(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163062
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】絶縁シート、及び絶縁用保護具
(51)【国際特許分類】
H01B 17/56 20060101AFI20231101BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20231101BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231101BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H01B17/56 H
B32B7/025
B32B27/40
B32B27/28 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073870
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】594000398
【氏名又は名称】フィスコ インタ-ナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129539
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 康志
(72)【発明者】
【氏名】新谷 章
【テーマコード(参考)】
4F100
5G333
【Fターム(参考)】
4F100AK03B
4F100AK04B
4F100AK04J
4F100AK22B
4F100AK22J
4F100AK51A
4F100AK51C
4F100AK68B
4F100AL01B
4F100AL09A
4F100AL09C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA16B
4F100GB41
4F100JG04
4F100JG05A
4F100JG05B
4F100JG05C
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100JN01C
5G333AA01
5G333AB01
5G333AB22
5G333BA03
5G333CB07
5G333DA03
(57)【要約】
【課題】透明性を有し、且つ、絶縁機能を高めた絶縁シート及び絶縁用保護具を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態の絶縁シート(1)は、主面の一方側に配置した、絶縁性を有する半透明又は透明のエラストマーシート(11)と、主面の他方側に配置した、絶縁性を有する半透明又は透明のエラストマーシート(11)と、前記2枚のエラストマーシート間に複数枚重ねて配置した、弾性を有する透明又は半透明のオレフィンシート(12)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面の一方側に配置した、絶縁性を有する半透明又は透明のエラストマーシートと、
主面の他方側に配置した、絶縁性を有する半透明又は透明のエラストマーシートと、
前記2枚のエラストマーシート間に複数枚重ねて配置した、透明又は半透明のオレフィンシートと、を備えることを特徴とする絶縁シート。
【請求項2】
前記2枚のエラストマーシートは、共にポリウレタンシートであることを特徴とする請求項1に記載の絶縁シート。
【請求項3】
前記オレフィンシートは、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を主成分とするシートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁シート。
【請求項4】
前記オレフィンシートは、前記2枚のエラストマーシートよりも誘電率が小さく、且つ、帯電列で表したとき、前記2枚のエラストマーシートに対して正極に帯電し易いシートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁シート。
【請求項5】
前記請求項1に記載の絶縁シートで形成したことを特徴とする絶縁用保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性を有するシート(絶縁シート)及び絶縁用保護具に関し、特に、複数のシートを重ねて絶縁機能を高めた絶縁シート及び絶縁用保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば活線状態で電気工事などを行う場合、養生シートとして絶縁シートが用いられる。絶縁シートは、労働安全衛生法に規格が定められており、使用電圧(交流)600Vまで使用可能なもの、3500Vまで使用可能なもの、7000Vまで使用可能なものなどが、型式検定を経て販売等されている。しかしながら、型式検定を受けて販売等されている既存の絶縁シートは、シート全体が不透明であり、作業者は何がシートで覆われているのかを目視で把握できない。そのため、安心して作業を行えない場合がある。
【0003】
一方、使用電圧(交流)300V以下の規格外の絶縁シートの中には、透明なものも存在する。しかしながら、これらの絶縁シートを7000Vまで使用可能な高電圧用として使用することはできない。例えば7000Vまで使用可能な高電圧用の型式検定に合格するには、新品のもので、交流試験電圧20000V,1分間の耐電圧試験に耐え得る絶縁機能が要求されるからである。
【0004】
絶縁シートの絶縁機能を高める手法の一つに、シートを厚くすることがある。しかしながら、単にシートを厚く形成したり、単にシートを積層したりすると、柔軟性や伸縮性といったフレキシブル性が低下して、対象物を覆い難くなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6592695号公報
【特許文献2】実用新案登録第3098070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、透明性を有し、且つ、絶縁機能を高めた絶縁シート及び絶縁用保護具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1)本発明の絶縁シートは、主面の一方側に配置した、絶縁性を有する半透明又は透明のエラストマーシートと、主面の他方側に配置した、絶縁性を有する半透明又は透明のエラストマーシートと、前記2枚のエラストマーシート間に複数枚重ねて配置した、弾性を有する透明又は半透明のオレフィンシートと、を備えることを特徴とする。
(2)前記2枚のエラストマーシートは、共にポリウレタンシートである。
(3)前記オレフィンシートは、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を主成分とするシートである。
(4)前記オレフィンシートは、前記2枚のエラストマーシートよりも誘電率が小さく、且つ、帯電列で表したとき、前記2枚のエラストマーシートに対して正極に帯電し易いシートである。
(5)本発明の絶縁用保護具は、前記絶縁シートで形成したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る絶縁シートの斜視図である。
【
図2】上記絶縁シートの内部構成を示す斜視図である。
【
図3】上記絶縁シートを構成する複数のシートの展開図である。
【
図5】上記絶縁シートの試作品で実際に養生した様子を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態に従う絶縁シート及び絶縁用保護具について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲が限定解釈されることはない。
【0010】
本実施形態の絶縁シート1は、一例を
図1に示すように、平面を矩形状に形成したシートである。このような絶縁シート1は、例えば電気工事等の作業現場における養生シートとして使用可能である。特に、活線状態にて、或いは活線状態にあるものの近傍にて作業を行う際には、短絡や感電などの事故防止のため、周囲に設置された設備や機器等を絶縁シート1で覆って養生する。絶縁シート1は、7000Vまで使用可能な型式検定に合格した高電圧用であることを明示するため、一例として、品名「高電圧用絶縁シート」、製造者名、耐電圧試験の条件「試験電圧20000V,1分間」、製造年月日、使用温度「-30℃~120℃」などの情報を表面に印字する。
【0011】
絶縁シート1は、有色で半透明のシートである。特に色が限定されることはないが、黄色、赤色、ピンク色、黄緑色などの明度の高い色が好ましい。その中でもピカイエロー、ピンクが好ましい。作業者が絶縁シート1の存在を認識し易いからである。一方で無色透明にすると、包装用シートなどと混同するおそれがある。なお「有色で半透明」とは、例えば作業現場において絶縁シート1で覆っている対象物を、シート越しに目視で認識できる程度の透明性を有することを意味する。
【0012】
絶縁シート1は、詳しくは後述するが、複数種のシートを重ねて絶縁機能を高めている。重ねたシートは、詳しくは後述するが、例えば外周縁を互いに接合して1枚の絶縁シート1にしている(以下、接合部10と称す)。シート同士の接合方法は、例えば溶着や接着が好ましい。溶着の種別は、例えばシートの種類に応じて、高周波溶着,超音波溶着,熱溶着などから選択する。但し、接合方法が限定されることはなく、絶縁性の糸などによる縫い合わせなど、その他の公知の手法を採用してもよい。また接合部10は、シートの外周縁の全周又は一部に限らず、例えば中心線上などシートの面内のいずれかに追加してもよい。
【0013】
絶縁シート1のサイズは、いくつかのバリエーションを用意するのが望ましい。一例として、600mm×1010mm,1000mm×1010mmなどである。但し、シートの平面形状は矩形に限らず、任意の形状であってよい。また、例えば電気ケーブルのコネクターや端子といった特定の対象物を覆い易いように形状を変えたり、面シールやバンドなどの固定手段を追加したりしてよい(このような絶縁用防具も本実施形態の絶縁シートに含まれる)。
【0014】
続いて、
図2~
図4を参照しながら、絶縁シート1を構成する複数のシートについて詳述する。絶縁シート1は、主要な面(主面)の一方側と他方側の両方に、絶縁性を有するポリウレタンシート11をそれぞれ配置し、この2枚のポリウレタンシート11の間に複数枚のオレフィンシート12を重ねて配置している。絶縁性を有するポリウレタンシート11を主面の両側に配置しているので、絶縁シート1は、特に裏表なく使用することができる。
【0015】
特に
図4(a)に示すように、絶縁シート1は、ポリウレタンシート11よりもオレフィンシート12を例えば接合部10の分だけ小さいサイズとし、ポリウレタンシート11の外周縁同士を接合することによって側面を封止するのが好ましい。複数枚重ねたオレフィンシート12も互いの外周縁を接合するのが好ましく、その際、例えば超音波溶着或いは高周波溶着によって、外周縁に沿って間隔をあけて点付け10aで接合するのがさらに好ましい。
【0016】
このような絶縁シート1は、まずオレフィンシート12を所定枚数重ねて例えば点付け10aで互いを接合し、2枚のポリウレタンシート11で挟んだ後、ポリウレタンシート11の外周縁を接合部10で接合することによって製造できる。
【0017】
複数枚のオレフィンシート12は、実際に耐電圧試験を行ったところ、0.15mm厚のものを8枚重ねたときに結果が良好であったことを確認している。枚数が少な過ぎると所望の絶縁機能が得られず、反対に枚数が多すぎると絶縁シート1全体のフレキシブル性が損なわれて対象物を覆い難くなってしまう場合がある。さらに絶縁シート1の透明性の低下や、質量の増加、製造コスト増にもなり得る。但し、必ずしも8枚でなければならないということではなく、例えばオレフィンの種類や厚みなどに応じて例えば5~12枚くらいの範囲で適宜枚数を調整してよい。一例として、型式検定における交流電圧3500V以下の製品仕様とする場合、或いは交流電圧600V以下の製品仕様とする場合に枚数を減らしたり、反対に、より絶縁機能を高める場合に枚数を増やしたり、などである。
【0018】
ポリウレタンシート11とオレフィンシート12の主面同士は、フリーな状態で接している。オレフィンシート12の主面同士も、例えば点付け10aで接合した部分を除いて、フリーな状態で接している。このようにシート同士をフリーな状態にしておくことによって、シート全面を接合した場合に比べて曲げ易く、絶縁シート1全体としてのフレキシブル性を確保する。これにより養生する対象物を覆い易くする。その際、シート同士が全面に亘って密着せず、シート間に僅かな空間が形成されて、これが絶縁機能に有利に働くとも考える。但し、複数枚のシートの全部又は一部のシート同士を全面接合させた形態を除外するものではない。
【0019】
2枚のポリウレタンシート11及び複数枚のオレフィンシート12は、半透明又は透明の透明性を有するシートを用いる。但し、有色で半透明の絶縁シート1とするために、少なくともいずれか1枚は有色で半透明のシートとする。好ましい一例として、外側に配置するポリウレタンシート11をピカイエローで半透明なシートとし、内側に配置するオレフィンシート12は透明なシートとする。無色透明がさらに好ましいが、無色半透明であってもよい。これにより、絶縁シート1自体をピカイエローで半透明なシートにすることができる。また既述した製造者名や試験電圧などの情報は、ポリウレタンシート11に印字してもよく、オレフィンシート12のいずれかに印字してもよい。印字色は、例えばオレンジ色とする。
【0020】
ポリウレタンは紫外線によって劣化する傾向にあるので、紫外線で変色又は退色する着色剤を用いてポリウレタンシート11を有色にすれば、変色又は退色の程度でポリウレタンシート11の劣化の程度を判別することができる。変形例として、紫外線で変色又は退色するインクを用いて絶縁シート1に文字や図形などを印字し、この印字の変色又は退色の程度でポリウレタンシート11の劣化の程度を判別するようにしてもよい。
【0021】
ここで、ポリウレタンは絶縁性素材であるので、2枚のポリウレタンシート11は、各々絶縁性を有している。但し、原料となる化合物や添加物の種類、シートの厚みなどによって絶縁性の程度は変わる場合があるため、好ましくは、単独でも低電圧用の絶縁シートとして使用可能な絶縁性能を有するものを用いる。勿論、単独で型式検定を合格したものである必要はなく、型式検定を受ければ合格し得る絶縁性能を有していればよい。好ましくは、試験電圧(交流)1000Vで1分間の耐電圧試験に合格するポリウレタンシート11であり、より好ましくは、試験電圧(交流)3000Vで1分間の耐電圧試験に合格するポリウレタンシート11である。このように、低電圧用の絶縁シートとしても使用可能なポリウレタンシート11を用いれば、共通のポリウレタンシート11で低電圧用と高電圧用の両方を製造、販売等できる利点がある。結果、製造コストや販売価格を抑えやすい。
【0022】
各ポリウレタンシート11は、一例を
図4(b)に示すように、2層構造が好ましい。各層を構成するポリウレタン層11aは、一例として、液状のポリウレタン樹脂をローラー台上に流し、所定の厚みになるようにポリウレタン樹脂の量を調整しながら硬化させることによってシート状に形成する。そして互いの全面を接合して、一枚のポリウレタンシート11とする。接合には例えば接着剤を用いる。或いは溶着など他の接合方法であってもよい。各ポリウレタン層11aの厚みは、例えば0.2mmである。ポリウレタンシート11としては2倍の0.4mmである。各層の厚みは、同じ設定値であることが好ましいが、異なってもよい。このような2層構造にすると、万が一、どちらか一方のポリウレタン層11aにピンホール等が発生してもポリウレタンシート11自体の絶縁性は確保できるという利点がある。また2層構造とする場合、一方の層を有色の半透明とし、他方の層を透明としてよい。
【0023】
ポリウレタンシート11は、一般的にも、機械強度、伸縮性、柔軟性に富み、耐衝撃強度にも優れたシートである。その上で、上述の2層構造にすれば、絶縁機能の向上、機械強度の向上、衝撃強度の向上、低温や繰り返し屈曲の耐性向上になる。また-30℃~+120℃まで幅広い使用温度で弾性を保つことができる。その他、耐摩耗性、耐薬品、耐油、耐オゾン性、耐加水分解、耐金属害(銅害)も良好である。
【0024】
また、ポリウレタンシート11は、例えばオレフィンシート12側の主面をシボ加工してもよい。これによりポリウレタンシート11とオレフィンシート12の接触面積、及び曲げたときの接触抵抗を小さくする。
【0025】
オレフィンシート12は、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)シート、PP(ポリプロピレン)シート、PE(ポリエチレン)シート、その他のオレフィン樹脂で形成したシートである。その中でも、EVAシートが好ましく、特に一例を
図4(c)に示すように、EVAの層12aの両面をPP(ポリプロピレン)の層12bで被覆したものが好ましい。EVAとPPはいずれもオレフィン樹脂である。PP層12bは、EVA層12aの全面に接合している。このように異なる樹脂で形成した場合であっても、EVAが例えばシート全体の容積の50%以上、好ましくは70%以上を占めていれば、EVAを主成分とするシートに該当する。被覆層であるPP層12bは、シート表面のスリップ性(滑り性)を高め、摩擦による静電気や帯電を抑制する。なお、被覆層を形成する樹脂は、PE(ポリエチレン)など、PP以外のオレフィン樹脂であってもよく、或いはオレフィン樹脂以外の樹脂で被覆してもよい。但し、オレフィンを主成分とするために例えばシート全体の容積の50%以上、好ましくは70%以上をオレフィンが占めるようにする。
【0026】
各オレフィンシート12の厚みは、ポリウレタンシート11よりも薄い例えば0.08mm~0.3mmの範囲で選択する。好ましくは0.15mmである。複数枚重ねるオレフィンシート12は、同じ厚みのものを用いるのが好ましいが、異なる厚みのものを含んでいてよい。その他の特性について、特に限定はされないが、引張強さ;30~85N、伸び;700~850%、引裂強さ;10~26N、ヤング率:125~195MPa、耐寒性;-50℃が好ましい。
【0027】
ここで複数種のシートを重ねて絶縁性を高める場合、シート同士の相性は重要である。このことは、実際に、様々な種類のシートを組み合わせて耐電圧試験を行って、導き出したことである。結果、ポリウレタンシート11とオレフィンシート12の相性は良好であり、ポリウレタンシート11とEVAシートの相性は特に良好であった。
【0028】
相性の良し悪しの要因の一つに、シートの帯電特性があると考える。例えば誘電率(比誘電率)についてみると、ポリウレタンは、一般に5.0~5.3である。EVAは、一般に2.6~2.98である。PPは、一般に2.0~2.3である。PEは、一般に2.3~2.4である。従って、ポリウレタンシート11は、電圧が印加されたり、摩擦が起きたりした際に、オレフィンシート12に比べて電気を貯めやすい。他の要因として、帯電列があると考える。帯電列で表した場合、オレフィンシート12は、ポリウレタンシート11に対して正極に帯電し易い。
【0029】
既述のように、様々な種類のシートを組み合わせて耐電圧試験を行った結果、ポリウレタンシート11とオレフィンシート12の相性は良好であり、その中でもポリウレタンシート11とEVAを主成分とするシートの相性が特に良好であることを導き出した。詳細なメカニズムは定かではないが、この結果から言えることは、試験電圧(交流)20000Vで1分間の耐電圧試験に耐えるには、ポリウレタンシート11の内側に、誘電率が低く且つポリウレタンシート11に対し正極に帯電するオレフィンシート12を複数枚重ねて配置するのが良いということである。
【0030】
(耐電圧試験)
絶縁用保護具等の規格(昭和47年12月4日労働省告示第144号)は、高電圧用の耐電圧試験について規定している。すなわち、電圧が3500Vを超え7000V以下である電路について用いる絶縁用保護具等については、常温において20000Vの交流電圧に対して1分間耐える性能を有するものでなければならない、と規定されている。この規定は、同規格において絶縁シートなどの絶縁用防具にも準用されている。さらに同規格には、試験方法についても規定している。試験方法の一つに、表面が平滑な金属板の上に試験物を置き、その上に金属板、水を十分に浸潤させた綿布等導電性の物をコロナ放電又は沿面放電により試験物に損傷が生じない限度に置き、試験物の下部の金属板及び上部の導電性の物を電極として試験交流の電圧を加える方法、がある。
【0031】
2枚のポリウレタンシート11の間に厚さ0.15mmのオレフィンシート12を8枚重ねて配置した絶縁シート1は、上述の耐電圧試験を行ったところ、試験電圧(交流)20000Vで1分間耐えることができたことを確認している。すなわち高電圧用として型式検定に合格し得る性能である。加えて、この絶縁シート1は、覆っている対象物をシート越しに目視で認識できる透明性を有していることを確認している。
図5は、絶縁シート1の試作品で電気ケーブルの配線現場を養生した様子を撮影した写真である。写真がグレースケールのため見づらいがシート越しにケーブルを目視にて確認することが可能であった。このような絶縁シート1は、電力業界、通信業界、バッテリー業界など様々な業界で有用である。
【0032】
さらに、上述の2枚のポリウレタンシート11の間にオレフィンシート12を複数枚重ねて配置した絶縁シート1は、絶縁用保護具を形成するための素材とすることもできる。絶縁用保護具は、例えば、作業者が着用する絶縁上衣や絶縁ズボンなどである。勿論、その他の絶縁用保護具であってもよい。
【0033】
他の実施形態として、いずれかのシートの間に補強材を追加するようにしてもよい。補強材はアラミド繊維が好ましく、パラ系アラミド繊維がより好ましい。補強材は、繊維を格子状にしていずれかのシートの間に配置し、固着部10で端部を固定する。
【0034】
ここまでは最良の一例として、ポリウレタンシート11とオレフィンシート12の組み合わせについて説明したが、変形例として、ポリウレタン以外のエラストマー(elastomer)シートを採用してもよい。ポリウレタン以外のエラストマーシートであっても例えば2~4枚以上の複数枚のオレフィンシートと組み合わせることによって絶縁機能が向上する。複数枚のオレフィンシート12はすべて同じ種類でなくともよい。また主面両側のエラストマーシートは1枚に限らず2枚以上としてもよい。エラストマーシートとオレフィンシート以外のシートを含むことを除外するものではない。
【0035】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0036】
1 絶縁シート
10 接合部
10a 点付け
11 ポリウレタンシート
11a ポリウレタン層
12 オレフィンシート
12a EVA層
12b PP層