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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163007
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】フロートシステム
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/00 20060101AFI20231101BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20231101BHJP
【FI】
B63B21/00 Z
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073788
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】長井 宏史
(72)【発明者】
【氏名】谷 奈央人
(57)【要約】
【課題】係留部材を介して水上にフロートを係留する場合、フロートとその外側の壁との間における衝突の発生を抑制することが可能なフロートシステムを提供する。
【解決手段】フロート集合体と係留部材とを備えるフロートシステムであって、フロート集合体は、水上に浮かぶように構成され、係留部材は、水底および陸上にフロート集合体を接続してフロート集合体を水上に係留し、水位の変動に応じて弛み量が変動するように構成される、フロートシステムが提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロート集合体と係留部材とを備えるフロートシステムであって、
前記フロート集合体は、水上に浮かぶように構成され、
前記係留部材は、水底および陸上に前記フロート集合体を接続して前記フロート集合体を前記水上に係留し、水位の変動に応じて弛み量が変動するように構成される、フロートシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のフロートシステムであって、
前記係留部材は、
前記水位が満水位である場合に弛み量が最小となる第1係留部材と、
前記水位が最低水位である場合に弛み量が最小となる第2係留部材とを有する、フロートシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフロートシステムであって、
前記係留部材は、
第1係留部材を有し、
前記第1係留部材は、前記水底に設けられた第1固定部と、前記陸上に設けられた第2固定部との間において、前記フロート集合体に設けられた経由部を経由して接続される、
フロートシステム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のフロートシステムであって、
前記係留部材は、
第2係留部材を有し、
前記第2係留部材は、前記水底に設けられた第1固定部と、前記フロート集合体に設けられた第2固定部との間において、前記フロート集合体に設けられた経由部と、前記陸上に設けられた経由部とを経由して接続される、フロートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を電力に変換する太陽光発電装置では、光電変換デバイスとしてソーラパネル(太陽電池パネル、太陽電池モジュールとも称される)が用いられている。ソーラパネルは、主に建築物の屋根や壁面、地面等に設置されているが、近年、遊休化している池や湖等の水上への設置も行われるようになってきている。
【0003】
水上にソーラパネルを設置する場合、ソーラパネルを水上に浮かせるためのフロートが用いられ、フロート上にソーラパネルが設置される(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、太陽光発電に限らず、フロートを水上に設置する際には、何らかの係留部材を介して水上の所定位置に係留されることとなる(例えば、特許文献2を参照)。フロートには、アンカーロープ等の係留部材の一端が固定される。係留部材の他端は、水底に沈められたアンカーに接続される。これによって、フロートが水上の所定位置に係留される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-511043号公報
【特許文献2】特許第5641270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水面から水底までの深さが大きく(例えば、数10m)、水位の変動が大きいダム等で上記した係留を行った場合、水位が低くなった場合に係留部材が弛み、水上におけるフロートの水平方向の移動量(自由度)が大きくなる結果、当該フロートがその外側の壁に衝突し(すなわち陸地に乗り上げ)、当該フロートに穴が開くなどの破損が生じてしまう可能性があるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、係留部材を介して水上にフロートを係留する場合、フロートとその外側の壁との間における衝突の発生を抑制することが可能なフロートシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)フロート集合体と係留部材とを備えるフロートシステムであって、前記フロート集合体は、水上に浮かぶように構成され、前記係留部材は、水底および陸上に前記フロート集合体を接続して前記フロート集合体を前記水上に係留し、水位の変動に応じて弛み量が変動するように構成される、フロートシステム。
(2)(1)に記載のフロートシステムであって、前記係留部材は、前記水位が満水位である場合に弛み量が最小となる第1係留部材と、前記水位が最低水位である場合に弛み量が最小となる第2係留部材とを有する、フロートシステム。
(3)(1)または(2)に記載のフロートシステムであって、前記係留部材は、第1係留部材を有し、前記第1係留部材は、前記水底に設けられた第1固定部と、前記陸上に設けられた第2固定部との間において、前記フロート集合体に設けられた経由部を経由して接続される、フロートシステム。
(4)(1)~(3)の何れか1つに記載のフロートシステムであって、前記係留部材は、第2係留部材を有し、前記第2係留部材は、前記水底に設けられた第1固定部と、前記フロート集合体に設けられた第2固定部との間において、前記フロート集合体に設けられた経由部と、前記陸上に設けられた経由部とを経由して接続される、フロートシステム。
【0009】
上記構成とすることにより、水面からの深さが大きく、水位の変動が大きいダム等で係留部材によりフロート集合体が係留される際、水位の変動に応じて係留部材の弛み量が変動するため、水底および陸上に接続されるフロート集合体の水平方向の移動が抑制され、フロートとその外側の壁との間における衝突の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】フロート集合体1の斜視図である。
図2】フロートシステム10の平面図である。
図3図3Aは、ダムの水位が満水位である場合に第1係留部材5Aを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図であり、図3Bは、ダムの水位が高い場合に第1係留部材5Aを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図であり、図3Cは、ダムの水位が低い場合に第1係留部材5Aを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図である。
図4図4Aは、ダムの水位が高い場合に第2係留部材5Bを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図であり、図4Bは、ダムの水位が低い場合に第2係留部材5Bを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図であり、図4Cは、ダムの水位が最低水位である場合に第2係留部材5Bを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態のフロート集合体1の斜視図である。図1に示すように、フロート集合体1は、水面からの深さが大きく、水位の変動が大きい例えばダム等の水上Lに浮かべられて利用され、複数のフロート2を連結して構成される。以下の説明において、東(E)・西(W)・南(S)・北(N)は、図1で示す定義に従う。
【0013】
複数のフロート2は、直接またはジョイント3を介して連結されている。より具体的には、南北方向に隣接する2つのフロート2は、直接連結されており、東西方向に隣接する2つのフロート2は、ジョイント3を介して連結されている。
【0014】
各フロート2は、例えば、溶融状態の筒状のパリソンを複数の分割金型で挟んで膨らますブロー成形によって製造され、成形材料には、各種の熱可塑性樹脂を使用することができるが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。
【0015】
フロート2は、全体の外形が矩形状(長方形状)をしており、内部に気体(空気等)を収容する中空部を有する構造になっている。ジョイント3も同様にブロー成形によって形成され、中空部を有する構造になっている。
【0016】
フロート2には、ソーラパネル4、ケーブル、パワコン、接続箱などの積載物が搭載される(ソーラパネル4以外の積載物は不図示)。多くのフロート2には、ソーラパネル4が搭載されており、ソーラパネル4で発電が可能になっている。
【0017】
ソーラパネル4は、発電効率が高くなるように、受光面が南向きになるように傾斜した状態で搭載されている。ソーラパネル4で発生した電力は、ケーブルを通じて伝送される。複数のソーラパネル4からの直流電力は、ケーブルを通じて接続箱に集められ、接続箱からの直流電力がパワコンで交流電力に変換される。接続箱やパワコンは、フロート2上に設置せずに、陸上に設置しても良い。
【0018】
フロート集合体1を取り囲む集合体外周1aに面するフロート2には、通常、ソーラパネル4などの積載物が搭載されず、通路として利用される。以下、このようなフロート2を「外周フロート」と称し、残りのフロート2を「内部フロート」と称する。
【0019】
外周フロート2Aは、集合体外周1aに沿って、内部フロートを取り囲むように設置される。フロート集合体1は、係留ワイヤーやアンカーロープ等の第1係留部材5A,第2係留部材5B(図2~4を参照)を介して水底Gおよび陸上に接続して水上Lの所定位置に係留される。これによって、フロート2が浮き上がったり、フロート集合体1が流されたりすることが抑制される。
【0020】
次に、図2図4を参照し、第1係留部材5A,第2係留部材5Bを介して水上Lの所定位置にフロート集合体1を係留するための具体的構成について説明する。図2は、フロートシステム10の平面図である。図3Aは、ダムの水位が満水位である場合に第1係留部材5Aを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図である。図3Bは、ダムの水位が高い場合に第1係留部材5Aを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図である。図3Cは、ダムの水位が低い場合に第1係留部材5Aを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図である。図4Aは、ダムの水位が高い場合に第2係留部材5Bを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図である。図4Bは、ダムの水位が低い場合に第2係留部材5Bを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図である。図4Cは、ダムの水位が最低水位である場合に第2係留部材5Bを用いてフロート集合体1を係留する構成を水平方向から示す模式図である。なお、図2図4においては、フロート集合体1を簡略化して示している。
【0021】
図2に示すように、フロート集合体1の周囲の南側には、2つの第1係留部材5Aの一端部をそれぞれ固定する2つの陸上固定部6Aと、2つの第2係留部材5Bをそれぞれ経由させる陸上経由部6Bとが設けられている。
【0022】
また、フロート集合体1の周囲の南側には、水底Gに埋め込まれた例えばアンカーまたは重量の大きいシンカー等である4つの水底固定部7が設けられている。水底固定部7は例えば、フロート集合体1の外周における水深(水面から水底Gまでの距離)の平均値を平均水深とした場合、水面からの距離が平均水深の80~100%となる位置に設けられる。水底固定部7は図3,4に示すように、水底Gと傾斜面との交点付近に設けられているが、水底固定部7が設けられる位置はこれに限らない。
【0023】
また、フロート集合体1の南側端部には、2つの第1係留部材5A、2つの第2係留部材5Bをそれぞれ経由させる4つのフロート経由部8Aと、2つの第2係留部材5Bの他端部をそれぞれ固定する2つのフロート固定部8Bとが設けられている。フロート集合体1の周辺を平面視して分かるように、陸上から水面中心に向かって、陸上固定部6A(陸上経由部6B)、水底固定部7、フロート経由部8A(フロート固定部8B)が、この順で設けられている。
【0024】
第1係留部材5Aは、水底Gに設けられた水底固定部7(第1固定部)と、陸上に設けられた陸上固定部6A(第2固定部)との間において、フロート集合体1に設けられたフロート経由部8Aを経由して接続される(図3も参照)。第1係留部材5Aの一端部は、例えば水底固定部7の係合部に締結されることで水底固定部7に固定され、第1係留部材5Aの他端部は、例えば陸上固定部6Aの係合部に締結されることで陸上固定部6Aに固定される。フロート経由部8Aは、第1係留部材5Aを経由させるために、水底固定部7から陸上固定部6Aに向けて第1係留部材5Aを挿通可能な例えば輪形状の挿通部を有する。
【0025】
第2係留部材5Bは、水底Gに設けられた水底固定部7(第1固定部)と、フロート集合体1に設けられたフロート固定部8B(第2固定部)との間において、フロート集合体1に設けられたフロート経由部8Aと、陸上に設けられた陸上経由部6B(経由部)とを経由して接続される(図4も参照)。第2係留部材5Bの一端部は、例えば水底固定部7の係合部に締結されることで水底固定部7に固定される。第2係留部材5Bの他端部は、例えばフロート固定部8Bの係合部に締結されることでフロート固定部8Bに固定される。フロート経由部8Aは、第2係留部材5Bを経由させるために、水底固定部7から陸上経由部6Bに向けて第2係留部材5Bを挿通可能な例えば輪形状の挿通部を有する。陸上経由部6Bは、第2係留部材5Bを経由させるために、フロート経由部8Aからフロート固定部8Bに向けて第2係留部材5Bを挿通可能な例えば輪形状の挿通部を有する。
【0026】
フロート集合体1の周囲の北側には、2つの第1係留部材5Aの一端部をそれぞれ固定する2つの陸上固定部6Aと、2つの第2係留部材5Bをそれぞれ経由させる2つの陸上経由部6Bとが設けられている。
【0027】
また、フロート集合体1の周囲の北側には、水底Gに埋め込まれた例えばアンカーまたは重量の大きいシンカー等である4つの水底固定部7が設けられている。
【0028】
また、フロート集合体1の北側端部には、2つの第1係留部材5A、2つの第2係留部材5Bをそれぞれ経由させる4つのフロート経由部8Aと、2つの第2係留部材5Bの他端部をそれぞれ固定する2つのフロート固定部8Bとが設けられている。
【0029】
第1係留部材5Aは、水底Gに設けられた水底固定部7(第1固定部)と、陸上に設けられた陸上固定部6A(第2固定部)との間において、フロート集合体1に設けられたフロート経由部8Aを経由して接続される(図3も参照)。第1係留部材5Aの一端部は、例えば水底固定部7の係合部に締結されることで水底固定部7に固定される。第1係留部材5Aの他端部は、例えば陸上固定部6Aの係合部に締結されることで陸上固定部6Aに固定される。フロート経由部8Aは、第1係留部材5Aを経由させるために、水底固定部7から陸上固定部6Aに向けて第1係留部材5Aを挿通可能な例えば輪形状の挿通部を有する。
【0030】
第2係留部材5Bは、水底Gに設けられた水底固定部7(第1固定部)と、フロート集合体1に設けられたフロート固定部8B(第2固定部)との間において、フロート集合体1に設けられたフロート経由部8Aと、陸上に設けられた陸上経由部6B(経由部)とを経由して接続される(図4も参照)。第2係留部材5Bの一端部は、例えば水底固定部7の係合部に締結されることで水底固定部7に固定される。第2係留部材5Bの他端部は、例えばフロート固定部8Bの係合部に締結されることでフロート固定部8Bに固定される。フロート経由部8Aは、第2係留部材5Bを経由させるために、水底固定部7から陸上経由部6Bに向けて第2係留部材5Bを挿通可能な例えば輪形状の挿通部を有する。陸上経由部6Bは、第2係留部材5Bを経由させるために、フロート経由部8Aからフロート固定部8Bに向けて第2係留部材5Bを挿通可能な例えば輪形状の挿通部を有する。
【0031】
図3Aに示すように、第1係留部材5Aは、ダムの水位が満水位である場合、陸上固定部6Aとフロート経由部8Aとの間において弛み量が最小となる緊張状態となる。その結果、水上Lにおけるフロート集合体1の水平方向の移動量(自由度)は小さくなる。その一方、図3Bに誇張して示すように、第1係留部材5Aは、ダムの水位が高い場合、陸上固定部6Aとフロート経由部8Aとの間において弛み量が最小である場合(点線で示す)と比べて、陸上固定部6Aとフロート経由部8Aとの間において弛み量が大きい弛み状態となる。その結果、水上Lにおけるフロート集合体1の水平方向(図3中の矢印方向)の移動量(自由度)は大きくなる。また、図3Cに誇張して示すように、第1係留部材5Aは、ダムの水位が低い場合、陸上固定部6Aとフロート経由部8Aとの間において弛み量が最小である場合(点線で示す)と比べて、陸上固定部6Aとフロート経由部8Aとの間において弛み量がより大きい弛み状態となる。この場合、水上Lにおけるフロート集合体1の水平方向(図3中の矢印方向)の移動量(自由度)はより大きくなり、フロート集合体1が傾斜面に接近し、水平方向(図3中の矢印方向)におけるフロート集合体1と傾斜面との間における距離が短くなる可能性がある。すなわち、第1係留部材5Aは、水位が下降すると、ダムの水位が満水位である場合と比べて弛み量が大きくなるように構成される。なお、陸上固定部6Aとフロート経由部8Aとの間における第1係留部材5Aの長さをA、水底固定部7とフロート経由部8Aとの間における第1係留部材5Aの長さをB、陸上固定部6Aと水底固定部7との間の長さをCとした場合、A+B≧Cの関係を満たすことが好ましい。また、(A+B)/C≧1.5の関係を満たすことが好ましく、(A+B)/C≧2.0の関係を満たすことがさらに好ましい。(A+B)/Cが大きくなるほど、水深方向におけるフロート経由部8Aの移動軌跡は円(真円)に近くなり、水位が下降してもフロート経由部8Aひいてはフロート集合体1の水平方向(図3中の矢印方向)の移動量(自由度)は小さくなるからである。
【0032】
図4Aに誇張して示すように、第2係留部材5Bは、ダムの水位が高い場合、フロート経由部8Aとフロート固定部8Bとの間において弛み量が最小である場合(点線で示す)と比べて、フロート経由部8Aとフロート固定部8Bとの間において弛み量が大きい弛み状態となる。その結果、水上Lにおけるフロート集合体1の水平方向(図4中の矢印方向)の移動量(自由度)は大きくなる。その一方、図4Bに示すように、第2係留部材5Bは、ダムの水位が低い場合、ダムの水位が高い場合(図4A)と比べて、フロート経由部8Aとフロート固定部8Bとの間において弛み量が小さい弛み状態となる。その結果、ダムの水位が高い場合(図4A)と比べて、水上Lにおけるフロート集合体1の水平方向の移動量(自由度)は小さくなる。また、図4Cに誇張して示すように、第2係留部材5Bは、ダムの水位が最低水位である場合、フロート経由部8Aとフロート固定部8Bとの間において弛み量が最小となる緊張状態となる。すなわち、第2係留部材5Bは、水位が上昇すると、ダムの水位が最低水位である場合と比べて弛み量が大きくなるように構成される。なお、図示していないが、第2係留部材5Bは、ダムの水位が0である場合(つまり、フロート集合体1が水底Gに設置された場合)、ダムの水位が最低水位である場合(図4C)と比べて、フロート経由部8Aとフロート固定部8Bとの間における弛み量がより小さくなる。
【0033】
以上のようにして、本実施形態にかかるフロートシステム10は、水上Lに浮かぶように構成されるフロート集合体1と係留部材とを備える。係留部材は、水底Gおよび陸上にフロート集合体1を接続してフロート集合体1を水上Lに係留し、水位の変動に応じて弛み量が変動するように構成される。具体的には、係留部材は、水位が満水位である場合に弛み量が最小となる第1係留部材5Aと、水位が最低水位である場合に弛み量が最小となる第2係留部材5Bとを有する。
【0034】
このような構成とすることにより、水面から水底Gまでの深さが大きく、水位の変動が大きいダム等で係留部材によりフロート集合体1が係留される際、水位が高い場合には、その場合に弛み量が小さくなる第1係留部材5Aによってフロート集合体1の水平方向の移動が抑制され、水位が低い場合には、その場合に弛み量が小さくなる第2係留部材5Bによってフロート集合体1の水平方向の移動が抑制される。その結果、仮に水位が大きく変動(上昇、下降)しても、第1係留部材5Aまたは第2係留部材5Bによってフロート集合体1の水平方向の移動を抑制する作用が必ず働き、フロート集合体1とフロート集合体1の外側の壁との間における衝突の発生を抑制することができる。
【0035】
なお、上記実施形態において、水上Lにフロート集合体1を係留するために使用する第1係留部材5Aの数は4つに限られず、1~3つ、または、5つ以上の第1係留部材5Aを使用しても良い。また、水上Lにフロート集合体1を係留するために使用する第2係留部材5Bの数は4つに限られず、1~3つ、または、5つ以上の第1係留部材5Aを使用しても良い。
【0036】
また、上記実施形態では、フロート集合体1の北側、南側において、第1係留部材5A、第2係留部材5Bを用いて水上Lにフロート集合体1を係留する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、フロート集合体1の東側、西側において、第1係留部材5A、第2係留部材5Bを用いて水上Lにフロート集合体1を係留しても良い。
【0037】
また、上記実施形態において、第1係留部材5Aの数は、第2係留部材5Bの数より大きいことが好ましい。第1係留部材5Aは、第2係留部材5Bよりも設置が容易であるからである。また、ダムの水位は変動するものの、一般的に、ダムの水位が高い位置で維持される期間(陸上固定部6Aとフロート経由部8Aとの間において第1係留部材5Aの弛み量が小さい状態となる期間)が、ダムの水位が低い位置で維持される期間(フロート経由部8Aとフロート固定部8Bとの間において第2係留部材5Bの弛み量が小さい状態となる期間)より長く、ダムの水位が高い場合、ダムの水位が低い場合と比べて、フロート集合体1は風の影響を強く受けて、フロート集合体1にかかる揚力が大きくなるためである。フロート集合体1の周囲の北側(風の影響を受けやすい)に設けられる係留部材(第1係留部材5A、第2係留部材B)の数は、フロート集合体1の周囲の南側(風の影響を受けにくい)に設けられる係留部材(第1係留部材5A、第2係留部材B)の数よりも多いことが好ましい。つまり、全ての係留部材(第1係留部材5A、第2係留部材B)のうち、フロート集合体1の周囲の北側に設けられる係留部材(第1係留部材5A、第2係留部材B)の占める割合は、フロート集合体1の周囲の南側に設けられる係留部材(第1係留部材5A、第2係留部材B)の占める割合よりも大きいことが好ましい。(第1係留部材5Aの数/第2係留部材Bの数)は、その上限を10として、1以上が好ましく、さらに1.5以上が好ましい。第1係留部材5Aの数、第2係留部材5Bの数は、水深やダムの水位変動等の設置条件によって調整して良い。
【0038】
また、上記実施形態では、陸上経由部6Bは、第2係留部材5Bを経由させるために、第2係留部材5Bを挿通可能な形状を有する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、陸上経由部6Bは、第2係留部材5Bを経由させるために、第2係留部材5Bを取り付け可能な滑車を有しても良い。
【0039】
また、上記実施形態では、フロート経由部8Aは、第1係留部材5A、第2係留部材5Bを経由させるために、第1係留部材5A、第2係留部材5Bを挿通可能な形状を有する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、フロート経由部8Aは、第1係留部材5A、第2係留部材5Bを経由させるために、第1係留部材5A、第2係留部材5Bを取り付け可能な滑車を有しても良い。
【0040】
また、上記実施形態において、水底Gおよび陸上にフロート集合体1を接続してフロート集合体1を水上Lに係留する係留部材は、水底Gに設けられた固定部と、フロート集合体1に設けられた固定部との間において接続され、水位が満水位である場合における弛み量が最小となる第1係留部材と、陸上に設けられた固定部と、フロート集合体1に設けられた固定部との間において接続され、水位が最低水位である場合における弛み量が最小となる第2係留部材とを有しても良い。
【0041】
上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1:フロート集合体
2:フロート
3:ジョイント
4:ソーラパネル
5A:第1係留部材
5B:第2係留部材
6A:陸上固定部
6B:陸上経由部
7:水底固定部
8A:フロート経由部
8B:フロート固定部
10:フロートシステム
G:水底
L:水上
図1
図2
図3
図4