(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162968
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】熟成肉の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20231101BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23L13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073711
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】308008214
【氏名又は名称】日本ピュアフード株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522171176
【氏名又は名称】株式会社TNI
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】小林 一人
(72)【発明者】
【氏名】市川 友美
(72)【発明者】
【氏名】野村 透美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 慶太郎
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC03
4B042AD39
4B042AH01
4B042AP02
4B042AP06
4B042AP17
(57)【要約】
【課題】比較的短時間でうま味を増強させることができる、食肉の熟成方法を提供すること。
【解決手段】食肉を65℃~95℃の範囲で乾燥加熱する工程を含む、熟成肉の製造方法、および熟成肉。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉を65℃~95℃の範囲で乾燥加熱する工程を含む、熟成肉の製造方法。
【請求項2】
食肉を35℃~65℃の範囲で真空加熱する工程を、前記乾燥加熱工程の前または後に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記真空加熱工程を前記乾燥加熱工程の後に行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥加熱の時間が1~8時間である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記真空加熱の時間が1~8時間である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法によって製造された熟成肉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熟成肉の製造方法および当該方法により製造された熟成肉に関する。
【背景技術】
【0002】
牛肉等の食肉は、風味やうま味を豊かにし、肉を軟らかくすること等を目的として、熟成が行われる。食肉の熟成法は、ウェットエイジングとドライエイジングの2つに大別される。
ウェットエイジングは、食肉をある程度分割して肉塊にした後に、真空包装またはガス置換包装をして、低温下で貯蔵する方法である。熟成中は空気との接触が遮断されるため、乾燥や微生物汚染を抑えることができる。例えば、真空包装した精肉を、60℃~65℃の温度で加熱し、肉の中心温度が60℃を超えてからさらに1時間程度加熱すること、加熱終了後、肉が凍結しないように急速冷却し、肉の中心温度を4℃以下とすることを含む精肉の保存処理方法(特許文献1)が知られている。しかし、下記のドライエイジング法に比べ、嗜好性が劣る。
ドライエイジング法は、枝肉をそのまま、または分割したものを空気に接触させた状態で行う熟成方法である。この方法は乾燥によりうま味成分等が濃縮されるなど、嗜好性を大きく向上させることが期待できる。しかし、表面の乾燥部分やカビなどの微生物が増殖した部分を除去(トリミング)する必要があるため、ウェットエイジング法に比べると、高コストの熟成法である。
【0003】
両者の利点を生かした食肉の熟成法として、ウェットエイジングの後にドライエイジングを行うウェット&ドライエイジング法による食肉、特に豚肉の熟成法も報告されている(特許文献2)。
【0004】
しかし、上記の方法はいずれも、熟成に長期間を要するため、保管場所の確保や管理が困難であるとの問題点がある。
【0005】
比較的短時間でうま味成分を増加させる方法として、食肉のタンパク質を80℃で1分程度凝固させてドリップの流出を防いだ後、食肉に含まれる内在酵素の活性温度(50℃)で5~30分程度保持し、その後、内在酵素の活性温度よりも高温(200~230℃)で加熱する、食肉の調理方法も報告されている(特許文献3)。
【0006】
また、グルタミン酸ナトリウム等の調味料を使用することなく、加工肉食品のうま味を増加させる製造方法も報告されている(特許文献4)。具体的には、原料肉を塩せき後、乾燥・燻煙し、中温(30~45℃)で加熱する。しかし、当該塩せき処理は、低温(10℃以下)熟成を目的としたものであり、1~14日程度の長期間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-78865号公報
【特許文献2】特開2018-134064号公報
【特許文献3】特開2009-225701号公報
【特許文献4】特開平7-87934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、比較的短時間でうま味を増強させることができる、食肉の熟成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、食肉を65℃~95℃で乾燥加熱することにより、うま味が増強した熟成肉を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)食肉を65℃~95℃の範囲で乾燥加熱する工程を含む、熟成肉の製造方法。
(2)食肉を35℃~65℃の範囲で真空加熱する工程を、前記乾燥加熱工程の前または後に行う、(1)に記載の方法。
(3)前記真空加熱工程を前記乾燥加熱工程の後に行う、(2)に記載の方法。
(4)前記乾燥加熱の時間が1~8時間である、(1)~(3)のいずれか1に記載の方法。
(5)前記真空加熱の時間が1~8時間である、(2)または(3)に記載の方法。
(6)(1)~(5)のいずれか1に記載の方法によって製造された熟成肉。
【発明の効果】
【0011】
本発明の乾燥加熱工程を含む製造方法により、うま味が増強した熟成肉を製造することができる。また、当該乾燥加熱工程に真空加熱工程を組み合わせることにより、うま味の増強に加えて歩留りが高い熟成肉を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例2-1(65℃、75℃で乾燥加熱の後に、45℃で真空加熱)に従って製造した熟成肉の味覚の評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明の熟成肉の製造方法は、食肉を一定の温度で乾燥加熱をする工程を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明書において「食肉」とは、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、馬肉、鴨肉等が挙げられるが、牛肉または豚肉が好ましく、牛肉がより好ましい。食肉の形状としては、特に限定されないが、枝肉状、枝肉をカットした塊状、スライス状、ミンチ状のものを使用することができる。
【0016】
本明細書において「熟成」とは、後述するように、熟成前の生原料と比較して、熟成後のアミノ態窒素量が110%~190%増加している状態を言う。したがって、乾燥加熱工程後のアミノ態窒素量が110%~190%増加した時に、「熟成」が終了した、と判断される。
【0017】
本明細書において「乾燥加熱」とは、食肉を空気に接触させた状態で、加熱することを指す。乾燥加熱は、例えば、温度、相対湿度、気流速度、微生物、熟成期間等を管理しながら行われる。
【0018】
乾燥加熱の温度は、65℃~95℃である。うま味の観点からは、75℃~95℃が好ましく、85℃~95℃がより好ましい。この温度で乾燥加熱を行うと、短時間でうま味を増強させることができる。歩留りの観点からは65℃~85℃が好ましく、65℃~75℃がより好ましい。
【0019】
乾燥加熱の相対湿度は、50%以上、60%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、90%以下、85%以下、80%以下であり、好ましくは79%以下、78%以下、77%以下、76%以下、例えば、50%~90%、60%~85%、好ましくは70%~80%、または75%である。
【0020】
乾燥加熱の時間は、1時間~8時間が好ましく、1時間~6時間がより好ましい。うま味の観点からは、4時間~8時間が好ましく、4時間~6時間がより好ましい。歩留りの観点からは、1時間~4時間がより好ましい。
【0021】
食肉のうま味は、食肉由来の酵素によるタンパク質の分解によって生じる遊離アミノ酸や、その他のうま味成分の総量によって判断することができる。
遊離アミノ酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、グリシン、ヒスチジン、トレオニン、アラニン、プロリン、システイン、チロシン、バリン、メチオニン、リジン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、トリプトファン、アルギニン等が挙げられる、
アミノ酸量は、アミノ態窒素量(試料中に、-NH2として存在する窒素の量)によって測定する。アミノ態窒素量が高い程、うま味が強いことを示す。
その他のうま味成分としては、イノシン酸、グアニル酸等の核酸等が挙げられる。
代表的な動物性のうま味成分であるグルタミン酸、イノシン酸を指標とするのが好ましい。
【0022】
通常、核酸を分解する酵素は40℃以下ではほとんど失活しないため、低温熟成の場合、核酸は熟成の期間が長くなると共に徐々に分解される。50℃付近では徐々に失活し、70℃以上では5分で失活する。本発明の製造方法は、食肉を、65℃~95℃で、好ましくは65℃~95℃で短時間で加熱するため、核酸の分解が起こり難く、従来の熟成法と比べて核酸の残存率が高い。具体的には、本発明の製造方法では、核酸は熟成工程の終了後に70%以上残存する。熟成の条件を変更することにより、80%以上残存することも可能であり、90%以上残存することも可能である。
【0023】
アミノ酸量および核酸量の測定は、熟成終了後の食肉の任意の部位1箇所について行ってもよいし、測定精度を高めるため、2箇所以上、例えば3箇所、4箇所、または5箇所について行ってもよい。
【0024】
「歩留り」とは、熟成前の食肉の重量に対する、熟成後の食肉の重量の割合((熟成後の重量/熟成前の重量)×100(%))を指す。歩留りは高いほうが好ましく、肉質の観点から65%以上が好ましい。
【0025】
乾燥加熱の追加の利点として、乾燥加熱を行うと、食肉の表面でメイラード反応が起こり、焼成風味を付与し、畜肉臭さを低減させることができる。また、水分の蒸発によってうま味成分を濃縮することもできる。
【0026】
上記の乾燥加熱処理に、さらに35℃~65℃の真空加熱(食肉を真空包装し、空気と接触しない状態での加熱)処理を組み合わせると、さらに歩留りを高く保つことができ、肉質がしっとりとした良好なものとなる。真空加熱処理の温度は、うま味および歩留りの観点から45℃~55℃が好ましい。真空加熱処理の時間は、1時間~8時間が好ましく、1時間~6時間がより好ましい。うま味の観点からは、4時間~8時間が好ましく、4時間~6時間がより好ましい。
【0027】
乾燥加熱処理と真空加熱処理とを組み合わせる場合、いずれの処理を先に行ってもよい。乾燥加熱処理を行った後に真空加熱処理を行ってもよいし、真空加熱処理を行った後に乾燥加熱処理を行ってもよい。うま味および歩留りの観点から、乾燥加熱処理を行った後に真空加熱処理を行うことが好ましい。
乾燥加熱処理と真空加熱処理とを組み合わせる場合、熟成時間は、例えば、合計で2時間~8時間である。
【0028】
真空包装の方法としては、例えば、ガスバリア性の高い包装材で食肉を真空パックすればよい。包装材の材質や厚みは特に限定されないが、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等の単層フィルムから構成されているものや、積層フィルムで構成されているものを挙げることができる。
【0029】
乾燥加熱処理の前にまたは真空加熱処理の前に「味付け」処理を行ってもよい。本明細書において「味付け」とは、食肉を、食塩、香辛料、砂糖、調味料等を含む液体に浸漬、または、インジェクション、タンブリング、ミキサーなどを用いて、最大で2時間食肉に味付けを施す処理を指す。したがって、本発明における「味付け」には、熟成目的で、食肉を低温(例えば、10℃以下)で長時間(例えば、1日以上)漬け込む処理(塩せき処理)は含まれない。
【0030】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例0031】
参考例1 真空加熱による歩留り、アミノ酸量および核酸量の評価
[方法]
原料:ストリップロイン
手順:
1 脂、筋の除去
2 原料カット
150g~300gの重さになるように原料を切り分けた。厚みは2cm~5cm、縦のサイズは5cm~10cm、横のサイズは10cm~20cmであった。
3 真空包装(原料を包装材に入れ、真空包装機で真空度99%の条件で包装)
4 本加熱(35℃、45℃、55℃、65℃)
【0032】
[結果]
アミノ酸量は35℃~55℃の範囲で経時的な増加が確認された。一方、65℃になるとアミノ酸量の増加はみられなかった。
核酸量は、35℃~65℃では70%以上の残存率を示し、分解量が少ないことがわかった。
したがって、35℃~55℃で加熱をすることにより、短い加熱時間でも、アミノ酸量が増加し、核酸量も比較的多く残存しているため、核酸由来のうま味も付与できることが分かった。
【0033】
【0034】
しかし、真空加熱においては肉汁の流出などが起こり易く、肉汁と一緒にうま味成分も流出し、さらに、低温での長時間加熱は畜肉臭さも残りやすいことが分かった。
【0035】
実施例1 乾燥加熱による歩留り、アミノ酸量および核酸量の評価
[方法]
原料:ストリップロイン
手順:
1 脂、筋の除去
2 原料カット
150g~300gの重さになるように原料を切り分けた。厚みは2cm~5cm、縦のサイズは5cm~10cm、横のサイズは10cm~20cmであった。
3 本加熱(ドライオーブン(EO-300V アズワン社製)の庫内温度:55℃、65℃、75℃、85℃、95℃)
分析:
1 歩留りの測定
熟成前と熟成後の食肉の重量を秤り、歩留りを計算した。
歩留り(%)=(熟成後の重量/熟成前の重量)×100
2 うま味成分
(1)試料の調製
各条件で熟成後の食肉に、25倍量の蒸留水を入れて粉砕し、均一化した。マイクロ冷却遠心機3700で5000rpm5分の条件で遠心分離後、ろ紙でろ過し、得られたろ液を分析試料Iとした。
【0036】
(2)アミノ態窒素量(アミノ酸量)の測定
分析試料Iをトリクロロ酢酸(TCA)沈殿させ、タンパク質を除去した。ニンヒドリン反応試薬を添加し、沸騰浴中で30分反応後、氷冷した。570nmの吸光度を測定した(紫外可視分光光度計UVmini-1240(島津製作所製))。
アミノ態窒素量は以下の式により算出した。コントロールとして、同じ重量の熟成前の生原料を使用した。
【0037】
【0038】
(3)核酸量の測定
分析試料Iの、250nmの吸光度を測定した(A1)。分析試料IにECTEOLA-セルロースを添加・撹拌して、核酸をセルロースに吸着させた。ろ紙でろ過し、得られたろ液の、250nmの吸光度を測定した(A2)。「A1」と「A2」との差(「A1」-「A2」)を算出した。
核酸量は以下の式により算出した。
【0039】
【0040】
[結果]
アミノ酸量は、65℃~95℃の乾燥加熱処理において、真空加熱処理(参考例1)よりも高い値となった。核酸量もすべての温度範囲で70%以上の残存率を示した。一方、55℃以下の温度範囲では、アミノ量の増加がほとんど見られず、参考例1の真空加熱処理と同程度の増加であった。65℃以上の温度帯で乾燥加熱した場合、アミノ酸量が増加した大きな要因としては、加熱による遊離アミノ酸の増加と、水分の蒸発による成分の濃縮が考えられる。参考例1の真空加熱処理ではうま味成分が肉汁として流出してしまっていたが、乾燥加熱では先に加熱によって表面が変性するため肉汁の流出を抑えつつ水分を蒸発させることができ、効率的にうま味成分を増加させることができた。また、参考例1と比較して畜肉臭さは低減していた。
【0041】
【0042】
実施例2-1 真空加熱と乾燥加熱との組み合わせによる歩留り、アミノ酸量および核酸量の評価
乾燥加熱処理を行った後に真空加熱処理を行った。
[方法]
原料:ストリップロイン
手順:
1 脂、筋の除去
2 原料カット
150g~300gの重さになるように原料を切り分けた。厚みは2cm~5cm、縦のサイズは5cm~10cm、横のサイズは10cm~20cmであった。
3 乾燥加熱(ドライオーブン(EO-300V アズワン社製)の庫内温度:65℃、75℃、85℃)
4 真空加熱(45℃、55℃)
5 破袋、肉汁回収
【0043】
[結果]
参考例1の真空加熱処理の結果と比較すると、全ての試験においてアミノ酸量の増加が確認できた。また、核酸量も70%以上の高い残存率を保てることが分かった。さらに、また、実施例1の乾燥加熱処理よりもさらに高い歩留りを保つことができた。参考例1と比較して畜肉臭さは低減していた。
【0044】
【0045】
実施例2-2 真空加熱と乾燥加熱との組み合わせによる歩留り、アミノ酸量および核酸量の評価
真空加熱処理を行った後に乾燥加熱処理を行った。
[方法]
原料:ストリップロイン
手順:
1 脂、筋の除去
2 原料カット
150g~300gの重さになるように原料を切り分けた。厚みは2cm~5cm、縦のサイズは5cm~10cm、横のサイズは10cm~20cmであった。
3 真空加熱(45℃、55℃)
4 破袋、肉汁回収
5 乾燥加熱(ドライオーブン(EO-300V アズワン社製)の庫内温度:65℃、75℃、85℃)
【0046】
[結果]
参考例1の真空加熱処理の結果と比較すると、全ての試験においてアミノ酸量の増加が確認できた。また、核酸量も70%以上の高い残存率を保てることが分かった。また、実施例1の乾燥加熱処理よりもさらに高い歩留りを保つことができた。参考例1と比較して畜肉臭さは低減していた。
【0047】
【0048】
実施例3 味覚センサーによる味覚の評価
(1)熟成肉の調製
実施例1、2-1及び2-2に記載の方法に従って熟成肉を調製した。
(2)味覚センサーによる分析
下記表に記載の各条件で熟成後の食肉を40℃に加温し、4倍量の40℃蒸留水を加えて粉砕し、均一化した。遠心分離し、得られた水層を分析試料IIとした。同様に、80倍量の蒸留水で調製したものを分析試料IIIとした。
分析試料IIを用いて苦味雑味、うま味コクを、分析試料IIIを用いてうま味を、味覚センサー(味認識装置SA402B(インテリジェントセンサーテクノロジー社製))により分析した。
【0049】
[結果]
実施例1(乾燥加熱)に従って製造した熟成肉の味覚の評価、実施例2-1(乾燥加熱の後に真空加熱)に従って製造した熟成肉の味覚の評価、実施例2-2(真空加熱の後に乾燥加熱)に従って製造した熟成肉の味覚の評価を、下記表に示す。味覚の評価は、各コントロールC1~C5(コントロールは同じ重量の熟成前の生原料を使用)での味覚を0としたときの相対値で示す。
なお、1.0以上の相対値は一般の人でも識別できる味の差であり、0.5以上の相対値は高感度な人が識別できる味の差であるとされている。
また、実施例2-1(65℃、75℃で乾燥加熱の後に、45℃で真空加熱)に従って製造した熟成肉の味覚の評価を
図1に図示する。
【0050】
乾燥加熱処理(75℃、6時間)では、真空加熱処理(55℃、6時間)と比べて、一般の人でも認識できるレベルでうま味コクが上昇していた。また、うま味も上昇していた。
真空加熱と乾燥加熱との組み合わせは、真空加熱単独、または乾燥加熱単独の場合と比べて、うま味の増加およびうま味コクの増加がみられた。
【0051】