(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162980
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】配送システム、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20230101AFI20231101BHJP
【FI】
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073732
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 英史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
5L049CC51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不正使用を抑制することが可能な配送システム、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】配送システムDSは、依頼情報データベースDBRを有する。依頼情報データベースは、集荷ロボットPRが物品ラベル又は回収ラベルに付着した配送依頼者CLの指紋又は皮膚片から抽出される情報或いは配送依頼者の顔又は眼球の映像から取得した情報を、配送依頼者の生体情報BIとして記憶する。管理サーバMTは、集荷ロボットから配送依頼者の生体情報を取得し、依頼情報データベースに登録する。依頼情報データベースは、配送物PAの依頼情報RIを配送依頼者の生体情報と紐づけて記憶し、集荷ロボットのカメラCMの映像に基づいて、集荷時の配送依頼者の行動を監視し、不審な行動が検出された場合にオペレータOPに介入依頼を行う。不審な行動には、生体情報の取得を意図的に回避する行動などが含まれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配送物の依頼情報を配送依頼者の生体情報と紐づけて記憶する依頼情報データベースを有する、配送システム。
【請求項2】
不審な配送依頼が行われた場合にオペレータに介入依頼を行う配送管理部を有する、
請求項1に記載の配送システム。
【請求項3】
前記配送依頼に使用された利用者端末のトレーサビリティに基づいて不審な配送依頼が特定される、
請求項2に記載の配送システム。
【請求項4】
前記依頼情報の発信地と前記配送物の集荷地との関係性に基づいて不審な配送依頼が特定される、
請求項2に記載の配送システム。
【請求項5】
前記配送管理部は、前記配送依頼者の前記生体情報が、不審者データベースに登録された不審者の前記生体情報と一致した場合に前記オペレータに介入依頼を行う、
請求項2に記載の配送システム。
【請求項6】
前記配送管理部は、前記不審者と前記生体情報が一致した前記配送依頼者を捕獲するための捕獲指令を行う、
請求項5に記載の配送システム。
【請求項7】
前記配送物を集荷する際の前記配送依頼者の映像に基づいて、前記配送管理部に通知すべき不審行動を検出する行動監視部を有する、
請求項2に記載の配送システム。
【請求項8】
前記行動監視部は、前記配送物に貼付される物品ラベルまたは前記配送依頼者から回収される回収ラベルに前記配送依頼者の指紋または皮膚片が付着することを回避する行動を前記不審行動として検出する、
請求項7に記載の配送システム。
【請求項9】
前記依頼情報データベースは、前記物品ラベルまたは前記回収ラベルに付着した前記配送依頼者の指紋または皮膚片から抽出される情報を前記配送依頼者の前記生体情報として記憶する、
請求項8に記載の配送システム。
【請求項10】
前記依頼情報が印刷された前記物品ラベルを供給する供給機構と、
前記物品ラベルから剥離されたフィルムを前記回収ラベルとして回収する回収機構と、
を有する請求項9に記載の配送システム。
【請求項11】
前記供給機構および前記回収機構を内蔵し、前記配送依頼者から指定された集荷地に移動して前記配送依頼者から前記配送物を受け取る集荷ロボットを有する、
請求項10に記載の配送システム。
【請求項12】
前記集荷ロボットは、前記配送物を受け取る際の前記配送依頼者および周囲の映像を記録する記録部を有する、
請求項11に記載の配送システム。
【請求項13】
前記依頼情報データベースは、前記配送物を集荷する際に取得された前記配送依頼者の顔または眼球の特徴を示す情報を前記配送依頼者の前記生体情報として記憶する、
請求項7に記載の配送システム。
【請求項14】
前記行動監視部は、前記配送依頼者が前記オペレータと対話する際の前記配送依頼者の音声または眼球の挙動を解析して前記不審行動を検出する、
請求項7に記載の配送システム。
【請求項15】
前記配送管理部は、集荷された前記配送物のスクリーニング結果に基づいて不正が疑われる配送依頼に対して、前記オペレータに介入依頼を行う、
請求項2に記載の配送システム。
【請求項16】
地域ごとの犯罪履歴を記憶した地域犯罪データベースを有し、
前記配送管理部は、前記配送物の受領地の前記犯罪履歴に基づいて、前記配送物に実施すべきスクリーニングの種類を指定する、
請求項15に記載の配送システム。
【請求項17】
前記配送管理部は、不審な配送依頼が行われた前記配送物を選択的にスクリーニングの対象に指定する、
請求項15に記載の配送システム。
【請求項18】
前記配送管理部は、不審な配送依頼が行われた前記配送物が受領者に受領される前に、前記受領者に対して配送の承認を行うか否かの確認を行う、
請求項2に記載の配送システム。
【請求項19】
前記依頼情報データベースは、不審な配送依頼が行われた前記配送物の前記依頼情報を、前記配送物の配送ロボットから取得した前記受領者の生体情報と紐づけて記憶する、
請求項18に記載の配送システム。
【請求項20】
配送物の依頼情報を配送依頼者の生体情報と紐づけて記憶することを有する、コンピュータにより実行される情報処理方法。
【請求項21】
配送物の依頼情報を配送依頼者の生体情報と紐づけて記憶することをコンピュータに実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配送システム、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転の社会導入は物品搬送の新たな可能性を広げる。物品搬送への応用例として、無人タクシーや、宅配による個人間での物品の交換などが考えられる。この種の配送システムでは、配送物の集荷および配送が無人のロボットによって自動で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の配送システムでは、物品の集荷および配送に人間が介在しない。誰もが人から監視されずに自由に物品を搬送することができる。そのため、配送システムが、違法物品の取り引きやテロなどの犯罪行為に利用される可能性がある。
【0005】
そこで、本開示では、不正使用を抑制することが可能な配送システム、情報処理方法およびプログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、配送物の依頼情報を配送依頼者の生体情報と紐づけて記憶する依頼情報データベースを有する、配送システムが提供される。また、本開示によれば、前記配送システムの情報処理がコンピュータにより実行される情報処理方法、ならびに、前記配送システムの情報処理をコンピュータに実現させるプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】集荷ロボットによる集荷作業の一例を示す図である。
【
図3】生体情報の取得方法の他の例を示す図である。
【
図4】依頼情報および依頼情報データベースの登録情報の一例を示す図である。
【
図5】配送システムの処理フローの一例を示す図である。
【
図6】管理サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0009】
なお、説明は以下の順序で行われる。
[1.発明の概要]
[2.配送システムの構成]
[3.集荷作業]
[4.依頼情報データベース]
[5.情報処理方法]
[6.ハードウェア構成例]
[7.効果]
【0010】
[1.発明の概要]
自動運転の普及に伴い、今後、我々の生活のでは自動化されたモビリティを用いた物品の自動配送が当たり前のようになるとみられる。その一つが、従来なら人の移動専用として用いられてきたタクシーの物品運搬への拡張活用である。もう一つの配送の仕組みは、小型の自律走行車両やドローンを用いた物品の配送が挙げられる。
【0011】
地域のニーズの大きさ、人口密度およびドライバー人口の減少などの様々な条件で配送機器の社会への浸透は決まるとみられる。しかし、昨今のe-commerseやsharingの隆盛に鑑みると、今後は商業的な物品の配送と相まって個人間の配送も一定の普及が進むと思われる。
【0012】
個人間の配送で問題となるのが、移送手段をテロや違法薬物の配送などに使用することである。そのため、このような不正使用に対する抑制の仕組みが必要となる。従来の個人間での物品の配送には、宅配便や郵便が用いられている。物品の集配には人が介在し、荷物の発送者や受領者が介在者に明示される。このことは、不正使用を行おうとする者に対して心理的な圧迫となる。コンビニなどでの荷物の預かりであれば、偽名を使っても入店時の監視カメラの映像に発送者が映り込む。そのため、発送者の特定が可能である。
【0013】
しかし、無人の集配車によって一切の集配作業が行われるようになると、従来、人が介在することによって検出もしくは対処できていた予防的な仕組みが活かせなくなる。配送依頼者は、スマートフォンで配送依頼を行うだけで、集配車の呼び出し、集荷および配送の手続きを完了することができる。誰もが素性を明かすことなく物品の配送を行うことができるため、犯罪者にとっては追跡リスクがなくなり、不正使用を行いやすくなる。
【0014】
無人配送に対する管理が不十分になると、匿名性を悪用して違法な物品のやり取りや搬送、さらにはテロなどの社会不安を招きかねない。従来の管理手法では、配送依頼が行われた後または配送物の受領時の取り締まりに重点が置かれていた。例えば、特許文献1には、集荷された配送物の検査方法、および、配送物の受領者の認証方法などが記載されている。しかし、配送依頼段階での取り締まりが十分でないため、不正な配送依頼を効果的に抑制することができない。
【0015】
そこで、本開示では、配送依頼段階で不正な配送依頼を抑止する手法を提案する。本開示では、配送依頼時に配送依頼者の生体情報(指紋情報、顔情報、DNA情報、虹彩情報など)を取得し、取得した生体情報を配送物の依頼情報と紐づけて管理する。生体情報の取得は、配送作業の一環として行われる。そのため、無人配送の利便性を損なうことなく、配送依頼者の管理を行うことができる。本開示の技術を用いれば、無人配送のルール形成が可能となり、社会の不安定要素となる無制限な不正使用を阻止することができる。また、本開示では、配送依頼された預かり荷物の内容物を調べるために、効率的かつ柔軟な成分回収およびスクリーニング検査が実施される。これにより、配送物の集荷を行う搬送機器単体の構成を簡素化することができる。以下、本開示の技術を用いた配送システムについて具体的に説明する。
【0016】
[2.配送システムの構成]
図1は、配送システムDSの一例を示す図である。
【0017】
配送システムDSは、自律移動型のロボットRBを用いて配送物PAの自動配送を行うシステムである。配送システムDSは、利用者端末TM、管理サーバMT、依頼情報データベースDBR、不審者データベースDBS、地域犯罪データベースDBC、集荷ロボットPRおよび配送ロボットDRを有する。利用者端末TM、管理サーバMT、依頼情報データベースDBR、不審者データベースDBS、地域犯罪データベースDBC、集荷ロボットPRおよび配送ロボットDRは、ネットワークを介して接続されている。
【0018】
利用者端末TMは、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコンおよびデスクトップパソコンなどの情報端末である。利用者端末TMは、配送依頼を行ったクライアント(配送依頼者CL)によって保有される。通常、配送依頼者CLは、配送物PAの保持者か保持者の関係者(家族や友人など)であるが、本開示では配送物PAの保持者が配送依頼者CLである例が説明される。利用者端末TMは、配送物PAの物品名、配送依頼者CL、集荷地CPおよび配送先(受領者RE、受領地)などを特定した依頼情報RIを管理サーバMTに送信する。
【0019】
管理サーバMTは、配送物PAの依頼情報RIを処理する情報処理装置である。管理サーバMTは、配送物PAの集配作業を管理する配送管理部として機能する。管理サーバTMは、依頼情報RIに基づいて集荷ロボットPRおよび配送ロボットDRの手配を行う。
【0020】
管理サーバMTは、配送物PAの配送状況を監視し、必要なタイミングで、あるいは、問い合わせに応じて、配送依頼者CLおよび受領者REに配送状況を通知する。配送状況に関する情報は、管理センタMCに設置されたモニタに映し出される。管理者MCは、モニタ上で配送物PAの配送状況を把握することができる。
【0021】
集荷ロボットPRは、依頼情報RIに示された集荷地CPに移動し、配送物PAの集荷作業を行う。集荷ロボットPRには、収納ボックスBXが設けられている。配送依頼者CLは、収納ボックスBXの蓋を開けて配送物PAを収納ボックスBXに積み込む。
【0022】
収納ボックスBXには、配送物PAから発せられる揮発性物質を収集する機構が設けられてもよい。例えば、収納ボックスBXは、吸引機構を備えた準密閉空間となっており、収納ボックスBX内部から吸引された空気に含まれる配送物PA由来の揮発性物質が吸着剤に吸着される。吸着剤は、回収カプセルに封入されて保管される。吸着剤には、配送依頼者との紐づけを行うためのタグが付与される。タグが付与された吸着剤は、配送物PAとともに集配センタCDに配送される。吸着剤に吸着された揮発性物質は、集配センタCDに設置された高精度のスクリーニング用の設備で分析される。
【0023】
集荷ロボットPRは、集荷作業を行う配送依頼者CLから生体情報BIを取得する。生体情報BIとは、生体認証により個体を識別可能な情報を意味する。生体情報BIとしては、例えば、指紋情報、顔情報、虹彩情報およびDNA情報などが挙げられる。生体情報BIは、集荷作業を行う配送依頼者CLの映像、または、配送依頼者CLと集荷ロボットPRとのインタラクションの結果(指紋や皮膚片の付着など)に基づいて取得される。
【0024】
管理サーバMTは、集荷ロボットPRから配送依頼者CLの生体情報BIを取得し、依頼情報データベースDBRに登録する。依頼情報データベースDBRは、配送物PAの依頼情報RIを配送依頼者CLの生体情報BIと紐づけて記憶する。管理サーバMTは、集荷ロボットPRのカメラCMの映像に基づいて、集荷時の配送依頼者CLの行動を監視する。管理サーバMTは、不審な行動が検出された場合にオペレータOPに介入依頼を行う。不審な行動には、生体情報BIの取得を意図的に回避する行動などが含まれる。
【0025】
不審な配送依頼は、配送依頼の受付段階でも特定され得る。管理サーバMTは、不審な配送依頼が行われた場合にオペレータOPに介入依頼を行う。不審な配送依頼は、種々の情報に基づいて特定される。例えば、配送依頼に使用された利用者端末TMのトレーサビリティに基づいて不審な配送依頼が特定される。トレーサビリティとは、利用者端末TMの特定を通じて、利用者端末TMの契約者の身元確認が行えることを意味する。トレーサビリティの判定は、SMS(Short Message Service)認証などを用いて行われる。継続的な利用がされていない端末が利用されている場合は、発信地TPの情報を提供するようにしてもよい。
【0026】
不審な配送依頼は、依頼情報RIの発信地TPと配送物PAの集荷地CPとの関係性に基づいて特定することもできる。配送システムDSを不正使用しようとする者は、居場所を特定されるのを嫌がる傾向がある。居場所が頻繁に変更されるため、発信地TPと集荷地CPは大きく異なる場合がある。このような不審者特有の行動パターンが検出された場合には、不審な配送依頼が行われたと認識することができる。
【0027】
過去に不正使用が疑われた配送依頼者CLは、不審者として不審者データベースDBSに登録される。不審者データベースDBSは、不審者ごとに、不審者の氏名および生体情報BIを記憶する。管理サーバMTは、配送依頼者CLの生体情報BIが、不審者データベースDBSに登録された不審者の生体情報BIと一致した場合にオペレータOPに介入依頼を行う。
【0028】
管理サーバMTは、必要に応じて、不審者と生体情報BIが一致した配送依頼者CLを捕獲するための捕獲指令を行うことができる。捕獲指令の内容は任意に設定される。例えば、捕獲用の道具を用いて配送依頼者CLの身柄を拘束させる指令や、サイレンなどを鳴らして周囲の人間に配送依頼者CLの捕獲を促す指令などが捕獲指令として設定される。集荷ロボットPRは、捕獲指令に基づいて配送依頼者CLを捕獲するための処理を行う。
【0029】
集荷ロボットPRは、配送依頼者CLから受領した配送物PAを集配センタCDに配送する。集配センタCDでは、必要に応じて、集荷された配送物PAのスクリーニングが行われる。スクリーニング結果は、管理サーバMTに送信される。管理サーバMTは、スクリーニング結果に基づいて、不正が疑われる配送依頼を特定する。管理サーバMTは、不正が疑われる配送依頼に対して、オペレータOPに介入依頼を行う。
【0030】
集配センタCDは、複数のスクリーニング用の設備を有する。実施すべきスクリーニングの種類は、地域犯罪データベースDBCに基づいて選択することができる。地域犯罪データベースDBCは、地域ごとの犯罪履歴を記憶する。犯罪履歴は、犯罪の種類、犯罪が行われた地域および犯罪が行われた日時に関する情報を含む。例えば、管理サーバMTは、配送物PAの受領地の犯罪履歴に基づいて、配送物PAに実施すべきスクリーニングの種類を指定する。管理サーバMTは、不審な配送依頼が行われた配送物PAを選択的にスクリーニングの対象に指定する。
【0031】
スクリーニングでは、全ての配送物PAを事細かく分析する必要はない。スクリーニングの頻度、実施条件および検出対象物質は、地域の事件などの発生事情や時代の情勢に応じて最適化することができる。スクリーニングが実施されることが明示されるだけでも、不正な配送依頼を行おうとする配送依頼者CLに対して心理的な抑制効果が期待できる。
【0032】
集配センタCDでは、作業員が配送ロボットDRに配送物PAを積み込む。配送ロボットDRには収納ボックスBXが設けられており、作業員は収納ボックスBXの蓋を開けて配送物PAを収納ボックスBXに積み込む。配送ロボットDRは、依頼情報RIに示された受領地に移動し、認証された受領者REに配送物PAを引き渡す。
【0033】
受領者REの認証は、予め設定されたパスワードまたは登録済みの受領者REの生体情報などに基づいて行われる。例えば、管理サーバMTには、受領者REの指紋情報が登録されている。管理サーバMTは、配送ロボットDRに受領者REの登録済みの指紋情報を送信する。配送ロボットDRには指紋センサが内蔵されており、受領者REは指紋センサに指をタッチすることで指紋の照合を行う。
【0034】
受領者REの認証が行われると、収納ボックスBXのロックが解除される。ロックの解除によって収納ボックスBXの蓋が開き、配送物PAが取り出せるようになる。受領者REの認証が不調に終わった場合、あるいは、不審な配送依頼に関わる配送物PAの受け渡しの際には、オペレータOPが介入を行うことができる。ロックの解除は、一連の指紋照合の後に行われる。これにより、受領者REが自身に紐づけされる情報を残さずに配送物PAを持ち逃げすることが抑制される。
【0035】
不審な配送依頼が行われた場合には、不正使用の疑いがあるため、管理サーバMTは、不審な配送依頼が行われた配送物PAが受領者REに受領される前に、受領者REに対して配送の承認を行うか否かの確認を行う。
【0036】
受領者REが不審な配送物PAに対して受領を承認した場合、受領者REは不正使用に関与している可能性がある。そのため、管理サーバMTは、配送ロボットDRに受領者REの生体情報BIを取得させる。生体情報BIは、受け取り作業を行う受領者REの映像、または、受領者REと配送ロボットDRとのインタラクションの結果(指紋や皮膚片の付着など)に基づいて取得される。依頼情報データベースDBRは、不審な配送依頼が行われた配送物PAの依頼情報RIを、配送物PAの配送ロボットDRから取得した受領者REの生体情報BIと紐づけて記憶する。
【0037】
[3.集荷作業]
図2は、集荷ロボットPRによる集荷作業の一例を示す図である。
【0038】
集荷ロボットPRは、カメラCMを用いて外界を認識する。カメラCMの映像は、集荷ロボットPRの経路計画、および、集荷作業中の不審行動の検出に利用される。例えば、集荷ロボットPRは、記録部RCおよび行動監視部BMを有する。記録部RCは、カメラCMで撮影された外界の映像を記録する。行動監視部BMは、配送物PAを集荷する際の配送依頼者CLの映像に基づいて、管理サーバMTに通知すべき不審行動を検出する。
【0039】
不審行動としては、集荷ロボットPRによる生体情報BIの取得を配送依頼者CLが意図的に阻害する行動などが挙げられる。例えば、行動監視部BMは、配送物PAに貼付される物品ラベルALまたは配送依頼者CLから回収される回収ラベルRLに配送依頼者CLの指紋または皮膚片が付着することを回避する行動を不審行動として検出する。行動監視部BMは、配送依頼者CLがオペレータOPと対話する際の配送依頼者CLの音声または眼球の挙動を解析して不審行動を検出してもよい。
【0040】
ラベルの供給および回収は供給機構SMおよび回収機構RMにより行われる。供給機構SMは、依頼情報RIが印刷された物品ラベルALを供給する。回収機構RMは、物品ラベルALから剥離されたフィルムRFを回収ラベルRLとして回収する。
【0041】
供給機構SMおよび回収機構にRMは、例えば、集荷ロボットPRに内蔵される。集荷ロボットPRは、配送依頼者CLから指定された集荷地CPに移動し、配送依頼者CLに物品ラベルALを供給する。配送依頼者CLは、物品ラベルALをフィルムRFから剥がして配送物PAに貼り付ける。物品ラベルALから剥がされたフィルムRFは、回収ラベルRLとして回収機構RMに回収される。集荷ロボットPRは、配送依頼者CLから物品ラベルALが貼付された配送物PAを受け取り、収納ボックスBXに収納する。
【0042】
集荷ロボットPRは、音声または映像を用いて、物品ラベルALの貼り付け作業を素手で行うよう配送依頼者CLに通知する。物品ラベルALの貼り付け作業を素手で行うことで、配送依頼者CLの指紋や皮膚片が物品ラベルALおよび回収ラベルRLに付着する。付着した指紋からは端点および分岐点などの特徴を示す情報(指紋情報)が抽出される。皮膚片からはDNA情報が抽出される。依頼情報データベースDBRは、物品ラベルALまたは回収ラベルRLに付着した配送依頼者CLの指紋または皮膚片から抽出される情報を配送依頼者CLの生体情報BIとして記憶する。
【0043】
供給機構SMおよび回収機構RMの具体例としては、ロールフィルムの巻き出し機構および巻き取り機構を用いることができる。供給機構SMは、ロール状のフィルムRFに物品ラベルALを付着させたロールフィルムを巻き出す。配送依頼者CLはロールフィルムの取り扱いの過程で一度は物品ラベルALおよびフィルムRFに触れることになる。回収機構RMは、配送依頼者CLの指紋や皮膚片のついたフィルムRFを巻き取る。このような機構を用いることで、配送依頼者CLの指紋や皮膚片が容易に回収される。
【0044】
生体情報BIは、配送依頼者CLの顔または眼球の映像から取得することもできる。例えば、配送依頼者CLの顔の映像からは、目、鼻および口などの特徴点の位置や顔領域の位置および比率などの特徴を示す情報(顔情報)が抽出される。眼球の映像からは、瞳孔の周りの虹彩パターンの特徴を示す情報(虹彩情報)が抽出される。依頼情報データベースDBRは、配送物PAを集荷する際に取得された配送依頼者CLの顔または眼球の特徴を示す情報を配送依頼者CLの生体情報BIとして記憶することができる。
【0045】
生体情報BIは、配送依頼者CLを追跡する際の有効な手段となる。記録部RCが、配送物PAを受け取る際の配送依頼者CLおよび周囲の映像を記録することも、配送依頼者CLやその関係者の特定に役立つ。このことは、不正を行おうとする配送依頼者CLにとって心理的な圧迫となり、不正使用を抑止する動機づけとなる。
【0046】
心理的な効果を高めるために、配送依頼者CLに対して、配送物PAが違法物品を含まない旨の承諾書のサインを求める運用を行ってもよい。こうすることで、配送依頼者CLが違法な取り引きを試みた場合に、不安心理が働き、異常な回避行動が引き起こされる可能性がある。異常な回避行動を行動監視部BMで監視することで、不審な配送依頼が検出しやすくなる。
【0047】
図3は、生体情報BIの取得方法の他の例を示す図である。
【0048】
図3の例では、配送依頼者CLの指紋または皮膚片を付着させるための粘着フィルムAFが供給機構SMから供給される。例えば、粘着フィルムAFは、物品ラベルALとともにフィルムRFに貼り付けられている。配送依頼者CLは、物品ラベルALを配送物PAに貼り付けた後、粘着フィルムAFをフィルムRFから剥がす。配送依頼者CLは、粘着フィルムAFに指紋や皮膚片を付着させた後、粘着フィルムAFをフィルムRFに貼り戻す。粘着フィルムAFが貼り付けられたフィルムRFは、回収ラベルRLとして回収機構RMに回収される。
【0049】
[4.依頼情報データベース]
図4は、依頼情報RIおよび依頼情報データベースDBRの登録情報の一例を示す図である。
【0050】
依頼情報RIは、依頼者情報、依頼地情報、配送物情報および受領者情報を含む。依頼者情報は、配送依頼者CLの氏名および住所の情報を含む。依頼地情報は、依頼情報RIの発信地TPおよび配送物PAの集荷地CPの情報を含む。配送物情報は、配送物PAの物品名よび配送物PAの梱包前の画像を含む。画像には、梱包作業を映した映像を含めてもよい。受領者情報は、受領者REの氏名および配送物PAの受領地の情報を含む。
【0051】
依頼情報データベースDBRは、配送依頼ごとに、依頼情報RIおよび配送依頼者CLの生体情報BIを記憶する。依頼情報データベースDBRには、依頼者情報として、配送依頼者CLの氏名および住所ならびに配送依頼者CLの生体情報BIが登録される。受領者REが不正使用に関与している疑いがある場合には、依頼情報データベースDBRには、受領者情報として、受領者REの氏名、配送物PAの受領地、および、受領者REの生体情報BIが登録される。
【0052】
[5.情報処理方法]
図5は、配送システムCSの処理フローの一例を示す図である。
【0053】
配送依頼者CLは、利用者端末TMを用いて任意の発信地TP(自宅など)から管理サーバMTに依頼情報RIを送信する。管理サーバMTは、依頼情報RIをチェックし、不審な配送依頼についてはオペレータOPに介入依頼を行う。
【0054】
例えば、発信地TPと集荷地CPとが大きく離れていたり、配送物PAの画像に不審物が含まれている場合には、不審な配送依頼であると判定される。例えば、起爆装置などの不審物が配送物PAに含まれている場合には、オペレータOPは、配送依頼者CLに対して配送物PAを電磁シールドボックスなどのリモート起爆防止装置に収納することを要請したり、電源の取り外しを要請したりすることができる。人が密集する地区(イベント会場や公園など)や時刻への配送であって、かつ、受領者REが十分に特定されない場合には、テロの疑いがあるため、管理サーバMTは配送依頼を拒否する。
【0055】
管理サーバMTは、配送依頼者CLによる配送システムDSの利用実績の有無を判定する。例えば、管理サーバMTは、過去の配送システムDSの利用者の情報を記憶した利用者データベースを有する。管理サーバMTは、依頼情報RIを送信した利用者端末TMのアドレスを利用者データベースと照合し、配送依頼者CLの利用実績の有無を判定する。
【0056】
過去に利用実績がない場合には、管理サーバMTは、配送依頼者CLの本人認証を行うための処理を実施する。例えば、管理サーバMTは、SMS認証などを用いて利用者端末TMのトレーサビリティを判定する。トレーサビリティが得られない場合には、管理サーバMTは、配送依頼を拒否する。
【0057】
管理サーバMTは、過去に利用実績がない配送依頼者CLに対して保証人を要求することができる。保証人から保証債務や身元確認保証の承諾が得られた場合、管理サーバMTは、配送先となる受領者REに対して受領責任についての確認を行う。受領者REから受領責任について承諾が得られた場合に、管理サーバMTは配送依頼を受け付ける。
【0058】
なお、保証人は、身元の確認や追跡ができる与信記録等が取得されている必要がある。保証人は、違法な取り引きなどの刑事責任が問われるとなれば、素性のわからない第三者の保証人となることを引き受けない。利用実績がある携帯電話などの端末を通して承認を行う運用では、追跡が行える手がかりが多く残る。そのため、犯罪者は、このような運用を用いたシステムを避けようとする。このような運用は、利用実績が浅い契約回線を用いた申請を拒絶することで可能となる。利用実績を積み上げた利用者であれば、発信地TP(所在地)の情報などから配送依頼者CLの行動履歴が把握されやすくなる。このことは、犯罪者への心理的圧迫となる。
【0059】
保証人が得られない場合には、管理サーバMTはオペレータOPに介入依頼を行う。オペレータOPは、配送依頼者CLと通話を行い、配送依頼者CLの身元確認を行う。オペレータOPは、必要に応じて、配送依頼者CLに対して運転免許証の画像の提示などの追加の入力を要請することができる。オペレータOPは、管理サーバMTに対して、配送依頼の不審度についての評価結果を通知する。評価結果は、例えば、官能レーティングとして通知される。官能レーティングは、官能評価の結果を数値で表したものである。
【0060】
管理サーバMTは、依頼情報RIに含まれる配送依頼者CLの依頼者情報を不審者データベースDBSと照合する。管理サーバMTは、配送依頼者CLが不審者データベースDBSに登録された不審者と一致する場合には、配送依頼を拒否する。
【0061】
上述のチェックが完了し、適正な配送依頼であることが判明したら、管理サーバMTは、集荷ロボットPRおよび配送ロボットDRの手配を行う。集荷ロボットPRは、管理サーバMTに集荷地CPへの到着予定時刻を通知し、集荷地CPに向けて移動を開始する。管理サーバMTは到着予定時刻を配送依頼者CLに通知する。集荷ロボットPRが集荷地CPに到着したら、集荷ロボットPRは配送依頼者CLに対して到着通知を行う。
【0062】
集荷ロボットPRは、配送依頼者CLの認証を行い、認証された配送依頼者CLに対して物品ラベルALの供給作業および回収ラベルRLの回収作業を実施する。配送依頼者CLの認証は、予め設定されたパスワードまたは登録済みの配送依頼者CLの生体情報などに基づいて行われる。例えば、管理サーバMTには、配送依頼者CLの顔情報が登録されている。管理サーバMTは、集荷ロボットPRに配送依頼者CLの登録済みの顔情報を送信する。集荷ロボットPRは、カメラCMで撮影された配送依頼者CLの顔を登録済みの顔情報と照合することで、配送依頼者CLの認証を行う。
【0063】
集荷ロボットPRは、配送依頼者CLの認証が行われると、収納ボックスBXのロックを解除する。配送依頼者CLは、収納ボックスBXの蓋を開けて、物品ラベルALが貼付された配送物PAを収納ボックスBXに積み込む。配送依頼者CLが収納ボックスBXの蓋を閉めると、吸引機構が作動し、配送物PAから発せられた揮発性物質を回収する。
【0064】
集荷ロボットPRは、配送依頼者CLが行う一連の集荷作業の映像を記録する。集荷ロボットPRは、記録された映像に基づいて配送依頼者CLの行動を監視する。監視結果は、例えば、レーティングとして出力される。レーティングは、配送依頼者CLの行動の不審度を数値で表したものである。レーティングは、記録された映像を、不審行動についての機械学習が行われた行動分析モデルに入力することで得られる。許容基準を超えるレーティングが出力された場合には、集荷ロボットPRは不審行動が検出されたと判定し、管理サーバMTに通知を行う。管理サーバMTは、不審行動に関する通知を受信した場合には、オペレータOPに介入依頼を行う。
【0065】
例えば、集荷ロボットPRは、配送依頼者CLが生体情報BIを取得されることを意図的に回避する行動を不審行動として検出する。例えば、物品ラベルALまたは回収ラベルRLに付着した指紋または皮膚片から生体情報BI(指紋情報またはDNA情報)が取得される場合には、手袋をはめて物品ラベルALの剥離および貼り付けを行う行動が不審行動として検出される。カメラCMで撮影された顔または眼球の映像から生体情報BI(顔情報または虹彩情報)が取得される場合には、マスク、サングラスおよび帽子などで顔や眼球を覆う行動が不審行動として検出される。
【0066】
集荷作業が完了すると、集荷ロボットPRは集配センタCDに向けて移動を開始する。管理サーバMTは、地域犯罪データベースDBCを用いて、配送先となる地域の犯罪状況を検索する。管理サーバMTは、配送先となる地域で行われやすい犯罪に基づいて、配送物PAに実施すべきスクリーニングの種類を決定し、集配センタCDに通知する。また、管理サーバMTは、集配センタCDに対して、収容ボックスBX内の回収カプセルの回収を指示する。回収カプセルからは、揮発性物質を吸着した吸着剤が回収される。
【0067】
なお、回収カプセルは、吸着剤の回収手段の一例にすぎない。吸着剤は、フィルムでラミネートして回収してもよい。例えば、搬送性および運用性に優れたロール状のフィルムで吸着剤を巻き取ることで効率的な回収が可能となる。吸着剤を巻き取ったフィルムはロールから巻き出されることで効率的に検査装置に供給される。
図3のような運用を行う場合には、集荷ロボットPRは、配送依頼者CLが貼り付けた粘着フィルムAFを正常に回収するまで配送物PAの配送を受け付けないようにしてもよい。この構成では、配送依頼者CLが一連の集荷作業を完了しないと配送が始まらない。そのため、確実に揮発性物質の回収および分析を行うことができる。
【0068】
集配センタCDでは、スクリーニング用の設備を用いて、吸着剤から取得された揮発性物質の分析が行われる。揮発性物質の分析結果に基づいて、配送物PAに不審物が含まれていないかが判定される。また、集配センタCDでは、配送物PAに対して、X線やテラヘルツ波を用いたスクリーニング用の設備を用いて、配送物PAに含まれる内容物の分析が行われる。これらの分析結果から、配送物PAに不審物が含まれていると判定された場合には、不審物についての通知が管理サーバMTに通知される。
【0069】
管理サーバMTは、不審物に関する通知を受信した場合には、オペレータOPに介入依頼を行う。オペレータOPは、配送依頼者CLに分析結果を通知し、不審物に関する問い合わせを行う。管理サーバMTは、受領者REに対して分析結果を通知する。管理サーバMTは、受領者REに対して、不正使用に関わる配送物PAを受領した場合の受領責任について通知し、配送物PAを受領するか否かを確認する。
【0070】
受領者REが配送物PAを受領すると回答した場合には、集配センタCDは配送ロボットDRに配送物PAの配送を実施させる。配送ロボットDRは、受領地への到着予想時刻をオペレータOPに通知する。管理サーバMTは、オペレータOPが受領手続きに介入できるように、オペレータOPに待機指令を行う。
【0071】
配送ロボットDRは、受領地に到着したら、受領者REに対して到着連絡を行う。オペレータOPは、受領者REと通話を行い、再度、受領責任についての確認を行う。受領者REから受領責任について承諾が得られた場合に、受領者REへの配送物PAの受け渡しが行われる。受領責任の承諾は、顔認証や指紋認証などのトレーサビリティのある認証手段を用いて行われる。承諾時の認証手続きによって、配送ロボットDRの収納ボックスBXのロックが解除される。受領者REによって配送物PAが受領されたら、配送ロボットDRは受領者REに対して受け取り完了通知を行う。
【0072】
配送ロボットDRは、受領者REが行う一連の受領作業の映像を記録する。記録された映像は、管理サーバMTによって依頼情報RIと紐づけて保管される。配送ロボットDRは、不審物が疑われる配送物PAを受領した受領者REの生体情報BIを取得する。生体情報BIの取得方法は、
図3に示した方法と同様である。すなわち、
図3に示すような粘着フィルムAFに受領者REの指紋や皮膚片を付着させ、配送ロボットDRに回収させる方法がとられる。しかし、生体情報BIの取得方法はこれに限られない。受領者REの顔または眼球の映像から抽出された顔情報または虹彩情報が、受領者REの生体情BIとして取得されてもよい。受領者REの生体情報BIは、管理サーバMTによって依頼情報RIと紐づけて保管される。
【0073】
なお、上記の実施形態では、集配センタCDで配送物PAの内容物分析を行い、分析結果から違法性が疑われた場合に、オペレータOPに受領手続きへの介入を依頼した。しかし、受領時の手続きはこのようなものに限定されない。例えば、オペレータOPによる介入手続きを行わずに、受領段階の手続きを厳格化してもよい。
【0074】
分析結果から違法性が疑われた場合には、地域の取り締まり機関へ事前通知を行いつつ、配送依頼者CLおよび受領者REに対して見かけ上円滑な配送作業を進めてもよい。こうすることで、不正使用に関わる配送依頼者CLおよび受領者REを受領手続き中に取り押さえることができる。また、このようなリスクを不正使用を行おうとする者に認識させることで、犯罪の抑止効果を高めることができる。
【0075】
受領者情報に実在の人物の情報を登録して正規の配送依頼を装い、登録データに現れない第三者が配送ルートで待ち伏せて配送ロボットDRの破壊および配送物PAの強奪を行うという事態も考えられる。このような悪質な犯罪の予防には、ドライブレコーダやEDR(Event Data Recorder)のようなインシデント記録および通報システムと組み合わせた運用を行うことができる。
【0076】
[6.ハードウェア構成例]
図6は、管理サーバMTのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0077】
管理サーバMTの情報処理は、例えば、コンピュータ1000によって実現される。コンピュータ1000は、CPU(Central Processing Unit)1100、RAM(Random Access Memory)1200、ROM(Read Only Memory)1300、HDD(Hard Disk Drive)1400、通信インターフェイス1500、および入出力インターフェイス1600を有する。コンピュータ1000の各部は、バス1050によって接続される。
【0078】
CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラム(プログラムデータ1450)に基づいて動作し、各部の制御を行う。たとえば、CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムをRAM1200に展開し、各種プログラムに対応した処理を実行する。
【0079】
ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるBIOS(Basic Input Output System)などのブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラムなどを格納する。
【0080】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、および、かかるプログラムによって使用されるデータなどを非一時的に記録する、コンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体である。具体的には、HDD1400は、プログラムデータ1450の一例としての、実施形態にかかる情報処理プログラムを記録する記録媒体である。
【0081】
通信インターフェイス1500は、コンピュータ1000が外部ネットワーク1550(たとえばインターネット)と接続するためのインターフェイスである。たとえば、CPU1100は、通信インターフェイス1500を介して、他の機器からデータを受信したり、CPU1100が生成したデータを他の機器へ送信したりする。
【0082】
入出力インターフェイス1600は、入出力デバイス1650とコンピュータ1000とを接続するためのインターフェイスである。たとえば、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、キーボードやマウスなどの入力デバイスからデータを受信する。また、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、表示装置やスピーカーやプリンタなどの出力デバイスにデータを送信する。また、入出力インターフェイス1600は、所定の記録媒体(メディア)に記録されたプログラムなどを読み取るメディアインターフェイスとして機能してもよい。メディアとは、たとえばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)などの光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)などの光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリなどである。
【0083】
たとえば、コンピュータ1000が実施形態にかかる管理サーバMTとして機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされた情報処理プログラムを実行することにより、前述した各部の機能を実現する。また、HDD1400には、本開示にかかる情報処理プログラム、各種モデルおよび各種データが格納される。なお、CPU1100は、プログラムデータ1450をHDD1400から読み取って実行するが、他の例として、外部ネットワーク1550を介して、他の装置からこれらのプログラムを取得してもよい。
【0084】
なお、虹彩、指紋、音声(声紋)および顔画像などのデータは個人情報であるため、これらを管理および運用する場合には、データを暗号化して利用することが望ましい。暗号化を行う場合には、データの個々の用途に応じて、異なる複数階層の暗号化を行うことが望ましい。
【0085】
例えば、暗号化情報の解読やアクセスに対する制限を設けてもよい。暗号化情報の解読やアクセスへの許可キーの利用解除を定期的に見直す運用を行うことで、平時においてはデータの適正利用を容易に実現しつつ、特定企業による目的外利用が判明した場合には、デコードキーやアクセスキーの利用停止や制限強化などを行うことができる。量子暗号化やブロックチェーン技術などと組み合わせて、データの想定外もしくは目的外の利用が隠蔽できない仕組みで運用を行ってもよい。いずれにせよ、配送サービスの悪用に対する心理的な予防効果を発生させるためには、一定のトレーサビリティの容易性と、過剰な個人情報アクセスを抑制する仕組みを兼ね備える工夫がとられることが重要である。
【0086】
[7.効果]
配送システムDSは、依頼情報データベースDBRを有する。依頼情報データベースDBRは、配送物PAの依頼情報RIを配送依頼者CLの生体情報BIと紐づけて記憶する。本開示の情報処理方法は、配送システムDSの処理がコンピュータ1000により実行される。本開示のプログラムは、配送システムDSの処理をコンピュータ1000に実現させる。
【0087】
この構成によれば、配送依頼者CLが配送依頼を行う際に生体情報BIの登録が必要となる。生体情報BIの登録は、不正使用を行おうとする配送依頼者CLにとって大きな心理的圧迫になる。そのため、不正使用を抑止する動機づけが発生し、不正使用が行われにくくなる。仮に不正使用が行われても、生体情報BIに基づいて配送依頼者CLを追跡することができるため、さらなる不正使用の発生が抑制される。
【0088】
配送システムDSは、管理サーバMTを有する。管理サーバMTは、不審な配送依頼が行われた場合にオペレータOPに介入依頼を行う。
【0089】
この構成によれば、人であるオペレータOPの介入によって、不正使用を行おうとする配送依頼者CLに心理的な圧迫が加えられる。そのため、不正使用を抑止する動機づけが発生し、不正使用が行われにくくなる。
【0090】
配送依頼に使用された利用者端末TMのトレーサビリティに基づいて不審な配送依頼が特定される。
【0091】
この構成によれば、不審な配送依頼が容易に特定される。トレーサビリティのある利用者端末TMの利用が促されるため、不正使用が起こりにくくなる。
【0092】
依頼情報RIの発信地TPと配送物PAの集荷地CPとの関係性に基づいて不審な配送依頼が特定される。
【0093】
この構成によれば、不審な配送依頼が容易に特定される。
【0094】
管理サーバMTは、配送依頼者CLの生体情報BIが、不審者データベースDBSに登録された不審者の生体情報BIと一致した場合にオペレータOPに介入依頼を行う。
【0095】
この構成によれば、オペレータOPの介入によって、不審な配送依頼を行う可能性の高い配送依頼者CLに心理的な圧迫が加えられる。そのため、不正使用を抑止する動機づけが発生し、不正使用が行われにくくなる。
【0096】
管理サーバMTは、不審者と生体情報BIが一致した配送依頼者CLを捕獲するための捕獲指令を行う。
【0097】
この構成によれば、不審な配送依頼を行う可能性の高い配送依頼者CLに心理的な圧迫が加えられる。そのため、不正使用を抑止する動機づけが発生し、不正使用が行われにくくなる。
【0098】
配送システムDSは、行動監視部BMを有する。行動監視部BMは、配送物PAを集荷する際の配送依頼者CLの映像に基づいて、管理サーバMTに通知すべき不審行動を検出する。
【0099】
この構成によれば、不審行動に基づいて不審な配送依頼が容易に特定される。
【0100】
行動監視部BMは、配送物PAに貼付される物品ラベルALまたは配送依頼者CLから回収される回収ラベルRLに配送依頼者CLの指紋または皮膚片が付着することを回避する行動を不審行動として検出する。
【0101】
この構成によれば、不審な配送依頼が容易に特定される。
【0102】
依頼情報データベースDBRは、物品ラベルALまたは回収ラベルRLに付着した配送依頼者CLの指紋または皮膚片から抽出される情報を配送依頼者CLの生体情報BIとして記憶する。
【0103】
この構成によれば、集荷作業を介して配送依頼者CLから直接取得した信頼性の高い生体情報BIが依頼情報データベースDBRに登録される。
【0104】
配送システムDSは、物品ラベルALの供給機構SMと回収ラベルRLの回収機構RMとを有する。供給機構SMは、依頼情報RIが印刷された物品ラベルALを供給する。回収機構RMは、物品ラベルALから剥離されたフィルムRFを回収ラベルRLとして回収する。
【0105】
この構成によれば、配送物PAへの物品ラベルALの貼り付け作業を介して配送依頼者CLの指紋および皮膚片などの生体情報BIが確実に取得される。
【0106】
配送システムDSは、供給機構SMおよび回収機構RMを内蔵した集荷ロボットPRを有する。集荷ロボットPRは、配送依頼者CLから指定された集荷地CPに移動して配送依頼者CLから配送物PAを受け取る。
【0107】
この構成によれば、指定した集荷地CPで配送物PAの受け渡しができるため、受け渡し作業の利便性が高まる。
【0108】
集荷ロボットPRは、記録部RCを有する。記録部RCは、配送物PAを受け取る際の配送依頼者CLおよび周囲の映像を記録する。
【0109】
この構成によれば、映像に基づいて配送依頼者CLや周囲の様子が詳細に把握される。不正使用を行おうとする配送依頼者CLにとって、配送依頼者CL自身やその同伴者の顔および行動などを撮られることは大きな心理的圧迫になる。そのため、不正使用を抑止する動機づけが発生し、不正使用が行われにくくなる。
【0110】
依頼情報データベースDBRは、配送物PAを集荷する際に取得された配送依頼者CLの顔または眼球の特徴を示す情報を配送依頼者CLの生体情報BIとして記憶する。
【0111】
この構成によれば、カメラCMを用いて容易に生体情報BIが取得される。顔認識や虹彩認識は個体を識別する際の最も簡易かつ有効な方法の一つである。そのため、不正使用が行われたときに、配送依頼者CLを容易に追跡することができる。
【0112】
行動監視部BMは、配送依頼者CLがオペレータOPと対話する際の配送依頼者CLの音声または眼球の挙動を解析して不審行動を検出する。
【0113】
この構成によれば、不審な配送依頼が容易に特定される。
【0114】
管理サーバMTは、集荷された配送物PAのスクリーニング結果に基づいて不正が疑われる配送依頼に対して、オペレータOPに介入依頼を行う。
【0115】
この構成によれば、オペレータOPの介入によって、不正が疑われる配送依頼者CLに心理的な圧迫が加えられる。これにより、不正使用が行われたか否かの判断材料となる言動を配送依頼者CLから引き出しやすくなる。また、配送依頼者CLにおいては、オペレータOPの介入を受けないように、不正が疑われる配送依頼を避ける心理が働く。そのため、不正使用が起こりにくくなる。
【0116】
配送システムDSは、地域犯罪データベースDBCを有する。地域犯罪データベースDBCは、地域ごとの犯罪履歴を記憶する。管理サーバMTは、配送物PAの受領地の犯罪履歴に基づいて、配送物PAに実施すべきスクリーニングの種類を指定する。
【0117】
この構成によれば、無駄なスクリーニングが行われにくくなる。そのため、スクリーニングのコストが低減される。
【0118】
管理サーバMTは、不審な配送依頼が行われた配送物PAを選択的にスクリーニングの対象に指定する。
【0119】
この構成によれば、必要な配送物PAのみにスクリーニングが行われる。そのため、スクリーニングのコストが低減される。
【0120】
管理サーバMTは、不審な配送依頼が行われた配送物PAが受領者REに受領される前に、受領者REに対して配送の承認を行うか否かの確認を行う。
【0121】
この構成によれば、不審な配送依頼が行われたことを事前に受領者REに認識させることができる。
【0122】
依頼情報データベースDBRは、不審な配送依頼が行われた配送物PAの依頼情報RIを、配送物PAの配送ロボットDRから取得した受領者REの生体情報BIと紐づけて記憶する。
【0123】
この構成によれば、不審な配送物PAを受領した受領者REの生体情報BIが依頼情報データベースDBRに登録される。不審な配送依頼であることを認識しつつ配送物PAを受領した受領者REには、不正使用について何らかの関与が疑われる。生体情報BIの登録は、不正使用に関与する受領者REにとって大きな心理的圧迫になる。そのため、不正使用を抑止する動機づけが発生し、不正使用が行われにくくなる。仮に不正使用が行われても、生体情報BIに基づいて受領者REを追跡することができるため、さらなる不正使用の発生が抑制される。
【0124】
なお、上記の実施形態では、主に、自動配送ロボットが利用者との間に介在する事例が説明されている。しかし、本開示の適用範囲はこのような事例に限定されない。今後は、配送形態がさらに多様化し、無人タクシーや宅配ロッカーなどの無人配送サービスが普及する可能性がある。このような無人配送サービス、あるいは、無人配送サービスと有人の取り扱いサービスとを組み合わせた配送サービスにも本開示の技術は適用できる。特に無人タクシーのような配車サービスでは、荷物を車に載せた後に人が乗車しなかったり途中下車したりするなどの想定外の利用の把握のために、車室内の生体反応や乗客の姿勢および行動の評価などをさらに実施してもよい。
【0125】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0126】
[付記]
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
配送物の依頼情報を配送依頼者の生体情報と紐づけて記憶する依頼情報データベースを有する、配送システム。
(2)
不審な配送依頼が行われた場合にオペレータに介入依頼を行う配送管理部を有する、
上記(1)に記載の配送システム。
(3)
前記配送依頼に使用された利用者端末のトレーサビリティに基づいて不審な配送依頼が特定される、
上記(2)に記載の配送システム。
(4)
前記依頼情報の発信地と前記配送物の集荷地との関係性に基づいて不審な配送依頼が特定される、
上記(2)または(3)に記載の配送システム。
(5)
前記配送管理部は、前記配送依頼者の前記生体情報が、不審者データベースに登録された不審者の前記生体情報と一致した場合に前記オペレータに介入依頼を行う、
上記(2)ないし(4)のいずれか1つに記載の配送システム。
(6)
前記配送管理部は、前記不審者と前記生体情報が一致した前記配送依頼者を捕獲するための捕獲指令を行う、
上記(5)に記載の配送システム。
(7)
前記配送物を集荷する際の前記配送依頼者の映像に基づいて、前記配送管理部に通知すべき不審行動を検出する行動監視部を有する、
上記(2)ないし(6)のいずれか1つに記載の配送システム。
(8)
前記行動監視部は、前記配送物に貼付される物品ラベルまたは前記配送依頼者から回収される回収ラベルに前記配送依頼者の指紋または皮膚片が付着することを回避する行動を前記不審行動として検出する、
上記(7)に記載の配送システム。
(9)
前記依頼情報データベースは、前記物品ラベルまたは前記回収ラベルに付着した前記配送依頼者の指紋または皮膚片から抽出される情報を前記配送依頼者の前記生体情報として記憶する、
上記(8)に記載の配送システム。
(10)
前記依頼情報が印刷された前記物品ラベルを供給する供給機構と、
前記物品ラベルから剥離されたフィルムを前記回収ラベルとして回収する回収機構と、
を有する上記(9)に記載の配送システム。
(11)
前記供給機構および前記回収機構を内蔵し、前記配送依頼者から指定された集荷地に移動して前記配送依頼者から前記配送物を受け取る集荷ロボットを有する、
上記(10)に記載の配送システム。
(12)
前記集荷ロボットは、前記配送物を受け取る際の前記配送依頼者および周囲の映像を記録する記録部を有する、
上記(11)に記載の配送システム。
(13)
前記依頼情報データベースは、前記配送物を集荷する際に取得された前記配送依頼者の顔または眼球の特徴を示す情報を前記配送依頼者の前記生体情報として記憶する、
上記(7)ないし(12)のいずれか1つに記載の配送システム。
(14)
前記行動監視部は、前記配送依頼者が前記オペレータと対話する際の前記配送依頼者の音声または眼球の挙動を解析して前記不審行動を検出する、
上記(7)ないし(13)のいずれか1つに記載の配送システム。
(15)
前記配送管理部は、集荷された前記配送物のスクリーニング結果に基づいて不正が疑われる配送依頼に対して、前記オペレータに介入依頼を行う、
上記(2)ないし(14)のいずれか1つに記載の配送システム。
(16)
地域ごとの犯罪履歴を記憶した地域犯罪データベースを有し、
前記配送管理部は、前記配送物の受領地の前記犯罪履歴に基づいて、前記配送物に実施すべきスクリーニングの種類を指定する、
上記(15)に記載の配送システム。
(17)
前記配送管理部は、不審な配送依頼が行われた前記配送物を選択的にスクリーニングの対象に指定する、
上記(15)または(16)に記載の配送システム。
(18)
前記配送管理部は、不審な配送依頼が行われた前記配送物が受領者に受領される前に、前記受領者に対して配送の承認を行うか否かの確認を行う、
上記(2)ないし(17)のいずれか1つに記載の配送システム。
(19)
前記依頼情報データベースは、不審な配送依頼が行われた前記配送物の前記依頼情報を、前記配送物の配送ロボットから取得した前記受領者の生体情報と紐づけて記憶する、
上記(18)に記載の配送システム。
(20)
配送物の依頼情報を配送依頼者の生体情報と紐づけて記憶することを有する、コンピュータにより実行される情報処理方法。
(21)
配送物の依頼情報を配送依頼者の生体情報と紐づけて記憶することをコンピュータに実現させるプログラム。
【符号の説明】
【0127】
AL 物品ラベル
BI 生体情報
BM 行動監視部
CL 配送依頼者
CP 集荷地
DBC 地域犯罪データベース
DBR 依頼情報データベース
DBS 不審者データベース
DR 配送ロボット
DS 配送システム
MT 管理サーバ(配送管理部)
OP オペレータ
PA 配送物
PR 集荷ロボット
RC 記録部
RE 受領者
RF フィルム
RI 依頼情報
RL 回収ラベル
RM 回収機構
SM 供給機構
TM 利用者端末
TP 発信地