(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162979
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】蓄電池システム
(51)【国際特許分類】
H02H 7/122 20060101AFI20231101BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H02H7/122
H02J7/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073731
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】岩田 竜祐
(72)【発明者】
【氏名】川勝 正隆
【テーマコード(参考)】
5G053
5G503
【Fターム(参考)】
5G053AA05
5G053BA04
5G053CA04
5G053EB01
5G053EC01
5G053FA01
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA17
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】インバータの制御電源を供給しつつ、問題を発生させることなくプリチャージを完了できる蓄電池システムを提供する。
【解決手段】蓄電池システムA1において、蓄電設備2と、蓄電設備2が出力した直流電力を交流電力に変換するインバータ回路11と、インバータ回路11の直流側に接続された平滑コンデンサ12と、蓄電設備2と平滑コンデンサ12との間に接続され、平滑コンデンサ12をプリチャージするためのプリチャージ回路3と、を備えた。インバータ回路11の制御用の電源は、蓄電設備2とプリチャージ回路3とを接続する接続線から供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
前記蓄電池が出力した直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路の直流側に接続された平滑コンデンサと、
前記蓄電池と前記平滑コンデンサとの間に接続され、前記平滑コンデンサをプリチャージするためのプリチャージ回路と、
を備え、
前記インバータ回路の制御用の電源は、前記蓄電池と前記プリチャージ回路とを接続する接続線から供給される、
蓄電池システム。
【請求項2】
前記蓄電池の端子電圧と前記平滑コンデンサの端子間の電圧との差である差電圧を検出する検出手段をさらに備え、
前記プリチャージ回路は、
開路状態と閉路状態とを切り替える開閉手段と、
前記開閉手段に並列接続された抵抗器と、
前記差電圧が閾値以下になったときに、前記開閉手段を前記開路状態から前記閉路状態に切り替える切替手段と、
を備えている、
請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項3】
前記検出手段は、前記抵抗器の端子間の電圧を、前記差電圧として検出する、
請求項2に記載の蓄電池システム。
【請求項4】
前記開閉手段は、前記蓄電池と前記平滑コンデンサとを接続する正極側の接続線に配置されている、
請求項2または3に記載の蓄電池システム。
【請求項5】
前記開閉手段は、前記蓄電池と前記平滑コンデンサとを接続する負極側の接続線に配置されている、
請求項2または3に記載の蓄電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池の直流電力をインバータ回路により交流電力に変換して出力する蓄電池システムが知られている。蓄電池システムにおいて、インバータ回路の直流側には、平滑コンデンサが接続されている。平滑コンデンサは、直流電圧の変動を平滑化することで、インバータ回路の動作を安定させる。蓄電池システムの起動時に、蓄電池が平滑コンデンサを直接充電した場合、突入電流が流れて、回路を損傷する可能性がある。蓄電池システムは、突入電流を防止するために、平滑コンデンサをプリチャージするためのプリチャージ回路を備えている。プリチャージ回路は、抵抗器とDCリレーとが並列接続された回路である。プリチャージ回路は、まず、DCリレーを開路状態とし、抵抗器を介して電流を制限しながら平滑コンデンサを充電(プリチャージ)する。その後、プリチャージ回路は、DCリレーを閉路状態とし、蓄電池から直接、平滑コンデンサを充電する。特許文献1には、プリチャージ回路を備えた、電気自動車の蓄電池システムが開示されている。また、プリチャージ回路において、DCリレーを切り替えるためにプリチャージの終了を判定する方法として、様々な方法が提案されている。例えば、蓄電池の端子電圧と平滑コンデンサの端子間の電圧との差である差電圧が、予め設定した閾値以下になった時に、DCリレーを閉路状態に切り替えて、プリチャージを完了する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された充電システムでは、インバータの制御電源は、平滑コンデンサとプリチャージ回路とを接続する接続線からDC/DCコンバータを介して供給される。この場合、蓄電池の電流からインバータの制御電源の負荷電流を差し引いた電流が、平滑コンデンサの充電電流となる。平滑コンデンサが充電されるにつれて差電圧が小さくなると、蓄電池が出力する電流が小さくなる。蓄電池が出力する電流が制御電源の負荷電流に等しくなったとき、平滑コンデンサへは充電されなくなる。この時の差電圧が予め設定した閾値より大きい場合、DCリレーが閉路状態に切り替えられず、プリチャージを完了できないという問題が発生する。閾値として大きい値を設定すれば、この問題を回避できるが、DCリレーを閉路状態に切り替えたときの突入電流が大きくなるので、回路を損傷する可能性がある。また、プリチャージ回路の抵抗器の抵抗値を小さくすれば、差電圧をより小さくできる。しかし、インバータとプリチャージ回路との間の配線の短絡に対する対策として、プリチャージ回路の抵抗器の容量を大きくする必要があるので、プリチャージ回路の配置スペースおよびコストの面で好ましくない。
【0005】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、インバータの制御電源を供給しつつ、問題を発生させることなくプリチャージを完了できる蓄電池システムを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される蓄電池システムは、蓄電池と、前記蓄電池が出力した直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路の直流側に接続された平滑コンデンサと、前記蓄電池と前記平滑コンデンサとの間に接続され、前記平滑コンデンサをプリチャージするためのプリチャージ回路と、を備え、前記インバータ回路の制御用の電源は、前記蓄電池と前記プリチャージ回路とを接続する接続線から供給される。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記蓄電池の端子電圧と前記平滑コンデンサの端子間の電圧との差である差電圧を検出する検出手段をさらに備え、前記プリチャージ回路は、開路状態と閉路状態とを切り替える開閉手段と、前記開閉手段に並列接続された抵抗器と、前記差電圧が閾値以下になったときに、前記開閉手段を前記開路状態から前記閉路状態に切り替える切替手段と、を備えている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記検出手段は、前記抵抗器の端子間の電圧を、前記差電圧として検出する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記開閉手段は、前記蓄電池と前記平滑コンデンサとを接続する正極側の接続線に配置されている。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記開閉手段は、前記蓄電池と前記平滑コンデンサとを接続する負極側の接続線に配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、インバータ回路の制御用の電源は、蓄電池とプリチャージ回路とを接続する接続線から供給される。この場合、平滑コンデンサとプリチャージ回路とを接続する接続線から供給される場合と比較して、プリチャージ回路とインバータ回路との間の合成抵抗値が大きい。したがって、平滑コンデンサへ充電されなくなる時の前記差電圧が小さくなる。これにより、本発明に係る蓄電池システムは、問題を発生させることなくプリチャージを完了できる。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る蓄電池システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】従来の蓄電池システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図4】第2実施形態に係る蓄電池システムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る蓄電池システムA1の全体構成を示すブロック図である。
【0017】
蓄電池システムA1は、パワーコンディショナ1、蓄電設備2、およびプリチャージ回路3を備えている。本実施形態では、蓄電設備2およびプリチャージ回路3は、蓄電池収納盤4に収納されている。蓄電池システムA1は、蓄電設備2が出力する直流電力をパワーコンディショナ1によって交流電力に変換し、例えば電力系統に供給する。また、蓄電池システムA1は、電力系統から入力される交流電力をパワーコンディショナ1によって直流電力に変換し、蓄電設備2を充電する。
【0018】
蓄電設備2は、複数の蓄電池を備えている。各蓄電池は、それぞれ、繰り返し充放電を行うことができる二次電池である。各蓄電池は、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、または鉛蓄電池などである。
なお、各蓄電池は、二次電池ではなく、電気二重層コンデンサなどのコンデンサであってもよい。
図1においては、蓄電設備2が直列接続された複数の蓄電池を備え、蓄電設備2が全体として内部抵抗を備えていることを示している。なお、蓄電設備2が備える蓄電池の数および接続方法は限定されない。蓄電設備2は、パワーコンディショナ1から入力される直流電力によって充電され、また、自身に蓄積された電力を放電する。
【0019】
パワーコンディショナ1は、蓄電設備2と図示しない電力系統との間に電気的に接続されている。パワーコンディショナ1は、直流側が蓄電設備2に接続され、交流側が電力系統に接続されている。パワーコンディショナ1は、蓄電設備2が放電により出力した直流電力を交流電力に変換して、電力系統に供給する。また、パワーコンディショナ1は、電力系統から入力される交流電力を直流電力に変換して蓄電設備2に出力することで、蓄電設備2を充電する。つまり、パワーコンディショナ1は、蓄電設備2の充電および放電を制御する。パワーコンディショナ1は、インバータ回路11、平滑コンデンサ12、DCブレーカ13、およびDC/DCコンバータ回路14を備えている。
【0020】
インバータ回路11は、例えば3組6個のスイッチング素子を備えた三相インバータであり、各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、直流電力と交流電力との変換を行う。なお、インバータ回路11の構成は限定されない。
【0021】
平滑コンデンサ12は、インバータ回路11の直流側の端子対の間に接続された大容量のコンデンサである。平滑コンデンサ12は、蓄電設備2から入力される直流電圧の変動を平滑化することで、インバータ回路11の動作を安定させる。
【0022】
DCブレーカ13は、いわゆる遮断機であり、過電流などの異常発生時に、直流側の電路を遮断する。DCブレーカ13のインバータ回路11側、および、蓄電設備2側には、それぞれ、抵抗器が並列接続されている。
【0023】
DC/DCコンバータ回路14は、パワーコンディショナ1(インバータ回路11)の制御用の電源を供給する。DC/DCコンバータ回路14は、入力側が蓄電設備2とプリチャージ回路3とを接続する接続線に接続され、出力側がパワーコンディショナ1の図示しない制御装置に接続されている。DC/DCコンバータ回路14は、蓄電設備2から入力される電圧を、制御装置が必要とする電圧(例えば24V)に降圧して出力する。つまり、パワーコンディショナ1(インバータ回路11)の制御用の電源は、蓄電設備2とプリチャージ回路3とを接続する接続線から、DC/DCコンバータ回路14を介して供給される。なお、DC/DCコンバータ回路14の構成は限定されない。
【0024】
プリチャージ回路3は、蓄電設備2とパワーコンディショナ1とを接続する接続線に配置されている。プリチャージ回路3は、蓄電池システムA1の起動時、または、メンテナンス後の運転再開時などに、蓄電設備2が平滑コンデンサ12を直接充電することで流れる突入電流を防止する。プリチャージ回路3は、抵抗器31、電圧センサ32、DCリレー33、および切替回路34を備えている。
【0025】
DCリレー33は、蓄電設備2とパワーコンディショナ1とを接続する正極側の接続線に配置されている。DCリレー33は、いわゆる電磁接触器であり、切替回路34からの信号により開閉され、開路状態と閉路状態とを切り替える。なお、DCリレー33は、開路状態と閉路状態とを切り替える開閉手段であればよく、構成は限定されない。抵抗器31は、DCリレー33に並列接続しており、DCリレー33が開路状態のときに電流が流れる。抵抗器31は、流れる電流を制限する。
【0026】
電圧センサ32は、プリチャージ時に、抵抗器31の端子間の電圧を検出することで、蓄電設備2の端子電圧と平滑コンデンサ12の端子間の電圧との差である差電圧ΔVを検出する。なお、電圧センサ32は、差電圧ΔVを検出できればよく、配置位置および構成は限定されない。例えば、電圧センサ32は、蓄電設備2の端子電圧を検出するセンサと、平滑コンデンサ12の端子間の電圧を検出するセンサと、両センサの検出値の差である差電圧ΔVを演算する演算部とを備えてもよい。
【0027】
切替回路34は、電圧センサ32が検出した差電圧ΔVに基づいて、DCリレー33の開路状態と閉路状態とを切り替える。切替回路34は、差電圧ΔVが閾値より大きい間はDCリレー33を開路状態とし、差電圧ΔVが閾値以下になったときに、DCリレー33を閉路状態に切り替える。閾値は、後述するように、シミュレーションや実験に基づいて、適切な値が設定される。DCリレー33が閉路状態の場合、蓄電設備2とパワーコンディショナ1とが直接接続された状態になる。一方、DCリレー33が開路状態の場合、蓄電設備2とパワーコンディショナ1とは抵抗器31を介して接続された状態になる。
【0028】
蓄電池システムA1の起動時などには、平滑コンデンサ12が充電されていないので、差電圧ΔVが閾値より大きい。したがって、切替回路34は、DCリレー33を開路状態とする。蓄電設備2とパワーコンディショナ1とが抵抗器31を介して接続された状態なので、蓄電設備2から出力される電流が制限された状態で、平滑コンデンサ12が充電される。平滑コンデンサ12が充電されるに従って、差電圧ΔVが徐々に小さくなる。差電圧ΔVが閾値以下になったときに、切替回路34は、DCリレー33を閉路状態に切り替える。蓄電設備2とパワーコンディショナ1とが直接接続された状態になるが、差電圧ΔVが小さいので、大きな電流が流れない。
【0029】
図2は、蓄電池システムA1との比較のための、従来の蓄電池システムA100の全体構成を示すブロック図である。蓄電池システムA100は、パワーコンディショナ100、蓄電設備2、およびプリチャージ回路3を備えている。蓄電池システムA100は、パワーコンディショナ100の制御用の電源がパワーコンディショナ100の内部で供給される点で、蓄電池システムA1とは異なっている。
【0030】
図2に示すように、パワーコンディショナ100において、DC/DCコンバータ回路14は、入力側が平滑コンデンサ12とDCブレーカ13とを接続する接続線に接続されている。つまり、パワーコンディショナ100は、制御用の電源を、内部の平滑コンデンサ12とDCブレーカ13とを接続する接続線から、DC/DCコンバータ回路14を介して供給される。
【0031】
図1に示す蓄電池システムA1と
図2に示す蓄電池システムA100とにおいて、シミュレーションを行った。当該シミュレーションにおいて、蓄電設備2の複数の蓄電池の合成電圧を600Vとし、蓄電設備2の内部抵抗の抵抗値を250mΩとし、プリチャージ回路3の抵抗器31の抵抗値を600Ωとする。また、パワーコンディショナ1(100)の直流側の入出力の端子対とインバータ回路11の直流側の端子対との間で並列接続されている抵抗器の合成抵抗を97.6kΩとする。また、平滑コンデンサ12の容量を13200μFとする。パワーコンディショナ1(100)の制御装置は、最大で使用された場合、約50Wの電力が消費される。制御装置で消費される最大電力50Wを抵抗値に換算した抵抗換算値は、600V×600V÷50W=7.2kΩ(なお、各抵抗における電圧降下を無視した概算)になるので、当該シミュレーションにおいては、DC/DCコンバータ回路14を7.2kΩの抵抗器とした。
【0032】
図2に示す蓄電池システムA100では、97.6kΩの合成抵抗に並列接続された7.2kΩの抵抗が合成されるので、パワーコンディショナ100の直流側回路の全体の合成抵抗値は、6705Ωになる。したがって、平滑コンデンサ12へ充電されなくなる時の差電圧ΔV(プリチャージ回路3の抵抗器31の端子間の電圧)は、抵抗器31(600Ω)、パワーコンディショナ100の直流側回路の全体の合成抵抗(6705Ω)、および、蓄電設備2の内部抵抗(250mΩ)による分圧から、49.3Vになる。
図3(a)は、シミュレーションにおける平滑コンデンサ12の端子間の電圧の時間変化を示している。
図3(a)に示すように、平滑コンデンサ12の端子間の電圧は、「0」から蓄電設備2の端子電圧より49.3V低い電圧(550V程度)まで上昇している。
【0033】
平滑コンデンサ12へ充電されなくなる前にプリチャージを完了させようと思うと、切替回路34における差電圧ΔVの閾値は、電圧計測値の誤差等も考慮して、平滑コンデンサ12へ充電されなくなる時の差電圧ΔV(49.3V)より5V程度大きめの値を設定する必要がある。蓄電池システムA100では、差電圧ΔVの閾値として、例えば55Vが設定される。したがって、切替回路34は、差電圧ΔVが閾値(55V)以下になったときに、プリチャージを完了して、DCリレー33を閉路状態に切り替える。このときにDCリレー33を流れてパワーコンディショナ1に入力される最大電流は、55V÷250mΩ=220Aになる。
図3(b)は、シミュレーションにおけるDCリレー33を流れる電流の時間変化を示している。
図3(b)に示すように、DCリレー33を閉路状態に切り替えたときに、DCリレー33を流れる電流は上昇し、すぐに低下する。最大電流は220A程度になっている。
【0034】
一方、
図1に示す蓄電池システムA1では、制御用の電源が蓄電設備2とプリチャージ回路3とを接続する接続線から供給されるので、パワーコンディショナ100の直流側回路の全体の合成抵抗値は、97.6kΩのままである。したがって、平滑コンデンサ12へ充電されなくなる時の差電圧ΔVは、抵抗器31(600Ω)、パワーコンディショナ100の直流側回路の全体の合成抵抗(97.6kΩ)、および、蓄電設備2の内部抵抗(250mΩ)による分圧から、3.7Vになる。
図3(c)は、シミュレーションにおける平滑コンデンサ12の端子間の電圧の時間変化を示している。
図3(c)に示すように、平滑コンデンサ12の端子間の電圧は、「0」から蓄電設備2の端子電圧より3.7V低い電圧(596V程度)まで上昇している。
【0035】
平滑コンデンサ12へ充電されなくなる前にプリチャージを完了させようと思うと、切替回路34における差電圧ΔVの閾値は、電圧計測値の誤差等も考慮して、平滑コンデンサ12へ充電されなくなる時の差電圧ΔV(3.7V)より5V程度大きめの値を設定する必要がある。蓄電池システムA1では、差電圧ΔVの閾値として、例えば10Vが設定される。したがって、切替回路34は、差電圧ΔVが閾値(10V)以下になったときに、プリチャージを完了して、DCリレー33を閉路状態に切り替える。このときにDCリレー33を流れてパワーコンディショナ1に入力される最大電流は、10V÷250mΩ=40Aになる。
図3(d)は、シミュレーションにおけるDCリレー33を流れる電流の時間変化を示している。
図3(d)に示すように、DCリレー33を閉路状態に切り替えたときに、DCリレー33を流れる電流は上昇し、すぐに低下する。最大電流は40A程度になっている。
【0036】
以上のように、
図2に示す蓄電池システムA100では、プリチャージを完了できるように差電圧ΔVの閾値を設定すると、DCリレー33を閉路状態に切り替えたときの突入電流が、220A程度の大きな電流になる。一方、
図1に示す蓄電池システムA1では、プリチャージを完了できるように差電圧ΔVの閾値を設定しても、DCリレー33を閉路状態に切り替えたときの突入電流が、40A程度に抑えられる。
【0037】
パワーコンディショナ1と蓄電池収納盤4との間の外部配線で短絡事故等が発生して、プリチャージ回路3の抵抗器31に蓄電設備2からの電流が流れっぱなしになった場合でも、抵抗器31は、焼損しない電力容量を有するものが採用される。外部配線の完全短絡時の最大電流値は1A(=600V÷600Ω)なので、
図1に示す蓄電池システムA1では、抵抗器31(600Ω)での電力値は600Wになる。したがって、余裕度を2倍として、抵抗器31は、電力容量が1200Wの抵抗器が採用される。仮に、
図2に示す蓄電池システムA100において、切替回路34に設定される閾値を、
図1に示す蓄電池システムA1と同じ値(3.7V)にしようとすると、抵抗器31の抵抗値は41.6Ω(=(6705Ω+0.25Ω)×3.7V/(600V-3.7V))にする必要がある。この場合、外部配線の完全短絡時の最大電流値は14.4A(=600V÷41.6Ω)なので、抵抗器31(41.6Ω)での電力値は8626W(=41.6Ω×14.4A×14.4A)になる。余裕度を2倍とすると、抵抗器31として、電力容量が17.3kW程度の抵抗器が必要になる。したがって、プリチャージ回路3の配置のための大きなスペースが必要になり、コストも高くなる。
【0038】
なお、当該シミュレーションで設定した各値は、シミュレーションのための一例である。実際の蓄電池システムA1における、蓄電設備2の複数の蓄電池の合成電圧および内部抵抗の抵抗値、抵抗器31の抵抗値、パワーコンディショナ1内部の各抵抗器の抵抗値、平滑コンデンサ12の容量、ならびに、パワーコンディショナ1の制御装置の消費電力などは限定されない。
【0039】
次に、本実施形態に係る蓄電池システムA1の作用効果について説明する。
【0040】
本実施形態によると、蓄電池システムA1は、プリチャージ回路3を備えている。プリチャージ回路3は、差電圧ΔVが閾値より大きい間、DCリレー33を開路状態とし、抵抗器31を介して電流を制限しながら平滑コンデンサ12を充電(プリチャージ)する。したがって、プリチャージ回路3は、蓄電設備2が平滑コンデンサ12を直接充電することで流れる突入電流を防止できる。また、プリチャージ回路3は、差電圧ΔVが閾値以下になったときに、DCリレー33を閉路状態に切り替え、蓄電設備2が出力する電流で直接、平滑コンデンサ12を充電する。しかし、差電圧ΔVが小さくなっているので、大きな電流は流れない。
【0041】
また、本実施形態によると、パワーコンディショナ1(インバータ回路11)の制御用の電源は、蓄電設備2とプリチャージ回路3とを接続する接続線から供給される。この場合、平滑コンデンサ12とプリチャージ回路3とを接続する接続線から供給される場合と比較して、プリチャージ回路3とインバータ回路11との間の合成抵抗値が大きい。平滑コンデンサ12へ充電されなくなる時の差電圧ΔVが小さくなるので、切替回路34における差電圧ΔVの閾値は、大きな値を設定する必要がない。したがって、蓄電池システムA1は、切替回路34における差電圧ΔVの閾値を大きくしたり、抵抗器31の抵抗値を小さくすることなしに、プリチャージを完了できる。
【0042】
また、本実施形態によると、電圧センサ32は、抵抗器31の端子間の電圧を検出する。したがって、電圧センサ32は、プリチャージ時に、蓄電設備2の端子電圧と平滑コンデンサ12の端子間の電圧との差である差電圧ΔVを容易に検出できる。
【0043】
なお、本実施形態では、蓄電池システムA1が電力系統に接続される場合について説明したが、これに限られない。蓄電池システムA1は、モータに接続されて、蓄電設備2からモータに電力を供給し、また、回生によりモータから入力される電力で蓄電設備2を充電してもよい。
【0044】
〔第2実施形態〕
図4は、第2実施形態に係る蓄電池システムA2の全体構成を示すブロック図である。
図4において、上記第1実施形態と同一または類似の要素には、上記第1実施形態と同一の符号を付している。本実施形態に係る蓄電池システムA2は、プリチャージ回路3のDCリレー33の配置位置が、第1実施形態に係る蓄電池システムA1と異なる。
【0045】
本実施形態に係るプリチャージ回路3では、DCリレー33が、蓄電設備2とパワーコンディショナ1とを接続する負極側の接続線に配置されている。
【0046】
本実施形態においても、プリチャージ回路3は、差電圧ΔVが閾値より大きい間、DCリレー33を開路状態として平滑コンデンサ12をプリチャージするので、突入電流を防止できる。また、プリチャージ回路3は、差電圧ΔVが閾値以下になったときに、DCリレー33を閉路状態に切り替えて、平滑コンデンサ12を充電する。しかし、差電圧ΔVが小さくなっているので、大きな電流は流れない。また、本実施形態においても、パワーコンディショナ1(インバータ回路11)の制御用の電源が蓄電設備2とプリチャージ回路3とを接続する接続線から供給されるので、蓄電池システムA2は、問題を発生させることなく、プリチャージを完了できる。また、蓄電池システムA2は、蓄電池システムA1と共通する構成により、蓄電池システムA1と同等の効果を奏する。
【0047】
本発明に係る蓄電池システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る蓄電池システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0048】
A1~A2:蓄電池システム、11:インバータ回路、12:平滑コンデンサ、2:蓄電設備、3:プリチャージ回路、31:抵抗器、32:電圧センサ、33:DCリレー、34:切替回路