(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163126
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20231101BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B62D5/04
A01B69/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012872
(22)【出願日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2022073466
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽平
(72)【発明者】
【氏名】野本 創志
【テーマコード(参考)】
2B043
3D333
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043DA04
2B043DC03
2B043ED02
3D333CB06
3D333CB13
3D333CE05
3D333CE55
(57)【要約】
【課題】モータを制御する制御装置を作業車両に適切に配置することができる技術を提供する。
【解決手段】例示的な作業車両は、運転座席と、前記運転座席の前方に配置されるステアリングホイールと、前記ステアリングホイールに連結されるステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトを回転させるモータと、前記モータを制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記運転座席よりも下方であって、運転者が搭乗する運転部を構成する仕切部に配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席と、
前記運転座席の前方に配置されるステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールに連結されるステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを回転させるモータと、
前記モータを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記運転座席よりも下方であって、運転者が搭乗する運転部を構成する仕切部に配置される、作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記運転座席の前方のフロアに配置される、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ステアリングホイールが設けられるフロントパネルの左右方向一方側に配置される、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記制御装置から離れて配置される他の制御装置を備え、
前記他の制御装置は、前記フロントパネルの左右方向の他方側に配置される、請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記フロントパネルに対して、前記制御装置と左右方向の同じ側に配置される表示装置を備える、請求項3又は4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記制御装置は、上下方向の高さが最も小さくなる向きに配置される、請求項2に記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御装置は、前記フロアに設けられるアクセルペダルの前方に配置される、請求項2に記載の作業車両。
【請求項8】
前記フロアに対して固定され、前記制御装置を覆う制御装置カバーを備える、請求項2に記載の作業車両。
【請求項9】
前記制御装置から離れて配置される他の制御装置と、
前記制御装置と前記他の制御装置とを接続する電線を含む配線部材と、
前記フロア上に配置され、前記配線部材を覆うフロアカバーと、
を備える、請求項2に記載の作業車両。
【請求項10】
前記フロアの外縁に配置され、上方に延びる壁部と、
前記制御装置が有するコネクタ部と、
を備え、
前記コネクタ部は、前記壁部の上端よりも高い位置に配置される、請求項2に記載の作業車両。
【請求項11】
前記制御装置は、前記運転座席を支持する座席支持フレームに配置される、請求項1に記載の作業車両。
【請求項12】
前記座席支持フレームは、
前記運転座席の前方のフロアよりも上方に配置され、前記運転座席を取り付ける面を構成する第1フレーム部と、
前記第1フレーム部の前端部と前記フロアとを接続する第2フレーム部と、
を有し、
前記制御装置は、前記第2フレーム部に配置される、請求項11に記載の作業車両。
【請求項13】
前記運転座席の下方に配置される駆動部ハウジングと、
前記駆動部ハウジングの左右の少なくとも一方に配置される側面カバーと、
前記制御装置から離れて配置される他の制御装置と、
を備え、
前記他の制御装置は、前記側面カバーと前記駆動部ハウジングとの間に配置される、請求項11又は12に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行機体が目標走行経路に沿って走行するように、走行機体を自動操舵することが可能な作業車が開示される。当該作業車が備える自動操舵機構は、ステアリングシャフトを回転駆動するモータを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステアリングシャフトを回転駆動するモータを備える構成では、当該モータを制御する制御装置が必要となる。このような制御装置が作業車両に配置されることによって、例えば、ペダルの操作性の低下や、運転座席に座る運転者(オペレータ)の視界の悪化が生じることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、モータを制御する制御装置を作業車両に適切に配置することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な作業車両は、運転座席と、前記運転座席の前方に配置されるステアリングホイールと、前記ステアリングホイールに連結されるステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトを回転させるモータと、前記モータを制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記運転座席よりも下方であって、運転者が搭乗する運転部を構成する仕切部に配置される。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、モータを制御する制御装置を作業車両に適切に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】トラクタの自動操舵に関わる構成を示すブロック図
【
図5】トラクタの運転部の周辺の構成を示す概略斜視図
【
図6】別形態のフロアカバーの概略の構成を示す斜視図
【
図7】フロアカバーを取り外して、第1制御装置の周辺を拡大して示す概略斜視図
【
図8】第1制御装置のフロアへの取付構造の概略の構成を示す斜視図
【
図9】
図8に示す構成の一部を分解して示す概略分解斜視図
【
図10】第1制御装置の配置場所の第1変形例を説明するための図
【
図11】第1制御装置の配置場所の第2変形例を説明するための図
【
図13】キャビン仕様のトラクタの概略の構成を示す斜視図
【
図14】キャビン仕様のトラクタにおける第1制御装置の周辺の構成を示す概略斜視図
【
図15】キャビン仕様のトラクタにおける第1制御装置の周辺の構成を示す概略側面図
【
図16】第4変形例のトラクタの概略の構成を示す斜視図
【
図17】
図16に示す図から一部の部品(カバー)を取り除いた図
【
図18】第4変形例における第2制御装置の配置について説明するための図
【
図19】第4変形例のトラクタが備える第2制御装置の周辺を拡大して示す平面図
【
図20】第4変形例のトラクタが備える第2制御装置の取付構造の概略の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、作業車両としてトラクタを例に挙げて説明する。ただし、作業車両は、各種の収穫機、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等のトラクタ以外の作業車両であってもよい。
【0010】
また、本明細書では、方向を以下のように定義する。まず、作業車両としてのトラクタが作業時に進行する方向を「前」とし、その逆方向を「後」とする。また、トラクタの進行方向に向かって右側を右とし、左側を左とする。そして、トラクタの前後方向および左右方向に垂直な方向を上下方向とする。このとき、重力方向を下とし、その反対側を上とする。また、上下方向と垂直な面を水平面とし、水平面に沿う方向を水平方向とする。なお、以上の方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0011】
<1.作業車両の概要>
図1は、本実施形態に係るトラクタ1の概略の構成を示す側面図である。
図2は、本実施形態に係るトラクタ1の概略の構成を示す平面図である。
図1に示すように、トラクタ1は、車体2と、エンジン3と、駆動部ハウジング4と、を備える。
【0012】
図1および
図2に示すように、車体2の前部には、左右一対の前輪5が配置される。車体2の後部には、左右一対の後輪6が配置される。車体2は、前輪5および後輪6によって走行可能である。すなわち、本実施形態のトラクタ1は、ホイルトラクタである。ただし、トラクタ1は、クローラトラクタであってもよい。
【0013】
エンジン3は、車体2の前部に、ボンネット7に覆われて配置される。エンジン3は、トラクタ1の駆動源である。本実施形態では、エンジン3は、ディーゼルエンジンである。ただし、エンジン3はガソリンエンジンであってもよい。また、トラクタ1の駆動源は、エンジンに代えて電動モータなどの他の駆動源とされてもよい。
【0014】
駆動部ハウジング4は、エンジン3の後方、且つ、運転部8の下方に配置される。駆動部ハウジング4は、ミッションケースを含む。駆動部ハウジング4の内部には、動力伝達装置(不図示)が配置される。エンジン3の回転動力は、駆動部ハウジング4内の動力伝達装置を介して、前輪5および後輪6の少なくとも一方に伝達される。
【0015】
運転部8は、車体2におけるエンジン3の後方に設けられる。運転部8は、運転者(オペレータ)が搭乗する部分である。運転部8は、運転座席9およびフロントパネル10を含む。すなわち、トラクタ1は運転座席9を備える。運転座席9は、運転者が座る場所である。また、トラクタ1はフロントパネル10を備える。
【0016】
フロントパネル10は、運転座席9の前方に配置される。フロントパネル10には、ステアリングホイール(ハンドル)11が設けられる。すなわち、トラクタ1は、運転座席9の前方に配置されるステアリングホイール11を備える。フロントパネル10は、運転部8の前端から運転座席9側(すなわち後方)に突出する。フロントパネル10には、トラクタ1の速度を示すメータ表示部等も設けられる。ステアリングホイール11は、メータ表示部の後方、且つ、運転座席9の前方に配置される。
【0017】
ステアリングホイール11は、運転座席9に座る運転者によって操作される。詳細には、ステアリングホイール11は、フロントパネル10に含まれるステアリングコラム12内に配置されるステアリングシャフト13(後述の
図3参照)により、旋回可能に支持される。ステアリングホイール11の回転操作により、前輪5の向きを変更することができる。
【0018】
運転部8には、その他、例えば、運転者によって操作される各種の操作レバー14およびペダル15が設けられる。各種の操作レバー14には、例えば、主変速レバー、副変速レバー、および、作業レバー等が含まれてよい。また、各種のペダル15には、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、および、クラッチペダル等が含まれてよい。
【0019】
本実施形態では、運転座席9の後部に、ロプスフレーム16が設けられる。ロプスフレーム16により、トラクタ1の転倒時に運転者を保護することができる。なお、トラクタ1は、ロプスフレーム16が設けられるロプス仕様ではなく、運転座席9がキャビンで覆われるキャビン仕様であってもよい。
【0020】
車体2の後部には、3点リンク機構等で構成される作業機連結部17が設けられる。作業機連結部17には、作業機を装着することが可能である。作業機は、例えば、耕耘装置、プラウ、施肥装置、農薬散布装置、収穫装置、又は、刈取装置であってよい。また、車体2の後部には、昇降シリンダ等の油圧装置を有する昇降装置(不図示)が設けられる。昇降装置が作業機連結部17を昇降させることにより、上記作業機を昇降させることができる。また、エンジン3が発生させた動力は、駆動部ハウジング4内の動力伝達装置と、車体2の後部に配置されたパワーテイクオフ軸(PTO軸;不図示)を介して、牽引する作業機に伝達することができる。
【0021】
トラクタ1は、予め定められた経路に沿うように操舵が自律的に行われる自動操舵可能に設けられる。
図3は、本実施形態に係るトラクタ1の、自動操舵に関わる構成を示すブロック図である。なお、トラクタ1は、操舵に加えて、車速と、作業機による作業とのうちの少なくとも一方が自律的に行われる構成であってよい。
【0022】
図3に示すように、トラクタ1は、ステアリングシャフト13およびモータ131を備える。ステアリングシャフト13は、ステアリングホイール11に連結される。モータ131は、ステアリングシャフト13を回転させる。
【0023】
詳細には、モータ131は、回転方向、回転速度、および、回転角度等を制御可能なモータである。モータ131は、ギア機構132を介してステアリングシャフト13に連結されている。ギア機構132は、ステアリングシャフト13に設けられてステアリングシャフト13と共に回転するギアと、モータ131の回転軸に取り付けられてモータ131の回転軸と共に回転するギアとを含む。モータ131の回転軸が回転すると、ギア機構132を介してステアリングシャフト13が自動的に回転する。なお、モータ131およびギア機構132は、例えば、ステアリングコラム12内に配置される。
【0024】
また、
図3に示すように、トラクタ1は第1制御装置31および第2制御装置32を備える。第1制御装置31および第2制御装置32のそれぞれは、例えば、演算装置、入出力部、および、記憶部を含んで構成されるコンピュータ装置である。演算装置は、例えばプロセッサ又はマイクロプロセッサである。記憶部は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置である。記憶部は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)のような補助記憶装置をさらに含んでもよい。記憶部には、各種のプログラム及びデータ等が記憶されている。演算装置は、各種のプログラムを記憶部から読み出して実行する。
【0025】
なお、本実施形態では、自動操舵に関わる制御装置が第1制御装置31と第2制御装置32との2つの制御装置で構成されているが、当該構成は例示にすぎない。自動操作に関わる制御装置の数は1つで構成されても、3つ以上で構成されてもよい。例えば、第1制御装置31と第2制御装置32とは1つに纏められてもよい。
【0026】
第1制御装置31は、モータ131と電気的に接続されてモータ131を制御する。第1制御装置31は、モータ131のドライバである。詳細には、第1制御装置31は、電気的に接続される第2制御装置32からの指令に応じてモータ131を制御する。第1制御装置31は、第2制御装置32からの制御指令を受け取り、当該制御指令について更に処理を行い。モータ131に供給する電力量を決定する。第1制御装置31は、決定した電力量に応じた電力をモータ131に供給する。上述のように、モータ131の駆動力は、ギア機構132を介してステアリングシャフト13に伝達されるために、モータ131の制御によって前輪5の方向の制御を行うことができる。
【0027】
第2制御装置32は、自動操舵に関わる制御を行う主たる制御装置である。第2制御装置32は、自動操舵用のコントローラである。第2制御装置32には、位置取得部19、慣性計測装置21、および、表示装置22が電気的に接続される。
【0028】
位置取得部19は、測位アンテナ20が測位衛星から受信した測位信号を用いて、トラクタ1の位置を例えば緯度および経度の情報として取得する。位置取得部19は、トラクタ1の位置情報を第2制御装置32へ出力する。位置取得部19は、例えば、図示しない基準局からの測位信号を適宜の方法で受信した上で、公知のRTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS)法を利用して測位を行ってよい。また、例えば、位置取得部19は、DGNSS(Differential GNSS)法を利用して測位を行ってもよい。なお、本実施形態では、測位アンテナ20はロプスフレーム16に取り付けられる。測位アンテナ20の取付位置は、適宜変更されてよい。
【0029】
慣性計測装置21は、3軸の角速度センサと3方向の加速度センサとを含む。慣性計測装置21は、計測した情報を第2制御装置32へ出力する。慣性計測装置21が設けられることにより、車体2のヨー角、ピッチ角、および、ロール角等の慣性情報の計測が可能になっている。
【0030】
表示装置22は、第2制御装置32からの指令に応じて適宜情報の表示を行う。表示装置22は、例えば、トラクタ1の自動操舵に関わる情報やエラーを表示する。なお、本実施形態においては、表示装置22は、運転者が指令を入力する操作部としての機能も備える。すなわち、表示装置22は、操作表示装置ということができる。操作部としての機能は、例えば、表示装置22に操作ボタンを設けたり、タッチパネルを設けたりすることによって実現されてよい。表示装置22の操作部として機能を利用することによって、自動操舵の経路設定や、自動操舵に関わる操作を行うことができる。
【0031】
第2制御装置32は、例えば、表示装置22の操作機能等を利用した運転者の指令に応じて、自動操舵の開始処理や終了処理を行う。また、第2制御装置32は、例えば、位置取得部19および慣性計測装置21から得られる情報に基づいて、トラクタ1の車体2の位置や向きを求める。また、第2制御装置32は、例えば、求めた車体2の位置等と、予め定められた自動走行用の経路との関係に応じて、自動操舵に関わる制御指令を第1制御装置31に出力する。第2制御装置32は、位置取得部19や慣性計測装置21等からGNSS測位情報や車体2の情報を受けて自動操舵に関わる演算を行い、第1制御装置31にモータ131の制御指令を送る。また、第2制御装置32は、第1制御装置31からモータ131の動作情報を受け取り、次の演算(フィードバック制御用の演算)を行う。
【0032】
ここで、本実施形態のトラクタ1が実行する自動操舵の概要について説明しておく。自動操舵を行うに際して、まず、基準線Lの設定が行われる。
図4は、基準線Lの設定方法の一例を説明するための図である。基準線Lの設定方法は、
図4に示す方法以外であってもよい。
【0033】
基準線Lの設定に際して、まず、トラクタ1が圃場内の適所(図中のA点)に移動され、A点登録が行われる。A点登録は、運転者からの登録指令によって行われる。A点登録の指令が出された時点における、位置取得部19によって得られる車体2の位置が、A点の位置として登録される。
【0034】
A点登録が行われると、運転者が手動操作にてトラクタ1を直進走行させ、所定位置(図中のB点)に移動させる。そして、トラクタ1が所定位置に到達すると、B点登録が行われる。B点登録は、運転者からの登録指令によって行われる。B点登録の指令が出された時点における、位置取得部19によって得られる車体2の位置が、B点の位置として登録される。A点とB点との登録が行われると、A点とB点とを通る直線が基準線Lとして設定される。
【0035】
基準線Lが設定されると、当該基準線Lに平行な線が所定の間隔で自動走行線として生成される。自動操舵時においては、当該自動走行線と、位置取得部19によって取得された車体2の位置とが一致するように、トラクタ1の進行方向の操舵制御が行われる。トラクタ1の進行方向の操舵制御は、モータ131を制御することにより行われる。
【0036】
<2.制御装置の配置>
図5は、本実施形態に係るトラクタ1の運転部8の周辺の構成を示す概略斜視図である。
図5に示すように、運転座席9の前方には、運転部8のフロア23が広がる。第1制御装置31は、フロア23に配置される。すなわち、トラクタ1は、モータ131を制御し、運転座席9の前方のフロア23に配置される制御装置31を備える。このような構成とすると、モータ131を制御する制御装置31をモータ131の比較的近くに配置しつつ、制御装置31によって運転者の視界が遮られることを抑制できる。また、本実施形態のように制御装置31をモータ131の近くに配置できる構成とすると、モータ131を駆動するための大電流が流されるために太くなり易い、制御装置31とモータ131とを接続する配線を、車体2に配置し易くすることができる。すなわち、自動操舵を可能とするモータ131の制御装置31をトラクタ1に適切に配置することができる。
【0037】
なお、フロア23は、運転部8の床を構成するフロア構造体を含む。フロア構造体には、フロアの骨格となる少なくとも1つのフレーム部材、および、フロア面23aを構成する少なくとも1つのパネル部材が含まれてよい。フレーム部材とパネル部材とは単一部材であってもよい。フロア面23aは、例えば、フロア構造体を構成するパネル部材の上面である。フロア面23aは、平面、凹面、凸面、又は、一部に凹部および凸部の少なくとも一方を有する面であってよい。また、フロア面23aには、上下に貫通する開口が含まれてもよい。
【0038】
また、フロア23に配置される構成の中には、フロア23に直接的に配置される構成のみならず、フロア23に間接的に配置される構成が含まれてよい。間接的に配置される構成の中には、フロア23と制御装置31との間に両者を連結する連結部材が配置される構成が含まれてよい。このような構成については後述する。
【0039】
本実施形態では、第1制御装置31は、フロア面23a上に配置される。フロア面23a上にはフロアカバー(フロアマット)24が配置される。フロアカバー24は、フロア面23aに対して動かないように固定した状態で配置されることが好ましい。フロアカバー24は、金属以外の素材で構成されることが好ましく、例えばゴムや樹脂により構成される。なお、フロアカバー24は設けられなくてもよい。また、本実施形態では、フロアカバー24は、フロア面23aのうち、第1制御装置31が設けられる領域を覆う部分を有しない。すなわち、第1制御装置31の上には、フロアカバー24はなく、第1制御装置31は、フロアカバー24に覆われることなく、フロア面23a上に配置される。ただし、第1制御装置31は、フロアカバーの下に配置された状態で、フロア面23a上に配置されてもよい。
【0040】
図6は、別形態のフロアカバー24Aの概略の構成を示す斜視図である。フロアカバー24Aは、平板状のフロアカバー本体部241と、フロアカバー本体部241の右側前方に設けられる制御装置収容部242とを有する。制御装置収容部242は、フロアカバー本体部241の上面から上方に突出する側壁部242aおよび上壁部242bを有する。制御装置収容部242は、下方および前方に向けて開口する箱形状である。制御装置収容部242は、収容対象の形状、および、運転部8における収容対象の配置を考慮した構成となっている。フロアカバー24Aがフロア面23a上に配置されると、制御装置収容部242が第1制御装置31を上側から覆うことになる。このように構成することにより、フロアカバー24Aによって第1制御装置31を保護することができる。
【0041】
なお、フロアカバー本体部241には、フロア23に配置されるアクセルペダル15aの一部をフロアカバー24Aの上側に配置するためのアクセルペダル用開口243が設けられる。この点は、本実施形態のフロアカバー24(第1制御装置31を覆わないフロアカバー)も同様である。
【0042】
図7は、フロアカバー24を取り外して、第1制御装置31の周辺を拡大して示す概略斜視図である。
図2、
図5、および、
図7を参照して、第1制御装置31のトラクタ1における配置について、更に詳細に説明する。
【0043】
第1制御装置31は、ステアリングホイール11が設けられるフロントパネル10の左右方向の一方側に配置されることが好ましい。左右方向の一方側は、機体幅方向一方側とも言える。このような構成とすると、第1制御装置31を、フロントパネル10の下方に配置されるブレーキペダル15b等のペダル15の操作の邪魔になり難い位置に配置することができる。また、このような構成とすると、運転部8の前方の空いたスペースを有効に活用することができる。また、このような構成とすると、モータ131の近くに第1制御装置31を配置して、モータ131と第1制御装置31とを接続する配線を短くすることができる。
【0044】
本実施形態では、第1制御装置31は、フロントパネル10の右側に配置される。例えば、トラクタ1においては、フロア23に設けられるアクセルペダル15aが右側寄りに配置される等、右側に乗り降りの際に障害となる構造物が配置される傾向がある。このような点等から、トラクタ1においては、運転者は左側から乗降することが多い。このために、第1制御装置31を右側に配置することで、第1制御装置31が運転者の乗り降りを妨げる可能性を低減することができる。なお、本実施形態のトラクタ1は、左側だけなく、右側においても、運転者は運転部8に乗り降りすることができる。第1制御装置31は、フロントパネル10の左側に配置されてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、第1制御装置31は、フロア23に設けられるアクセルペダル15aの前方に配置される。アクセルペダル15aは、運転座席9の右前方のフロア23に配置される。アクセルペダル15aの前方に配置される第1制御装置31は、運転部8の右側前端に配置される。このような構成とすることによって、運転部8の前方の空いたスペースを有効に活用して第1制御装置31を配置することができる。なお、第1制御装置31は、アクセルペダル15aの前方に限らず、例えばブレーキペダル15bの下方に配置されてもよい。この構成の場合、第1制御装置31は、ブレーキペダル15bの操作範囲から外れて配置されればよい。
【0046】
また、本実施形態では、上述の表示装置22(
図3参照)は、フロントパネル10の右側に配置される。すなわち、トラクタ1は、ステアリングホイール11が設けられるフロントパネル10に対して、第1制御装置31と左右方向の同じ側に配置される表示装置22を備える。表示装置22は、運転座席9に座る運転者が見易いように、上下方向の高さがステアリングホイール11と同等とされる。このために、表示装置22の下方には、スペースが生じ易い。すなわち、本実施形態によれば、表示装置22の下側のスペースを有効活用して第1制御装置31を配置することができる。また、本実施形態によれば、表示装置22と第1制御装置31とを近い位置に配置することができるために、これらと上述の第2制御装置32(
図3等参照)と接続するための電気配線を同じ場所に纏めて配置し易くすることができる。
【0047】
また、本実施形態では、第2制御装置32は、第1制御装置31と離れて配置される。詳細には、第2制御装置32は、運転座席9の後方に配置される(
図5参照)。このために、第1制御装置31と同様に、第2制御装置32によって運転者の視界が遮られることを抑制することができる。第2制御装置32は、詳細には、運転座席9を支持する支持体25に取り付けられる。なお、
図5は、第2制御装置32を覆うカバー部材(不図示)を取り外した状態を示す。当該カバー部材は、必須の構成ではないが、設けられることが好ましい。
【0048】
また、
図5と
図7とを比較することによってわかるように、フロアカバー24は、フロア面23a上に配置される配線部材26の一部を覆う。配線部材26は、詳細には、複数の電線を束にしたワイヤーハーネスである。なお、配線部材26はケーブルであってもよい。配線部材26には、第1制御装置31と第2制御装置32とを電気的に接続する電線が含まれる。配線部材26には、その他、表示装置22と第2制御装置32とを電気的に接続する電線が含まれる。配線部材26は、運転座席9の後方に配置される部分と、運転座席9の右側方に配置される部分と、フロア23の右端部に配置される部分と、フロア23の前端部に配置される部分とを含む。
【0049】
以上からわかるように、トラクタ1は、制御装置31から離れて配置される他の制御装置32と、制御装置31と他の制御装置32とを接続する電線を含む配線部材26と、フロア23上に配置され、配線部材26を覆うフロアカバー24と、を備える。フロアカバー24によって配線部材26が直接踏まれることを抑制して、配線部材26を保護することができる。なお、制御装置31がフロントパネル10の左右方向の一方側に配置される構成において、他の制御装置32は、フロントパネル10の左右方向の他方側に配置されてよい。また、別の例として、制御装置31と他の制御装置32とは、フロントパネル10の左右方向の同じ側に配置されてもよい。これらの構成の場合にも、配線部材26は、フロア23上に配置され、フロアカバー24によって覆われてよい。
【0050】
<3.制御装置の取付構造>
図8は、第1制御装置31のフロア23への取付構造の概略の構成を示す斜視図である。
図9は、
図8に示す構成の一部を分解して示す概略分解斜視図である。
図8および
図9に示すように、第1制御装置31は、フロア23を構成するフロアパネル231の上面に配置される台座27を介してフロア23に配置される。なお、フロアパネル231の上面は、フロア面23aに相当する。また、台座27を介してフロアパネル231の上面に配置される第1制御装置31は、制御装置カバー28に覆われる。
【0051】
なお、
図5および
図7においては、制御装置カバー28が取り外された状態を示している。制御装置カバー28は設けられなくてよいが、設けられることが好ましい。
【0052】
台座27は、例えば板金を加工して構成される。台座27は、フロア23と第1制御装置31とを連結する連結部材である。すなわち、本実施形態では、第1制御装置31は、フロア23に間接的に配置される。台座27は、台座本体部271と、台座本体部271の左右に配置される取付部272とを備える。台座本体部271には、第1制御装置31が配置される。取付部272は、フロアパネル231に取り付けられる。
【0053】
詳細には、台座本体部271は、本体部上壁271aと、本体部左側壁271bと、本体部右側壁271cとを有する。本体部上壁271aは、水平に広がる矩形状である。本体部左側壁271bは、本体部上壁271aの左端から左斜め下方に延びる。本体部右側壁271cは、本体部上壁271aの右端から右斜め下方に延びる。
【0054】
左取付部272aは、本体部左側壁271bの下端と繋がり、当該下端から左方に延びる。右取付部272bは、本体部右側壁271cの下端と繋がり、当該下端から右方に延びる。左取付部272aおよび右取付部272bは、水平に広がる板状である。左取付部272aおよび右取付部272bは、それぞれ、フロアパネル231に螺子275を用いて固定される。
【0055】
本体部上壁271aの左側の前部および右側の後部には、上方に延びる制御装置用支柱273が配置される。制御装置用支柱273は、本実施形態では螺子であり、本体部上壁271aに設けられる上下に貫通する貫通孔を介して上方に延びている。また、本体部上壁271aの四隅には、上方に延びる筒状のカバー用支柱274が配置される。カバー用支柱274は、例えば、螺子止めや溶接等により本体部上壁271aに固定される。
【0056】
第1制御装置31は、直方体状である。第1制御装置31は、上下方向の高さが最も低くなる向きに配置される。第1制御装置31が、その上下方向の高さが最も低くなるように配置されることで、運転者が前方斜め下方を確認する際に、第1制御装置31が配置されたことが影響して視界が遮られるという事態が生じることを抑制することができる。また、第1制御装置31が配置されたことが影響してブレーキペダル15b等のペダル15の操作性が低下するといった事態が生じることを抑制することができる。ただし、第1制御装置31は、上下方向の高さが最も低くなる向きとは異なる向きに配置されてもよい。
【0057】
フロア23に配置される第1制御装置31の、左前方の角部および右後方の角部には、螺子止め部311が設けられる。螺子止め部311は、上下方向に貫通する貫通孔を有する。第1制御装置31は、各螺子止め部311の貫通孔に制御装置用支柱273が通された状態で台座27の本体部上壁271a上に配置される。この状態で、螺子として構成される制御装置用支柱273にナット312が嵌められることにより、第1制御装置31は台座27に固定される。
【0058】
制御装置カバー28は、下方に開口する箱形状である。制御装置カバー28は、例えば板金を加工して構成される。制御装置カバー28のカバー上壁281には、上下方向に貫通する貫通孔が4つ設けられる。4つの貫通孔のそれぞれは、制御装置カバー28が第1制御装置31を覆うように被せられた状態で、各カバー用支柱274と上下に重ねる位置に設けられる。4つの貫通孔のそれぞれに通された螺子282は、さらに筒状のカバー用支柱274内を通され、本体部上壁271aの下側に配置されるナット(不図示)と組み合わせられて螺子止めされる。これにより、制御装置カバー28が台座27に固定される。なお、以上の説明からわかるように、本実施形態では、カバー用支柱274は、本体部上壁271aに螺子止めにて固定される。
【0059】
台座27は、フロアパネル231に固定されるために、制御装置カバー28はフロア23に対して固定される。すなわち、トラクタ1は、フロア23に対して固定され、制御装置31を覆う制御装置カバー28を備える。制御装置カバー28により、第1制御装置31を保護することができる。
【0060】
なお、上述のようにフロアカバー24Aが第1制御装置31の上方に配置されてよい。このような構成の場合には、第1制御装置31は、制御装置カバー28で覆われると共に、制御装置カバー28の上方に配置されるフロアカバー24Aによっても覆われてよい。
【0061】
制御装置カバー28には、第1制御装置31に設けられるコネクタ部313に接続される配線部材26を通す配線用開口283が設けられる。詳細には、配線用開口283は、左側前方に配置される側壁に設けられる。なお、配線用開口283が設けられる位置は、本実施形態の位置に限らず、適宜変更されてよい。本実施形態の位置に配線用開口283が設けられると、フレーム部材に沿って配線部材26を配置し易く、配線部材26によって視認性が低下することを抑制できる。また、コネクタ部313は、第1制御装置31の左側面に設けられる。コネクタ部313は、詳細には、第2制御装置32と接続するためのコネクタと、モータ131と接続するためのコネクタとの2つのコネクタを含む。コネクタ部313の配置等は適宜変更されてよい。
【0062】
<4.変形例>
[4-1.第1変形例]
以上で説明した第1制御装置31の配置の場所は例示にすぎない。第1制御装置31は、運転者の視界を遮ることなく、運転操作の邪魔をしない他の場所に配置されてよい。
【0063】
図10は、第1制御装置31の配置場所の第1変形例を説明するための図である。
図10に示すように、フロア23に配置される第1制御装置31は、平面視において、運転座席9を左右に二等分する二等分線を前方に延長した仮想線VL上に配置されてもよい。この場合、第1制御装置31は、フロア23の、運転座席9に近くなる後方側に配置されることが好ましい。このような位置に第1制御装置31が配置される構成とすると、運転座席9に座る運転者の左右の足の間に第1制御装置31を配置することができる。このために、第1制御装置31が視界を遮ったり、運転操作の邪魔になったりすることを抑制することができる。
【0064】
[4-2.第2変形例]
図11は、第1制御装置31の配置場所の第2変形例を説明するための図である。
図12は、
図11におけるXII-XII位置の概略断面図である。第2変形例においては、フロア23を構成するフロアパネル231に上下方向に貫通する開口部231aが設けられる。
図11に示す例では、開口部231aは、フロア23の左右方向の中央部に設けられているが、開口部231aが設けられる位置は適宜変更されてよい。
【0065】
本変形例では、第1制御装置31は、平面視において、開口部231aに重なる位置に配置される。詳細には、第1制御装置31は、ブラケット29に取り付けられる。ブラケット29は、フロアパネル231の、開口部231aに対して左側の部分と右側の部分とを橋渡しするように配置される。ブラケット29は、フロア23と第1制御装置31とを連結する連結部材である。
【0066】
なお、ブラケット29は、平板状であってもよいが、本変形例では、ブラケット29は、下方に向けて凹む溝部291を有する。そして、第1制御装置31は溝部291の底面に配置される。このような構成とすると、第1制御装置31の少なくとも一部を、フロア面23aよりも低い位置に配置することができる。なお、第1制御装置31の少なくとも一部をフロア面23aよりも低い位置に配置する構成として、フロア面23aに下方に凹む凹部を設けて、当該凹部に第1制御装置31を配置する構成としてもよい。
【0067】
[4-3.第3変形例]
図13は、キャビン仕様のトラクタ1Aの概略の構成を示す斜視図である。以上に説明した第1制御装置31および第2制御装置32に関わる構成は、キャビン仕様のトラクタ1Aにも適用できる。トラクタ1Aにおいては、運転座席9およびフロントパネル10を含む運転部8Aにキャビン50が設けられる。キャビン50は、運転座席9およびフロントパネル10を覆う。キャビン仕様のトラクタ1Aでは、測位アンテナ20は、一例として、支持フレーム52を介してキャビン50の前方上部に取り付けられる。なお、トラクタ1Aの運転部8Aに設けられる運転座席9およびフロントパネル10の構成は、上述したトラクタ1の構成と同様である。また、
図13は、キャビン50の右側のドアが外された状態を示す。
【0068】
トラクタ1Aは、
図6に示すフロアカバー24Aを備える。フロア23に配置される第1制御装置31は、制御装置カバー28に覆われた状態で、フロアカバー24Aの下に配置される。
【0069】
図14は、キャビン仕様のトラクタ1Aにおける第1制御装置31の周辺の構成を示す概略斜視図である。
図15は、キャビン仕様のトラクタ1Aにおける第1制御装置31の周辺の構成を示す概略側面図である。
図14および
図15においては、第1制御装置31を覆う制御装置カバー28、および、フロア面23a上に配置されるフロアカバー24Aは省略されている。また、第1制御装置31は、上述の実施形態と同様に、フロアパネル231に固定される台座27に配置される。第1制御装置31は、キャビン50により構成される運転部8Aのフロア23の右前方に配置される。
【0070】
トラクタ1Aは、キャビン50を構成するキャビンフレーム51を備える。キャビンフレーム51が設けられるために、フロア23の外縁には、フロア面23aに対して上方に突出する壁部511が配置される。すなわち、トラクタ1Aは、フロア23の外縁に配置され、上方に延びる壁部511を備える。また、トラクタ1Aは、制御装置31が有するコネクタ部313を備える。
【0071】
壁部511が設けられるために、キャビン仕様のトラクタ1Aにおいては、キャビン50内に水が溜まりやすい構造になっている。この点を考慮して、コネクタ部313は、壁部511の上端よりも高い位置に配置される。
図15における破線は、コネクタ部313の下端を示す。なお、壁部511の高さが一定でない場合には、コネクタ部313は、少なくとも、壁部511の最も高さが低い部分の上端よりも高い位置に配置される構成としてよい。このような構成とすることにより、キャビン50内に溜った水によってコネクタ部313が水没することを避けることができる。
【0072】
一方で、コネクタ部313の高さを高くするために台座27の高さを高くしすぎると、運転座席9から前方斜め下方を見た場合の視界が第1制御装置31に遮られて狭くなる可能性がある。このために、前方からの平面視において、第1制御装置31の少なくとも一部が、キャビン50の前面に配置されるキャビンフレーム51(本例では前壁部511a)と重なることが好ましい。これにより、運転座席9から前方斜め下方を見た場合に第1制御装置31によって視界が遮られる量を低減することができる。
【0073】
[4-4.第4変形例]
第4変形例は、特に限定する趣旨ではないが、小型な作業車両に好適な構成である。
図16は、第4変形例のトラクタ1Bの概略の構成を示す斜視図である。
図16は、トラクタ1Bを構成する構成要素の一部を抽出して示す図である。
図17は、
図16に示す図から一部の部品(カバー)を取り除いた図である。本変形例のトラクタ1Bは、ロプス仕様のトラクタである。ただし、本変形例の構成は、キャビン仕様のトラクタにも適用可能である。
【0074】
本変形例のトラクタ1Bは、ステアリングシャフト13を回転させるモータ131(
図3参照)を制御する第1制御装置(制御装置)31を備える(
図17参照)。なお、第1制御装置31は、第1制御装置カバー28Bに覆われる(
図16参照)。第1制御装置31は、運転座席9よりも下方に配置される。第1制御装置31は、運転者が搭乗する運転部8を構成する仕切部に配置される。このような構成は、上述した実施形態と同様である。このような構成とすることにより、モータ131を制御する第1制御装置31をモータ131の比較的近くに配置しつつ、第1制御装置31によって運転者の視界が遮られることを抑制できる。すなわち、自動操舵を可能とするモータ131の制御装置31をトラクタ1に適切に配置することができる。
【0075】
仕切部は、トラクタ1Bにおいて、運転者が搭乗する空間(搭乗空間)を構成する。仕切部は、例えば、搭乗空間の底部を構成する部材や、搭乗空間の側部を構成する部材である。仕切部は、例えば底壁や側壁である。上述した実施形態では、第1制御装置31が配置される仕切部は、運転座席9の前方のフロア23である。本例では、第1制御装置31が配置される仕切部は、フロア23とは別の部材である。
【0076】
本例では、仕切部は、運転座席9を支持する座席支持フレーム91である。すなわち、第1制御装置31は、運転座席9を支持する座席支持フレーム91に配置される。座席支持フレーム91に配置される構成の中には、座席支持フレーム91に直接的に配置される構成のみならず、間接的に配置される構成が含まれてよい。第1制御装置31が座席支持フレーム91に配置される構成とすると、トラクタ1Bに乗り降りする運転者に対して、第1制御装置31を邪魔になり難い位置に配置することができる。また、第1制御装置31をペダル操作の邪魔になり難い位置に配置することができる。
【0077】
図16や
図17に示すように、座席支持フレーム91は、第1フレーム部911と第2フレーム部912とを有する。第1フレーム部911は、運転座席9の前方のフロア23よりも上方に配置され、運転座席9を取り付ける面を構成する。第1フレーム部911は、運転座席9の下方に位置し、水平方向に広がる。第2フレーム部912は、第1フレーム部911の前端部とフロア23とを接続する。第2フレーム部912は、座席支持フレーム91の前面壁を構成する。なお、第1フレーム部911と第2フレーム部912とは、同一部材で構成されても、別部材で構成されてもよい。
【0078】
詳細には、第1制御装置31は、第2フレーム部912に配置される。第1制御装置31は、第2フレーム部912の前面に配置される。当該前面は、平面、凹面、凸面、又は、一部に凹部および凸部の少なくとも一方を有する面であってよい。また、当該前面には、前後に貫通する開口が含まれてもよい。第1制御装置31は、凹部や開口に配置されてもよい。本例では、好ましい形態として、第1制御装置31は、第2フレーム部912の前面の左右方向一方側に配置される。詳細には、第1制御装置31は、第2フレーム部912の前面の左側に配置される。このような構成では、第1制御装置31を運転座席9に座る運転者のふくらはぎ後方に位置させることができ、ペダル操作等の邪魔にならない位置に第1制御装置31を配置することができる。また、第1制御装置31を運転者の脚の後方に配置させることができるので、運転者の足元の空間を広く利用することができる。また、本例の構成によれば、トラクタがキャビン仕様である場合、第1制御装置31をキャビンの室内に配置することができる。
【0079】
なお、上述した実施形態と同様に、第1制御装置31は、電線261によってモータ131と電気的に接続される。電線261は、複数の電線を束ねた配線部材(ワイヤーハーネス)26に含まれ、フロア23の中央部に配置されるフロアカバー232の下方を通って、第1制御装置31からモータ131へと至る。フロアカバー232は、フロア23の中央部に設けられる開口(不図示)を覆う樹脂部材で構成される。
【0080】
上述した実施形態と同様に、本例でも、トラクタ1Bは、自動操舵に関わる制御を行う主たる制御装置である第2制御装置32を備える。第2制御装置32は、第1制御装置31から離れた位置に配置され、配線部材26に含まれる電線によって第1制御装置31に電気的に接続される。すなわち、本例でも、トラクタ1Bは、制御装置31から離れて配置される他の制御装置32を備える。トラクタ1Bは、制御装置31と電気的に接続される他の制御装置32を備える。
【0081】
上述した実施形態では、第2制御装置32は、運転座席9の後方に配置されたが、本例では、これとは異なる構成となっている。
図17に示されるように、本例では、第2制御装置32は、トラクタ1Bの左右方向の一方側に配置される。詳細には、第2制御装置32は、トラクタ1Bの左側に配置される。なお、
図16と
図17とを比較してわかるように、第2制御装置32は、後述する側面カバー30によって覆われる。
【0082】
図18は、第4変形例における第2制御装置32の配置について説明するための図である。
図18は、トラクタ1Bの一部の要素のみを抽出した概略斜視図である。
図18に示すように、トラクタ1Bは、運転座席9の下方に配置される駆動部ハウジング4を備える。また、トラクタ1Bは、駆動部ハウジング4の左右の少なくとも一方に配置される側面カバー30を備える。本例では、側面カバー30は、駆動部ハウジング4の左右に配置される。駆動部ハウジング4は、左右一対の側面カバー30の左右方向間に配置される。左右の側面カバー30は、トラクタ1Bのサイドフレームに着脱可能に設けられる。側面カバー30は、後輪6(
図1等参照)よりも左右方向内方に配置される。詳細には、左側の側面カバー30は、左側の後輪6よりも右側に位置する。右側の側面カバー30は、右側の後輪6よりも左側に位置する。
【0083】
本例では、第2制御装置32は、左側の側面カバー30と駆動部ハウジング4との左右方向間に配置される。なお、第2制御装置32は、右側の側面カバー30と駆動部ハウジング4との左右方向間に配置されてもよい。すなわち、第2制御装置(他の制御装置)32は、左右いずれか一方の側面カバー30と駆動部ハウジング4との間に配置されてよい。このような構成とすると、トラクタ1Bにおける空いたスペースを利用して第2制御装置32を配置することができる。また、このような構成とすると、第2制御装置32を、熱による影響を受け難い位置に配置することができる。
【0084】
なお、本例の構成においては、第2制御装置32は、第1制御装置31とトラクタ1Bの左右方向の同じ側に配置されることが好ましい。このように構成することにより、両者を接続する配線が無駄に長くなることを抑制することができる。
【0085】
次に、トラクタ1Bにおける第2制御装置32の取付構造について、
図19から
図21を参照して説明する。
図19は、第4変形例のトラクタ1Bが備える第2制御装置32の周辺を拡大して示す平面図である。
図20は、第4変形例のトラクタ1Bが備える第2制御装置32の取付構造の概略の構成を示す斜視図である。
図21は、
図20に示す取付構造の一部を分解して示す図である。
【0086】
図19に示すように、第2制御装置32は、制御装置支持プレート33に固定される。本例では、当該固定は、ボルトとナットを用いて行われる。ただし、ボルトとナット以外の固定具が用いられてもよい。この点は、以下で説明する固定部分についても同様である。本例では、制御装置支持プレート33は、平板状の部材である。制御装置支持プレート33は、レバーユニット34(
図16等参照)を構成する部材34aに固定される。当該固定は、ボルトとナットを用いて行われる。制御装置支持プレート33は、第2制御装置32が固定される面が鉛直方向に広がる姿勢とされて、レバーユニット34を構成する部材34aに取り付けられる。制御装置支持プレート33は、上部がレバーユニット34を構成する部材34aに取り付けられる。
【0087】
このような構成では、メンテナンス等の作業時において、第2制御装置32が取り付けられた制御装置支持プレート33を、レバーユニット34と共にトラクタ1Bの車体から取り外すことができる。このような構成とすると、第2制御装置32をフロアユニットと共にトラクタの車体から取り外すことができる。配線がフロアユニットと共に車体から取り外される構成の場合に、作業性を良くすることができる。なお、本例においては、レバーユニット34は、トランスミッションの切替レバーを含む構成であるが、レバーユニット34に含まれるレバーは、トランスミッションの切替レバー以外であってもよい。また、フロアユニットと一体となって取り外すことができれば、制御装置支持プレート33が取り付けられる部材は、レバーユニット34以外であってもよい。なお、フロアユニットは、フロア23を構成する部材、運転座席9、および、操作系等を含む複数の部材が一体となった構成単位(塊)を指す。
【0088】
上述のように、第2制御装置32は、側面カバー30を利用して覆われる構成となっている。
図20および
図21に示すように、詳細には、側面カバー30の左右方向の内方の面(本例では右面)には、箱形状の内側カバー35が取り付けられる。本例では、内側カバー35は、ボルトとナットとを用いて3箇所を固定することで側面カバー30に取り付けられる。このような構成とすると、内側カバー35が取り付けられた側面カバー30を車体のフレームに取り付けることによって、内側カバー35で第2制御装置32を囲むことができる。本例では、詳細には、直方体状の第2制御装置32は、上側面、後側面、および、左側面が、内側カバー35によって覆われる。
【0089】
また、本例では、内側カバー35は、制御装置支持プレート33とボルトとナットとを用いて締結される。ボルトは、内側カバー35と制御装置支持プレート33との左右方向間に配置されるカラー36を貫通してナットと締結される。これにより、制御装置支持プレート33は、上部がレバーユニット34を構成する部材34aに固定され、下部が内側カバー35に固定された構造となる。このような構造とすることにより、制御装置支持プレート33を揺れ難くすることができる。
【0090】
なお、以上においては、側面カバー30と内側カバー35とが別部材である構成としたが、これは例示にすぎない。側面カバー30と内側カバー35とは1つの部材で構成されてもよい。
【0091】
<5.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0092】
<6.付記>
例示的な本発明の作業車両は、運転座席と、前記運転座席の前方に配置されるステアリングホイールと、前記ステアリングホイールに連結されるステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトを回転させるモータと、前記モータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記運転座席よりも下方であって、運転者が搭乗する運転部を構成する仕切部に配置される構成(第1の構成)であってよい。
【0093】
上記第1の構成において、前記制御装置は、前記運転座席の前方のフロアに配置される構成(第2の構成)であってよい。
【0094】
上記第2の構成において、前記制御装置は、前記ステアリングホイールが設けられるフロントパネルの左右方向一方側に配置される構成(第3の構成)であってよい。
【0095】
上記第3の構成において、前記制御装置から離れて配置される他の制御装置を備え、前記他の制御装置は、前記フロントパネルの左右方向の他方側に配置される構成(第4の構成)としてよい。
【0096】
上記第3又は第4の構成において、前記フロントパネルに対して、前記制御装置と左右方向の同じ側に配置される表示装置を備える構成(第5の構成)であってよい。
【0097】
上記第2から第5のいずれかの構成において、前記制御装置は、上下方向の高さが最も小さくなる向きに配置される構成(第6の構成)であってよい。
【0098】
上記第2から第6のいずれかの構成において、前記制御装置は、前記フロアに設けられるアクセルペダルの前方に配置される構成(第7の構成)であってよい。
【0099】
上記第2から第7のいずれかの構成において、前記フロアに対して固定され、前記制御装置を覆う制御装置カバーを備える構成(第8の構成)であってよい。
【0100】
上記第2から第8のいずれかの構成において、前記制御装置から離れて配置される他の制御装置と、前記制御装置と前記他の制御装置とを接続する電線を含む配線部材と、前記フロア上に配置され、前記配線部材を覆うフロアカバーと、を備える構成(第9の構成)であってよい。
【0101】
上記第2から第9のいずれかの構成において、前記フロアの外縁に配置され、上方に延びる壁部と、前記制御装置が有するコネクタ部と、を備え、前記コネクタ部は、前記壁部の上端よりも高い位置に配置される構成(第10の構成)であってよい。
【0102】
上記第1の構成において、前記制御装置は、前記運転座席を支持する座席支持フレームに配置される構成(第11の構成)であってよい。
【0103】
上記第11の構成において、前記座席支持フレームは、前記運転座席の前方のフロアよりも上方に配置され、前記運転座席を取り付ける面を構成する第1フレーム部と、前記第1フレーム部の前端部と前記フロアとを接続する第2フレーム部と、を有し、前記制御装置は、前記第2フレーム部に配置される構成(第12の構成)であってよい。
【0104】
上記第11又は第12の構成において、前記運転座席の下方に配置される駆動部ハウジングと、前記駆動部ハウジングの左右の少なくとも一方に配置される側面カバーと、前記制御装置から離れて配置される他の制御装置と、を備え、前記他の制御装置は、前記側面カバーと前記駆動部ハウジングとの間に配置される構成(第13の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0105】
1、1A、1B・・・トラクタ(作業車両)
4・・・駆動部ハウジング
8・・・運転部
9・・・運転座席
10・・・フロントパネル
11・・・ステアリングホイール
13・・・ステアリングシャフト
15a・・・アクセルペダル
22・・・表示装置
23・・・フロア(仕切部)
24、24A・・・フロアカバー
26・・・配線部材
28・・・制御装置カバー
30・・・側面カバー
31・・・第1制御装置(制御装置)
32・・・第2制御装置(他の制御装置)
91・・・座席支持フレーム(仕切部)
131・・・モータ
313・・・コネクタ部
511・・・壁部
911・・・第1フレーム部
912・・・第2フレーム部