(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163134
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
F16B 7/04 20060101AFI20231101BHJP
F16B 37/04 20060101ALI20231101BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
F16B7/04 301N
F16B37/04 H
F16B2/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041825
(22)【出願日】2023-03-16
(62)【分割の表示】P 2022207156の分割
【原出願日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2022073495
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】荻野 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 明
【テーマコード(参考)】
3J022
3J039
【Fターム(参考)】
3J022DA15
3J022EA06
3J022EB03
3J022EC02
3J022ED02
3J022FA01
3J022FB06
3J022FB12
3J022GA06
3J022GA12
3J022GA14
3J039AA06
3J039BB02
3J039CA18
(57)【要約】
【課題】ラック体を高い強度で固定基材に固定することができる固定具を提供する。
【解決手段】固定具(1)は、固定基材(9)の載置部(93)に対して上方から当接する上側固定部材(2)と、載置部(93)に対して下方から当接する下側固定部材(3)と、これらに亘って設けられる締結部材(4)とを備える。締結部材(4)を構成する締結ボルト(41)の頭部(42)の直下の位置でラック体(8)の側板(81)の下縁板(86)の厚み分を吸収した状態で上側固定部材(2)と頭部(42)との間に下縁板(86)を挟み込む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側板の下部に下縁板が設けられているラック体を固定基材の載置部に固定するための固定具であって、
前記載置部に対して上方から当接する上側固定部材と、
前記載置部に対して下方から当接する下側固定部材と、
前記上側固定部材と前記下側固定部材とに亘って設けられる締結部材と、を備え、
前記締結部材は、頭部を有する締結ボルトと、前記締結ボルトに螺合する締結ナットと、を含み、
前記締結部材の締め付けにより、前記下側固定部材と前記上側固定部材との間に前記載置部を挟み込み、かつ、前記頭部の直下の位置で前記下縁板の厚み分を吸収した状態で前記上側固定部材と前記頭部との間に前記下縁板を挟み込む固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば側板の下部に下縁板が設けられているラック体を固定基材の載置部に固定するために、固定具が用いられている。このような固定具の一例が、特開2002-335615号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1の固定具(ラック体振れ止め金具30)は、ラック体(ラック体5)の側板(親桁6)の下縁板(縁板6a)に対して上方から当接する上側固定部材(上部金具31)と、固定基材(溝形鋼1)の載置部(フランジ2)に対して下方から当接する下側固定部材(下部金具41)と、それらに亘って設けられる締結部材(角根ボルト50,ナット52)とを備えている。上側固定部材は、ラック体の側板の下縁板と固定基材の載置部とに跨って配置されており、締結部材を締め付けたとき、当該上側固定部材の側縁部(押さえ板33,34)で、ラック体の側板の下縁板を上方から押さえる。
【0004】
しかし、特許文献1の固定具では、下縁板を押さえる部位である上側固定部材の側縁部と締結部材による締結位置とが離れているため、締結部材の締付力が作用しにくく、十分な強度を確保できない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラック体を高い強度で固定基材に固定することができる固定具の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る固定具は、
側板の下部に下縁板が設けられているラック体を固定基材の載置部に固定するための固定具であって、
前記載置部に対して上方から当接する上側固定部材と、
前記載置部に対して下方から当接する下側固定部材と、
前記上側固定部材と前記下側固定部材とに亘って設けられる締結部材と、を備え、
前記締結部材は、頭部を有する締結ボルトと、前記締結ボルトに螺合する締結ナットと、を含み、
前記締結部材の締め付けにより、前記下側固定部材と前記上側固定部材との間に前記載置部を挟み込み、かつ、前記頭部の直下の位置で前記下縁板の厚み分を吸収した状態で前記上側固定部材と前記頭部との間に前記下縁板を挟み込む。
【0008】
この構成によれば、締結部材を構成する締結ボルトの頭部の直下の位置で下縁板を挟み込むので、締結部材の締付力を下縁板に直接作用させることができる。その際、上側固定部材の上方に下縁板が載置されることによって生じ得る下縁板の厚み分相当の段差が解消されているので、締結部材を締め付けたときにその締付力を安定的に作用させることができる。これらのことから、上記構成の固定具を用いることで、ラック体を高い強度で固定基材に固定することができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
一態様として、
前記下縁板の厚みと同等の厚みを有し、前記上側固定部材と前記頭部との間に介在されて前記下縁板の端縁に側方から当接する介在部材をさらに備えることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、上側固定部材と締結ボルトの頭部との間に介在部材を介在させるだけで、その厚みによって下縁板の厚み分を適切に吸収することができる。また、下縁板の端縁に側方から介在部材を当接させることで、下縁板と介在部材とを隙間のない面一状に配置できるので、締結部材を締め付けたときにその締付力をより安定的に作用させることができる。
【0012】
一態様として、
前記介在部材が、弾性変形可能なアーチ状プレートで構成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、締結部材の締付前に、上側固定部材と締結ボルトの頭部との間に、介在部材を構成するアーチ状プレートの高さに応じた隙間(アーチ状プレート及び下縁板の厚みよりも大きい隙間)を形成することができる。よって、上側固定部材と締結ボルトの頭部との間にラック体の側板の下縁板を差し込む操作を容易に行うことができる。アーチ状プレートは弾性変形可能であるので、締結部材の締め付けに伴い、全体形状を容易に平坦化することができる。よって、下縁板の厚み分を容易かつ適切に吸収することができる。
【0014】
一態様として、
前記介在部材が、前記上側固定部材に対して回り止めされた状態で前記締結部材に挿通保持されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、固定具を例えば締結部材の緩締状態で搬送する場合等においても、上側固定部材に対する介在部材の姿勢を適正姿勢に維持することができる。これにより、現場で固定基材にラック体を固定する際に、ラック体の側板の下縁板の端縁に側方から介在部材を容易に当接させることができる。よって、施工性を向上させることができる。
【0016】
一態様として、
前記上側固定部材と前記下側固定部材とが、相対回転不能かつ相対近接移動可能な状態で連結されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、上側固定部材と下側固定部材とが相対回転不能なので、一定の姿勢を維持したままで固定基材とラック体とを容易に固定することができる。また、上側固定部材と下側固定部材とが相対近接移動可能なので、下側固定部材と上側固定部材との間に載置部を適切に挟み込める。
【0018】
一態様として、
前記上側固定部材と前記下側固定部材とが別体で構成され、
前記上側固定部材と前記下側固定部材とが、前記締結部材による締結位置を挟んだ両側に設けられた一対の連結予定部位のいずれかにおいて択一的に連結されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、上側固定部材と下側固定部材との連結位置を一対の連結予定部位のいずれかとすることで、固定基材及びラック体に対する取り付けの向きを切り替えることができる。よって、それぞれ単一種の上側固定部材と下側固定部材とを用いつつ、向き違いの固定具を例えば施工現場で簡単に作り分けることができる。
【0020】
一態様として、
前記下側固定部材に、前記締結ナットの回転を規制する回転規制部が設けられていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、締結ナットが回り止めされているので、締結ボルトを操作するだけで簡単に固定基材とラック体とを固定することができる。
【0022】
一態様として、
前記下側固定部材は、前記載置部に当接する下側本体部と、前記下側本体部よりも下方において折り返された下方折返部と、を有し、
前記下方折返部に、前記回転規制部として、前記締結ナットにおける対向する2つの側面に係止可能な一対の係止片が設けられていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、一対の係止片が下側本体部よりも下方にある下方折返部に設けられているので、締結ナットとして例えば鍔付ナットを用いる場合でも、締結ナットの回転を適切に規制することができる。
【0024】
一態様として、
前記上側固定部材と前記下側固定部材とが一体的に構成されていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、部品材料や製造のための金型が少なく済み、低コストに作製することができる。また、上側固定部材と下側固定部材とを組み立てる必要がなくそのまま使用できるので、施工時間を短く抑えることができる。
【0026】
一態様として、
前記上側固定部材と前記下側固定部材とが別体で構成されていることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、上側固定部材及び下側固定部材のそれぞれを個別に作製することができるので、全体として加工が容易である。
【0028】
一態様として、
前記締結部材の締め付けにより、前記上側固定部材と前記下側固定部材とが平行状態を維持しながら近接移動することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、上側固定部材と下側固定部材とで、これらの間に固定基材の載置部を安定的に挟み込むことができる。例えば固定基材の載置部の厚みが種々異なる場合であっても、上側固定部材と下側固定部材とで載置部を略一定の力で挟み込むことができる。
よって、固定基材に対してラック体を安定的に固定することができる。
【0030】
本発明に係るもう1つの固定具は、
側板の下部に下縁板が設けられているラック体を固定基材の載置部に固定するための固定具であって、
前記載置部に対して上方から当接する介在部材と、
前記載置部に対して下方から当接する下側固定部材と、
前記介在部材と前記下側固定部材とに亘って設けられる締結部材と、を備え、
前記締結部材は、頭部を有する締結ボルトと、前記締結ボルトに螺合する締結ナットと、を含み、
前記介在部材は、前記下縁板の厚みと同等の厚みを有し、前記締結ボルトの軸部が貫通する状態で前記下縁板の側方に配置され、
前記締結部材の締め付けにより、前記頭部の直下の位置で前記介在部材と前記下縁板とに亘って前記載置部と前記頭部との間に前記下縁板を挟み込む。
【0031】
この構成によれば、締結部材を構成する締結ボルトの頭部の直下の位置で下縁板を挟み込むので、締結部材の締付力を下縁板に直接作用させることができる。その際、固定基材の載置部に下縁板が載置されることによって生じ得る下縁板の厚み分相当の段差が介在部材によって解消されているので、締結部材を締め付けたときにその締付力を安定的に作用させることができる。これらのことから、上記構成の固定具を用いることで、ラック体を高い強度で固定基材に固定することができる。
【0032】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1実施形態の固定具の使用状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔第1実施形態〕
固定具の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の固定具1は、ラック体8を固定基材9に固定するために使用される。
図1に示すように、固定具1は、固定基材9と、当該固定基材9に対して交差する状態で載置されるラック体8とを、それらの交差箇所で固定するために使用される。
【0035】
固定基材9は、ラック体8の配設経路に沿って複数設置されて、ラック体8を下方から支持する。固定基材9は、構造体に載置される基部91と、基部91から上方に延びる支持部92と、支持部92の上端部から水平方向に延びてラック体8が載置される載置部93とを有する。固定基材9としては、各種の形鋼材(例えばH形鋼、I形鋼、溝形鋼等)を用いることができる。
【0036】
ラック体8は、例えば電線ケーブルや冷媒管等の長尺体をその配設経路に沿って収容する。ラック体8は、少なくとも一対の側板81を備えている。本実施形態の側板81は、側板本体82と、上側傾斜部83と、上縁板84と、下側傾斜部85と、下縁板86とを有している。
【0037】
側板本体82は、側板81の中央部に位置する本体部分であり、上下方向に沿って配置される。上側傾斜部83は、側板本体82の上端部から斜めに傾斜して延びている。上縁板84は、上側傾斜部83の上端部から水平方向に沿って延びている。下側傾斜部85は、側板本体82の下端部から斜めに傾斜して延びている。下縁板86は、下側傾斜部85の下端部から水平方向に沿って延びている。
【0038】
図示は省略されているが、一対の側板81は、それぞれの上縁板84及び下縁板86が互いに向かい合う姿勢で対向配置されている。そして、一対の側板81は、それらの間に架け渡される連結部材88によって互いに連結されている。連結部材88は、ラック体8の配設経路に沿って複数設けられ、その内部に収容された長尺体を下方から支持する。
【0039】
なお、ラック体8は、一対の側板81の上部開口を覆う天板(図示せず)をさらに備えていても良い。このような天板を有する構成のラック体8は、長尺体カバーと称することができる。
【0040】
固定具1は、固定基材9の載置部93にラック体8の側板81の下縁板86が載置された状態で、載置部93と下縁板86とが交差する部位を上下に挟むことで、固定基材9とラック体8とを固定する。
【0041】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の固定具1は、上側固定部材2と、下側固定部材3と、締結部材4と、介在部材5とを備えている。これらは、互いに独立した部材として構成されている(すなわち、別体で構成されている)。また、各部材は、例えば熱間圧延鋼板(SPH)等の金属材料で形成されている。
【0042】
上側固定部材2は、固定基材9の載置部93に対して上方から当接する。上側固定部材2は、上側本体部21と、第一上方延出部24と、第二上方延出部26とを有している。上側本体部21は、上側固定部材2における載置部93に実際に当接する部位である。上側本体部21は、略矩形の平板状に形成されている。
【0043】
上側本体部21には、ボルト挿通孔22と連結孔23とが上下に貫通する状態で形成されている。本実施形態では、1つのボルト挿通孔22が形成されているとともに、そのボルト挿通孔22を挟んで両側に分かれて、2つの連結孔23(第一連結孔23A,第二連結孔23B)が形成されている。ボルト挿通孔22には、締結部材4を構成する締結ボルト41の軸部43が挿通される。連結孔23には、下側固定部材3に設けられた連結片35が係止される。
【0044】
第一上方延出部24は、上側本体部21の一辺(具体的には、ボルト挿通孔22及び2つの連結孔23の並び方向に平行な一辺)から上方に延出している。本実施形態では、第一上方延出部24は、上側本体部21に対して直交する状態となるように設けられている。第一上方延出部24の中央部には、当該第一上方延出部24と上側本体部21とに亘る第一補強部25が形成されている。第一補強部25は、いわゆるビードと称される帯状の膨出部で構成されている。
【0045】
第二上方延出部26は、上側本体部21の一辺(具体的には、第一上方延出部24が設けられた辺部の対辺)から上方に延出している。本実施形態では、第二上方延出部26は、上側本体部21に対して鈍角状に傾斜する状態となるように設けられている。第二上方延出部26の傾斜角度は、ラック体8の側板81の下側傾斜部85の傾斜角度と同等である。第二上方延出部26の中央部には、当該第二上方延出部26と上側本体部21とに亘る第二補強部27が形成されている。第二補強部27も、第一補強部25と同様の帯状の膨出部で構成されている。
【0046】
下側固定部材3は、固定基材9の載置部93に対して下方から当接する。下側固定部材3は、下側本体部31と、上方延出部34と、連結片35と、傾斜面部36と、下方折返部37とを有している。下側本体部31は、下側固定部材3における載置部93に実際に当接する部位である。下側本体部31は、緩やかに湾曲した曲板状に形成されている。下側本体部31には、ボルト挿通孔32が上下に貫通する状態で形成されている。本実施形態では、下側本体部31のボルト挿通孔32は長穴状に形成されている。ボルト挿通孔32には、締結部材4を構成する締結ボルト41の軸部43が挿通される。
【0047】
上方延出部34は、下側本体部31の一辺(具体的には、湾曲した曲板状の下側本体部31におけるせり上がった一辺)から上方に延出している。上方延出部34の上端部には、さらに上方に延出する状態で連結片35が設けられている。連結片35は、上方延出部34の中央部に設けられている。連結片35は、上方延出部34との接続部位となっている基部35Aと、基部35Aの上方(先端側)に設けられた肥大部35Bとを有する。連結片35は、上側固定部材2の上側本体部21に形成された連結孔23に、斜め姿勢で挿通可能であり、かつ、横向き姿勢で肥大部35Bによって抜け止めされる。
【0048】
傾斜面部36は、下側本体部31の一辺(具体的には、上方延出部34が設けられた辺部の対辺)から下方に傾斜して延出している。傾斜面部36は、下方に向かうに従って上方延出部34とは反対側に向かうように、鈍角状に傾斜している。
【0049】
下方折返部37は、傾斜面部36の下端部から折り返されて形成されている。下方折返部37は、傾斜面部36を介在することで、下側本体部31よりも下方において折り返されている。下方折返部37は、下側本体部31に対して、下方に離間した位置に配置されている。下方折返部37には、傾斜面部36とは反対側の辺部側に開口する切欠部38が形成されている。この切欠部38の幅は、締結部材4を構成する締結ナット45の六角部45Aにおける対向する2つの側面間の間隔に等しいかそれよりも僅かに広く設定されている。
【0050】
下方折返部37における切欠部38の両側に位置する部分は、一対の係止片37Aとして、締結ナット45の六角部45Aにおける対向する2つの側面に係止可能となっている。
【0051】
締結部材4は、上側固定部材2と下側固定部材3とに亘って設けられる。締結部材4は、締結ボルト41と、締結ボルト41に螺合する締結ナット45とを有する。本実施形態では、締結ボルト41として、いわゆるフランジボルトを用いている。締結ボルト41は、六角部42Aと鍔部42Bとが一体化された頭部42と、外面にネジ山が切られた軸部43とを有する。鍔部42Bは、六角部42Aよりもひと回り大きい円形状に形成されており、六角部42Aにおける軸部43側の端部で六角部42Aと一体化されている。
【0052】
また、本実施形態では、締結ナット45として、いわゆるフランジナットを用いている。締結ナット45は、六角部45Aと鍔部45Bとが一体化されて構成されている。六角部45Aは、内面にネジ山が切られた締結孔を有する。鍔部45Bは、六角部45Aよりもひと回り大きい円形状に形成されており、六角部45Aにおける一方側の端部で六角部45Aと一体化されている。
【0053】
締結部材4は、締結ボルト41の軸部43が上側固定部材2のボルト挿通孔22と下側固定部材3のボルト挿通孔32とに挿通された状態で締結ナット45が締結されることで、締結ボルト41の頭部42と締結ナット45との間に上側固定部材2と下側固定部材3とを挟み込む。
【0054】
このとき、上側固定部材2の連結孔23に下側固定部材3の連結片35も係止しているので、上側固定部材2と下側固定部材3とは、相対回転不能な状態で連結されている。また、上側固定部材2と下側固定部材3とは、締結部材4が締結されていない状態(緩締状態)では、連結孔23と連結片35との係止箇所を支点として相対近接移動可能(具体的には、揺動可能)な状態で連結されている。
【0055】
本実施形態の固定具1は、上側固定部材2の上側に配置されて上側固定部材2と締結ボルト41の頭部42との間に介在される介在部材5をさらに備えている。このような介在部材5として、本実施形態では、略矩形状に形成されているとともに上方に向かって凸となるように緩やかに湾曲するアーチ状プレート51を用いている。
【0056】
アーチ状プレート51は、切欠孔52を有する。切欠孔52は、アーチ状プレート51の頂部において、上下に貫通する円形状の貫通孔が一辺側に開口するように形成されている。この切欠孔52には、締結部材4を構成する締結ボルト41の軸部43が挿通される。また、アーチ状プレート51の上面に、本実施形態では締結ボルト41の頭部42が直接当接する。
【0057】
アーチ状プレート51は、切欠孔52が開口している側の辺部の対辺が、上側固定部材2の第一上方延出部24に沿うように配置される(
図4及び
図6も参照)。また、アーチ状プレート51は、上側固定部材2における第二上方延出部26側の部分の上面に載置されるラック体8の側板81の下縁板86の端縁86eに対して側方から当接する。アーチ状プレート51は、少なくとも、裾野部分となるその両端部において下縁板86の端縁86eに当接する(
図5及び
図6の上段を参照)。
【0058】
アーチ状プレート51の厚みは、ラック体8の側板81の下縁板86の厚みと同等に設定されている。ここで、厚みが「同等」とは、同一であることはもちろんのこと、同一とみなせる程度に近似していることを意味する。アーチ状プレート51の厚みは、例えばラック体8の側板81の下縁板86の厚みを基準としてその±15%、好ましくは±10%、さらに好ましくは±5%に設定される。
【0059】
また、アーチ状プレート51は弾性変形可能であり、締結部材4の締結によって締付力が作用すると、次第に平坦化し、最終的に上側固定部材2(具体的には、上側本体部21)の上面に沿う平板状に変形する(
図6の下段を参照)。
【0060】
このような固定具1を用いることで、締結部材4の締め付けにより、下側固定部材3と上側固定部材2との間に固定基材9の載置部93を挟み込み(
図5を参照)、かつ、締結ボルト41の頭部42の直下の位置でラック体8の側板81の下縁板86の厚み分をアーチ状プレート51で吸収した状態で、上側固定部材2と頭部42との間に下縁板86を挟み込む(
図4及び
図6の下段を参照)。
【0061】
従来から多用されてきた固定具では、上側固定部材2に相当する部材が載置部93と下縁板86とに跨るようにこれらの上方に配置され、締結部材4の締付力は上側固定部材2に相当する部材を介して載置部93及び下縁板86に作用するものであった。
【0062】
これに対して、本実施形態では、上側固定部材2が載置部93と下縁板86との間に挿入され、上側固定部材2の上面側で締結ボルト41の頭部42で下縁板86を直接押さえている。このとき、ラック体8の側板81の下縁板86の厚みと同等の厚みを有するアーチ状プレート51を介在させることで、実質的に段差がない状態となっている。これにより、締結部材4の締付力を下縁板86に直接かつ安定的に作用させることができ、ラック体8を高い強度で固定基材9に固定することができる。
【0063】
また、固定強度が向上することにより、例えばラック体8が一対の側板81の上部開口を覆う天板を備え、その天板上を歩路として利用する場合に、安定性ひいては安全性を高めることができる。
【0064】
なお、ラック体8を固定基材9に固定するには、載置部93と側板81の下縁板86とが交差する箇所の付近の、載置部93とは重複しない位置において、まず、締結部材4が緩締状態となっている固定具1を下縁板86に差し込む。このとき、締結部材4の緩締状態では介在部材5としてのアーチ状プレート51は上方に向かって凸となるように湾曲したままの状態なので、上側固定部材2と締結ボルト41の頭部42との間の隙間が比較的大きく、下縁板86に差し込みやすい。また、下縁板86の端縁86eがアーチ状プレート51の側面に当接するまで差し込むだけで、下縁板86に対して固定具1を適切に位置決めすることができる。
【0065】
その後、側板81をやや持ち上げながら固定具1を載置部93側にスライドさせて、載置部93に取り付ける。このとき、下縁板86が上面側に載置されている上側固定部材2が載置部93の上面に載置され、かつ、下側固定部材3が載置部93の下面に当接するように、固定具1がスライド移動される。下側固定部材3は上側固定部材2に対して連結孔23と連結片35との係止箇所を支点として揺動可能なので、間口が広がることによって載置部93に容易に取り付けることができる。また、下側固定部材3の傾斜面部36が、下側固定部材3を載置部93の下方側に向かわせるためのガイドとして機能するので、この点からも固定具1を載置部93に容易に取り付けることができる。さらに、第一補強部25及び第二補強部27の外面が載置部93の端面に当接するまでスライドさせるだけで、載置部93に対しても固定具1を適切に位置決めすることができる。
【0066】
最後に、締結ボルト41を締付操作して、締結部材4を締結する。このとき、下側固定部材3に設けられた一対の係止片37Aが締結ナット45に係止することで、締結ナット45が回転するのを規制することができ、締結ボルト41の締付操作を容易に行うことができる。一対の係止片37Aは、下側本体部31よりも下方に配置されているので、本実施形態のように締結ナット45としてフランジナットを用いる場合でも、鍔部45Bを避けて締結ナット45の回転規制を適切に行うことができる。本実施形態では、これら一対の係止片37Aにより、「回転規制部」が構成されている。
【0067】
ところで、ラック体8は一対の側板81を備えており、これら一対の側板81はそれぞれの上縁板84及び下縁板86が互いに向かい合う姿勢で対向配置される。このため、固定具1としては、上側固定部材2に対する下側固定部材3の連結向きが互いに逆向きとなる2種が必要となる。この点、本実施形態の固定具1においては、上側本体部21に、締結部材4による締結位置となるボルト挿通孔22を挟んだ両側に、2つの連結孔23(第一連結孔23A,第二連結孔23B)が分かれて形成されている。
【0068】
これら2つの連結孔23(第一連結孔23A,第二連結孔23B)のいずれかに、上側固定部材2に設けられた連結片35を選択的に係止させることで、共通の構成部品を用いつつ、向き違いの2種の固定具1を作り出すことができる。本実施形態では、連結孔23が「連結予定部位」に相当する。施工現場での簡単な付け替え作業によって向きを変更することができるので、全体での必要個数さえ把握しておけば良く、在庫管理が省力化されるという利点もある。
【0069】
〔第2実施形態〕
固定具の第2実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、固定具1を構成する各部品(上側固定部材2、下側固定部材3、締結部材4、及び介在部材5)の具体的構成が第1実施形態のものとは異なっている。以下、本実施形態の固定具1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0070】
図7及び
図8に示すように、本実施形態の固定具1も、上側固定部材2と、下側固定部材3と、締結部材4と、介在部材5とを備えている。これらは、互いに独立した部材として構成されている(すなわち、別体で構成されている)。
【0071】
上側固定部材2は、固定基材9の載置部93に対して上方から当接する。本実施形態の上側固定部材2は、上側本体部21と、第一上方延出部24と、第二上方延出部26と、下方延出部29とを有している。
【0072】
上側本体部21は、上側固定部材2における載置部93に実際に当接する部位である。上側本体部21は、略矩形の平板状に形成されている。上側本体部21には、ボルト挿通孔22が上下に貫通する状態で形成されている。なお、本実施形態では、上側本体部21には、第1実施形態で説明したような連結孔23は形成されていない。
【0073】
第一上方延出部24は、上側本体部21の一辺から上方に延出している。第一上方延出部24は、上側本体部21に対して直交する状態となるように設けられている。第一上方延出部24の根元部分の中央部には、当該第一上方延出部24を貫通する係止孔24Aが形成されている。係止孔24Aには、介在部材5に設けられた係止片56が係止される。なお、本実施形態では、第一上方延出部24には、第1実施形態で説明したような第一補強部25は設けられていない。
【0074】
第二上方延出部26は、上側本体部21の一辺(具体的には、第一上方延出部24が設けられた辺部の対辺)から上方に延出している。本実施形態の第二上方延出部26は、傾斜面部26Aと垂直面部26Bとを有する。傾斜面部26Aは、上側本体部21から連続して、当該上側本体部21に対して鈍角状に傾斜する状態となるように設けられている。垂直面部26Bは、傾斜面部26Aの上端部から連続して、上側本体部21に対して直交する状態となるように設けられている。傾斜面部26Aの傾斜角度は、ラック体8の側板81の下側傾斜部85の傾斜角度と同等である。傾斜面部26Aは、ラック体8の側板81の下側傾斜部85に沿う状態となり、垂直面部26Bは、側板81の側板本体82に沿う状態となる。垂直面部26Bを側板本体82に沿わせることで、締結部材4の最終の締付時に、固定具1が回転するのを防止することができる。
【0075】
傾斜面部26Aには、固定基材9にラック体8を固定するためにそれらの交差箇所に固定具1を取り付ける際の取付向きを示す指示標示28が刻印されている。なお、本実施形態では、第二上方延出部26には、第1実施形態で説明したような第二補強部27は設けられていない。
【0076】
下方延出部29は、上側本体部21の一辺(具体的には、第一上方延出部24が設けられた辺部と第二上方延出部26が設けられた辺部との間の辺部)から下方に延出している。下方延出部29は、上側本体部21に対して直交する状態となるように設けられている。下方延出部29には、下端部側に開口する切欠状スリット部29Aが形成されている。言い換えれば、下方延出部29は、切欠状スリット部29Aを挟んで一対設けられている。切欠状スリット部29Aには、下側固定部材3の連結片35が挿通される。
【0077】
下側固定部材3は、固定基材9の載置部93に対して下方から当接する。本実施形態の下側固定部材3は、下側本体部31と、下方延出部33と、連結片35と、傾斜面部36と、下方折返部37とを有している。
【0078】
下側本体部31は、下側固定部材3における載置部93に実際に当接する部位である。本実施形態の下側本体部31は、略矩形の平板状に形成されている。下側本体部31には、長穴状のボルト挿通孔32が上下に貫通する状態で形成されている。
【0079】
下方延出部33は、下側本体部31の一辺(具体的には、上側固定部材2の下方延出部29が設けられた側の辺部)から下方に延出している。下方延出部33は、下側本体部31に対して直交する状態となるように設けられている。下方延出部33は、所定間隔を隔てて一対設けられている。下方延出部33は、上側固定部材2の下方延出部29に沿うように配置される。
【0080】
連結片35は、下側本体部31の一辺(具体的には、下方延出部33が設けられた側の辺部)から、当該下側本体部31に沿って延出している。連結片35は、一対の下方延出部33の間に設けられている。連結片35は、下側本体部31との接続部位ともなっている基部35Aと、基部35Aの先端側に設けられた肥大部35Bとを有する。基部35Aの幅は、切欠状スリット部29Aの幅よりも狭く、肥大部35Bの幅は、切欠状スリット部29Aの幅よりも広く設定されている。基部35Aは、切欠状スリット部29Aに挿通され、肥大部35Bは、一対の下方延出部33の外側に位置するように配置される。
【0081】
傾斜面部36は、下側本体部31の一辺(具体的には、下方延出部33及び連結片35が設けられた辺部の対辺)から下方に傾斜して延出している。傾斜面部36は、下方に向かうに従って上方延出部34とは反対側に向かうように傾斜している。本実施形態の傾斜面部36の傾斜は、非常に緩やかであり、下側本体部31に対して平行に近い。
【0082】
下方折返部37は、傾斜面部36の下端部から折り返されて形成されている。下方折返部37は、下側本体部31に対して、下方に離間した位置に配置されている。下方折返部37には、傾斜面部36とは反対側の辺部側に開口する切欠部38が形成されている。この切欠部38の幅は、締結部材4を構成する締結ナット45の六角部45Aにおける対向する2つの側面間の間隔に等しいかそれよりも僅かに広く設定されている。下方折返部37における切欠部38の両側に位置する部分は、一対の係止片37Aとして、締結ナット45の六角部45Aにおける対向する2つの側面に係止可能となっている。本実施形態でも、一対の係止片37Aにより、「回転規制部」が構成されている。
【0083】
締結部材4は、上側固定部材2と下側固定部材3とに亘って設けられる。本実施形態の締結部材4は、締結ボルト41と、締結ボルト41が挿通されるワッシャー44と、締結ボルト41に螺合する締結ナット45とを有する。締結部材4は、締結ボルト41の軸部43が上側固定部材2のボルト挿通孔22と下側固定部材3のボルト挿通孔32とに挿通された状態で締結ナット45が締結されることで、ワッシャー44を介して、締結ボルト41の頭部42と締結ナット45との間に上側固定部材2と下側固定部材3とを挟み込む。
【0084】
介在部材5は、上側固定部材2の上側に配置されて上側固定部材2と締結ボルト41の頭部42との間に介在される。本実施形態では、介在部材5として、全体が平坦な略矩形状に形成された平坦プレート54を用いている。平坦プレート54は、切欠孔55を有する。切欠孔55は、上下に貫通する円形状の貫通孔が一辺側に開口するように形成されている。また、本実施形態の平坦プレート54は、係止片56を有する。係止片56は、切欠孔55が開口する辺部の対辺から外向きに突出するように設けられている。係止片56は、上側固定部材2の第一上方延出部24に形成された係止孔24Aに係止される。
【0085】
切欠孔55に締結ボルト41の軸部43が挿通されるとともに、上側固定部材2の第一上方延出部24の係止孔24Aに係止片56が係止された状態で、介在部材5の回り止めがなされる。すなわち、締結部材4を締め付ける前の緩締状態でも、締結ボルト41の軸部43を軸として介在部材5が回転するのを防止することができる。
【0086】
本実施形態の固定具1も、締結部材4の締め付けにより、下側固定部材3と上側固定部材2との間に固定基材9の載置部93を挟み込み、かつ、締結ボルト41の頭部42の直下の位置でラック体8の側板81の下縁板86の厚み分を平坦プレート54で吸収した状態で、上側固定部材2と頭部42との間に下縁板86を挟み込む。なお、本実施形態では締結ボルト41にワッシャー44が装着されており、上側固定部材2と頭部42との間にはワッシャー44が介在することになるが、このような頭部42の直下の位置での間接的な押さえ構造であっても良い。ワッシャー44を介在させることで、締付力を適度に分散させて、下縁板86を強固に挟み込むことができる。
【0087】
本実施形態では、下側固定部材3の連結片35は上側固定部材2の下方延出部29の切欠状スリット部29Aに挿通されており、切欠状スリット部29A内を連結片35がスライド移動可能となっている。このため、締結部材4の締め付けに伴い、いずれも平板状に形成された上側固定部材2の上側本体部21と下側固定部材3の下側本体部31とが平行を保ったまま近接移動する。よって、上側本体部21と下側本体部31とで固定基材9の載置部93を強固に挟み込むことができる。例えばいずれかの位置を支点として作用させつつ締め付けるような構成に比べて、載置部93に対して略均等に大きな力を伝えることができ、載置部93の挟み込みが安定化するとともにより強固となる。
【0088】
本実施形態の固定具1は、第1実施形態とは異なり、施工現場での簡単な付け替え作業によって向きを変更することができない。このため、本明細書において図示は省略するが、向き違いの2種の固定具1を準備する必要がある。これら向き違いの2種の固定具1は、固定基材9の載置部93とラック体8の下縁板86との交差部位に取り付ける際の取付向きが互いに異なる。この点、本実施形態の固定具1では、第二上方延出部26(具体的には、傾斜面部26A)に例えば矢印マークの指示標示28が刻印されているので、作業現場での取付向きの誤りを予防することができる。
【0089】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の各実施形態では、上側固定部材2の上面側でそこに載置されるラック体8の側板81の下縁板86の厚み分を吸収するのに、介在部材5としてのアーチ状プレート51又は平坦プレート54を用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、介在部材5を用いずに、例えば上側固定部材2に下縁板86の厚みと同等の高さの上向き突起(例えば点状突起や線状突起等)を形成しても良い。
【0090】
(2)上記の第1実施形態では、上側固定部材2と下側固定部材3とが、上側本体部21に形成された連結孔23の位置で連結されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば上側固定部材2が上側本体部21から下方に延出するとともに連結孔を有する下方延出部を備え、その下方延出部の連結孔の位置で上側固定部材2と下側固定部材3とが連結されても良い。
【0091】
(3)上記の各実施形態では、上側固定部材2と下側固定部材3とが別体で構成され、相対回転不能かつ相対近接移動可能な状態で連結されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図9に示すように、上側固定部材2と下側固定部材3とが連結部60を介して一体的に形成されていても良い。
【0092】
(4)上記の各実施形態では、締結ボルト41としてフランジボルトを用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、鍔部42Bのない通常の頭部42を有する締結ボルト41を用いても良い。このような場合には、第2実施形態のように、締結ボルト41の頭部42と介在部材5との間にワッシャー等の他の部材を介在させても良い。
【0093】
(5)上記の各実施形態では、下側固定部材3に設けられた「回転規制部」としての一対の係止片37Aが締結ナット45の六角部45Aにおける対向する2つの側面に係止する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば下側固定部材3の下方折返部37における切り欠かれた端縁が、締結ナット45の六角部45Aにおける隣接する2つの側面に係止する構成であっても良い。この場合、下方折返部37における切り欠かれた端縁が「回転規制部」に相当する。
【0094】
(6)上記の各実施形態では、締結ナット45としてフランジナットを用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図10に示すように、鍔部45Bのない通常の締結ナット45を用いても良い。このような構成では、締結ナット45が鍔部45Bを有さないことでそれを避ける必要がなくなるので、下側本体部31から下方に突出する一対の下向き突起39を形成し、これら一対の下向き突起39によって締結ナット45の回転を規制しても良い。この場合、一対の下向き突起39により、「回転規制部」が構成される。
【0095】
(7)上記の実施形態では、固定具1が上側固定部材2と下側固定部材3と締結部材4と介在部材5とを備える構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、固定具1が介在部材5を備えることを条件に、必ずしも上側固定部材2が設けられなくても良い。この場合、載置部93に対して上方から当接する介在部材5は、下縁板86の厚みと同等の厚みを有し、締結ボルト41の軸部43が貫通する状態で下縁板86の側方に配置される。そして、締結部材4の締め付けにより、頭部42の直下の位置で介在部材5と下縁板86とに亘って載置部93と頭部42との間に下縁板86を挟み込む。
【0096】
(8)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 固定具
2 上側固定部材
3 下側固定部材
4 締結部材
5 介在部材
8 ラック体
9 固定基材
21 上側本体部
23 連結孔(連結予定部位)
31 下側本体部
37 下方折返部
37A 係止片(回転規制部)
39 下向き突起(回転規制部)
41 締結ボルト
42 頭部
45 締結ナット
51 アーチ状プレート
81 側板
86 下縁板
86e 端縁
93 載置部