(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162977
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】排水処理装置及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20231101BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20231101BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
C02F3/12 B
C02F3/12 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073727
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 進
(72)【発明者】
【氏名】円谷 輝美
【テーマコード(参考)】
4D028
4D059
【Fターム(参考)】
4D028AA08
4D028BA01
4D028BA02
4D028BB07
4D028BC17
4D028BD17
4D028BE08
4D059AA03
4D059AA04
4D059AA23
4D059BA12
4D059BE00
4D059BE41
4D059BE57
4D059BE58
4D059BE59
4D059BF20
4D059BJ00
4D059BK11
4D059BK16
4D059CA22
4D059CA28
4D059CC10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】消化汚泥の脱水処理に要する費用を低減するとともに、バイオソープションに必要な活性汚泥量を確保することができる排水処理装置及び排水処理方法を提供する。
【解決手段】流入下水は沈砂池及びスクリーン設備1で粗大固形物が分離され、分離された粗大固形物はメタン発酵設備2でメタン発酵処理され消化汚泥を生成する。消化汚泥は脱水設備4及び消化汚泥調質設備5に移送され、消化汚泥調質設備5で消化汚泥は水処理設備8からの余剰汚泥と接触し調質される。次いで、調質汚泥は接触混合設備6で沈砂池及びスクリーン設備1からの処理水と接触し、処理水中の有機物が調質汚泥に吸着される。有機物が吸着された汚泥は分離濃縮設備7で分離され、濃縮汚泥はメタン発酵設備2に移送される。分離濃縮設備7からの分離水は水処理設備8に供給され、水処理設備8において活性汚泥が排水中の有機物を分解する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
夾雑物、有機物及び水分を含む排水を処理する排水処理装置であって、
夾雑物と有機物及び水分とを分離する夾雑物分離手段と、
前記夾雑物分離手段により分離された夾雑物をメタン発酵処理するメタン発酵処理手段と、
前記夾雑物分離手段により得られた有機物及び水分を含む処理水を水処理する水処理手段と、を備える排水処理装置において、
前記メタン発酵処理手段により得られた消化汚泥の少なくとも一部を酸素存在下で活性汚泥と接触させて調質する消化汚泥調質手段を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記消化汚泥調質手段により得られた調質汚泥と前記夾雑物分離手段により得られた処理水とを接触混合させる接触手段を有することを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記接触手段により得られた混合液を濃縮汚泥と分離水とに分離する分離濃縮手段を有することを特徴とする請求項2記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記接触手段により得られた混合液の一部を前記分離濃縮手段を経由せずに前記水処理手段に供給するバイパス経路を設けることを特徴とする請求項3記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記分離濃縮手段により分離された濃縮汚泥をメタン発酵処理手段に供給することを特徴とする請求項3記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記夾雑物分離手段が沈砂池及び/又はスクリーン装置であることを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記水処理手段が活性汚泥処理法を用いた手段であり、前記消化汚泥調質手段において前記消化汚泥と接触させる前記活性汚泥が前記水処理手段から排出された余剰汚泥であることを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項8】
前記消化汚泥調質手段に供給する前記消化汚泥と前記活性汚泥との重量比率が1:0.5~1:10であることを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項9】
前記分離濃縮手段が加圧浮上分離装置であることを特徴とする請求項3記載の排水処理装置。
【請求項10】
前記排水処理装置が最初沈殿池を有しないことを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の排水処理装置を用いた排水処理方法において、
前記夾雑物と前記有機物及び水分とを分離する夾雑物分離ステップと、
前記夾雑物分離ステップにおいて分離された夾雑物をメタン発酵処理するメタン発酵処理ステップと、
前記夾雑物分離ステップにより得られた有機物及び水分を含む処理水を水処理する水処理ステップと、
前記メタン発酵処理ステップにより得られた消化汚泥の少なくとも一部を酸素存在下で活性汚泥と接触させて調質する消化汚泥調質ステップと、
を有することを特徴とする排水処理方法。
【請求項12】
前記消化汚泥調質ステップにより得られた調質汚泥と前記夾雑物分離ステップにより得られた処理水とを接触混合させる接触ステップと、
前記接触ステップにより得られた混合液を濃縮汚泥と分離水とに分離する分離濃縮ステップと、
前記分離濃縮ステップにより分離された濃縮汚泥を前記メタン発酵処理ステップに供給する濃縮汚泥供給ステップと、
を有することを特徴とする請求項11記載の排水処理方法。
【請求項13】
前記水処理ステップが活性汚泥処理法を用いたステップであり、前記消化汚泥調質において前記消化汚泥と接触させる前記活性汚泥が前記水処理ステップから排出された余剰汚泥であることを特徴とする請求項11記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水処理装置及び排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、夾雑物、有機物及び水分を含む下水等の排水に対し標準活性汚泥法による水処理が行なわれている。例えば、家庭や工場等から排出された下水は沈砂池及び最初沈殿池を経て活性汚泥を含む生物反応槽に移送され、生物反応槽において下水中の有機物が活性汚泥により分解され除去される。
【0003】
図4は中大規模の下水処理施設で一般的に実施されている標準活性汚泥法による排水処理装置を概略的に示す図である。
【0004】
図4の排水処理装置は、沈砂池及びポンプ井41,メタン発酵設備42,エネルギー回収設備43,脱水設備44,最初沈殿池47,生物反応槽(エアレーションタンク)48,最終沈殿池49を備えている。まず、家庭や工場等から排出された下水は沈砂池及びポンプ井41において粗大固形物(沈砂及びし渣)が除去された後、最初沈殿池47に移送され、最初沈殿池47において固形物(初沈汚泥)と処理済水とに分離される。次いで、初沈汚泥はメタン発酵設備42に移送されメタン発酵処理が施される。この初沈汚泥のメタン発酵処理により消化ガス(メタンガス)と消化汚泥が生成し、消化ガスはエネルギー回収設備43に移送され、消化汚泥は脱水設備44に移送される。その後、脱水設備44において消化汚泥に脱水処理が施され、脱水ケーキと脱水ろ液が生成する。
【0005】
一方、最初沈殿池47の処理水は生物反応槽48に移送され、生物反応槽48において処理水中の有機物が活性汚泥により好気的に分解される。次いで、生物反応槽48から流出した分離水は最終沈殿池49に移送され、汚泥と処理水とに分離される。最終沈殿池49で分離された汚泥は、一部は生物反応槽48に返送(返送汚泥)され、残りは最初沈殿池47で分離された初沈汚泥とともにメタン発酵設備42に移送(余剰汚泥)される。最終沈殿池49から流出した処理水は滅菌槽で滅菌された後に放流されるか又は有効活用される。
【0006】
ところで、好気的な酸化分解が進行した活性汚泥が、流入下水中の有機物を吸着することはバイオソープションとして従来から知られている。例えば、特許文献1には、好気性処理槽から分離した余剰汚泥を原水が流入する吸着槽に移送し、原水中の有機物を吸着した余剰汚泥を固液分離した後に、分離した汚泥を嫌気性消化槽に導入することにより、メタンを高効率で回収する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、メタン発酵処理により生成した消化汚泥は非常に微細な粒子を多く含むため、生汚泥(初沈汚泥や余剰汚泥)に比べ難脱水性の性質を有している。そのため、消化汚泥の脱水処理により得られる脱水ケーキは含水率が高く、脱水ケーキの発生量が多くなり、その処分に多大な費用を要するという問題があった。また、脱水処理においては凝集剤が添加されるが、消化汚泥はカチオン性の低分子物質を多く含み汚泥表面の荷電サイトが多いため、凝集剤のイオンサイトを多く消費する。その結果、消化汚泥は生汚泥に比べ凝集剤の添加率が高くなり、脱水処理の費用が増大するという問題があった。
さらに、余剰汚泥(活性汚泥)のバイオソープションを利用して排水中の有機物を吸着する方法(特許文献1)の場合には、好気性処理槽において余剰汚泥の発生量が低下するため、排水処理が進行するにつれてバイオソープションに必要な活性汚泥量を確保することが困難になるという問題があった。
したがって、消化汚泥の脱水処理に要する費用を低減するとともに、バイオソープションに必要な活性汚泥量を確保することのできる排水処理が求められていた。
【0009】
本発明の目的は、消化汚泥の脱水処理に要する費用を低減するとともに、バイオソープションに必要な活性汚泥量を確保することができる排水処理装置及び排水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の排水処理装置は、夾雑物、有機物及び水分を含む排水を処理する排水処理装置であって、夾雑物と有機物及び水分とを分離する夾雑物分離手段と、前記夾雑物分離手段により分離された夾雑物をメタン発酵処理するメタン発酵処理手段と、前記夾雑物分離手段により得られた有機物及び水分を含む処理水を水処理する水処理手段と、を備える排水処理装置において、前記メタン発酵処理手段により得られた消化汚泥の少なくとも一部を酸素存在下で活性汚泥と接触させて調質する消化汚泥調質手段を有することを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の排水処理方法は、上記本発明の排水処理装置を用いた排水処理方法において、前記夾雑物と前記有機物及び水分とを分離する夾雑物分離ステップと、前記夾雑物分離ステップにおいて分離された夾雑物をメタン発酵処理するメタン発酵処理ステップと、前記夾雑物分離ステップにより得られた有機物及び水分を含む処理水を水処理する水処理ステップと、前記メタン発酵処理ステップにより得られた消化汚泥の少なくとも一部を酸素存在下で活性汚泥と接触させて調質する消化汚泥調質ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、消化汚泥の脱水処理に要する費用を低減するとともに、バイオソープションに必要な活性汚泥量を確保して安定した排水処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る排水処理装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の排水処理装置の変形例を示す図である。
【
図3】
図2の排水処理装置の変形例を示す図である。
【
図4】標準活性汚泥法による排水処理装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る排水処理装置10を概略的に示す図である。
【0016】
図1の排水処理装置10は、沈砂池及びスクリーンから構成される設備1,メタン発酵設備2,エネルギー回収設備3,脱水設備4,消化汚泥調質設備5,接触混合設備6,分離濃縮設備7,水処理設備8を備える。まず、家庭や工場等から排出された下水は設備1(夾雑物分離手段)に移送され、設備1において下水中の粗大固形物(夾雑物)が沈砂及びし渣として除去される。スクリーンは、後述する接触混合設備6における活性汚泥による吸着が困難な粗大固形物を除くため、目開きが20~300μm、好ましくは50~200μmの微細目スクリーン設備を用いるのが好ましい。設備1は下水中の粗大固形物(夾雑物)を除去できる設備であれば特に限定されるものではない。沈砂池で分離された沈砂は砂分を含むため、沈砂は沈砂洗浄装置等により砂分を除去した後に、一部はメタン発酵設備2に移送され、残りは処分又は有効活用される。一方、スクリーンで分離されたし渣は有機物を多く含み砂分は少ないため、破砕機により破砕した後に、一部はメタン発酵設備2に移送され、残りは処分又は有効活用される。
【0017】
メタン発酵設備2(メタン発酵処理手段)は、砂分除去後の沈砂、破砕後のし渣、及び後述する分離濃縮汚泥に対しメタン発酵処理を実行する。メタン発酵処理はメタン菌(嫌気性細菌)が有機物を分解し、メタンを主体とする消化ガスと消化汚泥を生成させる消化反応を用いる処理である。具体的に、メタン菌は、まず有機物を加水分解して可溶性のアミノ酸等を生成する。次いで、生成したアミノ酸等が嫌気性細菌の細胞内に取り込まれて代謝分解され、酢酸や水素、二酸化炭素等が生成する。その後、酢酸や水素、二酸化炭素からバイオガスとしてのメタンが生成される。消化汚泥は汚泥中の有機物がメタン菌の働きで分解され消化ガスが発生した後に残る汚泥であり、メタン菌を含んでいる。この消化汚泥は非常に微細な粒子を多く含むため、生汚泥(初沈汚泥や余剰汚泥)に比べ難脱水性の性質を有する。
【0018】
メタン発酵設備2から排出された消化ガスはエネルギー回収設備3に移送され、そのまま燃料として利用されるか、又は発電装置に移送され電力として利用される。また、メタン発酵設備2から流出した消化汚泥は、一部は消化汚泥調質設備5に移送され、残りは脱水設備4に移送される。脱水設備4においては消化汚泥に凝集剤が添加されて脱水処理が実行される。消化汚泥に添加される凝集剤としては、例えば、ポリマーと称される有機高分子系の凝集剤が挙げられる。消化汚泥はカチオンを多く含みアルカリ度が高いことから、アニオン系ポリマー、両性ポリマー、又はアニオン系ポリマーとカチオン系ポリマーを併用した凝集剤が用いられる。
【0019】
このように消化汚泥の一部を消化汚泥調質設備5に移送することにより、脱水設備4に供給する消化汚泥量を低減できるため、脱水処理に添加する凝集剤の量や脱水ケーキの発生量を低減させ、消化汚泥の脱水処理に要する費用を大幅に低減することができる。
【0020】
また、消化汚泥の一部を消化汚泥調質設備5に移送することにより、後述するように、設備1からの処理水とともに接触混合設備6に供給される調質汚泥(活性汚泥)の量を増やすことができ、その結果、調質汚泥に吸着する有機物の量が増え、メタン発酵処理により発生する消化ガス量を増やすことができる。消化ガスによるエネルギー回収量が増加すると、発電等に利用すればエネルギー自立可能な排水処理装置を提供することができる。
【0021】
さらに、消化汚泥の一部を消化汚泥調質設備5に移送することにより、後述するように、消化汚泥が調質されて好気的な活性汚泥に変換されるため、バイオソープションに必要な活性汚泥量を確保することができる。
【0022】
消化汚泥調質設備5(消化汚泥調質手段)は消化汚泥に対し調質処理を実行する。調質処理は消化汚泥を酸素存在下で活性汚泥と接触させる処理である。これにより、活性汚泥(好気性微生物)が消化汚泥(メタン菌や嫌気性細菌など)を分解及び捕食して自己増殖し、消化汚泥がバイオソープション効果のある好気的な活性汚泥(調質汚泥)に変換され、酸素溶存効率が高まる。活性汚泥は調質処理の種汚泥として機能し、短時間での調質を可能とする。消化汚泥には有機酸(プロピオン酸、酪酸、吉草酸など)、アンモニア、硫化水素、硫化物等の還元性物質が含まれているが、調質処理により消化汚泥中のこれら還元性物質も酸化される。
【0023】
本実施の形態では、消化汚泥調質設備5に供給する活性汚泥は、後述する水処理設備8から排出された余剰汚泥を使用する。調質処理を効率的に実行するためには、消化汚泥調質設備5内に消化汚泥に対して十分な量の活性汚泥を存在させる必要がある。消化汚泥調質設備5に供給する消化汚泥と余剰汚泥の重量比率は1:0.5~1:10の範囲内とするのがよい。これにより、消化汚泥の活性汚泥への変換が効率的に進行すると考えられる。消化汚泥調質設備5の容量を小さくするためには、消化汚泥に対する余剰汚泥の比率を大きくすることが望ましい。また、消化汚泥調質設備5への余剰汚泥の供給量が少なく、消化汚泥に対する余剰汚泥の供給比率が小さい場合には、好気性微生物を維持するための担体や接触材を消化汚泥調質設備5内に設置するのが有効である。消化汚泥調質設備5に供給する消化汚泥の濃度は通常1~2重量%であり、消化汚泥調質設備5に供給する活性汚泥の濃度は通常0.2~0.5重量%である。混合汚泥消化汚泥調質設備5内の混合汚泥(消化汚泥及び活性汚泥)の濃度は、調質のし易さの観点から、1重量%以下、好ましくは0.4~0.6重量%に維持するのがよい。混合汚泥の濃度が1重量%を超えると汚泥の粘性が増加して酸素溶解効率が低下する傾向がある。混合汚泥の濃度の調整は、例えば、脱水設備4からの脱水ろ液を消化汚泥調質設備5に添加することにより行うことができる。
【0024】
消化汚泥と活性汚泥との接触は、例えば、消化汚泥調質設備5内に曝気装置を配置し、空気を曝気しながら消化汚泥と活性汚泥とを混合する曝気撹拌により実施することができる。また、消化汚泥と活性汚泥との接触は、曝気撹拌に加え、例えば、スタティックミキサー等の静止型混合器(ラインミキサー)を用いたライン混合を行うこともできる。消化汚泥調質設備5内には汚泥流量調整手段を設けるのが好ましく、消化汚泥調質設備5内の混合汚泥(消化汚泥及び活性汚泥)の滞留時間は、消化汚泥と活性汚泥の混合比率、曝気装置の能力、接触材の有無等により変化するが、通常は3~12日間である。消化汚泥調質設備5から流出した調質汚泥は大部分が活性汚泥であり、接触混合設備6に移送される。標準活性汚泥法の設備を膜分離活性汚泥法(以下、MBR法という。)に改造する場合には、既存のエアレーションタンク(生物反応槽)の一部を消化汚泥調質設備5として利用することができる。
【0025】
接触混合設備6(接触手段)は、設備1の処理水と消化汚泥調質設備5から移送される調質汚泥とを好気的な状態で接触混合させる手段である。接触混合は接触混合設備6内に曝気装置を配置して曝気撹拌により実施することができる。また、機械撹拌を追加的に行うこともでき、例えば、スタティックミキサー等の静止型混合器(ラインミキサー)を用いたライン混合を行うこともできる。この接触混合により、設備1から移送された処理水中の溶解性有機物が調質汚泥に吸着される。
【0026】
接触混合設備6において、設備1から移送された処理水中の溶解性有機物の量と、消化汚泥調質設備5から移送された調質汚泥の量は、1:0.5~1:1.5、好ましくは1:0.6~1:1.3のようにほぼ同程度の重量比率となるよう維持するのがよい。これにより、接触混合設備6内において、設備1から移送された処理水中の溶解性有機物や微細固形物が調質汚泥に効率的に吸着される。
【0027】
接触混合設備6から流出する混合液には溶解性有機物や微細固形物が吸着した調質汚泥が含まれている。この混合液の大部分は分離濃縮設備7に移送されるが、一部は分離濃縮設備7を経由せずにバイパス経路を経て水処理設備8に移送される。このようなバイパス経路を設けることにより、分離濃縮設備7に供給される混合液の量と、分離濃縮設備7を経由せずにバイパス経路に移行する混合液の量を調節し、水処理設備8に供給される活性汚泥の量を容易に制御することが可能となる。このようなバイパス経路を設置することにより、水処理施設8内のMLSS(活性汚泥浮遊物質)濃度を最適範囲に迅速に調節することができ、日間の負荷変動等に対しても安定した運転が可能となる。また、標準活性汚泥法の設備を改造する場合には、最初沈澱池の一部を接触混合設備6として利用することができる。
【0028】
分離濃縮設備7(分離濃縮手段)は、接触混合設備6から移送された混合液から、溶解性有機物や微細固形物を吸着した調質汚泥を分離濃縮するための手段であり、従来の最初沈澱池よりも有機物の分離効率が高い。分離濃縮処理においては鉄系やアルミ系の無機凝集剤や有機凝集剤を添加して有機物の分離効率を高めることも可能であるが、加圧浮上分離装置や遠心分離機を用いることで分離効率を更に高めることができる。特に、加圧浮上分離装置は凝集剤を用いなくても20~50μm以上の固形物を15~30分程度の短時間で効率的に分離濃縮できるため好ましいが、凝集剤を用いることによりコロイド領域の汚泥まで分離可能となり、更に有機物の分離効率が向上する。また、分離濃縮処理においてアルミニウムや鉄を含む無機系凝集剤を用いることによりリンを除去することが可能である。標準活性汚泥法の設備を改造する場合には、最初沈澱池の一部を分離濃縮設備7として利用することができる。
【0029】
このような分離濃縮処理により、分離濃縮設備7に供給された混合液中の有機物は固形性も溶解性も含め多くが濃縮汚泥として分離され、また、得られた分離水は従来の水処理設備への流入水と比べ大幅に有機物の含有量が減少する。この分離水をバイパス経路を経由した混合水とともに水処理設備8に移送することにより、水処理設備8内の有機物量が減少するため、水処理設備8で使用する消費電力量を大幅に削減することができる。
【0030】
分離濃縮設備7で分離され多くの有機物を含む濃縮汚泥はメタン発酵設備2に移送され、設備1から移送された砂分除去後の沈砂及び破砕後のし渣とともにメタン発酵処理が実行される。分離濃縮設備7からメタン発酵設備2に移送される排水中の濃縮汚泥の濃度は分離濃縮手段にもよるが通常3~5重量%である。メタン発酵設備2における濃縮汚泥の消化率(メタンや二酸化炭素になってガス化する割合)は60~90重量%であるため、分離濃縮汚泥が消化汚泥に変化する割合は10~40重量%となる。したがって、メタン発酵設備2から排出される排水中の消化汚泥の濃度は通常0.3~2.0重量%となる。
【0031】
水処理設備8は、分離濃縮設備7及びバイパス経路から移送された排水中の溶解性有機物を分解するための水処理を実行する。水処理設備8としては、例えば、標準活性汚泥法やMBR法の装置が用いられ、排水中の有機物が曝気下において活性汚泥により酸化分解される。活性汚泥は有機物の好気的な酸化分解により増殖した微生物主体の汚泥である。本発明ではコンパクトで窒素除去性能が高く省エネ運転が可能なMBR法、特に仕切板挿入型の膜分離活性汚泥法(以下、「B-MBR法」という。)の装置を用いるのが好ましい。MBR法やB-MBR法では、排水に含まれるアンモニアを酸素存在下で硝化細菌が亜硝酸や硝酸に変換する硝化反応と、亜硝酸や硝酸を脱窒細菌が無酸素状態で窒素に変換する脱窒反応が進行する。B-MBR法の装置は、硝化反応を実行する硝化反応領域と脱窒反応を実行する脱窒反応領域を区分する区分手段と、硝化反応領域に設置され、排水に含まれる固形分を分離除去する膜分離手段とを有する排水処理装置である。水処理設備8においてはMLSS濃度を所定濃度に、維持することが必要であり、曝気効率やBOD-MLSS負荷を考慮して4500~5500mg/Lに維持することが好ましい。水処理終了後は、活性汚泥は余剰汚泥として水処理設備8から排出され消化汚泥調質設備5に移送される。
【0032】
図2は、
図1の排水処理装置の変形例を示す図である。
【0033】
図2の排水処理装置は、メタン発酵設備2から流出した消化汚泥の全てを消化汚泥調質設備5に移送し、脱水設備4に消化汚泥ではなく消化汚泥調質設備5から流出した調質汚泥の一部を移送した点以外は、
図1の排水処理装置と構成及び機能は同じである。以下に、
図1の排水処理装置と異なる点について説明する。
【0034】
図2において、メタン発酵設備2から流出し消化汚泥は全量が消化汚泥調質設備5に移送される。
図1の排水処理装置に比べ消化汚泥調質設備5に移送される消化汚泥量が増えるため、消化汚泥調質設備5から流出し接触混合設備6に移送される調質汚泥(活性汚泥)の量も増大し、その結果、接触混合設備6において活性汚泥に吸着される有機物量も増大する。したがって、
図2の排水処理装置は
図1の排水処理装置に比べ、メタン発酵設備2において発生する消化ガス(メタンガス)量が多く、エネルギー回収効率が高くなる。
【0035】
また、消化汚泥調質設備5から流出した調質汚泥(活性汚泥)は大部分は接触混合設備6に移送されるが、脱水設備4に対しこの調質汚泥の一部が供給される。このように、脱水設備4に凝集剤の添加率が高く脱水ケーキの発生量の多い消化汚泥ではなく、凝集剤の添加率が低く脱水ケーキの発生量が少ない活性汚泥を供給することにより、脱水処理及びその後の処理に要する費用を大幅に低減することができる。
【0036】
図3は、
図2の排水処理装置の変形例を示す図である。
【0037】
図3の排水処理装置は、水処理設備8が消化汚泥調質設備5を兼ね、消化汚泥を水処理設備8に供給するとともに、水処理設備8から排出される余剰汚泥を、一部は脱水設備4に移送し、残りを接触混合設備6に移送した点以外は、
図2の排水処理装置と構成及び機能は同じである。以下に、
図2の排水処理装置と異なる点について説明する。
【0038】
図3の排水処理装置では、消化汚泥調質設備5を独立して設けることはせず、水処理設備8が消化汚泥調質設備5を機能的に兼ね、水処理設備8内で水処理と消化汚泥調質処理とが実行される。すなわち、水処理設備8内には活性汚泥が存在するため、分離濃縮設備7及びバイパス経路から移送された排水中の有機物が水処理設備8内で活性汚泥により好気的に分解されるとともに、水処理設備8に供給された消化汚泥が曝気下(酸素存在下)において活性汚泥と接触して調質され、消化汚泥がバイオソープション効果のある好気的な活性汚泥に変換される。水処理設備8に供給される一日当たりの消化汚泥量は水処理設備8内の活性汚泥量の1/40~1/30であり、消化汚泥に対し十分な量の活性汚泥が存在するため消化汚泥の調質が容易に進行する。水処理設備8の容量は消化汚泥調質処理を実行するため
図2の水処理設備よりも大きくするのがよい。
【0039】
B-MBR法による水処理装置8の場合には、排水に含まれるアンモニアを酸素存在下で硝化細菌が亜硝酸や硝酸に変換する硝化反応と、亜硝酸や硝酸を脱窒細菌が無酸素状態で窒素に変換する脱窒反応が進行する。脱窒反応では水素供与体として有機物を必要とするが、
図3のように消化汚泥を水処理設備8に供給することにより、消化汚泥中の有機物が脱窒反応に利用される。このような装置構成により、
図3の装置は
図2の装置に比べ装置全体がシンプルな構造となり、標準活性汚泥法の設備を改造することにより排水処理装置を容易に構築することができる。
【0040】
また、水処理設備8から調質処理が施された余剰汚泥(調質汚泥)が排出されるが、排出された余剰汚泥(調質汚泥)の一部は脱水設備4に移送され、残りは接触混合設備6に移送される。これにより、脱水設備4には凝集剤の添加率が高く脱水ケーキの発生量の多い消化汚泥ではなく、凝集剤の添加率が低く脱水ケーキの発生量が少ない調質汚泥(活性汚泥)が供給されるため、脱水処理及びその後の脱水ケーキの処理に要する費用を大幅に低減することができる。
【0041】
次に、本実施の形態の排水処理方法について
図1の排水処理装置に従って説明する。
【0042】
図1の排水処理装置10は、沈砂池及びスクリーン設備から構成される設備1,メタン発酵設備2,エネルギー回収設備3,脱水設備4,消化汚泥調質設備5,接触混合設備6,分離濃縮設備7,水処理設備8を備える。
【0043】
まず、家庭や工場等から排出された下水を設備1に連続的に供給し、沈砂池及びスクリーンにより粗大固形物(沈砂及びし渣)を分離する(夾雑物分離ステップ)。沈砂池で分離された沈砂は沈砂洗浄装置等により砂分を除去した後にメタン発酵設備2に移送する。一方、スクリーンで分離されたし渣は、破砕機により破砕した後にメタン発酵設備2に移送する。メタン発酵設備2では、砂分除去後の沈砂、破砕後のし渣、及び分離濃縮設備7から移送された前述の分離濃縮汚泥についてメタン発酵処理が実行される(メタン発酵処理ステップ)。このメタン発酵処理により消化ガスと消化汚泥が生成する。消化ガスはエネルギー回収設備3に移送し、消化汚泥は、一部を消化汚泥調質設備5に、残りを脱水設備4に移送する。設備1で粗大固形物と分離された処理水は接触混合設備6に移送する。
【0044】
消化汚泥調質設備5では、消化汚泥が水処理設備8から移送された余剰汚泥(活性汚泥)と酸素存在下で接触する調質処理が実行される。これにより、消化汚泥がバイオソープション効果のある好気的な活性汚泥(調質汚泥)に変換される(消化汚泥調質ステップ)。次いで、消化汚泥調質設備5から流出した調質汚泥は接触混合設備6に移送し、設備1からの処理水と曝気下で接触混合する(接触ステップ)。これにより、処理水に含まれていた溶解性有機物と微細固形物が調質汚泥に吸着される。その後、溶解性有機物と微細固形物が吸着した調質汚泥を含む混合液は、一部はバイパス経路に移送し、残りは分離濃縮設備7に移送する。
【0045】
分離濃縮設備7は加圧浮上分離装置を使用し、溶解性有機物と微細固形物が吸着した調質汚泥を濃縮して濃縮汚泥と分離水とに分離する(分離濃縮ステップ)。分離した濃縮汚泥はメタン発酵設備2に移送し(濃縮汚泥供給ステップ)、メタン発酵設備2において設備1から移送された粗大固形物とともにメタン発酵処理に供する(メタン発酵処理ステップ)。
【0046】
分離濃縮設備7から流出した分離水はバイパス経路を通過する接触混合設備6からの混合液とともに水処理設備8に供給する。水処理設備8は活性汚泥を収容し、活性汚泥が分離濃縮設備7及びバイパス経路から移送された排水中の溶解性有機物を曝気下で分解する(水処理ステップ)。その後、水処理設備8から排出された余剰汚泥(活性汚泥)を消化汚泥調質設備5に移送する。
【0047】
一方、メタン発酵設備2から流出し脱水設備4に移送された消化汚泥には有機高分子系の凝集剤が添加され、脱水処理が実行される。脱水処理により脱水ケーキと脱水ろ液が生成し、脱水ろ液は設備1に移送される。
【0048】
以上のように、メタン発酵設備2から排出される消化汚泥の一部を消化汚泥調質設備5に移送することにより、脱水設備4に供給する消化汚泥の量を減らすことができる。その結果、脱水設備4における凝集剤の添加率と脱水ケーキの生成量を削減することができ、脱水処理に要する費用を大幅に低減することが可能となる。
【0049】
また、消化汚泥の一部を消化汚泥調質設備5に移送し活性汚泥(調質汚泥)に変換することにより、接触混合設備6に供給される活性汚泥の量を増やすことができる。その結果、調質汚泥に吸着し分離濃縮後にメタン発酵設備2に移送される有機物の量が増え、メタン発酵設備2においてメタン発酵処理により発生する消化ガス量を増大させることができる。
【0050】
さらに、消化汚泥の一部を消化汚泥調質設備5に移送することにより、消化汚泥が調質されて好気的な活性汚泥に変換されるため、バイオソープションに必要な十分な活性汚泥量を確保することが可能となる。
【実施例0051】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0052】
図2の排水処理装置20を用いて下水の排水処理を行った。但し、設備1として細目スクリーン(目開き:15mm)及び微細目スクリーン(目開き:250μm)を使用した。まず、日最大汚水量100,000m
3/日、日平均汚水量75,000m
3/日の流入下水を設備1に連続的に供給し、スクリーンにより粗大固形物を分離した。次に、設備1で分離した粗大固形物を破砕機により破砕した後メタン発酵設備2に移送し、メタン発酵処理を実施した。このメタン発酵処理により消化ガスと消化汚泥が生成し、消化ガスはエネルギー回収設備3に移送するとともに、消化汚泥は全量を消化汚泥調質設備5に移送した。設備1で粗大固形物と分離された処理水は接触混合設備6に移送した。
【0053】
消化汚泥調質設備5には曝気装置を設置し、水処理設備8から排出された余剰汚泥(活性汚泥)を供給した。消化汚泥調質設備5では、消化汚泥と余剰汚泥(活性汚泥)とを曝気下で混合することにより接触させる調質処理を実行した。このとき、消化汚泥調質設備5に供給した消化汚泥と余剰汚泥の重量比率は1:0.66であった。この調質処理により、消化汚泥が好気的な活性汚泥(調質汚泥)に変換された。次いで、消化汚泥調質設備5から流出した調質汚泥(調質汚泥濃度:6,576mg/L)の一部を脱水設備4に移送し、残りの調質汚泥を接触混合設備6に移送した(接触混合設備6への調質汚泥注入量570m3/日)。
【0054】
接触混合設備6には曝気装置を設置し、設備1からの処理水と消化汚泥が曝気下で撹拌混合され、処理水に含まれていた溶解性有機物と微細固形物が調質汚泥に吸着された。接触混合設備6において、設備1から移送された処理水中の溶解性有機物量は、消化汚泥調質設備5から移送された調質汚泥量とほぼ同程度であった。その後、溶解性有機物と微細固形物が吸着した調質汚泥を含む混合液は、一部をバイパス経路に移送し、残りを分離濃縮設備7に移送した。
【0055】
分離濃縮設備7は加圧浮上分離装置を使用し、溶解性有機物と微細固形物が吸着した調質汚泥を濃縮して濃縮汚泥と分離水とに分離した。分離した濃縮汚泥(13,350kg/日、濃度:4重量%)はメタン発酵設備2に移送し、メタン発酵設備2において設備1から移送された粗大固形物とともにメタン発酵処理を施した(メタン発酵設備投入汚泥:394m3/日)。メタン発酵設備2から流出した消化汚泥(3,270kg/日)は全量を消化汚泥調質設備5に移送した。
【0056】
分離濃縮設備7から流出した分離水はバイパス経路を通過した接触混合設備6からの混合液とともに水処理設備8に供給した。水処理設備8(BOD-MLSS負荷:0.043kg/kg/日、MSLL濃度:5,000mg/L)は活性汚泥を収容するB-MBR法の装置であり、活性汚泥が分離濃縮設備7及びバイパス経路から移送された排水中の溶解性有機物を曝気下で分解した。その後、水処理設備8から排出された余剰汚泥(活性汚泥)(2,160kg/日)を消化汚泥調質設備5に移送した。
【0057】
一方、消化汚泥調質設備5から調質汚泥が移送された脱水設備4においては、有機高分子系の凝集剤(17kg/日)を添加して調質汚泥(脱水汚泥量:255m3/日)の脱水処理を実行した。脱水処理により脱水ケーキ(7.6m3/日)と脱水ろ液が生成し、脱水ろ液は設備1に移送するとともに、脱水ケーキは放流又は有効活用した。
【0058】
なお、同じ日最大汚水量及び日平均汚水量の流入下水を従来の標準活性汚泥法の装置(
図4)を用いて処理した場合には、脱水設備4に添加される凝集剤の量は87kg/日であり、脱水ケーキの生成量は29.2m
3/日である。
図2の排水処理装置を用いることにより、凝集剤の削減量は70kg/日、脱水ケーキ生成量の削減量21.6m
3/日となるため、消化汚泥の脱水処理に要する費用を大幅に低減することができた。
【0059】
下記表1に、本実施例で使用した各設備の容量と滞留時間(HRT)を示す。
【0060】
【0061】
また下記表2に、流入下水及び各設備の処理済水の水質を示す。
【0062】
【0063】
本実施例と同じ日最大汚水量及び日平均汚水量の流入下水を標準活性汚泥法の装置(
図4)を用いて処理した場合には、水処理後の処理水のBODは14mg/L、D-BOD(溶解性BOD)は8mg/L、SS(懸濁物質)は12mg/Lであることから、
図2の排水処理装置は従来の標準活性汚泥法による装置に比べ水質の良好な処理水を得ることができた。
【0064】
以上の結果から、メタン発酵設備2から流出した消化汚泥を消化汚泥調質設備5に移送して水処理設備8からの余剰汚泥と接触させ、調質された調質汚泥(活性汚泥)の一部を脱水設備4に移送することにより、凝集剤の使用量と脱水ケーキの生成量を削減することができ、脱水処理に要する費用を大幅に低減することができた。
【0065】
また、消化汚泥を消化汚泥調質設備5に移送して活性汚泥(調質汚泥)に変換することにより、接触混合設備6に供給される活性汚泥の量を増やすことができた。その結果、調質汚泥に吸着し分離濃縮後にメタン発酵設備2に移送される有機物の量が増え、メタン発酵処理により発生する消化ガス量を増やすことができた。すなわち、消化汚泥と余剰汚泥を接触させて調質する消化汚泥調質設備5を設けることにより、メタン発酵設備2で発生する消化ガス量を増大させ、エネルギー回収率の高い排水処理装置を提供することができた。
【0066】
さらに、消化汚泥を消化汚泥調質設備5に移送することにより、消化汚泥が調質されて好気的な活性汚泥に変換されたため、バイオソープションに必要な十分な活性汚泥(余剰汚泥)量を確保することができた。
【0067】
本実施例で使用した
図2の排水処理装置20は標準活性汚泥法による既存の装置を改修して構築することができる。例えば、接触混合設備6及び分離濃縮設備7は最初沈殿池を改造し、消化汚泥調質設備5及び水処理設備8(B-MBR法)は生物反応槽(エアレーションタンク)を改造して構築することができる。また、本実施の形態の排水処理装置を用いることにより、有機物の除去効率の低い最初沈殿池を有さない装置を構築することができる。
【0068】
以上、本発明について、上述した実施の形態を用いて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。