(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162975
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】卵様食品の製造方法、及び卵様食品におけるざらつき感低減方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20231101BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20231101BHJP
【FI】
A23J3/00 508
A23L15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073725
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塚副 成
(72)【発明者】
【氏名】葛原 大士
(72)【発明者】
【氏名】田口 太郎
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC04
4B042AC05
4B042AD37
4B042AK01
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK13
4B042AP02
4B042AP14
4B042AP27
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、卵様食品において、タンパク質源としての栄
養を高めつつも、ざらつき感を低減させることである。
【解決手段】本発明に係る卵様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合である
。ここで調合されるのは、少なくとも、植物由来タンパク質含有組成物、ペプチド含有組
成物、並びに、増粘剤又はゲル化剤であり、これによって得られるのは、調合液である。
前記植物は、マメ科の植物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵様食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、植物由来タンパク質含有組成物、ペプチド
含有組成物、並びに、増粘剤又はゲル化剤であり、これによって得られるのは、調合液で
あり、
前記植物は、マメ科の植物である。
【請求項2】
請求項1の製造方法であって、前記調合において、さらに調合されるのは、凝固促進剤
である。
【請求項3】
卵様食品の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、植物由来タンパク質含有組成物、並びに、
増粘剤又はゲル化剤であり、これによって得られるのは、調合液であり、かつ、
酵素添加:ここで用いられる酵素は、少なくとも、プロテアーゼ、又はペプチダーゼで
あり、当該酵素の添加先は、前記調合液であり、
前記植物は、マメ科の植物である。
【請求項4】
請求項3の製造方法であって、それを構成するのは、さらに、次の工程である:
混合:ここで混合されるのは、凝固促進剤であり、その混合先は、前記調合液である。
【請求項5】
請求項2又は4の製造方法であって、前記増粘剤又はゲル化剤が含有するのは、少なく
とも、アルギン酸塩であり、前記凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カルシウム又
はその塩である。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れかの製造方法であって、それを構成するのは、さらに、次の工程
である:
加熱:ここで加熱されるのは、前記調合液である。
【請求項7】
請求項4の製造方法であって、それを構成するのは、さらに、次の工程である:
加熱:ここで加熱されるのは、前記混合液である。
【請求項8】
請求項1乃至4、並びに7の何れかの製造方法であって、前記卵様食品のタンパク質量
は、3.0g/100g以上であり、当該タンパク質量の測定方法は、ケルダール法であ
る。
【請求項9】
請求項8の製造方法であって、前記卵様食品における、植物由来タンパク質含有組成物
由来のタンパク質量は、3.0g/100g未満である。
【請求項10】
卵様食品におけるざらつき感の低減方法であって、それを構成するのは、少なくとも、
次の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、植物由来タンパク質含有組成物、ペプチド
含有組成物、並びに、増粘剤又はゲル化剤であり、これによって得られるのは、調合液で
あり、
前記植物は、マメ科の植物である。
【請求項11】
請求項10の方法であって、前記調合において、さらに調合されるのは、凝固促進剤で
ある。
【請求項12】
卵様食品におけるざらつき感の低減方法であって、それを構成するのは、少なくとも、
次の工程である:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、植物由来タンパク質含有組成物、並びに、
増粘剤又はゲル化剤であり、これによって得られるのは、調合液であり、かつ、
酵素添加:ここで用いられる酵素は、少なくとも、プロテアーゼ、又はペプチダーゼで
あり、当該酵素の添加先は、前記調合液であり、
前記植物は、マメ科の植物である。
【請求項13】
請求項12の方法であって、それを構成するのは、さらに、次の工程である:
混合:ここで混合されるのは、凝固促進剤であり、その混合先は、前記調合液である。
【請求項14】
請求項11又は13の方法であって、前記増粘剤又はゲル化剤が含有するのは、少なく
とも、アルギン酸塩であり、前記凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カルシウム又
はその塩である。
【請求項15】
請求項10乃至12の何れかの方法であって、それを構成するのは、さらに、次の工程
である:
加熱:ここで加熱されるのは、前記調合液である。
【請求項16】
請求項13の方法であって、それを構成するのは、さらに、次の工程である:
加熱:ここで加熱されるのは、前記混合液である。
【請求項17】
請求項10乃至13、並びに16の何れかの方法であって、前記卵様食品のタンパク質
相当量は、3.0g/100g以上であり、当該タンパク質相当量の測定方法は、ケルダ
ール法である。
【請求項18】
請求項17の方法であって、前記卵様食品における、植物由来タンパク質含有組成物由
来のタンパク質量は、3.0g/100g未満である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、卵様食品の製造方法、及び卵様食品におけるざらつき感低減方
法である。
【背景技術】
【0002】
近年、動物由来原料の一部、あるいは全部を植物由来の原料に置き換え、動物性食品様
の食品としたものが作られてきている。
【0003】
その背景として、種々の点から、動物性食品の摂取を忌避する人がいるからである。一
つの理由は、動物性食品には、コレステロールが含まれていることである。他の理由は、
菜食主義者やヴィーガンは摂取しないようにしていることである。また他の理由は、動物
の飼育による環境負荷の問題である。このような理由から、植物由来原料を用いた代替食
品には、一定の需要がある。
【0004】
代替食品の具体的な態様は、獣肉を用いず、植物性原料を用いて製造した代替肉である
。また別の具体的な態様は、卵を用いず、植物性原料を用いて製造した代替卵である。こ
れまで、代替卵に関する食品の検討は、種々なされてきた。
【0005】
特許文献1が示すのは、卵様焼成凝固食品であって、卵使用量を減らしつつも卵様焼成
凝固食品を製造するため、熱凝固性植物タンパク素材および大豆クリームを原料として使
用し、凝固させたものである。
【0006】
特許文献2が示すのは、液状組成物であって、卵黄の含有量を低めつつ、生卵黄特有の
食感とするため、特定量の卵黄、乳、アルギン酸ナトリウム、及びカルシウムを含有させ
たものである。
【0007】
特許文献3が示すのは、スクランブルエッグ様食品の製造法であって、卵液を用いずと
もスクランブルエッグ様の食品を得るため、澱粉性野菜と大豆蛋白ペーストと混錬するこ
とである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開第2017-169488号公報
【特許文献2】特開第2013-39096号公報
【特許文献3】特開第2002‐119260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、卵様食品において、タンパク質源としての栄養を高
めつつも、ざらつき感を低減させることである。
【0010】
代替食品を作る上での課題は、味、香り、食感、色合い、栄養成分、機能性成分など、
種々存在する。中でも栄養成分は、食する者の健康を維持する上で重要な役割がある。あ
わせて、卵の使用を減じ、あるいは全く使用せずに、植物由来原料を用いて卵の栄養成分
相当に近づけることは、代替卵を作る上での一つの課題である。
【0011】
卵以外の植物由来のタンパク質原料を用いて卵様食品を製造しようとすると、タンパク
質量が多くなるに従い、ざらついた性状となることがわかった。特に、凝固剤を用いて凝
固させようとしても、植物由来のタンパク質含量が多くなると、凝固剤による固まり方も
不十分となることがわかった。これは、植物由来タンパク質原料に含まれる、熱凝固性タ
ンパク質の影響によるものであることが考えられた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が検討していたのは、卵様食品において、植物由来の食品原料でタンパク質源
としての栄養を高めつつも、如何に、卵様食品の舌触りをなめらかにするかである。上記
検討の結果、本願発明者が見出したのは、(1)植物由来タンパク質原料には、熱凝固性
タンパク質が含有されていること、(2)その影響により、タンパク質含有量が多くなる
程、卵様食品がざらついた性状となること(3)また、タンパク質量が多いと凝固剤を用
いて凝固させようとしても、凝固剤による固まり方も不十分となること(4)ペプチド含
有物は、タンパク質が加水分解されたものであるため、タンパク質源としての栄養を有し
つつも、熱による凝固性が低いこと、である。上記機序を応用して、本発明を定義すると
、以下のとおりである。
【0013】
本発明に係る卵様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合である。ここで、
人、又は装置によって調合されるのは、少なくとも、植物由来タンパク質含有組成物、ペ
プチド含有組成物、並びに、増粘剤又はゲル化剤である。前記植物は、マメ科の植物であ
ることが好ましい。前記調合において、さらに調合されるのは、凝固促進剤である。
【0014】
本発明に係る卵様食品の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合、及び酵素添加で
ある。ここで調合されるのは、少なくとも、植物由来タンパク質含有組成物、並びに、増
粘剤又はゲル化剤である。前記植物は、マメ科の植物であることが好ましい。また、酵素
添加で用いられる酵素は、少なくとも、プロテアーゼ、又はペプチダーゼであり、当該酵
素の添加先は、前記調合により得られた調合液である。
【0015】
前記調合、及び酵素添加に加えて、さらに、前記製造方法を構成するのは、混合である
。ここで混合されるのは、凝固促進剤であり、その混合先は、前記調合液である。
【0016】
また、前記増粘剤又はゲル化剤が含有するのは、少なくとも、アルギン酸塩であり、前
記凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カルシウム又はその塩である。
【0017】
本発明に係る卵様食品の前記製造方法をさらに構成するのは、加熱である。ここで加熱
されるのは、前記調合によって得られた調合液、又は前記混合によって得られた混合液で
ある。
【0018】
また、前記卵様食品のタンパク質量は、3.0g/100g以上であり、当該タンパク
質量の測定方法は、ケルダール法である。さらに、当該卵様食品における、植物由来タン
パク質含有組成物由来のタンパク質量は、3.0g/100g未満である。
【0019】
本発明に係る卵様食品のざらつき感を低減する方法を構成するのは、少なくとも、調合
である。ここで、人、又は装置によって調合されるのは、少なくとも、植物由来タンパク
質含有組成物、ペプチド含有組成物、並びに、増粘剤又はゲル化剤である。前記植物は、
マメ科の植物であることが好ましい。前記調合において、さらに調合されるのは、凝固促
進剤である。
【0020】
本発明に係る卵様食品のざらつき感を低減する方法を構成するのは、少なくとも、調合
、及び酵素添加である。ここで調合されるのは、少なくとも、植物由来タンパク質含有組
成物、並びに、増粘剤又はゲル化剤である。前記植物は、マメ科の植物であることが好ま
しい。また、酵素添加で用いられる酵素は、少なくとも、プロテアーゼ、又はペプチダー
ゼであり、当該酵素の添加先は、前記調合により得られた調合液である。
【0021】
前記調合、及び酵素添加に加えて、さらに、前記方法を構成するのは、混合である。こ
こで混合されるのは、凝固促進剤であり、その混合先は、前記調合液である。
【0022】
また、前記増粘剤又はゲル化剤が含有するのは、少なくとも、アルギン酸塩であり、前
記凝固促進剤が含有するのは、少なくとも、カルシウム又はその塩である。
【0023】
本発明に係る卵様食品の前記方法をさらに構成するのは、加熱である。ここで加熱され
るのは、前記調合によって得られた調合液、又は前記混合によって得られた混合液である
。
【0024】
また、前記卵様食品のタンパク質量は、3.0g/100g以上であり、当該タンパク
質量の測定方法は、ケルダール法である。さらに、当該卵様食品における、植物由来タン
パク質含有組成物由来のタンパク質量は、3.0g/100g未満である。
【発明の効果】
【0025】
本発明が可能にするのは、卵様食品において、タンパク質源としての栄養を高めつつも
、ざらつき感を低減させることである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施の形態に係る卵様食品の製造方法の流れ図
【
図2】第2の実施の形態に係る卵様食品の製造方法の流れ図
【
図3】卵様食品中のタンパク質量の違いによるざらつき感の評価結果
【
図4】卵様食品中のタンパク質量の違いによるコクの評価結果
【
図5】ペプチド含有組成物の使用による卵様食品のざらつき感の評価結果1
【
図6】ペプチド含有組成物の使用による卵様食品のざらつき感の評価結果2
【
図7】ペプチド含有組成物の使用による卵様食品のコクの評価結果
【発明を実施するための形態】
【0027】
<卵食品>
本願明細書において、卵食品とは、食品であって、卵白と卵黄を均一に混合した卵原料
を主原料して含有するものである。具体的には、卵焼き、スクランブルエッグ、オムレツ
、炒り卵、等である。卵食品の形態としては、液状、ゲル状(半固体状)、又は固体状な
どが挙げられる。
【0028】
<卵様食品>
本発明に係る卵様食品(以下、「本卵様食品」ともいう。)とは、食品であって、卵食
品における卵原料の一部、あるいは全部を植物由来原料に代替したものである。また、本
卵様食品は、外見上卵食品である、あるいは、その用途において卵食品の代替食品である
ものをいう。
【0029】
<植物由来タンパク質含有組成物>
本発明の実施の形態に係る植物由来タンパク質含有組成物とは、植物に由来するタンパ
ク質を含有する加工品である。当該植物由来タンパク質含有組成物とは、具体的には、穀
類加工品、及び種実類加工品などが挙げられる。特に、タンパク質を多く含有する観点か
ら、前記組成物は、穀類加工品であることが好ましく、中でも、マメ科の植物の加工品で
あることが好ましい。さらに好ましくは、当該マメ科の植物は、大豆であることが好まし
い。一方で、マメ科の植物、特に大豆は、熱凝固性タンパク質を比較的多く含有するため
、あるいは、大豆タンパク質の特性のためか、卵様食品の原材料として用いたときに、ざ
らつき感の原因となる。あわせて、卵様食品の製造において、増粘剤又はゲル化剤による
ゲル化作用を阻害し、ゲル化が不十分な緩い性状となる原因となる。
【0030】
当該組成物は、プロテアーゼ処理、ペプチダーゼ処理、酸分解処理など、製造時に加水
分解工程を経たものを除く。また、当該植物由来タンパク質含有組成物のタンパク質量は
、3.0重量%以上であることが好ましい。より好ましくは、5.0重量%以上である。
また、本発明に係る卵様食品における、植物由来タンパク質含有組成物由来のタンパク質
量は、3.4重量%以下であることが好ましい。より好ましくは、3.0重量%未満であ
る。当該範囲とすることにより、卵様食品におけるざらつき感を、より低減することがで
きる。この場合におけるタンパク質量の測定方法は、ケルダール法である。
【0031】
<穀類加工品>
本発明における穀類加工品を用いる目的は、タンパク質量の確保である。本発明の実施
の形態に係る穀類加工品とは、加工された穀類である。本発明の実施の形態における穀類
は、イネ科の植物、及びマメ科の植物を含むものである。穀類を例示すると、米、小麦、
大麦、オーツ麦、大豆、エンドウ豆、インゲン豆、ソラマメ、ひよこ豆、レンズマメ、ア
ワ、ヒエ、キビ、などが挙げられる。
【0032】
本発明の実施の形態に係る穀類加工品は、好ましくは、穀類の搾汁、穀類のタンパク質
抽出物、又は穀類のピューレ、並びに、これらの粉末であることが好ましい。穀類加工品
を例示すると、ライスミルク、豆乳、オーツミルク、等である。
【0033】
本卵様食品における穀類加工品の含有量の下限値は、好ましくは、2重量%、より好ま
しくは、3重量%である。本卵様食品における穀類加工品の含有量の上限値は、好ましく
は、20重量%、より好ましくは、10重量%である。
【0034】
<種実類加工品>
本発明における種実類加工品を用いる目的は、タンパク質量の確保である。本発明の実
施の形態に係る種実類加工品とは、加工された種実類である。本発明の実施の形態におけ
る種実類を例示すると、アーモンド、ピーナッツ、カシューナッツ、マカダミアナッツ、
ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、クルミ、マツの実、クリ、カボチャの種、ヒマワリの種、
などが挙げられる。
【0035】
本発明の実施の形態に係る種実類加工品は、好ましくは、種実類の搾汁、穀類のタンパ
ク質抽出物、又は種実類のピューレ、並びに、これらの粉末であることが好ましい。
【0036】
本卵様食品における種実類加工品の含有量の下限値は、好ましくは、2重量%、より好
ましくは、3重量%である。本卵様食品における種実類加工品の含有量の上限値は、好ま
しくは、20重量%、より好ましくは、10重量%である。
【0037】
<熱凝固性タンパク質>
本発明の実施の形態に係る熱凝固性タンパク質とは、加熱により凝固、又は凝集する性
質を有したタンパク質のことである。タンパク質は、熱により変性する性質を有するため
、加熱により凝固する性質を有するものがある。一般的に多くのタンパク質は、60℃以
上で熱変性する。熱凝固性タンパク質は、種々のタンパク質含有組成物に含まれており、
植物由来のものについては、大豆、エンドウ、緑豆、ひよこ豆などに含まれている。
【0038】
<ペプチド含有組成物>
本発明の実施の形態に係るペプチド含有組成物とは、少なくとも、ペプチドを含有する
加工品である。具体的には、タンパク加水分解物である。タンパク加水分解物とは、タン
パク質をプロテアーゼにより処理したもの、タンパク質をペプチダーゼにより処理したも
の、タンパク質を酸加水分解処理したもの、などが挙げられる。これらのタンパク質の由
来は、動物であるか、植物であるかを問わない。好ましくは、植物由来のタンパク質を基
とすることが好ましい。
【0039】
<増粘剤、又はゲル化剤>
本発明に係る卵様食品として、卵焼き、スクランブルエッグ、炒り卵のような焼成卵様
食品を作る観点からは、増粘剤、又はゲル化剤を使用することが好ましい。本卵様食品で
使用可能な増粘剤、又はゲル化剤は、特に限定されないが、例示すると、ペクチン、寒天
、澱粉、加工澱粉、カラギーナン、グァーガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナ
ン、アルギン酸塩、アラビアガム、セルロース、ゼラチン、等である。また、増粘促進、
或いは、凝固促進を目的とした凝固促進剤として、カルシウム又はその塩を使用すること
もできる。
【0040】
<アルギン酸塩>
本発明の実施の形態に係る増粘剤、又はゲル化剤として使用可能なものは、アルギン酸
塩である。アルギン酸塩として具体的に挙げられるのは、アルギン酸ナトリウム、アルギ
ン酸カリウム、およびアルギン酸アンモニウムなどである。アルギン酸塩の調合量は、特
に限定されないが、好ましくは、タンパク質1質量部に対して、0.1~2.0質量部で
ある。より好ましくは、タンパク質1質量部に対して、0.2~1.0質量部、さらに好
ましくは、タンパク質1質量部に対して、0.2~0.5質量部である。アルギン酸塩の
量は、ゲルの性状に影響する。アルギン酸塩の濃度を当該範囲とすることにより、スクラ
ンブルエッグ様の形状に適したものとすることが可能となる。
【0041】
<カルシウム又はその塩>
本発明の実施の形態に係る凝固促進剤に含有されるものとして使用可能なものは、好ま
しくは、カルシウム又はその塩である。カルシウム又はその塩として具体的に挙げられる
のは、少なくとも、卵殻カルシウム、貝カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシ
ウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、酢酸カルシウム
、塩化カルシウム、および水酸化カルシウムなどのうち、何れか一つ以上である。
【0042】
カルシウム又はその塩の調合量、又は混合量は、特に限定されないが、好ましくは、ア
ルギン酸ナトリウム1質量部に対して、カルシウム又はその塩を0.15~1.0質量部
とすることである。より好ましくは、アルギン酸ナトリウム1質量部に対して、カルシウ
ム又はその塩を0.2~0.8質量部とすることである。さらに好ましくは、アルギン酸
ナトリウム1質量部に対して、カルシウム又はその塩を0.8~2.0質量部とすること
である。カルシウム塩の量は、ゲル化、又は固形化の速さに影響を与える。
【0043】
本卵様食品として、スクランブルエッグ様食品を想定した場合、好ましい増粘剤又はゲ
ル化剤、及び凝固促進剤は、それぞれ、アルギン酸ナトリウム、及び乳酸カルシウムであ
る。当該増粘剤又はゲル化剤、及び凝固促進剤を用いることで、本物の卵を用いてスクラ
ンブルエッグを作ったときと同様の食感を得ることができる。
【0044】
<タンパク質量>
本発明の実施の形態に係るタンパク質相当量とは、ケルダール法により分析を行った際
に測定されるタンパク質量のことである。当該ケルダール法は、対象となる試料が含有す
る窒素量を基に、たんぱくしつ換算係数を用いて算出される。そのため、タンパク質、ペ
プチド、アミノ酸を含めて、タンパク質量として測定される。
【0045】
本発明に係る卵様食品のタンパク質量は、好ましくは、3.0g/100g以上である
。また、本発明に係る卵様食品のタンパク質量の上限値は、好ましくは、10.0g/1
00g、より好ましくは8.0g/100g、さらに好ましくは、5.0g/100gで
ある。
【0046】
<食用油脂>
本発明の実施の形態において、使用することを排除しないのは、食用油脂である。本発
明において、食用油脂を用いる目的は、栄養成分としての使用、及びコク付与である。本
発明の実施の形態に係る食用油脂とは、油脂であって、食用に用いられるものである。本
発明において使用する食用油脂は、植物由来であることが好ましい。食用油脂の具体的な
例を挙げると、亜麻仁油、エゴマ油、オリーブオイル、グレープシードオイル、コーン油
、ごま油、米油、大豆油、なたね油、パーム油、ひまわり油、べに花油、綿実油、等であ
る。
【0047】
本卵様食品における食用油脂の含有量は、特に限定されない。本卵様食品における食用
油脂の含有量の下限値は、好ましくは、1重量%、より好ましくは、2重量%、さらに好
ましくは、3重量%である。本卵様食品における食用油脂の含有量の上限値は、好ましく
は、20重量%、より好ましくは、15重量%、さらに好ましくは、10重量%である。
【0048】
<動物性原材料>
本発明の実施の形態において、使用することを排除しないのは、動物性原材料である。
本発明の実施の形態に係る動物性原材料とは、食品の原材料であって、その由来が動物で
あるものである。動物性原材料を例示すると、牛、豚、鶏、鶏卵、羊、馬、魚、由来の原
材料が挙げられる。本卵様食品において、使用を排除しないのは、鶏卵である。ただし、
動物性原材料を極力使用しない観点から、本卵様食品に含有される卵の重量割合は、好ま
しくは、50重量%以下である。より好ましくは、20重量%以下であり、さらに好まし
くは、10重量%以下であり、最も好ましくは、0重量%である。特に、卵のタンパク質
は、熱凝固性が高いため、当該タンパク質含量が高くなるに従い、凝固剤を用いた際、十
分な凝固形状を保つことができない。当該観点から、固形物、又はゲル状物を作製する場
合は、卵由来のタンパク質含量は、0%であることが好ましい。
【0049】
<その他の植物加工品>
本卵様食品で使用できるのは、前記タンパク質含有組成物、及びペプチド含有組成物以
外の野菜又は果実の加工品である。この野菜の種類は、不問であるが、例示すると、トマ
ト、ニンジン、カブ、大根、ホウレンソウ、ピーマン、アスパラガス、大麦若葉、春菊、
カラシ菜、サラダ菜、小松菜、明日葉、甘藷、馬鈴薯、モロヘイヤ、パプリカ、パセリ、
セロリ、三つ葉、レタス、ラディッシュ、紫蘇、茄子、インゲン、カボチャ、牛蒡、ネギ
、生姜、大蒜、ニラ、トウモロコシ、さやえんどう、オクラ、かぶ、きゅうり、ウリ、ズ
ッキーニ、へちま、もやし等である。果実の種類も、不問であるが、例示すると、レモン
、オレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ミカン、ライム、スダチ、柚子、シ
イクワシャー、タンカン等の柑橘類、リンゴ、ウメ、モモ、サクランボ、アンズ、プラム
、プルーン、カムカム、ナシ、洋ナシ、ビワ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、カ
シス、クランベリー、ブルーベリー、メロン、スイカ、キウイフルーツ、ザクロ、ブドウ
、バナナ、グァバ、アセロラ、パインアップル、マンゴー、パッションフルーツ、レイシ
等である。
【0050】
<調味料>
本卵様食品の原材料として、本発明が排除しないのは、調味料の使用である。調味料と
は、材料であって、料理の味を調えるものである。調味料を例示すると、砂糖、食用酢、
みりん、しょうゆ、ウスターソース、塩、うま味調味料、酵母エキス、畜肉エキス等であ
る。動物性原材料不使用の観点から、畜肉エキス、魚エキス等の動物性原料を使用しない
ことが好ましい。また、人工的な呈味を避けることから、うま味調味料、酵母エキスを使
用しないことが好ましい。
【0051】
<添加剤>
本卵様食品は、各種添加剤が適宜添加されていてもよい。当該添加剤は、通常、飲食品
に添加されるものであり、例示すると、甘味料、酸味料、着色料、pH調整剤、酸化防止
剤、香料、増粘剤、凝固剤、乳化剤等である。当該添加剤は、食品添加物不使用の点から
、極力使用しないことが好ましい。
【0052】
<本卵様食品の製造方法の概念的構成>
本卵様食品の製造方法(以下、この欄では、「本製法」ということもある。)を概念的
に構成するのは、少なくとも、調合である。本製法を具現化するのは、以下の、第1、及
び第2の実施の形態である。
【0053】
<第1の実施の形態>
図1が示すのは、第1の実施の形態に係る本製法の流れである。この製法を構成するの
は、調合(S10)、加熱及び充填(S40)、冷却(S50)である。
【0054】
<調合(S10)>
調合工程で調合されるのは、少なくとも、植物由来タンパク質含有組成物、ペプチド含
有組成物、並びに、増粘剤又はゲル化剤である。植物由来タンパク質含有組成物を調合す
る目的は、タンパク質量の確保、及びタンパク質によるコクの付与である。ペプチド含有
組成物を調合する目的は、卵様食品のざらつき感を抑えつつ、タンパク質量を高めること
、及びペプチドによるコクの付与である。増粘剤又はゲル化剤を調合する目的は、粘度の
増加、あるいはゲル化である。調合される原材料として排除しないのは、前記植物由来タ
ンパク質含有組成物、ペプチド含有組成物、並びに、増粘剤又はゲル化剤以外に、食用油
脂、その他の植物加工品、調味料、及び添加剤、等である。好ましくは、さらに凝固促進
剤を使用することが好ましい。当該調合によって、調整される調合液のBrixは、4以
上、かつ20以下であることが好ましい。
【0055】
<加熱(S40)>
本製法が適宜採用するのは、加熱である。加熱の目的の一つは、調合液、又は混合液の
殺菌である。加熱のもう一つの目的は、調合液、又は混合液の凝固の促進である。前記調
合、又は混合において、凝固剤を使用した場合、凝固剤の種類によっては、当該加熱工程
により、凝固が促進される。加熱の方法は、公知の方法で良く、例えば、プレート式殺菌
、レトルト殺菌、及びチューブラー式殺菌方法、等がある。加熱は、後述する、容器に充
填を行った後に行ってもよい。加熱の条件は、特に限定されないが、温度は60℃以上で
あることが好ましい。
【0056】
<充填(S40)>
以上に加えて、本製法が適宜採用するのは、充填である。充填方法は、公知の方法でよ
い。本卵様食品が充填される(詰められる)容器は、公知の物で良く、例示すると、ビニ
ル製容器、缶、瓶、紙容器、及びペット製容器、等である。前記加熱、及び充填の順序は
、特に限定されない。
【0057】
<冷却(S50)>
【0058】
<第2の実施の形態>
図2が示すのは、第2の実施の形態に係る製造方法の流れである。この製法を構成する
のは、調合(S10)、酵素添加(S20)、混合(S30)、加熱及び充填(S40)
、冷却(S50)である。以下に示すのは、第2の実施の形態に係る製法の特徴のみであ
る。その他の説明は、前述の第1の実施の形態の説明と同旨である。
【0059】
<酵素添加(S20)>
本製法において、酵素添加を行う目的は、原材料が含有するタンパク質を、酵素処理に
より分解するためである。ここで使用する酵素は、食品添加物としての酵素である。使用
する酵素の種類は、少なくとも、プロテアーゼ、又はペプチダーゼのうち、何れか一つ以
上である。その形態は、特に限定されない。例えば、粉末状、顆粒状、液体状、などであ
る。
【0060】
使用する酵素の量は、調合液に含有されるタンパク質の量に合わせて、適宜調整可能で
ある。調合液のpH、及び温度も、使用する酵素の至適pH、及び至適温度に合わせて、
適宜調整可能である。調合液のpHは、タンパク質の等電点沈殿等を考慮して、好ましく
は、pH5.0以上、かつ、pH8.0以下である。
【0061】
<混合(S30)>
本製法において、必要に応じて混合工程を設ける。本製法において、混合を行う目的は
、増粘、及びゲル化の促進である。凝固促進剤を用いることによって、増粘、及びゲル化
が促進され、卵焼きやスクランブルエッグ等、固形又はゲル状の卵様食品の製造を容易と
することができる。
【0062】
<粘度>
本卵様食品の粘度は、特に限定されない。本卵様食品が液状である場合、本卵様食品の
粘度は、を1,000~5,000mPa・sであることが好ましい。B型粘度の測定方
法は、公知の方法で良い。測定手段を例示すると、TVB-10型粘度計(東機産業株式
会社製)を用いて、20℃、回転数を12rpmとし、開始後60秒後の条件である。
【0063】
<コレステロール含量>
本卵様食品のコレステロール含量は、特に限定されないが、好ましくは、3.0重量%
以下である。より好ましくは、1重量%以下である。さらに好ましくは、0重量%である
。コレステロール含量の測定方法は、公知の方法でよい。
【0064】
<可溶性固形分量>
本卵様食品の可溶性固形分量(以下、「Brix」ともいう。)は、特に限定されない
が、好ましくは、4以上、かつ20以下である。また、Brixの測定方法は、公知の方
法でよい。測定手段を例示すると、光学屈折率計(NAR-3T ATAGO社製)であ
る。
【0065】
<pH>
本実施の形態に係る卵様食品のpHは、特に限定されないが、呈味の観点から、好まし
くは、5.0以上7.0以下であり、より好ましくは5.5以上6.5以下である。
【実施例0066】
[試験1]卵様食品におけるタンパク質量の増加による、ざらつき感の変化
卵様食品中におけるタンパク質量を変化が、官能におけるざらつきに与える影響を確認
した。
【0067】
<試験例1>
大豆タンパク質(不二製油社製:プロリーナRD1)、その他原料を混合した。これと
乳酸カルシウム溶液を混合し、スクランブルエッグ様食品を作製した。スクランブルエッ
グ様食品中のタンパク質量は、1.1g/100gとなるように、大豆タンパク質の配合
量を調整した。作製したスクランブルエッグ様食品は、90℃、20分で加熱殺菌を行っ
た。当該スクランブルエッグ様食品における、各原材料の含有量は、表1に記載のとおり
である。なお、タンパク質原料の違いによる粘度を補正するため、増粘多糖類として加工
デンプンを使用した。
【0068】
<試験例2>
スクランブルエッグ様食品中のタンパク質量が、2.24g/100gとなるように、
大豆タンパク質の配合量を調整した以外は、試験例1と同様の方法にて、スクランブルエ
ッグ様食品を作製した。
【0069】
<試験例3>
スクランブルエッグ様食品中のタンパク質量が、3.36g/100gとなるように、
大豆タンパク質の配合量を調整した以外は、試験例1と同様の方法にて、スクランブルエ
ッグ様食品を作製した。
【0070】
【0071】
<官能評価>
試験例1乃至3について、官能評価によりざらつき、及びコクの評価を行った。評価は
、訓練されたパネリスト20名により構成されるパネルにより行った。評価は、評点法に
より行い、各パネリストが各試験区分について、以下の内容にて6段階評価を行った。評
点が高くなるにつれて、感じられるざらつき、及びコクが強くなることを意味することと
した。パネリスト20名の評点データに基づき、平均値を得た。統計解析は、t‐検定を
用い、試験例1との比較を実施した。
【0072】
<ざらつきに関する評点>
1:全く感じない
2:あまり感じない
3:ほとんど感じない
4:やや感じる
5:感じる
6:とても感じる
【0073】
<結果>
試験例1では、ざらつきをほとんど感じず、実際の卵食品と同等の官能が得られた。一
方、タンパク質量を増加させるに従い、ざらつき感は強くなる傾向が見られた。そして、
タンパク質量が3.36g/100g以上となると、試験例1と比較して、有意にざらつ
きが感じられる傾向が見られた(p<0.1)(表2、
図3)。また、コクに関しては、
タンパク質含量を増加させても、有意な差は見られなかった(表2、
図4)。
【0074】
【0075】
[試験2]卵様食品におけるタンパク加水分解物の使用による、ざらつき感及びコクへの
影響
卵様食品中におけるタンパク加水分解物の使用が、官能におけるざらつきに与える影響
を確認した。
【0076】
<タンパク加水分解物Aの作製>
大豆タンパク質(不二製油社製:プロリーナRD1)を水で20倍希釈し、これに0.
5%のプロテアーゼ(不二製油社製:プロテアーゼMアマノ)を添加し、55℃で60分
間酵素処理を行ったものを、タンパク加水分解物Aとした。
【0077】
<比較例1-1>
大豆タンパク質(不二製油社製:プロリーナRD1)、及びその他原料を混合した。こ
れと乳酸カルシウム溶液を混合し、スクランブルエッグ様食品を作製した。スクランブル
エッグ様食品中のタンパク質量は、1.12g/100gとなるように、大豆タンパク質
の配合量を調整した。作製したスクランブルエッグ様食品は、90℃、20分で加熱殺菌
を行った。当該スクランブルエッグ様食品における、各原材料の含有量は、表3に記載の
とおりである。
【0078】
<実施例1>
使用する原料として、タンパク加水分解物Aを追加した以外は、比較例1と同じ原材料
、及び同じ方法により、スクランブルエッグ様食品を作製した。タンパク加水分解物Aは
、タンパク質量として1.12g/100g量が比較例1-1に対して追加され、食品中
タンパク質量の合計として2.24g/100gとなるよう配合量を調整した(表3)。
【0079】
<比較例1-2>
大豆タンパク質(不二製油社製:プロリーナRD1)、及びその他原料を、混合した。
これと乳酸カルシウム溶液を混合し、スクランブルエッグ様食品を作製した。スクランブ
ルエッグ様食品中のタンパク質量は、1.12g/100gとなるように、大豆タンパク
質の配合量を調整した。当該スクランブルエッグ様食品における、各原材料の含有量は、
表3に記載のとおりである。
【0080】
<実施例2>
使用する原料として、タンパク加水分解物Aを追加した以外は、比較例1と同じ原材料
、及び同じ方法により、スクランブルエッグ様食品を作製した。タンパク加水分解物Aは
、タンパク質量として2.24g/100g量が比較例1-2に対して追加され、食品中
タンパク質量の合計として3.36g/100gとなるよう配合量を調整した(表2)。
【0081】
【0082】
<官能評価>
比較例1-1と実施例1について、並びに、比較例1-2と実施例2について、官能評
価によりざらつき及びコクの評価を行った。評価は、それぞれ、訓練されたパネリスト2
0名、並びに、訓練されたパネリスト19名により構成されるパネルにより行った。評価
は、評点法により行い、各パネリストが各試験区分について、以下の内容にて6段階評価
を行った。評点が高くなるにつれて、感じられるざらつき及びコクが強くなることを意味
することとした。パネリストの評点データに基づき、平均値を得た。統計解析は、t‐検
定を用い、比較例との比較を実施した。
【0083】
<ざらつきに関する評点>
1:全く感じない
2:あまり感じない
3:ほとんど感じない
4:やや感じる
5:感じる
6:とても感じる
【0084】
<結果>
試験例1-1では、ざらつきをほとんど感じなかった。また、プロテアーゼ処理品によ
りタンパク質量を増加させた実施例1においても、比較例1-1とほぼ性状は変わらず、
ざらつきを感じない結果となった。2点間の有意な差も見られなかった(表4、
図5)。
また、試験例1-2でも、ざらつきをほとんど感じなかった。また、プロテアーゼ処理
品によりタンパク質量を2.2g/100g分増加させた実施例2においても、比較例1
-2とほぼ性状は変わらず、ざらつきを感じない結果となった。2点間の有意な差も見ら
れなかった(表4、
図6)。
一方、プロテアーゼ処理品を用いることで、コクが増加する傾向が見られた(p<0.
1)(表4、
図7)。
【0085】
【0086】
<考察>
試験1の結果より、含有するタンパク質量が増加するに従い、ざらつき感が増加するこ
とがわかった。そして、タンパク質量が3.0g/100g以上となると、ざらつきを感
じやすくなることがわかった。これは、タンパク質の凝集する作用や溶解性による影響が
考えられた。
【0087】
また、試験2の結果より、含有するタンパク質量が増加したとしても、増加分がペプチ
ドやアミノ酸に由来するタンパク質量であれば、ざらつき感の増加は低減することが可能
であり、卵食品の性状を保つことができることがわかった。また、タンパク加水分解物を
用いることにより、コクが有意に増加することもわかった。