(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163137
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】潤滑油添加剤及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20231101BHJP
C10M 149/02 20060101ALI20231101BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20231101BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20231101BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20231101BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20231101BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
C10M145/14 ZHV
C10M149/02
C10M101/02
C10N20:04
C10N40:04
C10N40:00 D
C10N30:00 Z
C10N30:00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053822
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022073288
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木口 真之介
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】山田 修己
(72)【発明者】
【氏名】杉山 義光
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104CB08C
4H104CE01C
4H104DA02A
4H104EA03C
4H104LA11
4H104LA20
4H104PA03
4H104PA39
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、潤滑油基油への溶解性が優れており、潤滑油の熱伝導性を高くすることができ、潤滑油組成物の冷却性を高めることができる潤滑油添加剤及びこれを含む潤滑油組成物を提供することである。
【解決手段】メソゲン構造を分子内に有する(メタ)アクリレート単量体(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)を含有する潤滑油添加剤であって、前記(共)重合体(A)のSP値が8.50~9.50(cal/cm3)1/2である潤滑油添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソゲン基を分子内に有する(メタ)アクリレート単量体(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)を含有する潤滑油添加剤であって、前記(共)重合体(A)の溶解性パラメータ(SP値)が8.50~9.50(cal/cm3)1/2である潤滑油添加剤。
【請求項2】
前記メソゲン基がビフェニルから水素原子を2つ除いた残基又はアゾベンゼンから水素原子を2つ除いた残基である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項3】
前記単量体(a)が下記一般式(3)又は(4)で表される単量体である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【化1】
【化2】
[一般式(3)及び(4)において、Yは(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、Zは直接結合、炭素数2~20のアルキレンオキシ基又は炭素数1~20のアルキレン基を表し、R
11はそれぞれ独立に水素原子、シアノ基又は炭素数1~36の炭化水素基を表し、R
12はシアノ基又は炭素数1~36の炭化水素基を表す。]
【請求項4】
前記(共)重合体(A)が、さらに炭素数1~44のアルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)を構成単量体として含む共重合体である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項5】
前記(共)重合体(A)の重量平均分子量が10,000~100,000である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油添加剤及び基油を含む潤滑油組成物。
【請求項7】
前記基油が鉱物油である請求項6に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
電気自動車用又はハイブリッド車用潤滑油組成物である請求項6に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
電気自動車又はハイブリッド車における変速機と電動モーターとの兼用油である請求項6に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油添加剤及び潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省燃費性能向上のため、自動車用変速機には動力伝達効率の向上や小型軽量化が求められており、変速機構においても手動変速機から自動変速機、最近では無段変速機が一部の車両に搭載されるに至っている。一方、鉛畜電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、燃料電池等を搭載し、電動モーターを装着した電気自動車、あるいはこれらの電池と内燃機関とを併用したハイブリッド自動車が開発されており、これらの自動車には、変速機油と電動モーター油とが別々に使用されている。
【0003】
最近、電気自動車またはハイブリッド自動車においては、これらの油の共通化や、変速機と電動モーターをパッケージ化することによる小型軽量化が要望されつつあり、手動変速機油、自動変速機油または無段変速機油としての潤滑性能に加え、電動モーター油としての絶縁性および冷却性を併せ持った新規な油が要望されてきた。
電動モーターの冷却方式としては、空冷方式、水冷方式および油冷方式が知られている。なかでも、潤滑油には絶縁性を持たせることが可能であるので、油冷方式によれば、電動モーターの内部に潤滑油を流通させ、モーターコイルや磁石等の熱で劣化しやすい部材に油を直接接触させて熱交換を行うことが可能であり、高い冷却能力が期待できる。
【0004】
油冷方式においては、熱伝導率が高い油を用いれば冷却性を高くできることが知られており、熱伝導率の高い潤滑油基油としては一価アルコールと一塩基酸とのエステル及び/又は一価アルコールと多塩基酸とのエステルのようなエステル系合成油が知られている(特許文献1及び2)。
しかしながら、熱伝導率が高い潤滑油基油を用いるだけでは冷却性に限界がある。そこで、潤滑油基油の冷却性を高めることができる潤滑油添加剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-242547号公報
【特許文献2】特開2014-25081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、潤滑油基油への溶解性が優れており、潤滑油の熱伝導性を高くすることができ、潤滑油組成物の冷却性を高めることができる潤滑油添加剤及びこれを含む潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、メソゲン基を分子内に有する(メタ)アクリレート単量体(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)を含有する潤滑油添加剤であって、前記(共)重合体(A)の溶解性パラメータ(SP値)が8.50~9.50(cal/cm3)1/2である潤滑油添加剤;前記潤滑油添加剤及び基油を含む潤滑油組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑油添加剤は潤滑油基油への溶解性が優れており、潤滑油の熱伝導性を高くすることができ、潤滑油組成物の冷却性を高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の潤滑油添加剤は、メソゲン基を分子内に有する(メタ)アクリレート単量体(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)を含有する潤滑油添加剤であって、前記(共)重合体(A)の溶解性パラメータ(SP値)が8.50~9.50(cal/cm3)1/2である潤滑油添加剤である。
本発明において、(共)重合体(A)がメソゲン基を分子内に有する単量体(a)を構成単量体として含むことにより、基油中で(共)重合体(A)が配向し、基油の熱伝導性を高くすることができ、冷却性を向上できるものと推察される。
なお、本発明において「(共)重合体」は「単独重合体及び/又は共重合体」を意味する。
【0010】
本発明において、メソゲン基とは、液晶相(または中間相)の挙動を誘導する能力を有する基を意味する。メソゲン基を分子内に有する(メタ)アクリレート単量体(a)は、必ずしもそれ自体が液晶相を示す必要はなく、単量体(a)のホモポリマーが液晶相を示せばよい。
また、単量体(a)のホモポリマーが液晶相を示すかどうかは、一般的な方法で確認することができ、例えば、示差走査熱量計(DSC)や、偏光顕微鏡等で確認できる。
メソゲン基としては、二価の多環芳香族基や、剛直な棒状の二価の有機基{パラ位に結合手を有する六員環が連結基(単結合、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CONH-、-NHCO-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-N=N(O)-、-N(O)=N-)で連結した該六員環の数が2~5個の2価の基}が含まれ、例えば、ビフェニル-4,4’-ジイル基、フェニルベンゾエート-4,4’-ジイル基、シクロヘキシルベンゾエート-4,4’-ジイル基、アゾベンゼン-4,4’-ジイル基、スチルベン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-3,7-ジイル基等が挙げられる。
【0011】
メソゲン基を有する(メタ)アクリレート単量体(a)としては、ビフェニルから水素原子を2つ除いた残基を有する(メタ)アクリレート単量体(a1)、フェニルベンゾエートから水素原子を2つ除いた残基を有する(メタ)アクリレート単量体(a2)、シクロヘキシルベンゾエートから水素原子を2つ除いた残基を有する(メタ)アクリレート単量体(a3)、アゾベンゼンから水素原子を2つ除いた残基を有する(メタ)アクリレート単量体(a4)、スチルベンから水素原子を2つ除いた残基を有する(メタ)アクリレート単量体(a5)、前記以外のメソゲン基を有する(メタ)アクリレート単量体(a6)等が挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、(メタ)アクリルとは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、(メタ)アクリロイルとは「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」を意味する。
【0012】
ビフェニルから水素原子を2つ除いた残基を有する(メタ)アクリレート単量体(a1)としては、ビフェニルから4位と4’位の水素原子を除いた残基を有するものが含まれ、例えば、p-ジフェニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4’-シアノ-1,1’-ビフェニリル、(メタ)アクリル酸2-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸4-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)ブチル、(メタ)アクリル酸5-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)ペンチル、(メタ)アクリル酸6-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)ヘキシル、(メタ)アクリル酸4’-(アルキルオキシ(アルキル基の炭素数1~20))-1,1’-ビフェニリル、(メタ)アクリル酸ビフェニル-4-イルメチル、(メタ)アクリル酸ビフェニル-4-イルエチル、(メタ)アクリル酸8-[(4’-シアノ-1,1’-ビフェニル-4-イル)オキシ]-3,6-ジオキサオクタン-1-イル等が挙げられる。
【0013】
フェニルベンゾエートから水素原子を2つ除いた残基を有する(メタ)アクリレート単量体(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸5-[[4-(4-メトキシベンゾイルオキシ)フェノキシ]カルボニル]ペンチル、(メタ)アクリル酸4-([4-[(4-シアノベンゾイル)オキシ]ベンゾイル]オキシ)ブチル、(メタ)アクリル酸5-([4-[(4-シアノベンゾイル)オキシ]ベンゾイル]オキシ)ペンチル、(メタ)アクリル酸6-([4-[(4-シアノベンゾイル)オキシ]ベンゾイル]オキシ)ヘキシル、(メタ)アクリル酸7-([4-[(4-シアノベンゾイル)オキシ]ベンゾイル]オキシ)ヘプチル、(メタ)アクリル酸8-([4-[(4-シアノベンゾイル)オキシ]ベンゾイル]オキシ)オクチル、(メタ)アクリル酸9-([4-[(4-シアノベンゾイル)オキシ]ベンゾイル]オキシ)ノニル等が挙げられる。
【0014】
シクロヘキシルベンゾエートから水素原子を2つ除いた残基を有する(メタ)アクリレート単量体(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-[4-(4-アルキル(アルキル基の炭素数1~20)シクロヘキシル)フェノキシ]エチル、(メタ)アクリル酸3-[4-(4-アルキル(アルキル基の炭素数1~20)シクロヘキシル)フェノキシ]プロピル、(メタ)アクリル酸4-[4-(4-アルキル(アルキル基の炭素数1~20)シクロヘキシル)フェノキシ]ブチル、(メタ)アクリル酸5-[4-(4-アルキル(アルキル基の炭素数1~20)シクロヘキシル)フェノキシ]ペンチル、(メタ)アクリル酸6-[4-(4-アルキル(アルキル基の炭素数1~20)シクロヘキシル)フェノキシ]ヘキシル等が挙げられる。
【0015】
アゾベンゼンから水素原子を2つ除いた残基を有する(メタ)アクリレート単量体(a4)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アゾベンゼン-4-イル、(メタ)アクリル酸4’-シアノベンゼン-4-イル、(メタ)アクリル酸4’-アルキルオキシ(アルキル基の炭素数1~20)アゾベンゼン-4-イル、4’-(メタ)アクリロイルオキシアゾベンゼン-4-カルボアルデヒド、(メタ)アクリル酸10-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]デシル、(メタ)アクリル酸11-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ウンデシル、(メタ)アクリル酸12-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ドデシル、(メタ)アクリル酸14-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]テトラデシル、(メタ)アクリル酸16-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸18-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]オクタデシル、(メタ)アクリル酸20-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]イコシル等が挙げられる。
【0016】
スチルベンから水素原子を2つ除いた残基を有する(メタ)アクリレート単量体(a5)としては、例えば、(メタ)アクリル酸4-(2-フェニルエテニル)フェニル、(メタ)アクリル酸10-[4-{2-(4-ブチルフェニル)エテニル}フェニキシ]デシル、(メタ)アクリル酸11-[4-{2-(4-ブチルフェニル)エテニル}フェニキシ]ウンデシル、(メタ)アクリル酸12-[4-{2-(4-ブチルフェニル)エテニル}フェニキシ]ドデシル、(メタ)アクリル酸14-[4-{2-(4-ブチルフェニル)エテニル}フェニキシ]テトラデシル、(メタ)アクリル酸16-[4-{2-(4-ブチルフェニル)エテニル}フェニキシ]ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸18-[4-{2-(4-ブチルフェニル)エテニル}フェニキシ]オクタデシル、(メタ)アクリル酸20-[4-{2-(4-ブチルフェニル)エテニル}フェニキシ]イコシル等が挙げられる。
【0017】
前記以外のメソゲン基を有する(メタ)アクリレート単量体(a6)としては、前記のメソゲン基のうち、複数のメソゲン基が組み合わさった基を有するものが含まれ、例えば、(メタ)アクリル酸4-[(ビフェニル-4-イルオキシ)カルボニル]フェニル、4-[(メタ)アクリロイルオキシ]安息香酸4-シアノ-1,1’-ビフェニル-4-イル等が挙げられる。
【0018】
単量体(a)としては、下記一般式(3)又は(4)で表される単量体が好ましい。なお、一般式(3)で表される単量体はメソゲン基として水素原子が炭化水素基で置換されていてもよいビフェニル-4,4’-イル基を有する単量体であり、一般式(4)で表される単量体はメソゲン基として水素原子が炭化水素基で置換されていてもよいアゾベンゼン-4,4’-イル基を有する単量体である。
【0019】
【0020】
【化2】
[一般式(3)及び(4)において、Yは(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、Zは直接結合、炭素数2~20のアルキレンオキシ基又は炭素数1~20のアルキレン基を表し、R
11はそれぞれ独立に水素原子、シアノ基又は炭素数1~36の炭化水素基を表し、R
12はシアノ基又は炭素数1~36の炭化水素基を表す。]
【0021】
一般式(3)及び(4)において、Yは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す。
Zは、直接結合、炭素数2~20のアルキレンオキシ基又は炭素数1~20のアルキレン基を表す。
炭素数2~20のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、ペンチレンオキシ基、ヘキシレンオキシ基、ヘプチレンオキシ基、4-メチルへキシレンオキシ基、オクチレンオキシ基、ノニレンオキシ基、デシレンオキシ基、ウンデシレンオキシ基、ドデシレンオキシ基等が挙げられる。
炭素数1~20のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。
本発明において、Zとしては、基油への溶解性の観点から、アルキレンオキシ基が好ましく、更に好ましくはヘキシレンオキシ基、ヘプチレンオキシ基、4-メチルへキシレンオキシ基、オクチレンオキシ基、ノニレンオキシ基、デシレンオキシ基、ウンデシレンオキシ基、ドデシレンオキシ基である。
【0022】
一般式(3)及び(4)において、R11はそれぞれ独立に水素原子、シアノ基又は炭素数1~36の炭化水素基を表す。
炭素数1~36の炭化水素基としては、鎖状飽和脂肪族炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等)、鎖状不飽和脂肪族炭化水素基(例えば、ビニル基、アリル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、ビフェニルから1つの水素原子を除いた残基、アゾベンゼンから1つの水素原子を除いた残基、スチルベンから1つの水素原子を除いた残基、アントラセンから1つの水素原子を除いた残基等)等が挙げられる。
R11としては、基油への溶解性及び熱伝導率の観点から、シアノ基及び炭素数4~6の炭化水素基が好ましく、更に好ましくはシアノ基及びブチル基である。
【0023】
一般式(3)及び(4)において、R12はシアノ基又は炭素数1~36の炭化水素基を表す。
炭素数1~36の炭化水素基としては、鎖状飽和脂肪族炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等)、鎖状不飽和脂肪族炭化水素基(例えば、ビニル基、アリル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、ビフェニルから1つの水素原子を除いた残基、アゾベンゼンから1つの水素原子を除いた残基、スチルベンから1つの水素原子を除いた残基、アントラセンから1つの水素原子を除いた残基等)等が挙げられる。
R12としては、基油への溶解性及び熱伝導率の観点から、シアノ基及び炭素数4~6の炭化水素基が好ましく、更に好ましくはシアノ基及びブチル基である。
【0024】
(メタ)アクリレート単量体(a)としては、冷却性の観点から、メソゲン基がビフェニルから水素原子を2つ除いた残基又はアゾベンゼンから水素原子を2つ除いた残基であるものが好ましく、より好ましくは一般式(3)又は(4)で表される単量体であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸6-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)ヘキシル及び(メタ)アクリル酸11-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ウンデシルであり、特に好ましくはアクリル酸6-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)ヘキシル及びメタクリル酸11-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ウンデシルである。
【0025】
(メタ)アクリレート単量体(a)中のメソゲン基の重量割合は、冷却性の観点から、20~60重量%が好ましく、更に好ましくは30~50重量%である。
前記重量割合は、例えばメタクリル酸11-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ウンデシルの場合は下記の通り計算することができる。
分子式量=492.70
メソゲン基(アゾベンゼンから水素原子を2つ除いた残基)部分の分子式量=180
メソゲン基の重量割合(重量%)=180/492.70×100=36.5重量%
また、例えば、アクリル酸6-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)ヘキシルの場合は下記の通り計算することができる。
分子式量=349.43
メソゲン基(ビフェニルから水素原子を2つ除いた残基)部分の分子式量=152
メソゲン基の重量割合(重量%)=152/349.43×100=43.5重量%
【0026】
本発明において、(共)重合体(A)は、前記(メタ)アクリレート単量体(a)以外に、炭素数1~44のアルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)を構成単量体として含んでもよい。単量体(b)を構成単量体とすることで、単量体(a)の配向性への影響を抑えつつ、(A)の溶解性パラメータ(以下において単にSP値と略記する)を調整しやすく、(A)を基油溶解性に優れるものとしやすいので好ましい。
【0027】
炭素数1~44のアルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(b)としては、炭素数1~44のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b1)、炭素数1~44のアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド(b2)、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート(b3)等が挙げられる。
Y1-X1-(R1O)n-R2 (1)
(一般式(1)中、Y1は(メタ)アクリロイル基を表し、-X1-は-O-又は-NH-を表し、R1は炭素数2~4のアルキレン基を表し、nは1~20の整数を表し、R2は炭素数1~44のアルキル基を表す。)
【0028】
炭素数1~44のアルキル基としては、炭素数1~44の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が含まれ、例えば、直鎖状アルキル基{例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基、n-ドコシル基、n-テトラコシル基、n-ヘキサコシル基、n-オクタコシル基、n-トリアコンチル基、n-ドトリアコンチル基、n-テトラトリアコンチル基、n-ヘキサトリアコンチル基、n-オクタトリアコンチル基、n-テトラコンチル基、n-ドテトラコンチル基、n-テトラテトラコンチル基等}、分岐鎖状アルキル基[例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2位に分岐を有するもの〔2-エチルヘキシル基、2-ドデシルトリデシル基、2-アルキル(アルキル基の炭素数11~13)テトラデシル基{例えば、2-ドデシルテトラデシル基等}、2-アルキル(アルキル基の炭素数9~15)ヘキサデシル基{例えば、2-ドデシルヘキサデシル基、2-テトラデシルヘキサデシル基等}、2-アルキル(アルキル基の炭素数7~17)オクタデシル基{例えば、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基等}、2-アルキル(アルキル基の炭素数5~19)イコシル基{例えば、2-ヘキサデシルイコシル基等}、2-アルキル(アルキル基の炭素数3~21)ドコシル基、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~20)テトラコシル基、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~18)ヘキサコシル基、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~16)オクタコシル基、2-アルキル(アルキル基の炭素数1~14)トリアコンチル基等〕等]等が挙げられる。
これらのうち、基油への溶解性の観点から、炭素数24~44の分岐アルキル基が好ましく、更に好ましくは2位に分岐を有する炭素数24~44の分岐アルキル基であり、特に好ましくは2-ドデシルヘキサデシル基及び2-テトラデシルオクタデシル基である。
【0029】
アルキル(メタ)アクリレート(b1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート{例えば、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、n-ペンタデシル(メタ)アクリレート、n-ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n-ヘプタデシル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、n-ノナデシル(メタ)アクリレート、n-イコシル(メタ)アクリレート、n-ドコシル(メタ)アクリレート、n-テトラコシル(メタ)アクリレート、n-オクタコシル(メタ)アクリレート、n-トリアコンチル(メタ)アクリレート、n-テトラコンチル(メタ)アクリレート等}、分岐アルキル基を有する(メタ)アクリレート{例えば、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチルウンデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート等}等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート(b1)としては、Neodol(登録商標)23(炭素数12~15の直鎖及び分岐アルキルアルコールの混合物、SHELL社製)、Neodol(登録商標)45(炭素数14~16の直鎖及び分岐アルキルアルコールの混合物、SHELL社製)等のアルキルアルコールの混合物の(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。
【0030】
(メタ)アクリルアミド(b2)としては、例えば、直鎖アルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N-ドデシル(メタ)アクリルアミド、N-トリデシル(メタ)アクリルアミド、N-テトラデシル(メタ)アクリルアミド、N-ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキサデシル(メタ)アクリルアミド等)、分岐アルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N-2-メチルウンデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソドデシル(メタ)アクリルアミド、N-2-メチルドデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソトリデシル(メタ)アクリルアミド、N-2-メチルトリデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソテトラデシル(メタ)アクリルアミド、N-2-メチルテトラデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N-2-メチルペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソヘキサデシル(メタ)アクリルアミド等)等が挙げられる。
【0031】
一般式(1)で表される(メタ)アクリレート(b3)において、R1は炭素数2~4のアルキレン基を表し、例えば、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。
R2としては、前記の炭素数1~44のアルキル基等が挙げられる。
(メタ)アクリレート(b3)としては、一般式(1)における「-X1-」が「-O-」であるもの{例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシブチル(メタ)アクリレート及びブトキシブチル(メタ)アクリレート、並びに炭素数1~44の直鎖又は分岐アルキルアルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種を2~20モル付加したものと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等}、一般式(1)における「-X1-」が「-NH-」であるもの{例えば、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシブチル(メタ)アクリルアミド及びN-ブトキシブチル(メタ)アクリルアミド等}等が挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリロイル単量体(b)としては、基油への溶解性の観点から、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート及び2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレートが好ましく、更に好ましくは2-ドデシルヘキサデシルメタクリレート及び2-テトラデシルオクタデシルメタクリレートである。
【0033】
本発明において、(共)重合体(A)は、前記単量体(a)及び単量体(b)以外に、下記一般式(2)で表される単量体(t)を構成単量体として含んでいてもよい。単量体(t)を用いると、(共)重合体のSP値を小さくすることができ、基油への溶解性が優れるので好ましい。
【0034】
【化3】
[一般式(2)中、R
4は水素原子又はメチル基;-X
2-は-O-、-O(AO)
m-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは0~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;R
5はイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を必須構成単位とする炭素数43以上の炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;qは0又は1の数を表す。]
【0035】
単量体(t)において、一般式(2)におけるR4は水素原子又はメチル基であり、潤滑性の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0036】
単量体(t)において、一般式(2)における-X2-は-O-、-O(AO)m-又は-NH-で表される基である。
Aは炭素数2~4のアルキレン基である。
炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。
mは0~10の整数であり、基油への溶解性の観点から好ましくは0~4の整数、更に好ましくは0~2の整数である。
mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよく、(AO)m部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
-X2-としては、基油への溶解性の観点から、-O-及び-O(AO)m-で表される基が好ましく、更に好ましくは-O-及び-O(CH2CH2O)m-で表される基である。
【0037】
単量体(t)において、一般式(2)におけるqは0又は1の数であり、基油への溶解性の観点から、0が好ましい。
【0038】
単量体(t)において、一般式(2)におけるR5はイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭素数43以上の炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基である。
イソブチレン基は、-CH2C(CH3)2-又は-C(CH3)2CH2-で表される基であり、1,2-ブチレン基は、-CH2CH(CH2CH3)-又は-CH(CH2CH3)CH2-で表される基である。
イソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位とする炭化水素重合体としては、構成単量体(不飽和炭化水素(x))としてイソブテン及び1-ブテンを用いた重合体、並びに1,3-ブタジエンを重合した1,2-付加物の二重結合を水素化した重合体等が挙げられる。
また、炭化水素重合体は、イソブテン、1-ブテン及び1,3-ブタジエンに加え、不飽和炭化水素(x)として以下の(1)~(3)の1種以上を構成単量体としてもよい。
(1)脂肪族不飽和炭化水素[炭素数2~36のオレフィン(例えばエチレン、プロピレン、2-ブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、トリアコセン及びヘキサトリアコセン等)及び炭素数4~36のジエン(例えば、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等)等]
(2)脂環式不飽和炭化水素[例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等]
(3)芳香族基含有不飽和炭化水素(例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等)
これらによって構成される炭化水素重合体は、ブロック重合体でもランダム重合体であってもよい。また炭化水素重合体が、二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。一態様において、R5における炭化水素重合体は、構成単量体として炭素数4の単量体のみを用いた炭化水素重合体であってよく、炭素数4の単量体は、イソブテン、1-ブテン及び1,3-ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0039】
単量体(t)の数平均分子量(以下Mnと略記する)は好ましくは800~10,000であり、より好ましくは1,000~9,000であり、さらに好ましくは1,200~8,500である。単量体(t)のMnが800以上であると潤滑性が良好である傾向があり、10,000以下であると他の単量体との共重合性が良好である傾向がある。
なお、単量体(t)のMn及び重量平均分子量(以下Mwと略記する)、重合体(A)のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)により以下の条件で測定することができる。
<(t)のMn及びMw、(A)のMw及びMnの測定条件>
装置 :「HLC-802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0040】
単量体(t)は、炭化水素重合体の片末端に水酸基を導入して得られた片末端に水酸基を含有する重合体(Y)と、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応、または(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキル(好ましくは炭素数1~4)エステルとのエステル交換反応により得ることができる。
【0041】
片末端に水酸基を含有する重合体(Y)の具体例としては、以下の(Y1)~(Y4)が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物(Y1);不飽和炭化水素(x)をイオン重合触媒(ナトリウム触媒等)存在下に重合して得られた炭化水素重合体に、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等)を付加して得られたもの等(この場合、単量体(t)は、一般式(2)において、-X2-が-(AO)m-であり、q=0である化合物)。
ヒドロホウ素化物(Y2);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体のヒドロホウ素化反応物(例えば米国特許第4,316,973号明細書に記載のもの)等(この場合、単量体(t)は、一般式(2)において、-X2-が-O-であり、q=0である化合物)。
無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体と無水マレイン酸とのエン反応で得られた反応物を、アミノアルコールでイミド化して得られたもの等(この場合、単量体(t)は、一般式(2)において、-X2-が-O-であり、q=1である化合物)。
ヒドロホルミル-水素化物(Y4);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体をヒドロホルミル化し、次いで水素化反応して得られたもの(例えば特開昭63-175096号公報に記載のもの)等(この場合、単量体(t)は、一般式(2)において、-X2-が-O-であり、q=0である化合物)。
これらの片末端に水酸基を含有する重合体(Y)のうち、潤滑性の観点から、好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)、ヒドロホウ素化物(Y2)及び無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3)であり、より好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)である。
【0042】
一般式(2)中のR5を構成する全単量体のうちブタジエンの比率(イソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体において、全構成単量体中の1,2-ブタジエンの重量割合)は、潤滑性の観点から、50重量%以上が好ましく、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0043】
一般式(2)におけるイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体において、イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量は、潤滑性の観点から、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づいて、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは50モル%以上である。
炭化水素重合体におけるイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量の比率を上げる方法として、例えば、下記の方法などを採用することができる。上記のアルキレンオキサイド付加物(Y1)の場合は、例えば1,3-ブタジエンを用いたアニオン重合において、反応温度を1,3-ブタジエンの沸点(-4.4℃)以下とし、且つ、重合開始剤の投入量を1,3-ブタジエンに対して少なくすることにより、炭化水素重合体中のイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量の比率を上げることができる。上記のヒドロホウ素化物(Y2)、無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3)及びヒドロホルミル-水素化物(Y4)の場合は片末端に二重結合を有する炭化水素重合体の重合度を大きくすることで、上記比率を上げることができる。
【0044】
一般式(2)におけるイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体におけるイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量は、13C-NMRによって測定することができる。具体的には、例えば、単量体として炭素数4のもののみを用いた場合、炭化水素重合体を13C-NMRにより分析し、下記数式(1)を用いて計算し、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づくイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計のモル%を決定することができる。13C-NMRにおいて、イソブチレン基のメチル基に由来するピークが30~32ppmの積分値(積分値A)、1,2-ブチレン基の分岐メチレン基(-CH2CH(CH2CH3)-又は-CH(CH2CH3)CH2-)に由来するピークが26~27ppmの積分値(積分値B)に現れる。炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づくイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計のモル%は、上記ピークの積分値と、炭化水素重合体の全炭素のピークに関する積分値(積分値C)から求めることができる。
イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量(モル%)=100×{(積分値A)×2+(積分値B)×4}/(積分値C) (1)
【0045】
R5における炭化水素重合体が構成単量体にブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテンを含む場合、一般式(2)中のR5の一部または全部を構成するブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテン由来の構造において、1,2-付加体と1,4-付加体のモル比(1,2-付加体/1,4-付加体)は潤滑性及び他の単量体との共重合性の観点から、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは20/80~80/20、さらに好ましくは30/70~70/30である。
【0046】
R5における炭化水素重合体が構成単量体にブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテンを含む場合、一般式(2)中のR5の一部または全部を構成するブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテン由来の構造における1,2-付加体/1,4-付加体のモル比は1H-NMRや13C-NMR、ラマン分光法などで測定することができる。
【0047】
単量体(t)に由来する構成単位(単量体(t)の有する(メタ)アクリロイル基中の炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった構造)の溶解性パラメータ(以下においてSP値と略記する)は、(A)のSP値を適度にする及び基油への溶解性の観点から、好ましくは7.0~9.0(cal/cm3)1/2であり、より好ましくは7.3~8.5(cal/cm3)1/2である。なお、SP値の算出方法については後述する。
【0048】
本発明において、(共)重合体(A)は、前記単量体(a)、単量体(b)及び単量体(t)以外の単量体を構成単量体として含んでいてもよい。単量体(a)及び(b)以外の単量体としては、以下の(c)~(m)が挙げられる。
【0049】
(c)窒素原子含有ビニル単量体((a)、(b)、(t)及び(d)~(m)を除く);
(c1)アミド基含有ビニル単量体:
(メタ)アクリルアミド、ジアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-n-又はイソプロピオニルアミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等のアミド基のみに窒素原子を有するものが挙げられる。
【0050】
(c2)ニトロ基含有単量体:
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
(c3)1~3級アミノ基含有ビニル単量体:
1級アミノ基含有ビニル単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有ビニル単量体{アルキル(炭素数1~6)アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[t-ブチルアミノエチルメタクリレート及びメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド[4-ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド及び2-ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有ビニル単量体{ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等]};3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体[N,N-ジメチルアミノスチレン等];含窒素複素環含有ビニル系単量体[モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0051】
(c4)4級アンモニウム塩基含有ビニル単量体:
前記3級アミノ基含有ビニル単量体を、4級化剤(炭素数1~12のアルキルクロライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート及びベンジルクロライド等)を用いて4級化したもの等が挙げられる。具体的には、アルキル(メタ)アクリレート系4級アンモニウム塩[(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルモルホリノアンモニウムクロライド等];アルキル(メタ)アクリルアミド系4級アンモニウム塩[(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド及び(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等];その他の4級アンモニウム塩基含有ビニル系単量体(ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート及びトリメチルビニルフェニルアンモニウムクロライド等)等が挙げられる。
【0052】
(c5)両性ビニル単量体:
N-(メタ)アクリロイルオキシ(又はアミノ)アルキル(炭素数1~10)-N,N-ジアルキル(炭素数1~5)アンモニウム-N-アルキル(炭素数1~5)カルボキシレート(又はサルフェート)[N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムN-メチルカルボキシレート、N-(メタ)アクリロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-メチルカルボキシレート及びN-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピルサルフェート等]。
(c6)ニトリル基含有単量体:
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0053】
(d)脂肪族炭化水素系ビニル単量体((a)、(b)及び(t)を除く):
炭素数2~20のアルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等)及び炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)等が挙げられる。
【0054】
(e)脂環式炭化水素系ビニル単量体((a)、(b)及び(t)を除く):
シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等が挙げられる。
【0055】
(f)芳香族炭化水素系ビニル単量体((a)、(b)及び(t)を除く):
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、4-クロチルベンゼン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0056】
(g)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類((a)、(b)及び(t)を除く):
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1~12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル及びビニル-2-ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0057】
(h)エポキシ基含有ビニル単量体((a)、(b)及び(t)を除く);
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0058】
(i)ハロゲン元素含有ビニル単量体((a)、(b)及び(t)を除く);
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0059】
(j)不飽和ポリカルボン酸のエステル((a)、(b)及び(t)を除く);
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0060】
(k)ヒドロキシル基含有ビニル単量体((a)、(b)及び(t)を除く);
ヒドロキシル基含有芳香族ビニル単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ-又はジ-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル]等が挙げられる。
【0061】
(l)ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体((a)、(b)及び(t)を除く);
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3~8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~100)]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1~4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール[数平均分子量(以下、Mnと略記する):100~300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130~500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110~310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキシド付加物(2~30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn:150~230)ソルビタン等]等が挙げられる。
【0062】
(m)イオン性基含有ビニル単量体((a)、(b)及び(t)を除く);
(m1)アニオン性基含有ビニル単量体:
モノカルボン酸基含有ビニル単量体{不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、α-メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸等]、不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~8)エステル(マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル及びイタコン酸モノアルキルエステル等)};ジカルボン酸基含有ビニル単量体(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸等)等が挙げられる。
【0063】
(m2)スルホン酸基含有ビニル単量体:
炭素数2~6のアルケンスルホン酸[ビニルスルホン酸及び(メタ)アリルスルホン酸等]、炭素数6~12の芳香族ビニル基含有スルホン酸[α-メチルスチレンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルエステル系単量体[スルホプロピル(メタ)アクリレート及び2-(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系単量体[2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等]、スルホン酸基と水酸基を含有するビニル単量体[3-(メタ)アクリルアミド-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸及び3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等]、アルキル(炭素数3~18)アリルスルホコハク酸エステル[ドデシルアリルスルホコハク酸エステル等]等が挙げられる。
【0064】
(m3)硫酸エステル基含有ビニル単量体:
ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等:付加形態は、単独、ランダム付加又はブロック付加のいずれでもよい。)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル、ポリ(重合度2~30)オキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等:付加形態は、単独、ランダム付加又はブロック付加のいずれでもよい。)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル等が挙げられる。
【0065】
(m4)リン酸基含有ビニル単量体:
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数2~6)リン酸モノエステル[(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等]及び(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸[2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸]等が挙げられる。
【0066】
(共)重合体(A)の構成単量体中の単量体(a)の重量割合は、(共)重合体(A)の重量を基準として、冷却性及び基油への溶解性の観点から、5~40重量%が好ましく、更に好ましくは10~30重量%である。
(共)重合体(A)の構成単量体中の単量体(b)の重量割合は、(共)重合体(A)の重量を基準として、基油への溶解性の観点から、60~95重量%が好ましく、更に好ましくは70~90重量%である。
(共)重合体(A)の構成単量体中の単量体(t)の重量割合は、(共)重合体(A)の重量を基準として、基油への溶解性の観点から、10~30重量%が好ましく、更に好ましくは10~20重量%である。
(共)重合体(A)の構成単量体中の単量体(c)の重量割合は、(共)重合体(A)の重量を基準として、基油への溶解性の観点から、10重量%以下が好ましく、更に好ましくは3重量%以下である。
(共)重合体(A)の構成単量体中の単量体(k)の重量割合は、(共)重合体(A)の重量を基準として、基油への溶解性の観点から、5重量%以下が好ましく、更に好ましくは3重量%以下である。
(共)重合体(A)の構成単量体中の(c)~(m)の合計重量割合は、(共)重合体(A)の重量を基準として、基油への溶解性の観点から、10重量%以下が好ましく、更に好ましくは1~5重量%である。
【0067】
(共)重合体(A)のSP値は、8.50~9.50(cal/cm3)1/2であり、好ましくは8.70~9.30(cal/cm3)1/2、更に好ましくは8.80~9.20(cal/cm3)1/2である。
前記SP値が8.50(cal/cm3)1/2以上であると、冷却性に優れ、9.50(cal/cm3)1/2以下であると、基油への溶解性に優れる。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2、P147~154)の152頁(Table.5)に記載の数値(原子又は官能基の25℃における蒸発熱及びモル体積)を用いて、同153頁に記載の数式(28)により算出される値を意味する。具体的には、Fedors法のパラメータである下記表1に記載のΔei及びviの数値から、分子構造内の原子及び原子団の種類に対応した数値を用いて、下記数式に当てはめることで算出することができる。
SP値=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
【0068】
【0069】
例えば、単量体(a)がメタクリル酸6-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)ヘキシルである場合、単量体(a)に由来する構成単位(炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった単量体(a)に由来する下記構造)のSP値は下記の通り計算できる。
-CH2-C(CH3)-CO-O-(CH2)6-O-Ph-Ph-CN
(*Phは二置換のフェニル基を表す。)
SP値=[{1180+350+1125+4300+1180×6+800+7630×2+6100}/{16.1-19.2+33.5+18.0+16.1×6+3.8+52.4×2+24.0}]1/2
=11.42(cal/cm3)1/2
また、例えば、単量体(a)がメタクリル酸11-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ウンデシルである場合、単量体(a)に由来する構成単位(炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった単量体(a)に由来する下記構造)のSP値は下記の通り計算できる。
-CH2-C(CH3)-CO-O-(CH2)11-O-Ph-N=N-Ph-(CH2)3-CH3
(*Phは二置換のフェニル基を表す。)
SP値=[{1180+350+1125+4300+1180×11+800+7630×2+2800×2+1180×3+1125}/{16.1-19.2+33.5+18.0+16.1×11+3.8+52.4×2+5×2+16.1×3+33.5}]1/2
=10.42(cal/cm3)1/2
また、例えば、単量体(b)がメタクリル酸2-テトラデシルオクタデシルである場合、単量体(b)に由来する構成単位(炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった単量体(b)に由来する下記構造)のSP値は下記の通り計算できる。
-CH2-C(CH3)-CO-O-CH2CH{(CH2)13CH3}{(CH2)15(CH3)}
SP値=[{1180+350+1125+4300+1180+820+(1180×13+1125)+(1180×15+1125)}/{16.1-19.2+33.5+18.0+16.1-1.0+(16.1×13+33.5)+(16.1×15+33.5}]1/2
=8.72(cal/cm3)1/2
また、例えば、(共)重合体(A)が前記メタクリル酸6-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)ヘキシルが10重量%と、メタクリル酸11-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ウンデシルが30重量%と、メタクリル酸2-テトラデシルオクタデシルが60重量%の重合物である場合、下記の通り各単量体に由来する構成単位(炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった構造)のSP値の重量分率に基づいて、相加平均することにより共重合体のSP値を算出することができる。
共重合体のSP値=(11.42×10+10.42×30+8.72×60)/100=9.50(cal/cm3)1/2
また、例えば、(共)重合体(A)が前記メタクリル酸11-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ウンデシルが40重量%と、メタクリル酸2-テトラデシルオクタデシルが60重量%の重合物である場合、下記の通り各単量体に由来する構成単位(炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった構造)のSP値の重量分率に基づいて、相加平均することにより共重合体のSP値を算出することができる。
共重合体のSP値=(10.42×40+8.72×60)/100=9.40(cal/cm3)1/2
(共)重合体(A)のSP値は、使用する単量体、重量分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。具体的には、アルキル基の炭素数の長い単量体を多く使用することでSP値を小さくすることができ、アルキル基の炭素数の短い単量体を多く使用することでSP値を大きくすることができる。
【0070】
(共)重合体(A)中の(メタ)アクリレート単量体(a)に由来するメソゲン基の重量割合は、(共)重合体(A)の重量を基準として、冷却性の観点から、3~15重量%が好ましく、更に好ましくは7~15重量%である。
前記重量割合は、単量体(a)中のメソゲン基の重量割合(Ma重量%)と、(A)を構成する単量体中の(a)の重量割合(Wa重量%)とから下記の通り算出することができる。
(A)中のメソゲン基の重量割合(重量%)=Σ(Ma×Wa)/100
【0071】
(共)重合体(A)の重量平均分子量(以下、Mwと略記する)は、基油への溶解性の観点から、10,000~100,000が好ましく、更に好ましくは15,000~50,000である。
【0072】
(共)重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合する方法が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、アルキル(炭素数3~10)ベンゼン、メチルエチルケトン及び後述する基油等が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスバレロニトリル等)及び過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド及びラウリルパーオキシド等)が挙げられる。
更に必要により、連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは50~140℃であり、更に好ましくは70~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により(A)を得ることができる。
(A)が2種以上の単量体を構成単量体とする場合、重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。熱伝導性の観点から、ブロック共重合体が好ましい。本発明においては、反応性の異なる単量体(例えば、(a)としてアクリロイル基を有する単量体を用いて、(b)としてメタクリロイル基を有する単量体を用いる等)を用いて、ブロック共重合体に近い共重合体を得てもよい。
(A)のMwは、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量又は連鎖移動剤量等の重合条件を調整することにより調整可能である。
【0073】
<潤滑油添加剤>
本発明の潤滑油添加剤は、前記(共)重合体(A)を含んでいれば良く、ハンドリング性の観点から、基油を含有してもよい。
基油としては、鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油等)、合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα-オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等]及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち部材適合性の観点から、好ましいのは鉱物油である。
【0074】
潤滑油添加剤中の(共)重合体(A)の含有量は、ハンドリング性の観点から、潤滑油添加剤の重量を基準として、10~50重量%が好ましく、更に好ましくは20~40重量%である。
潤滑油添加剤中の基油の含有量は、ハンドリング性の観点から、潤滑油添加剤の重量を基準として、50~90重量%が好ましく、更に好ましくは60~80重量%である。
【0075】
本発明の潤滑油添加剤は、基油の溶解性に優れており、潤滑油の熱伝導性を高くすることができるので、潤滑油基油の冷却性を高める潤滑油添加剤として使用することができ、例えば、電気自動車用又はハイブリッド車用の潤滑油組成物の潤滑油添加剤として使用することができ、特に電気自動車又はハイブリッド車における変速機と電動モーターとの兼用油の潤滑油添加剤として有用である。
【0076】
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、前記潤滑油添加剤及び基油を含む。
潤滑油組成物中の(共)重合体(A)の含有量は、冷却性の観点から、潤滑油組成物の重量を基準として、4.0~20.0重量%が好ましく、更に好ましくは8.0~20.0重量%である。
潤滑油組成物中の潤滑油添加剤の含有量は、冷却性の観点から、潤滑油組成物の重量を基準として、10.0~50.0重量%が好ましく、更に好ましくは20.0~50.0重量%である。
潤滑油組成物中の基油の含有量は、(A)の溶解性の観点から、潤滑油組成物の重量を基準として、80.0~96.0重量%が好ましく、更に好ましくは80.0~92.0重量%である。
【0077】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の潤滑油添加剤以外のその他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキル
ベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮
合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミ
ン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオ
カーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(6)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(7)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(8)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
(9)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
(10)流動点降下剤
ポリアルキルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等;
(11)粘度指数向上剤
ポリメタアクリレート、分散型ポリメタアクリレート、オレフィンコポリマー(ポリイソブチレン、エチレン-プロピレン共重合体)、分散型オレフィンコポリマー、ポリアルキルスチレン、スチレン-ブタジエン水添共重合体、スチレン-無水マレイン酸エステル共重合体、星状イソプレン等;
【0078】
これらの添加剤は1種だけ添加してもよいし、必要に応じて2つ以上の添加剤を添加することもできる。またこれらの添加剤を配合したものを性能添加剤、またはパッケージ添加剤と呼ぶこともあり、それを添加してもよい。
これらの添加剤のそれぞれの含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~15重量%であることが好ましい。また各添加剤を合計した含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.3~20重量%であり、次にさらに好ましくは3~10重量%である。
【0079】
本発明の潤滑油組成物は、熱伝導性が高く、冷却性が高いので、例えば、高い冷却性が求められる電気自動車用又はハイブリッド車用の潤滑油組成物として使用することができ、特に電気自動車又はハイブリッド車における変速機と電動モーターとの兼用油として用いられる潤滑油組成物として有用である。
【実施例0080】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
<実施例1 共重合体(A-1)を含む潤滑油添加剤(1)の製造>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、単量体配合物{単量体(a-1)[メタクリル酸11-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ウンデシル]20重量部、単量体(b1-2)[メタクリル酸2-ドデシルヘキサデシル(Sasol製ISOFOL28とメタクリル酸とのエステル化物]40重量部、単量体(b1-3)[メタクリル酸2-テトラデシルオクタデシル(Sasol製ISOFOL32とメタクリル酸とのエステル化物]40重量部}合計100重量部、重合基油として鉱物油(B-1)[SKルブリカンツ社製YUBASE2]150重量部、及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.4重量部、ドデシルメルカプタン0.5重量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った。密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で5時間重合反応を行った。90℃に昇温後、1時間熟成を行い、120℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を1時間かけて除去し、40.0重量%の共重合体(A-1)を含む潤滑油添加剤(1)を得た。
【0082】
<実施例2 共重合体(A-2)を含む潤滑油添加剤(2)の製造>
実施例1において、ドデシルメルカプタンを0.2重量部に変更する以外は同様に反応を行い、40.0重量%の共重合体(A-2)を含む潤滑油添加剤(2)を得た。
【0083】
<実施例3~7、比較例1 共重合体(A-3)~(A-7)及び(A’-1)を含む潤滑油添加剤の製造>
実施例1において、単量体配合物と重合基油を表2に記載したものに変更する以外は同様に反応を行い、それぞれ40.0重量%の共重合体を含有する潤滑油添加剤(3)~(7)及び(1’)を得た。
【0084】
<比較例2 共重合体(A’-2)を含む潤滑油添加剤の製造>
実施例1において、単量体配合物と重合基油を表2に記載したものに変更する以外は同様に反応を行い、40.0重量%の共重合体を含有する潤滑油添加剤(2’)を得たが、共重合体は基油に溶解せず、白色沈殿物となった。
【0085】
【0086】
なお、表2に記載の単量体(a)、(b)、(t)、(c)及び(k)の組成は、以下に記載した通りである。
(a-1):メタクリル酸11-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルオキシ]ウンデシル
(a-2):アクリル酸6-(4’-シアノ-4-ビフェニリルオキシ)ヘキシル
(b1-1):メタクリル酸2-デシルテトラデシル
(b1-2):メタクリル酸2-ドデシルヘキサデシル(Sasol製ISOFOL28とメタクリル酸とのエステル化物)
(b1-3):メタクリル酸2-テトラデシルオクタデシル(Sasol製ISOFOL32とメタクリル酸とのエステル化物)
(t-1):1500Mメタクリレート{ポリブタジエンマクロモノマー(CRAY VALLEY社製HLBH-1500M[1,2-付加体/1,4-付加体=65/35, Mn=2700]とメタクリル酸のエステル化物)}
(t-2):L1203/L3203メタクリレート{片末端1級水酸基水添ポリブタジエン[製品名:L-1203(クラレ社製)、1,2-ブチレンの比率=45モル%、イソブチレン及び1,2-ブチレンの合計比率=45モル%、1,2-付加体/1,4-付加体のモル比=45/55、Mn:7,000]のメタクリル酸エステル化物50重量部と、片末端1級水酸基水添ポリブタジエン[製品名:L-3203(クラレ社製)、1,2-ブチレンの比率=65モル%、イソブチレン及び1,2-ブチレンの合計比率=65モル%、1,2-付加体/1,4-付加体のモル比=65/35、Mn:7,000]のメタクリル酸エステル化物50重量部の混合物}
(c3-1):N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
(k-1):ヒドロキシエチルメタクリレート
【0087】
また、表2~3で使用した基油は以下の通りである。
(B-1):鉱物油(SKルブリカンツ社製YUBASE2、40℃動粘度:8.7mm2/s、100℃動粘度:2.4mm2/s)
(B-2):2-エチルヘキシルアルコールとアジピン酸とのジエステル(40℃動粘度:7.8mm2/s、100℃動粘度:2.4mm2/s)
【0088】
(t-1)に由来する構成単位のSP値の算出
1,2-ブチレン基及び1,4-ブチレン基の合計個数=(2700-17)/56=47.9
(1)メタクリロイルオキシ基部分のΣΔei及びΣΔvi
ΣΔei=1125(CH3)+1180(CH2)+350(C)+4300(CO2)=6955
ΣΔvi=33.5(CH3)+16.1(CH2)-19.2(C)+18.0(CO2)=48.4
(2)1,2-ブチレン基部分のΣΔei及びΣΔvi
ΣΔei=1180(CH2)×2+1125(CH3)+820(CH)=4305
ΣΔvi=16.1(CH2)×2+33.5(CH3)-1.0(CH)=64.7
(3)1,4-ブチレン基部分のΣΔei及びΣΔvi
ΣΔei=1180(CH2)×4=4720
ΣΔvi=16.1(CH2)×4=64.4
(4)(t-1)に由来する構成単位のΣΔei及びΣΔvi
ΣΔei=6955+4305×47.9×0.45+4720×47.9×0.55=224146.2
ΣΔvi=48.4+64.7×47.9×0.45+64.4×47.9×0.55=3140.3
したがって、SP値は、下記となる。
SP値=(224146.2/3140.3)1/2=8.45(cal/cm3)1/2
【0089】
(t-2)に由来する構成単位のSP値の算出
(I)L-1203に由来する構造
1,2-ブチレン基及び1,4-ブチレン基の合計個数=(7000-17)/56=124.7
ΣΔei=6955+4305×124.7×0.45+4720×124.7×0.55=572251.3
ΣΔvi=48.4+64.7×124.7×0.45+64.4×124.7×0.55=8095.9
したがって、SP値は、下記となる。
SP値=(572235.1/8095.9)1/2=8.41(cal/cm3)1/2
(II)L-3203に由来する構造
1,2-ブチレン基及び1,4-ブチレン基の合計個数=(7000-17)/56=124.7
ΣΔei=6955+4305×124.7×0.65+4720×124.7×0.35=561901.2
ΣΔvi=48.4+64.7×124.7×0.65+64.4×124.7×0.35=8103.4
したがって、SP値は、下記となる。
SP値=(561901.2/8103.4)1/2=8.33(cal/cm3)1/2
(t-2)はL-1203が50重量%とL-3203が50重量%であることから
SP値=8.41×0.5+8.33×0.5=8.37(cal/cm3)1/2
【0090】
<実施例8~16、比較例3~6 潤滑油組成物(V-1)~(V-9)及び(V’-1)~(V’-4)の製造と評価>
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、潤滑油添加剤(1)~(7)及び(1’)~(2’)と、基油とを表3に記載の部数で配合して、潤滑油組成物(V-1)~(V-9)及び(V’-1)~(V’-4)を得た。
【0091】
【0092】
潤滑油組成物(V-1)~(V-9)及び(V’-1)~(V’-4)の25℃における溶解性、接触角を以下の方法で測定した。なお、(V’-4)については基油中に不溶解物が認められたため熱伝導率を評価しなかった。
【0093】
<溶解性の評価>
表3に記載の部数で配合した潤滑油組成物を1分間25℃で撹拌(回転数500rpm)し、目視で確認し、均一に溶解した場合は○、不溶解物が認められる場合は×として評価した。
【0094】
<熱伝導率の評価>
デカゴン社製 熱特性計KD2proを用い、シングルニードルセンサーにて室温25℃で測定した。また、潤滑油組成物中に含まれる基油の熱伝導率に対する潤滑油組成物の熱伝導率(潤滑油組成物の熱伝導率/基油の熱伝導率×100)を熱伝導率向上率(%)として表に記載した。
【0095】
表3の結果から、本発明の潤滑油添加剤は潤滑油基油への溶解性が優れており、潤滑油の熱伝導性を高くすることができ、潤滑油の冷却性を高めることができることが分かる。
本発明の潤滑油添加剤は、基油への溶解性が高く、また本発明の潤滑油添加剤を含む潤滑油組成物は、熱伝導性が高く、冷却性が高いので、例えば、高い冷却性が求められる電気自動車用又はハイブリッド車用の潤滑油組成物として使用することができ、特に電気自動車又はハイブリッド車における変速機と電動モーターとの兼用油として用いられる潤滑油組成物として有用である。