IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山口 千尋の特許一覧

<>
  • 特開-紐靴 図1
  • 特開-紐靴 図2
  • 特開-紐靴 図3
  • 特開-紐靴 図4
  • 特開-紐靴 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163087
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】紐靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20231101BHJP
   B29D 35/00 20100101ALI20231101BHJP
   A43B 23/07 20060101ALI20231101BHJP
   A43D 100/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A43B23/02 109
B29D35/00
A43B23/07
A43D100/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073914
(22)【出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】519016480
【氏名又は名称】山口 千尋
(74)【代理人】
【識別番号】100073689
【弁理士】
【氏名又は名称】築山 正由
(72)【発明者】
【氏名】山口千尋
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC20
4F050BC36
4F050BC38
4F050BC47
4F050BC48
4F050HA01
4F050HA05
4F050KA04
4F050MA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】羽根を紐で締めるのと変わらない着用感を維持しつつ、従来の舌革を持つ紐靴の着用時のフィット感の損失を防ぐことが可能な紐靴を提供すること。
【解決手段】本発明に係る紐靴100は、靴底10及び表革22と裏革23より成るアッパー20を備え、前記アッパー20に履き口101が形成された紐靴100において、腰革24と爪先革21との間に連設され、複数の孔26を備えた、表革22の構成要素である紐挿通革25を設けると共に、該紐挿通革25と裏革23を履き口101近傍でのみ縫合し、裏革23と紐挿通革25との間に空洞部を設けて構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底及び表革と裏革より成るアッパーを備え、前記アッパーに履き口が形成された紐靴において、
靴底及び表革と裏革より成るアッパーを備え、前記アッパーに履き口が形成された紐靴において、腰革と爪先革との間に連設され、複数の孔を備えた、表革の構成要素である紐挿通革を設けると共に、紐挿通革と裏革を履き口近傍でのみ縫合したこと、
裏革と紐挿通革との間に空洞部を設けたこと、
を特徴とする紐靴。
【請求項2】
細長方形状の革材にハトメを取り付けた部材を、該ハトメが孔に重なる態様で紐挿通革に取り付けた請求項1に記載の紐靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紐靴に関し、より詳しくは舌革や羽根を有する紐靴と変わらない着用感を備えた紐靴に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示される一般的な紐靴1はアッパー5の甲部に設けた一対の羽根3,3に紐2を挿通し、紐2を緩めることでで靴の脱着を容易にしつつ、着用時には紐2を締めることにより足甲部から踵部の遊びを確実に抑え靴が脱げることを抑制するものである。
【0003】
この紐靴1は紐2を通す一対の羽根3,3の下に、舌革4と呼ばれる別のパーツが備えられ、この舌革4により汚れの侵入や、紐2が直接足に接触することを防いでいる。
【0004】
特許文献1に記載の靴においては、アッパーと舌革の継ぎ目をなくすことで履き心地の改良を図った紐靴が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-195925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の羽根と舌革が重なっている甲部は、靴が厚く硬くなる為、甲高の人は楔状骨が圧迫されたり、舌革の材料厚により生まれる段差が、着用時のフィット感を損なっている。
【0007】
靴甲部を羽根でなく舌革のみの構造で纏められたいわゆるスリップオン式の靴は、上記羽根を有する紐靴の持つ欠点を補っているが、着用時には脱げやすかったり、足へのサポート性に劣る欠点がある。
【0008】
そこで本発明は羽根を紐で締めるのと変わらない着用感を維持しつつ、従来の舌革を持つ紐靴の着用時のフィット感の損失を防ぐことが可能な紐靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明の構成は以下の通りである。
【0010】
(1) 請求項1に記載の紐靴は、靴底及び表革と裏革より成るアッパーを備え、前記アッパーに履き口が形成された紐靴において、腰革と爪先革との間に連設され、複数の孔を備えた、表革の構成要素である紐挿通革を設けると共に、該紐挿通革と裏革を履き口近傍でのみ縫合し、裏革と紐挿通革との間に空洞部を設けて構成される。
【0011】
(2) 請求項2に記載の紐靴は 請求項1記載の発明において、細長方形状の革材にハトメを取り付けた部材を紐挿通革に、該ハトメが孔に重なる態様で取り付けて構成した。
【発明の効果】
【0012】
図1に示されるように、本発明に係る紐靴100の履き口101の爪先側に存する紐挿通革25には孔26が複数設けられており、この孔26に紐30が挿通され、この紐30を締めることで靴を着用するものである。
【0013】
この紐挿通革25と裏革23との間には空洞部が存在し、この空洞部に紐30が挿通されている。したがって紐30を締めると紐挿通革25が縮まり、足甲部から踵部の遊びが抑えられ、着用者の足にフィットするものである。また、紐挿通革25と裏革23は履き口101の近傍でのみ縫合されていることから、紐挿通革25を紐30で締めても、裏革23にしわが寄ることはなく、着用者に違和感を与えることは無いものである。
【0014】
かように本発明に係る紐靴100は、舌革が存在しなくとも、靴紐30が着用者の足に当接することはない。しかも上記従来の紐靴1のように舌革4と羽根3の二重構造を備えないものであることから、当該二重に重なる部分で靴が厚くなることもない。すなわち、甲高の人は楔状骨が圧迫されたり、舌革の材料厚により生まれる段差が、着用時のフィット感を損なうということもない。
【0015】
かように本発明によれば、羽根を紐で締めるのと変わらない着用感を維持しつつ、従来の舌革を持つ紐靴の着用時のフィット感の損失を防ぐことが可能な紐靴を提供することが可能となるのである。
【0016】
請求項2に記載の発明においては、図2に示すように細長方形状の革材40にハトメ41を取り付けた部材を、紐挿通革25に該ハトメ41が孔26に重なる態様で取り付けて構成した。ハトメ41により孔26が補強され、紐30の締緩に伴う孔26の損傷を可及的に抑制することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る紐靴の斜視図
図2】紐挿通革の裏面図
図3】裏革の裏面図
図4】従来例に係る裏革の裏面図
図5】従来例に係る紐靴の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好ましい発明の実施形態につき、図面を参照しながら概説する。 なお、本発明構成要素の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採りうる。また、図中Fは前方向、Bは後方向、Rは左方向、Lは右方向を、Uは上方向は、Dは下方向を指すものである
図1は、本発明の実施形態による紐靴100の一実施例を示した斜視図である。図中に示した紐靴100は、合成樹脂を成型加工した靴底10と、皮革を縫合して形成されたアッパー20とにより構成される。
【0019】
靴底10は、紐靴100の底部に設けられ着用時に地面に接し、着用者の体重を支える部材である。また、靴底10は、略平面形状からなり、必要に応じて踵部分を底上げするためのヒールリフト11が下面に取り付けられている。靴底10は、適度な衝撃吸収性を備える一方、使用者の体重を支える必要があるため、容易に塑性変形しない丈夫な素材が用いられる。
【0020】
アッパー20は、靴底10の上部に設けられ、足の全周及び甲上面を覆う部材である。アッパー20は、複数枚の皮革を縫合することにより形成される。ここでいう皮革は、天然皮革又は合成皮革のいずれであってもよい。アッパー20は、足の形状にフィットさせる必要があり、柔軟性を有する素材からなる。
【0021】
アッパー20は、外側の表革22及び内側の裏革23が縫合されて形成される。また、アッパー20は、爪先革21、腰革24及び両者の間に存する紐挿通革25により構成される。
【0022】
爪先革21は、甲皮20の先端部分に配置される皮革片であり、爪先革21の後端は、左右の側面部分まで延びる形状を有する。
【0023】
腰革24は、紐挿通革25よりも後方に配置される皮革片であり、左右の両側面から踵の後方を回り込み、踵全体を覆う形状からなる。腰革24の前端は、紐挿通革25と縫合される。
【0024】
図2に示されるように、紐挿通革25はその上端が履き口101に対応した湾曲形状を呈する皮革片である。該湾曲形状を呈する部分は図1に示すように履き口101に沿うよう配置され、その後端は腰革24と縫合されると共に前端は爪先革21と縫合される。
【0025】
なお、紐挿通孔25と裏革23とは履き口101の近傍でのみ縫合されている。具体的には図1における破線で示される縫合ラインAでのみ縫合されている。係る構造とすることで紐挿通革25は裏革23から浮いた状態となり、両者の間に空洞部が形成されると共に、紐挿通革25を紐30で締めた際の皺が裏革23に及ぶことを抑制することが可能となるのである。
【0026】
請求項2に記載の発明においては、図2に示すように細長方形状の革材40にハトメ41を取り付けた部材を、紐挿通革25に、該ハトメ41が孔26に重なる態様で取り付けられている。この革材40は、裏革23と対向する側に取り付けられるものである。
【0027】
履き口101は、足を出し入れするための開口である。履き口101は、前方に配置された紐挿通革25と、両側方及び後方に配置された腰革24により形成される。トップライン102は、履き口101の縁部に相当する腰革24及び紐挿通革25の上端である。トップライン32は、足の両側方から足の後方を回り込む形状からなり、踝(くるぶし)との干渉を避けるように、両側方部分において緩やかなカーブを描く曲線からなり、踝付近が低くなっている。
【0028】
腰革24及び爪先革21は、外側に配置された表革22と、内側に配置された裏革23とを重ね合わせるように結合して構成される。表革22及び裏革23は、糸を用いて縫合されると共に、接着剤を用いて貼り合わされる。
【0029】
図3はアッパー20を形成する裏革24を裏面側、つまり靴底に取り付ける側から見た状態を示すものである。上部の履き口側の革材23aと、下部の爪先側の革材23bを縫合して形成されるものである。本発明に係る紐靴100は舌革を有しないものであることから、裏革23には舌革は設けられていない。一方、図4に示される従来例に係る紐靴1の裏革6には、舌革4が設けられるものである。
【符号の説明】
【0030】
100・・紐靴
10・・靴底
11・・ヒールリフト
20・・アッパー
21・・爪先革
22・・表革
23・・裏革
24・・腰革
25・・紐挿通革
26・・孔
30・・紐
40・・革材
41・・ハトメ
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-05-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底及び表革と裏革より成るアッパーを備え、前記アッパーに履き口が形成された紐靴において、
腰革と爪先革との間に連設され、複数の孔を備えた、表革の構成要素である紐挿通革を設けると共に、紐挿通革と裏革を履き口近傍でのみ縫合したこと、
裏革と紐挿通革との間に空洞部を設けたこと、
を特徴とする紐靴。
【請求項2】
細長方形状の革材にハトメを取り付けた部材を、該ハトメが孔に重なる態様で紐挿通革に取り付けた請求項1に記載の紐靴。