(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163103
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/52 20060101AFI20231101BHJP
C07C 69/732 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C07C67/52
C07C69/732 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114180
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2022073706の分割
【原出願日】2022-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健一
(72)【発明者】
【氏名】山ノ内 暢彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 直輝
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC48
4H006AD15
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC51
4H006BJ50
4H006BN30
(57)【要約】
【課題】良好な性状を有するテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンの製造方法を提供すること。
【解決手段】テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンと3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルとを含む粗生成物を、晶析溶剤を用いて晶析する工程において、粗生成物に含まれる3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルの量を、粗生成物に含まれるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン100質量部に対して1~7質量部とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンの製造方法であって、
テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンと3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルとを含む粗生成物を、晶析溶剤を用いて晶析する晶析工程を含み、
前記晶析工程において、前記粗生成物に含まれる3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルの量が、前記粗生成物に含まれるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン100質量部に対して1~7質量部である製造方法。
【請求項2】
前記晶析工程が、前記粗生成物を加熱溶融して溶融物を得る溶融工程と、前記溶融工程で得られた前記溶融物と前記晶析溶剤とを混合する混合工程と、を含む請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルとペンタエリスリトールとのエステル交換反応により、前記粗生成物を得る反応工程を含む請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルとペンタエリスリトールとのエステル交換反応により、前記粗生成物を得る反応工程を含む請求項2記載の製造方法。
【請求項5】
前記晶析溶剤がアルコールを含む請求項1~4のうちいずれか一項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な性状を有するテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンは、合成樹脂用の酸化防止剤等として広く用いられている化合物である。
【0003】
下記特許文献1には、3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチルとペンタエリスリトールとのエステル交換反応により、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の製造方法により製造された製品は、粉体流動性などの性状について、さらなる改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、良好な性状を有するテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、晶析工程において、粗生成物中におけるアルキルエステル化合物の含有割合を特定の数値範囲とすることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンの製造方法であって、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンと3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルとを含む粗生成物を、晶析溶剤を用いて晶析する晶析工程を含み、前記晶析工程において、前記粗生成物に含まれる3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルの量が、前記粗生成物に含まれるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン100質量部に対して1~7質量部である製造方法である。
【0009】
本発明の製造方法においては、前記晶析工程が、前記粗生成物を加熱溶融して溶融物を得る溶融工程と、前記溶融工程で得られた前記溶融物と前記晶析溶剤とを混合する混合工程と、を含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明の製造方法は、3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルとペンタエリスリトールとのエステル交換反応により、前記粗生成物を得る反応工程を含むことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の製造方法においては、前記晶析溶剤がアルコールを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な性状を有するテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本実施形態のテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンの製造方法は、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンと3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルとを含む粗生成物を、晶析溶剤を用いて晶析する晶析工程を含む。ここで、晶析工程において、粗生成物に含まれる3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルの量は、粗生成物に含まれるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン100質量部に対して、1~7質量部である。
【0015】
本実施形態の製造方法によれば、結晶構造がδ晶であるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを製造することができる。ここで、結晶構造がδ晶であるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンは、結晶構造がα晶、β晶などδ晶以外であるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンと比べ、粉体流動性などの性状が良好なものとなる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、良好な性状を有するテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを製造することができる。
【0016】
製品の収率を向上させる観点から、晶析工程において、粗生成物に含まれる3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルの量は、粗生成物に含まれるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン100質量部に対して、1~6質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましく、1~4質量部であることがさらに好ましく、1~3質量部であることがさらに一層好ましい。
【0017】
粗生成物に含まれる3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルが有するアルキル基、すなわち、下記一般式(1)においてRで表される基は、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基であればよい。ここで、炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-アミル基などの分岐を有するアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基などが挙げられる。製品の収率を向上させる観点から、これらの中では、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0018】
【0019】
晶析工程において用いられる晶析溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは一種が単独で用いられても、二種以上が組み合わせて用いられてもよい。また、晶析溶剤は、上記溶剤と水との混合物であってもよい。
【0020】
本実施形態の製造方法において、より良好な性状を有する製品を得る観点、および、製品の収率を向上させる観点から、晶析溶剤は、アルコールを含むことが好ましい。晶析溶剤は、アルコールのみからなるか、または、アルコールと水との混合物であることがより好ましく、アルコールと水との混合物であることがさらに好ましい。ここで、アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノールおよびイソプロパノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、メタノールおよびエタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、メタノールであることがさらに好ましい。さらに、晶析溶剤は、メタノールと水との混合物、または、エタノールと水との混合物であることが好ましく、メタノールと水との混合物であることが特に好ましい。
【0021】
晶析溶剤がアルコールと水との混合物である場合、晶析溶剤中における水の含有割合は、例えば、晶析溶剤全体の1~50質量%であればよく、3~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。晶析溶剤は、メタノールと水との混合物であって、晶析溶剤中における水の含有割合が、晶析溶剤全体の1~50質量%であればよく、3~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。なお、晶析工程において、晶析溶剤の使用量は、例えば、粗生成物100質量部に対して100~500質量部であればよい。
【0022】
本実施形態の製造方法において、粗生成物を得る方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができるが、粗生成物は、3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルとペンタエリスリトールとのエステル交換反応で製造されることが好ましい。すなわち、本実施形態の製造方法は、3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルとペンタエリスリトールとのエステル交換反応により、粗生成物を得る反応工程を含むことが好ましい。
【0023】
上記反応工程において、原料である3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルおよびペンタエリスリトールの仕込み比は、例えば、モル比で3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキル/ペンタエリスリトールが2/1~15/1であればよく、4/1~10/1であることが好ましい。
【0024】
また、上記反応工程で使用される溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの極性溶剤などが挙げられる。さらに、上記反応工程は、溶剤を使用しない、無溶剤での反応であってもよい。ここで、上記反応工程においては、溶剤として脂肪族炭化水素系溶剤を使用することが好ましい。この場合、得られる製品の色調が良好なものとなる。
【0025】
上記反応工程において溶剤を使用する場合、溶剤の使用量は、例えば、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンの理論収量の5~100質量%であればよく、10~40質量%であることが好ましい。
【0026】
また、上記反応工程で使用される触媒としては、例えば、リチウムメトキシド、リチウムアミド、水素化リチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムアミド、水素化ナトリウムなどが挙げられる。製品の色調を良好なものとし、製品の収率を向上させる観点および安全性の観点から、これらの中では、リチウムメトキシドが特に好ましい。触媒の使用量は、例えば、原料のペンタエリスリトール1モルに対して0.01~0.5モルであればよい。さらに、上記反応工程における反応温度は、例えば、100~200℃であればよく、反応時の圧力は、例えば、1~110kPaであればよい。
【0027】
粗生成物が、3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルとペンタエリスリトールとのエステル交換反応で製造される場合、粗生成物に含まれる3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルの含有量は、例えば、原料の仕込み量や反応温度、反応時の圧力などを調整することなどによって制御できる。例えば、ペンタエリスリトールの仕込み量に対する3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルの仕込み量を適宜増大させることにより、粗生成物に含まれる3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルの含有量を増大させることができる。
【0028】
晶析工程においては、粗生成物と晶析溶剤とを混合した後、加熱して、粗生成物を晶析溶剤に完全に溶解させてもよいが、より良好な性状を有するテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを得る観点から、晶析工程は、粗生成物を加熱溶融して溶融物を得る溶融工程と、溶融工程で得られた溶融物と晶析溶剤とを混合する混合工程と、を含むものであることが好ましい。
【実施例0029】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0030】
(実施例1~7および比較例1~3)
攪拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた容量2リットルの4口フラスコに、3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチルおよびペンタエリスリトールを仕込み、さらに、リチウムメトキシドをペンタエリスリトールの仕込み量に対して8モル%になるように仕込み、脂肪族炭化水素系溶媒(IP-1620 出光石油化学社製)26gを加えて、100~190℃で10mmHgまで徐々に減圧しながら8時間攪拌した。さらに、210℃で2mmHgまで減圧して溶媒を留去した後、100℃まで冷却し、窒素導入管から窒素を導入して常圧にした後、酢酸を加えて中和した。続いて、反応混合物を70℃以上に保ちながら水を10質量%含有する含水メタノールを150g加え、20℃まで徐々に冷却し、白色固体を析出させた。析出した白色固体を乾燥させ、これを粗生成物とした。
【0031】
ここで、3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチルおよびペンタエリスリトールは、合計が100gとなるように仕込んだ。実施例1~7および比較例1~3において、粗生成物に含まれる3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルの量が、粗生成物に含まれるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン100質量部に対して表1~2に示す量(質量部)となるように、3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルおよびペンタエリスリトールの仕込み比を調整した。
【0032】
ここで、表1~2において、「AO-M」は、粗生成物に含まれるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン100質量部に対する、粗生成物に含まれる3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチルの量(質量部)を表す。なお、実施例1~7および比較例1~3において、粗生成物に含まれるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンおよび3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチルの量は、液体クロマトグラフィー法によって定量した。
【0033】
【0034】
【0035】
実施例1~7および比較例1~3の粗生成物50gをフラスコに仕込み、オイルバスで加熱して粗生成物を完全に溶融させて溶融物を得た。得られた溶融物を135℃に昇温した後、50℃の湯浴でフラスコを冷却し、フラスコの内容物をマグネチックスターラーで撹拌しながら、水を5質量%含有する含水メタノール70gを30~60分かけて滴下した。滴下終了後、50℃の湯浴中で冷却撹拌を続け、フラスコの内容物の温度が60℃になった時点で種結晶を添加した。種結晶を添加した後、さらに60℃で1時間撹拌した。続いて、フラスコを湯浴から取り出して、20℃の室温下で1時間撹拌した後、析出した結晶をろ過し、水を5質量%含有する含水メタノール50gで結晶を洗浄した後、80℃、1kPaで2時間減圧乾燥して、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンの精製製品を得た。
【0036】
こうして得られた精製製品の結晶形を、示差走査熱分析(DSC)によって決定した。具体的には、精製製品1mgを示差走査熱分析装置(リガク社製、装置名「Thermo
plus Evo」)に導入し、窒素雰囲気下、50℃から5℃/分の昇温速度で130℃まで昇温して、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線において、119℃の吸熱ピークのみが出現する場合、精製製品はδ晶のみからなるものであるとして、表1~2の結晶形の欄に「δ晶」と記載し、119℃の吸熱ピークに加えて、これ以外の吸熱ピークが出現する場合、精製製品はδ晶と、δ晶以外の結晶形を有する結晶との混合物(混晶)であるとして、表1~2の結晶形の欄に「混晶」と記載した。なお、精製製品の結晶形は、粉末X線回折(XRD)および赤外分光分析(IR)によっても確認した。
【0037】
表1~2に示す結果より、実施例1~7の精製製品は、δ晶のみからなるものであった。一方、比較例1~3の精製製品は、δ晶と、δ晶以外の結晶形を有する結晶との混合物(混晶)であった。
【0038】
以上より、本発明の製造方法によれば、δ晶のみからなり結晶構造がδ晶であるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを製造することができることが確認された。すなわち、本発明の製造方法によれば、良好な性状を有するテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを製造することができることがわかった。