(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023162982
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ウエハ加工装置、半導体チップの製造方法および半導体チップ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073735
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳邦
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA37
5F063CB07
5F063CB29
5F063DD27
5F063DD31
5F063DD99
(57)【要約】
【課題】ボトルネックとなる作業が存在する場合にも、生産性の低下を抑制することが可能なウエハ加工装置を提供する。
【解決手段】この半導体ウエハの加工装置100は、ウエハW1に対してダイシング作業を実行するダイシング装置1と、ダイシング作業が実行されたウエハW1に対してダイシング作業以外の作業を実行するエキスパンド関連作業部2aと、制御部120と、を備える。制御部120は、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成されている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体チップが形成されたウエハを収容するウエハ収容部と、
前記ウエハ収容部から供給された前記ウエハに対して前記半導体チップごとに分割するためのダイシング作業を実行するダイシング作業部と、
前記ダイシング作業が実行された前記ウエハに対して前記ダイシング作業以外の作業を実行するダイシング以外作業部と、
前記ウエハ収容部と、前記ダイシング作業部と、前記ダイシング以外作業部との間で、前記ウエハを搬送するウエハ搬送部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ダイシング作業のサイクルタイムが前記ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、前記ダイシング作業の停止時間を前記ダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、前記ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムが前記ダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、前記ダイシング作業以外の作業の停止時間を前記ダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成されている、ウエハ加工装置。
【請求項2】
前記ダイシング作業は、前記ウエハをレーザによりダイシングするダイシング作業であり、
前記ダイシング作業以外の作業は、前記ウエハが貼り付けられた伸縮性のシート部材のエキスパンドを含むエキスパンド関連作業である、請求項1に記載のウエハ加工装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ダイシング優先制御を行う場合、次の前記ダイシング作業の前記ウエハを前記ウエハ搬送部により前記ウエハ収容部から引き出して待機させた状態で、前記ダイシング作業を完了させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載のウエハ加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ダイシング優先制御を行う場合、前記ダイシング作業中に、前記ダイシング作業以外の作業が完了した前記ウエハを前記ウエハ搬送部により前記ウエハ収容部に収容させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載のウエハ加工装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ダイシング以外優先制御を行う場合、前記ウエハ搬送部を空きにした状態で、前記ダイシング作業以外の作業を完了させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載のウエハ加工装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ダイシング以外優先制御を行う場合、前記ダイシング作業部における前記ウエハの固定を解除した状態で、前記ダイシング作業以外の作業を完了させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載のウエハ加工装置。
【請求項7】
複数の半導体チップが形成されたウエハを収容するウエハ収容部から供給された前記ウエハに対して前記半導体チップごとに分割するためのダイシング作業をダイシング作業部により実行する工程と、
前記ダイシング作業が実行された前記ウエハに対して前記ダイシング作業以外の作業をダイシング以外作業部により実行する工程と、
前記ウエハ収容部と、前記ダイシング作業部と、前記ダイシング以外作業部との間で、前記ウエハをウエハ搬送部により搬送する工程と、
前記ダイシング作業のサイクルタイムが前記ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、前記ダイシング作業の停止時間を前記ダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、前記ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムが前記ダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、前記ダイシング作業以外の作業の停止時間を前記ダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行う工程と、を備える、半導体チップの製造方法。
【請求項8】
複数の半導体チップが形成されたウエハを収容するウエハ収容部と、前記ウエハ収容部から供給された前記ウエハに対して前記半導体チップごとに分割するためのダイシング作業を実行するダイシング作業部と、前記ダイシング作業が実行された前記ウエハに対して前記ダイシング作業以外の作業を実行するダイシング以外作業部と、前記ウエハ収容部と、前記ダイシング作業部と、前記ダイシング以外作業部との間で、前記ウエハを搬送するウエハ搬送部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記ダイシング作業のサイクルタイムが前記ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、前記ダイシング作業の停止時間を前記ダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、前記ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムが前記ダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、前記ダイシング作業以外の作業の停止時間を前記ダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成されているウエハ加工装置により製造される、半導体チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウエハ加工装置、半導体チップの製造方法および半導体チップに関し、特に、ダイシング作業を行うウエハ加工装置、半導体チップの製造方法および半導体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイシング作業を行うウエハ加工システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、基板のダイシング作業、基板の薄板化作業、基板へのDAF(Die Attach Film)の付着作業、チップ同士の間隔の拡大作業、基板のマウント作業などを行う、基板処理システム(ウエハ加工システム)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるような基板処理システムでは、ボトルネックとなる作業(サイクルタイムが大きい作業)が存在する場合、ボトルネックとなる作業と、それ以外の作業とのサイクルタイムの不一致が発生する。この場合、サイクルタイムの不一致に起因して設備稼働のロス時間が発生するため、生産性が低下するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ボトルネックとなる作業が存在する場合にも、生産性の低下を抑制することが可能なウエハ加工装置、半導体チップの製造方法および半導体チップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面によるウエハ加工装置は、複数の半導体チップが形成されたウエハを収容するウエハ収容部と、ウエハ収容部から供給されたウエハに対して半導体チップごとに分割するためのダイシング作業を実行するダイシング作業部と、ダイシング作業が実行されたウエハに対してダイシング作業以外の作業を実行するダイシング以外作業部と、ウエハ収容部と、ダイシング作業部と、ダイシング以外作業部との間で、ウエハを搬送するウエハ搬送部と、制御部と、を備え、制御部は、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面によるウエハ加工装置では、上記のように、制御部を、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成する。これにより、ダイシング作業とダイシング作業以外の作業とのうち、ボトルネックとなる作業(サイクルタイムが大きい作業)の停止時間を優先制御を行わない場合に比べて削減することができる。その結果、ダイシング作業とダイシング作業以外の作業とのいずれがボトルネックとなる場合にも、設備稼働のロス時間が発生することを抑制することができる。これにより、ボトルネックとなる作業が存在する場合にも、生産性の低下を抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面によるウエハ加工装置において、好ましくは、ダイシング作業は、ウエハをレーザによりダイシングするダイシング作業であり、ダイシング作業以外の作業は、ウエハが貼り付けられた伸縮性のシート部材のエキスパンドを含むエキスパンド関連作業である。このように構成すれば、ウエハをレーザによりダイシングするダイシング作業とエキスパンド関連作業とを行うウエハ加工装置において、ボトルネックとなる作業が存在する場合にも、生産性の低下を抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面によるウエハ加工装置において、好ましくは、制御部は、ダイシング優先制御を行う場合、次のダイシング作業のウエハをウエハ搬送部によりウエハ収容部から引き出して待機させた状態で、ダイシング作業を完了させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、次のダイシング作業のウエハを待機させておくことができるので、次のダイシング作業が開始した際、次のダイシング作業のウエハを迅速に供給することができる。その結果、ダイシング作業がボトルネックとなる場合に、ダイシング作業の停止時間を容易に小さくすることができる。
【0011】
上記第1の局面によるウエハ加工装置において、好ましくは、制御部は、ダイシング優先制御を行う場合、ダイシング作業中に、ダイシング作業以外の作業が完了したウエハをウエハ搬送部によりウエハ収容部に収容させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ダイシング作業中に、ダイシング作業以外の作業が完了したウエハをウエハ収容部に収容することにより、ダイシング作業の停止時間を伸ばさないような効果的なタイミングで、ダイシング作業以外の作業が完了したウエハをウエハ収容部に収容することができる。
【0012】
上記第1の局面によるウエハ加工装置において、好ましくは、制御部は、ダイシング以外優先制御を行う場合、ウエハ搬送部を空きにした状態で、ダイシング作業以外の作業を完了させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ウエハ搬送部を空きにしておくことにより、ダイシング作業以外の作業が完了した際、ウエハを迅速にウエハ搬送部に受け渡すことができるので、ダイシング作業以外の作業がボトルネックとなる場合に、ダイシング作業以外の作業の停止時間を容易に小さくすることができる。
【0013】
上記第1の局面によるウエハ加工装置において、好ましくは、制御部は、ダイシング以外優先制御を行う場合、ダイシング作業部におけるウエハの固定を解除した状態で、ダイシング作業以外の作業を完了させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ダイシング作業部におけるウエハの固定を解除しておくことにより、ダイシング作業以外の作業が完了した際、ダイシング作業が完了したウエハをダイシング作業以外の作業に迅速に供給することができる。その結果、ダイシング作業以外の作業の停止時間を容易に小さくすることができる。
【0014】
この発明の第2の局面による半導体チップの製造方法は、複数の半導体チップが形成されたウエハを収容するウエハ収容部から供給されたウエハに対して半導体チップごとに分割するためのダイシング作業をダイシング作業部により実行する工程と、ダイシング作業が実行されたウエハに対してダイシング作業以外の作業をダイシング以外作業部により実行する工程と、ウエハ収容部と、ダイシング作業部と、ダイシング以外作業部との間で、ウエハをウエハ搬送部により搬送する工程と、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行う工程と、を備える。
【0015】
この発明の第2の局面による半導体チップの製造方法では、上記のように、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行う。これにより、ダイシング作業とダイシング作業以外の作業とのうち、ボトルネックとなる作業(サイクルタイムが大きい作業)の停止時間を優先制御を行わない場合に比べて削減することができる。その結果、ダイシング作業とダイシング作業以外の作業とのいずれがボトルネックとなる場合にも、設備稼働のロス時間が発生することを抑制することができる。これにより、ボトルネックとなる作業が存在する場合にも、生産性の低下を抑制することが可能な半導体チップの製造方法を提供することができる。
【0016】
この発明の第3の局面による半導体チップは、複数の半導体チップが形成されたウエハを収容するウエハ収容部と、ウエハ収容部から供給されたウエハに対して半導体チップごとに分割するためのダイシング作業を実行するダイシング作業部と、ダイシング作業が実行されたウエハに対してダイシング作業以外の作業を実行するダイシング以外作業部と、ウエハ収容部と、ダイシング作業部と、ダイシング以外作業部との間で、ウエハを搬送するウエハ搬送部と、制御部と、を備え、制御部は、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成されているウエハ加工装置により製造される。
【0017】
この発明の第3の局面による半導体チップでは、上記のように、制御部を、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成する。これにより、ダイシング作業とダイシング作業以外の作業とのうち、ボトルネックとなる作業(サイクルタイムが大きい作業)の停止時間を優先制御を行わない場合に比べて削減することができる。その結果、ダイシング作業とダイシング作業以外の作業とのいずれがボトルネックとなる場合にも、設備稼働のロス時間が発生することを抑制することができる。これにより、ボトルネックとなる作業が存在する場合にも、生産性の低下を抑制することが可能な半導体チップを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、ボトルネックとなる作業が存在する場合にも、生産性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態によるダイシング装置およびエキスパンド装置が設けられた半導体ウエハの加工装置を示した平面図である。
【
図2】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置において加工されるウエハリング構造体を示した平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】第1実施形態によるエキスパンド装置に隣接して配置されたダイシング装置の平面図である。
【
図5】第1実施形態によるエキスパンド装置に隣接して配置されたダイシング装置をY2方向側から見た側面図である。
【
図6】第1実施形態によるエキスパンド装置の平面図である。
【
図7】第1実施形態によるエキスパンド装置のY2方向側から見た側面図である。
【
図8】第1実施形態によるエキスパンド装置のX1方向側から見た側面図である。
【
図9】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置の制御的な構成を示したブロック図である。
【
図10】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置の半導体チップ製造処理の前半部分のフローチャートである。
【
図11】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置の半導体チップ製造処理の後半部分のフローチャートである。
【
図12】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置のダイシング優先制御を説明するための図である。
【
図13】第1実施形態による半導体ウエハの加工装置のダイシング以外優先制御を説明するための図である。
【
図14】第2実施形態によるダイシング装置およびエキスパンド装置が設けられた半導体ウエハの加工装置を示した平面図である。
【
図15】第2実施形態によるダイシング装置およびエキスパンド装置が設けられた半導体ウエハの加工装置をY2方向側から見た側面図である。
【
図16】第2実施形態によるダイシング装置およびエキスパンド装置が設けられた半導体ウエハの加工装置をX1方向側から見た側面図である。
【
図17】第2実施形態による半導体ウエハの加工装置の制御的な構成を示したブロック図である。
【
図18】第2実施形態による半導体ウエハの加工装置の半導体チップ製造処理の前半部分のフローチャートである。
【
図19】第2実施形態による半導体ウエハの加工装置の半導体チップ製造処理の後半部分のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1~
図13を参照して、本発明の第1実施形態による半導体ウエハの加工装置100の構成について説明する。なお、半導体ウエハの加工装置100は、特許請求の範囲の「ウエハ加工装置」の一例である。
【0022】
(半導体ウエハの加工装置)
図1に示すように、半導体ウエハの加工装置100は、ウエハリング構造体Wに設けられたウエハW1の加工を行う装置である。半導体ウエハの加工装置100は、ウエハW1に改質層を形成するとともに、ウエハW1を改質層に沿って分割して複数の半導体チップCh(
図8参照)を形成するように構成されている。
【0023】
ここで、
図2および
図3を参照して、ウエハリング構造体Wに関して説明する。ウエハリング構造体Wは、ウエハW1と、シート部材W2と、リング状部材W3とを有している。
【0024】
ウエハW1は、半導体集積回路の材料となる半導体物質の結晶でできた円形の薄い板である。ウエハW1の内部には、半導体ウエハの加工装置100における加工により、分割ラインに沿って内部を改質させた改質層が形成されている。すなわち、ウエハW1は、分割ラインに沿って分割可能に加工される。シート部材W2は、伸縮性を有する粘着テープである。シート部材W2の上面W21には、粘着層が設けられている。シート部材W2には、粘着層にウエハW1が貼り付けられている。リング状部材W3は、平面視においてリング状の金属製のフレームである。リング状部材W3は、ウエハW1を囲んだ状態でシート部材W2の粘着層に貼り付けられている。
【0025】
また、半導体ウエハの加工装置100は、ダイシング装置1と、エキスパンド装置2とを備えている。上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とするとともに、下方向をZ2方向とする。Z方向に直交する水平方向のうちダイシング装置1とエキスパンド装置2とが並ぶ方向をX方向とし、X方向のうちエキスパンド装置2側をX1方向とし、X方向のうちダイシング装置1側をX2方向とする。水平方向のうちX方向に直交する方向をY方向とし、Y方向のうち一方側をY1方向とし、Y方向のうち他方側をY2方向とする。なお、ダイシング装置1は、特許請求の範囲の「ダイシング作業部」の一例である。
【0026】
(ダイシング装置)
図1、
図4および
図5に示すように、ダイシング装置1は、後述するカセット部202から供給されて複数の半導体チップChが形成されウエハW1に対して複数の半導体チップChごとに分割するためのダイシング作業を実行するように構成されている。具体的には、ダイシング作業は、ウエハW1をレーザによりダイシングするダイシング作業である。ダイシング装置1は、ウエハW1に対して透過性を有する波長のレーザを分割ライン(ストリート)に沿って照射することにより、改質層を形成するように構成されている。改質層とは、レーザによりウエハW1の内部に形成された亀裂およびボイドなどを示す。このように、ウエハW1に改質層を形成する手法をダイシング加工という。
【0027】
具体的には、ダイシング装置1は、ベース11と、チャックテーブル部12と、レーザ部13と、撮像部14とを含んでいる。
【0028】
ベース11は、チャックテーブル部12が設置される基台である。ベース11は、平面視において、矩形形状を有している。
【0029】
〈チャックテーブル部〉
チャックテーブル部12は、吸着部12aと、クランプ部12bと、回動機構12cと、テーブル移動機構12dとを有している。吸着部12aは、ウエハリング構造体WをZ1方向側の上面に吸着するように構成されている。吸着部12aは、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3のZ2方向側の下面を吸着するために吸引孔および吸引管路などが設けられたテーブルである。吸着部12aは、回動機構12cを介してテーブル移動機構12dに支持されている。クランプ部12bは、吸着部12aの上端部に設けられている。クランプ部12bは、吸着部12aにより吸着されたウエハリング構造体Wを押さえるように構成されている。クランプ部12bは、吸着部12aにより吸着されたウエハリング構造体Wのリング状部材W3をZ1方向側から押さえている。このように、ウエハリング構造体Wは、吸着部12aおよびクランプ部12bにより把持されている。
【0030】
回動機構12cは、Z方向に平行に延びた回動中心軸線C回りの周方向に吸着部12aを回動させるように構成されている。回動機構12cは、テーブル移動機構12dの上端部に取り付けられている。テーブル移動機構12dは、ウエハリング構造体WをX方向およびY方向に移動させるように構成されている。テーブル移動機構12dは、X方向移動機構121と、Y方向移動機構122とを有している。X方向移動機構121は、X1方向またはX2方向に回動機構12cを移動させるように構成されている。X方向移動機構121は、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。Y方向移動機構122は、Y1方向またはY2方向に回動機構12cを移動させるように構成されている。Y方向移動機構122は、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0031】
〈レーザ部〉
レーザ部13は、チャックテーブル部12に把持されたウエハリング構造体WのウエハW1にレーザ光を照射するように構成されている。レーザ部13は、チャックテーブル部12のZ1方向側に配置されている。レーザ部13は、レーザ照射部13aと、取付部材13bと、Z方向移動機構13cとを有している。レーザ照射部13aは、パルスレーザ光を照射するように構成されている。取付部材13bは、レーザ部13および撮像部14が取り付けられるフレームである。Z方向移動機構13cは、Z1方向またはZ2方向にレーザ部13を移動させるように構成されている。Z方向移動機構13cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。なお、レーザ照射部13aは、多光子吸収による改質層を形成できる限り、パルスレーザ光以外の、連続波レーザ光をレーザ光として発振するレーザ照射部であってもよい。
【0032】
〈撮像部〉
撮像部14は、チャックテーブル部12に把持されたウエハリング構造体WのウエハW1を撮像するように構成されている。撮像部14は、チャックテーブル部12のZ1方向側に配置されている。撮像部14は、高分解能カメラ14aと、広画角カメラ14bと、Z方向移動機構14cと、Z方向移動機構14dとを有している。
【0033】
高分解能カメラ14aおよび広画角カメラ14bは、近赤外線撮像用カメラである。高分解能カメラ14aは、広画角カメラ14bよりも視野角が狭い。高分解能カメラ14aは、広画角カメラ14bよりも分解能が高い。広画角カメラ14bは、高分解能カメラ14aよりも視野角が広い。広画角カメラ14bは、高分解能カメラ14aよりも分解能が低い。高分解能カメラ14aは、レーザ照射部13aのX1方向側に配置されている。広画角カメラ14bは、レーザ照射部13aのX2方向側に配置されている。このように、高分解能カメラ14a、レーザ照射部13aおよび広画角カメラ14bは、X1方向側からX2方向側に向かってこの順序で隣接して配置されている。
【0034】
Z方向移動機構14cは、Z1方向またはZ2方向に高分解能カメラ14aを移動させるように構成されている。Z方向移動機構14cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。Z方向移動機構14dは、Z1方向またはZ2方向に広画角カメラ14bを移動させるように構成されている。Z方向移動機構14dは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0035】
(エキスパンド装置)
図1、
図6および
図7に示すように、エキスパンド装置2は、ウエハW1を分割して複数の半導体チップCh(
図8参照)を形成するように構成されている。また、エキスパンド装置2は、複数の半導体チップCh同士の間に十分な隙間を形成するように構成されている。ここで、ウエハW1には、ダイシング装置1において、ウエハW1に対して透過性を有する波長のレーザが分割ライン(ストリート)に沿って照射されることにより、改質層が形成されている。エキスパンド装置2では、ダイシング装置1において予め形成された改質層に沿ってウエハW1を分割することにより、複数の半導体チップChが形成されている。
【0036】
したがって、エキスパンド装置2では、シート部材W2をエキスパンドさせることにより、改質層に沿ってウエハW1が分割されることになる。また、エキスパンド装置2において、シート部材W2をエキスパンドさせることにより、分割されて形成された複数の半導体チップCh同士の隙間が広がることになる。
【0037】
エキスパンド装置2は、ベース201と、カセット部202と、リフトアップハンド部203と、吸着ハンド部204と、を含んでいる。また、エキスパンド装置2は、ダイシング作業が実行されたウエハW1に対してダイシング作業以外の作業を実行するエキスパンド関連作業部2aを含んでいる。第1実施形態では、ダイシング作業以外の作業は、シート部材W2の冷却と、シート部材W2のエキスパンドと、シート部材W2のヒートシュリンクと、シート部材W2への紫外線照射と、ウエハW1のスキージブレーキングとを含むエキスパンド関連作業である。エキスパンド関連作業部2aは、ベース205と、冷気供給部206と、冷却ユニット207と、エキスパンド部208と、ベース209と、拡張維持部材210と、ヒートシュリンク部211と、紫外線照射部212と、スキージ部213と、クランプ部214と、を含んでいる。なお、エキスパンド関連作業部2aは、特許請求の範囲の「ダイシング以外作業部」の一例である。また、カセット部202は、特許請求の範囲の「ウエハ収容部」の一例である。また、リフトアップハンド部203および吸着ハンド部204は、特許請求の範囲の「ウエハ搬送部」の一例である。
【0038】
〈ベース〉
ベース201は、カセット部202およびリフトアップハンド部203が設置される基台である。ベース201は、平面視において、矩形形状を有している。
【0039】
〈カセット部〉
カセット部202は、複数のウエハリング構造体W(ウエハW1)を収容可能に構成されている。カセット部202は、ウエハカセット202aと、Z方向移動機構202bと、一対の載置部202cとを含んでいる。
【0040】
ウエハカセット202aは、Z方向に複数(3個)配置されている。ウエハカセット202aは、複数(5個)のウエハリング構造体Wを収容可能な収容空間を有している。ウエハカセット202aには、ウエハリング構造体Wが手作業によって供給および載置される。なお、ウエハカセット202aは、1~4個のウエハリング構造体Wを収容するか、または、6個以上のウエハリング構造体Wを収容してもよい。また、ウエハカセット202aは、Z方向に1、2、または、4個以上配置されてもよい。
【0041】
Z方向移動機構202bは、Z1方向またはZ2方向にウエハカセット202aを移動させるように構成されている。Z方向移動機構202bは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。また、Z方向移動機構202bは、ウエハカセット202aを下側から支持する載置台202dを有している。載置台202dは、複数のウエハカセット202aの位置に合わせて複数(3個)配置されている。
【0042】
一対の載置部202cは、ウエハカセット202aの内側に複数(5個)配置されている。一対の載置部202cには、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3がZ1方向側から載置される。一対の載置部202cの一方は、ウエハカセット202aのX1方向側の内側面からX2方向側に突出している。一対の載置部202cの他方は、ウエハカセット202aのX2方向側の内側面からX1方向側に突出している。
【0043】
〈リフトアップハンド部〉
リフトアップハンド部203は、カセット部202からウエハリング構造体Wを取出可能に構成されている。また、リフトアップハンド部203は、カセット部202にウエハリング構造体Wを収容可能に構成されている。
【0044】
具体的には、リフトアップハンド部203は、Y方向移動機構203aと、リフトアップハンド203bとを含んでいる。Y方向移動機構203aは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。リフトアップハンド203bは、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3をZ2方向側から支持するように構成されている。
【0045】
〈吸着ハンド部〉
吸着ハンド部204は、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3をZ1方向側から吸着するように構成されている。
【0046】
具体的には、吸着ハンド部204は、X方向移動機構204aと、Z方向移動機構204bと、吸着ハンド204cとを含んでいる。X方向移動機構204aは、吸着ハンド204cをX方向に移動させるように構成されている。Z方向移動機構204bは、吸着ハンド204cをZ方向に移動させるように構成されている。X方向移動機構204aおよびZ方向移動機構204bは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。吸着ハンド204cは、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3をZ1方向側から吸着して支持するように構成されている。ここで、吸着ハンド204cでは、負圧を発生させることにより、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3が支持される。なお、リフトアップハンド部203と吸着ハンド部204とにより、カセット部202と、ダイシング装置1と、エキスパンド関連作業部2aとの間で、ウエハリング構造体W(ウエハW1)が搬送される。
【0047】
〈ベース〉
図7および
図8に示すように、ベース205は、エキスパンド部208、冷却ユニット207、紫外線照射部212およびスキージ部213が設置される基台である。ベース205は、平面視において、矩形形状を有している。なお、
図8では、冷却ユニット207のZ1方向の位置に配置されたクランプ部214が点線で示されている。
【0048】
〈冷気供給部〉
冷気供給部206は、エキスパンド部208によりシート部材W2をエキスパンドさせる際、シート部材W2にZ1方向側から冷気を供給するように構成されている。
【0049】
具体的には、冷気供給部206は、供給部本体206aと、冷気供給口206bと、移動機構206cとを有している。冷気供給口206bは、冷気供給装置から供給される冷気を流出させるように構成されている。冷気供給口206bは、供給部本体206aのZ2方向側の端部に設けられている。冷気供給口206bは、供給部本体206aのZ2方向側の端部における中央部に配置されている。移動機構206cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有している。
【0050】
冷気供給装置は、冷気を生成するための装置である。冷気供給装置は、たとえば、ヒートポンプなどにより冷却された空気を供給する。このような冷気供給装置は、ベース205に設置される。冷気供給部206と、冷気供給装置とは、ホース(図示せず)により接続されている。
【0051】
〈冷却ユニット〉
冷却ユニット207は、シート部材W2をZ2方向側から冷却するように構成されている。
【0052】
具体的には、冷却ユニット207は、冷却体271およびペルチェ素子272を有する冷却部材207aと、Z方向移動機構207bとを含んでいる。冷却体271は、熱容量が大きく、かつ、熱伝導率が高い部材により構成されている。冷却体271は、アルミニウムなどの金属により形成されている。ペルチェ素子272は、冷却体271を冷却するように構成されている。なお、冷却体271は、アルミニウムに限定されず、他の熱容量が大きく、かつ、熱伝導率が高い部材であってもよい。Z方向移動機構207bは、シリンダである。
【0053】
冷却ユニット207は、Z方向移動機構207bにより、Z1方向またはZ2方向に移動可能に構成されている。これにより、冷却ユニット207は、シート部材W2に接触する位置、および、シート部材W2から離間した位置に移動することが可能である。
【0054】
〈エキスパンド部〉
エキスパンド部208は、ウエハリング構造体Wのシート部材W2をエキスパンドすることにより、分割ラインに沿ってウエハW1を分割するように構成されている。
【0055】
具体的には、エキスパンド部208は、エキスパンドリング281を有している。エキスパンドリング281は、シート部材W2をZ2方向側から支持することにより、シート部材W2をエキスパンド(拡張)させるように構成されている。エキスパンドリング281は、平面視においてリング形状を有している。なお、エキスパンドリング281の構造については、後に詳細に説明する。
【0056】
〈ベース〉
ベース209は、冷気供給部206、拡張維持部材210およびヒートシュリンク部211が設置される基材である。
【0057】
〈拡張維持部材〉
図7および
図8に示すように、拡張維持部材210は、加熱リング211aによる加熱によってウエハW1付近のシート部材W2が収縮しないように、シート部材W2をZ1方向側から押さえるように構成されている。
【0058】
具体的には、拡張維持部材210は、押圧リング部210aと、蓋部210bと、吸気部210cとを有している。押圧リング部210aは、平面視においてリング形状を有している。蓋部210bは、押圧リング部210aの開口を閉塞するように押圧リング部210aに設けられている。吸気部210cは、平面視において、リング形状を有する吸気リングである。吸気部210cのZ2方向側の下面には、複数の吸気口が形成されている。また、押圧リング部210aは、Z方向移動機構210dによりZ方向に移動するように構成されている。すなわち、Z方向移動機構210dは、シート部材W2を押さえる位置、および、シート部材W2から離れた位置に押圧リング部210aを移動させるように構成されている。Z方向移動機構210dは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0059】
〈ヒートシュリンク部〉
ヒートシュリンク部211は、エキスパンド部208によりエキスパンドされたシート部材W2を、複数の半導体チップCh同士の間の隙間を保持した状態で、加熱により収縮させるように構成されている。
【0060】
ヒートシュリンク部211は、加熱リング211aと、Z方向移動機構211bとを有している。加熱リング211aは、平面視において、リング形状を有している。また、加熱リング211aは、シート部材W2を加熱するシーズヒータを有している。Z方向移動機構211bは、加熱リング211aをZ方向に移動させるように構成されている。Z方向移動機構211bは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0061】
〈紫外線照射部〉
紫外線照射部212は、シート部材W2の粘着層の粘着力を低下させるために、シート部材W2に紫外線を照射するように構成されている。具体的には、紫外線照射部212は、紫外線用照明を有している。紫外線照射部212は、スキージ部213の後述する押圧部213aのZ1方向側の端部に配置されている。紫外線照射部212は、スキージ部213とともに移動しながら、シート部材W2に紫外線を照射するように構成されている。
【0062】
〈スキージ部〉
スキージ部213は、シート部材W2をエキスパンドさせた後、ウエハW1をZ2方向側から局所的に押圧することにより、ウエハW1を改質層に沿ってさらに分割させるように構成されている。具体的には、スキージ部213は、押圧部213aと、Z方向移動機構213bと、X方向移動機構213cと、回動機構213dとを有している。
【0063】
押圧部213aは、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧しつつ、回動機構213dおよびX方向移動機構213cにより移動することによって、ウエハW1に曲げ応力を発生させて改質層に沿ってウエハW1を分割するように構成されている。押圧部213aがZ方向移動機構213bによりZ1方向側の上昇位置に上昇することにより、シート部材W2を介してウエハW1が押圧される。押圧部213aがZ方向移動機構213bによりZ2方向側に下降位置に下降することにより、ウエハW1が押圧されなくなる。押圧部213aは、スキージである。
【0064】
押圧部213aは、Z方向移動機構213bのZ1方向側の端部に取り付けられている。Z方向移動機構213bは、Z1方向またはZ2方向に直線的に押圧部213aを移動させるように構成されている。Z方向移動機構213bは、たとえば、シリンダである。Z方向移動機構213bは、X方向移動機構213cのZ1方向側の端部に取り付けられている。
【0065】
X方向移動機構213cは、回動機構213dのZ1方向側の端部に取り付けられている。X方向移動機構213cは、一方向に直線的に押圧部213aを移動させるように構成されている。X方向移動機構213cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0066】
スキージ部213では、Z方向移動機構213bにより押圧部213aが上昇位置まで上昇される。スキージ部213では、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧部213aが局所的に押圧しつつ、X方向移動機構213cにより押圧部213aがY方向に移動することにより、ウエハW1が分割される。スキージ部213では、Z方向移動機構213bにより押圧部213aが下降位置まで下降される。スキージ部213では、押圧部213aのY方向への移動が終了した後、回動機構213dにより押圧部213aが90度回動する。
【0067】
スキージ部213では、Z方向移動機構213bにより押圧部213aが上昇位置まで上昇される。スキージ部213では、押圧部213aが90度回動した後、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧部213aが局所的に押圧しつつ、X方向移動機構213cにより押圧部213aがX方向に移動することにより、ウエハW1が分割される。
【0068】
〈クランプ部〉
クランプ部214(エキスパンドテーブル)は、ウエハリング構造体Wのリング状部材W3を把持するように構成されている。具体的には、クランプ部214は、把持部214aと、Z方向移動機構214bと、Y方向移動機構214cとを有している。把持部214aは、リング状部材W3をZ2方向側から支持するとともに、リング状部材W3をZ1方向側から押さえる。このように、リング状部材W3は、把持部214aにより把持される。把持部214aは、Z方向移動機構214bに取り付けられている。
【0069】
Z方向移動機構214bは、クランプ部214をZ方向に移動させるように構成されている。具体的には、Z方向移動機構214bは、把持部214aをZ1方向またはZ2方向に移動させるように構成されている。Z方向移動機構214bは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。Z方向移動機構214bは、Y方向移動機構214cに取り付けられている。Y方向移動機構214cは、Z方向移動機構214bをY1方向またはY2方向に移動させるように構成されている。Y方向移動機構214cは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。
【0070】
(半導体ウエハの加工装置の制御的な構成)
図9に示すように、半導体ウエハの加工装置100は、制御部120と、記憶部112とを備えている。制御部120は、第1制御部101と、第2制御部102と、第3制御部103と、第4制御部104と、第5制御部105と、第6制御部106と、第7制御部107と、第8制御部108と、エキスパンド制御演算部109と、ハンドリング制御演算部110と、ダイシング制御演算部111とを備えている。
【0071】
第1制御部101は、スキージ部213を制御するように構成されている。第1制御部101は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを有する記憶部とを含んでいる。なお、第1制御部101は、記憶部として、電圧遮断後にも記憶された情報が保持されるHDD(Hard Disk Drive)などを含んでいてもよい。また、HDDは、第1制御部101、第2制御部102、第3制御部103、第4制御部104、第5制御部105、第6制御部106、第7制御部107、および、第8制御部108に対して共通に設けられていてもよい。
【0072】
第2制御部102は、冷気供給部206および冷却ユニット207を制御するように構成されている。第2制御部102は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。第3制御部103は、ヒートシュリンク部211および紫外線照射部212を制御するように構成されている。第3制御部103は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。なお、第2制御部102および第3制御部103は、記憶部として、電圧遮断後にも記憶された情報が保持されるHDDなどを含んでいてもよい。
【0073】
第4制御部104は、カセット部202およびリフトアップハンド部203を制御するように構成されている。第4制御部104は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。第5制御部105は、吸着ハンド部204を制御するように構成されている。第5制御部105は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。なお、第4制御部104および第5制御部105は、記憶部として、電圧遮断後にも記憶された情報が保持されるHDDなどを含んでいてもよい。
【0074】
第6制御部106は、チャックテーブル部12を制御するように構成されている。第6制御部106は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。第7制御部107は、レーザ部13を制御するように構成されている。第7制御部107は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。第8制御部108は、撮像部14を制御するように構成されている。第8制御部108は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。なお、第6制御部106、第7制御部107および第8制御部108は、記憶部として、電圧遮断後にも記憶された情報が保持されるHDDなどを含んでいてもよい。
【0075】
エキスパンド制御演算部109は、第1制御部101、第2制御部102および第3制御部103の処理結果に基づいて、シート部材W2のエキスパンド処理に関する演算を行うように構成されている。エキスパンド制御演算部109は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。
【0076】
ハンドリング制御演算部110は、第4制御部104および第5制御部105の処理結果に基づいて、ウエハリング構造体Wの移動処理に関する演算を行うように構成されている。ハンドリング制御演算部110は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。
【0077】
ダイシング制御演算部111は、第6制御部106、第7制御部107および第8制御部108の処理結果に基づいて、ウエハW1のダイシング処理に関する演算を行うように構成されている。ダイシング制御演算部111は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。
【0078】
記憶部112は、ダイシング装置1およびエキスパンド装置2を動作させるためのプログラムが記憶されている。記憶部112は、ROM、RAMおよびHDDなどを含んでいる。
【0079】
(半導体チップ製造処理)
図10および
図11を参照して、半導体ウエハの加工装置100の概略的な動作について以下に説明する。なお、半導体ウエハの加工装置100の詳細な動作については、後述する。
【0080】
ステップS1において、カセット部202からウエハリング構造体Wが取り出される。すなわち、カセット部202内に収容されたウエハリング構造体Wをリフトアップハンド203bにより支持した後、Y方向移動機構203aによりリフトアップハンド203bがY1方向側に移動することによって、カセット部202からウエハリング構造体Wが取り出される。ステップS2において、吸着ハンド204cによりウエハリング構造体Wが、ダイシング装置1のチャックテーブル部12に移載される。すなわち、カセット部202から取り出されたウエハリング構造体Wは、吸着ハンド204cにより吸着された状態で、X方向移動機構204aによりX2方向側に移動する。そして、X2方向側に移動したウエハリング構造体Wは、吸着ハンド204cからチャックテーブル部12に移載された後、チャックテーブル部12により把持される。
【0081】
ステップS3において、レーザ部13によりウエハW1に改質層が形成される。ステップS4において、吸着ハンド204cにより改質層が形成されたウエハW1を有するウエハリング構造体Wがクランプ部214に移載される。ステップS5において、冷気供給部206および冷却ユニット207によりシート部材W2が冷却される。すなわち、Z方向移動機構214bによりクランプ部214に把持されたウエハリング構造体WをZ2方向に移動(下降)させて冷却ユニット207に接触させるとともに、冷気供給部206によりZ1方向側から冷気を供給することによって、シート部材W2が冷却される。
【0082】
ステップS6において、クランプ部214によりエキスパンド部208にウエハリング構造体Wが移動する。すなわち、シート部材W2が冷却されたウエハリング構造体Wが、クランプ部214に把持された状態で、Y方向移動機構214cによりY1方向に移動する。ステップS7において、エキスパンド部208によりシート部材W2がエキスパンドされる。すなわち、ウエハリング構造体Wが、クランプ部214に把持された状態で、Z方向移動機構214bによりZ2方向に移動する。そして、シート部材W2が、エキスパンドリング281に当接するとともに、エキスパンドリング281により引っ張られることによって、エキスパンドされる。これにより、ウエハW1が分割ライン(改質層)に沿って分割される。
【0083】
ステップS8において、拡張維持部材210により、エキスパンドされた状態のシート部材W2がZ1方向側から押さえられる。すなわち、押圧リング部210aが、Z方向移動機構210dによりシート部材W2に当接するまでZ2方向に移動(下降)する。そして、
図10のA点から
図11のA点を介してステップS9に進む。
【0084】
図11に示すように、ステップS9において、拡張維持部材210によりシート部材W2が押さえられた後、スキージ部213によりウエハW1を押圧しながら、紫外線照射部212によりシート部材W2に紫外線を照射する。これにより、ウエハW1が、スキージ部213によりさらに分割される。また、シート部材W2の粘着力が、紫外線照射部212から照射される紫外線により低下する。
【0085】
ステップS10において、ヒートシュリンク部211によりシート部材W2が加熱されて収縮されつつ、クランプ部214が上昇する。この際、吸気部210cが、加熱されているシート部材W2付近の空気を吸い込む。ステップS11において、ウエハリング構造体Wがクランプ部214から吸着ハンド204cに移載される。すなわち、ウエハリング構造体Wが、クランプ部214に把持された状態で、Y方向移動機構214cによりY2方向に移動する。そして、ウエハリング構造体Wが、冷却ユニット207のZ1方向側の位置において、クランプ部214による把持が解除された後、吸着ハンド204cにより吸着される。
【0086】
ステップS12において、吸着ハンド204cによりリフトアップハンド203bにウエハリング構造体Wが移載される。ステップS13において、ウエハリング構造体Wが、カセット部202に収容される。すなわち、リフトアップハンド203bにより支持されたウエハリング構造体Wは、Y方向移動機構203aによってY1方向側に移動させることによって、カセット部202にウエハリング構造体Wが収容される。これらにより、1枚のウエハリング構造体Wに対して行われる処理が終了する。そして、
図11のB点から
図10のB点を介してステップS1に戻る。
【0087】
(優先制御)
ここで、第1実施形態では、
図12および
図13に示すように、制御部120は、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御(
図12参照)を行い、ダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御(
図13参照)を行うように構成されている。すなわち、制御部120は、ダイシング作業とダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)のうち、ダイシング作業がボトルネックとなる場合、ダイシング優先制御を行い、ダイシング作業とダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)のうち、ダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)がボトルネックとなる場合、ダイシング以外優先制御を行うように構成されている。
【0088】
つまり、この半導体ウエハの加工装置100による半導体チップChの製造方法は、複数の半導体チップChが形成されたウエハW1を収容するカセット部202から供給されたウエハW1に対して半導体チップChごとに分割するためのダイシング作業をダイシング装置1により実行する工程と、ダイシング作業が実行されたウエハW1に対してダイシング作業以外の作業をエキスパンド関連作業部2aにより実行する工程と、カセット部202と、ダイシング装置1と、エキスパンド関連作業部2aとの間で、ウエハW1をリフトアップハンド部203および吸着ハンド部204により搬送する工程と、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行う工程と、を備える。
【0089】
また、この半導体ウエハの加工装置100により製造される半導体チップChは、複数の半導体チップChが形成されたウエハW1を収容するカセット部202と、カセット部202から供給されたウエハW1に対して半導体チップChごとに分割するためのダイシング作業を実行するダイシング装置1と、ダイシング作業が実行されたウエハW1に対してダイシング作業以外の作業を実行するエキスパンド関連作業部2aと、カセット部202と、ダイシング装置1と、エキスパンド関連作業部2aとの間で、ウエハW1を搬送するリフトアップハンド部203および吸着ハンド部204と、制御部120と、を備え、制御部120は、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成されている半導体ウエハの加工装置100により製造される。
【0090】
また、第1実施形態では、制御部120は、ダイシング優先制御を行う場合、次のダイシング作業のウエハW1(ウエハリング構造体W)をリフトアップハンド部203によりカセット部202から引き出して待機させた状態で、ダイシング作業を完了させる制御を行うように構成されている。また、第1実施形態では、制御部120は、ダイシング優先制御を行う場合、ダイシング作業中に、ダイシング作業以外の作業が完了したウエハW1(ウエハリング構造体W)をリフトアップハンド部203によりカセット部202に収容させる制御を行うように構成されている。
【0091】
また、第1実施形態では、制御部120は、ダイシング以外優先制御を行う場合、リフトアップハンド部203を空きにした状態で、ダイシング作業以外の作業を完了させる制御を行うように構成されている。また、第1実施形態では、制御部120は、ダイシング以外優先制御を行う場合、ダイシング装置1のチャックテーブル部12におけるウエハW1(ウエハリング構造体W)の固定を解除した状態で、ダイシング作業以外の作業を完了させる制御を行うように構成されている。
【0092】
(ダイシング優先制御)
図12を参照して、ダイシング優先制御の場合の動作例を説明する。ダイシング優先制御は、たとえば、半導体チップChのサイズが小さいことにより、ダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)の作業時間(サイクルタイム)よりもダイシング作業の作業時間(サイクルタイム)が大きくなり、ダイシング作業がボトルネックとなる場合に行われる。なお、
図12および
図13において、「n」、「n+1」および「n+2」は、それぞれ、n枚目、n+1枚目およびn+2枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)を表している。また、ダイシング優先制御における各部の動作は、制御部120の各制御部により制御される。
【0093】
図12に示すように、まず、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)がリフトアップハンド部203によりカセット部202から引き出される。また、吸着ハンド部204がリフトアップハンド部203の上方位置に移動される。そして、リフトアップハンド部203に支持されたn枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、リフトアップハンド部203から吸着ハンド部204に受け渡される。そして、吸着ハンド部204およびチャックテーブル部12が移動されて、吸着ハンド部204がチャックテーブル部12の上方位置に移動される。そして、吸着ハンド部204に吸着されて支持されたn枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、吸着ハンド部204からチャックテーブル部12に受け渡される。そして、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、チャックテーブル部12において把持されて固定される。
【0094】
そして、チャックテーブル部12上のn枚目のウエハW1が、撮像部14により撮像される。撮像部14によるn枚目のウエハW1の撮像結果に基づいて、n枚目のウエハW1の位置ずれが補正される。そして、レーザ部13によりn枚目のウエハW1にレーザ光が照射される。これにより、n枚目のウエハW1に分割の起点となる改質層が形成される。そして、チャックテーブル部12によりn枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が90度回動される。そして、90度回動された状態で、撮像部14によるn枚目のウエハW1の撮像と、レーザ部13によるn枚目のウエハW1へのレーザ光の照射とが再び行われる。そして、2回のレーザ光の照射により、n枚目のウエハW1の格子状の分割ライン(ストリート)に沿って改質層が形成される。
【0095】
また、n枚目のウエハW1に対するダイシング作業中(
図12では、1回目の撮像部14によるn枚目のウエハW1の撮像と同時期)に、n+1枚目のウエハW1(すなわち、次のダイシング作業のウエハW1)が、リフトアップハンド部203によりカセット部202から引き出される。これにより、n枚目のウエハW1のダイシング作業の完了時には、n+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、カセット部202から引き出されてリフトアップハンド部203上で待機された状態となる。
【0096】
また、n枚目のウエハW1への改質層の形成が完了されると、チャックテーブル部12が吸着ハンド部204の下方位置に移動されるとともに、チャックテーブル部12によるn枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)の固定が解除される。そして、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、チャックテーブル部12から吸着ハンド部204に受け渡される。
【0097】
そして、吸着ハンド部204およびクランプ部214が移動されて、吸着ハンド部204がクランプ部214の上方位置に移動される。そして、吸着ハンド部204に吸着されて支持されたn枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、吸着ハンド部204からクランプ部214に受け渡される。
【0098】
また、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、吸着ハンド部204からクランプ部214に受け渡された後、吸着ハンド部204が、n+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が待機中のリフトアップハンド部203の上方位置に移動される。そして、リフトアップハンド部203に支持されたn+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、リフトアップハンド部203から吸着ハンド部204を経由してチャックテーブル部12に受け渡される。そして、n枚目のウエハW1の場合と同様に、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業が行われる。
【0099】
また、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、吸着ハンド部204からクランプ部214に受け渡されると、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、クランプ部214において把持されて固定される。そして、クランプ部214において固定されたn枚目のウエハW1が貼り付けられたシート部材W2が、冷気供給部206および冷却ユニット207により冷却される。
【0100】
そして、クランプ部214がエキスパンド部208の上方位置に移動される。そして、クランプ部214において固定されたn枚目のウエハW1が貼り付けられたシート部材W2が、エキスパンド部208によりエキスパンドされる。この際、シート部材W2のエキスパンドによりn枚目のウエハW1が改質層に沿って分割される。そして、エキスパンド部208によりエキスパンドされたシート部材W2が、拡張維持部材210により押さえられる。そして、拡張維持部材210により押さえられたシート部材W2に対して紫外線照射部212により紫外線が照射されるとともに、シート部材W2を介してn枚目のウエハW1へのスキージ部213による押圧(スキージブレーキング)が行われる。そして、ヒートシュリンク部211によるシート部材W2のヒートシュリンクが行われる。
【0101】
そして、クランプ部214が冷気供給部206および冷却ユニット207の位置に移動されるとともに、クランプ部214によるn枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)の固定が解除される。そして、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、クランプ部214から吸着ハンド部204に受け渡される。そして、吸着ハンド部204がリフトアップハンド部203の上方位置に移動される。そして、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が吸着ハンド部204からリフトアップハンド部203に受け渡される。そして、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、リフトアップハンド部203によりカセット部202に収容される。
【0102】
この際、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業が行われているため、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業中に、ダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)が完了したn枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、リフトアップハンド部203によりカセット部202に収容される。そして、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業が完了するまで、ダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)が停止される。
【0103】
また、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業中(
図12では、1回目のレーザ部13によるn+1枚目のウエハW1へのレーザ光の照射と同時期)に、n+2枚目のウエハW1(すなわち、次のダイシング作業のウエハW1)が、リフトアップハンド部203によりカセット部202から引き出される。これにより、n+1枚目のウエハW1のダイシング作業の完了時には、n+2枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、カセット部202から引き出されてリフトアップハンド部203上で待機された状態となる。
【0104】
また、n+1枚目のウエハW1への改質層の形成が完了されると、n枚目のウエハW1の場合と同様に、n+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、吸着ハンド部204によりクランプ部214に移動される。
【0105】
また、n+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、吸着ハンド部204によりクランプ部214に受け渡された後、吸着ハンド部204が、n+2枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が待機中のリフトアップハンド部203の上方位置に移動される。そして、リフトアップハンド部203に支持されたn+2枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、リフトアップハンド部203から吸着ハンド部204を経由してチャックテーブル部12に受け渡される。そして、n枚目およびn+1枚目のウエハW1の場合と同様に、n+2枚目のウエハW1に対するダイシング作業が行われる。
【0106】
また、n+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、吸着ハンド部204によりクランプ部214に受け渡されると、n+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、クランプ部214において把持されて固定される。そして、n枚目のウエハW1の場合と同様に、シート部材W2の冷却、シート部材W2のエキスパンド(ウエハW1の分割)、シート部材W2への紫外線照射、ウエハW1のスキージブレーキング、および、シート部材W2のヒートシュリンクなどが行われる。そして、n枚目のウエハW1の場合と同様に、n+1枚目のウエハW1が、クランプ部214から、吸着ハンド部204およびリフトアップハンド部203を経由して、カセット部202に収容される。
【0107】
この際、n+2枚目のウエハW1に対するダイシング作業が行われているため、n+2枚目のウエハW1に対するダイシング作業中に、ダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)が完了したn+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、リフトアップハンド部203によりカセット部202に収容される。そして、n+2枚目のウエハW1に対するダイシング作業が完了するまで、ダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)が停止される。以後、上記説明した動作が繰り返される。
【0108】
ダイシング優先制御では、あるダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)と、次のダイシング作業以外の作業との間で、ダイシング作業以外の作業がダイシング作業が完了するまで停止される。一方、あるダイシング作業と、次のダイシング作業との間では、チャックテーブル部12と吸着ハンド部204との間でのウエハW1の受け渡しの停止時間が存在するだけで、基本的に連続で行われる。ダイシング優先制御では、ダイシング作業が略最小の停止時間で行われており、ダイシング作業の停止時間が、ダイシング作業以外の作業の停止時間よりも、小さくなっている。
【0109】
(ダイシング以外優先制御)
図13を参照して、ダイシング以外優先制御の場合の動作例を説明する。ダイシング以外優先制御は、たとえば、半導体チップChのサイズが大きいことにより、ダイシング作業の作業時間(サイクルタイム)よりもダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)の(サイクルタイム)が大きくなり、ダイシング作業以外の作業がボトルネックとなる場合に行われる。なお、ダイシング以外優先制御における各部の動作は、制御部120の各制御部により制御される。また、上記ダイシング優先制御と同様の部分については、詳細な説明を省略する。
【0110】
図13に示すように、まず、n枚目のウエハW1に対するダイシング作業が、上記ダイシング優先制御の場合と同様に行われる。そして、上記ダイシング優先制御の場合と同様に、n枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)が行われる。また、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業が、上記ダイシング優先制御の場合と同様に行われる。
【0111】
また、n枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業中(
図13では、クランプ部214の移動と同時期)に、チャックテーブル部12におけるn+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)の固定が解除される。これにより、n枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業の完了時には、チャックテーブル部12におけるn+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)の固定が解除された状態となる。また、n枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業中に、リフトアップハンド部203が、カセット部202から引き出されてウエハW1を支持していない状態となる。これにより、n枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業の完了時には、リフトアップハンド部203が空き状態となる。
【0112】
また、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業の完了時に、n枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)が行われているため、n枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業が完了するまで、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業が停止される。
【0113】
また、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、吸着ハンド部204からリフトアップハンド部203に受け渡された後、吸着ハンド部204が、固定が解除されたn+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が待機中のチャックテーブル部12の上方位置に移動される。そして、チャックテーブル部12に支持されたn+1枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、チャックテーブル部12から吸着ハンド部204を経由してクランプ部214に受け渡される。そして、n枚目のウエハW1の場合と同様に、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)が行われる。
【0114】
また、n枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、リフトアップハンド部203によりカセット部202に収容されると、n+2枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、リフトアップハンド部203によりカセット部202から引き出される。そして、吸着ハンド部204が、リフトアップハンド部203の上方位置に移動される。そして、リフトアップハンド部203に支持されたn+2枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)が、リフトアップハンド部203から吸着ハンド部204を経由してチャックテーブル部12に受け渡される。そして、n枚目およびn+1枚目のウエハW1の場合と同様に、n+2枚目のウエハW1に対するダイシング作業が行われる。
【0115】
また、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業中(
図13では、クランプ部214の固定解除前)に、チャックテーブル部12におけるn+2枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)の固定が解除される。これにより、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業の完了時には、チャックテーブル部12におけるn+2枚目のウエハW1(ウエハリング構造体W)の固定が解除された状態となる。また、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業中に、リフトアップハンド部203が、カセット部202から引き出されてウエハW1を支持していない状態となる。これにより、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業の完了時には、リフトアップハンド部203が空き状態となる。
【0116】
また、n+2枚目のウエハW1に対するダイシング作業の完了時に、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)が行われているため、n+1枚目のウエハW1に対するダイシング作業以外の作業が完了するまで、n+2枚目のウエハW1に対するダイシング作業が停止される。以後、上記説明した動作が繰り返される。
【0117】
ダイシング以外優先制御では、あるダイシング作業と、次のダイシング作業との間で、ダイシング作業がダイシング作業以外の作業が完了するまで停止される。一方、あるダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)と、次のダイシング作業以外の作業との間では、クランプ部214と吸着ハンド部204との間でのウエハW1の受け渡しの停止時間が存在するだけで、基本的に連続で行われる。ダイシング以外優先制御では、ダイシング作業以外の作業が略最小の停止時間で行われており、ダイシング作業以外の作業の停止時間が、ダイシング作業の停止時間よりも、小さくなっている。
【0118】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0119】
第1実施形態では、上記のように、制御部120を、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成する。これにより、ダイシング作業とダイシング作業以外の作業とのうち、ボトルネックとなる作業(サイクルタイムが大きい作業)の停止時間を優先制御を行わない場合に比べて削減することができる。その結果、ダイシング作業とダイシング作業以外の作業とのいずれがボトルネックとなる場合にも、設備稼働のロス時間が発生することを抑制することができる。これにより、ボトルネックとなる作業が存在する場合にも、生産性の低下を抑制することができる。
【0120】
また、第1実施形態では、上記のように、ダイシング作業は、ウエハW1をレーザによりダイシングするダイシング作業であり、ダイシング作業以外の作業は、ウエハW1が貼り付けられた伸縮性のシート部材W2のエキスパンドを含むエキスパンド関連作業である。これにより、ウエハW1をレーザによりダイシングするダイシング作業とエキスパンド関連作業とを行う半導体ウエハの加工装置100において、ボトルネックとなる作業が存在する場合にも、生産性の低下を抑制することができる。
【0121】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部120は、ダイシング優先制御を行う場合、次のダイシング作業のウエハW1をリフトアップハンド部203によりカセット部202から引き出して待機させた状態で、ダイシング作業を完了させる制御を行うように構成されている。これにより、次のダイシング作業のウエハW1を待機させておくことができるので、次のダイシング作業が開始した際、次のダイシング作業のウエハW1を迅速に供給することができる。その結果、ダイシング作業がボトルネックとなる場合に、ダイシング作業の停止時間を容易に小さくすることができる。
【0122】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部120は、ダイシング優先制御を行う場合、ダイシング作業中に、ダイシング作業以外の作業が完了したウエハW1をリフトアップハンド部203によりカセット部202に収容させる制御を行うように構成されている。これにより、ダイシング作業中に、ダイシング作業以外の作業が完了したウエハW1をカセット部202に収容することにより、ダイシング作業の停止時間を伸ばさないような効果的なタイミングで、ダイシング作業以外の作業が完了したウエハW1をカセット部202に収容することができる。
【0123】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部120は、ダイシング以外優先制御を行う場合、リフトアップハンド部203を空きにした状態で、ダイシング作業以外の作業を完了させる制御を行うように構成されている。これにより、リフトアップハンド部203を空きにしておくことにより、ダイシング作業以外の作業が完了した際、ウエハW1を迅速にリフトアップハンド部203に受け渡すことができるので、ダイシング作業以外の作業がボトルネックとなる場合に、ダイシング作業以外の作業の停止時間を容易に小さくすることができる。
【0124】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部120は、ダイシング以外優先制御を行う場合、ダイシング装置1におけるウエハW1の固定を解除した状態で、ダイシング作業以外の作業を完了させる制御を行うように構成されている。これにより、ダイシング装置1におけるウエハW1の固定を解除しておくことにより、ダイシング作業以外の作業が完了した際、ダイシング作業が完了したウエハW1をダイシング作業以外の作業に迅速に供給することができる。その結果、ダイシング作業以外の作業の停止時間を容易に小さくすることができる。
【0125】
[第2実施形態]
図14~
図19を参照して、第2実施形態による半導体ウエハの加工装置300の構成について説明する。第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、スキージ部3213が、エキスパンドリング3281の外側に配置されている。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成については、詳細な説明を省略する。なお、半導体ウエハの加工装置300は、特許請求の範囲の「ウエハ加工装置」の一例である。
【0126】
(半導体ウエハの加工装置)
図14および
図15に示すように、半導体ウエハの加工装置300は、ウエハリング構造体Wに設けられたウエハW1の加工を行う装置である。
【0127】
また、半導体ウエハの加工装置300は、ダイシング装置1と、エキスパンド装置302とを備えている。上下方向をZ方向とし、上方向をZ1方向とするとともに、下方向をZ2方向とする。Z方向に直交する水平方向のうちダイシング装置1とエキスパンド装置302とが並ぶ方向をX方向とし、X方向のうちエキスパンド装置302側をX1方向とし、X方向のうちダイシング装置1側をX2方向とする。水平方向のうちX方向に直交する方向をY方向とし、Y方向のうち一方側をY1方向とし、Y方向のうち他方側をY2方向とする。
【0128】
(ダイシング装置)
ダイシング装置1は、ウエハW1に対して透過性を有する波長のレーザを分割ライン(ストリート)に沿って照射することにより、改質層を形成するように構成されている。
【0129】
具体的には、ダイシング装置1は、ベース11と、チャックテーブル部12と、レーザ部13と、撮像部14とを含んでいる。
【0130】
(エキスパンド装置)
図15および
図16に示すように、エキスパンド装置302は、ウエハW1を分割して複数の半導体チップChを形成するように構成されている。
【0131】
エキスパンド装置302は、ベース201と、カセット部202と、リフトアップハンド部203と、吸着ハンド部204と、を含んでいる。また、エキスパンド装置302は、ダイシング作業が実行されたウエハW1に対してダイシング作業以外の作業を実行するエキスパンド関連作業部302aを含んでいる。第2実施形態では、ダイシング作業以外の作業は、シート部材W2の冷却と、シート部材W2のエキスパンドと、シート部材W2のヒートシュリンクと、シート部材W2への紫外線照射と、ウエハW1のスキージブレーキングとを含むエキスパンド関連作業である。エキスパンド関連作業部302aは、ベース205と、冷気供給部206と、冷却ユニット207と、エキスパンド部3208と、ベース209と、拡張維持部材210と、ヒートシュリンク部211と、紫外線照射部212と、スキージ部3213と、クランプ部214とを含んでいる。なお、エキスパンド関連作業部302aは、特許請求の範囲の「ダイシング以外作業部」の一例である。
【0132】
〈エキスパンド部〉
エキスパンド部3208は、ウエハリング構造体Wのシート部材W2をエキスパンドすることにより、分割ラインに沿ってウエハW1を分割するように構成されている。
【0133】
具体的には、エキスパンド部3208は、エキスパンドリング3281と、Z方向移動機構3282とを有している。
【0134】
エキスパンドリング3281は、シート部材W2をZ2方向側から支持することにより、シート部材W2をエキスパンド(拡張)させるように構成されている。エキスパンドリング3281は、平面視においてリング形状を有している。Z方向移動機構3282は、エキスパンドリング3281をZ1方向またはZ2方向に移動させるように構成されている。Z方向移動機構3282は、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。Z方向移動機構3282は、ベース205に取り付けられている。
【0135】
〈スキージ部〉
スキージ部3213は、シート部材W2をエキスパンドさせた後、ウエハW1をZ2方向側から押圧することにより、ウエハW1を改質層に沿ってさらに分割させるように構成されている。具体的には、スキージ部3213は、押圧部3213aと、X方向移動機構3213bと、Z方向移動機構3213cと、回動機構3213dとを有している。
【0136】
押圧部3213aは、Z方向移動機構3213cによりZ1方向に移動した後、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧しつつ、回動機構3213dおよびX方向移動機構3213bにより移動することによって、ウエハW1に曲げ応力を発生させて改質層に沿ってウエハW1を分割するように構成されている。押圧部3213aは、スキージである。押圧部3213aは、回動機構3213dのZ1方向側の端部に取り付けられている。Z方向移動機構3213cは、回動機構3213dをZ1方向またはZ2方向に移動させるように構成されている。Z方向移動機構3213cは、たとえば、シリンダを有している。Z方向移動機構3213cは、X方向移動機構3213bのZ1方向側の端部に取り付けられている。X方向移動機構3213bは、たとえば、リニアコンベアモジュール、または、ボールねじおよびエンコーダ付きモータを有する駆動部を有している。X方向移動機構3213bは、ベース205のZ1方向側の端部に取り付けられている。
【0137】
スキージ部3213では、Z方向移動機構3213cによりZ1方向に移動した後、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧部3213aが押圧しつつ、X方向移動機構3213bにより押圧部3213aがY方向に移動することにより、ウエハW1が分割される。また、スキージ部3213では、押圧部3213aのY方向への移動が終了した後、回動機構3213dにより押圧部3213aが90度回動する。また、スキージ部3213では、押圧部3213aが90度回動した後、シート部材W2を介してZ2方向側からウエハW1を押圧部3213aが押圧しつつ、X方向移動機構3213bにより押圧部3213aがX方向に移動することにより、ウエハW1が分割される。
【0138】
(半導体ウエハの加工装置の制御的な構成)
図17に示すように、半導体ウエハの加工装置300は、制御部320と、記憶部112とを備えている。制御部320は、第1制御部101と、第2制御部102と、第3制御部103と、第4制御部3104と、第5制御部3105と、第6制御部3106と、第7制御部3107と、第8制御部3108と、第9制御部3109と、エキスパンド制御演算部3110と、ハンドリング制御演算部3111と、ダイシング制御演算部3112と、記憶部3113とを備えている。なお、第1制御部101、第2制御部102、第3制御部103、第5制御部3105、第6制御部3106、第7制御部3107、第8制御部3108、第9制御部3109、エキスパンド制御演算部3110、ハンドリング制御演算部3111、ダイシング制御演算部3112、および、記憶部3113は、それぞれ、第1実施形態の第1制御部101、第2制御部102、第3制御部103、第4制御部104、第5制御部105、第6制御部106、第7制御部107、第8制御部108、エキスパンド制御演算部109、ハンドリング制御演算部110、ダイシング制御演算部111、および、記憶部112と同じ構成であるので、説明を省略する。
【0139】
第4制御部3104は、エキスパンド部3208を制御するように構成されている。第4制御部3104は、CPUと、ROMおよびRAMなどを有する記憶部とを含んでいる。なお、第4制御部3104は、記憶部として、電圧遮断後にも記憶された情報が保持されるHDDなどを含んでいてもよい。
【0140】
(半導体チップ製造処理)
図18および
図19を参照して、半導体ウエハの加工装置300の概略的な動作について以下に説明する。
【0141】
ステップS1~ステップS6、ステップS8、および、ステップS11は、それぞれ、第1実施形態の半導体チップ製造処理のステップS1~ステップS6、ステップS8、および、ステップS11と同じ処理であるので、説明を省略する。
【0142】
ステップS307において、エキスパンド部3208によりシート部材W2がエキスパンドされる。すなわち、エキスパンドリング3281が、Z方向移動機構3282によりZ1方向に移動する。ウエハリング構造体Wが、クランプ部214に把持された状態で、Z方向移動機構214bによりZ2方向に移動する。そして、シート部材W2が、エキスパンドリング3281に当接するとともに、エキスパンドリング3281により引っ張られることによって、エキスパンドされる。これにより、ウエハW1が分割ライン(改質層)に沿って分割される。
【0143】
図19に示すように、ステップS309において、ヒートシュリンク部211によりシート部材W2が加熱されて収縮させるとともに、紫外線照射部212によりシート部材W2に紫外線を照射しながら、クランプ部214が上昇する。この際、吸気部210cが、加熱されているシート部材W2付近の空気を吸い込む。ステップS310において、クランプ部214により、ウエハリング構造体Wがスキージ部3213に移動する。すなわち、ウエハリング構造体Wが、クランプ部214に把持された状態で、Y方向移動機構214cによりY2方向に移動する。
【0144】
ステップS311において、ウエハリング構造体Wがスキージ部3213に移動した後、スキージ部3213によりウエハW1が押圧される。これにより、ウエハW1が、スキージ部3213によりさらに分割される。
【0145】
なお、制御部320の構成は、第1実施形態の制御部120の構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。すなわち、制御部320は、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業(エキスパンド関連作業)のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成されている。また、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態の構成と同様である。
【0146】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0147】
第2実施形態では、制御部320を、ダイシング作業のサイクルタイムがダイシング作業以外の作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業の停止時間をダイシング作業以外の作業の停止時間よりも小さくするダイシング優先制御を行い、ダイシング作業以外の作業のサイクルタイムがダイシング作業のサイクルタイムよりも大きい場合、ダイシング作業以外の作業の停止時間をダイシング作業の停止時間よりも小さくするダイシング以外優先制御を行うように構成する。これにより、上記第1実施形態と同様に、ボトルネックとなる作業が存在する場合にも、生産性の低下を抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様である。
【0148】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0149】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、制御部が複数の制御部を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が1つの制御部であってもよい。また、上記第1および第2実施形態の制御部はあくまでも一例であり、制御部の数や機能の分担などは、特に限定されない。
【0150】
また、上記第1および第2実施形態では、ダイシング作業がウエハをレーザによりダイシングするダイシング作業である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ダイシング作業がウエハをレーザによりダイシングするダイシング作業以外のダイシング作業であってもよい。
【0151】
また、上記第1および第2実施形態では、ダイシング作業以外の作業がエキスパンド関連作業である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ダイシング作業以外の作業がエキスパンド関連作業以外の作業であってもよい。また、エキスパンド関連作業が、シート部材の冷却と、シート部材のエキスパンドと、シート部材のヒートシュリンクと、シート部材への紫外線照射と、ウエハのスキージブレーキングとの全てを含んでいなくてもよい。また、エキスパンド関連作業が、シート部材の冷却と、シート部材のエキスパンドと、シート部材のヒートシュリンクと、シート部材への紫外線照射と、ウエハのスキージブレーキングと以外を含んでいてもよい。
【0152】
また、上記第1および第2実施形態では、ウエハ搬送部が、リフトアップハンド部と、吸着ハンド部とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ウエハ搬送部が、リフトアップハンド部と、吸着ハンド部とを含む構成以外の構成であってもよい。
【0153】
また、上記第1および第2実施形態では、説明の便宜上、制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0154】
1 ダイシング装置(ダイシング作業部)
2a、302a エキスパンド関連作業部(ダイシング以外作業部)
100、300 半導体ウエハの加工装置(ウエハ加工装置)
120、320 制御部
202 カセット部(ウエハ収納部)
203 リフトアップハンド部(ウエハ搬送部)
204 吸着ハンド部(ウエハ搬送部)
Ch 半導体チップ
W1 ウエハ
W2 シート部材