(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163089
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】畑用被覆シートの剥ぎ取り装置
(51)【国際特許分類】
A01G 13/00 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
A01G13/00 302B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022077254
(22)【出願日】2022-04-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】596016937
【氏名又は名称】株式会社苫米地技研工業
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】苫米地 力
(57)【要約】
【課題】被覆シートの巻き取り装置において、広幅で作物の茎がシートから突出して残っている場合や、畦の両端を抑えている盛土が一冬を超えて固く締まっている場合は従来のものでは被覆シートが引きちぎられて作業が中断することあった。
【解決手段】トラクタに連結され、該トラクタの出力によって回転駆動される被覆シート巻き取りリールと、前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを平行上に畝と同幅に配置した枠体とを備えた畑用被覆シートの剥ぎ取り装置において、枠体の前方に畦の両端部に対応した被覆シートの裾上げ部材を配設するとともに前記巻き取りリールの回転を油圧制御機器によって可変して、トラクタの進行速度と巻き取りリールの巻き取り速度とを同一にたことを特徴とする畑用被覆シートの剥ぎ取り装置であり、また、前記畦に敷設した畑用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記被覆シートの誘導角度を側面視で20ないし45度の鋭角に設定してなる畑用被覆シートの剥ぎ取り装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに連結され、該トラクタの出力によって回転駆動される被覆シート巻き取りリールと、前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを平行上に畝と同幅に配置した枠体とを備えた畑用被覆シートの剥ぎ取り装置において、枠体の前方に畦の両端部に対応した被覆シートの裾上げ部材を配設するとともに前記巻き取りリールの回転を油圧制御機器によって可変して、トラクタの進行速度と巻き取りリールの巻き取り速度とを同一にしたことを特徴とする畑用被覆シートの剥ぎ取り装置。
【請求項2】
畦に敷設した畑用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラは前記被覆シートの誘導角度を側面視で20ないし45度の鋭角に設定してなる請求項1に記載した畑用被覆シートの剥ぎ取り装置。
【請求項3】
被覆シートを埋設した畦両端部の裾上げ部材の下端は畝の中心部に向けて対に屈曲され、屈曲面の下端は進行方向に向けて傾斜角を有してなることを特徴とした請求項2に記載した畑用被覆シートの剥ぎ取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
畑地などに形成する畝にマルチシートを覆って作物を栽培する方法において、育成、収穫に応じてシートをはぎ取る必要がある。本発明は、にんにく畦等の広幅の被覆シートをトラクタに連結してスムーズな連続作業により剥ぎ取る畑用被覆シートのはぎ取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畑地などの畝に被覆するマルチシ-ト(以下、被覆シートという。)は長い帯状に形成されており、その使用に当ってはその両側縁を盛土によって押え、風による飛散の防止、雨水の影響や水分の蒸発を防ぎ、畦の温度を保持するためのものである。一般に収穫前に茎葉を切断した後に被覆シートを、はぎ取り装置によって引っ張ればシート上面の覆土が滑り落ちるので、そのまま容易にシートを回収できる。例えば特許3433289号の被覆シートの巻き取り装置においては巻き取りリールの直前には被覆シートの剥離抵抗力の大小に応じてバネ調整を図り引っ張り力の均一化調整をしている。
【先行技術文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した特許3433289号の被覆シートの巻き取り装置においては巻き取りリールの直前に引っ張りコイルバネによる回動部材が被覆シートの抵抗力の大小の吸収調整を図り剥離力の調整をして被覆シートの破損を防止している。しかしながらニンニク栽培等のように広幅の作物の茎がシートから突出して残っている場合や、畑の畦の両端を抑えている盛土が一冬を超えて固く締まっている場合やトラクタ速度に対して巻き取りリールの速度が速すぎる場合は、従来のものでは被覆シートが引きちぎられて作業が中断することあった。また、栽培時にシート表面に載置した盛り土が巻き取りリールに付着し、被覆マルチの連続の巻き取り作業が困難な場面があった。
【課題を解決する手段】
前記した課題を解決するために、トラクタに連結され、該トラクタの出力によって回転駆動される被覆シート巻き取りリールと、前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを平行上に畝と同幅に配置した枠体とを備えた畑用被覆シートの剥ぎ取り装置において、枠体の前方に畦の両端部に対応した被覆シートの裾上げ部材を配設するとともに前記巻き取りリールの回転を油圧制御によって可変して、トラクタの進行速度と巻き取りリールの巻き取り速度とを同一にしたことを特徴とする畑用被覆シートの剥ぎ取り装置である。
また、前記畦に敷設した畑用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記被覆シートの誘導角度を側面視で20ないし45度の鋭角に設定してなる畑用被覆シートの剥ぎ取り装置である。
また、前記被覆シートを埋設した畦両端部の裾上げ部材の下端は対称に屈曲されて屈曲面の下端は進行方向に向けて傾斜角を有してなることを特徴とした畑用被覆シートの剥ぎ取り装置である。
【発明の効果】
【0005】
以上のようにトラクタ速度に対して巻き取りの速度を油圧制御により同一に調整できるので被覆シートが引きちぎれることがなく、また、誘導角度を鋭角に設定したので栽培時の芽出し部分に載置した盛土が前方に適宜に滑り落ちるので被覆マルチの連続の巻き取り作業が可能になった。また、鋭角の誘導角度によりニンニク栽培の茎がシートの穴から突出している場合でも被覆シートが引きちぎれることがなくなって連続改修作業ができる。また、裾上げ部材の下端部は畦中心側に向けて対称に配置し、傾斜角を有するので、畦の両端盛土が風雨によって固くなった時でもほぐれて柔らかくなるので被覆シートが千切れることが少なくなった。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明はトラクタに連結され、該トラクタの出力によって回転駆動される被覆シート巻き取りリールと、前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを平行上に畝と同幅に配置した枠体とを備えた畑用被覆シートの剥ぎ取り装置において、枠体の前方に畦の両端部に対応した被覆シートの裾上げ部材を配設するとともに前記巻き取りリールの回転を油圧制御機器によって可変して、トラクタの進行速度と巻き取りリールの巻き取り速度とを同一にたことを特徴とする畑用被覆シートの剥ぎ取り装置であり、また、前記畦に敷設した畑用被覆シートを前記巻き取りリールへ誘導するガイドローラを前記被覆シートの誘導角度を側面視で20ないし45度の鋭角に設定してなる畑用被覆シートの剥ぎ取り装置である。
【実施例0008】
本発明を実施した図面に従って構成を説明する。
図1は本発明を実施した側面概観図を示し、1はトラクタ、2はトップリンクで3はロアリンクで公知の作業機装着用三点リンクを構成する。4は剥ぎ取り装置で枠体7の前方に設けた装着フレーム7によって前記した三点リンクに装着される。6は畦幅と略同一に形成した左右一対の裾上げ部材を示し、被覆シート25の埋設部両端の裾上げをする。8は畝幅と略同幅に形成したガイドロールを示し枠体7に横設される。9は畝幅と略同幅に形成した巻き取りリールを示し、裾上げされた被覆シートはガイドロールを経て順次巻き取り回収するものである。8のガイドロールは裾上げ後の被覆シート25の誘導角度Bを鋭角になるように設定し、被覆シート上面の盛り土や付着夾雑等を下方に落下排除させる。
図2は被覆シート剥ぎ取り装置4の斜視図を示し、枠体7の前方に装着フレーム5を設けるとともに、左右一対の対称に形成した裾上げ部材6を設ける。裾上げ部材6は枠体に7対して幅方向に調整自在に設け、栽培畝の幅に合わせて固定する。ガイドロール8は高さ調整可能な支柱28により支持され、その高さは巻き取りリール9の高さより高位に設定するとともに、枠体7に対して前後に移動可能に構成されて被覆シート25の巻き上げ角度を設定する。9の巻き取りリールは円筒状に横バー16を配置して、他端部には横バー16の押さえ板20を設け、23のロックハンドルを設けてなる。
図3は動力伝達平面図を示し、トラクタ1に連結された剥ぎ取り装置4は、トラクタの油圧取り出し口10によりホースを介して11の油圧制御器を経由し油圧モータ12を駆動する。油圧制御器11は油量を無段階に可変して速度を調整する。12の油圧モータは伝導体13を介して9の巻き取りリールの主軸14を回転する。主軸14は巻き取りリール9を貫通し他方端は回動支持具21に支承される。トラクタに連結された油圧制御機器11はトラクタの速度と、巻き取りリール9の巻き取り速度とに同一に対応させて設定する。従って被覆シートは巻き取り時に巻き取りリールの引っ張り速度が裾上げ作用と一致するので無理な引っ張り力によって千切れることはない。
図4は巻き取りリールの説明した斜視図を示す。巻き取りリール9は主軸14を貫通し一側部には支持デスク15を設けて同心上に横バー16を適宜数配置する。横バー16はリンク板17によって支持されて弾性体18によって傾斜縮小自在に弾圧される。一方巻き取りリール9の他方端には着脱自在の押さえ板20が設けられる。19は主軸14の他方端に突設した支軸で前記の押さえ板20を貫通して回動支持具21に支承される。回動支持具21は被覆シートの巻き上げが終わった後に除去する際に横ピン22を支点として外方に向けて回動して支軸19を抜く。さらに押さえ板20も取り外して回収して巻きつけた被覆シートを引き出すとリンク板17は傾斜縮小する。回収被覆シートを除去した時に、縮小傾斜した横バー16は弾性体18によって元の位置に復帰する。23はロックハンドルを示し、巻き取りシートを引き出した後に、押さえ板20と回動支持具21を組み込み支軸19のネジ穴24に固着される。
図5は裾上げ部材の説明図である。(イ)は裾上げ部材の左側正面図で、(ロ)は裾上げ部材の左側側面図を示し、6は平板状の裾上げ部材で、下端部を畝中心に向けて対称に屈曲させて、かつ屈曲面27は進行方向に向けて傾斜角Aを有する。従って畝の推進時に盛土25をほぐして且つ柔らかしながらまきとるので引っ張り力による千切れ作用が小さくなる。
図6は被覆シート撒き取りの説明図で、本実施例ではニンニクの栽培例で、幅広の4条植え畝の被覆シート25の両端が盛土25に覆われている場合である。幅広の畝の両肩の盛土の下端に本実施例の一対の裾上げ部材6の屈曲面27が挿入される。この時裾上げ部材6の屈曲面27下端の傾斜面が盛り土をほぐしながら推進するので巻き上げ時の引っ張り力が緩和されて千切れることがない。次いで畝の同幅上のガイドロール8が被覆シートをそのままの幅で均一な引っ張り力で後方へ案内して巻き取りリールに9よって巻き取り回収する。この時、ガイドロール8の高さは巻き取りリールより高く設定され、シートの誘導角度Bは鋭角となり、上面の夾雑物が下方に流れ落ちる。誘導角度は25度から45度が良好であり、生育した26のニンニク茎葉も、シートの植え付け穴から速やかに抜け出て円滑な剥ぎ取り作業ができる。
本発明のトラクタに連結した畑用被覆シートの剥ぎ取り装置によれば、特に広幅のニンニク栽培等における収穫前の剥ぎ取り作業に適するので、大規模なマルチシート栽培体系に貢献できる。
畑地などの畝に被覆するマルチシート(以下、被服シートという。)は長い帯状に形成されており、その使用に当ってはその両側縁を盛土によって押え、風による飛散の防止、雨水の影響や水分の蒸発を防ぎ、畦の温度を保持するためのものである。一般に収穫前に茎葉を切断した後に被覆シートを、はぎ取り装置によって引っ張ればシート上面の覆土が滑り落ちるので、そのまま容易にシートを回収できる。例えば特許3433189号の被覆シートの巻き取り装置においては巻き取りリールの直前には被覆シートの剥離抵抗力の大小に応じてバネ調整を図り引っ張り力の均一化調整をしている。