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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163008
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/16 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
B43K21/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073790
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 勇二
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353FA12
2C353FC13
2C353FE01
2C353FG05
(57)【要約】
【課題】重量体を有するシャープペンシルにおいて、重量体の意図しない前後動により筆記芯が繰り出されることを抑制する。
【解決手段】シャープペンシル10は、主軸22を含む軸筒20と、筆記芯80を繰り出す芯繰出機構30と、主軸に対して前後動可能に配置された重量体50と、主軸に対して中心軸線A周りに回転可能な操作体61と、操作体に対して前後動可能に配置され、規制位置と、規制位置よりも後方の非規制位置との間で移動可能な移動部材64と、移動部材が規制位置に位置するときに、重量体の前後動を規制する規制部材68と、操作体及び移動部材の一方に設けられた少なくとも2つのカム斜面63aと、操作体及び移動部材の他方に設けられた少なくとも2つの当接部64bと、を有し、操作体が中心軸線周りに回転すると、カム斜面と当接部とが互いに接触しながら、当接部がカム斜面に沿って移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸を含む軸筒と、
筆記芯を繰り出す芯繰出機構と、
前記主軸に対して前後動可能に配置された重量体と、
前記主軸に対して中心軸線周りに回転可能な操作体と、
前記操作体に対して前後動可能に配置され、規制位置と、前記規制位置よりも後方の非規制位置との間で移動可能な移動部材と、
前記移動部材が前記規制位置に位置するときに、前記重量体の前後動を規制する規制部材と、
前記操作体及び前記移動部材の一方に設けられた少なくとも2つのカム斜面と、
前記操作体及び前記移動部材の他方に設けられた少なくとも2つの当接部と、を有し、
前記操作体が前記中心軸線周りに回転すると、前記カム斜面と前記当接部とが互いに接触しながら、前記当接部が前記カム斜面に沿って移動する、シャープペンシル。
【請求項2】
前記操作体は、少なくとも一部が前記主軸の後方部分の外側に配置された後軸を含む、請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記芯繰出機構は、前記筆記芯を把持するチャックと、前記チャックを後方に付勢するチャック付勢スプリングと、を有し、
前記移動部材が前記規制位置に位置するときに前記規制部材が前記重量体を前方へ押圧する押圧力は、前記チャック付勢スプリングの弾発力よりも小さい、請求項1又は2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記移動部材が前記規制位置に位置し、且つ、前記重量体が最も前方に位置するときに、前記重量体と前記規制部材との間に隙間が形成される、請求項1又は2に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記規制部材は、弾性部材である、請求項1又は2に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記弾性部材は、コイルスプリングである、請求項5に記載のシャープペンシル。
【請求項7】
前記移動部材を後方へ付勢する移動部材付勢スプリングを有する、請求項1又は2に記載のシャープペンシル。
【請求項8】
前記主軸は、内周面に設けられ軸方向に延びる溝部を有し、
前記移動部材は、前記溝部内を移動可能な突出部を有する、請求項1又は2に記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸筒内に、当該軸筒に対して前後動可能な重量体を有するシャープペンシルが知られている。このシャープペンシルでは、使用者が軸筒を前後に振ることにより、軸筒内で重量体が前後に移動する。このとき、前方に移動した重量体が芯繰出機構の一部に衝突することにより、芯繰出機構が作動して筆記芯が繰り出される。このようなシャープペンシルには、軸筒を持ち替えることなく筆記芯を繰り出すことができる利点がある。特許文献1には、このような振出式のシャープペンシルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-1980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の振出式のシャープペンシルでは、鞄等に入れて持ち運びする際に、振動やシャープペンシルの傾きにより意図せず重量体が前後に移動して、筆記芯が繰り出されてしまうことがあった。この場合、筆記芯が折損したり、繰出された筆記芯や折損した筆記芯により、鞄の内面や鞄の内部に収容されている他の物品が汚損したりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、重量体を有するシャープペンシルにおいて、重量体の意図しない前後動により筆記芯が繰り出されることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、
[1]主軸を含む軸筒と、
筆記芯を繰り出す芯繰出機構と、
前記主軸に対して前後動可能に配置された重量体と、
前記主軸に対して中心軸線周りに回転可能な操作体と、
前記操作体に対して前後動可能に配置され、規制位置と、前記規制位置よりも後方の非規制位置との間で移動可能な移動部材と、
前記移動部材が前記規制位置に位置するときに、前記重量体の前後動を規制する規制部材と、
前記操作体及び前記移動部材の一方に設けられた少なくとも2つのカム斜面と、
前記操作体及び前記移動部材の他方に設けられた少なくとも2つの当接部と、を有し、
前記操作体が前記中心軸線周りに回転すると、前記カム斜面と前記当接部とが互いに接触しながら、前記当接部が前記カム斜面に沿って移動する、シャープペンシル、である。
【0007】
本発明の他の実施形態は、
[2]前記操作体は、少なくとも一部が前記主軸の後方部分の外側に配置された後軸を含む、[1]に記載のシャープペンシル、である。
【0008】
本発明のさらに他の実施形態は、
[3]前記芯繰出機構は、前記筆記芯を把持するチャックと、前記チャックを後方に付勢するチャック付勢スプリングと、を有し、
前記移動部材が前記規制位置に位置するときに前記規制部材が前記重量体を前方へ押圧する押圧力は、前記チャック付勢スプリングの弾発力よりも小さい、[1]又は[2]に記載のシャープペンシル、である。
【0009】
本発明のさらに他の実施形態は、
[4]前記移動部材が前記規制位置に位置し、且つ、前記重量体が最も前方に位置するときに、前記重量体と前記規制部材との間に隙間が形成される、[1]~[3]のいずれか1つに記載のシャープペンシル、である。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態は、
[5]前記規制部材は、弾性部材である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のシャープペンシル、である。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態は、
[6]前記弾性部材は、コイルスプリングである、[5]に記載のシャープペンシル、である。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態は、
[7]前記移動部材を後方へ付勢する移動部材付勢スプリングを有する、[1]~[6]のいずれか1つに記載のシャープペンシル、である。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態は、
[8]前記主軸は、内周面に設けられ軸方向に延びる溝部を有し、
前記移動部材は、前記溝部内を移動可能な突出部を有する、[1]~[7]のいずれか1つに記載のシャープペンシル、である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、重量体を有するシャープペンシルにおいて、重量体の意図しない前後動により筆記芯が繰り出されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態を示す図であって、シャープペンシルの一例を非規制状態で示す縦断面図である。
図2図2は、図1のシャープペンシルの移動規制機構を拡大して示す縦断面図である。
図3図3は、規制状態における移動規制機構を拡大して示す縦断面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に対応する横断面図である。
図5図5は、シャープペンシルの一部を示す分解斜視図である。
図6図6は、シャープペンシルの主軸を中心軸線に沿って切断した状態で示す斜視図である。
図7図7は、シャープペンシルの回転部材を中心軸線に沿って切断した状態で示す斜視図である。
図8図8は、非規制状態にある移動規制機構の一部を示す図である。
図9図9は、規制状態にある移動規制機構の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0017】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0018】
本明細書では、筆記具の中心軸線Aが延びる方向(長手方向、縦断面図における上下方向)を軸方向da、中心軸線Aと直交する方向を径方向dr、中心軸線A周りの円周に沿った方向を周方向dcとする。また、軸方向daに沿って、筆記する際に紙面等の被筆記面に近接する側を前方とし、被筆記面から離間する側を後方とする。また、径方向drに沿って、中心軸線Aに向かう方向を内側又は内方とし、中心軸線Aから離れる方向を外側又は外方とする。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態を示す図であって、シャープペンシル10の一例を非規制状態で示す縦断面図である。本実施形態のシャープペンシル10は、軸筒20と、芯繰出機構30と、重量体50と、移動規制機構60と、を備えている。また、シャープペンシル10は、長手方向に延びる中心軸線Aを有している。
【0020】
軸筒20は、主軸22と、後軸24と、先端部材26と、グリップ部材28と、を含んでいる。軸筒20の中心軸線は、シャープペンシル10の中心軸線Aと一致している。軸筒20の前端には、筆記芯80が通過可能な前端開口部20aが設けられている。本実施形態では、前端開口部20aは、先端部材26の前端に形成された開口部である。芯繰出機構30は、使用者の操作により、筆記芯80を前端開口部20aから前方へ繰り出す機構である。
【0021】
主軸22は、略筒状の形状を有する部材である。後軸24は、主軸22の後方に配置された、略筒状の形状を有する部材である。後軸24は、主軸22に対して、中心軸線A周りに回転可能且つ前後動不能に取り付けられている。とりわけ本実施形態では、後軸24は、後述の回転部材62を介して、主軸22に取り付けられている。本実施形態の後軸24は、回転部材62とともに後述の操作体61を構成する。先端部材26は、シャープペンシル10の先端部分を形成する部材である。先端部材26は、略円錐形状を有しており、前方に向かうにつれてその外径が小さくなっている。先端部材26の後端部が主軸22の前端部に取付けられることにより、先端部材26が主軸22に対して連結される。一例として、主軸22の前端部の外周面に形成された雄ネジ部に対して、先端部材26の内周面に形成された雌ネジ部が螺合することにより、先端部材26が主軸22に対して連結される。グリップ部材28は、例えばゴムやエラストマー等の弾性部材で形成されており、使用者がシャープペンシル10で筆記を行う際に、指でつかむことが意図されている。
【0022】
なお、本明細書において、前後動不能であるとは、完全に前後動しないものに限定することを意図していない。すなわち、前後動不能である又は軸方向daに移動不能であるとは、遊びを有してそれ以上の移動が規制されているものを含む概念である。同様に、回転不能である又は周方向dcに移動不能であるとは、遊びを有してそれ以上の回転又は移動が規制されているものを含む概念である。
【0023】
芯繰出機構30は、使用者の操作により、筆記芯80を軸筒20の前端開口部20aから前方へ繰り出す機構である。本実施形態の芯繰出機構30は、ノック体40と、芯パイプ31と、チャック32と、コネクタ33と、チャック付勢スプリング35と、受け部材36と、締具37と、芯ホルダ38と、を含んでいる。
【0024】
ノック体40は、筆記芯80を繰り出す際に使用者により前方へ押圧される部材である。ノック体40は、操作体61(回転部材62)に対して、前後動可能に配置されている。なお、ノック体40は、操作体61に対して中心軸線A周りに回転可能であってもよいし、回転不能であってもよい。図1に示された例では、ノック体40は、押圧部材42と、消去部材44と、キャップ46と、を含んでいる。押圧部材42は、ノック体40が前方へ押圧された際に、芯パイプ31を前方へ押圧する機能を有する。図示された例では、押圧部材42は、略略筒状の形状を有する部材である。消去部材44は、筆跡を摩擦して当該筆跡を消去するための部材である。消去部材44は、例えば消しゴムである。キャップ46は、消去部材44を覆うように、押圧部材42の後端に取り付けられた部材であり、使用者がノック体40を前方へ押圧する際に、使用者の指等が接触して押圧されることが意図されている。
【0025】
操作体61(回転部材62)と、ノック体40との間には、ノック体付勢スプリング48が配置されている。ノック体付勢スプリング48は、操作体61とノック体40との間に圧縮状態で配置されている。ノック体付勢スプリング48は、例えばコイルスプリングである。重量体50の衝突荷重により筆記芯80が適切に繰り出されるよう、チャック32を後方へ付勢するチャック付勢スプリング35の弾発力は、比較的小さく設定されてもよい。しかし、この場合、ノック体40が使用者や他の物品に接触した際に、小さい力でもチャック32が前方へ移動し、意図せずに筆記芯80が繰り出されるおそれがある。本実施形態のシャープペンシル10は、ノック体付勢スプリング48を有していることにより、チャック付勢スプリング35の弾発力を大きくすることなく、筆記芯80を繰り出すために必要なノック体40の押圧力を大きくすることができる。したがって、ノック体40が使用者や他の物品に接触した際に、意図せずに筆記芯80が繰り出されることを抑制することができる。
【0026】
押圧部材42は、前方部分の外周面から径方向drの外側に突出する突出部42aと、突出部42aの後方に位置するとともに外周面から径方向drの外側に突出して形成された外鍔部42bと、内周面から径方向drの内側に突出して形成された内鍔部42cと、を有している。突出部42aは、回転部材62の後述の内鍔部62aに係止して、回転部材62に対するノック体40の後方への移動を規制する。外鍔部42bは、ノック体付勢スプリング48の弾発力を受ける部分である。内鍔部42cは、ノック体40が前方へ押圧された際に、芯パイプ31の後端に当接して、芯パイプ31を前方へ押圧する。
【0027】
芯パイプ31は、内部に筆記芯80を貯留する部材である。また、本実施形態では、芯パイプ31は、使用者がノック体40を前方に押圧した際に、押圧力をノック体40からコネクタ33へ伝達する機能も有する。このような芯パイプ31は、例えば樹脂で形成される。ノック体40が前方へ押圧されていない状態(図1図3参照)において、押圧部材42は、ノック体付勢スプリング48の弾発力により後方へ付勢されている。したがって、ノック体40が前方へ押圧されていない状態において、芯パイプ31の後端と押圧部材42の内鍔部42cとの間には、軸方向daに沿って隙間が形成されている。芯パイプ31の後端と押圧部材42の内鍔部42cとの間にこのような隙間が形成されていると、シャープペンシル10を鞄等に入れて持ち運びする際に、ノック体40が鞄の内面や鞄の内部に収容されている他の物品に接触してノック体40がわずかに前方へ押圧されても、芯パイプ31は前方へ移動しない。したがって、筆記芯80がシャープペンシル10から意図せずに繰り出されることを抑制することができる。
【0028】
チャック32は、筆記芯80を把持する部材である。チャック32は、芯パイプ31及びコネクタ33と一体的に前後に移動することが可能である。コネクタ33は、芯パイプ31とチャック32とを接続する部材である。図示された例では、コネクタ33の後端部は、芯パイプ31の前端部内に挿入されており、これにより、コネクタ33が芯パイプ31に対して固定されている。また、チャック32の後端部は、コネクタ33の前端部内に挿入されており、これにより、チャック32がコネクタ33に対して固定されている。
【0029】
コネクタ33の前方には、チャック付勢スプリング35が配置されている。チャック付勢スプリング35は、例えばコイルスプリングである。チャック付勢スプリング35の前方には、受け部材36が配置されており、チャック付勢スプリング35は、コネクタ33の前端部と、受け部材36との間に、圧縮状態で配置されている。受け部材36は、チャック付勢スプリング35の弾発力を受ける部材である。受け部材36は、チャック付勢スプリング35の弾発力により前方へ押圧され、先端部材26の内面に形成された段部に当接している。締具37は、チャック32の前方部分に対して径方向の外側に位置する環状の部品である。締具37の後端部が受け部材36に当接することにより、締具37の後方への移動が規制されている。芯ホルダ38は、チャック32の前方に配置されており、筆記芯80の外面に当接して筆記芯80を保持する部材である。芯ホルダ38は、ゴム等の弾性部材で形成されており、チャック32が筆記芯80を把持していないときに、筆記芯80が軸方向daに移動することを抑制する。
【0030】
重量体50は、軸方向daに延びる筒状の部材である。重量体50は、芯パイプ31を取り囲むようにして芯パイプ31の外側に配置されている。重量体50は、比較的密度の大きい材料、例えば金属材料、で形成されている。重量体50と芯パイプ31との間には隙間が形成されており、重量体50は、芯パイプ31に対して軸方向daに容易に移動可能である。とりわけ、使用者がシャープペンシル10を軸方向daに沿って振ることにより、重量体50は、芯パイプ31に対して軸方向daに移動する。
【0031】
コネクタ33は、径方向drの外側に向かって芯パイプ31の外周面よりも大きく突出する当接部33aを有している。重量体50が前方に移動してコネクタ33の当接部33aに後方から衝突すると、重量体50からコネクタ33に対して作用する衝撃荷重により、コネクタ33が前方へ移動する。
【0032】
芯繰出機構30により筆記芯80を繰り出す際には、使用者により、ノック体40が前方へ向けて押圧される。ノック体40が前方へ移動すると、芯パイプ31の後端とノック体40の押圧部材42の内鍔部42cとの間に形成された隙間における軸方向daの寸法が小さくなる。押圧部材42の内鍔部42cが芯パイプ31の後端に当接し、さらにノック体40が前方へ向けて押圧されると、ノック体40、芯パイプ31、コネクタ33及びチャック32が、ノック体付勢スプリング48及びチャック付勢スプリング35の弾発力に抗して、前方へ移動する。また、使用者がシャープペンシル10を軸方向daに沿って振り、重量体50が前方に移動してコネクタ33の当接部33aに衝突することによっても、芯パイプ31、コネクタ33及びチャック32が、チャック付勢スプリング35の弾発力に抗して、前方へ移動する。
【0033】
チャック32の前方部分の外面は、ノック体40が前方へ押圧されていないときには、締具37に内側から当接している。したがって、チャック32の前方部分が径方向drの外側に開くことが抑制されている。これにより、チャック32の前方部分が筆記芯80を把持する。チャック32が前方へ移動すると、チャック32に把持された筆記芯80が前方へ移動し、筆記芯80が軸筒20の前端開口部20aから前方へ繰り出される。チャック32がさらに前方へ移動すると、チャック32の前方部分が締具37に対して前方へ移動する。これにより、チャック32の前方部分が径方向drの外側に開き、チャック32の前方部分に把持されていた筆記芯80が解放される。このとき、筆記芯80は、芯ホルダ38により保持される。
【0034】
使用者によるノック体40の押圧が解除されると、ノック体付勢スプリング48及びチャック付勢スプリング35の弾発力により、ノック体40、芯パイプ31、コネクタ33及びチャック32が、後方へ移動する。また、重量体50によるコネクタ33の押圧が解除されると、チャック付勢スプリング35の弾発力により、芯パイプ31、コネクタ33及びチャック32が、後方へ移動する。チャック32が後方へ移動すると、チャック32の前方部分が締具37の内側へ移動し、締具37に当接して筆記芯80を把持する。このとき、筆記芯80は、芯ホルダ38により保持されているので、筆記芯80の後方への移動が抑制される。本実施形態の筆記具では、このようにして、筆記芯80が軸筒20の前端開口部20aから前方へ繰り出される。
【0035】
ところで、従来の振出式のシャープペンシルでは、鞄等に入れて持ち運びする際に、振動やシャープペンシルの傾きにより意図せず重量体が前後に移動して、筆記芯が繰り出されてしまうことがあった。この場合、筆記芯が折損したり、繰出された筆記芯や折損した筆記芯により、鞄の内面や鞄の内部に収容されている他の物品が汚損したりするおそれがあった。
【0036】
このような問題が生じることを抑制するために、本実施形態のシャープペンシル10は、重量体50の軸方向daの移動を規制することが可能な移動規制機構60を有している。移動規制機構60は、シャープペンシル10を、重量体50の移動が規制されていない非規制状態と、重量体50の移動が規制された規制状態と、に切替えることが可能である。図2は、非規制状態における移動規制機構60を示す縦断面図であり、図3は、規制状態における移動規制機構60を示す縦断面図である。
【0037】
図2に示された非規制状態では、重量体50の軸方向daの移動可能な範囲が、規制状態における重量体50の軸方向daの移動可能な範囲と比較して、大きくなっている。したがって、シャープペンシル10が軸方向daに沿って振られると、重量体50が前後方向に大きく移動する。これにより、重量体50がコネクタ33の当接部33aに衝突した際に、重量体50からコネクタ33に対して、規制状態において重量体50からコネクタ33に作用する衝撃荷重よりも大きな衝撃荷重が作用する。したがって、芯パイプ31、コネクタ33及びチャック32が、チャック付勢スプリング35の弾発力に抗して前方へ移動し、筆記芯80が軸筒20の前端開口部20aから繰り出される。
【0038】
その一方、図3に示された規制状態では、重量体50の軸方向daにおける移動可能な範囲が狭められている。したがって、シャープペンシル10が軸方向daに沿って振られた際の、重量体50の前後方向の移動範囲が狭められる。これにより、重量体50がコネクタ33の当接部33aに衝突した際に重量体50からコネクタ33に対して作用する衝撃荷重も、非規制状態において重量体50からコネクタ33に作用する衝撃荷重より小さくなる。この場合、芯パイプ31、コネクタ33及びチャック32が、チャック付勢スプリング35の弾発力に抗して前方へ移動することが抑制され、筆記芯80が軸筒20の前端開口部20aから繰り出されることも抑制される。なお、本明細書において、重量体50の前後動が規制されるとは、重量体50の軸方向daにおける移動可能な範囲が狭められることを意味する。
【0039】
以下、図2図9を参照しながら、移動規制機構60の詳細について説明する。図4は、図3のIV-IV線に対応する横断面図であり、図5は、移動規制機構60を含むシャープペンシル10の一部を示す分解斜視図である。図6は、主軸22を中心軸線Aに沿って切断した状態で示す斜視図であり、図7は、移動規制機構60の回転部材62を中心軸線Aに沿って切断した状態で示す斜視図である。図8は、非規制状態にある移動規制機構60の一部を示す図であり、図9は、規制状態にある移動規制機構60の一部を示す図である。
【0040】
本実施形態の移動規制機構60は、主軸22に設けられた溝部22a及び内段部22bと、操作体61と、移動部材64と、移動部材付勢スプリング66と、規制部材68と、を含んでいる。
【0041】
本実施形態の主軸22は、溝部22aと、内段部22bと、を有している。溝部22aは、主軸22の内周面に設けられており、軸方向daに延びている。とりわけ、溝部22aは、直線状に延びている。主軸22は、複数の溝部22aを有してもよい。複数の溝部22aは、互いに等角度間隔を有して配置されてもよい。図示された例では、主軸22は、互いに180度の角度間隔を有した2つの溝部22aを有している。これに限られず、主軸22は、1つの溝部22aを有してもよいし、3つ以上の溝部22aを有してもよい。内段部22bは、主軸22の内周面に設けられた段部であり、後方に向く面を含んでいる。内段部22bは、移動部材付勢スプリング66の弾発力を受ける部分である。
【0042】
操作体61は、シャープペンシル10を非規制状態と規制状態との間で切替えるために、使用者により操作される部材である。操作体61は、主軸22に対して、中心軸線A周りに回転可能且つ前後動不能に取り付けられている。本実施形態では、操作体61は、後軸24と、回転部材62と、を含んでいる。後軸24の少なくとも一部は、主軸22の後方部分の外側に配置されている。図示された例では、後軸24の前端を含む前方側の一部が、主軸22の後方部分の外側に配置されている。後軸24は、回転部材62に対して、径方向drの外側に配置されている。また、後軸24は、回転部材62に対して、中心軸線A周りに回転不能且つ前後動不能に固定されている。とりわけ、後軸24の後方部分が回転部材62の後方部分に固定されている。
【0043】
回転部材62は、略筒状の形状を有する部材である。回転部材62は、主軸22に対して、中心軸線A周りに回転可能且つ前後動不能に取り付けられている。回転部材62は、内鍔部62aと、カム部63と、を有している。内鍔部62aは、内周面から径方向drの内側に突出して形成されている。図2及び図3に示された例では、内鍔部62aの前面には、押圧部材42の突出部42aが係止可能であり、押圧部材42の突出部42aが内鍔部62aの前面に係止した状態で、回転部材62に対するノック体40の後方への移動が規制される。内鍔部62aの後面は、ノック体付勢スプリング48の弾発力を受ける部分である。図示された例では、ノック体付勢スプリング48は、回転部材62の内鍔部62aと、ノック体40の押圧部材42の外鍔部42bと、の間に配置されている。
【0044】
カム部63は、移動部材64の当接部64bと協働して、シャープペンシル10を規制状態と非規制状態とに切替える機能を有する。図8及び図9には、回転部材62のカム部63の形状が示されている。図8及び図9は、主軸22、回転部材62及び移動部材64を、軸方向da及び径方向drに延びる平面で切り開いた展開図である。図8及び図9では、主軸22の溝部22aと、回転部材62のカム部63と、移動部材64の後述の突出部64a及び当接部64bとが径方向drの外側から見て示されている。
【0045】
回転部材62は、少なくとも2つのカム部63を有している。少なくとも2つのカム部63は、互いに等角度間隔を有して配置されてもよい。図示された例では、回転部材62は、互いに180度の角度間隔を有した2つのカム部63を有している。これに限られず、回転部材62は、3つ以上のカム部63を有してもよい。
【0046】
カム部63は、カム斜面63aと、係止凹部63bと、凸部63cと、を含む。カム斜面63aは、回転部材62が中心軸線A周りに回転した際に、当接部64bが当接しながら移動する面である。カム斜面63aは、軸方向da及び周方向dcの両方に対して傾斜した方向に螺旋状に延びている(図7参照)。展開図である図8及び図9では、カム斜面63aは、軸方向da及び周方向dcの両方に対して傾斜した方向に直線状に延びるように示されている。なお、これに限られず、カム斜面63aは、図8及び図9に示すような軸方向da及び径方向drに延びる平面で切り開いた展開図において、曲線状に延びていてもよい。係止凹部63bは、規制状態において当接部64bが位置する部分である。係止凹部63bは、後方に向かって窪んでいる。凸部63cは、係止凹部63bに位置する当接部64bがカム斜面63aへ向かって移動することを抑制する、いわゆる戻り止めである。凸部63cは、カム斜面63aと係止凹部63bとの間に位置している。凸部63cは、係止凹部63bよりも前方へ向かって突出している。
【0047】
周方向dcに対するカム斜面63aの傾斜角度θは、30度以上80度以下であってもよい(図9参照)。好ましくは、傾斜角度θは、40度以上75度以下であってもよく、50度以上70度以下であってもよく、60度以上65度以下であってもよい。
【0048】
移動部材64は、略筒状の形状を有する部材であり、主軸22内に配置されている。移動部材64は、主軸22に対して、中心軸線A周りに回転不能且つ軸方向daに移動可能に配置されている。移動部材64は、操作体61(回転部材62)に対して前後動可能である。操作体61(回転部材62)は、移動部材64に対して中心軸線A周りに回転可能である。また、移動部材64は、規制位置(図3及び図9参照)と、規制位置よりも後方の非規制位置(図2及び図8参照)との間で移動可能である。本実施形態では、移動部材64が規制位置にあるときに、シャープペンシル10が規制状態となり、移動部材64が非規制位置にあるときに、シャープペンシル10が非規制状態となる。
【0049】
移動部材64の外周面には、径方向drの外側に向かって突出した突出部64aが形成されている。図示された例では、突出部64aは、移動部材64の前方部分の外周面に設けられている。とりわけ、移動部材64は、前方部分に位置する大径部と、大径部の後方に位置し、大径部の外径よりも小さな外径を有する小径部とを有しており、突出部64aは、大径部の外周面に設けられている。突出部64aは、軸方向daに沿って直線状に延びている。突出部64aは、主軸22の溝部22a内に位置し、溝部22a内を軸方向daに移動可能に構成されている。したがって、突出部64aは、主軸22の各溝部22aに対応して設けられる。移動部材64は、主軸22の溝部22aと同数の突出部64aを有している。図示された例では、移動部材64は、互いに180度の角度間隔を有した2つの突出部64aを有している。なお、移動部材64の後方部分は、回転部材62の前方部分の内側に位置している。
【0050】
移動部材64の外周面には、回転部材62のカム部63に当接することが意図された当接部64bが形成されている。図示された例では、当接部64bは、移動部材64の外周面から径方向drの外側に向かって突出して形成されている。図示された例では、当接部64bは、移動部材64の後方部分の外周面に設けられている。とりわけ、当接部64bは、移動部材64の小径部の外周面に設けられている。当接部64bは、軸方向daに沿って直線状に延びている。当接部64bにおける、カム部63に直接当接する後端部は、曲面形状を有している。とりわけ、図8及び図9に示された例では、当接部64bの後端部は、径方向drから見て半円形状を有している。当接部64bにおける、カム部63に直接当接する部分が曲面形状を有していることにより、当接部64bがカム斜面63aに当接しながら、カム斜面63aに沿って滑らかに移動することができる。
【0051】
移動部材64は、少なくとも2つの当接部64bを有している。少なくとも2つの当接部64bは、互いに等角度間隔を有して配置されてもよい。図示された例では、移動部材64は、互いに180度の角度間隔θを有した2つの当接部64bを有している(図9参照)。これに限られず、移動部材64は、3つ以上の当接部64bを有してもよい。本実施形態では、移動部材64は、回転部材62のカム部63(カム斜面63a)の数と同数の当接部64bを有している。すなわち、シャープペンシル10は、2つのカム部63及び2つの当接部64bを有している。これに限られず、シャープペンシル10は、3つのカム部63及び3つの当接部64bを有してもよいし、4つのカム部63及び4つの当接部64bを有してもよい。
【0052】
シャープペンシルが、1つのカム斜面及び1つの当接部のみを有する場合、操作体が回転した際に、1か所のみで操作体から移動部材へ押圧力が伝達される。この場合、移動部材が中心軸線に対して傾くことがある。移動部材が傾くと、当該移動部材が軸筒に引っかかり、適切に前後動しなくなるおそれがある。本実施形態では、操作体61(回転部材62)及び移動部材64の一方が少なくとも2つのカム斜面63aを有し、且つ、操作体61(回転部材62)及び移動部材64の他方が少なくとも2つの当接部64bを有することにより、少なくとも2か所で操作体61から移動部材64へ押圧力が伝達される。これにより、操作体61により押圧された際に、移動部材64が中心軸線Aに対して傾くことが抑制される。したがって、移動部材64が操作体61に対して安定して前後動することが可能になる。すなわち、シャープペンシル10において、規制状態と非規制状態とを安定して切り替えることができる。
【0053】
本実施形態では、突出部64aと当接部64bとは、軸方向daに並んで配置されている(図5図8及び図9参照)。換言すると、突出部64aと当接部64bとは、軸方向daから見て、周方向dcの同角度に配置されている。とりわけ、図示された例では、突出部64aと当接部64bとは、軸方向daから見て、径方向drに重なって配置されている。移動部材64の内周面には、径方向drの内側に向かって突出した内鍔部64cが形成されている。内鍔部64cは、規制部材68と当接することが意図された部分である。
【0054】
移動部材付勢スプリング66は、移動部材64を後方へ付勢する部材である。移動部材付勢スプリング66は、例えばコイルスプリングである。移動部材付勢スプリング66は、移動部材64と主軸22との間に圧縮状態で配置されている。とりわけ、移動部材付勢スプリング66は、移動部材64の前端64dと主軸22の内段部22bとの間に配置されている。これにより、移動部材64は、軸筒20(主軸22)に対して、常に後方に向かって付勢される。
【0055】
規制部材68は、移動部材64が規制位置に位置するときに、すなわちシャープペンシル10が規制状態にあるときに、重量体50の前後動を規制する部材である。より具体的には、規制部材68は、規制状態において、重量体50の軸方向daの移動範囲を狭める。規制部材68は、略筒状の形状を有する部材であり、重量体50の後端と移動部材64との間に配置されている。とりわけ規制部材68は、重量体50の後端と移動部材64の内鍔部64cとの間に配置されている。規制状態において、移動部材64は非規制位置よりも前方の規制位置に位置する。これにともなって、規制部材68も前方に位置するようになる。これにより、重量体50の軸方向daの移動範囲が狭められる。
【0056】
移動部材64が規制位置に位置するときに、規制部材68は、重量体50の後端に接触してもよい。この場合、規制状態において、シャープペンシル10が軸方向daに沿って振られても、重量体50は軸方向daに移動しない。これにより、重量体50がコネクタ33の当接部33aに衝突荷重を作用させることがないので、筆記芯80が繰り出されることが抑制される。また、重量体50が軸方向daに移動しないことから、重量体50がコネクタ33や規制部材68に衝突して衝突音が発生することを抑制することができる。
【0057】
また、移動部材64が規制位置に位置し、且つ、重量体50が最も前方に位置するときに、重量体50と規制部材68との間に隙間が形成されてもよい。この場合にも、規制状態において、重量体50の軸方向daの移動範囲が狭められるので、シャープペンシル10が軸方向daに沿って振られた際に、重量体50がコネクタ33の当接部33aに衝突して生じる衝撃荷重が小さくなる。これにより、筆記芯80が軸筒20の前端開口部20aから繰り出されることが抑制される。
【0058】
規制部材68は、弾性部材であってもよい。この場合、規制状態において、重量体50が前後動して規制部材68に衝突しても、重量体50と規制部材68との間で衝突音が発生することを抑制することができる。弾性部材は、例えばコイルスプリングであってもよい。
【0059】
規制状態において、規制部材68は、重量体50の後端と移動部材64との間に圧縮状態で配置されてもよい。このとき、移動部材64が規制位置に位置するときに規制部材68が重量体50を前方へ押圧する押圧力は、チャック付勢スプリング35の弾発力よりも小さいことが好ましい。これにより、規制部材68の弾発力により、チャック付勢スプリング35の弾発力に抗して、重量体50、コネクタ33及びチャック32が前方へ移動することを抑制することができる。したがって、チャック32が締具37に対して前方へ移動することにより、チャック32の前方部分が径方向drの外側に開き、チャック32によって筆記芯80を把持する力が減少することを抑制することができる。
【0060】
規制部材68は、移動部材64に対して固定されていてもよいし、移動部材64に対して固定されず、移動部材64と重量体50との間に前後動可能に配置されてもよい。また、規制部材68は、移動部材64と一体に形成されてもよい。
【0061】
次に、主に図2図3図8及び図9を参照しながら、移動規制機構60の動作について説明する。
【0062】
図2及び図8に示されているように、非規制状態において、移動部材付勢スプリング66の弾発力により、移動部材64は規制位置よりも後方の非規制位置に位置している。この状態では、重量体50の軸方向daの移動可能な範囲が、規制状態における重量体50の軸方向daの移動可能な範囲と比較して、大きくなっている。したがって、シャープペンシル10が軸方向daに沿って振られると、重量体50が前後方向に大きく移動する。これにより、重量体50がコネクタ33の当接部33aに衝突した際に、重量体50からコネクタ33に対して、規制状態において重量体50からコネクタ33に作用する衝撃荷重よりも大きな衝撃荷重が作用する。したがって、芯パイプ31、コネクタ33及びチャック32が、チャック付勢スプリング35の弾発力に抗して前方へ移動し、筆記芯80が軸筒20の前端開口部20aから繰り出される。すなわち、重量体50による筆記芯80の繰出しが可能になっている。
【0063】
シャープペンシル10を非規制状態から規制状態に切り替えるには、非規制状態において、使用者が、操作体61を構成する後軸24を、主軸22に対して中心軸線A周りに回転させる。これにより、後軸24とともに回転部材62が中心軸線A周りに回転する。本実施形態では、使用者が、後軸24を主軸22に対して後方から見て時計回りに回転させることにより、移動部材64が非規制位置から規制位置へ移動し、シャープペンシル10が非規制状態から規制状態に切り替わる。回転部材62が回転することにより、回転部材62のカム部63が周方向dcに沿って移動する。図8及び図9では、カム部63が周方向dcに沿って上方に向かって移動する(図9の白抜き矢印を参照)。
【0064】
移動部材64は、主軸22に対して、中心軸線A周りに回転不能且つ軸方向daに移動可能に配置されている。カム部63の周方向dcの移動にともなって、移動部材64の当接部64bは、カム部63のカム斜面63aに接触しながら、カム斜面63aに沿って前方へ移動する。このとき、移動部材64と主軸22との間に配置された移動部材付勢スプリング66が、移動部材64により圧縮される。当接部64bがカム部63の凸部63cを超えると、圧縮された移動部材付勢スプリング66の弾発力により、当接部64bがカム部63の係止凹部63bに押し付けられ、当接部64bが係止凹部63bに係止する。これにより、移動部材64が規制位置に位置し、シャープペンシル10が規制状態になる。
【0065】
規制状態では、規制部材68により、重量体50の軸方向daの移動範囲が狭められる。すなわち、重量体50の前後動が規制される。これにより、重量体50がコネクタ33の当接部33aに衝突した際に重量体50からコネクタ33に対して作用する衝撃荷重が小さくなる。したがって、チャック32が、チャック付勢スプリング35の弾発力に抗して前方へ移動することが抑制される。これにより、筆記芯80が軸筒20の前端開口部20aから繰り出されることが抑制される。
【0066】
規制状態から非規制状態へ切り換える場合には、非規制状態において、使用者が、操作体61を中心軸線A周りに反対方向へ回転させる。本実施形態では、使用者が、後軸24を主軸22に対して後方から見て反時計回りに回転させる。操作体61(回転部材62)が回転することにより、回転部材62のカム部63が周方向dcに沿って移動する。図8及び図9では、カム部63が周方向dcに沿って下方に向かって移動する。移動部材64の当接部64bがカム部63の凸部63cを乗り越えると、移動部材付勢スプリング66の付勢力により、移動部材64が後方に向かって押圧される。これにより、当接部64bがカム斜面63aを後方へ向かって押圧し、カム斜面63aは、当接部64bに当接しながら、中心軸線A周りに回転する。これにより、移動部材64が非規制位置に位置し、シャープペンシル10が非規制状態になる。
【0067】
シャープペンシル10が、2つのカム部63及び2つの当接部64bを有する場合、移動部材64が非規制位置にあるときの、周方向dcにおける当接部64bの角度と、移動部材64が規制位置にあるときの、周方向dcにおける当接部64bの角度との間の角度間隔θは、例えば90度以上170度以下であってもよい(図9参照)。好ましくは、角度間隔θは、100度以上160度以下であってもよく、110度以上150度以下であってもよく、120度以上140度以下であってもよい。
【0068】
本実施形態のシャープペンシル10は、主軸22を含む軸筒20と、筆記芯80を繰り出す芯繰出機構30と、主軸22に対して前後動可能に配置された重量体50と、主軸22に対して中心軸線A周りに回転可能な操作体61と、操作体61に対して前後動可能に配置され、規制位置と、規制位置よりも後方の非規制位置との間で移動可能な移動部材64と、移動部材64が規制位置に位置するときに、重量体50の前後動を規制する規制部材68と、操作体61及び移動部材64の一方に設けられた少なくとも2つのカム斜面63aと、操作体61及び移動部材64の他方に設けられた少なくとも2つの当接部64bと、を有し、操作体61が中心軸線A周りに回転すると、カム斜面63aと当接部64bとが互いに接触しながら、当接部64bがカム斜面63aに沿って移動する。
【0069】
このようなシャープペンシル10によれば、移動部材64が規制位置に位置するときに、規制部材68により、重量体50の前後動が規制される。これにより、重量体50がコネクタ33の当接部33aに衝突した際に重量体50からコネクタ33に対して作用する衝撃荷重が小さくなる。したがって、チャック32が、チャック付勢スプリング35の弾発力に抗して前方へ移動することが抑制される。これにより、筆記芯80が軸筒20の前端開口部20aから繰り出されることが抑制される。
【0070】
また、このようなシャープペンシル10によれば、操作体61(回転部材62)及び移動部材64の一方が少なくとも2つのカム斜面63aを有し、且つ、操作体61(回転部材62)及び移動部材64の他方が少なくとも2つの当接部64bを有することにより、少なくとも2か所で操作体61から移動部材64へ押圧力が伝達される。これにより、操作体61により押圧された際に、移動部材64が中心軸線Aに対して傾くことが抑制される。したがって、移動部材64が操作体61に対して安定して前後動することが可能になる。すなわち、シャープペンシル10において、規制状態と非規制状態とを安定して切り替えることができる。
【0071】
本実施形態のシャープペンシル10では、操作体61は、少なくとも一部が主軸22の後方部分の外側に配置された後軸24を含む。
【0072】
このようなシャープペンシル10によれば、使用者が、シャープペンシル10を非規制状態と規制状態との間で切り換える際に、シャープペンシル10を持ち替えることなく操作体61を操作することができる。したがって、非規制状態と規制状態とを簡単に切り替えることができる。
【0073】
本実施形態のシャープペンシル10では、芯繰出機構30は、筆記芯80を把持するチャック32と、チャック32を後方に付勢するチャック付勢スプリング35と、を有し、移動部材64が規制位置に位置するときに規制部材68が重量体50を前方へ押圧する押圧力は、チャック付勢スプリング35の弾発力よりも小さい。
【0074】
このようなシャープペンシル10によれば、規制部材68の弾発力により、チャック付勢スプリング35の弾発力に抗して、重量体50、コネクタ33及びチャック32が前方へ移動することを抑制することができる。したがって、チャック32が締具37に対して前方へ移動することにより、チャック32の前方部分が径方向drの外側に開き、チャック32によって筆記芯80を把持する力が減少することを抑制することができる。
【0075】
本実施形態のシャープペンシル10では、移動部材64が規制位置に位置し、且つ、重量体50が最も前方に位置するときに、重量体50と規制部材68との間に隙間が形成される。
【0076】
このようなシャープペンシル10によっても、規制状態において、重量体50の軸方向daの移動範囲が狭められるので、シャープペンシル10が軸方向daに沿って振られた際に、重量体50がコネクタ33の当接部33aに衝突して生じる衝撃荷重が小さくなる。これにより、筆記芯80が軸筒20の前端開口部20aから繰り出されることが抑制される。
【0077】
本実施形態のシャープペンシル10では、規制部材68は、弾性部材である。
【0078】
本実施形態のシャープペンシル10では、弾性部材は、コイルスプリングである。
【0079】
このようなシャープペンシル10によれば、規制状態において、重量体50が前後動して規制部材68に衝突しても、重量体50と規制部材68との間で衝突音が発生することを抑制することができる。
【0080】
本実施形態のシャープペンシル10は、移動部材64を後方へ付勢する移動部材付勢スプリング66を有する。
【0081】
このようなシャープペンシル10によれば、移動部材64は、軸筒20(主軸22)に対して、常に後方に向かって付勢される。これにより、移動部材64の当接部64bを、カム部63に対して常に押し付けておくことができる。したがって、当接部64bがカム部63のカム斜面63aに適切に接触するようになり、移動部材64の前後動を安定して行うことができる。
本実施形態のシャープペンシル10では、主軸22は、内周面に設けられ軸方向に延びる溝部22aを有し、移動部材64は、溝部22a内を移動可能な突出部64aを有する。
【0082】
このようなシャープペンシル10によれば、溝部22aにより移動部材64をガイドして、移動部材64を適切に前後動させることができる。
【0083】
上述の実施形態では、シャープペンシル10の操作体61がカム斜面63aを有し、移動部材64が当接部64bを有する例について説明したが、これに限られず、操作体61が当接部を有し、移動部材64がカム斜面を有してもよい。この場合であっても、シャープペンシル10は、上述の実施形態と同様の効果を発揮し得る。
【0084】
また、上述の実施形態では、後軸24が操作体61の一部を構成しているが、操作体61の構成はこれに限られない。例えば、主軸と後軸24との間に中心軸線A周りに回転可能な環状部材を配置し、この環状部材と回転部材62とで操作体61を構成してもよい。この場合、環状部材は、回転部材62に対して、中心軸線A周りに回転不能且つ前後動不能に固定してもよい。この場合であっても、使用者が、シャープペンシル10を非規制状態と規制状態との間で切り換える際に、シャープペンシル10を持ち替えることなく操作体61を操作することができる。したがって、非規制状態と規制状態とを簡単に切り替えることができる。
【符号の説明】
【0085】
10 シャープペンシル
20 軸筒
20a 前端開口部
22 主軸
22a 溝部
22b 内段部
24 後軸
26 先端部材
28 グリップ部材
30 芯繰出機構
31 芯パイプ
32 チャック
33 コネクタ
33a 当接部
35 チャック付勢スプリング
36 受け部材
37 締具
38 芯ホルダ
40 ノック体
42 押圧部材
42a 突出部
42b 外鍔部
42c 内鍔部
44 消去部材
46 キャップ
48 ノック体付勢スプリング
50 重量体
60 移動規制機構
61 操作体
62 回転部材
62a 内鍔部
63 カム部
63a カム斜面
63b 係止凹部
63c 凸部
64 移動部材
64a 突出部
64b 当接部
64c 内鍔部
64d 前端
66 移動部材付勢スプリング
68 規制部材
80 筆記芯
da 軸方向
dr 径方向
dc 周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9