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特開2023-162964X線診断装置、X線診断システム及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162964
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】X線診断装置、X線診断システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20231101BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/12
A61B6/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073704
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楢原 兼成
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊平
(72)【発明者】
【氏名】秋山 真己
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 祐希
(72)【発明者】
【氏名】平澤 正志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洋
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA34
4C093FA15
4C093FA32
4C093FA36
4C093FA43
4C093FA53
4C093FC13
4C093FF15
4C093FF22
(57)【要約】
【課題】X線画像を参照してデバイスを遠隔操作する治療における操作者の作業及び被ばくを低減すること。
【解決手段】実施形態に係るX線診断装置は、被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と通信可能に構成され、寝台に載置された被検体のX線画像を得るX線診断装置である。X線診断装置は、記憶部と、特定部と、取得部と、決定部と、制御部とを備える。記憶部は、デバイスの操作情報に対応するX線診断装置の制御内容を示す制御情報をデバイスの種類に紐づけて記憶する。特定部は、デバイスの種類を特定する。取得部は、ユーザのデバイスについての操作入力の結果を示す操作情報を遠隔操作卓から取得する。決定部は、特定されたデバイスの種類に紐づけられた制御情報に基づいて、デバイスについての操作入力に応じたX線診断装置の制御内容を決定する。制御部は、決定された制御内容を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と通信可能に構成され、寝台に載置された前記被検体のX線画像を得るX線診断装置であって、
前記デバイスの操作情報に対応する前記X線診断装置の制御内容を示す制御情報を前記デバイスの種類に紐づけて記憶する記憶部と、
前記デバイスの種類を特定する特定部と、
前記ユーザの前記デバイスについての操作入力の結果を示す前記操作情報を前記遠隔操作卓から取得する取得部と、
特定された前記デバイスの種類に紐づけられた制御情報に基づいて、前記デバイスについての操作入力に応じた前記X線診断装置の制御内容を決定する決定部と、
決定された前記制御内容を実行する制御部と
を具備するX線診断装置。
【請求項2】
前記デバイスの前記操作情報は、前記デバイスの繰り出し量及びトルク量の少なくとも一方を含む、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記被検体のX線画像を取得し、
前記特定部は、取得された前記X線画像における前記デバイスの位置を特定し、特定された前記デバイスの位置に基づいて前記デバイスについての操作入力に応じた前記デバイスの移動量及び移動方向を算出し、
前記決定部は、算出された前記デバイスの移動量及び移動方向にそれぞれ対応する移動量及び移動方向で、前記寝台に対する前記X線画像を撮像する撮像部の相対位置を平行移動させる前記X線診断装置の制御内容を決定し、
前記制御部は、決定された前記制御内容で前記寝台及び前記撮像部の少なくとも一方を移動させる、
請求項1又は請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記X線画像の拡大率に基づいて前記デバイスについての操作入力を補正することにより、前記デバイスについての操作入力に応じた前記デバイスの移動量を算出する、請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記デバイスの操作情報が変化した場合、かつ、前記デバイスの移動量が変化しなかった場合、前記デバイスの移動が障害物により妨げられていることを警告する警告情報を表示部に表示する前記X線診断装置の制御内容を決定する、請求項1又は請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記デバイスの操作情報が変化しているとき前記デバイスによる作業中であると特定し、
前記決定部は、前記デバイスによる作業中であると特定されたとき、前記X線画像において前記デバイスを高コントラスト化する撮影条件を適用する前記X線診断装置の制御内容を決定する、
請求項1又は請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記X線画像を得る撮影プロトコルを示す情報を取得し、
前記決定部は、前記撮影プロトコルに応じた撮影条件を適用する前記X線診断装置の制御内容を決定する、
請求項6に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記デバイスは、コイルであり、
前記特定部は、前記コイルの繰り出し量に基づいて前記コイルの動脈瘤における充填率を算出し、
前記決定部は、算出された前記充填率を表示部に表示する前記X線診断装置の制御内容を決定する、
請求項1又は請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記決定部は、前記デバイスがコイルであるとき、前記コイルの充填作業の開始前に前記X線画像において前記デバイスを高コントラスト化する撮影条件を適用する前記X線診断装置の制御内容を決定する、請求項8に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記取得部は、前記被検体の状態を計測する外部機器から計測値を取得し、
前記決定部は、取得された前記被検体についての計測値に応じた撮影条件を適用する前記X線診断装置の制御内容を決定する、
請求項1又は請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記外部機器は、心電計、循環動態測定装置及びパルスオキシメータのうちのいずれかである、請求項10に記載のX線診断装置。
【請求項12】
前記取得部は、前記遠隔操作卓から前記デバイスの種類を示すデバイス情報を取得し、
前記特定部は、取得されたデバイス情報に基づいて前記デバイスの種類を特定する、
請求項1又は請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項13】
前記取得部は、前記被検体のX線画像を取得し、
前記特定部は、取得されたX線画像に基づいて前記デバイスの種類を特定する、
請求項1又は請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項14】
被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と、
寝台に載置された前記被検体のX線画像を得るX線診断装置と、
前記遠隔操作卓及び前記X線診断装置と通信可能に構成される情報処理装置と
を含むX線診断システムであって、
前記情報処理装置は、
前記デバイスの操作情報に対応する前記X線診断装置の制御内容を示す制御情報を前記デバイスの種類に紐づけて記憶する記憶部と、
前記デバイスの種類を特定する特定部と、
前記ユーザの前記デバイスについての操作入力の結果を示す前記操作情報を前記遠隔操作卓から取得する取得部と、
特定された前記デバイスの種類に紐づけられた制御情報に基づいて、前記デバイスについての操作入力に応じた前記X線診断装置の制御内容を決定する決定部と、
決定された前記X線診断装置の制御内容を出力する出力部と
を有し、
前記X線診断装置は、
前記情報処理装置から出力された前記X線診断装置の制御内容を取得する取得部と、
取得された前記X線診断装置の制御内容を実行する制御部と
を有する、
X線診断システム。
【請求項15】
被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と通信可能に構成され、寝台に載置された前記被検体のX線画像を得るX線診断装置の制御方法であって、
前記デバイスの操作情報に対応する前記X線診断装置の制御内容を示す制御情報を前記デバイスの種類に紐づけて記憶することと、
前記デバイスの種類を特定することと、
前記ユーザの前記デバイスについての操作入力の結果を示す前記操作情報を前記遠隔操作卓から取得することと、
特定された前記デバイスの種類に紐づけられた制御情報に基づいて、前記デバイスについての操作入力に応じた前記X線診断装置の制御内容を決定することと、
決定された前記制御内容を実行することと
を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線診断装置、X線診断システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体にX線を照射し、被検体を透過したX線に基づいてX線画像を得るX線診断装置が知られている。例えば、血栓などにより血管内に生じた狭窄部位に対する血管内インターベンション治療において、術者は、X線診断装置による治療対象部位のX線画像を参照しながら、手動操作によりガイドワイヤやカテーテル等の医療デバイスを被検体の血管内で進行させて、診断対象部位または治療対象部位まで到達させる。この種の手技を支援する技術として、たとえばリモートカテーテルシステムがある。リモートカテーテルシステムによれば、操作者はデバイスを遠隔の操作卓により遠隔操作する。これにより、操作者の被ばく低減が実現されている。
【0003】
しかしながら、X線照射領域やX線照射方向の変更のための天板移動やX線診断装置の撮像装置の操作については、X線診断装置の近傍に設けられたコンソールを操作する作業が発生していた。また、撮影中にX線診断装置に近づくと、不要な被ばくが発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-094073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、X線画像を参照してデバイスを遠隔操作する治療における操作者の作業及び被ばくを低減することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線診断装置は、被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と通信可能に構成され、寝台に載置された前記被検体のX線画像を得るX線診断装置である。前記X線診断装置は、記憶部と、特定部と、取得部と、決定部と、制御部とを備える。前記記憶部は、前記デバイスの操作情報に対応する前記X線診断装置の制御内容を示す制御情報を前記デバイスの種類に紐づけて記憶する。前記特定部は、前記デバイスの種類を特定する。前記取得部は、前記ユーザの前記デバイスについての操作入力の結果を示す前記操作情報を前記遠隔操作卓から取得する。前記決定部は、特定された前記デバイスの種類に紐づけられた制御情報に基づいて、前記デバイスについての操作入力に応じた前記X線診断装置の制御内容を決定する。前記制御部は、決定された前記制御内容を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るX線診断装置を含むX線診断システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る記憶回路に格納される情報の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るデバイス位置の特定について説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るデバイス位置の特定について説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るデバイス操作情報に応じたX線診断装置の自動制御について説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るデバイス操作情報に応じたX線診断装置の自動制御の流れの一例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る記憶回路に格納される情報の一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るデバイス操作情報に応じたX線診断装置の自動制御の流れの一例を示す図である。
図9図9は、第3の実施形態に係る充填率の算出について説明するための図である。
図10図10は、第3の実施形態に係るデバイス操作情報に応じたX線診断装置の自動制御の流れの一例を示す図である。
図11図11は、第4の実施形態に係る記憶回路に格納される情報の一例を示す図である。
図12図12は、第4の実施形態に係るデバイス操作情報に応じたX線診断装置の自動制御の流れの一例を示す図である。
図13図13は、実施形態に係るX線診断システムの構成の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら各実施形態に係るX線診断装置、X線診断システム及び制御方法を説明する。なお、以下の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。また、例えば図面の視認性を確保する観点から、各図面の説明において主要な構成要素だけに参照符号を付し、同一又は略同一の機能を有する構成要素であっても参照符号を付していない場合もある。
【0009】
以下に説明する各実施形態では、医用画像診断装置の一例としてX線診断装置を例示するが、これに限らない。各実施形態に係る技術は、X線診断装置の他の医用画像診断装置に適用されても構わない。他の医用画像診断装置としては、X線コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)装置、超音波診断装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT-CT装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置とX線CT装置とが一体化されたPET-CT装置などの種々の医用画像診断装置があり得る。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係るX線診断装置100を含むX線診断システム1の構成の一例を示す図である。X線診断システム1は、術者がX線診断装置100による治療対象部位のX線画像(医用画像)を参照しながら、ガイドワイヤやステントなどのデバイス400を遠隔の操作卓(デバイス遠隔制御装置300)により遠隔操作し、血栓などにより血管内に生じた狭窄部位に対する血管内インターベンション治療を実施するためのシステムである。
【0011】
X線診断システム1は、図1に示すように、X線診断装置100、デバイス遠隔制御装置300及びデバイス400を含む。
【0012】
X線診断装置100は、被検体Pから収集したデータに基づいて医用画像データを生成する医用画像診断装置の一例である。具体的には、X線診断装置100は、被検体Pの体内に挿入されるデバイス400をユーザの操作入力に応じて遠隔で制御するデバイス遠隔制御装置300と通信可能に構成され、寝台5に載置された被検体PのX線画像を得る医用画像診断装置の一例である。なお、以下においては、説明を具体的にするため、X線診断装置100は循環器用X線診断装置である場合を例として説明する。
【0013】
X線診断装置100は、撮像部3、寝台5、駆動部7、操作部9、X線高電圧装置11、処理回路21、記憶回路23、表示部25及び入力インターフェース27を有する。なお、処理回路21、記憶回路23及び入力インターフェース27は、例えばコンソール装置10に内蔵される。撮像部3は、被検体PにX線を照射するX線管13と、X線を検出するX線検出器17と、X線絞り15と、保持装置19とを有する。撮像部3は、支持アームをさらに有する。寝台5には、撮像部3及び寝台5を動作させるための操作部9が設けられる。撮像部3及び寝台5を駆動する駆動部7は、撮像系移動駆動部71と、天板移動駆動部73とを有する。
【0014】
X線高電圧装置11は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路と、高電圧発生装置と、X線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、X線管13に印加する高電圧及びX線管13に供給するフィラメント電流を発生する機能を有する。X線制御装置は、X線管13が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行う。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置11は、保持装置19に設けられてもよい。
【0015】
X線管13は、X線高電圧装置11からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。熱電子がターゲットに衝突することによりX線が発生される。X線管13には、例えば、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。なお、X線管13は、回転陽極型に限定されず、任意の方式のX線管が適用可能である。
【0016】
X線絞り15は、X線管13におけるX線放射窓の前面に設けられる。X線絞り15は、例えば、鉛などの金属板で構成された4枚の絞り羽根を有する。絞り羽根は、操作部9や入力インターフェース27を介して操作者により入力された関心領域(FOV)、あるいは決定機能215によりデバイス操作情報に基づいて決定された関心領域に応じて、図示しない駆動装置により駆動される。X線絞り15は、駆動装置によりこれらの絞り羽根をスライドさせることで、X線が遮蔽される領域を任意のサイズに調節する。調整された絞り羽根により、X線絞り15は、開口領域外のX線を遮蔽する。これにより、X線絞り15は、X線管13が発生したX線を、被検体Pの関心領域に照射されるように絞り込む。
【0017】
X線検出器17は、X線管13により発生されたX線を検出する。X線検出器17は、例えば、フラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)である。FPDは、複数の半導体検出素子を有する。半導体検出素子にはX線を直接的に電気信号に変換する直接変換方式と、X線を蛍光体で光に変換し、その光を電気信号に変換する間接変換方式とがある。FPDには、いずれの方式が用いられてもよい。X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを、処理回路21に出力する。なお、X線検出器17として、イメージインテンシファイア(Image Intensifier)が用いられてもよい。
【0018】
保持装置19は、X線管13及びX線検出器17を支持するC型アームである。保持装置19は、図示しないモータにより、寝台5上に横臥する被検体Pの周りを回転移動する。ここで、保持装置19は、直交する3軸であるXYZ軸に関してそれぞれ回転可能に支持され、図示しない駆動部によって、各軸周りに回転する。
【0019】
処理回路21は、操作部9又は入力インターフェース27から出力される入力操作の電気信号に応じて、X線診断装置100全体の動作を制御する。例えば、処理回路21は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。
【0020】
処理回路21において実行される各種処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路23へ記憶されている。処理回路21は、記憶回路23からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0021】
具体的には、処理回路21は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、動作制御機能211、画像生成機能212、取得機能213、特定機能214、決定機能215及び表示制御機能216を実行する。ここで、動作制御機能211及び表示制御機能216を実現する処理回路21は、制御部の一例である。また、取得機能213を実現する処理回路21は、取得部の一例である。また、特定機能214を実現する処理回路21は、特定部の一例である。また、決定機能215を実現する処理回路21は、決定部の一例である。
【0022】
なお、動作制御機能211、画像生成機能212、取得機能213、特定機能214、決定機能215及び表示制御機能216は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより動作制御機能211、画像生成機能212、取得機能213、特定機能214、決定機能215及び表示制御機能216を実現するものとしても構わない。
【0023】
また、処理回路21は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)などのプロセッサにより実現されてもよい。
【0024】
動作制御機能211は、操作部9又は入力インターフェース27を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、駆動部7やX線高電圧装置11、X線絞り15、記憶回路23、表示部25等を制御する。具体的には、動作制御機能211は、記憶回路23に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路21内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線診断装置100の各部を制御する。
【0025】
また、動作制御機能211は、X線画像の撮影中に取得機能213によりデバイス遠隔制御装置300から取得されたデバイス操作情報に基づいて、駆動部7やX線高電圧装置11、X線絞り15等を制御する。具体的には、動作制御機能211は、記憶回路23に記憶されている、当該デバイス400のデバイス操作情報とX線診断装置100の制御内容との対応を示す装置情報233に基づいてデバイス遠隔制御装置300におけるデバイスについての操作入力に応じたX線診断装置100の制御内容を実行する。ここで、デバイス400の操作情報は、例えば、デバイス400の繰り出し量及びトルク量の少なくとも一方を含む。なお、動作制御機能211は、記憶回路23に記憶されている制御プログラムのうちの特定機能214により特定されたデバイス400に対応する制御プログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより、デバイス遠隔制御装置300におけるデバイスについての操作入力に応じたX線診断装置100の制御内容を実行するように構成されていてもよい。
【0026】
一例として、動作制御機能211は、デバイス400の移動量及び移動方向に基づいて、寝台5及び撮像部3の少なくとも一方を移動させる。
【0027】
画像生成機能212は、X線検出器17からの出力に基づいて画像データを生成する。具体的には、画像生成機能212は、X線検出器17からの出力に基づいて投影データ(X線減衰像のデータ)を生成する。次いで、画像生成機能212は、操作部9又は入力インターフェース27からの入力信号を受けて、X線検出器17の出力信号に対して欠陥画素補正やゲイン補正、オフセット補正等の処理を行なってX線画像を生成する。X線画像は、被検体Pに関する透視画像や撮影画像を含む医用画像に相当する。画像生成機能212は、X線画像を用いて合成処理や減算(サブトラクション)処理等を行なう。画像生成機能212は、生成されたX線画像を、記憶回路23に出力する。
【0028】
取得機能213は、画像生成機能212により生成された被検体PのX線画像を、例えば記憶回路23から取得する。また、取得機能213は、ユーザのデバイス400についての操作入力の結果を示す操作情報をデバイス遠隔制御装置300から取得する。操作入力は、操作者によるデバイス400についての入力操作であり、例えば、デバイス400の繰り出し量やトルク量などの操作量を指定する操作である。ここで、操作情報とは、例えば、デバイス400についての操作入力の有無を示す情報である。あるいは、操作情報とは、例えば、ユーザの操作量に基づくデバイス400の制御量である。また、取得機能213は、デバイス400の種類を示すデバイス情報をデバイス遠隔制御装置300から取得してもよい。
【0029】
特定機能214は、デバイス400の種類を特定する。一例として、特定機能214は、取得機能213によりデバイス遠隔制御装置300から取得されたデバイスの種類を示すデバイス情報に基づいて、デバイス400の種類を特定する。別の一例として、特定機能214は、取得機能213により記憶回路23から取得された、デバイス400が挿入された被検体PのX線画像に基づいて、デバイス400の種類を特定する。具体的には、特定機能214は、X線画像に対するエッジ検出処理などの画像処理に基づく画像認識処理により、X線画像に含まれるデバイス400の種類を特定する。なお、当該画像認識処理は、デバイス400を含むX線画像と、デバイス400の種類を示すラベルとを学習用データとして用いてパラメータが決定された機械学習モデルに被検体PのX線画像を入力し、当該モデルの出力、すなわち推論結果に基づいてデバイス400の種類を特定してもよい。この場合、機械学習モデルは、記憶回路23などに予め学習されて記憶されていればよい。
【0030】
また、特定機能214は、取得されたX線画像におけるデバイス400の位置(デバイス位置)を特定する。特定機能214は、特定されたデバイス位置に基づいて、デバイス400についての操作入力に応じたデバイス400の移動量及び移動方向を算出する。また、特定機能214は、X線画像の拡大率に基づいて、デバイス400についての操作入力を補正することにより、デバイス400についての操作入力に応じたデバイス400の移動量を算出する。デバイス位置の特定と、デバイス400の移動量及び移動方向の算出とについては、後述する。
【0031】
決定機能215は、特定機能214により特定されたデバイス400の種類に紐づけられた制御情報に基づいて、デバイス400についての操作入力に応じたX線診断装置100の制御内容を決定する。具体的には、決定機能215は、特定機能214により算出されたデバイス400についての操作入力に応じたデバイス400の移動量に対応する、寝台5及び撮像部3それぞれの移動量を決定する。また、決定機能215は、特定機能214により算出されたデバイス400についての操作入力に応じたデバイス400の移動方向に対応する、寝台5及び撮像部3それぞれの移動方向を決定する。ここで、決定機能215は、寝台5及び撮像部3のいずれか一方だけを移動させる制御内容を決定することもできる。つまり、決定機能215は、特定機能214により算出されたデバイス400の移動量に対応する移動量、かつ、算出されたデバイス400の移動方向で寝台5に対する撮像部3の相対位置を平行移動するX線診断装置100の制御内容を決定する。
【0032】
また、決定機能215は、デバイス400の操作情報が変化した場合、かつ、デバイス400の移動量が変化しなかった場合、デバイス400の移動がプラークや血管壁面などの障害物により妨げられていると判定する。決定機能215は、デバイス400の操作情報が変化した場合、かつ、デバイス400の移動量が変化しなかった場合、デバイス400の移動が障害物により妨げられているとことを警告する警告情報を表示部25によりディスプレイ251に表示するX線診断装置100の制御内容を決定する。ここで、デバイス400の操作情報の変化とは、例えば、デバイス400の繰り出し量及びトルク量の少なくとも一方の変化である。
【0033】
表示制御機能216は、表示部25におけるディスプレイ251への各種画像の表示を制御する。
【0034】
図2は、第1の実施形態に係る記憶回路23に格納される情報の一例を示す図である。記憶回路(メモリ)23は、種々の情報を記憶するHDD(Hard disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置又はこれらの記憶装置を複数組み合わせた回路である。記憶回路23は、例えば、一次保存用のストレージと、長期保存用のストレージとを有する。なお、一次保存用のストレージに逐次的に一次保存される医用画像は、例えば一定の周期で更新される。記憶回路23は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、記憶回路23は、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。さらに、記憶回路23は、複数の記憶装置を含む場合にあっては、その一部がネットワークを介して接続された記憶装置であってもよい。
【0035】
また、記憶回路23は、図2に示すように、例えば、画像データ231及び装置情報233を記憶する。また、記憶回路23は、投影データ(X線減衰像)や処理回路21によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。このプログラムとして、デバイス400の種類ごとにデバイス遠隔制御装置300におけるデバイス400の操作情報に対するX線診断装置100の制御プログラムが記憶され得る。装置情報233は、例えば、デバイス400の種類ごとのデバイス400の操作情報に対応するX線診断装置100の制御内容を示す制御情報、撮影プロトコル、FOV、X線条件、画像パラメータ、撮像部3のアーム位置、寝台5の位置などの情報を含む。
【0036】
表示部25は、医用画像などを表示するディスプレイ251、ディスプレイ251に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ251と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。内部回路は、画像データに被写体情報や投影データ生成条件等の付帯情報を重畳して表示データを生成する。次いで、内部回路は、得られた表示データに対してD/A変換とTVフォーマット変換とを行なう。内部回路は、これらの変換が実行された表示データを、医用画像としてディスプレイ251に表示する。これに加え、表示部25は、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。
【0037】
ディスプレイ251としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが、適宜使用可能である。また、ディスプレイ251は、デスクトップ型でもよいし、処理回路21と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、ディスプレイ251として、1又は2以上のプロジェクタが用いられてもよい。
【0038】
入力インターフェース27は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路21に出力する。例えば、入力インターフェース27は、撮像部3と寝台5とのうち少なくとも一つを動作させるための操作、X線の発生に関するX線条件、画像生成機能212により実行される画像処理に関する条件等を操作者から受け付ける。入力インターフェース27としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、フットスイッチ、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。入力インターフェース27は、例えば、検査室とは異なる操作室に設置されたコンソール装置10に搭載される。
【0039】
なお、本実施形態において、入力インターフェース27は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を有するものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路21へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース27の例に含まれる。なお、入力インターフェース27は、処理回路21と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0040】
デバイス遠隔制御装置300は、被検体Pの体内に挿入されるデバイス400をユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する。デバイス遠隔制御装置300は、X線診断装置100と通信可能に構成される。デバイス遠隔制御装置300は、図1に示すように、動作制御部301及び入力インターフェース303を有する。
【0041】
動作制御部301は、ハードウェア資源として、CPU、GPU等のプロセッサと、ROMやRAM等のメモリとを有する。動作制御部301において実行される各種処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で動作制御部301のROMやデバイス遠隔制御装置300の記憶回路へ記憶されている。動作制御部301は、プログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の動作制御部301は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0042】
また、動作制御部301は、ASICやFPGA、他のCPLD、SPLDなどのプロセッサにより実現されてもよい。
【0043】
動作制御部301は、入力インターフェース303から出力される入力操作の電気信号に応じて、デバイス400の動作を制御する。
【0044】
入力インターフェース303は、操作者からのデバイス400についての入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して動作制御部301及びX線診断装置100に出力する。入力インターフェース303としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、フットスイッチ、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。入力インターフェース303は、例えば、検査室とは異なる操作室に設置されたコンソール装置10とともに設置される。あるいは、入力インターフェース303又はデバイス遠隔制御装置300がコンソール装置10に搭載されていてもよい。
【0045】
なお、本実施形態において、入力インターフェース303は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を有するものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を動作制御部301及びX線診断装置100へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース303の例に含まれる。なお、入力インターフェース303は、動作制御部301及びX線診断装置100と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。ここで、デバイス遠隔制御装置300は、遠隔操作卓の一例である。
【0046】
デバイス400は、血栓などにより血管内に生じた狭窄部位に対する血管内インターベンション治療において被検体Pの体内に挿入される。デバイス400は、デバイス遠隔制御装置300におけるユーザの操作入力に応じて遠隔で制御される。デバイス400は、例えば、ガイドワイヤ、造影剤や血栓溶解剤等の注入を目的としたカテーテル、狭窄部位を径方向に拡張するバルーン付きカテーテル(バルーン)、バルーンによって拡張された血管径を維持するステント、コイル、血管内超音波検査(IVUS)プローブや光干渉断層法(OCT)プローブなどの血管内イメージングデバイス、カテーテルの先端に装着された微小カッターを血管内で移動あるいは回転させて狭窄部位の沈着物(プラーク)を切除するDCA(方向性冠動脈プラーク切除器)やロータブレータなどのデバイスであり得る。なお、本実施形態では、説明の簡単のために、デバイス400としてガイドワイヤ410を例示する。
【0047】
ここで、図面を参照しつつ、デバイス操作情報に応じたX線診断装置100の自動制御の概要について説明する。図3及び図4は、それぞれ第1の実施形態に係るデバイス位置の特定について説明するための図である。図5は、第1の実施形態に係るデバイス操作情報に応じたX線診断装置100の自動制御について説明するための図である。
【0048】
まず、特定機能214は、取得されたX線画像610におけるデバイス位置を、例えばX線画像610上に映ったガイドワイヤ410のマーカ411をパターン認識アルゴリズムによって特定する。また、特定機能214は、X線画像610上の位置から、図3に示すように、視野サイズ171と、X線検出器17のサイズとの比に基づき、X線検出器17上のガイドワイヤ410のマーカ411の位置x2を特定する。
【0049】
また、特定機能214は、図4に示すように、位置x2と、X線管13の焦点及びX線検出器17の受像面の間の距離SIDと、X線管13の焦点及び寝台5の被検体Pの載置面(天板51)の間の距離SODとを用いて、幾何学的に天板51上のガイドワイヤ410のマーカ411の位置x1を特定する。
【0050】
このように、特定機能214は、X線画像610の拡大率に基づいて、デバイス400についての操作入力に応じたマーカ411の位置を補正する。
【0051】
ここで、図5は、デバイス遠隔制御装置300におけるユーザの操作入力に応じて、ガイドワイヤ410のマーカ411の位置が位置411aから位置411bまで移動した状態を例示する。図5に示す例において、特定機能214は、上述したように各位置411a,位置411bを特定し、X線画像610上におけるマーカ411の移動量Δx3から天板51上のマーカ411の天板51の長手方向における移動量Δx1及び移動方向D1を算出する。
【0052】
そして、決定機能215は、図5に示すように、ガイドワイヤ410のマーカ411の天板51上のマーカ411の移動量Δx1及び移動方向D1に寝台5に対する撮像部3の相対位置を平行移動するX線診断装置100の制御内容を決定する。
【0053】
一例として、決定機能215は、天板51の長手方向における移動量Δx1だけ寝台5(天板51)をマーカ411の移動方向D1とは反対方向D2に移動させる制御内容を決定する。
【0054】
一例として、決定機能215は、天板51の長手方向における移動量Δx1だけ撮像部3をマーカ411の移動方向D1に移動させる制御内容を決定する。
【0055】
一例として、決定機能215は、寝台5(天板51)をマーカ411の移動方向D1とは反対方向D2に移動させるとともに、撮像部3をマーカ411の移動方向D1に移動させることにより、寝台5に対する撮像部3の相対位置を天板51の長手方向における移動量Δx1だけマーカ411の移動方向D1に移動させる制御内容を決定する。
【0056】
なお、本実施形態では天板51の長手方向(図1のY方向)におけるデバイス400の移動量及び移動方向に応じた、寝台5に対する撮像部3の相対位置を天板51の長手方向において平行移動するX線診断装置100の自動制御を例示するが、これに限らない。天板51の短手方向(図1のX方向)におけるデバイス400の移動量及び移動方向に応じた、寝台5に対する撮像部3の相対位置を天板51の短手方向(図1のX方向)において平行移動するX線診断装置100の自動制御であってもよい。あるいは、天板51の高さ方向(図1のZ方向)におけるデバイス400の移動量及び移動方向に応じた、寝台5に対する撮像部3の相対位置を天板51の高さ方向(図1のZ方向)において平行移動するX線診断装置100の自動制御であってもよい。
【0057】
次に、図面を参照しつつ、X線診断装置100において実行される、デバイス操作情報に応じた自動制御の流れを説明する。図6は、第1の実施形態に係るデバイス操作情報に応じたX線診断装置100の自動制御の流れの一例を示す図である。
【0058】
まず、動作制御機能211は、被検体Pの撮像を開始する。また、表示制御機能216は、撮像により得られたX線画像をディスプレイ251に逐次表示するライブ画像表示を行う(S101)。
【0059】
次に、特定機能214は、デバイス400の種類を特定する。また、動作制御機能211は、デバイス400の種類がガイドワイヤ410であるか否かを判定する(S102)。
【0060】
デバイス400の種類がガイドワイヤ410であると判定されたとき(S102:Yes)、動作制御機能211は、X線診断装置100を捜査モードに移行させる(S103)。捜査モードにおいて、動作制御機能211は、予め定められた時間が経過するまでの間に、X線画像にデバイス400が含まれるか否か、すなわちX線画像上にデバイス400が存在するか否かを判定する(S104)。
【0061】
X線画像上にデバイス400が存在すると判定されたとき(S104:Yes)、動作制御機能211は、X線診断装置100を自動モードに移行させる(S105)。自動モードにおいて、決定機能215は、高コントラスト化のための撮影条件をX線診断装置100に適用する制御内容を決定する。換言すれば、決定機能215は、デバイス遠隔制御装置300におけるユーザの操作入力に応じてデバイス400がX線画像の撮影範囲に含まれているとき、高コントラスト化のための撮影条件をX線診断装置100に適用する制御内容を決定する。また、動作制御機能211は、決定された撮影条件を自動で適用する(S106)。
【0062】
ここで、高コントラスト化のための撮影条件とは、X線画像上でデバイス400が見やすくなるように予め定められた、X線条件、画質パラメータ、絞り及びFOVの設定を含む。一例として、動作制御機能211は、X線絞り15を絞るとともにFOVを拡大して小焦点の設定とし、また、シャープネスを強調するように画質調整を施す画質パラメータを設定する。
【0063】
その後、特定機能214は、図3図5を参照して上述したようにして、デバイス400についての操作入力に応じたマーカ411の位置を特定する。また、特定機能214は、天板51上のマーカ411の天板51の長手方向における移動量Δx1及び移動方向D1を算出する(S107)。
【0064】
決定機能215は、算出された移動量Δx1及び移動方向D1に基づいて、ガイドワイヤ410のマーカ411の位置が移動しているか否かを判定する(S108)。
【0065】
ガイドワイヤ410のマーカ411の位置が移動していると判定されなかったとき(S108:No)、決定機能215は、デバイス400の操作情報、すなわちデバイス400についてのユーザの操作量に基づく制御量が変化したか否かを判定する(S109)。
【0066】
デバイス400の制御量が変化したと判定されたとき(S109:Yes)、決定機能215は、デバイス400の移動が障害物により妨げられているとことを警告する警告情報をディスプレイ251に表示するX線診断装置100の制御内容を決定する。また、表示制御機能216は、警告情報をディスプレイ251により表示する(S110)。その後、図6の流れはS107の処理へ戻る。
【0067】
また、デバイス400の制御量が変化したと判定されなかったとき(S109:No)、図6の流れはS107の処理へ戻る。
【0068】
一方で、ガイドワイヤ410のマーカ411の位置が移動していると判定されたとき(S108:Yes)、決定機能215は、デバイス400の操作情報、すなわちデバイス400についてのユーザの操作量に基づく制御量で、寝台5に対する撮像部3の相対位置を平行移動するX線診断装置100の制御内容を決定する。また、動作制御機能211は、決定された制御内容を実行し、寝台5に対する撮像部3の相対位置を平行移動する(S111)。
【0069】
その後、動作制御機能211は、自動モードを終了するか否かを判定する(S112)。一例として、動作制御機能211は、予め定められた時間以上デバイス400の制御量が変化しなかった場合や、ユーザにより視野移動のための天板51の移動や撮影設定の変更についての操作入力が行われたとき、自動モードを終了すると判定する。
【0070】
自動モードを終了すると判定されたとき(S112:Yes)、図6の流れは、S103の処理へ戻る。なお、自動モードを終了すると判定されたとき(S112:Yes)、図6の流れは、S113の処理へ進んでもよい。自動モードを終了すると判定されなかったとき(S112:No)、図6の流れは、S107の処理へ戻る。
【0071】
また、デバイス400の種類がガイドワイヤ410であると判定されなかったとき(S102:No)、X線画像上にデバイス400が存在すると判定されなかったとき(S104:No)、動作制御機能211は、X線診断装置100を手動モードに移行させる(S113)。ここで、手動モードとは、寝台5に設けられた操作部9やコンソール装置10に設けられた入力インターフェース27を用いて視野移動のための天板51の移動や撮影設定の変更についての操作入力が行われるモードである。その後、例えばユーザの操作入力に応じて、図6の流れは終了する。
【0072】
以上説明したように、実施形態に係るX線診断装置100においては、ユーザのデバイス400についての操作入力の結果を示す操作情報に応じて制御内容が決定される。
【0073】
この構成によれば、ユーザは、例えばガイドワイヤ410を患部まで輸送するためにデバイス遠隔制御装置300において操作入力を行うだけで、当該操作入力に応じた撮像部3(アーム)及び寝台5の制御により、デバイス400の先端をディスプレイ251に映し続けることができる。また、ユーザは、例えばガイドワイヤ410を患部まで輸送するためにデバイス遠隔制御装置300において操作入力を行うだけで、X線画像上でデバイス400が見やすくなるように予め定められた高コントラスト化のための撮影条件を適用することができる。換言すれば、実施形態に係るX線診断装置100によれば、X線画像を参照してデバイス400を遠隔操作する治療におけるユーザの作業及び被ばくを低減することができる。
【0074】
また、デバイス400の操作情報は、デバイス400の繰り出し量及びトルク量の少なくとも一方を含む。つまり、手動の手技では術者の操作を数値情報で取得することはできない一方、本実施形態に係るX線診断装置100によれば、ユーザのデバイス操作を繰り出し量・トルク量といった数値情報でデバイス遠隔制御装置300から取得できる。これにより、X線診断装置100は、ユーザのデバイス400のための操作入力に応じた制御を実現することができる。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るX線診断装置100、X線診断システム1及び制御方法について説明する。ここでは、主に第1の実施形態との相違点を説明する。
【0076】
図7は、第2の実施形態に係る記憶回路23に格納される情報の一例を示す図である。本実施形態では、デバイス400としてステントを例示し、ステント拡張の作業に係るユーザのデバイス400の操作情報に応じた制御内容の決定について説明する。なお、本実施形態に係る技術は、コイルなど、ステントの他のデバイスに対して適用することもできる。
【0077】
本実施形態に係る記憶回路23は、図7に示すように、条件情報235をさらに記憶する。条件情報235は、デバイス400の操作情報に対応するX線診断装置100の制御内容を示す制御情報の一例であり、撮影プロトコルに紐付けられている。
【0078】
次に、図面を参照しつつ、X線診断装置100において実行される、デバイス操作情報に応じた自動制御の流れを説明する。図8は、第2の実施形態に係るデバイス操作情報に応じたX線診断装置100の自動制御の流れの一例を示す図である。
【0079】
S101の処理の後、動作制御機能211は、特定機能214により特定されたデバイス400の種類がステントであるか否かを判定する(S201)。
【0080】
デバイス400の種類がステントであると判定されなかったとき(S201:No)、図8の流れはS113へ進む。
【0081】
一方で、デバイス400の種類がステントであると判定されたとき(S201:Yes)、動作制御機能211は、X線診断装置100を自動モードに移行させる(S105)。
【0082】
自動モードにおいて、決定機能215は、デバイス遠隔制御装置300におけるユーザの操作入力に応じたステント拡張の作業中であるか否かを判定する(S202)。一例として、特定機能214は、デバイス400の操作情報が変化しているとき、デバイス400による作業中であると特定する。一例として、特定機能214は、デバイス400の操作情報が予め定められた時間以上変化しないとき、デバイス400による作業中ではないと特定する。決定機能215は、特定機能214によりデバイス400による作業中であると特定されたとき、デバイス遠隔制御装置300におけるユーザの操作入力に応じたステント拡張の作業中であると判定する。
【0083】
ステント拡張の作業中であると判定されたとき(S202:Yes)、動作制御機能211は、ユーザのデバイス400の操作情報に応じた制御内容に紐づけられている撮影プロトコルであるか否かを判定する。換言すれば、動作制御機能211は、条件情報235に紐づけられている撮影プロトコルであるか否かを判定する(S203)。図8は、条件情報235に紐づけられている撮影プロトコルとして、カーディアックプロトコルを例示する。
【0084】
撮影プロトコルがカーディアックプロトコルであると判定されなかったとき(S203:No)、決定機能215は、高コントラスト化のための撮影条件をX線診断装置100に適用する制御内容を決定する。また、動作制御機能211は、決定された撮影条件を自動で適用する(S106)。その後、図8の流れはS112へ進む。
【0085】
一方で、撮影プロトコルがカーディアックプロトコルであると判定されたとき(S203:Yes)、決定機能215は、カーディアックプロトコル用の高コントラスト化のための撮影条件をX線診断装置100に適用する制御内容を決定する。また、動作制御機能211は、決定された撮影条件を自動で適用する(S204)。その後、図8の流れはS112へ進む。
【0086】
ここで、カーディアックプロトコル用の高コントラスト化のための撮影条件とは、例えば、カーディアックプロトコルを用いて実施される作業や治療において、X線画像上でデバイス400が見やすくなるように、また、撮影部位(治療対象あるいは作業対象の部位)が見やすくなるようにさらに予め定められた、X線条件、画質パラメータ、絞り及びFOVの設定を含む。一例として、動作制御機能211は、X線絞り15を絞るとともにFOVを拡大して小焦点の設定とし、短パルスの設定とし、また、シャープネスを強調するように画質調整を施す画質パラメータを設定する。短パルスの設定は、カーディアックプロトコルの撮影部位である心臓が拍動することに伴う。
【0087】
自動モードを終了すると判定されたとき(S112:Yes)、図8の流れは、S113の処理へ進む。一方で、自動モードを終了すると判定されなかったとき(S112:No)、図8の流れは、S202の処理へ戻る。
【0088】
ステント拡張の作業中であると判定されなかったとき(S202:No)、決定機能215は、S106,S204の処理で自動変更された撮影条件を元の撮影条件に戻す制御内容を決定する。また、動作制御機能211は、元の撮影条件を自動で適用し、S106,S204の処理で自動変更された撮影条件を元の撮影条件に戻す。その後、図8の流れは、S112の処理へ進む。
【0089】
以上説明したように、実施形態に係るX線診断装置100においては、ユーザのデバイス400についての操作入力の結果を示す操作情報に応じて制御内容が決定される。具体的には、実施形態に係るX線診断装置100は、ユーザがデバイス400についての操作入力を行う作業中であるとき、X線画像上でデバイス400が見やすくなるように予め定められた高コントラスト化のための撮影条件を自動適用する。また、実施形態に係るX線診断装置100は、条件情報235に紐づけられている撮影プロトコルが選択されているとき、当該撮影プロトコルに適した撮影条件を自動適用する。
【0090】
この構成によれば、ユーザは、例えばステント拡張作業のためにデバイス遠隔制御装置300において操作入力を行うだけで、X線画像上でステント(デバイス400)が見やすくなるように予め定められた高コントラスト化のための撮影条件を適用することができる。さらに、当該撮影条件を、撮影プロトコル、すなわちステント拡張作業や治療に適した撮影条件とすることもできる。換言すれば、実施形態に係るX線診断装置100によれば、X線画像を参照してデバイス400を遠隔操作する治療におけるユーザの作業及び被ばくを低減することができる。
【0091】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るX線診断装置100、X線診断システム1及び制御方法について説明する。ここでは、主に第2の実施形態との相違点を説明する。
【0092】
図9は、第3の実施形態に係る充填率の算出について説明するための図である。本実施形態では、デバイス430(デバイス400)としてカテーテル431及びコイル433を例示し、血管壁801の動脈瘤803に対するコイル433の充填作業に係るユーザのデバイス400の操作情報に応じた制御内容の決定について説明する。
【0093】
本実施形態に係る記憶回路23は、コイル433の断面積の情報をデバイス情報としてさらに記憶する。
【0094】
また、本実施形態に係る取得機能213は、記憶回路23に記憶されているコイル433の断面積をさらに取得する。
【0095】
本実施形態に係る特定機能214は、デバイス400の操作情報(繰り出し量)からリアルタイムのコイル433の充填率を算出する。具体的には、特定機能214は、デバイス400の操作情報(繰り出し量)に基づいて、カテーテル431から放出されたコイル433の長さx、すなわち動脈瘤に入ったコイルの長さを算出する。また、特定機能214は、コイル断面積と動脈瘤に入ったコイルの長さとを用いて、動脈瘤に入ったコイルの体積を算出する。また、特定機能214は、X線画像に対するエッジ検出処理などの画像処理に基づく画像認識処理により、X線画像に含まれる動脈瘤803の体積を算出する。なお、X線画像上の動脈瘤803の領域は、ユーザの操作入力に応じて特定されても構わない。そして、特定機能214は、動脈瘤803の体積、コイルの断面積及びコイルの放出長さに基づいて、動脈瘤803の体積に対するコイル433の体積の割合(コイル充填率)を算出する。
【0096】
なお、特定機能214は、X線画像の画像上からコイル433の先端を認識し、動脈瘤803の開口部805の近傍に位置するコイルネックを先端が通過した時からデバイス400の繰り出し量を算出する。この構成によれば、コイル充填率を高精度に得ることができる。
【0097】
本実施形態に係る決定機能215は、デバイス400がコイル433であるとき、コイル433の充填作業の開始前にX線画像においてコイル433を高コントラスト化する撮影条件を適用するX線診断装置100の制御内容を決定する。
【0098】
また、本実施形態に係る決定機能215は、デバイス400がコイル433であるとき、特定機能214により算出された充填率をリアルタイムでディスプレイ251に表示するX線診断装置100の制御内容を決定する。
【0099】
また、本実施形態に係る表示制御機能216は、特定機能214により算出された充填率をディスプレイ251により表示する。
【0100】
次に、図面を参照しつつ、X線診断装置100において実行される、デバイス操作情報に応じた自動制御の流れを説明する。図10は、第3の実施形態に係るデバイス操作情報に応じたX線診断装置の自動制御の流れの一例を示す図である。
【0101】
S101の処理の後、動作制御機能211は、特定機能214により特定されたデバイス400の種類がコイルであるか否かを判定する(S301)。
【0102】
デバイス400の種類がコイルであると判定されなかったとき(S301:No)、図10の流れはS113へ進む。
【0103】
一方で、デバイス400の種類がコイルであると判定されたとき(S301:Yes)、動作制御機能211は、X線診断装置100を自動モードに移行させる(S105)。
【0104】
自動モードにおいて、決定機能215は、充填作業の開始前に、高コントラスト化のための撮影条件をX線診断装置100に適用する制御内容を決定する。また、動作制御機能211は、決定された撮影条件を自動で適用する(S106)。その後、図10の流れはS302へ進む。
【0105】
動作制御機能211は、デバイス遠隔制御装置300におけるユーザの操作入力に応じたコイル充填作業が中断されたか否かを判定する(S302)。一例として、特定機能214は、デバイス400の操作情報が変化しているとき、コイル充填作業が中断されていないと特定する。一例として、特定機能214は、デバイス400の操作情報が予め定められた時間以上変化しないとき、コイル充填作業が中断されたと特定する。決定機能215は、特定機能214によりコイル充填作業が中断されたと特定されたとき、デバイス遠隔制御装置300におけるユーザの操作入力に応じたコイル充填作業が中断されたと判定する。
【0106】
コイル充填作業が中断されたと判定されなかったとき(S302:No)、決定機能215は、特定機能214により算出された充填率をリアルタイムでディスプレイ251に表示するX線診断装置100の制御内容を決定する。具体的には、特定機能214は、デバイス400の操作情報(繰り出し量)からリアルタイムのコイル433の充填率を算出する(S303)。また、表示制御機能216は、コイル433の充填率をディスプレイ251により表示する(S304)。その後、図10の流れはS112の処理へ進む。
【0107】
一方で、コイル充填作業が中断されたと判定されたとき(S302:Yes)、決定機能215は、コイル充填作業が再開されたと判定されるまで、S106の処理で自動変更された撮影条件を元の撮影条件に戻す制御内容を決定する。また、動作制御機能211は、元の撮影条件を自動で適用し、コイル充填作業が再開されたと判定されるまで、S106の処理で自動変更された撮影条件を元の撮影条件に戻す(S305)。その後、図10の流れは、S112の処理へ進む。
【0108】
自動モードを終了すると判定されたとき(S112:Yes)、図10の流れは、S113の処理へ進む。一方で、自動モードを終了すると判定されなかったとき(S112:No)、図10の流れは、S302の処理へ戻る。
【0109】
以上説明したように、実施形態に係るX線診断装置100においては、ユーザのデバイス400についての操作入力の結果を示す操作情報に応じて制御内容が決定される。具体的には、実施形態に係るX線診断装置100は、ユーザがコイル433の充填作業を開始する前に、X線画像においてコイル433を高コントラスト化する撮影条件を自動適用する。また、実施形態に係るX線診断装置100は、ユーザがコイル433の充填作業を開始した後、コイル充填率を算出し、算出された充填率をリアルタイムでディスプレイ251に表示する。
【0110】
この構成によれば、ユーザは、例えば動脈瘤803に対するコイル433の充填作業のためにデバイス遠隔制御装置300において操作入力を行うだけで、X線画像上でデバイス400が見やすくなるように予め定められた高コントラスト化のための撮影条件を適用することができる。さらに、充填作業中、すなわちコイル放出途中であっても、リアルタイムのコイル充填率を容易に確認することができる。換言すれば、実施形態に係るX線診断装置100によれば、X線画像を参照してデバイス400を遠隔操作する治療におけるユーザの作業及び被ばくを低減することができる。
【0111】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るX線診断装置100、X線診断システム1及び制御方法について説明する。ここでは、主に第2の実施形態との相違点を説明する。
【0112】
本実施形態では、遠隔制御するデバイス400に限らず、被検体Pの状態を計測する心電計などの外部機器さらに用いる場合を例示する。
【0113】
図11は、第4の実施形態に係る記憶回路23に格納される情報の一例を示す図である。本実施形態では、デバイス400としてステントを例示し、ステント拡張の作業に係るユーザのデバイス400の操作情報及び被検体Pの状態に関する計測値に応じた制御内容の決定について説明する。
【0114】
本実施形態に係る記憶回路23は、図11に示すように、外部機器情報237をさらに記憶する。外部機器情報237は、被検体Pの状態を示す計測値に対応する外部機器の種類ごとのX線診断装置100の制御内容を示す制御情報である。
【0115】
外部機器は、被検体Pの状態を計測し、計測値を出力可能に構成されている。外部機器としては、心電計、循環動態測定装置及びパルスオキシメータなどの機器が適宜利用可能である。
【0116】
本実施形態に係る取得機能213は、外部機器から被検体Pの状態に関する計測値を取得する。また、決定機能215は、取得機能213により外部機器から取得された被検体Pについての計測値に応じた撮影条件を適用するX線診断装置100の制御内容を決定する。
【0117】
以下、説明の簡単のために、外部機器として心電計が用いられる場合を例示する。
【0118】
次に、図面を参照しつつ、X線診断装置100において実行される、デバイス操作情報に応じた自動制御の流れを説明する。図12は、第4の実施形態に係るデバイス操作情報に応じたX線診断装置の自動制御の流れの一例を示す図である。
【0119】
撮影プロトコルがカーディアックプロトコルであると判定されたとき(S203:Yes)、取得機能213は、心電計から被検体Pの状態に関する計測値を取得する。また、動作制御機能211は、取得機能213により心電計から取得された被検体Pについての心拍数が予め定められたしきい値より大きい高心拍数であるか否かを判定する(S401)。
【0120】
高心拍数であると判定されなかったとき(S401:No)、図12の流れはS204の処理へ進む。
【0121】
一方で、高心拍数であると判定されたとき(S401:Yes)、決定機能215は、カーディアックプロトコル用、かつ、高心拍数用の高コントラスト化のための撮影条件をX線診断装置100に適用する制御内容を決定する。また、動作制御機能211は、決定された撮影条件を自動で適用する(S402)。その後、図12の流れはS112の処理へ進む。
【0122】
ここで、カーディアックプロトコル用、かつ、高心拍数用の撮影条件とは、例えば、上述のカーディアックプロトコル用の撮影条件において、撮影部位の心臓が拍動することに伴い短パルスの設定としていたパルスレートを、高心拍数であることに応じてさらに短くした超短パルスの設定とする撮影条件である。
【0123】
なお、撮影条件におけるパルスレートは、予め定められた値であってもよいし、心拍数に応じて決定された値であっても構わない。
【0124】
以上説明したように、実施形態に係るX線診断装置100においては、ユーザのデバイス400についての操作入力の結果を示す操作情報に加えて、心電計などの外部機器による被検体Pの状態の計測値に応じて制御内容が決定される。具体的には、実施形態に係るX線診断装置100は、被検体Pが高心拍数の状態であると判定されたとき、超短パルスの設定とした撮影条件を自動適用する。
【0125】
この構成によれば、ユーザは、例えばステント拡張作業のためにデバイス遠隔制御装置300において操作入力を行うだけで、心拍数に合わせたパルスレートの設定が可能となる。これによって、急変時であっても自動で撮影条件が変更されるため、ブレなく透視を行うことができる。換言すれば、実施形態に係るX線診断装置100によれば、X線画像を参照してデバイス400を遠隔操作する治療におけるユーザの作業及び被ばくを低減することができる。
【0126】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係るX線診断装置100、X線診断システム1及び制御方法について説明する。ここでは、主に第1の実施形態との相違点を説明する。
【0127】
図13は、実施形態に係るX線診断システム1の構成の別の一例を示す図である。実施形態に係るX線診断システム1は、図13に示すように、X線診断装置100、デバイス遠隔制御装置300、デバイス400及び情報処理装置500を含む。
【0128】
情報処理装置500は、インターネットや院内LANなどのネットワーク700を介して、X線診断装置100に通信可能に接続されている。なお、各装置の間の接続は、図13の例に限らない。例えば、情報処理装置500は、ネットワーク700を介して、X線診断装置100及びデバイス遠隔制御装置300それぞれに接続されていてもよい。
【0129】
情報処理装置500は、図13に示すように、処理回路501及び記憶回路503を有する。
【0130】
処理回路501は、情報処理装置500全体の動作を制御する。例えば、処理回路501は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU等のプロセッサと、ROMやRAM等のメモリとを有する。
【0131】
処理回路501において実行される各種処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路503へ記憶されている。処理回路501は、記憶回路503からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0132】
具体的には、処理回路501は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、取得機能213、特定機能214、決定機能215及び出力機能217を実行する。ここで、出力機能217を実現する処理回路21は、出力部の一例である。
【0133】
なお、取得機能213、特定機能214、決定機能215及び出力機能217は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより取得機能213、特定機能214、決定機能215及び出力機能217を実現するものとしても構わない。
【0134】
また、処理回路501は、ASICやFPGA、他のCPLD、SPLDなどのプロセッサにより実現されてもよい。
【0135】
情報処理装置500の取得機能213は、X線診断装置100からX線画像を取得する。また、取得機能213は、デバイス遠隔制御装置300からデバイス400の操作情報を取得する。なお、デバイス400の操作情報は、X線診断装置100を介して取得されてもよい。
【0136】
情報処理装置500の出力機能217は、決定機能215によりデバイス操作情報に応じて決定されたX線診断装置100の制御内容を出力する。
【0137】
X線診断装置100の取得機能213は、情報処理装置500から出力されたX線診断装置100の制御内容を取得する。X線診断装置100の動作制御機能211及び表示制御機能216は、それぞれ情報処理装置500から出力されたX線診断装置100の制御内容に従い各部の動作を制御する。
【0138】
なお、情報処理装置500がネットワーク700を介して、X線診断装置100及びデバイス遠隔制御装置300それぞれに接続されている場合には、X線診断装置100の取得機能213は、デバイス遠隔制御装置300から操作情報を取得しなくてもよい。
【0139】
また、本実施形態に係るX線診断装置100において、特定機能214及び決定機能215は、設けられていなくてもよい。
【0140】
以上説明したように、実施形態に係るX線診断システム1は、X線診断装置100の外部に設けられた情報処理装置500において、ユーザのデバイス400についての操作入力の結果を示す操作情報に応じてX線診断装置100の制御内容が決定される。
【0141】
この構成であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態に係るX線診断システム1によれば、X線診断装置100における計算負荷を低減することができる。また、実施形態に係るX線診断装置100を含む複数の医用モダリティの間において、情報処理装置500を共有することができる。これにより、計算資源の有効活用を図ることができる。
【0142】
なお、上述の各実施形態に係る技術は、適宜組合せ可能である。例えば、第1の実施形態に係るS102の処理(図6参照)と、第2の実施形態又は第4の実施形態に係るS201の処理(図8又は図12参照)と、第3の実施形態に係るS301の処理(図10参照)とを分岐により接続することができる。また、例えば、第2~第4の実施形態に係るX線診断装置100における各処理を、第5の実施形態に係るX線診断システム1と同様に、外部の情報処理装置500により実現することができる。
【0143】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線画像を参照してデバイスを遠隔操作する治療における操作者の作業及び被ばくを低減することができる。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0145】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0146】
(付記1)
被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と通信可能に構成され、寝台に載置された前記被検体のX線画像を得るX線診断装置であって、
前記デバイスの操作情報に対応する前記X線診断装置の制御内容を示す制御情報を前記デバイスの種類に紐づけて記憶する記憶部と、
前記デバイスの種類を特定する特定部と、
前記ユーザの前記デバイスについての操作入力の結果を示す前記操作情報を前記遠隔操作卓から取得する取得部と、
特定された前記デバイスの種類に紐づけられた制御情報に基づいて、前記デバイスについての操作入力に応じた前記X線診断装置の制御内容を決定する決定部と、
決定された前記制御内容を実行する制御部と
を備えるX線診断装置。
【0147】
(付記2)
(A)被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と通信可能に構成されたX線診断装置であって、寝台に載置された前記被検体のX線画像を得る前記X線診断装置に搭載される情報処理装置、
(B)被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と通信可能に構成される情報処理装置であって、寝台に載置された前記被検体のX線画像を得るX線診断装置に搭載される前記情報処理装置、
(C)被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と通信可能に構成されたX線診断装置であって、寝台に載置された前記被検体のX線画像を得る前記X線診断装置と通信可能に構成される情報処理装置、又は、
(D)被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と、寝台に載置された前記被検体のX線画像を得るX線診断装置とのそれぞれと通信可能に構成される情報処理装置であって、
前記デバイスの操作情報に対応する前記X線診断装置の制御内容を示す制御情報を前記デバイスの種類に紐づけて記憶する記憶部と、
前記デバイスの種類を特定する特定部と、
前記ユーザの前記デバイスについての操作入力の結果を示す前記操作情報を取得する取得部と、
特定された前記デバイスの種類に紐づけられた制御情報に基づいて、前記デバイスについての操作入力に応じた前記X線診断装置の制御内容を決定する決定部と、
決定された前記制御内容を前記X線診断装置に実行させる制御部と
を備える情報処理装置。
【0148】
(付記3)
前記デバイスの前記操作情報は、前記デバイスの繰り出し量及びトルク量の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0149】
(付記4)
前記取得部は、前記被検体のX線画像を取得してもよい。
前記特定部は、取得された前記X線画像における前記デバイスの位置を特定し、特定された前記デバイスの位置に基づいて前記デバイスについての操作入力に応じた前記デバイスの移動量及び移動方向を算出してもよい。
前記決定部は、算出された前記デバイスの移動量及び移動方向にそれぞれ対応する移動量及び移動方向で、前記寝台に対する前記X線画像を撮像する撮像部の相対位置を平行移動させる前記X線診断装置の制御内容を決定してもよい。
前記制御部は、決定された前記制御内容で前記寝台及び前記撮像部の少なくとも一方を移動させてもよい。
【0150】
(付記5)
前記特定部は、前記X線画像の拡大率に基づいて前記デバイスについての操作入力を補正することにより、前記デバイスについての操作入力に応じた前記デバイスの移動量を算出してもよい。
【0151】
(付記6)
前記決定部は、前記デバイスの操作情報が変化した場合、かつ、前記デバイスの移動量が変化しなかった場合、前記デバイスの移動が障害物により妨げられていることを警告する警告情報を表示部に表示する前記X線診断装置の制御内容を決定してもよい。
【0152】
(付記7)
前記デバイスの操作情報の変化は、前記デバイスの繰り出し量及びトルク量の少なくとも一方の変化であってもよい。
【0153】
(付記8)
前記特定部は、前記デバイスの操作情報が変化しているとき前記デバイスによる作業中であると特定してもよい。
前記決定部は、前記デバイスによる作業中であると特定されたとき、前記X線画像において前記デバイスを高コントラスト化する撮影条件を適用する前記X線診断装置の制御内容を決定してもよい。
【0154】
(付記9)
前記取得部は、前記X線画像を得る撮影プロトコルを示す情報を取得してもよい。
前記決定部は、前記撮影プロトコルに応じた撮影条件を適用する前記X線診断装置の制御内容を決定してもよい。
【0155】
(付記10)
前記デバイスは、コイルであってもよい。
前記特定部は、前記コイルの繰り出し量に基づいて前記コイルの動脈瘤における充填率を算出してもよい。
前記決定部は、算出された前記充填率を表示部に表示する前記X線診断装置の制御内容を決定してもよい。
【0156】
(付記11)
前記決定部は、前記デバイスがコイルであるとき、前記コイルの充填作業の開始前に前記X線画像において前記デバイスを高コントラスト化する撮影条件を適用する前記X線診断装置の制御内容を決定してもよい。
【0157】
(付記12)
前記取得部は、前記被検体の状態を計測する外部機器から計測値を取得してもよい。
前記決定部は、取得された前記被検体についての計測値に応じた撮影条件を適用する前記X線診断装置の制御内容を決定してもよい。
【0158】
(付記13)
前記外部機器は、心電計、循環動態測定装置及びパルスオキシメータのうちのいずれかであってもよい。
【0159】
(付記14)
前記取得部は、前記遠隔操作卓から前記デバイスの種類を示すデバイス情報を取得してもよい。
前記特定部は、取得されたデバイス情報に基づいて前記デバイスの種類を特定してもよい。
【0160】
(付記15)
前記取得部は、前記被検体のX線画像を取得してもよい。
前記特定部は、取得されたX線画像に基づいて前記デバイスの種類を特定してもよい。
【0161】
(付記16)
前記情報処理装置を搭載するX線診断装置。
【0162】
(付記17)
前記情報処理装置を搭載する前記X線診断装置と、前記遠隔制御卓とを含むX線診断システム。
【0163】
(付記18)
前記X線診断装置と、前記情報処理装置と、前記遠隔制御卓とを含むX線診断システム。
【0164】
(付記19)
被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と、
寝台に載置された前記被検体のX線画像を得るX線診断装置と、
前記遠隔操作卓及び前記X線診断装置と通信可能に構成される情報処理装置と
を含むX線診断システムであって、
前記情報処理装置は、
前記デバイスの操作情報に対応する前記X線診断装置の制御内容を示す制御情報を前記デバイスの種類に紐づけて記憶する記憶部と、
前記デバイスの種類を特定する特定部と、
前記ユーザの前記デバイスについての操作入力の結果を示す前記操作情報を前記遠隔操作卓から取得する取得部と、
特定された前記デバイスの種類に紐づけられた制御情報に基づいて、前記デバイスについての操作入力に応じた前記X線診断装置の制御内容を決定する決定部と、
決定された前記X線診断装置の制御内容を出力する出力部と
を有し、
前記X線診断装置は、
前記情報処理装置から出力された前記X線診断装置の制御内容を取得する取得部と、
取得された前記X線診断装置の制御内容を実行する制御部と
を有する、
X線診断システム。
【0165】
(付記20)
被検体の体内に挿入されるデバイスをユーザの操作入力に応じて遠隔で制御する遠隔操作卓と通信可能に構成され、寝台に載置された前記被検体のX線画像を得るX線診断装置の制御方法であって、
前記デバイスの操作情報に対応する前記X線診断装置の制御内容を示す制御情報を前記デバイスの種類に紐づけて記憶することと、
前記デバイスの種類を特定することと、
前記ユーザの前記デバイスについての操作入力の結果を示す前記操作情報を前記遠隔操作卓から取得することと、
特定された前記デバイスの種類に紐づけられた制御情報に基づいて、前記デバイスについての操作入力に応じた前記X線診断装置の制御内容を決定することと、
決定された前記制御内容を実行することと
を含む制御方法。
【符号の説明】
【0166】
1 X線診断システム
3 撮像部
5 寝台
7 駆動部
9 操作部
10 コンソール装置
11 X線高電圧装置
13 X線管
15 X線絞り
17 X線検出器
19 保持装置
21 処理回路
23 記憶回路
25 表示部
27 入力インターフェース
71 撮像系移動駆動部
73 天板移動駆動部
100 X線診断装置
211 動作制御機能
212 画像生成機能
213 取得機能
214 特定機能
215 決定機能
216 表示制御機能
217 出力機能
231 画像データ
233 装置情報
235 条件情報
237 外部機器情報
251 ディスプレイ
300 デバイス遠隔制御装置
301 動作制御部
303 入力インターフェース
400 デバイス
500 情報処理装置
501 処理回路
503 記憶回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13