1のチャックテーブル部12に移載される。すなわち、カセット部202から取り出されたウエハリング構造体Wは、吸着ハンド204cにより吸着された状態で、X方向移動機構204aによりX2方向側に移動する。そして、X2方向側に移動したウエハリング構造体Wは、吸着ハンド204cからチャックテーブル部12に移載された後、チャックテーブル部12により把持される。
【0087】
ステップS3において、レーザ部13によりウエハW1に改質層が形成される。ステップS4において、吸着ハンド204cにより改質層が形成されたウエハW1を有するウエハリング構造体Wがクランプ部214に移載される。ステップS5において、冷気供給部206および冷却ユニット207によりシート部材W2が冷却される。すなわち、Z方向移動機構214bによりクランプ部214に把持されたウエハリング構造体WをZ2方向に移動(下降)させて冷却ユニット207に接触させるとともに、冷気供給部206によりZ1方向側から冷気を供給することによって、シート部材W2が冷却される。
【0088】
ステップS6において、クランプ部214によりエキスパンド部208にウエハリング構造体Wが移動する。すなわち、シート部材W2が冷却されたウエハリング構造体Wが、クランプ部214に把持された状態で、Y方向移動機構214cによりY1方向に移動する。ステップS7において、エキスパンド部208によりシート部材W2がエキスパンドされる。すなわち、ウエハリング構造体Wが、クランプ部214に把持された状態で、Z方向移動機構214bによりZ2方向に移動する。そして、シート部材W2が、エキスパンドリング281に当接するとともに、エキスパンドリング281により引っ張られることによって、エキスパンドされる。これにより、ウエハW1が分割ライン(改質層)に沿って分割される。
【0089】
ステップS8において、拡張維持部材210により、エキスパンドされた状態のシート部材W2がZ1方向側から押さえられる。すなわち、押圧リング部210aが、Z方向移動機構210dによりシート部材W2に当接するまでZ2方向に移動(下降)する。そして、
図10のA点から
図11のA点を介してステップS9に進む。
【0090】
図11に示すように、ステップS9において、拡張維持部材210によりシート部材W2が押さえられた後、スキージ部213によりウエハW1を押圧しながら、紫外線照射部212によりシート部材W2に紫外線Utを照射する。これにより、ウエハW1が、スキージ部213によりさらに分割される。また、シート部材W2の粘着力が、紫外線照射部212から照射される紫外線Utにより低下する。
【0091】
ステップS10において、ヒートシュリンク部211によりシート部材W2が加熱されて収縮されつつ、クランプ部214が上昇する。この際、吸気部210cが、加熱されているシート部材W2付近の空気を吸い込む。ステップS11において、ウエハリング構造体Wがクランプ部214から吸着ハンド204cに移載される。すなわち、ウエハリング構造体Wが、クランプ部214に把持された状態で、Y方向移動機構214cによりY2方向に移動する。そして、ウエハリング構造体Wが、冷却ユニット207のZ1方向側の位置において、クランプ部214による把持が解除された後、吸着ハンド204cにより吸着される。
【0092】
ステップS12において、吸着ハンド204cによりリフトアップハンド203bにウエハリング構造体Wが移載される。ステップS13において、ウエハリング構造体Wが、カセット部202に収容される。すなわち、リフトアップハンド203bにより支持されたウエハリング構造体Wは、Y方向移動機構203aによってY1方向側に移動させることによって、カセット部202にウエハリング構造体Wが収容される。これらにより、1枚のウエハリング構造体Wに対して行われる処理が終了する。そして、
図11のB点から
図10のB点を介してステップS1に戻る。
【0093】
(紫外線照射部およびスキージ部の詳細な構成)
図12に示すように、エキスパンド装置2は、上記エキスパンド部208と、上記拡張維持部材210と、上記紫外線照射部212と、上記スキージ部213とを含んでいる。なお、
図12は、エキスパンド部208によるシート部材W2のエキスパンド終了後、スキージ部213によるウエハW1の押圧前の状態を示している。
【0094】
〈エキスパンド部〉
エキスパンド部208は、ウエハW1が貼り付けられた伸縮性を有するシート部材W2をエキスパンドすることによりウエハW1を複数の半導体チップChに分割するように構成されている。エキスパンド部208は、エキスパンドリング281を有している。
【0095】
エキスパンドリング281は、シート部材W2をエキスパンドさせる際にシート部材W2をZ2方向側から支持するように構成されている。
【0096】
具体的には、エキスパンドリング281は、支持リング部281aと、移動機構収容部281bとを有している。
【0097】
支持リング部281aは、エキスパンドリング281の移動機構収容部281bよりもZ1方向側の部分である。支持リング部281aは、Z方向に貫通した貫通孔1281aが形成された円筒形状を有している。
【0098】
移動機構収容部281bは、エキスパンドリング281の支持リング部281aよりもZ2方向側の部分である。エキスパンドリング281の径方向において、移動機構収容部281bは、支持リング部281aよりも大きい直径を有している。移動機構収容部281bは、支持リング部281aと一体的に設けられている。移動機構収容部281bは、内部に収容空間1281bが形成された略円筒形状を有している。エキスパンドリング281の径方向において、収容空間1281bは、貫通孔1281aよりも大きい直径を有している。移動機構収容部281bのZ2方向側の端部は、ベース205に固定されている。
【0099】
エキスパンドリング281の径方向の内側には、平面視において、紫外線照射部212およびスキージ部213が配置されている。収容空間1281bには、Z方向移動機構213bのZ2方向側の部分、X方向移動機構213cおよび回動機構213dが収容されている。貫通孔1281aには、Z方向移動機構213bのZ2方向側の部分よりもZ1方向側の部分および押圧部213aが配置されている。Z方向において、Z方向移動機構213bは、スキージ部213の押圧部213aの上端部がエキスパンドリング281から突出しないように押圧部213aのZ1方向へ移動させるように構成されている。
【0100】
〈拡張維持部材〉
拡張維持部材210は、上記押圧リング部210aと、上記蓋部210bと、上記吸気部210cとを有している。
【0101】
蓋部210bは、窒素供給用孔1210bを有している。窒素供給用孔1210bは、シート部材W2における粘着力を低下させたい部分に対し紫外線照射部212による紫外線照射中に酸素が供給されない状態にするため、紫外線照射部212による紫外線照射の直前に窒素を拡張維持部材210内の空間に流入させる孔である。窒素供給用孔1210bは、蓋部210bをZ方向に貫通している。窒素供給用孔1210bは、窒素供給用孔1210bは、図示しない窒素供給源に窒素供給用ホース1211bを介して接続されている。
【0102】
上記押圧リング部210aは、空気逃がし用孔1210aを有している。空気逃がし用孔1210aは、窒素供給用孔1210bから供給された窒素によって拡張維持部材210内の酸素を流出させる孔である。空気逃がし用孔1210aは、押圧リング部210aを径方向に貫通している。空気逃がし用孔1210aは、押圧リング部210aをZ2方向側に形成されている。窒素供給用孔1210bは、図示しない窒素供給源に接続されている。
【0103】
これらにより、拡張維持部材210内の酸素が窒素により空気逃がし用孔1210aから追い出されることにより、シート部材W2における粘着力を低下させたい部分に対し紫外線照射中に酸素が供給されない状態になるので、紫外線照射部212による紫外線照射によってシート部材W2の粘着力を低下させることができる。
【0104】
〈紫外線照射部〉
図13および
図14に示すように、紫外線照射部212は、エキスパンド部208によりエキスパンドされたシート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2に紫外線Utを照射するように構成されている。
【0105】
具体的には、紫外線照射部212は、複数のLED(Light Emitting Diode)を一列に並べた紫外線発光部212aを有している。紫外線照射部212は、スキージ部213の後述する押圧部213aのZ1方向側の端部に配置されている。紫外線照射部212は、スキージ部213内に一体的に設けられている。紫外線照射部212は、Z1方向側に紫外線Utを照射するように構成されている。紫外線照射部212は、エキスパンド部208によりシート部材W2がエキスパンドされたエキスパンド状態において、リング状部材W3の上面W31と、スキージ部213の局所的な押圧が行われるシート部材W2の押圧面W22との間の位置に配置されている。
【0106】
〈スキージ部〉
図14および
図15に示すように、スキージ部213は、エキスパンド部208によりシート部材W2をエキスパンドさせてウエハW1を複数の半導体チップChに分割させた後、ウエハW1を局所的に押圧するように構成されている。
【0107】
具体的には、スキージ部213は、押圧部213aと、Z方向移動機構213bと、X方向移動機構213cと、回動機構213dとを有している。
【0108】
押圧部213aは、平面視において、一直線状に延びた板形状を有している。押圧部213aは、X方向移動機構213cおよび回動機構213dにより移動するとともにシート部材W2を介してウエハW1を押圧するように構成されている。押圧部213aは、シート部材W2のうちウエハW1に対応する部分の下面である押圧面W22を押圧している。
【0109】
Ex方向において、押圧部213aは、ウエハW1の直径Wd1よりも大きく、かつ、リング状部材W3の内径Wd2よりも小さい長さLを有している。また、Ex方向において、押圧部213aの長さLは、エキスパンドリング281の内径Reよりも小さい。なお、Ex方向は、平面視において、一直線状に延びた板形状の押圧部213aの延びる方向を示している。
【0110】
図15および
図16に示すように、Z方向移動機構213b、X方向移動機構213c、および、回動機構213dは、紫外線照射部212およびスキージ部213の両方を移動させることが可能な共通の移動機構である。
【0111】
X方向移動機構213cは、紫外線照射部212およびスキージ部213の両方を水平方向のうちのM11方向(一方向)に移動させるように構成されている。X方向移動機構213cは、取付部2131cと、直線状部2132cと、モータ2133cとを有している。取付部2131cは、直線状部2132cにM11方向およびM12方向(一方向の逆方向)にスライド移動可能に取り付けられている。取付部2131cの上端部には、Z方向移動機構213bが取り付けられている。モータ2133cは、取付部2131cをM11方向およびM12方向にスライド移動させるための駆動源である。
【0112】
図16および
図17に示すように、回動機構213dは、Z方向に沿って延びる回動軸線Ac回りのRt方向に、紫外線照射部212およびスキージ部213を回動させるように構成されている。また、回動機構213dは、紫外線照射部212およびスキージ部213の両方をM11方向に移動させることが可能な位置からM11方向に直交するM21方向(他方向)に移動させることが可能な位置までX方向移動機構213cを回動させるように構成されている。
【0113】
具体的には、回動機構213dは、回動テーブル2131dと、モータ2132dとを有している。回動テーブル2131dの上端部には、X方向移動機構213cが取り付けられている。モータ2132dは、回動テーブル2131dをRt方向に回動させるための駆動源である。
【0114】
(エキスパンド制御演算部の詳細な構成)
図18~
図21を参照して、エキスパンド制御演算部109による紫外線照射部212およびスキージ部213の制御について説明する。
【0115】
エキスパンド制御演算部109は、共通の移動機構により紫外線照射部212およびスキージ部213を共に移動させながら並行して実施する制御を行うように構成されている。ここで、共通の移動機構とは、Z方向移動機構213b、X方向移動機構213cおよび回動機構213dである。
【0116】
図18および
図19に示すように、エキスパンド制御演算部109は、共通の移動機構により水平方向のうちのM11方向へスキージ部213の押圧部213aを移動させてウエハW1の局所的な押圧を行う場合、紫外線照射部212による紫外線Utの照射を並行して実施する制御を行うように構成されている。なお、上記制御は、窒素供給用孔1210bから窒素を拡張維持部材210内の空間に流入させて、空気逃がし用孔1210aから拡張維持部材210内の空間の酸素流出させた後に実施される。
【0117】
具体的には、エキスパンド制御演算部109は、Z方向移動機構213bにより押圧部213aを上昇位置Upまで上昇する制御を行うように構成されている。エキスパンド制御演算部109は、上昇位置Upに押圧部213aが到達したことに基づいて、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧部213aが局所的に押圧しつつ、X方向移動機構213cにより押圧部213aがM11方向に移動することにより、ウエハW1を分割する制御を行うように構成されている。この際、エキスパンド制御演算部109は、紫外線照射部212による紫外線Utの照射を並行して実施する制御を行うように構成されている。
【0118】
エキスパンド制御演算部109は、押圧部213aのM11方向への移動を終了したことに基づいて、紫外線照射部212による紫外線Utの照射を停止するとともに、Z方向移動機構213bにより押圧部213aが下降位置Lw(
図20参照)まで下降する制御を行うように構成されている。
【0119】
図20および
図21に示すように、エキスパンド制御演算部109は、水平方向のうちのM21方向へスキージ部213の押圧部213aを移動させてウエハW1の局所的な押圧を行う場合、紫外線照射部212による紫外線Utの照射を並行して実施する制御を行うように構成されている。
【0120】
具体的には、エキスパンド制御演算部109は、押圧部213aが下降位置Lwに到達したことに基づいて、回動機構213dにより押圧部213aを90度回動する制御を行うように構成されている。エキスパンド制御演算部109は、押圧部213aの90度の回動が終了したことに基づいて、Z方向移動機構213bにより押圧部213aを上昇位置Up(
図18を参照)まで上昇する制御を行うように構成されている。
【0121】
エキスパンド制御演算部109は、押圧部213aが上昇位置Up(
図18を参照)に到達したことに基づいて、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧部213aが局所的に押圧しつつ、X方向移動機構213cにより押圧部213aがM21方向に移動することにより、ウエハW1が分割される。この際、エキスパンド制御演算部109は、紫外線照射部212による紫外線Utの照射を並行して実施する制御を行うように構成されている。
【0122】
エキスパンド制御演算部109は、押圧部213aのM21方向への移動を終了したことに基づいて、紫外線照射部212による紫外線Utの照射を停止するとともに、Z方向移動機構213bにより押圧部213aが下降位置Lwまで下降する制御を行うように構成されている。
【0123】
(スキージブレーキング処理)
図22および
図23を参照して、エキスパンド制御演算部109により紫外線照射部212およびスキージ部213を制御することにより行われるスキージブレーキング処理について、以下に説明する。なお、上記スキージブレーキング処理は、窒素供給用孔1210bから窒素を拡張維持部材210内の空間に流入させて、空気逃がし用孔1210aから拡張維持部材210内の空間の酸素を流出させた後に実施される。
【0124】
ステップS101において、スキージ部213の押圧部213aが上昇位置Upまで上昇される。ステップS102において、押圧部213aが上昇位置Upに到達したか否かが判断される。押圧部213aが上昇位置Upに到達した場合にはステップS103に進み、押圧部213aが上昇位置Upに到達していない場合にはステップS102を繰り返す。ステップS103において、スキージ部213がウエハW1を押圧しながら、紫外線照射部212により紫外線Utが照射される。この際、押圧部213aは、X方向移動機構213cによりM11方向に移動されている。
【0125】
ステップS104において、押圧部213aのM11方向への移動が終了したか否かが判断される。押圧部213aのM11方向への移動が終了した場合にはステップS105に進み、押圧部213aのM11方向への移動が終了していない場合にはステップS104を繰り返す。ステップS105において、スキージ部213の押圧部213aが下降位置Lwまで下降される。ステップS106において、押圧部213aが下降位置Lwへ到達したか否かが判断される。押圧部213aが下降位置Lwへ到達した場合にはステップS107に進み、押圧部213aが下降位置Lwへ到達していない場合にはステップS106を繰り返す。
【0126】
ステップS107において、回動機構213dにより押圧部213aが90度回動する。ステップS108において、押圧部213aが上昇位置Upに到達した場合にはステップS109に進み、押圧部213aが上昇位置Upに到達していない場合にはステップS108を繰り返す。ステップS109において、スキージ部213がウエハW1を押圧しながら、紫外線照射部212により紫外線Utが照射される。この際、押圧部213aは、X方向移動機構213cによりM21方向に移動されている。
【0127】
ステップS109において、押圧部213aのM21方向への移動が終了したか否かが判断される。押圧部213aのM21方向への移動が終了した場合には
図22のC点および
図23のC点を介してステップS110に進み、押圧部213aのM21方向への移動が終了していない場合にはステップS109を繰り返す。ステップS110において、スキージ部213の押圧部213aが下降位置Lwまで下降される。ステップS111において、押圧部213aが下降位置Lwへ到達したか否かが判断される。押圧部213aが下降位置Lwへ到達した場合にはスキージブレーキング処理が終了され、押圧部213aが下降位置Lwへ到達していない場合にはステップS111を繰り返す。
【0128】
ここで、半導体チップChを製造するための製造方法である半導体チップChの製造方法(上記の半導体チップ製造処理)のうちのスキージブレーキング処理以外の処理として、半導体チップ製造処理は、レーザ光を照射するレーザ照射部13aから複数の半導体チップChが設けられたウエハW1にレーザ光を照射することによりウエハW1内に改質層を形成するステップを備えている。半導体チップ製造処理は、ウエハW1が貼り付けられた伸縮性を有するシート部材W2をエキスパンドするエキスパンド部208によりウエハW1を複数の半導体チップChに分割するステップを備えている。半導体チップ製造処理は、共通の移動機構により紫外線照射部212およびスキージ部213を移動させることにより、シート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2に紫外線を照射するとともに、ウエハW1を局所的に押圧する工程を備えている。
【0129】
このように、半導体チップ製造処理により製造された半導体チップChは、上記エキスパンド部208と、上記紫外線照射部212と、上記スキージ部213と、上記共通の移動機構とを備えるエキスパンド装置2によって製造される。
【0130】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0131】
第1実施形態では、上記のように、エキスパンド装置2は、紫外線照射部212およびスキージ部213の両方を移動させることが可能な共通のX方向移動機構213cおよび回動機構213dを備えている。これにより、共通のX方向移動機構213cおよび回動機構213d(共通の移動機構)によりスキージ部213によるウエハW1の局所的な押圧と紫外線照射部212による紫外線Utの照射とを行うことができるので、スキージ部213および紫外線照射部212の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することができる。また、スキージ部213はウエハW1を複数の半導体チップChに分割するために、シート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2を押圧する。紫外線照射部212は、シート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2の接着剤を硬化させるために、シート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2に紫外線を照射する。したがって、スキージ部213により押圧するシート部材W2の部分と、紫外線照射部212により紫外線を照射するシート部材W2の部分とは共通しているので、スキージ部213の移動に合わせて紫外線照射部212を移動させて紫外線を照射することにより、シート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2に対して、スキージ部213によるウエハW1の分割および紫外線照射部212から照射される紫外線による接着剤の硬化の両方を行うことができる。この結果、2つの部材を別々に移動させる場合と比較して、エキスパンド装置2の部品点数の増加および装置の大型化を抑制することができる。
【0132】
また、第1実施形態では、上記のように、共通の移動機構は、紫外線照射部212およびスキージ部213の両方を水平方向のうちの一方向に移動させるX方向移動機構213cおよび回動機構213dと、上下方向に沿って延びる回動軸線Ac回りに、少なくともスキージ部213を回動させる回動機構213dとを含んでいる。これにより、紫外線照射部212による紫外線Utの照射およびスキージ部213によるウエハW1の押圧の両方の移動を実現するために必要な共通の移動機構の数がX方向移動機構213cおよび回動機構213dと比較的少ないので、エキスパンド装置2の部品点数の増加および大型化を抑制することができる。
【0133】
また、第1実施形態では、上記のように、X方向移動機構213cは、回動機構213dに取り付けられている。回動機構213dは、紫外線照射部212およびスキージ部213の両方を一方向に移動させることが可能な位置から一方向に直交する他方向に移動させることが可能な位置までX方向移動機構213cを回動させるように構成されている。これにより、回動機構213dによる回動により、一方向および他方向の各々において、スキージ部213によるウエハW1の押圧および紫外線照射部212による紫外線Utの照射を行うことができるので、スキージ部213による複数の半導体チップChの分割および紫外線照射部212によるシート部材W2の接着剤の硬化を十分に行うことができる。
【0134】
また、第1実施形態では、上記のように、エキスパンド部208は、シート部材W2をエキスパンドさせるエキスパンドリング281を含んでいる。紫外線照射部212、スキージ部213、X方向移動機構213cおよび回動機構213dは、平面視において、エキスパンドリング281の径方向の内側に配置されている。これにより、他の用途に利用しにくいエキスパンドリング281内の空間を有効に利用して紫外線照射部212、スキージ部213およびX方向移動機構213cおよび回動機構213dをエキスパンドリング281内に収容することができるので、エキスパンド装置2の大型化をより抑制することができる。
【0135】
また、第1実施形態では、上記のように、エキスパンド装置2は、紫外線照射部212による紫外線照射と、スキージ部213によるウエハW1の局所的な押圧とを、共通のX方向移動機構213cおよび回動機構213dにより紫外線照射部212およびスキージ部213を共に移動させながら並行して実施する制御を行うように構成されたエキスパンド制御演算部109を備えている。これにより、紫外線照射部212による紫外線照射と、スキージ部213によるウエハW1の局所的な押圧とを効率的に行うことができるので、エキスパンド装置2において実施される作業の作業効率を向上させることができる。
【0136】
また、第1実施形態では、上記のように、紫外線照射部212は、スキージ部213内に一体的に設けられた状態で、共通のX方向移動機構213cおよび回動機構213dに取り付けられている。これにより、スキージ部213を配置するスペースだけで紫外線照射部212およびスキージ部213を配置することができるので、共通のX方向移動機構213cおよび回動機構213dに必要な紫外線照射部212およびスキージ部213の配置スペースの増大を抑制することができる。この結果、共通のX方向移動機構213cおよび回動機構213dの大型化を抑制することができるので、エキスパンド装置2の大型化をより抑制することができる。
【0137】
また、第1実施形態では、上記のように、共通の移動機構により紫外線照射部212およびスキージ部213を移動させることにより、シート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2に紫外線を照射するとともに、ウエハW1を局所的に押圧する工程を設ける。これにより、共通の移動機構によりスキージ部213によるウエハW1の局所的な押圧と紫外線照射部212による紫外線の照射とを行うことができるので、スキージ部213および紫外線照射部212の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することが可能な半導体チップChの製造方法を得ることができる。
【0138】
また、第1実施形態では、上記のように、半導体チップChは、紫外線照射部212およびスキージ部213の両方を移動させることが可能な共通の移動機構を備えるエキスパンド装置2によって製造される。これにより、共通の移動機構によりスキージ部213によるウエハW1の局所的な押圧と紫外線照射部212による紫外線の照射とを行うことができるので、スキージ部213および紫外線照射部212の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することが可能な半導体チップChを得ることができる。
【0139】
[第2実施形態]
図24~
図28を参照して、第2実施形態による半導体ウエハの加工装置300の構成について説明する。第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、紫外線照射部3212が、スキージ部3213とは別個に配置されている。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
【0140】
(半導体ウエハの加工装置)
半導体ウエハの加工装置300は、ウエハリング構造体Wに設けられたウエハW1の加工を行う装置である。
【0141】
また、半導体ウエハの加工装置300は、ダイシング装置1と、エキスパンド装置302とを備えている。上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とするとともに、下方向をZ2方向とする。Z方向に直交する水平方向のうちダイシング装置1とエキスパンド装置302とが並ぶ方向をX方向とし、X方向のうちエキスパンド装置302側をX1方向とし、X方向のうちダイシング装置1側をX2方向とする。水平方向のうちX方向に直交する方向をY方向とし、Y方向のうち一方側をY1方向とし、Y方向のうち他方側をY2方向とする。
【0142】
(ダイシング装置)
ダイシング装置1は、ウエハW1に対して透過性を有する波長のレーザを分割ライン(ストリート)に沿って照射することにより、改質層を形成するように構成されている。
【0143】
具体的には、ダイシング装置1は、ベース11と、チャックテーブル部12と、レーザ部13と、撮像部14とを含んでいる。
【0144】
(エキスパンド装置)
エキスパンド装置302は、ウエハW1を分割して複数の半導体チップChを形成するように構成されている。
【0145】
エキスパンド装置302は、ベース201と、カセット部202と、リフトアップハンド部203と、吸着ハンド部204と、ベース205と、冷気供給部206と、冷却ユニット207と、エキスパンド部208と、ベース209と、拡張維持部材210と、ヒートシュリンク部211と、紫外線照射部3212と、スキージ部3213と、クランプ部214とを含んでいる。
【0146】
(紫外線照射部およびスキージ部の詳細な構成)
図25に示すように、紫外線照射部3212は、エキスパンド部208によりエキスパンドされたシート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2に紫外線Utを照射するように構成されている。
【0147】
具体的には、紫外線照射部3212は、複数のLEDを一列に並べた紫外線発光部3212aを有している。紫外線照射部3212は、スキージ部3213とは別個に共通の移動機構に取り付けられている。紫外線照射部212は、X方向移動機構213cのZ1方向側の端部に配置されている。紫外線発光部3212aは、エキスパンド部208によりシート部材W2がエキスパンドされたエキスパンド状態において、リング状部材W3の上面W31よりも、スキージ部3213の局所的な押圧が行われるシート部材W2の押圧面W22からZ2方向に離間した位置に配置されている。
【0148】
〈スキージ部〉
スキージ部3213は、エキスパンド部208によりシート部材W2をエキスパンドさせてウエハW1を複数の半導体チップChに分割させた後、ウエハW1を局所的に押圧するように構成されている。
【0149】
具体的には、スキージ部3213は、押圧部3213aと、Z方向移動機構213bと、X方向移動機構213cと、回動機構213dとを有している。
【0150】
ここで、X方向移動機構213cおよび回動機構213dは、紫外線照射部3212およびスキージ部3213の両方を移動させることが可能な共通の移動機構である。
【0151】
(エキスパンド制御演算部の詳細な構成)
図26~
図28を参照して、エキスパンド制御演算部109による紫外線照射部212およびスキージ部213の制御について説明する。
【0152】
エキスパンド制御演算部109は、共通の移動機構により紫外線照射部3212およびスキージ部3213を共に移動させながら並行して実施する制御を行うように構成されている。なお、上記制御は、窒素供給用孔1210bから窒素を拡張維持部材210内の空間に流入させて、空気逃がし用孔1210aから拡張維持部材210内の空間の酸素流出させた後に実施される。
【0153】
図26および
図27に示すように、エキスパンド制御演算部109は、共通の移動機構により水平方向のうちのM22方向へスキージ部3213の押圧部3213aを移動させてウエハW1の局所的な押圧を行う場合、紫外線照射部3212による紫外線Utの照射を並行して実施する制御を行うように構成されている。
【0154】
図28および
図29に示すように、エキスパンド制御演算部109は、水平方向のうちのM11方向へスキージ部3213の押圧部3213aを移動させてウエハW1の局所的な押圧を行う場合、紫外線照射部3212による紫外線Utの照射を並行して実施する制御を行うように構成されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0155】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0156】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、エキスパンド装置302は、紫外線照射部3212およびスキージ部3213の両方を移動させることが可能な共通のX方向移動機構213cおよび回動機構213dを備えている。これにより、スキージ部3213および紫外線照射部3212の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することができる。
【0157】
また、第2実施形態では、上記のように、紫外線照射部3212は、スキージ部3213とは別個に共通のX方向移動機構213cおよび回動機構213dに取り付けられている。これにより、スキージ部213内に紫外線照射部3212を設けるための構成がスキージ部213に必要ないので、スキージ部213の構造の複雑化を抑制することができる。
【0158】
また、第2実施形態では、上記のように、紫外線照射部3212は、エキスパンド状態のシート部材W2に下方から照射するように構成されている。紫外線照射部3212は、紫外線Utを発光する紫外線発光部3212aを含んでいる。紫外線発光部3212aは、エキスパンド部208によりシート部材W2がエキスパンドされたエキスパンド状態において、ウエハW1を囲んだ状態でシート部材W2に貼り付けられたリング状部材W3の上面W31よりも、スキージ部213の局所的な押圧が行われるシート部材W2の押圧面W22から下方に離間した位置に配置されている。これにより、紫外線Utをシート部材W2からある程度離した場所から照射することができるので、紫外線Utがシート部材W2の特定の箇所に当たらないようにすることができる。この結果、紫外線Utをシート部材W2に満遍なく当てることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様であるので、説明を省略する。
【0159】
[第3実施形態]
図29~
図32を参照して、第3実施形態による半導体ウエハの加工装置400の構成について説明する。第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、スキージ部4213が、エキスパンドリング4281の外側に配置されている。なお、第3実施形態では、第1実施形態と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
【0160】
(半導体ウエハの加工装置)
図30および
図31に示すように、半導体ウエハの加工装置400は、ウエハリング構造体Wに設けられたウエハW1の加工を行う装置である。
【0161】
また、半導体ウエハの加工装置400は、ダイシング装置1と、エキスパンド装置402とを備えている。上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とするとともに、下方向をZ2方向とする。Z方向に直交する水平方向のうちダイシング装置1とエキスパンド装置402とが並ぶ方向をX方向とし、X方向のうちエキスパンド装置402側をX1方向とし、X方向のうちダイシング装置1側をX2方向とする。水平方向のうちX方向に直交する方向をY方向とし、Y方向のうち一方側をY1方向とし、Y方向のうち他方側をY2方向とする。
【0162】
(ダイシング装置)
ダイシング装置1は、ウエハW1に対して透過性を有する波長のレーザを分割ライン(ストリート)に沿って照射することにより、改質層を形成するように構成されている。
【0163】
具体的には、ダイシング装置1は、ベース11と、チャックテーブル部12と、レーザ部13と、撮像部14とを含んでいる。
【0164】
(エキスパンド装置)
図31および
図32に示すように、エキスパンド装置402は、ウエハW1を分割して複数の半導体チップChを形成するように構成されている。
【0165】
エキスパンド装置402は、ベース201と、カセット部202と、リフトアップハンド部203と、吸着ハンド部204と、ベース205と、冷気供給部206と、冷却ユニット207と、エキスパンド部4208と、ベース209と、拡張維持部材210と、ヒートシュリンク部211と、紫外線照射部4212と、スキージ部4213と、クランプ部214とを含んでいる。
【0166】
〈エキスパンド部〉
エキスパンド部4208は、ウエハリング構造体Wのシート部材W2をエキスパンドすることにより、分割ラインに沿ってウエハW1を分割するように構成されている。
【0167】
具体的には、エキスパンド部4208は、エキスパンドリング4281と、Z方向移動機構4282とを有している。
【0168】
エキスパンドリング4281は、シート部材W2をZ2方向側から支持することにより、シート部材W2をエキスパンド(拡張)させるように構成されている。エキスパンドリング4281は、平面視においてリング形状を有している。Z方向移動機構4282は、エキスパンドリング4281をZ1方向またはZ2方向に移動させるように構成されている。Z方向移動機構4282は、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。Z方向移動機構4282は、ベース201に取り付けられている。
【0169】
〈紫外線照射部〉
紫外線照射部4212は、エキスパンド部4208によりエキスパンドされたシート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2に紫外線Utを照射するように構成されている。
【0170】
具体的には、紫外線照射部4212は、複数のLEDを一列に並べた紫外線発光部(図示せず)を有している。紫外線照射部4212は、スキージ部4213とは別個に共通の移動機構に取り付けられている。
【0171】
〈スキージ部〉
図32および
図33に示すように、スキージ部4213は、シート部材W2をエキスパンドさせた後、ウエハW1をZ2方向側から押圧することにより、ウエハW1を改質層に沿ってさらに分割するように構成されている。具体的には、スキージ部4213は、押圧部4213aと、Y方向移動機構4213bと、X方向移動機構4213cと、Z方向移動機構4213dと、回動機構4213eとを有している。なお、X方向移動機構4213cは、特許請求の範囲の「第1直線移動機構」の一例である。Y方向移動機構4213bは、特許請求の範囲の「第2直線移動機構」の一例である。
【0172】
押圧部4213aは、Z方向移動機構4213dによりZ1方向に移動した後、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧しつつ、回動機構4213e、Y方向移動機構4213bおよびX方向移動機構4213cにより移動することによって、ウエハW1に曲げ応力を発生させて改質層に沿ってウエハW1を分割するように構成されている。押圧部4213aは、スキージである。
【0173】
Y方向移動機構4213bは、Y方向(他方向)に直線的に押圧部4213aおよび紫外線照射部4212を移動させる直線移動機構である。Y方向移動機構4213bは、ベース205に固定されている。Y方向移動機構4213bは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0174】
X方向移動機構4213cは、X方向(一方向)に直線的に押圧部4213aおよび紫外線照射部4212を移動させる直線移動機構である。X方向移動機構4213cは、Y方向移動機構4213bに取り付けられている。X方向移動機構4213cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0175】
Z方向移動機構4213dは、Z方向に直線的に押圧部4213aおよび紫外線照射部4212を移動させる直線移動機構である。Z方向移動機構4213dは、X方向移動機構4213cに取り付けられている。Z方向移動機構4213dは、たとえば、シリンダにより構成されている。
【0176】
回動機構4213eは、押圧部4213aおよび紫外線照射部4212を回動させるように構成されている。回動機構4213eは、Z方向移動機構4213dを介してX方向移動機構4213cに取り付けられている。回動機構4213eのZ1方向側の端部には、紫外線照射部4212および押圧部4213aが取り付けられている。
【0177】
(エキスパンド制御演算部の詳細な構成)
エキスパンド制御演算部109は、第1実施形態と同様に、共通の移動機構により紫外線照射部4212およびスキージ部4213を共に移動させながら並行して実施する制御を行うように構成されている。なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0178】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0179】
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、エキスパンド装置402は、紫外線照射部4212およびスキージ部4213の両方を移動させることが可能な共通のY方向移動機構4213b、X方向移動機構4213cおよび回動機構4213eを備えている。これにより、スキージ部4213および紫外線照射部4212の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することができる。
【0180】
また、第3実施形態では、上記のように、エキスパンド装置402は、水平方向における一方向に直交する他方向に移動させるY方向移動機構4213bを備えている。X方向移動機構4213cは、Y方向移動機構4213bに取り付けられている。回動機構4213eは、X方向移動機構4213cに取り付けられている。紫外線照射部212は、回動機構4213eに取り付けられている。スキージ部4213は、回動機構4213eに取り付けられている。これにより、回動機構4213e上にX方向移動機構4213cおよびY方向移動機構4213bを取り付けないので、回動機構4213eを回動させるために必要なモータの駆動力の増大を抑制することができる。この結果、比較的小型のモータにより回動機構3213eを回動させることができるので、エキスパンド装置402の大型化をより抑制することができる。
【0181】
また、第3実施形態では、上記のように、エキスパンド部4208は、シート部材W2をエキスパンドさせるエキスパンドリング4281を含んでいる。紫外線照射部4212、スキージ部4213、Y方向移動機構4213b、X方向移動機構4213cおよび回動機構4213eは、エキスパンドリング4281外に配置されている。これにより、紫外線照射部4212、スキージ部4213、Y方向移動機構4213b、X方向移動機構4213cおよび回動機構4213eを配置するためのスペースの制限が緩和されるので、紫外線照射部4212、スキージ部4213、Y方向移動機構4213b、X方向移動機構4213cおよび回動機構4213eの配置の自由度を向上させることができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様であるので、説明を省略する。
【0182】
[第4実施形態]
図33~
図35を参照して、第4実施形態による半導体ウエハの加工装置500の構成について説明する。第4実施形態では、第3実施形態とは異なり、紫外線照射部5212が、回動機構4213eに取り付けられずに、X方向移動機構4213cに取り付けられている。なお、第4実施形態では、第3実施形態と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
【0183】
(半導体ウエハの加工装置)
図33および
図34に示すように、半導体ウエハの加工装置500は、ウエハリング構造体Wに設けられたウエハW1の加工を行う装置である。
【0184】
また、半導体ウエハの加工装置500は、ダイシング装置1と、エキスパンド装置502とを備えている。上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とするとともに、下方向をZ2方向とする。Z方向に直交する水平方向のうちダイシング装置1とエキスパンド装置402とが並ぶ方向をX方向とし、X方向のうちエキスパンド装置402側をX1方向とし、X方向のうちダイシング装置1側をX2方向とする。水平方向のうちX方向に直交する方向をY方向とし、Y方向のうち一方側をY1方向とし、Y方向のうち他方側をY2方向とする。
【0185】
(ダイシング装置)
ダイシング装置1は、ウエハW1に対して透過性を有する波長のレーザを分割ライン(ストリート)に沿って照射することにより、改質層を形成するように構成されている。
【0186】
具体的には、ダイシング装置1は、ベース11と、チャックテーブル部12と、レーザ部13と、撮像部14とを含んでいる。
【0187】
(エキスパンド装置)
エキスパンド装置502は、ウエハW1を分割して複数の半導体チップChを形成するように構成されている。
【0188】
エキスパンド装置502は、ベース201と、カセット部202と、リフトアップハンド部203と、吸着ハンド部204と、ベース205と、冷気供給部206と、冷却ユニット207と、エキスパンド部4208と、ベース209と、拡張維持部材210と、ヒートシュリンク部211と、紫外線照射部5212と、スキージ部4213と、クランプ部214とを含んでいる。
【0189】
〈紫外線照射部〉
図33~
図35に示すように、紫外線照射部5212は、エキスパンド部4208によりエキスパンドされたシート部材W2のうちウエハW1の位置に対応するシート部材W2に紫外線Utを照射するように構成されている。
【0190】
具体的には、紫外線照射部5212は、複数のLEDを一列に並べた紫外線発光部(図示せず)を有している。紫外線照射部5212は、スキージ部4213とは別個に共通の移動機構に取り付けられている。紫外線照射部5212は、回動機構4213eではなく、X方向移動機構4213cに取り付けられている。
【0191】
(エキスパンド制御演算部)
エキスパンド制御演算部(図示せず)は、共通の移動機構により水平方向のうちのM11方向へスキージ部4213の押圧部4213aを移動させてウエハW1の局所的な押圧を行う場合、紫外線照射部5212による紫外線Utの照射を並行して実施する制御を行うように構成されている。また、エキスパンド制御演算部は、共通の移動機構により水平方向のうちのM22方向へスキージ部4213の押圧部4213aを移動させてウエハW1の局所的な押圧を行う場合、紫外線照射部5212による紫外線Utの照射を実施しない制御を行うように構成されている。なお、X方向移動機構4213cは、特許請求の範囲の「第1直線移動機構」の一例である。また、第4実施形態のその他の構成は、上記第3実施形態の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0192】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0193】
第4実施形態では、第3実施形態と同様に、エキスパンド装置502は、紫外線照射部5212およびスキージ部4213の両方を移動させることが可能な共通のY方向移動機構4213b、X方向移動機構4213cおよび回動機構4213eを備えている。これにより、スキージ部4213および紫外線照射部5212の両方を設けた場合でも、装置の大型化を抑制することができる。なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第3実施形態の効果と同様であるので、説明を省略する。
【0194】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0195】
たとえば、上記第1~第3実施形態では、エキスパンド制御演算部109(制御部)は、紫外線照射部212(3212、4212、5212)による紫外線照射と、スキージ部213(3213、4213)によるウエハW1の局所的な押圧とを、共通の移動機構213c、213d(4213b、4213c、4213e)により紫外線照射部212(3212、4212、5212)およびスキージ部213(3213、4213)を共に移動させながら並行して実施する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、紫外線照射部による紫外線照射と、スキージ部によるウエハの局所的な押圧とを、共通の移動機構により紫外線照射部およびスキージ部を共に移動させながら順次実施する制御を行うように構成されていてもよい。たとえば、共通の移動機構によりスキージ部および紫外線照射部を共に移動させながらウエハの局所的な押圧を行った後、共通の移動機構によりスキージ部および紫外線照射部を共に移動させながら紫外線照射部による紫外線照射がウエハに対応するシート部材に行われてもよい。
【0196】
上記第1~第3実施形態では、エキスパンド制御演算部109(制御部)は、一方向へスキージ部213(3213、4213)を移動させてウエハW1の局所的な押圧を行う場合、および、水平方向のうちの一方向に直交する他方向へスキージ部213(3213、4213)を移動させてウエハW1の局所的な押圧を行う場合の両方で紫外線照射部212(3212、4212、5212)による紫外線Utの照射を並行して実施する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、一方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合、および、水平方向のうちの一方向に直交する他方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合のいずれかで紫外線照射部による紫外線の照射を並行して実施する制御を行うように構成されていてもよい。このように、制御部は、共通の移動機構により水平方向のうちの一方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合、および、水平方向のうちの一方向に直交する他方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合の少なくともいずれかの押圧を行う場合に紫外線照射部による紫外線の照射を並行して実施する制御を行うように構成されている。これにより、水平方向のうちの一方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合にのみ紫外線照射部により紫外線を照射するか、または、水平方向のうちの他方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合にのみ紫外線照射部により紫外線を照射することにより、紫外線照射部による紫外線照射を1回実施することができる。また、水平方向のうちの一方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合、および、水平方向のうちの他方向へスキージ部を移動させてウエハの局所的な押圧を行う場合の両方で紫外線照射部により紫外線を照射することにより、紫外線照射部による紫外線照射を2回実施することができる。これらにより、紫外線照射部による紫外線照射を実施する回数を1回または2回から選択することができるので、シート部材の接着剤の種類などに合わせて紫外線照射部による紫外線照射を適切な回数実施することができる。
【0197】
また、上記第1~第4実施形態では、説明の便宜上、エキスパンド制御演算部109の制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、エキスパンド制御演算部の制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0198】
2、302、402、502 エキスパンド装置
109 エキスパンド制御演算部(制御部)
208、4208 エキスパンド部
212、3212、4212、5212 紫外線照射部
213、3213、4213 スキージ部
213a 押圧部(板状押圧部)
213c、4213c X方向移動機構(共通の移動機構、第1直線移動機構)
213d、4213e 回動機構(共通の移動機構)
281、4281 エキスパンドリング
212a、3212a 紫外線発光部
4213b Y方向移動機構(共通の移動機構、第2直線移動機構)
Ac 回動軸線
Ch 半導体チップ
Ut 紫外線
W1 ウエハ
W2 シート部材
W22 押圧面
W3 リング状部材
W31 上面