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▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163138
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】防錆剤
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/12 20060101AFI20231101BHJP
   C23F 11/14 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C23F11/12 101
C23F11/14 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059854
(22)【出願日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2022073065
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】勝川 吉隆
【テーマコード(参考)】
4K062
【Fターム(参考)】
4K062AA01
4K062BB07
4K062BB12
4K062BB14
4K062CA03
4K062CA04
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、幅広い金属部材(例えば、鉄、銅、アルミニウム)に対して優れた防錆・防食性能を有する防錆剤を提供することである。
【解決手段】脂肪族多価カルボン酸(A)と環式モノアミン(b)のアルキレンオキシド付加物(B)との塩(AB)とを含有する防錆剤であって、前記アルキレンオキシド付加物(B)を構成するアルキレンオキシド中のプロピレンオキシドの比率が50モル%以上である防錆剤。好ましくは前記脂肪族多価カルボン酸(A)の炭素数が4~22である前記防錆剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族多価カルボン酸(A)と環式モノアミン(b)のアルキレンオキシド付加物(B)との塩(AB)とを含有する防錆剤であって、前記アルキレンオキシド付加物(B)を構成するアルキレンオキシド中のプロピレンオキシドの比率が50モル%以上である防錆剤。
【請求項2】
脂肪族多価カルボン酸(A)の炭素数が4~22である請求項1に記載の防錆剤。
【請求項3】
前記アルキレンオキシド付加物(B)における一分子当たりのアルキレンオキシドの平均付加モル数が1~8モルである請求項1又は2に記載の防錆剤。
【請求項4】
前記環式モノアミン(b)が炭素数6~12の飽和環式モノアミンである請求項1又は2に記載の防錆剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の防錆剤及び水を含む水性防錆剤であって、水性防錆剤のpH(25℃)が5~10である水性防錆剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防錆剤に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材(例えば、鋼、及び鋳鉄などの鉄部材;銅、亜鉛、アルミニウム、及びこれら金属の合金などの非鉄金属部材)は、大気中の湿気、酸素、及び二酸化炭素等により、その表面に酸化物、水酸化物、又は炭酸塩等の塩類のような錆が生成され易く、さらに表面から内部に向かって腐食が進行して化学的に劣化しやすいものである。
【0003】
このような錆の生成を防止するために、従来から数多くの無機物、金属、有機物などの防錆処理が行われている。このうち、有機物皮膜により防錆を行う方法は、簡便でかつ効果的な方法として多用されている。これらに用いられる防錆剤としては、例えば、水性防錆剤、油性防錆剤、防錆グリース、気化性防錆剤等が挙げられる。
【0004】
有機系防錆剤としては、例えば、有機アミン塩、カルボン酸系化合物、カルボン酸塩系化合物、スルホン酸塩系化合物、及び複素環化合物などの有機系防錆剤が知られている。
例えば、特許文献1では、特定のポリエーテルポリアミンを含有する水溶性防食剤組成物が開示されている。
また、特許文献2では、分岐カルボン酸と環状アミンのアルキレンオキシド付加物との塩を含有することを特徴とする水溶性防錆剤が開示されている。
【0005】
しかしながら、前記の防錆剤組成では、防錆剤の添加量が少量であると、十分な防錆性能が得られない。また、特定の金属への防錆性能は良好であるが、複数の金属部材に対しての効果が得られない問題がある。
一方、近年、軽量化等の目的で、鉄部材と非鉄金属部材とを複合化した金属部品が多く使用されており、当該複合化した金属部品に対しても防錆・防食性能が高い実用的な防錆剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-169681号公報
【特許文献2】特開平8-3772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、幅広い金属部材(例えば、鉄、銅、アルミニウム)に対して優れた防錆・防食性能を有する防錆剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、脂肪族多価カルボン酸(A)と環式モノアミン(b)のアルキレンオキシド付加物(B)との塩(AB)とを含有する防錆剤であって、前記アルキレンオキシド付加物(B)を構成するアルキレンオキシド中のプロピレンオキシドの比率が50モル%以上である防錆剤;前記防錆剤及び水を含む水性防錆剤であって、水性防錆剤のpH(25℃)が5~10である水性防錆剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防錆剤は、幅広い金属部材(例えば、鉄、銅、アルミ)に対して優れた防錆・防食性能を発揮するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の防錆剤は、脂肪族多価カルボン酸(A)と環式モノアミン(b)のアルキレンオキシド付加物(B)との塩(AB)とを含有する防錆剤であって、前記アルキレンオキシド付加物(B)を構成するアルキレンオキシド中のプロピレンオキシドの比率が50モル%以上である防錆剤である。塩(AB)は1種を含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0011】
脂肪族多価カルボン酸(A)としては、カルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸が含まれ、例えば、脂肪族ジカルボン酸(A1)、脂肪族トリカルボン酸(A2)、4価以上の脂肪族ポリカルボン酸(A3)等が挙げられる。
【0012】
脂肪族ジカルボン酸(A1)としては、炭素数2~25のものが含まれ、例えば、直鎖状脂肪族ジカルボン酸[例えば、直鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸{例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸等}、直鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸{例えば、フマル酸、マレイン酸、2-又は3-ヘキセン二酸、2-又は3-ヘプテン二酸、2-、3-又は4-オクテン二酸等}等]、分岐鎖状脂肪族ジカルボン酸[例えば、分岐鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸{例えば、メチルコハク酸、2-又は3-メチルアジピン酸、3,3-ジメチルアジピン酸等}、分岐鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸{例えば、シトラコン酸、メサコン酸等}等]、脂環式ジカルボン酸{例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等}等が挙げられる。
これらのうち、防錆性の観点から、直鎖状脂肪族ジカルボン酸が好ましく、更に好ましくは直鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸である。
【0013】
脂肪族トリカルボン酸(A2)としては、炭素数4~25のものが含まれ、例えば、鎖状飽和脂肪族トリカルボン酸{例えば、メタントリカルボン酸、トリカルバリル酸、不飽和モノカルボン酸(炭素数8~21のものが含まれ、例えば、オレイン酸、バクセン酸、リシノール酸、リノール酸、エレオステアリン酸、ミード酸等)のマレイン化物等}、脂環式トリカルボン酸{例えば、シクロヘキサントリカルボン酸等}等が挙げられる。
【0014】
脂肪族ポリカルボン酸(A3)としては、炭素数5~25のものが含まれ、例えば、鎖状脂肪族ポリカルボン酸{例えば、メタンテトラカルボン酸、ブタン-1,1,1,2-テトラカルボン酸、ブタン-1,1,1,3-テトラカルボン酸、不飽和ジカルボン酸のマレイン化物等}等が挙げられる。
【0015】
脂肪族多価カルボン酸(A)のカルボキシル基1つ当たりの炭素数((A)の炭素数/(A)中のカルボキシル基の数)は、防錆性の観点から、1~20が好ましく、更に好ましくは3~15である。この範囲であると、疎水基(炭化水素基)による皮膜形成能力とカルボキシル基による水溶性及び金属吸着力とのバランスがよく、金属表面に水や酸素の遮蔽能力の高い防錆皮膜ができやすく、防錆効果が得られやすい傾向がある。
【0016】
脂肪族多価カルボン酸(A)としては、水溶性の観点から、炭素数が4~22の脂肪族多価カルボン酸が好ましく、更に好ましくは6~16の脂肪族多価カルボン酸であり、特に好ましくは8~14の脂肪族多価カルボン酸である。また、防錆性及び水溶性のバランスの観点から、炭素数4~22の脂肪族多価カルボン酸が好ましく、更に好ましくは炭素数10~22の2~3価の脂肪族多価カルボン酸であり、特に好ましくはドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸及び不飽和モノカルボン酸(炭素数14~18)のマレイン化物である。この範囲であると、疎水基(炭化水素基)による皮膜形成能力とカルボキシル基による水溶性及び金属吸着力とのバランスがよく、金属表面に水や酸素の遮蔽能力の高い防錆皮膜ができやすい傾向がある。
【0017】
環式モノアミン(b)としては、炭素数4~12の環状炭化水素基含有モノアミン及び複素環式モノアミンが含まれ、例えば、飽和環式モノアミン[例えば、脂環式アミン(環状飽和炭化水素基含有モノアミン){例えば、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、トリメチルシクロヘキシルアミン、アミノメチルシクロヘキサン、1-シクロヘキシルエチルアミン等}、飽和複素環式モノアミン{例えば、モルホリン、ピペリジン等}等]、不飽和環式モノアミン(環状不飽和炭化水素基含有モノアミン)[例えば、芳香族アミン{例えば、アニリン、アニシジン、トルイジン、トリメチルアニリン等}、不飽和複素環式モノアミン{例えば、ピロール、アゼピン、アゾニン等}等]等が挙げられる。
これらのうち、防錆性の観点から、好ましくは炭素数6~12の飽和環式モノアミンであり、更に好ましくは炭素数6~12の脂環式モノアミンであり、特に好ましくはシクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンである。
本発明において、アルキレンオキサイド付加物(B)が(b)の有する環式の官能基に由来する嵩高い基を有することにより、(B)の立体障害により、塩(AB)の量が少量でも金属表面に均一に防錆皮膜を形成することができると推察される。
【0018】
本発明において、アルキレンオキシド付加物(B)は、前記環式モノアミン(b)のアルキレンオキシド付加物であり、アルキレンオキシドとしては、炭素数2~3のものが含まれ、例えば、エチレンオキシド(以下においてEOと略記することがある)、プロピレンオキシド{例えば、1,2-プロピレンオキシド(以下において、POと略記することがある)、1,3-プロピレンオキシド等}等が挙げられる。
【0019】
アルキレンオキシド付加物(B)を構成するアルキレンオキシド中のプロピレンオキシドの比率は、50モル%以上であり、金属親和性の観点から、好ましくは60~100モル%であり、更に好ましくは80~100モル%である。
プロピレンオキシドの比率が50モル%以上であることで、塩(AB)が溶液中(特に水溶液中)で金属付近へ移動しやすく、吸着力が向上し、低添加量で十分な防錆性が得られる。
【0020】
防錆剤に含まれるアルキレンオキシド付加物(B)における一分子当たりのアルキレンオキシドの平均付加モル数は、防錆性の観点から、1~8モルが好ましく、更に好ましくは1~4モルである。
なお、前記平均付加モル数の計算には、防錆剤中に含まれる環式モノアミン(b)の量及び環式モノアミン(b)のアルキレンオキシド付加物の量を基準として算出する。
【0021】
好ましいアルキレンオキシド付加物(B)としては、例えば、シクロヘキシルアミンのPO1~8モル付加物、シクロヘキシルアミンのPO1モルEO1モル付加物、シクロヘキシルアミンのPO2モルEO1~2モル付加物、シクロヘキシルアミンのPO3モルEO1~3モル付加物、シクロヘキシルアミンのPO4モルEO1~4モル付加物、ジシクロヘキシルアミンのPO1~8モル付加物、ジシクロヘキシルアミンのPO1モルEO1モル付加物、ジシクロヘキシルアミンのPO2モルEO1~2モル付加物、ジシクロヘキシルアミンのPO3モルEO1~3モル付加物、ジシクロヘキシルアミンのPO4モルEO1~4モル付加物等が挙げられる。
【0022】
前記脂肪族多価カルボン酸(A)と前記アルキレンオキシド付加物(B)との塩(AB)を得る方法としては、例えば、(i)前記(A)と前記(B)とをそのまま混合する方法、(ii)前記(A)と前記(B)とをそれぞれ水、親水性有機溶媒、又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒に溶解又は分散させたものを混合する方法、(iii)水、親水性有機溶媒、又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒に前記(A)と前記(B)とを添加し混合する方法等が挙げられる。
【0023】
親水性有機溶媒(25℃の水100gに10g以上溶解するもの)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0024】
混合する場合、混合装置を用いてもよく、混合装置としては、撹拌機、及び分散機等が挙げられる。
撹拌機としては、メカニカルスターラー及びマグネチックスターラー等が挙げられる。
分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル及びビーズミル等が挙げられる。
混合する際の温度及び時間には制限がなく、製造する規模や設備等に応じて適宜決めることができ、例えば、製造規模が数kg程度の場合、5~40℃で0.1~5時間程度が好ましい。
【0025】
アルキレンオキシド付加物(B)と脂肪族多価カルボン酸(A)とのモル比(B/A)は、50/50~90/10が好ましく、更に好ましくは60/40~80/20である。
【0026】
<水性防錆剤>
本発明の防錆剤は、水で希釈して水性防錆剤として用いてもよい。引火性、安全性、あるいは環境に与える影響などの観点から、水性防錆剤が好ましい。
【0027】
水性防錆剤中の前記脂肪族多価カルボン酸(A)、前記アルキレンオキシド付加物(B)及び塩(AB)の合計含有量は、水性防錆剤の重量を基準として、長期間の防錆性の観点から、0.01~1.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.05~0.5重量%である。
【0028】
水性防錆剤には、本発明の防錆剤及び水に加えて、前記親水性有機溶媒を含有してもよい。
【0029】
水性防錆剤のpH(25℃)は、アルミの防錆性の観点から、5~10が好ましく、更に好ましくは7~10であり、特に好ましくは8~9である。
なお、pHは、JIS Z8802に記載の方法に準じてガラス電極法によって測定することができる。
【0030】
<油性防錆剤>
本発明の防錆剤を金属に適用する場合、油で希釈して油性防錆剤として用いてもよい。
【0031】
油性防錆剤中の前記脂肪族多価カルボン酸(A)、前記アルキレンオキシド付加物(B)及び塩(AB)の合計含有量は、油性防錆剤の重量を基準として、長期間の防錆性の観点から、0.01~1.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.05~0.5重量%である。
【0032】
油としては、鉱物油(例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理の1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られるパラフィン系又はナフテン系の鉱油等)、合成油(ポリオレフィン、ポリアルキレングリコール油、エステル油等)等が挙げられる。
【0033】
本発明の防錆剤は、(A)が脂肪族多価カルボン酸であり、環式モノアミン(b)のアルキレンオキシド付加物(B)のアルキレンオキシド中のPO比率が50モル%以上であることにより、鉄及び非鉄金属に対する吸着力が極めて高く、少量でも金属表面に均一な防錆皮膜を形成することができる。したがって、本発明の防錆剤は、幅広い金属部材(例えば、鉄、銅、アルミニウム等)に対して高い吸着力を発揮し、水や酸素の遮蔽力が優れており、少量でも極めて優れた防錆・防食性能を発揮することができると推察される。
【0034】
本発明の防錆剤は、幅広い金属部材に適用でき、例えば、鉄、銅、アルミニウム、真鍮、マグネシウム等に用いることができ、これらの中でも特に鉄、銅及びアルミニウムに有効である。
【実施例0035】
以下の実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
<製造例1>
温度制御装置を備えたオートクレーブにシクロヘキシルアミン99重量部(関東化学(株)製試薬、純度100%)(1モル部)を仕込み、耐圧滴下ロートに仕込んだPO58重量部(1モル部)を反応温度が140~150℃を保つように制御しながら滴下した後、145℃でさらに2時間撹拌して、反応させた。その後、80℃に冷却した後、600Pa以下に減圧することで脱水を行い、シクロヘキシルアミンPO1モル付加物157重量部を得た。
【0037】
<製造例2>
PO58重量部(1モル部)をPO116重量部(2モル部)に代えた以外は製造例1と同様にして、シクロヘキシルアミンPO2モル付加物を得た。
【0038】
<製造例3>
PO58重量部(1モル部)をPO348重量部(6モル部)に代えた以外は製造例1と同様にして、シクロヘキシルアミンPO6モル付加物を得た。
【0039】
<製造例4>
PO58重量部(1モル部)をPO58重量部(1モル部)及びEO44重量部(1モル部)に代えた以外は製造例1と同様にして、シクロヘキシルアミンのPO1モルEO1モル付加物を得た。
【0040】
<製造例5>
PO58重量部(1モル部)をPO232重量部(4モル部)及びEO176重量部(4モル部)に代えた以外は製造例1と同様にして、シクロヘキシルアミンのPO4モルEO4モル付加物を得た。
【0041】
<製造例6>
PO58重量部(1モル部)をPO174重量部(3モル部)及びEO44重量部(1モル部)に代えた以外は製造例1と同様にして、シクロヘキシルアミンのPO3モルEO1モル付加物を得た。
【0042】
<製造例7>
PO58重量部(1モル部)をPO232重量部(4モル部)及びEO44重量部(1モル部)に代えた以外は製造例1と同様にして、シクロヘキシルアミンのPO4モルEO1モル付加物を得た。
【0043】
<製造例8>
シクロヘキシルアミン99重量部をジシクロヘキシルアミン181重量部(東京化成工業(株)製試薬、純度>99%)(1モル部)に代えた以外は製造例1と同様にして、ジシクロヘキシルアミンのPO1モル付加物を得た。
【0044】
<比較製造例1>
PO58重量部(1モル部)をEO44重量部(1モル部)に代えた以外は製造例1と同様にして、シクロヘキシルアミンのEO1モル付加物を得た。
【0045】
<比較製造例2>
PO58重量部(1モル部)をEO264重量部(6モル部)に代えた以外は製造例1と同様にして、シクロヘキシルアミンのEO6モル付加物を得た。
【0046】
<比較製造例3>
PO58重量部(1モル部)をEO132重量部(3モル部)PO58重量部(1モル部)に代えた以外は製造例1と同様にして、シクロヘキシルアミンのEO3モルPO1モル付加物を得た。
【0047】
<比較製造例4>
PO58重量部(1モル部)をEO44重量部(1モル部)に代えた以外は製造例8と同様にして、ジシクロヘキシルアミンのEO1モル付加物を得た。
【0048】
<実施例1~11及び比較例1~5>
表1~2に記載の脂肪族多価カルボン酸(A)とアルキレンオキシド付加物(B)とを表1~2に記載のモル比で混合し、中和塩にして、防錆剤(X-1)~(X-11)及び(比X-1)~(比X-5)を製造した。さらに、水道水にて防錆剤の濃度を0.05重量%に希釈し、均一に混合して、本発明の水性防錆剤(Y-1)~(Y-11)及び比較用の水性防錆剤(比Y-1)~(比Y-5)を得た。得られた水性防錆剤のpHを脂肪族多価カルボン酸(A)又はアルキレンオキシド付加物(B)を少量添加することで9.0となるように微調整した。
なお、pH測定は、25℃でpHメータ(HORIBA社製、「卓上型pHメータF-71」)を用いて、JIS Z8802に記載の方法に準拠して測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
<評価>
防錆性の評価は、実施例及び比較例で作成した水性防錆剤を用いて、JIS K2241の「6.9 金属腐食試験方法」に記載の腐食試験に沿って、下記のように行った。
【0052】
各金属試験片は、耐水ペーパー(粒度320A 住友スリーエム社製)と水を用いて研磨後、トルエンとアセトンを用いて洗浄した各短冊型試験片〔鋼板{長さ76mm、幅12mm、厚さ2mmの鋼板、JIS G3141(冷間圧延鋼板)に記載のSPCC}、銅板{長さ75mm、幅12mm、厚さ2mmの銅板、JIS H3100に記載のC1100P}、アルミニウム板{長さ75mm、幅12mm、厚さ2mmのアルミニウム板、JIS H4000に記載のA1050P}〕を入れた試験管(内径15mm、高さ130mm)に各水性防錆剤10mlを注ぎ、試験片を半浸漬させた。その試験管を密閉し、25℃に温調、48時間放置した。
48時間後、試験片を取り出し、水洗、乾燥後、試験前後の表面の変化を目視で観察し、下記の評価基準で評価した。また、重量を電子天秤(メトラー社製、AE-240)で測定し、重量変化(mg/cm){(水性防錆剤処理前の短冊型試験片の重量)-(水性防錆剤で処理、乾燥後の重量)}/(短冊型試験片の表面積)を計算して評価した。重量変化が小さい程、防錆性が良好であることを意味する。
◎:試験前と全く変化がないかまたはほぼ同じ色調および光沢を有する。
○:試験前に比べて若干変化が見られる。
△:試験前に比べて変色が著しいが、全面腐食、孔食は見られない。
×:変色の有無に関わらず全面腐食、孔食等がある。
【0053】
表1~2の結果から、本発明の防錆剤を用いると、鉄、銅及びアルミニウム全ての試験片の外観および質量の変化が小さいことから、幅広い金属部材(例えば、鉄、銅、アルミニウム)に対して防錆性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の防錆剤は、幅広い金属部材に適用でき、例えば、鉄、銅、アルミニウム、真鍮、マグネシウム等に用いることができ、これらの中でも特に鉄、銅及びアルミニウムに有効である。また、特に鉄部材と非鉄金属部材(例えば、銅、アルミニウム等)とを複合化した金属部品用の防錆剤として有用である。