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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163013
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】食品用洗浄装置及び食品洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/02 20060101AFI20231101BHJP
   A23L 17/60 20160101ALI20231101BHJP
【FI】
A23N12/02 Q
A23L17/60 A
A23L17/60 103C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073799
(22)【出願日】2022-04-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】591119624
【氏名又は名称】株式会社御池鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】小林 由和
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀匡
(72)【発明者】
【氏名】石井 悦男
【テーマコード(参考)】
4B019
4B061
【Fターム(参考)】
4B019LP01
4B019LP19
4B019LT05
4B061AA07
4B061BA08
4B061BA10
4B061BA11
4B061BA20
4B061CA15
(57)【要約】
【課題】構成が比較的簡易で、比較的容易に操作でき、洗浄効果の比較的高い食品用洗浄装置を提供する。
【解決手段】
食品用洗浄装置1は、液体と被洗浄物が溜まる貯留部2と、貯留部2の下部から液体及び被洗浄物を導いて貯留部2の上部に戻す戻し管7と、戻し管7の水平管8の一端にUFB水を供給するUFB水供給部12と、水平管8の他端にMB水を供給する第1MB水供給部16と、戻し管7の旋回流管10にMB水を供給する第2MB水供給部18を備える。貯留部2の容器3の開口3aに、ケーシング21内に階段状部材22を収容した加撃装置20を備える。戻し管7の旋回流管10の吐出口10aは、加撃装置20の開口に対向して配置される。UFB水供給部12から供給されたUFB水の循環流を、貯留部2と戻し管7の間に形成し、容器3の開口3aと加撃装置20の隙間から被洗浄物を投入し、被洗浄物をUFB水の循環流で洗浄する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物と液体とを保持する容器と、この容器の上部に形成され、被洗浄物が投入される開口と、上記容器の下部に形成されて液体と被洗浄物を排出する排出口と、上記容器の上部に形成されて少なくとも液体を表面側から排出する上部排出部とを有する貯留部と、
上記貯留部の排出口に一端側が接続されると共に他端に吐出口を有し、この吐出口を上記貯留部の開口の上方に配置可能に形成された戻し管と、
上記戻し管の一端に、気体のウルトラファインバブルが水に含有されてなるウルトラファインバブル水を供給するウルトラファインバブル水供給部と
を備えることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記戻し管の他端部に、上記液体と被洗浄物を旋回状に流す旋回流部材が内蔵されていることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の食品用洗浄装置において、
上記戻し管の上記旋回流部材の上流側に、気体のマイクロバブルが水に含有されてなるマイクロバブル水を供給するマイクロバブル水供給部を備えることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項4】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記戻し管の一端に、上記ウルトラファインバブル水以外の液体を供給する液体供給部を備えることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項5】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記貯留部の容器の開口に、上記戻し管の吐出口から吐出された液体と被洗浄物を受け入れ、内部を上記液体が流れるに伴って上記被洗浄物に衝撃を与える加撃装置を有することを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項6】
請求項5に記載の食品用洗浄装置において、
上記加撃装置が、
平面視において中央に配置され、上記液体と被洗浄物を受け入れる受入口と、
上記受入口から流入した液体と被洗浄物を、平面視において中央から外側に向かうにつれて階段状に落下させる階段状部材と、
上記階段状部材に対向して配置された邪魔板と
を有することを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項7】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記貯留部の上部排出部が、
上記容器の開口を取り囲んで上記開口から溢れた液体と被洗浄物を回収する溝状部と、
上記溝状部が回収した上記液体及び被洗浄物を排出する溝状部排出口と
を有することを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項8】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記戻し管の上記ウルトラファインバブル水供給部でウルトラファインバブル水が供給される位置よりも下流側に、マイクロバブル水を供給する第2マイクロバブル水供給部を備えることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項9】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記戻し管が、少なくとも一部が変形することにより、上記吐出口を上記貯留部の上方から移動可能に形成されていることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項10】
請求項1に記載の食品用洗浄装置を用いて食品を洗浄する方法であって、
上記ウルトラファインバブル水供給部から戻し管の一端にウルトラファインバブル水を供給し、この戻し管の他端の吐出口から上記ウルトラファインバブル水を上記貯留部の容器に供給することにより、上記戻し管と上記貯留部の容器の間にウルトラファインバブル水を循環させる循環流形成工程と、
上記貯留部の容器の開口から被洗浄物を投入する被洗浄物投入工程と、
上記戻し管と上記貯留部の間に、上記ウルトラファインバブル水と上記被洗浄物とを循環させる被洗浄物循環工程と、
上記戻し管の他端の吐出口から吐出される被洗浄物を回収する回収工程と
を有することを特徴とする食品洗浄方法。
【請求項11】
請求項10に記載の食品洗浄方法において、
上記被洗浄物は、豆類、穀類、果実類、海藻類又は芋類の食品であることを特徴とする食品洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物や野菜等の食品を洗浄する食品用洗浄装置及び食品洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば小売店や外食産業に納められる野菜等の食品は、所定の衛生管理基準に基づいた洗浄が行われている。特に、加熱による殺菌を行うことができない生鮮食品は、次亜塩素酸ナトリウム溶液等の殺菌液が用いられることが多い。
【0003】
食品を洗浄する食品用洗浄装置として、従来、洗浄液が供給される洗浄槽と、殺菌液が供給される殺菌槽と、すすぎ水が供給されるすすぎ槽に食品を順次投入するように構成されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この食品用洗浄装置は、順に配列された洗浄槽と殺菌槽とすすぎ槽の上方にレールを設け、このレールに沿って移動するクレーンにより、食品を収容した食物籠を移動させるように構成されている。この食品用洗浄装置で食品を洗浄する場合、洗浄液で満たされた洗浄槽に、食品を収容した食物籠を投入し、食品を洗浄液に浸漬して洗浄を行う。この後、クレーンにより、洗浄槽から食物籠を引き上げて水切りを行い、次いで食物籠を殺菌槽内に投入して殺菌液に浸漬する。食品を殺菌液に所定時間浸漬した後、クレーンにより、殺菌槽から食物籠を引き上げて水切りを行う。最後に、クレーンにより、食物籠をすすぎ槽内に投入してすすぎ液に浸漬し、次いですすぎ槽から食物籠を引き上げて水切りを行い、洗浄が終了する。洗浄槽や殺菌槽やすすぎ槽では、必要に応じて各液を撹拌させることにより、洗浄効果が高まることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-171263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の食品用洗浄装置は、洗浄槽、殺菌槽及びすすぎ槽と、レール及びクレーンを用いて構成されるため、装置が大型になり、また、製造コストが比較的大きいという問題がある。また、上記従来の食品用洗浄装置は、洗浄槽、殺菌槽及びすすぎ槽に対し、クレーンで食物籠の吊り下げと引き上げと移動を繰り返すので、操作に手間がかかる問題がある。また、上記従来の食品用洗浄装置は、食品を洗浄液や殺菌液に浸漬して行う洗浄や殺菌は、十分な効果が得られ難い問題がある。また、上記従来の食品用洗浄装置は、食品をすすぎ液に浸漬して行うすすぎは、十分な効果が得られ難く、洗浄液や殺菌液の残留が生じやすいという問題がある。さらに、各槽で各液を撹拌しても、食品は食物籠に収容されているので、撹拌による液の勢いが食品に伝わり難いため、洗浄や殺菌やすすぎの効果を向上し難いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、構成の比較的簡易な食品用洗浄装置を提供することにある。また、比較的容易に操作できる食品用洗浄装置を提供することにある。また、洗浄効果の比較的高い食品用洗浄装置を提供することにある。また、食品用洗浄装置を用いた食品洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の食品用洗浄装置は、被洗浄物と液体とを保持する容器と、この容器の上部に形成され、被洗浄物が投入される開口と、上記容器の下部に形成されて液体と被洗浄物を排出する排出口と、上記容器の上部に形成されて少なくとも液体を表面側から排出する上部排出部とを有する貯留部と、
上記貯留部の排出口に一端側が接続されると共に他端に吐出口を有し、この吐出口を上記貯留部の開口の上方に配置可能に形成された戻し管と、
上記戻し管の一端に、気体のウルトラファインバブルが水に含有されてなるウルトラファインバブル水を供給するウルトラファインバブル水供給部と
を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、貯留部は、被洗浄物と液体とを保持する容器を有し、この容器の上部に形成された開口から被洗浄物が投入される。上記被洗浄物は、食品である。上記液体は、上記被洗浄物を洗浄するために使用され、水や、種々の物質を含む水溶液やコロイド等が挙げられる。上記容器の下部には、液体と被洗浄物を排出する排出口が形成されており、容器内の液体と被洗浄物が、流れに応じて上記排出口から排出される。一方、上記容器の上部には、少なくとも液体を表面側から排出する上部排出部が形成されており、この上部排出部により、液体の表面に浮上した汚れ等が排出される。上記貯留部の排出口には、戻し管の一端側が接続されており、上記貯留部の容器内の液体と被洗浄物が、流れに応じて上記戻し管の一端側に導かれる。この戻し管の他端は吐出口を有し、この吐出口は、上記貯留部の開口の上方に配置可能に形成されている。ここで、上記戻し管の一端には、ウルトラファインバブル水供給部により、ウルトラファインバブル水が供給される。これにより、戻し管の一端側に導かれた液体と被洗浄物に、ウルトラファインバブル水が供給される。上記戻し管の吐出口が、上記貯留部の開口の上方に配置されているとき、上記戻し管に導かれた液体と被洗浄物は、ウルトラファインバブル水が混合された後、上記吐出口から吐出され、上記貯留部の容器内に戻される。貯留部の容器内に戻された液体と被洗浄物は、排出口から再び排出され、戻し管に導かれ、ウルトラファインバブル水が混合されて、吐出口から貯留部の容器に戻される。このように、液体と被洗浄物を、貯留部と戻し管の間でウルトラファインバブル水を混合しながら循環を行うことにより、被洗浄物を効果的に洗浄することができる。
【0010】
ここで、ウルトラファインバブルは、径が数10nmから1μmの気泡であり、水中に存在しても目視が不可能であり、数週間から数か月にわたって長期に安定して存在する等の特徴がある。ウルトラファインバブルは、負に帯電するので、正に帯電する汚れの原因物質と結合することにより、汚れを被洗浄物から分離することができる。また、ウルトラファインバブルは、圧壊時に発生するフリーラジカルの作用により、殺菌作用の存在が報告されている。このような特徴を有するウルトラファインバブル水を、貯留部と戻し管の間で循環する液体と被洗浄物に混合することにより、被洗浄物に対して、効果的に汚れの除去と殺菌を行うことができる。さらに、ウルトラファインバブル水を含む液体は、貯留部と戻し管の間を循環する間に流速と圧力の変化が生じるので、被洗浄物に対する洗浄効果を高めることができる。また、ウルトラファインバブル水は、空気の気泡を添加した場合は毒性が無く、水素や酸素やオゾンの気泡を添加した場合も人体への悪影響が低いので、すすぎを行う必要が無い。したがって、少ない工程で被洗浄物の洗浄を行うことができる。
【0011】
また、本発明の食品用洗浄装置は、貯留部と、戻し管と、ウルトラファインバブル水供給部で構成されるので、複数の槽とクレーンを用いて構成した従来の食品用洗浄装置よりも、効果的に小型化を行うことができる。また、本発明の食品用洗浄装置は、貯留部と戻し管の間に液体と被洗浄物の循環流を形成し、ウルトラファインバブル水供給部で戻し管にウルトラファインバブル水を供給することにより、被洗浄物の洗浄を行うことができる。したがって、クレーンによって被洗浄物を複数の槽の間で移動させる従来の食品用洗浄装置よりも、容易に操作することができる。
【0012】
一実施形態の食品用洗浄装置は、上記戻し管の他端部に、上記液体と被洗浄物を旋回状に流す旋回流部材が内蔵されている。
【0013】
上記実施形態によれば、戻し管の他端部に内蔵された旋回流部材により、液体と被洗浄物が旋回状に流れるので、被洗浄物に対する洗浄効果を向上できる。
【0014】
一実施形態の食品用洗浄装置は、上記戻し管の上記旋回流部材の上流側に、気体のマイクロバブルが水に含有されてなるマイクロバブル水を供給するマイクロバブル水供給部を備える。
【0015】
上記実施形態によれば、マイクロバブル水供給部により、気体のマイクロバブルが水に含有されてなるマイクロバブル水が、戻し管の上記旋回流部材の上流側に供給される。戻し管を通る液体と被洗浄物は、マイクロバブル水が混合されて旋回流部材に導かれる。これにより、旋回流部材で旋回状に流れるとき、マイクロバブル水の作用により、被洗浄物に対する洗浄効果を更に向上できる。ここで、マイクロバブルは、径が1μmから60μmの気泡であり、負に帯電するので、正に帯電する汚れの原因物質と結合することにより、汚れを被洗浄物から分離することができる。
【0016】
一実施形態の食品用洗浄装置は、上記戻し管の一端に、上記ウルトラファインバブル水以外の液体を供給する液体供給部を備える。
【0017】
上記実施形態によれば、液体供給部により、戻し管の一端に、ウルトラファインバブル水以外の液体が供給される。これにより、貯留部と戻し管の間に循環させる液体の量と成分を、調整することができる。ここで、液体供給部により供給される液体は、水や、種々の物質を含む水溶液やコロイド等が挙げられる。
【0018】
一実施形態の食品用洗浄装置は、上記貯留部の容器の開口に、上記戻し管の吐出口から吐出された液体と被洗浄物を受け入れ、内部を上記液体が流れるに伴って上記被洗浄物に衝撃を与える加撃装置を有する。
【0019】
上記実施形態によれば、貯留部の容器の開口に、戻し管の吐出口から吐出された液体と被洗浄物を受け入れる加撃装置を有する。加撃装置の内部を液体が流れるに伴って被洗浄物に衝撃を作用することにより、被洗浄物を効果的に洗浄できる。加撃装置で衝撃が与えられた被洗浄物は、液体と共に加撃装置から排出され、貯留部の容器に受け取られるように形成されるのが好ましい。
【0020】
一実施形態の食品用洗浄装置は、上記加撃装置が、
平面視において中央に配置され、上記液体と被洗浄物を受け入れる受入口と、
上記受入口から流入した液体と被洗浄物を、平面視において中央から外側に向かうにつれて階段状に落下させる階段状部材と、
上記階段状部材に対向して配置された邪魔板と
を有する。
【0021】
上記実施形態によれば、加撃装置で、戻し管の吐出口から吐出された液体と被洗浄物が、平面視において中央に配置された受入口に受け入れられる。この受入口から流入した液体と被洗浄物が、階段状部材により、平面視において中央から外側に向かうにつれて階段状に落下させられる。ここで、階段状部材に対向して配置された邪魔板により、液体と被洗浄物の流れに乱れが生じる。上記階段状部材を落下する際の衝撃と、上記邪魔板による流れの乱れにより、被洗浄物を更に効果的に洗浄できる。
【0022】
一実施形態の食品用洗浄装置は、上記貯留部の上部排出部が、
上記容器の開口を取り囲んで上記開口から溢れた液体と被洗浄物を回収する溝状部と、
上記溝状部が回収した上記液体及び被洗浄物を排出する溝状部排出口と
を有する。
【0023】
上記実施形態によれば、貯留部の上部排出部で、容器の開口から溢れた液体と被洗浄物が、この容器の開口を取り囲む溝状部によって回収される。この溝状部で回収された液体と被洗浄物が、溝状部排出口から排出される。これにより、容器の表面に浮上する汚染物質や、被洗浄物の不良品を、効率的に貯留部から回収して排出することができる。
【0024】
一実施形態の食品用洗浄装置は、上記戻し管の上記ウルトラファインバブル水供給部でウルトラファインバブル水が供給される位置よりも下流側に、マイクロバブル水を供給する第2マイクロバブル水供給部を備える。
【0025】
上記実施形態によれば、第2マイクロバブル水供給部により、戻し管のウルトラファインバブル水供給部でウルトラファインバブル水が供給される位置よりも下流側に、マイクロバブル水が供給される。こうして、ウルトラファインバブル水が混合された液体及び被洗浄物に、更にマイクロバブル水が混合されることにより、被洗浄物から汚染物質を分離する効果が更に向上する。
【0026】
一実施形態の食品用洗浄装置は、上記戻し管が、少なくとも一部が変形することにより、上記吐出口を上記貯留部の上方から移動可能に形成されている。
【0027】
上記実施形態によれば、戻し管の少なくとも一部が変形することにより、吐出口を貯留部の上方に配置して液体及び被洗浄物を戻し管と貯留部との間を循環させる一方、吐出口を貯留部の上方から移動させて液体及び被洗浄物を貯留部以外の位置に排出させることができる。これにより、液体及び被洗浄物を戻し管と貯留部との間を循環させて被洗浄物の洗浄を行い、被洗浄物の洗浄が終了すると、戻し管を変形させて液体及び被洗浄物を回収位置に導いて、洗浄済みの被洗浄物を回収することができる。ここで、戻し管の少なくとも一部は、可撓性の部材を用いることにより、変形可能に形成することができる。また、戻し管の少なくとも一部は、回転及び/又は屈曲可能なジョイント部材を用いることにより、変形可能に形成することができる。
【0028】
本発明の食品洗浄方法は、上記食品用洗浄装置を用いて食品を洗浄する方法であって、
上記ウルトラファインバブル水供給部から戻し管の一端にウルトラファインバブル水を供給し、この戻し管の他端の吐出口から上記ウルトラファインバブル水を上記貯留部の容器に供給することにより、上記戻し管と上記貯留部の容器の間にウルトラファインバブル水を循環させる循環流形成工程と、
上記貯留部の容器の開口から被洗浄物を投入する被洗浄物投入工程と、
上記戻し管と上記貯留部の間に、上記ウルトラファインバブル水と上記被洗浄物とを循環させる被洗浄物循環工程と、
上記戻し管の他端の吐出口から吐出される被洗浄物を回収する回収工程と
を有することを特徴としている。
【0029】
上記構成によれば、循環流形成工程で、ウルトラファインバブル水供給部から戻し管の一端にウルトラファインバブル水を供給し、この戻し管の他端の吐出口から上記ウルトラファインバブル水を上記貯留部の容器に供給する。これにより、上記戻し管と上記貯留部の容器の間に、ウルトラファインバブル水を循環させる。ここで、ウルトラファインバブル水供給部からのウルトラファインバブル水の供給量は、戻し管と貯留部の容器との間を循環するウルトラファインバブル水の量に応じて調節する。この後、被洗浄物投入工程で、上記貯留部の容器の開口から被洗浄物を投入する。被洗浄物循環工程で、上記戻し管と上記貯留部の間に、上記ウルトラファインバブル水と上記被洗浄物とを循環させる。この被洗浄物循環工程により、ウルトラファインバブル水の作用によって、被洗浄物の洗浄が行われる。この被洗浄物循環工程を継続する時間は、被洗浄物の洗浄度合いや、被洗浄物の種類等に応じて設定することができる。この後、回収工程で、上記戻し管の他端の吐出口から吐出される被洗浄物を回収する。このように、戻し管と貯留部の容器の間に、ウルトラファインバブル水と被洗浄物を循環させるという簡易な方法により、被洗浄物を容易に洗浄することができる。また、ウルトラファインバブル水の量や循環の継続時間等を調節することにより、被洗浄物の種類や汚れの程度に、適切に対応することができる。したがって、複雑な装置や工程を適用しなくても、幅広い汚れの被洗浄物を、汚れの程度に応じて適切かつ効率的に洗浄することができる。また、ウルトラファインバブル水は、空気の気泡を添加した場合は毒性が無く、水素やオゾンの気泡を添加した場合も人体への悪影響が実質的に存在しないので、すすぎを行う必要が無い。したがって、少ない工程で被洗浄物の洗浄を行うことができる。
【0030】
一実施形態の食品洗浄方法は、上記被洗浄物は、豆類、穀類、果実類、海藻類又は芋類の食品である。
【0031】
上記実施形態によれば、豆類、穀類、果実類、海藻類又は芋類の食品を、汚れに応じて容易かつ適切に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態の食品用洗浄装置を模式的に示す正面断面図である。
図2】実施形態の食品用洗浄装置の旋回流管を示す断面図である。
図3】実施形態の食品用洗浄装置の貯留部と加撃装置を示す平面図である。
図4】実施形態の食品用洗浄装置の加撃装置を示す断面図である。
図5】実施形態の食品用洗浄装置に接続されるバブル水製造装置を示す模式図である。
図6】バブル水製造装置に用いられるウルトラファインバブル製造器の縦断面図である。
図7図6に示すウルトラファインバブル製造器のBB線矢視断面図である。
図8図6に示すウルトラファインバブル製造器のCC線矢視断面図である。
図9】ウルトラファインバブル製造器の第1ブロックを示す断面図である。
図10】ウルトラファインバブル製造器の第2ブロックを示す断面図である。
図11】実施形態の食品用洗浄装置で洗浄した被洗浄物を回収する様子を示す模式図である。
図12】旋回流管の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態の食品用洗浄装置を模式的に示した正面断面図である。本実施形態の食品用洗浄装置は、豆類や穀類等の食品を洗浄するために用いられるものである。
【0035】
この食品用洗浄装置1は、液体と被洗浄物が溜まる貯留部2と、この貯留部2の下部から液体及び被洗浄物を導いて貯留部2の上部に戻す戻し管7と、この戻し管7の一端にウルトラファインバブル水(以下「UFB水」という。)を供給するウルトラファインバブル水供給部(以下「UFB水供給部」という。)12を備える。
【0036】
貯留部2は、被洗浄物と液体とを保持する容器3と、この容器3の上部に形成された開口3aと、この容器3の下部に形成されて容器3内の液体と被洗浄物を排出する排出口3bと、この容器3の上部に形成されて少なくとも液体を表面側から排出する上部排出部4を有する。
【0037】
上記貯留部2の容器3は、円筒の下端に逆円錐を連ねたような形状を有し、円筒部分の上端に開口3aが形成されている。この開口3aの平面視において内側には、後に詳述する加撃装置20が配置されており、この加撃装置20の外側と開口3aとの間に形成された隙間から、被洗浄物が投入されるようになっている。上記容器3の円錐部分の下端に、上記排出口3bが形成されている。
【0038】
上記貯留部2の上部排出部4は、容器3の上端部を取り囲むように配置された溝形成部材5を有する。この溝形成部材5は、容器3の外周面から径方向外側に向かって水平に伸びる環状の底部と、この底部の外縁から鉛直上方向に延びる筒状の壁部とを有する。この溝形成部材5の内側と、容器3の上端部の外側との間に、容器の開口3aから溢れた液体と被洗浄物を受け取る溝状部5aを形成している。上記溝形成部材5の壁部の底部近傍に、溝状部5a内の液体と被洗浄物を排出する溝状部排出口5bが形成されている。ここで、貯留部2の上部排出部は、溝状部5aによるもの以外に、容器3の上端部の近傍に形成された開口を含んで構成されてもよい。
【0039】
上記上部排出部4の溝形成部材5の溝状部排出口5bには、溝状部5aから排出された液体と被洗浄物を外部へ導く排出管6が接続されている。この排出管6は、鉛直に伸びる鉛直管と、この鉛直管の上端よりも下方の位置に設けられた枝管を有し、枝管の先端が溝状部排出口5bに連結されている。排出管6の鉛直管は、上端が開放していると共に下端が開放しており、この下端の開放部が、枝管を通して溝状部5aから導いた液体や被洗浄物を排出する排出口6aになっている。
【0040】
上記戻し管7は、上記貯留部2の容器3の下端に連結されて一端側が排出口3bに連通する水平管8と、この水平管8の他端に一端が連結されたフレキシブル管9と、このフレキシブル管9の他端に一端が連結された旋回流管10を含んで形成されている。
【0041】
上記戻し管7の水平管8は、水平に延在し、一端が容器3の排出口3bよりも上流側に多少延在している。この水平管8の一端に、管状部材で形成されたUFB水供給部12が連結されている。UFB水供給部12には、バルブ13が設けられており、UFB水供給部12による水平管8へのUFB水の供給量を調節するようになっている。また、水平管8の一端には、清掃時等に管内の液体を排出する排液管14が設けられており、この排液管14をバルブ15で開閉するようになっている。この水平管8の内側には、一端から他端に向かって同軸に延在する管で形成されてマイクロバブル水(以下「MB水」という。)を供給する第1マイクロバブル水供給部(以下「MB水供給部」という。)16が内挿されている。第1MB水供給部16は、水平管8の一端から露出した一端側に、MB水の供給量を調節するためのバルブ17が設けられている。この第1MB水供給部16は、他端が水平管8の他端近傍に位置しており、この第1MB水供給部16の他端の開口から、水平管8の他端近傍の内側に、MB水を供給するようになっている。なお、第1MB水供給部16は必ずしも設けなくてもよく、水平管8へのMB水の供給は必須ではない。
【0042】
上記戻し管7のフレキシブル管9は、可撓性の管状部材で形成されており、変形することにより、戻し管7の他端側に位置する旋回流管10の位置を変更可能になっている。フレキシブル管9は、可撓性を有していれば材質や構造は特に限定されず、例えば合成樹脂製や金属製のフレキシブルホース等を用いて構成することができる。
【0043】
図2は、上記戻し管7の旋回流管10を示す断面図である。図2に示すように、旋回流管10は、管状のケーシング40と、このケーシング40内に同軸に配置された芯棒41と、この芯棒41の回りに配置された螺旋羽根42を有する。上記芯棒41と螺旋羽根42で旋回流部材を構成している。ケーシング40は、一端がフレキシブル管9の他端に連結され、フレキシブル管9よりも大きい径を有する。このケーシング40の他端に、戻し管7で導かれた液体と被洗浄物を吐出する吐出口10aが形成されている。この旋回流管10の上流部分には、MB水を供給する第2MB水供給部18が接続されている。第2MB水供給部18には、MB水の供給量を調節するバルブ19が設けられている。
【0044】
この旋回流管10にフレキシブル管9から導かれたUFB水と被洗浄物は、旋回流管10の上流部分、すなわち一端部分に接続された第2MB水供給部18によってMB水が添加される。このMB水が添加されたUFB水と被洗浄物は、旋回流部材の螺旋羽根42に沿って旋回状に流れることにより、効果的に混合するように構成されている。なお、第2MB水供給部18は必ずしも設けなくてもよく、旋回流管10へのMB水の添加は必須ではない。
【0045】
図3は、貯留部2と加撃装置20を示す平面図であり、図4は、加撃装置20の断面図である。加撃装置20は、図3に示すように、平面視において、円形状を有して貯留部2の容器3と同心に配置されている。この加撃装置20の平面視における外側面と、容器3の開口3aの内側との間に形成される隙間から、被洗浄物を投入するようになっている。この加撃装置20は、図4に示すように、円錐台部分の上端に円筒部分を連ねたような形状のケーシング21と、このケーシング21の内側に配置された階段状部材22と、ケーシング21の内側に設けられた複数の邪魔板24を有する。
【0046】
加撃装置20のケーシング21は、円筒部分の上端に開口21aを有し、戻し管7の旋回流管10の吐出口10aから吐出された液体と被洗浄物を、上記開口21aから内部に受け入れるようになっている。階段状部材22は、図3に示すように、ケーシング21の開口21aに対向する位置に、平面視において開口21aよりも多少小さい径を有する半球状の頂部を有する。また、この階段状部材22は、上記頂部から下方に向かうにつれて径方向に順次拡径して階段状を成す階段部を有する。この階段部の角部の各々が、ケーシング21の内側面との間に概ね等間隔を成すように、上記階段状部材22がケーシング21の内側に配置されている。ケーシング21の内側面には、階段状部材22の階段部に向かって鉛直に延びる複数の邪魔板24が設けられている。この邪魔板24は、ケーシング21の円筒部分と同軸の筒状に形成され、平面視において開口21aと同心に配置されている。この邪魔板は、階段状部材22の表面に対して所定の隙間を形成するように形成されている。
【0047】
この加撃装置20は、図3に示すように、容器3の内側に係合する複数の支持棒26,26,・・・により、容器3の開口3aに支持されて設置されている。加撃装置20は、下端が容器3の開口3aよりも多少下方に位置するように設置される。
【0048】
図5は、本実施形態の食品用洗浄装置1に接続され、UFB水とMB水を製造して食品用洗浄装置1に供給するバブル水製造装置を示す模式図である。このバブル水製造装置30は、UFB水を生成するUFB水生成装置31と、MB水を生成する第1のMB水生成装置32と、第2のMB水生成装置33を有する。
【0049】
UFB水生成装置31は、水に、気体としての空気のウルトラファインバブル(以下「UFB」という。)を添加してUFB水を生成するものである。このUFB水生成装置31は、遠心ポンプ等で形成されて水を圧送するポンプと、このポンプで圧送される水に空気を添加するエジェクタ等の混合器と、この混合器で空気が添加された水が供給され、水中の空気を微細化することによりUFB水を製造するUFB製造器を有する。このUFB水生成装置31により、径が数10nm以上1μm以下の気泡であるUFBを含むUFB水を生成する。
【0050】
第1及び第2のMB水生成装置32,33は、水に、気体としての空気のマイクロバブル(以下「MB」という。)を添加してMB水を生成するものである。このMB水生成装置32,33は、遠心ポンプ等で形成されて水を圧送するポンプと、このポンプで圧送される水に空気を添加するエジェクタ等の混合器と、この混合器で空気が添加された水が供給され、水中の空気を微細化することによりMB水を製造するMB製造器を有する。MB製造器は、UFB水生成装置31のUFB製造器と実質的に同じ構造を有する。すなわち、UFB水生成装置31とMB水生成装置32,33は、互いに同じ構造を有し、ポンプの出力と水や空気の供給量を調節することにより、UFB水生成装置31はUFB水を生成し、MB水生成装置32,33はMB水を生成するようになっている。これらの第1及び第2のMB水生成装置32,33により、径が1μm~60μmの気泡であるMBを含むMB水を生成する。
【0051】
バブル水製造装置30は、UFB水生成装置31に接続されてUFB水を供給するUFB水供給管35と、第1MB水生成装置32に接続されてMB水を供給する第1MB水供給管36と、第2MB水生成装置33に接続されてMB水を供給する第2MB水供給管37を介して、食品用洗浄装置1に接続されている。上記UFB水供給管35は、戻し管7の水平管8に設けられたUFB水供給部12に接続され、UFB水供給部12を介して水平管8の一端にUFB水を供給する。上記第1MB水供給管36は、戻し管7の水平管8に設けられた第1MB水供給部16に接続され、第1MB水供給部16を介して水平管8の他端にMB水を供給する。上記第2MB水供給管37は、戻し管7の旋回流管10に設けられた第2MB水供給部18に接続され、第2MB水供給部18を介して旋回流管10の一端にMB水を供給する。ここで、バブル水製造装置30は、図示しない切換え弁を作動させることにより、UFB水供給管35と、第1MB水供給管36と、第2MB水供給管37に、バブルを含まない水を供給することが可能になっている。
【0052】
図6は、バブル水製造装置30のUFB水生成装置31に用いられるUFB製造器の縦断面図であり、図7は、図6のUFB製造器のBB線矢視断面図であり、図8は、図6のUFB製造器のCC線矢視断面図である。このUFB製造器50と、第1及び第2MB水生成装置32,33に用いられるMB製造器は、実質的に同じ構造を有する。
【0053】
このUFB製造器50は、供給管52でポンプから供給される水と空気の混合体のうちの空気を微細化し、空気のUFBを含有するUFB水を形成して、このUFB水を排出管53から排出するものである。
【0054】
UFB製造器50は、概ね円筒形状のケーシング51と、このケーシング51の一端に接続されてケーシング51の内部に連通する供給管52と、上記ケーシング51の他端に接続された排出管53と、上記ケーシング51内に収容されて排出管53の端部に接続された微細化ブロック58を有する。
【0055】
微細化ブロック58は円筒形状を有し、内部に、水と空気の混合体が導かれる第1旋回室61と第2旋回室63が形成されている。微細化ブロック58は、第1旋回室61が内部に形成された第1ブロック部品581と、第2旋回室63が内部に形成された第2ブロック部品582とで構成されている。
【0056】
図9は、第1ブロック部品581を示す断面図である。第1ブロック部品581は、微細化ブロック58の一端面を構成する円盤部分581aと、この円盤部分581aの中央部から微細化ブロック58の内側に向かって突出した突出部分581bとを有する。突出部分581bは、円盤部分581aに近い部分が円筒形状に形成されている一方、円盤部分から遠い先端部分は円錐台形状に形成されている。この第1ブロック部品581の内側に、第1旋回室61が形成されている。
【0057】
第1旋回室61は、一端側部分の壁面61aが円筒形状を有する一方、他端側部分の壁面61bが回転楕円形状を有する。第1旋回室61の一端側部分の壁面61aが第1ブロック部品581の円盤部分の内側に概ね形成され、回転楕円形状の他端側部分の壁面61bが第1ブロック部品581の突出部分の内側に概ね形成されている。第1ブロック部品581には、ケーシング51と微細化ブロック58との間の混合体を第1旋回室61に導入する第1導入路65が形成されている。第1導入路65は、図7に示すように、第1旋回室61の接線方向に形成されている。第1導入路65で導かれた混合体を吐出する吐出開口65aが第1旋回室61の壁面に形成されている。また、ケーシング51と微細化ブロック58との間の混合体を第1導入路65へ流入させる流入開口65bが、第1ブロック部品581の円盤部分581aの側面に形成されている。第1導入路65は、図9に示すように、第1旋回室61の一端から他端に向けて、第1旋回室61の中心軸の直角面に対して角度θを成すように形成されている。第1導入路65の第1旋回室61の中心軸直角面に対する角度θは、1°以上20°以下に形成することができる。この角度θは、好ましくは5°以上15°以下であり、更に好ましくは8°以上12°である。第1ブロック部品581の突出部分581bの先端部には第1吐出孔62が形成されており、この第1吐出孔62から、第1旋回室61で形成された混合体の旋回流が吐出されるように形成されている。
【0058】
図10は、第2ブロック部品582を示す断面図である。第2ブロック部品582は、一端側に厚い底が形成されて他端が開口した有底の円筒形状を有する。この第2ブロック部品582の開口から上記第1ブロック部品581の突出部分581bが挿入されて、他端面582aに第1ブロック部品581の円盤部分581aが連結されるようになっている。この第2ブロック部品582の内側面と、第1ブロック部品581の突出部分581bの外側面との間に、第1旋回室61からの旋回流と第2旋回室63からの旋回流が衝突する衝突室68が形成されている。第2ブロック部品582の内側は、第2旋回室63が形成されている。
【0059】
第2旋回室63は、一端側部分の壁面63aが円筒形状を有する一方、他端側部分の壁面63bが回転楕円形状を有する。第2ブロック部品582には、ケーシング51と微細化ブロック58との間の混合体を第2旋回室63に導入する第2導入路66が形成されている。第2導入路66は、図8に示すように、第2旋回室63の接線方向に形成されている。第2導入路66で導かれた混合体を吐出する吐出開口66aが第2旋回室63の壁面に形成されている。また、ケーシング51と微細化ブロック58との間の混合体を第2導入路66へ流入させる流入開口66bが、第2ブロック部品582の一端側の側面に形成されている。第2導入路66は、図10に示すように、第2旋回室63の一端から他端に向けて、第2旋回室63の中心軸の直角面に対して角度θを成すように形成されている。第2導入路66の第2旋回室63の中心軸直角面に対する角度θは、1°以上20°以下に形成することができる。この角度θは、好ましくは5°以上15°以下であり、更に好ましくは8°以上12°である。第2ブロック部品582の他端には第2吐出孔64が形成されており、この第2吐出孔64から、第2旋回室63で形成された混合体の旋回流が吐出されるように形成されている。第2旋回室63で形成される旋回流は、第1旋回室61で形成される旋回流と、反対回りに旋回するように形成されている。
【0060】
第2ブロック部品582の底部の外径側には、第2ブロック部品582の中心軸と平行に延在する複数の排出通路69,69,・・・が形成されている。これらの排出通路69,69,・・・は、第2旋回室63の外周側に、第2旋回室63を取り囲むように配置されている。第2ブロック部品582の底面の外径側に、衝突室68の流体を排出通路69,69,・・・に流入させる複数の流入開口69a,69a,・・・が形成されている。第2ブロック部品582の一端面に、排出通路69,69,・・・で導かれた流体を吐出する複数の吐出開口69b,69b,・・・が形成されている。第2ブロック部品582の一端は、排出管53に連結されており、上記排出通路69,69,・・・の吐出開口69b,69b,・・・から吐出された流体が、排出管53に流れるようになっている。
【0061】
上記UFB製造器50は、ポンプにより水と空気の混合体が圧送され、このポンプの吐出側に連なる供給管52から、ケーシング51内に混合体が流入する。ケーシング51内に流入した混合体は、微細化ブロック58の外側面の流入開口65b,66bから第1及び第2導入路65,66に導かれる。第1導入路65に導かれた混合体は、吐出開口65aから第1旋回室61内に吐出され、第1旋回室61内に旋回流を形成する。第1導入路65が、第1旋回室61の接線方向に延在すると共に、第1旋回室61の側が第1旋回室61の他端に向かって傾斜角度θを成すことにより、第1旋回室61内に、安定した旋回流が形成される。また、第2導入路66に導かれた混合体は、吐出開口66aから第2旋回室63内に吐出され、第2旋回室63内に旋回流を形成する。第2導入路66が、第2旋回室63の接線方向に延在すると共に、第2旋回室63の側が第2旋回室63の他端に向かって傾斜角度θを成すことにより、第2旋回室63内に、安定した旋回流が形成される。
【0062】
上記第1旋回室61内の混合体の旋回流は、第1吐出孔62から衝突室68へ吐出され、上記第2旋回室63内の旋回流は、第2吐出孔64から衝突室68へ吐出される。これらの第1吐出孔62と第2吐出孔64から吐出された旋回流は、互いに反対方向に旋回しており、これにより大きな衝撃力を伴って衝突室68内で衝突する。その結果、互いの混合体の気体が効果的に微細化され、ウルトラナノバブルが生成される。こうして生成された空気のウルトラナノバブルを含有する水は、衝突室68から流入開口69a,69a,・・・を経て排出通路69,69,・・・に導かれ、吐出開口69b,69b,・・・から排出管53に排出される。この排出管53は、UFB水供給管35に接続されている。
【0063】
第1及び第2MB水生成装置32,33に用いられるMB製造器は、UFB製造器50と実質的に同じ構造を有し、第1MB水生成装置32のMB製造器の排出管53が、第1MB水供給管36に接続されている。また、第2MB水生成装置33のMB製造器の排出管53が、第2MB水供給管37に接続されている。
【0064】
上記実施形態の食品用洗浄装置1は、次のようにして、食品である被洗浄物の洗浄を行う。まず、バブル水製造装置30を作動させ、UFB水生成装置31によるUFB水の生成を開始する。生成されたUFB水を、UFB水供給管35を通してUFB水供給部12に導き、戻し管7の水平管8の一端から食品用洗浄装置1内に供給する。水平管8の一端へ供給されたUFB水は、戻し管7を通って旋回流管10の吐出口10aから吐出され、吐出されたUFB水は加撃装置20の開口3aから加撃装置20内に導かれる。加撃装置20内に導かれたUFB水は、加撃装置20の下端のケーシング21と階段状部材22との間の隙間から排出され、貯留部2の容器3内に受け取られる。UFB水により容器3内が満たされると、開口3aからUFB水の一部が溢れて上部排出部4の溝状部5aに受け取られ、溝状部5a内のUFB水が溝状部排出口5bから排出管6に流れて排出口6aから外部へ排出される。また、容器3内のUFB水の他の部分は、容器3の下端の排出口3bから戻し管7の水平管8の一端近傍に戻る。こうして、戻し管7と貯留部2の間にUFB水の循環が形成される。この後、バブル水製造装置30を制御し、第1及び第2のMB水生成装置32,33によるMB水の生成を開始する。第1MB水生成装置32で生成されたMB水は、第1MB水供給部16を通して水平管8の一端に供給される。第2MB水生成装置33で生成されたMB水は、第2MB水供給部18を通して旋回流管10の一端に供給される。
【0065】
戻し管7と貯留部2の間にUFB水の循環が形成されると、被洗浄物を、容器3の開口3aと加撃装置20の間の隙間から、容器3内に投入する。被洗浄物が容器3内に投入されると、UFB水の循環流により、容器3の排出口3bから戻し管7の水平管8の一端近傍に導かれる。ここで、水平管8の一端のUFB水供給部12から供給された新たなUFB水が混合される。被洗浄物は、容器3からのUFB水と新たなUFB水と共に水平管8内を他端側に向かって流れ、UFBの作用により被洗浄物の洗浄と殺菌が行われる。被洗浄物が水平管8の他端に達すると、第1MB水供給部16で供給されたMB水が混合され、UFB水とMB水が混合した液体と共に、水平管8からフレキシブル管9に導かれる。被洗浄物とUFB水とMB水は、図1に示すように鉛直方向に延びるフレキシブル管9内を上方に向かって流れる。ここで、UFBの作用により被洗浄物から分離した汚染物質が、MB水の作用により凝集が促進される。
【0066】
フレキシブル管9内を流れた被洗浄物とUFB水とMB水は、旋回流管10に導かれ、第2MB水供給部18で更にMB水が供給される。MB水が更に供給された被洗浄物は、UFB水と共に旋回流管10の螺旋羽根42に沿って旋回状に流れて効果的に混合される。被洗浄物は、旋回流管10で混合されることにより、UFB水による洗浄効果や殺菌効果と、MB水による汚染物質の凝集効果が促進される。
【0067】
この後、被洗浄物とUFB水とMB水は、旋回流管10の吐出口10aから吐出され、開口21aから加撃装置20の内部に流入する。加撃装置20では、ケーシング21と階段状部材22との間を被洗浄物とUFB水とMB水が流れるに伴い、階段状部材22の水平面に被洗浄物が衝突し、このときの衝撃により被洗浄物の洗浄が促進される。また、ケーシング21の内側の邪魔板24により、被洗浄物とUFB水とMB水の流れに乱れが生じて、被洗浄物に更にUFB水とMB水が接触し、被洗浄物からの洗浄及び殺菌と、汚染物質の浮上が促進される。
【0068】
加撃装置20を流れた被洗浄物とUFB水とMB水は、加撃装置20から容器3に流れる。容器3に流れた被洗浄物とUFB水とMB水のうち、被洗浄物から分離した汚染物質と、被洗浄物の不良品が、容器3の液面に浮上する。この液面に浮上した汚染物質と不良品は、容器3の開口3aから溢れて上部排出部4の溝状部5aに受け取られ、溝状部排出口5bから排出管6に流れて排出口6aから外部へ排出される。
【0069】
容器3の液面から汚染物質と不良品が除去されると、貯留部2と戻し管7の間の循環流により、被洗浄物が再び容器3の下端の排出口3bから排出され、戻し管7に導かれる。
【0070】
被洗浄物を貯留部2と戻し管7の間で循環させて洗浄が完了したと判断されると、図11に示すように、戻し管7のフレキシブル管9を屈曲させ、旋回流管10の吐出口10aを回収網70に対向させて、吐出口10aから排出した洗浄後の被洗浄物を回収網70で回収する。ここで、回収網70は、網やパンチングスクリーン等を用いて形成され、液体を透過させて被洗浄物を回収できるものであれば、構造は特に限定されない。
【0071】
このように、本実施形態の食品用洗浄装置1によれば、被洗浄物が貯留部2と戻し管7の間を循環する間、UFB水供給部12でUFB水を供給し、第1MB水供給部16でMB水を供給し、第2MB水供給部18でMB水を供給した後に旋回流管10で旋回状に流し、加撃装置20で衝撃を加えることにより、被洗浄物の洗浄や殺菌を効果的に行うことができる。また、被洗浄物の汚染の度合いに応じて、被洗浄物が貯留部2と戻し管7の間を循環する回数や時間を調節すればよいので、汚れの度合いの異なる被洗浄物の洗浄を、容易な運転により安定して洗浄することができる。また、食品用洗浄装置1は、貯留部2と戻し管7で大略構成されるので、洗浄槽と殺菌槽とすすぎ槽とクレーンを備える従来の食品用洗浄装置よりも構成を簡易にでき、設置位置が小さくて済み、また、操作を容易にできる。
【0072】
さらに、空気の気泡を含んだUFB水やMB水は毒性が無いので、すすぎ工程が不要である。したがって、少ない工程で被洗浄物の洗浄を行うことができる。
【0073】
上記実施形態において、UFB水やMB水は、空気の気泡を用いて生成したが、水素や酸素やオゾン等の他の気体の気泡を用いて生成してもよい。水素や酸素やオゾンのUFB水やMB水を用いた場合も、UFB水やMB水の毒性が低いので、すすぎを行う必要が無い。したがって、少ない工程で被洗浄物の洗浄を行うことができる。
【0074】
また、上記実施形態において、旋回流管10は、単一方向に旋回する旋回羽根42を有したが、互いに反対向きに旋回する2つの旋回羽根を有するものを用いてもよい。図12は、変形例の旋回流管110を示す断面図である。この旋回流管110は、管状のケーシング140と、このケーシング40内に同軸に配置された芯棒41と、この芯棒41の回りに、軸方向に順次配置された2つの螺旋羽根42A,42Bを有する。上記芯棒41と第1及び第2の螺旋羽根42A,42Bで旋回流部材を構成している。第1及び第2の螺旋羽根42A,42Bは、互いに反対向きに旋回するように形成され、互いに同じ長さ方向の寸法を有する。これにより、芯棒41の長さ方向の中央で、第1螺旋羽根42Aの旋回方向と、第2螺旋羽根42Bの旋回方向が逆転するように形成されている。ケーシング140の一端には、実施形態と同様に第2MB水供給部18Aが設けられている。また、ケーシング140の上記第1螺旋羽根42Aと第2螺旋羽根42Bが切り替わる軸方向位置に、第3MB水供給部18Bが設けられている。第2水供給部18Aと第3水供給部18Bには、バブル水製造装置30の第2MB水生成装置33に接続され、この第2MB水生成装置33で生成されたMB水が供給されるようになっている。ケーシング140の他端には、被洗浄物や液体を吐出する吐出口110aが設けられている。
【0075】
変形例の旋回流管110によれば、フレキシブル管9から導かれた被洗浄物とUFB水とMB水が一端側に導かれ、第2MB水供給部18AでMB水が供給される。MB水が供給された被洗浄物は、UFB水と共に旋回流管110の第1螺旋羽根42Aに沿って旋回状に流れて効果的に混合される。この後、芯棒41の軸方向の略中央で、第3MB水供給部18BによりMB水が供給され、第2螺旋羽根42Bに沿って第1螺旋羽根42Aと反対回りの旋回状に流れる。このように、被洗浄物とUFB水とMB水が、互いに逆方向の旋回流によって混合されることにより、UFB水による洗浄効果や殺菌効果と、MB水による汚染物質の凝集効果を更に促進することができる。
【0076】
上記実施形態において、食品用洗浄装置1を起動した当初からUFB水供給部12を通して戻し管7と貯留部2にUFB水を供給し、UFB水の循環流を形成したが、起動した当初は、液体としての水をUFB水供給部12等から供給し、水の循環流を形成した後に、UFB水やMB水を供給してもよい。
【0077】
上記実施形態の食品用洗浄装置1は、豆類や穀類等の食品を洗浄する用途に用いたが、果実類、海藻類又は芋類等の他の食品を洗浄する用途に用いてもよい。
【0078】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 食品用洗浄装置
2 貯留部
3 容器
3a 開口
4 上部排出部
5 溝形成部材
5a 溝状部
5b 溝状部排出口
6 排出管
7 戻し管7
8 水平管
9 フレキシブル管
10 旋回流管
10a 吐出口
12 UFB水供給部
14 排液管
16 第1MB水供給部
18 第2MB水供給部
13,15,17,19 バルブ
20 加撃装置
21 ケーシング
22 階段状部材
35 UFB水供給管
36 第1MB水供給管
37 第2MB水供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物と液体とを保持する容器と、この容器の上部に形成され、被洗浄物が投入される開口と、上記容器の下部に形成されて液体と被洗浄物を排出する排出口と、上記容器の上部に形成されて少なくとも液体を表面側から排出する上部排出部とを有する貯留部と、
上記貯留部の排出口に一端側が接続されると共に他端に吐出口を有し、この吐出口を上記貯留部の開口の上方に配置可能に形成された戻し管と、
上記戻し管の一端に、気体のウルトラファインバブルが水に含有されてなるウルトラファインバブル水を供給するウルトラファインバブル水供給部と
を備え
上記戻し管が、少なくとも一部が変形することにより、上記吐出口を上記貯留部の上方から移動可能に形成されていることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記戻し管の他端部に、上記液体と被洗浄物を旋回状に流す旋回流部材が内蔵されていることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の食品用洗浄装置において、
上記戻し管の上記旋回流部材の上流側に、気体のマイクロバブルが水に含有されてなるマイクロバブル水を供給するマイクロバブル水供給部を備えることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項4】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記戻し管の一端に、上記ウルトラファインバブル水以外の液体を供給する液体供給部を備えることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項5】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記貯留部の容器の開口に、上記戻し管の吐出口から吐出された液体と被洗浄物を受け入れ、内部を上記液体が流れるに伴って上記被洗浄物に衝撃を与える加撃装置を有することを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項6】
請求項5に記載の食品用洗浄装置において、
上記加撃装置が、
平面視において中央に配置され、上記液体と被洗浄物を受け入れる受入口と、
上記受入口から流入した液体と被洗浄物を、平面視において中央から外側に向かうにつれて階段状に落下させる階段状部材と、
上記階段状部材に対向して配置された邪魔板と
を有することを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項7】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記貯留部の上部排出部が、
上記容器の開口を取り囲んで上記開口から溢れた液体と被洗浄物を回収する溝状部と、
上記溝状部が回収した上記液体及び被洗浄物を排出する溝状部排出口と
を有することを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項8】
請求項1に記載の食品用洗浄装置において、
上記戻し管の上記ウルトラファインバブル水供給部でウルトラファインバブル水が供給される位置よりも下流側に、マイクロバブル水を供給する第2マイクロバブル水供給部を備えることを特徴とする食品用洗浄装置。
【請求項9】
請求項1に記載の食品用洗浄装置を用いて食品を洗浄する方法であって、
上記ウルトラファインバブル水供給部から戻し管の一端にウルトラファインバブル水を供給し、この戻し管の他端の吐出口から上記ウルトラファインバブル水を上記貯留部の容器に供給することにより、上記戻し管と上記貯留部の容器の間にウルトラファインバブル水を循環させる循環流形成工程と、
上記貯留部の容器の開口から被洗浄物を投入する被洗浄物投入工程と、
上記戻し管と上記貯留部の間に、上記ウルトラファインバブル水と上記被洗浄物とを循環させる被洗浄物循環工程と、
上記戻し管の他端の吐出口から吐出される被洗浄物を回収する回収工程と
を有することを特徴とする食品洗浄方法。
【請求項10】
請求項に記載の食品洗浄方法において、
上記被洗浄物は、豆類、穀類、果実類、海藻類又は芋類の食品であることを特徴とする食品洗浄方法。