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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162937
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】液体混合装置及び液体混合方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/40 20220101AFI20231101BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20231101BHJP
   B01F 33/30 20220101ALI20231101BHJP
   B01F 33/40 20220101ALI20231101BHJP
   B01F 35/214 20220101ALI20231101BHJP
   B01F 35/213 20220101ALI20231101BHJP
   B01F 35/22 20220101ALI20231101BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20231101BHJP
   B01F 35/83 20220101ALI20231101BHJP
【FI】
B01F23/40
B01J19/00 321
B01F33/30
B01F33/40
B01F35/214
B01F35/213
B01F35/22
B01F35/71
B01F35/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073661
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大哲
(72)【発明者】
【氏名】名木野 俊文
【テーマコード(参考)】
4G035
4G036
4G037
4G075
【Fターム(参考)】
4G035AB37
4G035AB54
4G035AE02
4G035AE13
4G036AC02
4G036AC70
4G037AA02
4G037AA18
4G037BA01
4G037BB01
4G037BC03
4G037BD04
4G037BD10
4G037EA01
4G075AA13
4G075BA10
4G075BB05
4G075BD13
4G075BD15
4G075BD27
4G075DA02
4G075DA04
4G075DA05
4G075EB50
4G075FB06
4G075FB12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スラグ流を形成する混合流体の、スラグ流のセル体積比の変動を抑制可能な液体混合装置を提供する。
【解決手段】液体混合装置100は、互いに可溶性を有する複数の液体を含む第1の流体と、第1の流体に対して不溶性を有する第2の流体とを、混合流路40に送入する流体送入部200であって、第1の流体を、第1流体送入量で混合流路に送入し、第2の流体を、第1の流体の流れと交差する方向から送入して、合流後の混合流路内に、第1の流体のセルと第2の流体のセルとが交互に並んで流れるスラグ流を形成させ、スラグ流に対して吸光度を検知する吸光度検知部60と、検知された吸光度に基づき、スラグ流における第1の流体のセルと第2の流体のセルとのセル体積比を算出するセル体積比算出部と、算出されたセル体積比に基づいて流体送入部の流体送入を制御する流体送入制御部80と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体を混合流路に導入して混合させる液体混合装置であって、
互いに可溶性を有する複数の液体を含む第1の流体と、前記第1の流体に対して不溶性を有する第2の流体とを、前記混合流路に送入する流体送入部であって、前記第1の流体を、第1流体送入量で前記混合流路に送入し、前記第2の流体を、前記混合流路に送入された前記第1の流体の流れと交差する方向から、前記第1流体送入量に対して第2流体送入量で前記混合流路に送入して、前記第2の流体が合流した後の前記混合流路内に、前記第1の流体のセルと前記第2の流体のセルとが交互に並んで流れるスラグ流を形成させる、前記流体送入部と、
送入された前記第1の流体と前記第2の流体とを合流させて下流側に流れる混合流路と、
前記スラグ流に対して吸光度を検知する吸光度検知部と、
検知された前記吸光度に基づき、前記スラグ流における前記第1の流体のセルと前記第2の流体のセルとのセル体積比を算出するセル体積比算出部と、
算出された前記セル体積比に基づいて前記流体送入部の流体送入を制御する流体送入制御部と、
を備える、
液体混合装置。
【請求項2】
送入量調整判定部を更に備え、
前記送入量調整判定部は、
前記セル体積比算出部により算出された前記セル体積比と、所定のセル体積比の基準値とを比較することによって、前記第2流体送入量の調整を判定し、
前記流体送入制御部は、判定された前記第2流体送入量の調整に基づいて、前記第2流体送入量を制御する、
請求項1に記載の液体混合装置。
【請求項3】
前記吸光度検知部は、
第1の波長の光に対する前記スラグ流の吸光度と第2の波長の光に対する前記スラグ流の吸光度とを検知するように構成され、
前記第1の波長の光に対し、前記第1の流体が前記第2の流体よりも高い吸収率を有し、前記第2の波長の光に対し、前記第2の流体が前記第1の流体よりも高い吸収率を有する、
請求項1又は2に記載の液体混合装置。
【請求項4】
前記流体送入部は、流量調整手段を含み、
前記流体送入制御部は、前記流量調整手段を動作させることによって、前記第2流体送入量を制御する、
請求項1又は2に記載の液体混合装置。
【請求項5】
複数の流体を混合流路に導入して混合させるための液体混合方法であって、
流体送入ステップであって、互いに可溶性を有する複数の液体を含む第1の流体を、第1流体送入量で前記混合流路に送入し、前記第1の流体に対して不溶性を有する第2の流体を、前記混合流路に送入された前記第1の流体の流れと交差する方向から、前記第1流体送入量に対して第2流体送入量で前記混合流路に送入して、前記第2の流体が合流した後の前記混合流路内に、前記第1の流体のセルと前記第2の流体のセルとが交互に並んで流れるスラグ流を形成させる、前記流体送入ステップと、
前記スラグ流に対して吸光度を検知するステップと、
検知された前記吸光度に基づき、前記スラグ流における前記第1の流体のセルと前記第2の流体のセルとのセル体積比を算出するステップと、
算出された前記セル体積比に基づいて前記第2流体送入量を制御するステップと、
を含む、
液体混合方法。
【請求項6】
前記第2の流体が送入された後の前記混合流路で流れるスラグ流に対して吸光度を検知するステップは、
第1の波長の光に対する前記スラグ流の吸光度を検知することと、第2の波長の光に対する前記スラグ流の吸光度を検知することと、
を含み、
前記第1の波長の光に対し、前記第1の流体が前記第2の流体よりも高い吸収率を有し、前記第2の波長の光に対し、前記第2の流体が前記第1の流体よりも高い吸収率を有する、
請求項5に記載の液体混合方法。
【請求項7】
前記算出された前記セル体積比に基づいて前記第2流体送入量を制御するステップは、
算出された前記セル体積比と、所定のセル体積比の基準値とを比較することによって、前記第2流体送入量の調整を判定するステップと、
判定された前記第2流体送入量の調整に基づいて、前記第2流体送入量を制御するステップと、
を更に含む、
請求項5又は6に記載の液体混合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、互いに可溶性を有する液体同士を、微細流路内で混合するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに可溶性を有する液体(反応剤)同士を、微細な流路の流れの中で混合し、反応を行わせることにより、所望の反応生成物を生産するための反応製造方法として、いわゆるマイクロチャネルリアクタと呼ばれる流路形成体を用いるものが知られている。マイクロチャネルリアクタは、表面に多数の微小溝が形成された基体を備え、これらの溝により構成された微細流路は、液体反応物の反応場として利用される。
【0003】
液体反応物を微細流路内に流すことにより、単位体積あたりにおける液体同士の接触表面積を飛躍的に増大させることができる。微細流路内の液体反応物の混合を促進することによって、液体反応物の混合が完了するまでに必要な微細流路の流路長を短縮することができる。これによりマイクロチャネルリアクタ全体の小型化を可能にするとともに、液体反応物の混合中に不要な副反応の発生を抑制することができる。
【0004】
微細流路内の液体の混合を促進するための手段として、微細流路内に、混合する液体に対して不溶性を有する流体を導入することによって強制的にスラグ流を形成する手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここにいう「スラグ流」とは、気体と液体、又は水性液体と油性液体などの互いに親和性のない流体が同時に微細流路内で流れる場合に、一方の流体からなる第1流体相と他方の流体からなる第2流体相とが、微細流路の長手方向に沿って交互に並んで流れるものをいう。スラグ流内では、親和性のない流体が互いに相界面によって区切られて、交互に並ぶ第1流体相のセルと、第2流体相のセルとが形成される。このとき、流体相のセル内に循環流が発生し、局所的な攪拌作用が生じる。なお、ここにいう「セル」は、「スラグ」とも呼ばれ、微細流路内に交互に並んで流れる流体柱である。
【0006】
反応製造において、微細流路内にスラグ流を形成させ、流体相のセル内に発生した循環流の攪拌作用を利用することによって、液体反応物の混合を促進することができる。本明細書では、スラグ流の形成において、混合する液体を、「混合対象液体」を称し、混合する液体に対して不溶性を有する流体を、「不溶流体」を称す。
【0007】
スラグ流において、混合対象液体のセルが小さいほど、循環流による混合促進効果が高まる。スラグ流の混合促進効果を利用する反応製造において、スラグ流における混合対象液体のセルと不溶流体のセルとの体積の比を一定の範囲内に保つことが望ましい。具体的には、上記体積の比が小さいほど、循環流が混合促進に寄与する度合いが高いが、不溶流体のセルの割合の増加により生産効率が低下するとともに、混合流路内の圧力損失の増加や不溶流体の消費量の不必要な増加にもつながる。反対に、上記体積の比が大きいほど、生産効率が向上するが、循環流による混合促進効果の低下により反応生成物の品質低下が生じる場合がある。従来、スラグ流を利用する反応製造において、スラグ流における混合対象液体のセルの体積と不溶流体のセルの体積との比(以下、「セル体積比」を称す)は、混合対象液体の送入量に対する不溶流体の送入量(以下、「不溶流体の相対送入量」を称す)によって予め設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-6130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、特許文献1に記載の液体混合装置では、スラグ流を形成するための不溶流体の相対送入量は、混合反応を開始する前の設定値で決定され、混合反応中に不溶流体の送入について調整手段が設けられていない。しかしながら、反応製造中に流体供給の安定性などの影響で、不溶流体の相対送入量の実績値のバラつきが発生し、セル体積比が変動する場合がある。不溶流体の送入について調整手段がないため、反応製造中にスラグ流のセル体積比の変動に対応できない。その結果、反応生成物の品質や生産性の変動が生じる課題を有している。したがって、スラグ流のセル体積比の変動による反応生成物の生産の不具合を一層抑えるという観点において、従来の液体混合装置の構成は未だ改善の余地がある。
【0010】
本開示は、上記従来の課題を解決するものであって、スラグ流が形成された混合流体において、スラグ流のセル体積比の変動を抑制することができる液体混合装置及び液体混合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る液体混合装置は、複数の流体を混合流路に導入して混合させる液体混合装置であって、互いに可溶性を有する複数の液体を含む第1の流体と、第1の流体に対して不溶性を有する第2の流体とを、混合流路に送入する流体送入部であって、第1の流体を、第1流体送入量で混合流路に送入し、第2の流体を、混合流路に送入された第1の流体の流れと交差する方向から、第1流体送入量に対して第2流体送入量で混合流路に送入して、第2の流体が合流した後の混合流路内に、第1の流体のセルと第2の流体のセルとが交互に並んで流れるスラグ流を形成させる、前記流体送入部と、送入された第1の流体と第2の流体とを合流させて下流側に流れる混合流路と、スラグ流に対して吸光度を検知する吸光度検知部と、検知された吸光度に基づき、スラグ流における第1の流体のセルと第2の流体のセルとのセル体積比を算出するセル体積比算出部と、算出されたセル体積比に基づいて流体送入部の流体送入を制御する流体送入制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様に係る液体混合装置によれば、スラグ流が形成された混合流体において、スラグ流のセル体積比の変動を抑制することができ、安定な品質及び生産性を有する反応生産物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態に係る液体混合装置の構成の一例を示す概略図である。
図2A図1の液体混合装置の混合流路に形成されたスラグ流の一例を示す図である。
図2B図1の液体混合装置の混合流路に形成されたスラグ流の他の一例を示す図である。
図3図1に示す流体送入制御機構の演算装置の一構成例を示すブロック図である。
図4図3の演算装置のプログラムのフローチャートである。
図5】本開示の実施形態に係る液体混合装置の液体混合プロセスのフローチャートを示す図である。
図6A】本開示の実施の形態に係る液体混合装置の液体混合プロセスの実施例1の一例による流体送入の制御を示す図である。
図6B】本開示の実施の形態に係る液体混合装置の液体混合プロセスの実施例2の一例による流体送入の制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の第1態様によれば、複数の流体を混合流路に導入して混合させる液体混合装置であって、互いに可溶性を有する複数の液体を含む第1の流体と、第1の流体に対して不溶性を有する第2の流体とを、混合流路に送入する流体送入部であって、第1の流体を、第1流体送入量で混合流路に送入し、第2の流体を、混合流路に送入された第1の流体の流れと交差する方向から、第1流体送入量に対して第2流体送入量で混合流路に送入して、第2の流体が合流した後の混合流路内に、第1の流体のセルと第2の流体のセルとが交互に並んで流れるスラグ流を形成させる、前記流体送入部と、送入された第1の流体と第2の流体とを合流させて下流側に流れる混合流路と、スラグ流に対して吸光度を検知する吸光度検知部と、検知された吸光度に基づき、スラグ流における第1の流体のセルと第2の流体のセルとのセル体積比を算出するセル体積比算出部と、算出されたセル体積比に基づいて流体送入部の流体送入を制御する流体送入制御部と、を備える、液体混合装置を提供する。
【0015】
この態様によれば、スラグ流が形成された混合流体において、スラグ流のセル体積比の変動を抑制することができ、安定な品質及び生産性を有する反応生産物を提供することができる。
【0016】
本開示の第2態様によれば、送入量調整判定部を更に備え、送入量調整判定部は、セル体積比算出部により算出されたセル体積比と、所定のセル体積比の基準値とを比較することによって、第2流体送入量の調整を判定し、流体送入制御部は、判定された第2流体送入量の調整に基づいて、第2流体送入量を制御する、第1態様に記載の液体混合装置を提供する。
【0017】
本開示の第3態様によれば、吸光度検知部は、第1の波長の光に対するスラグ流の吸光度と第2の波長の光に対するスラグ流の吸光度とを検知するように構成され、第1の波長の光に対し、第1の流体が第2の流体よりも高い吸収率を有し、第2の波長の光に対し、第2の流体が第1の流体よりも高い吸収率を有する、第1又は第2態様に記載の液体混合装置を提供する。
【0018】
本開示の第4態様によれば、流体送入部は、流量調整手段を含み、流体送入制御部は、流量調整手段を動作させることによって、第2流体送入量を制御する、第1から第3態様のいずれか1つに記載の液体混合装置を提供する。
【0019】
本開示の第5態様によれば、複数の流体を混合流路に導入して混合させるための液体混合方法であって、流体送入ステップであって、互いに可溶性を有する複数の液体を含む第1の流体を、第1流体送入量で混合流路に送入し、第1の流体に対して不溶性を有する第2の流体を、混合流路に送入された第1の流体の流れと交差する方向から、第1流体送入量に対して第2流体送入量で混合流路に送入して、第2の流体が合流した後の混合流路内に、第1の流体のセルと第2の流体のセルとが交互に並んで流れるスラグ流を形成させる、流体送入ステップと、スラグ流に対して吸光度を検知するステップと、検知された吸光度に基づき、スラグ流における第1の流体のセルと第2の流体のセルとのセル体積比を算出するステップと、算出されたセル体積比に基づいて第2流体送入量を制御するステップと、を含む、液体混合方法を提供する。
【0020】
本開示の第6態様によれば、第2の流体が送入された後の混合流路で流れるスラグ流に対して吸光度を検知するステップは、第1の波長の光に対するスラグ流の吸光度を検知することと、第2の波長の光に対するスラグ流の吸光度を検知することと、を含み、第1の波長の光に対し、第1の流体が第2の流体よりも高い吸収率を有し、第2の波長の光に対し、第2の流体が第1の流体よりも高い吸収率を有する、第5態様に記載の液体混合方法を提供する。
【0021】
本開示の第7態様によれば、算出されたセル体積比に基づいて第2流体送入量を制御するステップは、算出されたセル体積比と、所定のセル体積比の基準値とを比較することによって、第2流体送入量の調整を判定するステップと、判定された第2流体送入量の調整に基づいて、第2流体送入量を制御するステップと、を更に含む、第5又は第6態様に記載の液体混合方法を提供する。
【0022】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0023】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0024】
本開示の実施の形態に係る液体混合装置及び液体混合方法について、図1乃至図5Bを参照しながら説明する。添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供するものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。なお、図面において実質的に同一の部材については、同一の符号を付している。
【0025】
(実施の形態)
《液体混合装置》
図1は、本開示の実施の形態1に係る液体混合装置100の構成の一例を示す概略図である。図1に示す液体混合装置100は、流体送入部200と、混合流路40と、回収容器50と、流体送入制御機構300とを備えている。
【0026】
液体混合装置100は、複数の流体を混合流路に導入して混合させるために利用することができる。図1に示す液体混合装置100において、互いに可溶性を有する複数の混合対象液体と、複数の混合対象液体に対して不溶性を有する不溶流体とが、流体送入部200から順に混合流路40に送入される。混合流路40において、送入された複数の流体が合流して回収容器50に向かって流れる。流体送入制御機構300は、不溶流体が合流した後の混合流路において形成されたスラグ流に対して吸光度を検知して、流体送入部200の流体送入を制御する。また、図1の矢印A1,A2、B1,B2、及びCは、流体の流れ方向を示し、矢印D、E、及びFは、流体送入の制御にかかるデータ又は信号の伝送方向を示している。なお、液体混合装置100におけるデータ又は信号の伝送は、有線接続によって実現されてもよく、無線接続によって実現されてもよい。以下、液体混合装置100の構成要素及び動作について、詳細に説明する。
【0027】
<流体送入部>
流体送入部200は、第1液体供給部10と、第2液体供給部20と、不溶流体導入部30とを含む。第1液体供給部10と第2液体供給部20とは、それぞれ互いに可溶性を有する第1液体と第2液体とを混合流路40に供給し、不溶流体導入部30は、第1液体及び第2液体に対して不溶性を有する不溶流体を混合流路40に送入する。
【0028】
本実施の形態では、第1液体供給部10と、第2液体供給部20と、不溶流体導入部30とは、それぞれ、流体容器12,22,32と、これらの流体容器と混合流路40とをそれぞれ接続する配管14,24,34とを含む。更に、第1液体それぞれの流体容器12,22,32内の流体を、それぞれ配管14,24,34を通して混合流路40に送入するポンプ16,26,36を含むことができる。
【0029】
第1液体供給部10と第2液体供給部20とにより供給される第1液体と第2液体とは、それぞれ図示方向A1,A2に沿って、混合流路40に送入され、合流点P1で合流し、合流した混合対象液体は、混合流路40に沿って図示下流方向Cへ流れる。本実施の形態では、2種の液体を接触させ、混合させる例を示しているが、3種以上の液体を混合させる場合、流体送入部200において、第1液体供給部10と第2液体供給部20と同様の構成を更に並列に配置してもよい。
【0030】
不溶流体導入部30により送入される不溶流体は、図示方向B1,B2に沿って、混合流路40に送入された混合対象液体の流れと交差する方向から混合流路40に導入され、合流点P2において混合対象液体と合流する。本実施の形態では、不溶流体は、混合対象液体が混合流路40に送入された合流点P1の位置よりも下流側の合流点P2の位置で混合流路40に導入されたが、本開示はこれに限定されない。例えば、合流点P1の位置において、混合対象液体と不溶流体とを同時に混合流路40に導入してもよい。このように導入された混合対象液体と不溶流体とは、合流した後の混合流路40内において、混合対象液体からなるセルと不溶流体からなるセルとが交互に並んで流れるスラグ流を形成することができる。形成されたスラグ流は、混合流路40に沿って、更に図示下流方向Cへ流れ、混合流路40の終端P3において回収容器50に流入する。混合流路40内で形成されたスラグ流について後段で詳述する。
【0031】
本実施の形態では、第1液体及び第2液体は水溶液であるが、本開示はこれに限定されない。第1液体及び第2液体は、互いに可溶性を有するものであればよく、水溶性、非水溶性を問わない。例えば、第1液体及び第2液体は水性液体であってもよく、油性液体であってもよい。また、第1液体と第2液体との混合比は自由に設定することができる。
【0032】
本開示に係る不溶流体は、本実施の形態では主成分がシクロヘキサンであるが、本開示はこれに限定されない。不溶流体は、混合対象液体に対して不溶性を有するものであればよい。また、不溶流体は、液体であってもよく、気体であってもよい。例えば、混合対象液体が水又は水溶液である場合には、不溶流体は、例えば、非水溶性の油性液体、又はガスを使用することができる。また、混合対象液体が油性液体である場合には、不溶流体は、例えば、水を用いることができる。なお、不溶流体としてガスが用いられる場合、流体容器32に代えて、ガスボンベを設けることができ、ガスボンベの圧力によって配管34を通して所定量のガスを混合流路40に圧送することができる。
【0033】
本実施の形態では、ポンプ16,26,36は、それぞれ第1液体、第2液体、不溶流体を、流体容器から混合流路へ送入するときの流量調整手段として用いることができる。また、本開示はこれに限定されることなく、別途の流量調整手段、例えば、流量計、比例制御供給弁等(図示せず)を設けてもよい。なお、不溶流体としてガスが用いられる場合には、不溶流体の流量調整手段として、例えば、ガス流量調整器(図示せず)を設けることができる。本実施の形態では、不溶流体導入部30のポンプ36が流体送入制御機構300の流体送入制御部80に電気的に接続され、混合反応中に流体送入制御部80の制御によって動作することによって、不溶流体の送入量を制御することができる。これについて、後段で詳述する。
【0034】
また、第1液体供給部10と第2液体供給部20とは、用途により恒温槽等を設けて、混合流路40に供給される第1液体及び第2液体の温度を一定に保ってもよい。本実施の形態では恒温槽等を省略し、図示していない。
【0035】
<混合流路>
流体送入部200により送入されたそれぞれの流体が混合流路40で合流する。混合流路40は、微小溝により構成されてもよく、本実施の形態では、第1流路部41と第2流路部42とを含む。第1流路部41は、上流側の合流点P1から、下流側の合流点P2までの流路であって、内部に第1液体と第2液体とが合流した混合対象液体が流れている。第2流路部42は、下流側の合流点P2から、終端P3までの流路であって、内部に混合対象液体と不溶流体とが合流して形成されたスラグ流が流れている。なお、図1において、混合流路40が直線状に示しているが、本開示はこれに限定されない。混合流路40は、例えば、湾曲の流路部を含んでもよく、用途に応じて任意の長さで構成されてもよい。
【0036】
本実施の形態では、第2流路部42の付近には、吸光度測定器61が配置され、第2流路部42内で流れるスラグ流に対して吸光度を検出する。吸光度測定器61は、スラグ流に接触することなく、第2流路部42の外部から吸光度を検出することができ、混合反応に影響を与えない利点がある。吸光度測定器61については、後段で詳述する。内部で流れるスラグ流の吸光度を検出するため、第2流路部42は、透明又は半透明素材で構成されることが望ましい。具体的には、例えば、スラグ流が流路の外部から視認できるように、第2流路部42は、透明なガラス製流路であってもよく、半透明なPFA又はPTFE製のチューブを用いて構成されてもよい。
【0037】
図1に示すように、混合流路40の第2流路部42内に、混合対象液体と不溶流体とが合流してスラグ流が形成される。第2流路部42内で流れているスラグ流の様子について、図2A及び図2Bを参照して説明する。図2Aは、図1の液体混合装置の混合流路に形成されたスラグ流の一例110を示す図である。図2Bは、図1の液体混合装置の混合流路に形成されたスラグ流の他の一例210を示す図である。なお、以下の説明において、説明の便利のために、混合流路に送入された複数の混合対象液体を含む流体を、「第1の流体」と称し、混合対象液体に対して不溶性を有する不溶流体を、「第2の流体」と称す。
【0038】
<スラグ流>
図2Aに示すように、本実施の形態では、第2流路部42a内に流れているスラグ流110は、第1液体及び第2液体を含む第1の流体のセル11a,12aと、不溶流体からなる第2の流体のセル11b,12b,13bと、を含む。第1の流体のセル11a,12aと第2の流体のセル11b,12b,13bとは、第2流路部42aに沿って交互に並んで下流方向Cに流れる。
【0039】
スラグ流110において、第1の流体のセル11a,12a内に、循環流C11が発生し、局所的な攪拌作用が生じる。これによって、第1の流体のセル11a,12a内の液体混合が促進される。また、図2Aに示すように、第1の流体のセル11a,12aは、セル長L11aを有し、第2の流体のセル11b,12b,13bは、セル長L11bを有する。
【0040】
以下の説明において、セル長は、対象となるスラグ流における複数の第1の流体のセル又は複数の第2の流体のセルの平均長さを示す。また、本明細書において、スラグ流における第1の流体のセルと第2の流体のセルとは、均一の断面積を有する液柱の形状とする。この場合、当該スラグ流における第1の流体のセルと第2の流体のセルのセル体積比は、第1の流体のセルと第2の流体のセルとのセル長の比で表すことができる。すなわち、スラグ流110のセル体積比は、L11a/L11bである。当該セル体積比は、第2の流体の相対送入量の変化、すなわち、第1の流体の送入量(以下、「第1流体送入量」を称す)に対する第2の流体の送入量(以下、「第2流体送入量」を称す)の変化によって変動する。
【0041】
例えば、図2Bに示すスラグ流210は、図2Aに示すスラグ流110に対し、第2流体送入量を増加して形成されたスラグ流である。図示のように、第2流路部42b内に流れているスラグ流210は、第1の流体のセル21a,22a,23aと、第2の流体のセル21b,22b,23b,24bと、を含む。第1の流体のセル21a,22a,23aと、第2の流体のセル21b,22b,23b,24bとは、第2流路部42bに沿って交互に並んで下流方向Cに流れる。
【0042】
図示のように、スラグ流210において、第2流体送入量の増加につれ、第2の流体のセルの占有率が増加し、より小さく分断された第1の流体のセルが形成されている。より小さい第1の流体のセル21a,22a,23aのそれぞれには、スラグ流110内の循環流C11よりも更に細かな循環流C21が形成されている。スラグ流210のセル体積比L21a/L21bは、スラグ流110のセル体積比L11a/L11bよりも小さい値を有する。
【0043】
前述したように、反応製造において、安定な品質及び生産性を有する反応生産物を提供するためには、スラグ流のセル体積比を所定の範囲内に維持することが望ましい。スラグ流のセル体積比は、混合反応を開始する前に第1流体送入量と第2流体送入量との設定により予め設定することができる。しかしながら、混合反応中に、第2流体送入量の実績値のバラつきによって、図2A及び図2Bに示すように、混合流路内のスラグ流のセル体積比が変動する場合がある。本実施の形態では、流体送入制御機構300によって、混合流路内のスラグ流のセル体積比の変動を把握し、それに基づいて流体送入部の流体送入を制御することによって、スラグ流のセル体積比の変動を抑制することができる。以下、流体送入制御機構300の構成について、図1及び図3を参照して詳細に説明する。
【0044】
<流体送入制御機構>
図1に戻って、本実施の形態に係る流体送入制御機構300は、吸光度検知部60と、演算装置70と、流体送入制御部80とを含む。演算装置70は、吸光度検知部60及び流体送入制御部80にそれぞれ接続され、流体送入制御部80は、流体送入部200に設けられた流量調整手段、本実施の形態では、ポンプ36に接続されている。
【0045】
(吸光度検知部)
吸光度検知部60は、第2の流体が合流した後の混合流路40の第2流路部42内に形成されたスラグ流に対して、吸光度を検知するために用いられる。本実施の形態では、吸光度検知部60は、吸光度測定器61とデータ転送部62とを有する。
【0046】
図1に示すように、吸光度測定器61は、混合流路40の第2流路部42付近に配置され、光源部と受光部と(図示せず)を備える。本実施の形態では、吸光度測定器61の光源部は、第2流路部42内のスラグ流に対して、所定の時間において、第1の波長を有する第1検知光に対するスラグ流の吸光度と、第2の波長を有する第2検知光に対するスラグ流の吸光度とを検知するように構成されている。ここで、例えば、第1検知光に対して、第1の流体が第2の流体よりも高い吸収率を有し、第2検知光に対して、第2の流体が第1の流体よりも高い吸収率を有するように構成される。これによって、所定の時間において、スラグ流における第1の流体と第2の流体とのそれぞれが対応する吸光度が検出される時間の長さを得ることができる。また、所定の時間に、第1検知光と第2検知光とのそれぞれに対して、第1の流体と第2の流体とが対応する吸光度が検出される時間を識別するためには、望ましくは、第1の流体と第2の流体とは、第1検知光と第2検知光とに対して、一定の吸収率差を有する。例えば、第1検知光に対して、第1の流体が0.7以上の吸収率を有するに対し、第2の流体が0.2以下の吸収率を有することができる。第2検知光に対して、第1の流体が0.2以下の吸収率を有するに対し、第2の流体が0.7以上の吸収率を有することができる。
【0047】
また、用途に応じて、例えば、入射光の反射、散乱等によって、測定された吸光度の値に有意差が無い場合等には、吸光度測定器61は、第3の波長を有する参照光を更にスラグ流に入射して、吸光度を測定するように構成されてもよい。なお、吸光度測定器61の光源部には、回折格子、ビームスプリッタ等の光学素子を設けることができる。本実施の形態ではこれらの光学素子を省略し、図示していない。
【0048】
吸光度測定器61の受光部(図示せず)は、用途によって、例えば、可視光域の光を検出するCCDやCMOSを用いてもよく、更に広い波長範囲の光検出に対応するダイオードアレイ検出器(DAD)を利用してもよい。本実施の形態では、吸光度測定器61の受光部は、第2流路部42内のスラグ流に入射される前、及びスラグ流を透過した後の2つ以上の異なる波長を有する光を検出し、電気信号に変換して吸光度のデータを取得するように構成されている。
【0049】
吸光度測定器61により検出された2つ以上の異なる波長の光に対するスラグ流の吸光度のデータは、データ転送部62に記録され、演算装置70に送信される。なお、データ転送部62には、信号増幅器等を設けてもよい。吸光度検知部60の吸光度検出機構は、従来知られている吸光度検出装置の構成を採用することができ、本明細書では更なる詳細な説明を省略する。
【0050】
(演算装置)
演算装置70は、吸光度検知部60からスラグ流の吸光度のデータを受信し、2つ以上の異なる波長の光に対するスラグ流の吸光度の測定結果に基づいて、当該スラグ流のセル体積比を算出することができる。以下、図3を参照して演算装置70の構成について説明する。図3は、図1に示す流体送入制御機構300の演算装置70の一構成例を示すブロック図である。演算装置70は、例えば、コンピュータ装置である。このコンピュータ装置として、汎用的なコンピュータ装置を用いることができ、例えば、図3に示すように、処理部71、記憶部72、表示部73を含むことができる。なお、演算装置70は、更に入力装置、記憶装置、インタフェース等を含んでもよい。演算装置70は、吸光度検知部60からスラグ流の吸光度の測定データを受信し、演算処理を行うことができる。
【0051】
≪処理部71≫
処理部71は、例えば、中央処理演算子(CPU)、マイクロコンピュータ、又は、コンピュータで実行可能な命令を実行できる処理装置であればよい。
【0052】
≪記憶部72≫
記憶部72は、例えば、ROM、EEPROM、RAM、フラッシュSSD、ハードディスク、USBメモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の少なくとも一つであってもよい。
【0053】
記憶部72には、プログラム75を含む。なお、演算装置70がネットワークに接続されている場合には、必要に応じてプログラム75をネットワークからダウンロードしてもよい。
【0054】
≪プログラム75≫
プログラム75は、セル体積比算出部75aと、送入量調整判定部75bとを含むことができる。セル体積比算出部75aと、送入量調整判定部75bとは、実行時には、記憶部72から読み出されて処理部71にて実行される。
【0055】
セル体積比算出部75aは、吸光度検知部60によって検知された2つ以上の異なる波長の光に対するスラグ流の吸光度に基づいて、例えば、所定時間内に、当該スラグ流の第1の流体と第2の流体とが対応する吸光度が検知された時間の長さを得ることができる。更に混合流路内の第1の流体と第2の流体の流速を用いて、当該スラグ流のセル体積比を算出することができる。
【0056】
送入量調整判定部75bは、セル体積比算出部75aにより算出されたセル体積比と、所定のセル体積比の基準値とを比較することによって、第2流体送入量の調整を判定することができる。ここで、所定のセル体積比の基準値は、用途に応じて定められてもよく、例えば、所望の反応生成物の品質及び生産性を担保することができる一定の基準範囲であってもよい。送入量調整判定部75bは、例えば、セル体積比算出部75aにより算出されたスラグ流のセル体積比と、所定のセル体積比の基準値とを比較することで、算出されたスラグ流のセル体積比が所定のセル体積比の基準範囲内にあるか否かを判定することができる。更に、例えば、算出されたスラグ流のセル体積比が所定のセル体積比の基準範囲を超えたと判定した場合に、算出されたスラグ流のセル体積比と所定のセル体積比の基準値との差分を減少させるように、第2流体送入量の調整について判定することができる。送入量調整判定部75bによる第2流体送入量の調整についての判定は、後段の液体混合プロセスの説明において更に具体的に説明する。
【0057】
図4を参照して、演算装置70において実行されるプログラム75の流れについて説明する。図4は、図3の演算装置70のプログラム75のフローチャートである。図4に示すように、プログラム75は、以下3つのステップからなる。セル体積比算出部75aは、ステップS701に対応し、送入量調整判定部75bは、ステップS702及びS703に対応する。
(1)吸光度検知部60によって検知されたスラグ流の吸光度に基づいて、スラグ流のセル体積比を算出する(S701)。
(2)次に、算出されたスラグ流のセル体積比を、所定のセル体積比の基準値と比較することによって、第2流体送入量の調整を判定する(S702)。
(3)次いで、判定された第2流体送入量の調整を、流体送入制御部80に送信する(S703)。
【0058】
≪表示部73≫
表示部73は、例えば、処理部71によりプログラム75が実行されて、得られたスラグ流のセル体積比、及び/又は第2流体送入量の調整の判定結果等を、例えば、ディスプレイ等に表示することができる。なお、表示部73は、用途によって省略することもできる。
【0059】
(流体送入制御部)
流体送入制御部80は、演算装置70により判定された第2流体送入量の調整に基づいて、流体送入部200の流量調整手段を動作させることによって、流体送入部200の流体送入を制御することができる。本実施の形態では、流体送入制御部80は、流体送入部200の不溶流体の流量調整手段であるポンプ36に接続されている(図1)。流体送入制御部80は、例えば、判定された第2流体送入量の調整に基づいて、算出されたスラグ流のセル体積比と所定のセル体積比の基準値との差分を減少させるように、ポンプ36を動作させて第2の流体である不溶流体の相対送入量を調整することができる。
【0060】
このように、本開示の液体混合装置100は、流体送入制御機構300により、流体送入部200の流体送入を制御することによって、反応製造中にスラグ流のセル体積比の変動を抑制することで、所望の品質及び生産性を有する反応生産物を提供することができる。
【0061】
本開示の実施の形態に係る液体混合装置100の液体混合プロセスについて、以下、図5乃至図6Bを参照して説明する。図5は、本開示の実施形態に係る液体混合装置100の液体混合プロセスのフローチャートを示す図である。図6Aは、本開示の実施の形態に係る液体混合装置100の液体混合プロセスの実施例1の一例による流体送入の制御を示す図である。図6Bは、本開示の実施の形態に係る液体混合装置100の液体混合プロセスの実施例2の一例による流体送入の制御を示す図である。図6A及び6Bにおいて、下段には、所定の時間に吸光度検知部60によって検知された混合流路内のスラグ流が2つの異なる波長の光に対する吸光度を示し、上段には、下段に示される吸光度の測定結果に対応するスラグ流の構成状態のイメージ図を示している。なお、図6Aの実施例1と図6Bの実施例2とは、流体送入制御部80による流体送入の制御方法のみにおいて異なる。図6A図6Bとにおいて、同様な要素について、同じ符号を付し、重複した内容について説明を省略する。
【0062】
《液体混合装置の液体混合プロセス》
図5を用いて、併せて図1を参照しながら液体混合装置100による液体混合プロセスを説明する。
【0063】
(1)まず、S801では、第1の流体と第2の流体とを混合流路40に送入する。本開示の実施の形態において、互いに可溶性を有する複数の液体を含む第1の流体の主成分は水であって、第1の流体に対して不溶性を有する第2の流体の主成分はシクロヘキサンである。また、第2の流体は、混合流路40に送入された第1の流体の流れと交差する方向B2から混合流路40に導入される(図1参照)。これによって、第2の流体が合流した後の混合流路40の第2流路部42内に、第1の流体のセルと第2の流体のセルとが交互に並んで流れるスラグ流を形成させる。
【0064】
(2)次に、S801では、第1の流体の送入量である第1流体送入量と、第1流体送入量に対する第2の流体の送入量である第2流体送入量とを設定する。このとき、流体送入部200に設けられた流量調整手段であるポンプ16,26,36によって、第1の流体と第2の流体とは、それぞれ予め設定された第1流体送入量と第2流体送入量とで送入される。また、第2の流体の送入は、ポンプ36の弁の所定の開放周波数及び開放時の送入流量によって、第2流体送入量を設定することができる。
【0065】
液体混合開始時の第1流体送入量と第2流体送入量との初期設定には、本開示は限定されない。例えば、手動で初期設定してもよく、流体送入制御部80が流体送入部200の流量調整手段を動作させて行ってもよい。なお、S801とS802とは、逆の順番で実行されてもよい。
【0066】
(3)S803では、吸光度検知部60によって、第2流路部42内のスラグ流に対して吸光度を検知する。このとき、吸光度検知部60の吸光度測定器61は、2つ以上の異なる波長を有する光を第2流路部42内のスラグ流を照射し、所定時間において、スラグ流がそれぞれの光に対する吸光度を測定し、得られた吸光度のデータを演算装置70に送信する。
【0067】
具体的には、本実施の形態では、吸光度検知部60は、第2流路部42内のスラグ流に対して、第1波長950nmの検知光と第2波長360nmの検知光を用いて、時間t31,t32,t33のそれぞれにおいて、スラグ流の吸光度を検出した。図6A及び図6Bの下段において、波長950nmの検知光を用いた測定結果を「〇」で示し、波長360nmの検知光を用いた測定結果を「×」で示している。本実施の形態では、第1波長950nmは、第1の流体の主成分である水がより高い吸収率を有する波長であり、第2波長360nmは、第2の流体の主成分であるシクロヘキサンがより高い吸収率を有する波長である。したがって、図6A及び図6Bに示すように、第1波長950nmの検知光をスラグ流に入射することで、第1の流体に対応する第1吸光度Aa1が検知され、第2波長360nmの検知光をスラグ流に入射することで、第2の流体に対応する第2吸光度Ab1が検知された。なお、第1吸光度Aa1及び第2吸光度Ab1の値は、単位時間当たりの吸光度測定値の平均値を用いてもよく、代表値を用いてもよい。一定の測定誤差を含む場合は平均値を用いたほうが望ましい。
【0068】
図6A及び図6Bの下段では、時間t31,t32,t33のそれぞれにおいて、単一の第1の流体のセルに対応する第1吸光度Aa1が検出された時間の長さと、単一の第2の流体のセルに対応する第2吸光度Ab1が検出された時間の長さとを概念的に示している。図示のように、図6Aのスラグ流310では、単一の第1の流体のセルに対応する第1吸光度Aa1は、Δta31,Δta32,Δta33に検出され、単一の第2の流体のセルに対応する第2吸光度Ab1は、Δtb31,Δtb32,Δtb33に検出された。図6Bのスラグ流410では、単一の第1の流体のセルに対応する第1吸光度Aa1は、Δta41,Δta42,Δta43に検出され、単一の第2の流体のセルに対応する第2吸光度Ab1は、Δtb41,Δtb42,Δtb43に検出された。
【0069】
(4)続いて、S804では、演算装置70のセル体積比算出部75aによってスラグ流のセル体積比を算出する。このとき、吸光度検知部60によって検知された2つ以上の異なる波長の光に対するスラグ流の吸光度に基づいて、例えば、所定時間内に、当該スラグ流に含まれる第1の流体と第2の流体とのそれぞれが対応する吸光度が検知された時間の長さを得ることができる。更に混合流路内の第1の流体と第2の流体との流速を用いて、当該スラグ流のセル体積比を算出することができる。
【0070】
具体的には、本実施の形態では、セル体積比算出部76Aでは、例えば、時間t31において、第1吸光度Aa1が検出された時間の長さ、及び第2吸光度Ab1が検出された時間の長さと、第2流路部42内の流体の流速とに基づいて、セル体積比を算出することができる。このとき、例えば、時間t31において、第1吸光度Aa1が検出された時間の長さをΔta31の合計とし、第2吸光度Ab1が検出された時間の長さをΔtb31の合計とすることができる。図6A及び図6Bの上段において、時間t31,t32,t33のそれぞれのスラグ流における複数の第1の流体のセルと複数の第2の流体のセルとの平均長さを示している。なお、第1の流体のセルと第2の流体のセルとが均一の断面積を有する液柱の形状とし、セル体積をセルの長さとして表すことができる。このように、時間t31のスラグ流310,410における第1の流体のセルと第2の流体のセルとのセル体積比L31a/L31b(図6A),L41a/L41b(図6B)を算出した。
【0071】
なお、本実施の形態では、第1波長950nmで測定した第1吸光度の値Aa1と、第2波長360nmで測定した第2吸光度の値Ab1とは、有意差があったため、2つの波長で測定した吸光度の値に基づいてスラグ流のセル体積比を算出することができた。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、2つの波長で測定された吸光度の値に有意差が無い場合等には、参照光としての第3波長の光を用いて測定した吸光度の値を更に利用してスラグ流のセル体積比を算出することができる。第3波長は、例えば、第1の流体と第2の流体とのいずれにも吸収されない波長、本実施の形態の場合、水とシクロヘキサンとが共に吸収しない波長である600nmを用いてもよい。
【0072】
更に第3波長の光を用いて測定した吸光度の値を利用してセル体積比を算出するときには、第1波長950nmでの吸光度の値から第3波長600nmでの吸光度の値を減じる値を第1吸光度の値とすることができる。同様に、第2波長360nmでの吸光度の値から第3波長600nmでの吸光度の値を減じる値を第2吸光度の値とすることができる。
【0073】
(5)続いて、S805では、演算装置70の送入量調整判定部75bによって第2流体送入量の調整を判定する。このとき、セル体積比算出部75aによって算出されたスラグ流のセル体積比と所定のセル体積比の基準値とを比較することによって第2流体送入量の調整を判定することができる。
【0074】
例えば、判定1において、算出されたスラグ流のセル体積比が所定のセル体積比の基準値よりも大きい場合には、第2流体送入量を減少するように、第2流体送入量の調整を判定することができる(S806)。反対に、判定2において、算出されたスラグ流のセル体積比が所定のセル体積比の基準値よりも小さい場合には、第2流体送入量を増加するように、第2流体送入量の調整を判定することができる(S807)。また、判定3において、算出されたスラグ流のセル体積比が所定のセル体積比の基準範囲内である場合には、第2流体送入量を維持するように、第2流体送入量の調整を判定することができる(S808)。
【0075】
具体的には、本実施の形態では、送入量調整判定部75bでは、図6A及び図6Bに示すように、算出された時間t31のスラグ流310,410のセル体積比L31a/L31b,L41a/L41bと、所定のセル体積比の基準値とを比較する。本実施の形態では、例えば、第1の流体のセルの体積対第2の流体のセルの体積の比をスラグ流のセル体積比とし、当該セル体積比の基準値を1/5~4の範囲とすることができる。この場合、例えば、送入量調整判定部75bによる比較した結果、t31のセル体積比L31a/L31b,L41a/L41bがセル体積比の基準値1/5未満であるときは、図5に示す判定1となる。すなわち、t31のスラグ流310,410において、第1の流体のセル311a,411aが小さく、第2の流体のセル311b,312b、及び411b,412bの割合が大きすぎるため、所望の反応生産性の確保が影響される状態であると推定される。この場合、送入量調整判定部75bは、第2流体送入量を減少するように、第2流体送入量の調整を判定することができる(図5に示すS806)。
【0076】
反対に、例えば、送入量調整判定部75bによる比較した結果、算出された時間t31のスラグ流310,410のセル体積比L31a/L31b,L41a/L41bがセル体積比の基準値4を超えたときは、図5に示す判定2となる。すなわち、t31のスラグ流310,410において、第1の流体のセル311a,411aが大きく、第2の流体のセル311b,312b、及び411b,412bの割合が小さすぎるため、所望の反応生成物の品質確保が影響される状態であると推定される。この場合、送入量調整判定部75bは、第2流体送入量を増加するように、第2流体送入量の調整を判定することができる(図5に示すS807)。
【0077】
また、送入量調整判定部75bによる比較した結果、算出された時間t31のスラグ流310,410のセル体積比L31a/L31b,L41a/L41bがセル体積比の基準範囲1/5~4内であるときは、図5に示す判定3となる。すなわち、t31のスラグ流310,410において、所望の反応生産性及び所望の反応生成物の品質が確保可能な状態であると推定される。この場合、送入量調整判定部75bは、第2流体送入量を維持するように、第2流体送入量の調整を判定することができる(図5に示すS808)。
【0078】
続いて、送入量調整判定部75bによる第2流体送入量の調整についての判定結果は、流体送入制御部80に送信される。流体送入制御部80は、当該判定結果に基づいて、流体送入部200に設けられた流量調整手段を動作させることによって、第2流体送入量を調整した値で再設定するように制御する(S802に戻る)か、又は設定された第2流体送入量を維持して液体混合を進める。流体送入制御部80による第2流体送入量の制御について、以下、図6A及び6Bを参照しながら、本開示の実施の形態に係る液体混合プロセスの実施例1及び実施例2について説明する。
【0079】
図6Aに示す実施例1及び図6Bに示す実施例2において、時間t31で検知された吸光度に基づいて算出されたスラグ流310,410のセル体積比が、セル体積比の基準値4を超えた状態(図5に示すS807)であった例を示している。この場合、送入量調整判定部75bによる「第2流体送入量を増加する」との判定に基づいて、流体送入制御部80は、S802に戻って第2流体送入量を、増加させるように再設定する。
【0080】
図6Aに示す実施例1において、流体送入制御部80は、時間t2からt3にかけて、第2の流体の流量調整手段であるポンプ36の弁の開放周波数を増加させることによって、第2流体送入量を増加させた。時間t32,t33において、第1の流体に対応する第1吸光度Aa1と第2の流体に対応する第2吸光度Ab1とのそれぞれが検出された時間の長さと、第2流路部42内の流体の流速とに基づいてスラグ流のセル体積比を算出した。その結果、図6Aの上段に示すように、時間t32,t33にかけて、算出されたスラグ流320,330のセル体積比は、L32a/L32b、L33a/L33bとなるように減少した。このとき、時間t2,t3のスラグ流320及び330において、第2の流体のセルの数が321b,322b,323b、及び331b,332b,333b,334bとなるように増加したと考えられる。従って、時間t2からt3にかけて、より小さい第1の流体のセル321a,322a、及び331a,332a,333aが形成され、その内部には、より細かな循環流C32,C33の形成によって、混合促進に寄与する度合いが高まったと推察される。
【0081】
図6Bに示す実施例2において、流体送入制御部80は、時間t2からt3にかけて、第2の流体の流量調整手段であるポンプ36の弁の開放周波数を維持し、ポンプ36の弁の開放時の送出流量を増加させることによって、第2流体送入量を増加させた。実施例1と同様に、時間t32,t33のそれぞれにおいて、第1の流体に対応する第1吸光度Aa1と第2の流体に対応する第2吸光度Ab1とのそれぞれが検出された時間の長さと、第2流路部42内の流体の流速とに基づいてスラグ流のセル体積比を算出した。その結果、図6Bの上段に示すように、時間t32,t33にかけて、吸光度検知部60により検出された吸光度に基づいて算出されたスラグ流420,430のセル体積比は、L42a/L42b、L43a/L43bとなるように減少した。このとき、時間t2,t3のスラグ流420及び430において、第2の流体のセルの長さがL42b、及びL43bとなるように増加し、反対に第1の流体のセルの長さがL42a、及びL43aとなるように短縮したと考えられる。従って、時間t2からt3にかけて、より小さい第1の流体のセル421a,422a、及び431a,432aが形成され、その内部には、より細かな循環流C42,C43の形成によって、混合促進に寄与する度合いが高まったと推察される。
【0082】
このように、実施例1と実施例2のいずれにおいても、時間t31においてセル体積比が基準値を超えたスラグ流は、時間t2からt3にかけてセル体積比が減少するように制御され、反応生成物の品質確保が影響される状態が改善された。なお、流量調整手段としてポンプを使用する場合は、例えば、ポンプの特性上、一の設定条件で一定の流量を保持し続けることが難しい場合には、図6Bに示す、ポンプの弁の開放時の送出流量の調整による制御方法が望ましい。また、ここでは示していないが、反対に、セル体積比が基準値未満のスラグ流(図5に示す判定2)についても、同様な制御方法により、所望の反応生産性の確保が影響される状態を改善することができる。反応製造において、S802乃至805、そして、806又は807又は808の操作を繰り返すことによって、スラグ流のセル体積比の変動を抑制することができ、安定な品質及び生産性を有する反応生産物を提供することができる。
【0083】
なお、上記実施の形態において、第2流体送入量、すなわち、第1の流体の送入量に対する第2の流体の相対送入量の制御において、流体送入部による第2の流体の送入量を調整することによって行うように説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、用途に応じて、代えて又は合わせて第1の流体の送入量を調整してもよい。
【0084】
また、上記実施の形態において、算出されたセル体積比と、所定のセル体積比の基準値との比較に基づいて、流体の送入を制御するように説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、連続的に測定したスラグ流の吸光度に基づいて算出したスラグ流のセル体積比の変動と所定の基準値との比較に基づいて、流体の送入を制御することもできる。
【0085】
以上のように、本開示における技術の例示としての実施の形態を説明するために、添付図面及び詳細な説明を提供した。したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。したがって、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0086】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。そのような変更、及び異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示は、互いに可溶性を有する流体を混合する装置に適用可能である。本開示は、例えば、水熱合成反応等を用いた反応製造等に適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
10,20 液体供給部
30 不溶流体導入部
40 混合流路
12,22,32 流体容器
14,24,34 配管
16,26,36 ポンプ
41,42,42a,42b 流路部
50 回収容器
60 吸光度検知部
61 吸光度測定器
62 データ転送部
70 演算装置
71 処理部
72 記憶部
73 表示部
75 プログラム
75a セル体積比算出部
75b 送入量調整判定部
80 流体送入制御部
100 液体混合装置
200 流体送入部
300 流体送入制御機構
110,210 スラグ流
310,320,330 スラグ流
410,420,430 スラグ流
C11,C21 循環流
C31,C32,C33 循環流
C41,C42,C43 循環流
L11a,L21a,L31a,L41a セル長
L11b,L21b,L31b,L41b セル長
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B