(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163070
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/017 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
A01K89/017
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073882
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松野 圭佑
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108GA14
(57)【要約】
【課題】リール本体の大型化や重量増加を防止できる魚釣用リールを提供する。
【解決手段】スプール5を駆動力伝達状態と駆動力遮断状態とに切り換えるクラッチ機構20と、駆動力遮断状態にされたクラッチ機構20を駆動力伝達状態に復帰させる復帰機構30,40と、を備えている。クラッチ機構20は、クラッチ作動部材23を備える。復帰機構30,40は、クラッチ復帰用回転体31,42、及びクラッチ復帰用回転体31,42に係脱し、駆動力遮断状態にされたクラッチ作動部材23を駆動力伝達状態に復帰させるキック部材32,43を備える。リール本体1は、ハンドル軸7及びクラッチ作動部材23の少なくとも一方を抜け止め保持する固定プレート50,50Aを備えている。固定プレート50,50Aは、キック部材32,43の移動を案内及び規制する規制部55,58を兼ねている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体のフレーム間に設けられ、少なくともハンドル軸の駆動力を受けて回転するスプールと、
前記スプールを駆動力伝達状態と駆動力遮断状態とに切り換えるクラッチ機構と、
駆動力遮断状態にされた前記クラッチ機構を駆動力伝達状態に復帰させる復帰機構と、を備えた魚釣用リールであって、
前記クラッチ機構に設けられ、クラッチレバーの操作により駆動力遮断状態されるクラッチ作動部材と、
前記復帰機構に設けられ、回転力を受けて回転するクラッチ復帰用回転体、及び前記クラッチ復帰用回転体に係脱し、駆動力遮断状態にされた前記クラッチ作動部材を駆動力伝達状態に復帰させるキック部材と、
前記リール本体に設けられ、前記ハンドル軸及び前記クラッチ作動部材の少なくとも一方を抜け止め保持する固定プレートと、を備えており、
前記固定プレートは、前記キック部材の移動を案内及び規制する規制部を兼ねていることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記クラッチ復帰用回転体に対する前記キック部材の係脱を弾性的に振り分ける振り分けバネを備えており、
前記振り分けバネは、前記固定プレートに抜け止め保持されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記キック部材は、前記フレームと前記固定プレートとの間に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールとして両軸受型の魚釣用リールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
一般的に、魚釣用リールは、スプールへの動力伝達状態を切り換えるクラッチ機構を備えている。クラッチ機構は、操作レバーを備えており、この操作レバーの操作によって駆動力伝達状態のクラッチオン位置から駆動力遮断状態のクラッチオフ位置に切り換えられるように構成されている。また、魚釣用リールは、駆動力遮断状態のクラッチ機構を駆動力伝達状態に復帰させる復帰機構を備えている。
【0003】
クラッチ機構は、ハンドル軸と連動回転するクラッチ復帰用回転体と、クラッチ復帰用回転体に係脱するクラッチ作動片と、クラッチ作動片の移動を案内及び規制する案内規制部と、を有している。特許文献1のクラッチ作動片は、リール本体のフレームに直接設けられた案内規制部に係合して移動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、リール本体のフレームに案内規制部が直接設けられているため、リール本体の大型化や重量増加を招くおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、リール本体の大型化や重量増加を防止できる魚釣用リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、リール本体のフレーム間に設けられ、少なくともハンドル軸の駆動力を受けて回転するスプールと、前記スプールを駆動力伝達状態と駆動力遮断状態とに切り換えるクラッチ機構と、駆動力遮断状態にされた前記クラッチ機構を駆動力伝達状態に復帰させる復帰機構と、を備えている。そして魚釣用リールは、前記クラッチ機構に設けられ、クラッチレバーの操作により駆動力遮断状態されるクラッチ作動部材と、前記復帰機構に設けられ、回転力を受けて回転するクラッチ復帰用回転体(ラチェット、歯車B)、及び前記クラッチ復帰用回転体に係脱し、駆動力遮断状態にされた前記クラッチ作動部材を駆動力伝達状態に復帰させるキック部材と、前記リール本体に設けられ、前記ハンドル軸及び前記クラッチ作動部材の少なくとも一方を抜け止め保持する固定プレートと、を備えている。前記固定プレートは、前記キック部材の移動を案内及び規制する規制部を兼ねている。
【0008】
この魚釣用リールによれば、固定プレートを利用してキック部材の移動の案内及び規制を行うことができるので、別途、規制部を設ける必要がなくなり、構成が簡単になる。また、フレーム側に規制部を設ける必要がなくなるので、その分、省スペース化を図ることができる。したがって、小型化及び軽量化を図ることができる。
【0009】
また、前記クラッチ復帰用回転体に対する前記キック部材の係脱を弾性的に振り分ける振り分けバネを備えている場合には、前記振り分けバネが、前記固定プレートに抜け止め保持されていることが好ましい。
【0010】
この魚釣用リールによれば、固定プレートにより振り分けバネの脱落を防止でき、キック部材の良好な移動を好適に維持できる。
【0011】
また、前記キック部材は、前記フレームと前記固定プレートとの間に配置されていることが好ましい。
この魚釣用リールによれば、リール本体に対する構成部品の組付時に、フレーム上にキック部材を配置し、その上から固定プレートを取り付けることにより、フレームと固定プレートとの間にキック部材を保持できる。したがって、組み立て作業が簡単である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リール本体の大型化や重量増加を防止できる魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールとしての魚釣用電動リールを示した斜視図である。
【
図2】魚釣用電動リールの右側部の分解斜視図である。
【
図3A】駆動力伝達状態における各部品の位置関係を示した右側面図である。
【
図3B】駆動力遮断状態における各部品の位置関係を示した右側面図である。
【
図4】駆動力伝達状態における第2キック部材のガイド突部とガイド孔との位置関係を示した説明図である。
【
図5B】係合歯車の軸方向に沿う断面を示した縦断面図である。
【
図5C】係合歯車の径方向に沿う要部の断面を示した縦断面図である。
【
図5D】係合歯車における爪部の回動範囲を示した説明図である。
【
図6】(a)は固定プレートを示した斜視図、(b)は固定プレートを示した側面図である。
【
図7】クラッチ作動部材の前端部回りの構造を示した拡大側面図である。
【
図8】(a)は第2キック部材を示した斜視図、(b)は第2キック部材を示した側面図である。
【
図9】ガイド孔におけるガイド突部の位置関係を示した拡大説明図である。
【
図10】固定プレートに対するハンドル軸の支持構造を示した断面図である。
【
図11A】駆動力伝達状態からクラッチレバーを押し下げたときの第2キック部材の位置関係を示した説明図である。
【
図11B】
図11Aの状態からクラッチレバーをさらに押し下げて第2キック部材の係合突部が立ち上がった状態となったときの第2キック部材の位置関係を示した説明図である。
【
図11C】駆動力遮断状態となったときの第2キック部材の位置関係を示した説明図である。
【
図11D】第2復帰機構により駆動力遮断状態から駆動力伝達状態に向けて第2キック部材が移動したときの第2キック部材の位置関係を示した説明図である。
【
図11E】
図11Dの状態から駆動力伝達状態に向けてさらに第2キック部材が移動したときの位置関係を示した説明図である。
【
図12】第2キック部材の係合突部が係合爪に干渉する場合の作用について示した説明図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールとしての魚釣用電動リールの右側部の構造を示した分解斜視図である。
【
図15】魚釣用電動リールの右側部の主要構造を示した斜視図である。
【
図16A】駆動力伝達状態における第1キック部材の規制孔と固定プレートの規制凸部との位置関係を示した説明図である。
【
図16B】
図16Aの状態からクラッチレバーを押し下げて駆動力遮断状態となったときの第1キック部材の規制孔と固定プレートの規制凸部との位置関係を示した説明図である。
【
図16C】
図16Bの駆動力遮断状態から駆動力伝達状態に向けて第1キック部材が移動したときの第1キック部材の規制孔と固定プレートの段付き延在部との位置関係を示した説明図である。
【
図16D】
図16Cの状態から駆動力伝達状態に向けてさらに第1キック部材が移動したときの第1キック部材の規制孔と固定プレートの段付き延在部との位置関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、魚釣用リールとして魚釣用電動リールを例に挙げて説明する。以下の説明において、「前後」「左右」「上下」を言うときは、
図1に示した方向を基準とする。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示すように、魚釣用電動リール100は、左右のフレーム2,2と、左右のフレーム2,2を覆うように配設される左右の側板3,3(右側板のみ図示)とを備えたリール本体1を有している。リール本体1の上面前部には、表示手段としてのカウンターケース4が配置されている。カウンターケース4は、電動モータ6の作動を制御する制御手段を内部に有している。
【0016】
左右のフレーム2,2は、リール本体1の骨格をなす部分であり、支柱を介して左右一体化されている。下方の支柱には、図示しない釣竿のリールシートに装着されるリール脚2aが設けられている。左右のフレーム2,2は、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属材で形成されている。
左右のフレーム2,2間には、釣糸が巻回されるスプール5が回転自在に支持されている。また、スプール5の前方において、左右のフレーム2,2には電動モータ6が支持されている。
【0017】
電動モータ6は、左右のフレーム2,2に向けて延出する図示しない駆動軸を備えている。左フレーム2側に延出する駆動軸には、電動モータ6の回転駆動力を減速してスプール5側に伝達する駆動用減速機構が接続されている。また、右フレーム2側に延出する駆動軸には、電動モータ6の回転駆動力を減速して後記する第2復帰機構40に伝達する復帰用減速機構6aが接続されている。
【0018】
左右の側板3,3は、釣人の手によって握持されたり、保持されたりする部分(釣人の手が接触する部分)となる。左右の側板3,3は、個々に一体形成されており、左右のフレーム2,2にそれぞれ装着されている。
右側板3には、手動ハンドルが取り付けられるハンドル軸7が設けられている。スプール5は、手動ハンドルの巻取り操作による駆動力、及び電動モータ6の回転駆動力によって、駆動力伝達機構を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。電動モータ6による駆動力伝達機構は、左フレーム2側に設けられている。
【0019】
右フレーム2には、
図2,3A,3Bに示すように、手動ハンドルによる駆動力をスプール5に伝達する駆動力伝達機構10と、スプール5を駆動力伝達状態と駆動力遮断状態とに切り換えるクラッチ機構20と、駆動力遮断状態にされたクラッチ機構20を駆動力伝達状態に復帰させる復帰機構とが設けられている。このうち、復帰機構は、ハンドル(ハンドル軸7)の回転駆動力を利用して駆動力伝達状態に復帰させる第1復帰機構30と、電動モータ6の回転駆動力を利用して駆動力伝達状態に復帰させる第2復帰機構40とを備えている。つまり、本実施形態の魚釣用電動リール100は、手動及び電動による2つの復帰機構を備えている。第1復帰機構30と第2復帰機構40との詳細は後記する。
【0020】
駆動力伝達機構10は、
図3Aに示すように、ハンドル軸7に支持されたドライブギャ11と、ドライブギャ11に噛合するピニオン12とを備えている。ドライブギャ11は、ハンドル軸7と一体に回転し、手動ハンドルの回転操作による駆動力をピニオン12に伝達する。ピニオン12は、右側板3に軸受を介して回転可能に支持された図示しないピニオン軸に設けられている。ピニオン軸は、図示しないスプール軸と同軸的に延出している。ピニオン12には、クラッチ機構20の後記するヨーク24が係合している。ピニオン12は、ヨーク24の後記する作用によりピニオン軸に沿って軸方向に移動可能に構成されている。
【0021】
ピニオン12は、スプール軸に嵌合する嵌合部を有しており、ヨーク24によってスプール5側に移動されると、嵌合部がスプール軸に嵌合してドライブギャ11の駆動力をスプール軸(スプール5)に伝達する状態(駆動力伝達状態(釣糸巻取可能状態))にする。また、ピニオン12は、ヨーク24によって右側板3側に移動されると、嵌合部がスプール軸から外れてドライブギャ11の駆動力をスプール軸(スプール5)に伝達しない状態(駆動力遮断状態(釣糸放出可能状態))にする。
【0022】
クラッチ機構20は、クラッチレバー21と、クラッチフレーム22と、クラッチ作動部材23と、ヨーク24とを備えている。クラッチレバー21は、スプール5をサミングしながら操作が可能となるように、スプール5の後方において、左右のフレーム2,2の後端部間に配置されている。クラッチレバー21は、親指を載置して下方に押し下げ操作することで、クラッチ機構20を駆動力伝達状態から駆動力遮断状態に切り換える部材である。
【0023】
クラッチフレーム22は、クラッチレバー21を支持する金属製の部材である。クラッチフレーム22は、クラッチ作動部材23の右側面に形成された嵌合凹部23b(
図4参照)に嵌合して、クラッチ作動部材23に一体に取り付けられている。クラッチフレーム22の後端部には、クラッチレバー21を支持するアーム部23aが設けられている。アーム部23aは、
図3Aに示すように、右フレーム2の後端部に形成された連通孔2bに沿って上下方向に移動可能である。
【0024】
クラッチ作動部材23は、スプール軸(ピニオン軸)を中心に回動可能な環状の回動体である。クラッチ作動部材23は、高い強度と耐磨耗性に優れた材料、例えば、ポリアセタール(POM)により形成されている。
クラッチ作動部材23は、ヨーク24と係合可能な一対のカム部23k,23k(
図4参照)を有している。カム部23k,23kは、クラッチ作動部材23の回動に伴ってヨーク24に係脱し、ヨーク24をピニオン軸に沿って移動させる。
【0025】
クラッチ作動部材23の後部には、
図3Bに示すように、周方向に延在する長孔27が形成されている。長孔27には、右フレーム2に突設された図示しないボス部(ピン)が係合しており、このボス部の係合により、クラッチ作動部材23の回動範囲が規定されている。ボス部には、クラッチフレーム22の右側方からネジ部材27aが螺合されている。
【0026】
そして、クラッチ作動部材23は、右フレーム2との間に介設された振り分けバネ部材28により、クラッチオン位置である駆動力伝達状態とクラッチオフ位置である駆動力遮断状態とに弾性的に振り分けられている。振り分けバネ部材28としては、トーションスプリングを用いている。
【0027】
ヨーク24は、クラッチ作動部材23の回動動作に連動してピニオン軸に沿う左右方向に移動する部材である。ヨーク24は、ピニオン12の図示しない円周溝に略180°に亘って嵌合するとともに、径方向に延出する一対の腕部24a,24aを有している。ヨーク24は、右フレーム2に突設された支持ピン25,25によって各腕部24a,24aが保持されており、各支持ピン25,25に配設された図示しないバネ部材によりクラッチ作動部材23に向けて常時付勢されている。
【0028】
第1復帰機構30は、前記のように、ハンドル(ハンドル軸7)の回転駆動力を利用してクラッチ機構20を駆動力伝達状態に復帰させる機構である。
第1復帰機構30は、クラッチ復帰用回転体としてのラチェット31と、第1キック部材32とを備えている。ラチェット31は、ハンドル軸7に回り止め固定されており、ハンドル軸7と一体に回転する。
【0029】
第1キック部材32は、側面視でピニオン12(ピニオン軸)の下方において右フレーム2の側面に配置されており、略長方形の板状を呈している。第1キック部材32は、一方の支持ピン25が挿通される長孔32aと、右フレーム2の側面に設けられた規制突起33が挿通される四角い規制孔32bと、ラチェット31に係合する係合部32cとを有している。係合部32cの近傍部位には、ラチェット31に向けて係合部32cを付勢するコイルバネ34(
図3A,
図3B参照)が取り付けられている。なお、
図4,
図11A~
図11Eでは、簡単のためコイルバネ34を省略している。
【0030】
第1キック部材32は、
図3Aに示した駆動力伝達状態において、クラッチ作動部材23の回動により押圧され、支持ピン25を支点として時計回り方向に回動した位置に配置される。これにより、駆動力伝達状態では、係合部32cがラチェット31から離脱した位置に配置される。
一方、第1キック部材32は、駆動力伝達状態から駆動力遮断状態に切り換えられると、
図3Bに示すように、係合部32cがラチェット31の回転軌道内に移動する。これにより、駆動力遮断状態においてハンドルを回転操作すると、第1キック部材32は、ラチェット31に当接して(キックされて)後方斜め上方に移動する。この移動によって、第1キック部材32の先端部32eがクラッチ作動部材23の凹部23j(
図4参照)に当接し、クラッチ作動部材23を時計回り方向に回動させる。これにより、クラッチ機構20が駆動力遮断状態から駆動力伝達状態に復帰される。なお、クラッチ機構20の復帰は、クラッチレバー21を押し上げ操作することによっても行うことが可能である。
【0031】
第2復帰機構40は、前記のように、電動モータ6の回転駆動力を利用してクラッチ機構20を駆動力伝達状態に復帰させる機構である。
第2復帰機構40は、
図3Aに示すように、復帰用歯車41と、クラッチ復帰用回転体として機能する係合歯車42と、第2キック部材43とを備えている。係合歯車42及び第2キック部材43は、スプール軸(ピニオン軸)と、復帰用減速機構6aの出力軸6b(
図3A参照、モータ軸)との間に配置されている。ここで、第2復帰機構40は、
図13に示すような制御手段としての制御部60の制御により駆動される。
【0032】
制御部60は、
図13に示すように、検出部61と、算出部62と、回転速度判定部63と、繰り出し量判定部64と、駆動制御部65と、を備えている。
検出部61は、クラッチ機構20が駆動力遮断状態にあるときに、これを検出する。検出部61には、クラッチ作動部材23の位置を検出する位置センサ66が接続されている。検出部61は、位置センサ66から検出信号を入力した場合に、クラッチ機構20が駆動力遮断状態にあることを検出し、その検出信号を駆動制御部65に出力する。位置センサ66は、例えば、右フレーム2側に設けられる磁気センサと、クラッチ作動部材23側に設けられる磁石とから構成することができる。
【0033】
算出部62は、釣糸の繰り出しに伴うスプール5の回転速度を算出するとともに、釣糸の繰り出し量を算出する。算出部62には、スプール5の回転を検出する回転検出センサ67が接続されている。算出部62は、回転検出センサ67から入力したスプール5の回転の信号に基づいてスプール5の回転速度を算出し、算出した値を回転速度判定部63に出力する。また、算出部62は、算出したスプール5の回転速度に基づいて釣糸の繰り出し量を算出し、算出した値を繰り出し量判定部64に出力する。
【0034】
回転速度判定部63は、算出部62により算出されたスプール5の回転速度の値が予め設定された所定の条件を満たしているか否かを判定する。そして、回転速度判定部63は、スプール5の回転速度の値が予め設定された所定の条件を満たしていると判定した場合に、その判定結果を駆動制御部65に出力する。なお、スプール5の回転速度における所定の条件は、カウンターケース4(
図1参照)に備わる機能を選択して適宜設定することが可能である。
【0035】
繰り出し量判定部64は、算出部62により算出された釣糸の繰り出し量が予め設定された釣糸の繰り出し量に達したか否かを判定する。そして、繰り出し量判定部64は、算出された釣糸の繰り出し量の値が予め設定された釣糸の繰り出し量に達したと判定した場合に、その判定結果を駆動制御部65に出力する。なお、釣糸の繰り出し量の設定(例えば、スプール5の回転を停止させて所定の棚(水深)で仕掛けを停止させる設定等)は、カウンターケース4(
図1参照)に備わる機能を選択して適宜行うことが可能である。
【0036】
駆動制御部65は、電動モータ6を正転方向または逆転方向に駆動制御する。駆動制御部65は、検出部61によりクラッチ機構20が駆動力遮断状態にあることが検出され、かつ、回転速度判定部63によりスプール5の回転速度が所定の条件を満たしていると判定された場合、もしくは繰り出し量判定部64により釣糸の繰り出し量が予め設定された釣糸の繰り出し量に達したと判定された場合に、電動モータ6を逆転方向に駆動制御する。すなわち、駆動制御部65は、通常の巻き取り制御の他、クラッチ機構20を駆動力遮断状態から駆動力伝達状態に復帰させる復帰制御機能を有している。
【0037】
次に、第2復帰機構40の各構成部品について詳細に説明する。
第2復帰機構40の復帰用歯車41は、
図3A,
図3Bに示すように、電動モータ6に接続された復帰用減速機構6aの出力軸6bに取り付けられており、制御部60の駆動制御により電動モータ6が逆回転で駆動された際に、時計回り方向に回転するように構成されている。なお、復帰用歯車41は、復帰用減速機構6aや、これとは別構成で組み込まれた一方向クラッチにより、反時計回り方向に回転しないようになっている。
【0038】
係合歯車42は、復帰用歯車41に噛合しており、復帰用歯車41の回転駆動力を受けて第2キック部材43を下方へ押す(駆動力遮断状態から駆動力伝達状態に復帰させる)作用をなす。第2キック部材43は、駆動力遮断状態にされたクラッチ作動部材23を駆動力伝達状態に復帰させるための部材である。第2キック部材43は、クラッチ作動部材23の回動に連動して回動することにより、係合歯車42に係脱するように構成されている。第2キック部材43は、ハンドル軸7を右フレーム2に固定するための固定プレート50に抜け止め保持されている。第2キック部材43は、強度を有し、耐摩耗性に優れたステンレス鋼材により形成されている。
【0039】
係合歯車42は、
図5Aに示すように、歯車本体421と、歯車本体421に回動可能に組み付けられた爪部426とを備えている。
【0040】
歯車本体421は、
図5A,
図5Bに示すように、円筒状の基部422と、基部422の右側部に一体に形成された歯部423とを備えている。基部422は、復帰用減速機構6aの出力軸6b(
図3A参照)に回り止め固定されている。基部422の内側には、
図5Bに示すように、爪部426の挿入部427が挿入される段付き円筒状の内面部422aが形成されている。また、基部422の内側には、
図5Cに示すように、径方向内側に向けて突出する突出部422bが形成されている。突出部422bは、断面略三角形状を呈しており、基部422の内面の周方向に90度の間隔を空けて、計4つ形成されている。隣合う突出部422b同士の間には、爪部426の回動を確保するための回動空間部422eが形成されている。各突出部422bは、軸方向に延在する直角面422cと、軸方向に延在する傾斜面422dとを備え、各頂点部分で爪部426の挿入部427を回動可能に支持している。
【0041】
爪部426は、
図5Bに示すように、基部422の内面部422aに挿入される円筒状の挿入部427と、挿入部427の左側に連続する略円筒状の大径部428とを備えている。大径部428の右側部とこれに対向する基部422の左側部との間には、隙間部424が形成されており、バネ部材425が配置されている。バネ部材425は、基部422に対して爪部426を反時計回り方向(
図5Cの矢印X1方向)に付勢する付勢部材として機能している。大径部428の外周面には、周方向に180度の間隔を空けて2つの係合爪429,429(一方のみ図示)が突出形成されている。各係合爪429は、径方向に略直角に立ち上がる係合面429aを備えている(
図12参照)。
【0042】
爪部426の挿入部427の外周面には、
図5Cに示すように、径方向外側に向けて突出する規制突部426aが形成されている。規制突部426aは、断面略四角形状を呈しており、挿入部427の外周面の周方向に90度の間隔を空けて、計4つ形成されている。各規制突部426aは、基部422の各回動空間部422eに配置されており、隣合う突出部422b,422bの直角面422cと傾斜面422dとで周方向に仕切られる範囲内(回動空間部422eの周方向の大きさの範囲内)でバネ部材425の付勢力に抗して時計回り方向(
図5Dの矢印X2参照)に回動可能である。つまり、爪部426の係合爪429は、係合歯車42の回転方向に移動した第1の位置(
図5Cに示す位置)と、これとは逆方向に移動した第2の位置(
図5Dに示す位置)とを取り得るように構成されており、バネ部材425の付勢力により第2の位置から第1の位置に向けて付勢された構成となっている。各規制突部426aの回動角度は、
図5Dに示すように、傾斜面422dと、これに対向する規制突部426aの対向面とにより規定される角度θ1で表される。角度θ1は、第2キック部材43が係合歯車42の大径部428に当接する際の後記する摺動距離L1(
図12参照)を許容する大きさに設定されている。
【0043】
第2キック部材43は、
図8(a)(b)に示すように、回動支持部431と、回動支持部431から後方に延在するバネ係止部437と、回動支持部431から上方に延在する係合突部433と、回動支持部431から前方下方へ延在するガイド部435とを備えている。
【0044】
回動支持部431の中央部には、クラッチ作動部材23の回動支軸23d(
図7参照)が挿通される支持孔432が形成されている。バネ係止部437の後端部には、係止穴438が形成されている。係合突部433は、係合歯車42の係合爪429に当接する部分であり、先端部に当接部434を備えている。当接部434は、係合突部433の上端部を左方へ略直角に折り曲げることにより形成されている。当接部434は、
図8(b)に示すように、支持孔432に対して側面視で幾分前側に配置されている。ガイド部435は、側面視で略U字形状に湾曲して後下方に先端部が向いている。ガイド部435の先端部には、ガイド突部436が設けられている。ガイド突部436は、ガイド部435の先端部を右方へ略直角に折り曲げることにより形成されている。
【0045】
第2キック部材43は、
図4に示すように、クラッチ作動部材23の前端部23cに取り付けられている。前端部23cは、
図7に示すように、側面視で略四角形の平板状を呈しており、クラッチ作動部材23の前方へ向けて延在している。前端部23cの前側下部には、第2キック部材43が配置される取付座23eが形成されている。取付座23eの外郭は、第2キック部材43の回動支持部431の円形状に対応して円形に形成されている。取付座23eには、第2キック部材43の支持孔432に挿通される回動支軸23dが突設されている。
【0046】
一方、前端部23cの前側上部には、第2キック部材43を直立した姿勢(当接部434が直上を向く姿勢)に保持する保持突部23fが形成されている。保持突部23fは、前端部23cの右側方に向けて突出しており、第2キック部材43の係合突部433の後部に当接して第2キック部材43の姿勢を保持している。
【0047】
前端部23cの後部には、係止穴23gが形成されている。係止穴23gには、第2キック部材43に接続されるバネ部材29の後端部が係止されている。バネ部材29の後端部は、右側方から係止穴23gに対して挿入されており、右側方から固定プレート50の後部52の上部52aに覆われて、抜け止め保持されている。
バネ部材29は、係合歯車42に対する第2キック部材43係脱を弾性的に振り分ける振り分けバネとして機能する。本実施形態では、バネ部材29としてトーションスプリングを用いている。第2キック部材43は、クラッチ機構20の駆動力伝達状態において、バネ部材29により、保持突部23fに係合突部433が当接した非係合状態に振り分け保持される。また、第2キック部材43は、クラッチ機構20の駆動力遮断状態において、バネ部材29により、係合歯車42の爪部426に当接して係合爪429に係合可能となる係合状態に振り分け保持される。
【0048】
固定プレート50は、前記したように、主としてハンドル軸7を右フレーム2に固定する機能、及び第2キック部材43を抜け止め保持する機能の2つの機能を有している。また、固定プレート50は、クラッチ作動部材23の前部側の一部を覆っており、クラッチ作動部材23の前部側を保持する機能も併せ備えている。固定プレート50は、第2キック部材43と同様に、強度を有し、耐摩耗性に優れたステンレス鋼材により形成されている。
【0049】
固定プレート50は、
図6(a)(b)に示すように、中央部51と、中央部51の後側に連続する後部52と、中央部51の前側に連続する前部53とを備えている。後部52と前部53との間には、側面視略U字形状の上下方向に延在する溝部56が形成されている。ハンドル軸7は、溝部56の下端部を通じて固定プレート50の内側に挿通され、右フレーム2(
図2参照)に取り付けられている。
ここで、ハンドル軸7には、不図示の一方向クラッチや、
図10に示すような、公知のドラグ機構7aが配設されている。ドラグ機構7aは、魚釣時にスプール5から釣糸が繰り出された際にスプール5の回転にドラグ力を付与する。なお、リール本体1とハンドルとの間には、ドラグ機構7aによるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグ)が設けられている。ドラグ機構7aは、ドライブギャ11の凹所11b内に配設される複数の制動部材(摩擦板、ワッシャ等)7bを備えている。ドラグ機構7aは、ドラグ調整ノブを回転操作することで、制動部材7bに対する押圧部材7cの押圧力が調整され、ハンドル軸7との間でドライブギャ11の回転摩擦力(ドラグ力)が調整される機能を有している。
【0050】
固定プレート50の後部52は、
図4,
図6(a)(b)に示すように、クラッチ作動部材23の前部の一部を覆っており、クラッチ作動部材23の前部を回動自在に保持している。後部52の上部52aは、クラッチ作動部材23の前端部23cの係止穴23gを覆うように上方に延在しており、クラッチ作動部材23の回動全般に亘ってバネ部材29の後端部を抜け止め保持している。後部52の下部には、後方に向けて延在する延在部52bが形成されている。延在部52bは、
図4に示すように、第1キック部材32の一部を覆うように延在しており、右側方から第1キック部材32に当接して第1キック部材32を支持している。
【0051】
固定プレート50の前部53は、
図4,
図6(a)(b)に示すように、溝部56を挟んで後部52に対向しており、上下方向に開口する略三角形状のガイド孔55を備えている。ガイド孔55は、係合歯車42の係合爪429に対する第2キック部材43の回動位置を規制する規制孔として機能するものである。ガイド孔55内には、第2キック部材43のガイド突部436が挿入されている。前部53の上部53aは、クラッチ作動部材23の回動に伴う第2キック部材43の移動全般に亘って、回動支軸23d(第2キック部材43の回動支持部431)を保持している。
【0052】
また、前部53の下部には、コイルバネ34(
図3A参照)の前端部が取り付けられる取付部54が設けられている。
【0053】
ガイド孔55は、
図9に示すように、上縁部55aと、上縁部55aの前側に連続する前側上縁部55bと、前側上縁部55bの下側に連続する前側下縁部55cと、前側下縁部55cの下側に連続する下縁部55dと、下縁部55dの後側に連続する後側下縁部55eと、後側下縁部55eの上側に連続し上縁部55aの後側に接続される後側上縁部55fとを備えている。上縁部55aと下縁部55dとは、相互に略平行である。前側上縁部55bは、上縁部55aの前端部から前下方へ向けて傾斜している。前側下縁部55cは、前側上縁部55bの下端部から後下方へ向けて傾斜しており、全体が前方へ向けて緩やかな弧状に凹んでいる。後側下縁部55eは、下縁部55dの後端部から前上方へ向けて傾斜している。後側上縁部55fは、後側下縁部55eの上端部から後上方へ向けて傾斜し、上縁部55aの後端部に繋がっている。
【0054】
次に、第2キック部材43のガイド突部436とガイド孔55の各縁部との位置関係について、
図9を参照しつつ、
図4,
図11A~
図11Eを参照して説明する。
図4に示すように、クラッチ機構20がクラッチオン位置(駆動力伝達状態)とされている場合には、
図9に示すように、ガイド突部436がガイド孔55の下部領域となる、前側下縁部55cと下縁部55dと後側下縁部55eで囲まれる領域内となる第1位置P1に配置されている。
【0055】
この状態から、
図11Aに示すように、クラッチ機構20のクラッチレバー21を手指で押し下げると、クラッチ作動部材23が回動軸O1を中心として反時計回り方向に回動し、第2キック部材43が
図4の位置から上方に移動する。このとき、
図9に示すように、第2キック部材43のガイド突部436は、ガイド孔55の前側下縁部55cの下端位置から前側下縁部55cに沿って上動し、前側上縁部55bの下端部近傍に当接する第2位置P2に移動する。なお、第2キック部材43の係合突部433は、クラッチ作動部材23の前端部23cの保持突部23fに当接したままの状態を維持している。
【0056】
そして、クラッチレバー21を続けて押し下げると、
図11Bに示すように、クラッチ機構20が振り分けバネ部材28のデットポイントを越えて反時計回り方向に回動する。このとき、
図9に示すように、第2キック部材43のガイド突部436は、第2位置P2から前側上縁部55bの上端部近傍の第3位置P3に移動する。この移動に伴い、第2キック部材43は、
図11Bに示すように、回動支軸23dを中心として時計回り方向に回動し、バネ部材29によるデッドポイントに達する。これにより、第2キック部材43の係合突部433は、保持突部23fから離れて直立した姿勢をとる。
【0057】
その後、クラッチレバー21をさらに押し下げると、
図11Cに示すように、クラッチ機構20が駆動力遮断状態にされる。このとき、
図9に示すように、第2キック部材43のガイド突部436は、第3位置P3から上縁部55aに沿って移動し、その後、上縁部55aと後側上縁部55fとの隅部(角部)近傍となる第4位置P4に移動する。この移動に伴い、第2キック部材43は、
図11Cに示すように、デッドポイントを越えて時計回り方向に速やかに回動する。これにより、駆動力遮断状態において、第2キック部材43の係合突部433は、復帰用歯車41の大径部428の外周面に当接する状態(係合爪429に係合可能な状態)となる。
【0058】
ここで、第2キック部材43は、クラッチ作動部材23の回動に伴って上方向に移動しながら係合歯車42に向けて回動するように構成されている。これにより、係合歯車42の大径部428に係合突部433が当接する際には、大径部428の外周面上を上方向に摺動しながら接するようになっている。
【0059】
次に、駆動力遮断状態から駆動力伝達状態への復帰時の動作について説明する。駆動力遮断状態において制御部60の駆動制御により電動モータ6が逆回転で駆動されると、復帰用歯車41を介して係合歯車42が反時計回り方向に回転する。そうすると、
図11Dに示すように、復帰用歯車41の大径部428上にある第2キック部材43の係合突部433に対して係合爪429が当接し、その後、
図11Eに示すように、係合爪429が第2キック部材43を押し下げる。このとき、
図9に示すように、第2キック部材43のガイド突部436は、第4位置P4から後側上縁部55f及び後側下縁部55eに沿って下方へ移動し、第1位置P1に戻される。この移動により、第2キック部材43がクラッチ作動部材23の前端部23cを下方へ押し、クラッチ作動部材23を時計回り方向に回動させる。このクラッチ作動部材23の回動によって、クラッチ機構20が駆動力遮断状態から駆動力伝達状態に復帰される。
【0060】
次に、係合突部433が大径部428に当接する際の摺動時に、係合爪429が係合突部433に干渉する位置関係にある場合の作用について、
図12を参照して説明する。
図12において、符号PT1は、第2キック部材43の係合突部433が係合歯車42の大径部428に当接した初期当接位置を示し、符号PT2は、係合突部433が大径部428の外周面上を摺動した後の摺動後位置を示し、符号L1は、その摺動距離を示している。なお、係合歯車42の係合爪429は、周方向の任意の位置に停止するようになっており、停止位置の制御は行われないようになっている。
図12は係合突部433の初期当接位置PT1の摺動方向の側方に、破線で示した係合爪429が位置している場合を示している。
【0061】
図12に示すように、第2キック部材43の係合突部433は、大径部428の外周面の初期当接位置PT1において大径部428の外周面に当接し、その後、摺動距離L1を移動して摺動後位置PT2に至る。この移動の過程において、係合突部433は、係合爪429に当接し、係合爪429を時計回り方向に押圧する。そうすると、大径部428がバネ部材425の付勢力に抗して時計回り方向に回動し、係合突部433の摺動を許容する。これにより、摺動方向に係合爪429が位置している場合にも係合爪429が邪魔になることがなくなり、係合爪429に対して係合突部433が好適に係合するようになる。
【0062】
以上説明した本実施形態によれば、固定プレート50を利用して第2キック部材43の移動の案内及び規制を行うことができるので、別途、規制部を設ける必要がなくなり、構成が簡単になる。また、右フレーム2側に規制部を設ける必要がなくなるので、その分、省スペース化を図ることができる。したがって、小型化及び軽量化を図ることができる。
【0063】
また、右フレーム2側に規制部を設けた場合には、クラッチ動作の繰り返しによる摩耗を防止するために、すべり性を向上させる部材や、表面処理を別途施す必要があるため、コスト高となるおそれがある。これに対し、本実施形態では、固定プレート50を兼用して第2キック部材43の移動の案内及び規制を行うことができるので、部品点数の増加を招くことなくコスト低減を図ることができる。また、部品構成上、ステンレス鋼材同士の摺動になるため、表面処理の劣化による環境性能の低下が生じることもない。
また、固定プレート50と第2キック部材43とがステンレス鋼材で構成されているので、摺動抵抗の低減を図ることができ、クラッチ機構20の操作性の向上を図ることができる。
【0064】
また、固定プレート50により、バネ部材29の脱落を防止できるので、第2キック部材43の移動が好適に維持される。
【0065】
また、第2キック部材43は、右フレーム2と固定プレート50との間に配置されているので、リール本体1に対する構成部品の組付時に、右フレーム2上に第2キック部材43を配置し、その上から固定プレート50を取り付けることにより、右フレーム2と固定プレート50との間に第2キック部材43を簡単に保持できる。したがって、組み立て作業が簡単である。
【0066】
【0067】
本実施形態の魚釣用電動リール100Aが前記第1実施形態と異なるところは、固定プレート50Aが第1キック部材32の移動を案内及び規制する規制部を兼ね備えている点にある。以下の説明において、第1実施形態と同様の部分には同様の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、
図14,
図15,
図16B~
図16Dでは、簡単のためコイルバネ34を省略している。
【0068】
図14は魚釣用電動リールの右側部の主要構造を示した分解斜視図、
図15は魚釣用電動リールの右側部の構造を示した斜視図である。
図14,
図15に示すように、魚釣用電動リール100Aは、右フレーム2上に復帰機構として第1復帰機構30だけが設けられており、第1実施形態で説明した第2復帰機構40を備えていない構成となっている。なお、本実施形態の固定プレート50Aは、第1実施形態の固定プレート50の形状の一部を変更したものである。
【0069】
固定プレート50Aは、
図15に示すように、延在部52bの下端部が右フレーム2に向けて折曲形成された折曲部57を有している。折曲部57の後端部には、右フレーム2に向けて段状に延在する段付き延在部58が形成されている。段付き延在部58は、第1キック部材32の四角い規制孔32bに対向しており、規制孔32b内に挿入されている。段付き延在部58は、第1キック部材32の移動を案内及び規制する規制部として機能する。
【0070】
第1キック部材32は、
図16Aに示した駆動力伝達状態において、クラッチ作動部材23の回動により押圧され、支持ピン25(
図15参照)を支点として時計回り方向に回動するとともに、段付き延在部58で規制された位置に配置されている。これにより、駆動力伝達状態では、係合部32cがラチェット31から離脱した状態に保持される。
【0071】
一方、第1キック部材32は、駆動力伝達状態から駆動力遮断状態に切り換えられると、
図16Bに示すように、係合部32cがラチェット31の回転軌道内に移動されるように、段付き延在部58により案内及び規制される。この状態で、ハンドルを回転操作すると、第1キック部材32の係合部32cが、ラチェット31に当接して(キックされて)、
図16Cに示すように、後方斜め上方に移動する。この移動により、第1キック部材32の先端部32eがクラッチ作動部材23の凹部23jに当接し、その結果、クラッチ作動部材23が時計回り方向に回動される。この場合にも、第1キック部材32の移動が段付き延在部58で案内及び規制される。
【0072】
その後、
図16Dに示すように、第1キック部材32の先端部32eがクラッチ作動部材23の凹部23jを後方斜め上方にさらに押すことで、クラッチ機構20が駆動力遮断状態から駆動力伝達状態に復帰される。この場合にも、第1キック部材32の移動が段付き延在部58で案内及び規制される。
【0073】
なお、クラッチ作動部材23には、切換部材23mが連結されている。切換部材23mは、クラッチ作動部材23の回動に連動して右側板3に出没する部材である。切換部材23mは、駆動力伝達状態において右側板3に略面一となり、駆動力遮断状態において右側板3から突出するように構成されている。そして、切換部材23mは、右側板3に突出した状態から右側板3に向けて押し込まれるように操作されることで、クラッチ作動部材23を時計回り方向に回動させ、クラッチ機構20を駆動力遮断状態から駆動力伝達状態に復帰させることが可能となっている。
【0074】
以上説明した本実施形態によれば、固定プレート50Aを利用して第1キック部材32の移動の案内及び規制を行うことができるので、別途、規制部を設ける必要がなくなり、構成が簡単になる。また、右フレーム2側に規制部を設ける必要がなくなるので、その分、省スペース化を図ることができる。したがって、小型化及び軽量化を図ることができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、前記各実施形態では、魚釣用電動リール100,100Aに本発明を適用したものを示したがこれに限られることはなく、電動モータ6を有さない両軸受け型の魚釣用リールに対して本発明を適用してもよい。この場合、第2復帰機構40は、ハンドルの回転操作による駆動力を受けて復帰するように構成してもよい。
【0076】
また、前記各実施形態では、固定プレート50に設けたガイド孔55により規制部を構成したが、これに限られることはなく、固定プレート50の縁部等を利用して第2キック部材43をガイドするように構成してもよい。また、固定プレート50は、1枚の板で構成したものを示したが、複数枚の板を組み合わせて構成してもよい。
【0077】
また、第2キック部材43は、右フレーム2と固定プレート50との間に配置されたものに限られることはなく、固定プレート50から外れた位置に配置されていてもよい。
【0078】
また、固定プレート50は、振り分けバネ部材28を抜け止め保持する構成としたが、これに限られることはなく、振り分けバネ部材28を露出させて小型化を図ってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 リール本体
2 フレーム
3 側板
5 スプール
6 電動モータ
7 ハンドル軸
20 クラッチ機構
21 クラッチレバー
23 クラッチ作動部材
30 第1復帰機構(復帰機構)
31 ラチェット(クラッチ復帰用回転体)
32 第1キック部材(キック部材)
40 第2復帰機構(復帰機構)
42 係合歯車(クラッチ復帰用回転体)
43 第2キック部材
50,50A 固定プレート
55 ガイド孔(規制部)
58 段付き延在部(規制部)
100,100A 魚釣用電動リール(魚釣用リール)