(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163152
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】電解質組成物、擬固体電解質およびこれを用いたリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20231101BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231101BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070694
(22)【出願日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】63/335,452
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】111143492
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】王允▲斉▼
(72)【発明者】
【氏名】羅仁志
(72)【発明者】
【氏名】張雅淇
(72)【発明者】
【氏名】洪博揚
(72)【発明者】
【氏名】葉定儒
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK11
5H029AK16
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AM16
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電解質組成物、擬固体電解質およびこれを用いたリチウムイオン電池の提供。
【解決手段】電解質組成物は、成分(A)、成分(B)および成分(C)を含む。成分(A)は、第1のポリマー(A1)および第2のポリマー(A2)の組み合わせ、または第3のポリマー(A3)である。第1のポリマー(A1)は式(I)で示される繰り返し単位を有し、第2のポリマー(A2)は式(II)で示される繰り返し単位を有し、第3のポリマー(A3)が式(I)および式(II)で示される繰り返し単位を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー(A1)と第2のポリマー(A2)との組み合わせ、または第3のポリマー(A3)である成分(A)であって、前記第1のポリマー(A1)が式(I)で示される繰り返し単位を有し、前記第2のポリマー(A2)が式(II)で示される繰り返し単位を有し、前記第3のポリマー(A3)が式(I)で示される繰り返し単位および式(II)で示される繰り返し単位を有する、成分(A)と、
【化1】
(式中、R
1は水素、またはメチル基であり、R
2はオキシラニル基(oxiranyl group)、メチルオキシラニル基(methyloxiranyl group)、グリシジル基(glycidyl group)、メチルグリシジル基(methylglycidyl group)、オキセタニル基(oxetanyl group)、または(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基((3,4-epoxycyclohexyl)methyl group)であり、Z
1はC
1-10アルカンジイル基、
【化2】
であり、n>1であり、Z
2はC
1-10アルカンジイル基であり、R
3は水素、またはメチル基であり、R
4およびR
5はそれぞれ独立にC
1-10アルキル基、C
1-10アルコキシ基、C
4-8シクロアルキル基(cycloalkyl group)、C
4-8シクロアルコキシ基(cycloalkoxy group)、C
5-12シクロアルキルアルキル基(cycloalkylalkyl group)、C
5-12シクロアルキルアルコキシ基(cycloalkylalkoxy group)、置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)、置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)、置換されたもしくは未置換のベンジル基(benzyl group)、または置換されたもしくは未置換のベンジルオキシ基(benzyloxy group)であるか、あるいは、R
4が置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)であり、R
5が置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)であり、かつR
4およびR
5は、結合するリン原子と六員環を構成し、Z
3はC
1-10アルカンジイル基、
【化3】
であり、Z
4、Z
5、およびZ
6はそれぞれ独立にC
1-10アルカンジイル基であり、m>1であり、i>1である。)
リチウム塩である成分(B)と、
溶媒である成分(C)と、
を含む電解質組成物であって、
前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の総重量に対し、成分(A)の含有量が1wt%から10wt%である、
電解質組成物。
【請求項2】
前記成分(B)と前記成分(C)の重量比が1:19から7:13である、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項3】
前記式(I)で示される繰り返し単位が下記のうちのいずれかである、請求項1に記載の電解質組成物。
【化4】
(式中、R
2はオキシラニル基(oxiranyl group)、メチルオキシラニル基(methyloxiranyl group)、グリシジル基(glycidyl group)、メチルグリシジル基(methylglycidyl group)、オキセタニル基(oxetanyl group)、または(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基((3,4-epoxycyclohexyl)methyl group)であり、n>1であり、Z
2はC
1-10アルカンジイル基である。)
【請求項4】
前記式(II)が下記のうちのいずれかである、請求項1に記載の電解質組成物。
【化5】
(式中、R
3は水素、またはメチル基であり、Z
3はC
1-10アルカンジイル基、
【化6】
であり、Z
4、Z
5、およびZ
6はそれぞれ独立にC
1-10アルカンジイル基であり、m>1であり、i>1であり、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ独立にC
1-10アルキル基である。)
【請求項5】
前記成分(A)が第1のポリマー(A1)と第2のポリマー(A2)との組み合わせであり、かつ前記第1のポリマー(A1)と前記第2のポリマー(A2)の重量比が1:4から4:1である、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項6】
前記成分(A)が前記第3のポリマー(A3)であり、前記第3のポリマー(A3)中、前記式(I)で示される繰り返し単位と前記式(II)で示される繰り返し単位の数の比が1:4から4:1である、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項7】
前記第3のポリマー(A3)中、前記式(I)で示される繰り返し単位および前記式(II)で示される繰り返し単位が、ブロックまたはランダムの方式で配列する、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項8】
開環重合開始剤である成分(D)をさらに含み、前記成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)の総重量に対し、前記成分(D)の含有量が0.1wt%から5wt%である、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項9】
前記開環重合開始剤がイオン化合物である、請求項8に記載の電解質組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電解質組成物を開環重合反応させた生成物である擬固体電解質。
【請求項11】
リチウムイオン電池であって、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、
前記正極と負極との間に設けられた電解質と、
を含み、
前記電解質が請求項10に記載の擬固体電解質である、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解質組成物、擬固体電解質(quasi-solid electrolyte)およびこれを用いたリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は商用化電池の主流となっており、さらなる軽量・薄型・短小化、高エネルギー密度、長寿命および高安全性に向けて努力が重ねられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0042515A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在ある液体リチウムイオン電池の重量エネルギー密度は低めで、サイクル寿命に限界があるため、単位当たりの蓄電コストが高止まりとなっている。しかし、電池のエネルギー密度だけを、他の要素を考慮せずに増加させると、電気化学的電池の一連の安全性の問題、例えば、液漏れ、電池膨張、発熱、発煙、燃焼、または爆発等の問題が誘発される速度が容易に速まり、使用性が大幅に制限されてしまう。
【0005】
一方、リチウムイオン電池の動作電圧を高めると、電解質の酸化反応が加速し易くなって、電池の高電圧充電時における安定性が悪くなる。業界では、ポリマーを電解質添加剤として安定性を改善させることがさらに提案されているが、従来の電解質に用いるポリマーは、その電解質系中における界面インピーダンスが依然として高めであり、かつ有効に燃焼抑制効果に達することのできないものである。
【0006】
よって業界では、リチウムイオン電池中に用いられて上記問題を解決する新規な電解質が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、開環重合反応させることで、電池に用いる擬固体電解質が得られる電解質組成物を提供する。該電解質組成物は、成分(A)、成分(B)、および成分(C)を含んでよく、成分(A)、成分(B)および成分(C)の総重量に対し、成分(A)の含有量は1wt%から10wt%である。成分(A)は第1のポリマー(A1)と第2のポリマー(A2)との組み合わせであり得るか、または成分(A)は第3のポリマー(A3)であり得る。第1のポリマー(A1)は式(I)で示される繰り返し単位を有していてよく、第2のポリマー(A2)は式(II)で示される繰り返し単位を有していてよく、第3のポリマー(A3)は式(I)で示される繰り返し単位および式(II)で示される繰り返し単位を有していてよい。
【0008】
【0009】
式中、R
1は水素またはメチル基であってよく、R
2はオキシラニル基(oxiranyl group)、メチルオキシラニル基(methyloxiranyl group)、グリシジル基(glycidyl group)、メチルグリシジル基(methylglycidyl group)、オキセタニル基(oxetanyl group)、または(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基((3,4-epoxycyclohexyl)methyl group)であってよく、Z
1はC
1-10アルカンジイル基、
【化2】
であってよく、n>1であり、Z
2はC
1-10アルカンジイル基であってよく、R
3は水素、またはメチル基であってよく、R
4およびR
5はそれぞれ独立にC
1-10アルキル基、C
1-10アルコキシ基、C
4-8シクロアルキル基(cycloalkyl group)、C
4-8シクロアルコキシ基(cycloalkoxy group)、C
5-12シクロアルキルアルキル基(cycloalkylalkyl group)、C
5-12シクロアルキルアルコキシ基(cycloalkylalkoxy group)、置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)、置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)、置換されたもしくは未置換のベンジル基(benzyl group)、または置換されたもしくは未置換のベンジルオキシ基(benzyloxy group)であってよいか、あるいは、R
4は、置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)であってよく、R
5は、置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)であってよく、かつR
4およびR
5は結合するリン原子と六員環を構成し、Z
3はC
1-10アルカンジイル基、
【化3】
であってよく、Z
4、Z
5、およびZ
6はそれぞれ独立にC
1-10アルカンジイル基であってよく、m>1であり、i>1である。成分(B)はリチウム塩であってよく、成分(C)は溶媒であってよい。本開示の実施形態によれば、リチウム塩と溶媒の重量比は1:19から7:13である。
【0010】
本開示の実施形態によれば、本開示は擬固体電解質を提供し、該擬固体電解質は、本開示の上述した電解質組成物を開環重合反応(ring opening polymerization)させた生成物であり得る。
【0011】
本開示のその他の実施形態によれば、本開示は、リチウムイオン電池、例えばリチウムイオン二次電池を提供する。リチウムイオン電池は、正極、負極、セパレータ、および上記擬固体電解質を含んでいてよい。セパレータは正極と負極との間に配置され、擬固体電解質は該正極と負極との間に配置されてよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示は電解質組成物を提供する。本開示に係る電解質組成物は液体であるため、電池チャンバー(chamber of the battery)中に容易に注入することができる。また、本開示に係る電解質組成物は、開環重合反応により液体電解質組成物から擬固体電解質に変わり得るものである。本開示の擬固体電解質はリン含有ポリマーを有しており、電解液の揮発およびリチウムのデンドライトの成長を防止できる他、燃焼抑制という技術的効果も達成し、これにより電池の安全性を強化することができる。また、本開示に係る擬固体電解質は、立体網目状構造を有するポリマー(リチウム塩および溶媒を吸着し易い)を含み、ポリマーの使用量を減らすことができるため、電解質の界面インピーダンスが低減し、電解質のイオン伝導率を高めることができる。本開示の実施形態によれば、本開示は、上記擬固体電解質を含むリチウムイオン電池も提供する。本開示に係る擬固体電解質の特定の成分によって、本開示に係る擬固体電解質に燃焼抑制性が備わるようになり、電池の使用上の安全性を高めることができる。
【0013】
以下の実施形態において詳細な説明を行う。
【0014】
本開示は、以下の詳細な説明を添付の図面と合わせて読むことで、最もよく理解される。強調されるべきは、業界における慣習にしたがって、各種の特徴は縮尺通りに描かれていないという点である。実際に、記述を明らかとするため、各種特徴の寸法は、任意に拡大または縮小されていることがある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示のリチウムイオン電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本開示の電解質組成物、擬固体電解質およびそれを含むリチウムイオン電池について詳細に説明する。本開示の異なる態様を実施することができるよう、下記において多くの異なる実施形態または例を提示するという点が理解されなければならない。下記する特定の構成要素および配置は、本開示を簡単に描写するものに過ぎない。当然に、これらは単なる例示であって、本開示を限定するものではない。本開示において、用語“約”は、所定の量から、当業者が通常かつ合理的と考え得る大きさだけ増やしたまたは減らした量のことを指す。
【0017】
さらに、図において、実施形態の形状または厚さは拡大されていることがあり、かつ簡潔化されて、または便宜的に表示されることがある。また、図中の各構成要素の部分については、それぞれに説明をする。図に示されていない、または描写されていない構成要素は、当該分野において通常の知識を有する者が知る形式のものであるという点に留意されたい。また、特定の実施形態は、本開示で用いる特定の方式を開示するだけに過ぎず、本開示を限定するために用いるのではない。
【0018】
さらに、明細書および請求項中で使用される序数、例えば”第1”、”第2”、”第3”等の用語は、請求項の構成要素を修飾し、それ自体は、当該請求に係る構成要素にその前の序数があることを意味することも、表すこともなく、ある請求に係る構成要素と別の請求に係る構成要素との順序、または製造方法の順序を表すこともない。それら序数は、ある名称を持つ請求に係る構成要素が、別の同じ名称を持つ請求に係る構成要素とはっきりと区別され得るように用いられるにすぎない。
【0019】
本開示の実施形態によれば、本開示は電解質組成物を提供する。電解質組成物に開環重合反応(例えば加熱プロセス)を行うことにより、電池に用いる擬固体電解質を得ることができる。
【0020】
電解質組成物は成分(A)、成分(B)、および成分(C)を含んでいてよい。成分(A)は第1のポリマー(A1)と第2のポリマー(A2)との組み合わせであり得るか、または成分(A)は第3のポリマー(A3)であり得る。第1のポリマー(A1)は式(I)で示される繰り返し単位を有していてよく、第2のポリマー(A2)は式(II)で示される繰り返し単位を有していてよく、第3のポリマー(A3)は式(I)で示される繰り返し単位および式(II)で示される繰り返し単位を有していてよい。
【0021】
【0022】
式中、R
1は水素、またはメチル基であってよく、R
2はオキシラニル基(oxiranyl group)、メチルオキシラニル基(methyloxiranyl group)、グリシジル基(glycidyl group)、メチルグリシジル基(methylglycidyl group)、オキセタニル基(oxetanyl group)、または(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基((3,4-epoxycyclohexyl)methyl group)であってよく、Z
1はC
1-10アルカンジイル基、
【化5】
であってよく、n>1(例えば、5000≧n>1、3000≧n>1、2000≧n>1、1000≧n>1、または500≧n>1)であり、Z
2はC
1-10アルカンジイル基であってよく、R
3は水素、またはメチル基であってよく、R
4およびR
5はそれぞれ独立にC
1-10アルキル基、C
1-10アルコキシ基、C
4-8シクロアルキル基(cycloalkyl group)、C
4-8シクロアルコキシ基(cycloalkoxy group)、C
5-12シクロアルキルアルキル基(cycloalkylalkyl group)、C
5-12シクロアルキルアルコキシ基(cycloalkylalkoxy group)、置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)、置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)、置換されたもしくは未置換のベンジル基(benzyl group)、または置換されたもしくは未置換のベンジルオキシ基(benzyloxy group)であってよいか、あるいは、R
4が、置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)であってよく、R
5が、置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)であってよく、かつR
4およびR
5が結合するリン原子と六員環を構成し、Z
3はC
1-10アルカンジイル基、
【化6】
であってよく、Z
4、Z
5、およびZ
6はそれぞれ独立にC
1-10アルカンジイル基であってよく、m>1(例えば5000≧m>1、3000≧m>1、2000≧m>1、1000≧m>1、または500≧m>1)であり、i>1(例えば、5000≧i>1、3000≧i>1、2000≧i>1、1000≧i>1、または500≧i>1)である。成分(B)はリチウム塩であってよく、成分(C)は溶媒であってよい。
【0023】
本開示の実施形態によれば、第1のポリマー(A1)、第2のポリマー(A2)、および第3のポリマー(A3)は全て異なるものである。本開示の実施形態によれば、第1のポリマー(A1)はホモポリマー(homopolymer)であり得る、即ち、第1のポリマー(A1)は、式(I)で示される繰り返し単位の他に、その他の繰り返し単位は含まない。本開示の実施形態によれば、第2のポリマー(A2)もまたホモポリマー(homopolymer)であり得る、即ち、第2のポリマー(A2)は、式(II)で示される繰り返し単位の他に、その他の繰り返し単位は含まない。本開示の実施形態によれば、第3のポリマー(A3)はヘテロポリマー(heteropolymer)であり、かつ第3のポリマー(A3)は、式(I)で示される繰り返し単位および式(II)で示される繰り返し単位の他に、その他の繰り返し単位は含まない。また、本開示のいくつかの実施形態によれば、第3のポリマー(A3)において、式(I)で示される繰り返し単位および式(II)で示される繰り返し単位は、ブロックの方式で配列する。本開示のその他の実施形態によれば、第3のポリマー(A3)において、式(I)で示される繰り返し単位および式(II)で示される繰り返し単位はランダムの方式で配列する。
【0024】
本開示の実施形態によれば、C1-10アルカンジイル基(alkanediyl group)は直鎖または分岐鎖(linear or branched)のアルカンジイル基であり得る。例を挙げると、C1-10アルカンジイル基は、メタンジイル基(methanediyl group)、エタンジイル基(ethanediyl group)、プロパンジイル基(propanediyl group)、ブタンジイル基(butanediyl group)、ペンタンジイル基(pentanediyl group)、ヘキサンジイル基(hexanediyl group)、ヘプタンジイル基(heptanediyl group)、オクタンジイル基(octanediyl group)、ノナンジイル基(nonanediyl group)、デカンジイル基(decanediyl group)、またはその異性体(isomer)であってよい。
【0025】
本開示の実施形態によれば、C1-10アルキル基は、直鎖または分岐鎖(linear or branched)のアルキル基であり得る。例を挙げると、C1-10アルキル基は、メチル基(methyl)、エチル基(ethyl)、プロピル基(propyl)、ブチル基(butyl)、ペンチル基(pentyl)、ヘキシル基(hexyl)、へプチル基(heptyl group)、オクチル基(octyl group)、ノニル基(nonyl group)、デシル基(decyl group)、またはその異性体(isomer)であってよい。
【0026】
本開示の実施形態によれば、C1-10アルコキシ基(alkoxy group)は、直鎖または分岐 (linear or branched)鎖のアルコキシ基であってよい。例を挙げると、C1-10アルコキシ基は、メトキシ基(methoxy)、エトキシ基(ethoxy)、プロポキシ基(propoxy)、ブトキシ基(butoxy)、ペントキシ基(pentoxy)、ヘキソキシ基(hexoxy)、ヘプトキシ基(heptoxy group)、オクトキシ基(octoxy group)、ノノキシ基(nonoxy group)、 デコキシ基(decoxy group)、またはその異性体(isomer)であってよい。
【0027】
本開示の実施形態によれば、C4-8シクロアルキル基(cycloalkyl group)は、シクロブチル基(cyclobutyl group)、シクロペンチル基(cyclopentyl group)、シクロヘキシル基(cyclohexyl group)、シクロヘプチル基(cycloheptyl group)、またはシクロオクチル基(cyclooctyl group)であってよい。
【0028】
本開示の実施形態によれば、C4-8シクロアルコキシ基(cycloalkoxy group)は、シクロブトキシ基(cyclobutoxy group)、シクロペントキシ基(cyclopentoxy group)、シクロヘキソキシ基(cyclohexoxy group)、シクロヘプトキシ基(cycloheptoxy group)、シクロオクトキシ基(cyclooctoxy group)であってよい。
【0029】
本開示の実施形態によれば、C5-12シクロアルキルアルキル基(cycloalkylalkyl group)は、置換されたC1-4アルキル基(alkyl group)(例えばメチル基(methyl)、エチル基(ethyl)、プロピル基(propyl)、またはブチル基(butyl))であってよい。上記置換されたC1-4アルキル基とは、そのアルキル基の少なくとも1つの炭素における水素がC4-8シクロアルキル基(cycloalkyl group)で置換されているものを指す。
【0030】
本開示の実施形態によれば、C5-12シクロアルキルアルコキシ基(cycloalkylalkoxy group)は、置換されたC1-4アルコキシ基(alkoxy group)(例えばメトキシ基(methoxy)、エトキシ基(ethoxy)、プロポキシ基(propoxy)、またはブトキシ基(butoxy))であってよい。上記置換されたC1-4アルコキシ基とは、そのアルコキシ基の少なくとも1つの炭素における水素がC4-8シクロアルキル基(cycloalkyl group)で置換されているものを指す。
【0031】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る置換されたフェニル基(phenyl group)とは、そのフェニル基の少なくとも1つの炭素における水素がC1-4アルキル基で置換されているものを指す。本開示の実施形態によれば、本開示に係る置換されたフェノキシ基(phenoxy group)とは、そのフェノキシ基の少なくとも1つの炭素における水素がC1-4アルキル基で置換されているものを指す。本開示の実施形態によれば、本開示に係る置換されたベンジル基(benzyl group)とは、そのベンジル基の少なくとも1つの炭素における水素がC1-4アルキル基で置換されているものを指す。本開示の実施形態によれば、本開示に係る置換されたベンジルオキシ基(benzyloxy group)とは、そのベンジルオキシ基の少なくとも1つの炭素における水素がC1-4アルキル基に置換されているものを指す。
【0032】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る式(I)で示される繰り返し単位は、下記のいずれかであり得る。
【0033】
【0034】
式中、Z1は、メタンジイル基(methanediyl group)、エタンジイル基(ethanediyl group)、プロパンジイル基(propanediyl group)(例えば直鎖または分岐鎖のプロパンジイル基)、ブタンジイル基(butanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のブタンジイル基)、ペンタンジイル基(pentanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のペンタンジイル基)、ヘキサンジイル基(hexanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘキサンジイル基)、ヘプタンジイル基(heptanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘプタンジイル基)、オクタンジイル基(octanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のオクタンジイル基)、ノナンジイル基(nonanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のノナンジイル基)、またはデカンジイル基(decanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のデカンジイル基)であってよく、R2はオキシラニル基(oxiranyl group)、メチルオキシラニル基(methyloxiranyl group)、グリシジル基(glycidyl group)、メチルグリシジル基(methylglycidyl group)、オキセタニル基(oxetanyl group)、または(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基((3,4-epoxycyclohexyl)methyl group)であってよい。
【0035】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る式(I)で示される繰り返し単位は、下記のいずれかであってよい。
【0036】
【0037】
式中、R2はオキシラニル基(oxiranyl group)、メチルオキシラニル基(methyloxiranyl group)、グリシジル基(glycidyl group)、メチルグリシジル基(methylglycidyl group)、オキセタニル基(oxetanyl group)、または(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基((3,4-epoxycyclohexyl)methyl group)であってよく、n>1であり、Z2はメタンジイル基(methanediyl group)、エタンジイル基(ethanediyl group)、プロパンジイル基(propanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のプロパンジイル基)、ブタンジイル基(butanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のブタンジイル基)、ペンタンジイル基(pentanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のペンタンジイル基)、ヘキサンジイル基(hexanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘキサンジイル基)、ヘプタンジイル基(heptanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘプタンジイル基)、オクタンジイル基(octanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のオクタンジイル基)、ノナンジイル基(nonanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のノナンジイル基)、またはデカンジイル基(decanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のデカンジイル基)であってよい。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示に係る式(I)で示される繰り返し単位は、下記のいずれかであってよい。
【0039】
【0040】
式中、Z
1はC
1-10アルカンジイル基、
【化10】
であってよく、n>1(例えば、5000≧n>1、3000≧n>1、2000≧n>1、1000≧n>1、または500≧n>1)であり、Z
2はC
1-10アルカンジイル基であってよい。
【0041】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る式(II)で示される繰り返し単位は下記であってよい。
【0042】
【0043】
式中、Z3はメタンジイル基(methanediyl group)、エタンジイル基(ethanediyl group)、プロパンジイル基(propanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のプロパンジイル基)、ブタンジイル基(butanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のブタンジイル基)、ペンタンジイル基(pentanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のペンタンジイル基)、ヘキサンジイル基(hexanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘキサンジイル基)、ヘプタンジイル基(heptanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘプタンジイル基)、オクタンジイル基(octanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のオクタンジイル基)、ノナンジイル基(nonanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のノナンジイル基)、またはデカンジイル基(decanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のデカンジイル基)であってよく、R4およびR5はそれぞれ独立にC1-10アルキル基、C1-10アルコキシ基、C4-8シクロアルキル基(cycloalkyl group)、C4-8シクロアルコキシ基(cycloalkoxy group)、C5-12シクロアルキルアルキル基(cycloalkylalkyl group)、C5-12シクロアルキルアルコキシ基(cycloalkylalkoxy group)、置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)、置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)、置換されたもしくは未置換のベンジル基(benzyl group)、または置換されたもしくは未置換のベンジルオキシ基(benzyloxy group)であってよい。また、本開示のいくつかの実施形態によれば、R4が置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)であり、かつR5が置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)であるとき、R4およびR5は結合するリン原子と六員環を構成することができる。
【0044】
本開示の実施形態によれば、R4およびR5はそれぞれ独立にメチル基(methyl group)、エチル基(ethyl group)、プロピル基(propyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のプロピル基)、ブチル基(butyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のブチル基)、ペンチル基(pentyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のペンチル基)、ヘキシル基(hexyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘキシル基)、へプチル基(heptyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のへプチル基)、オクチル基(octyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のオクチル基)、ノニル基(nonyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のノニル基)、デシル基(decyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のデシル基)、メトキシ基(methoxy group)、エトキシ基(ethoxy group)、プロポキシ基(propoxy group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のプロポキシ基)、ブトキシ基(butoxy group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のブトキシ基)、ペントキシ基(pentoxy group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のペントキシ基)、ヘキソキシ基(hexoxy group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘキソキシ基)、ヘプトキシ基(heptoxy group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘプトキシ基)、オクトキシ基(octoxy group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のオクトキシ基)、ノノキシ基(nonoxy group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のノノキシ基)、 デコキシ基(decoxy group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のデコキシ基)、シクロブチル基(cyclobutyl group)、シクロペンチル基(cyclopentyl group)、シクロヘキシル基(cyclohexyl group)、シクロヘプチル基(cycloheptyl group)、シクロオクチル基(cyclooctyl group)、シクロブトキシ基(cyclobutoxy group)、シクロペントキシ基(cyclopentoxy group)、シクロヘキソキシ基(cyclohexoxy group)、シクロヘプトキシ基(cycloheptoxy group)、シクロオクトキシ基(cyclooctoxy group)、フェニル基(phenyl group)、フェノキシ基(phenoxy group)、ベンジル基(benzyl group)、またはベンジルオキシ基(benzyloxy group)であってよい。
【0045】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る式(II)で示される繰り返し単位は、下記のいずれかであってよい。
【0046】
【0047】
式中、Z4、Z5、およびZ6はそれぞれ独立にメタンジイル基(methanediyl group)、エタンジイル基(ethanediyl group)、プロパンジイル基(propanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のプロパンジイル基)、ブタンジイル基(butanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のブタンジイル基)、ペンタンジイル基(pentanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のペンタンジイル基)、ヘキサンジイル基(hexanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘキサンジイル基)、ヘプタンジイル基(heptanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘプタンジイル基)、オクタンジイル基(octanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のオクタンジイル基)、ノナンジイル基(nonanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のノナンジイル基)、またはデカンジイル基(decanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のデカンジイル基)であってよく、m>1(例えば、5000≧m>1、3000≧m>1、2000≧m>1、1000≧m>1、または500≧m>1)であり、i>1(例えば、5000≧i>1、3000≧i>1、2000≧i>1、1000≧i>1、または500≧i>1)であり、R4およびR5はそれぞれ独立にC1-10アルキル基、C1-10アルコキシ基、C4-8シクロアルキル基(cycloalkyl group)、C4-8シクロアルコキシ基(cycloalkoxy group)、C5-12シクロアルキルアルキル基(cycloalkylalkyl group)、C5-12シクロアルキルアルコキシ基(cycloalkylalkoxy group)、置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)、置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)、置換されたもしくは未置換のベンジル基(benzyl group)、または置換されたもしくは未置換のベンジルオキシ基(benzyloxy group)であってよい。また、本開示のいくつかの実施形態によれば、R4が置換されたまたは未置換のフェニル基(phenyl group)であり、R5が置換されたまたは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)であるとき、R4およびR5は結合するリン原子と六員環を構成することができる。
【0048】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る式(II)で示される繰り返し単位は、下記のいずれかであってよい。
【0049】
【0050】
式中、R
3は水素、またはメチル基であり、Z
3はC
1-10アルカンジイル基、
【化14】
であり、Z
4、Z
5、およびZ
6はそれぞれ独立にメタンジイル基(methanediyl group)、エタンジイル基(ethanediyl group)、プロパンジイル基(propanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のプロパンジイル基)、ブタンジイル基(butanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のブタンジイル基)、ペンタンジイル基(pentanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のペンタンジイル基)、ヘキサンジイル基(hexanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘキサンジイル基)、ヘプタンジイル基(heptanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘプタンジイル基)、オクタンジイル基(octanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のオクタンジイル基)、ノナンジイル基(nonanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のノナンジイル基)、またはデカンジイル基(decanediyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のデカンジイル基)であり、m>1(例えば、5000≧m>1、3000≧m>1、2000≧m>1、1000≧m>1、または500≧m>1)であり、i>1(例えば、5000≧i>1、3000≧i>1、2000≧i>1、1000≧i>1、または500≧i>1)であり、R
6、R
7、およびR
8はそれぞれ独立にメチル基(methyl group)、エチル基(ethyl group)、プロピル基(propyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のプロピル基)、ブチル基(butyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のブチル基)、ペンチル基(pentyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のペンチル基)、ヘキシル基(hexyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のヘキシル基)、へプチル基(heptyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のへプチル基)、オクチル基(octyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のオクチル基)、ノニル基(nonyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のノニル基)、デシル基(decyl group)(例えば直鎖もしくは分岐鎖のデシル基)である。
【0051】
本開示の実施形態によれば、成分(A)は、第1のポリマー(A1)と第2のポリマー(A2)とからなっていてよく、第1のポリマー(A1)と第2のポリマー(A2)とは異なるものである。本開示の実施形態によれば、第1のポリマー(A1)と第2のポリマー(A2)の重量比は1:4から4:1、例えば1:3、1:2、1:1、2:1、または3:1とすることができる。第1のポリマー(A1)の含有量が低すぎると、得られる電解質組成物より形成される擬固体電解質の溶媒吸着性が低下して、電解質が固化し得なくなってしまう。第1のポリマー(A1)の含有量が高すぎると、得られる電解質組成物より形成される擬固体電解質が緻密な網目状構造を形成し易くなり、界面インピーダンスが高まることで、イオン伝導率が低下してしまう。第2のポリマー(A2)の含有量が低すぎると、得られる電解質組成物より形成される擬固体電解質の燃焼抑制性が低下してしまう。
【0052】
本開示の実施形態によれば、成分(A)は第3のポリマー(A3)である。第3のポリマー(A3)において、式(I)で示される繰り返し単位および式(II)で示される繰り返し単位の数の比率は1:4から4:1、例えば1:3、1:2、1:1、2:1、または3:1である。式(I)で示される繰り返し単位の数が小さすぎると、得られる電解質組成物より形成される擬固体電解質の溶媒吸着性が低下し、電解質が固化(or gelled)し得なくなる。式(I)で示される繰り返し単位の数が大きすぎると、得られる電解質組成物より形成される擬固体電解質が緻密な網目状構造を形成し易くなり、界面インピーダンスが高まることで、イオン伝導率が低下してしまう。式(II)で示される繰り返し単位の数が小さすぎると、得られる電解質組成物より形成される擬固体電解質の燃焼抑制性が低下する。
【0053】
本開示の実施形態によれば、第1のポリマー(A1)は、第1の組成物を反応(例えば重合(polymerization)反応)させた生成物であり得る。第1の組成物は、第1のモノマーおよび開始剤を含んでいてよく、第1のモノマーは式(III)で示される構造を有し得る。
【0054】
【0055】
式中、R
1は水素、またはメチル基であり、R
2はオキシラニル基(oxiranyl group)、メチルオキシラニル基(methyloxiranyl group)、グリシジル基(glycidyl group)、メチルグリシジル基(methylglycidyl group)、オキセタニル基(oxetanyl group)、または(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基((3,4-epoxycyclohexyl)methyl group)であり、Z
1はC
1-10アルカンジイル基、
【化16】
であり、n>1(例えば、5000≧n>1、3000≧n>1、2000≧n>1、1000≧n>1、または500≧n>1)であり、Z
2はC
1-10アルカンジイル基である。本開示の実施形態によれば、第1のポリマー(A1)は、第1のモノマーより作製して得られるホモポリマー(homopolymer)である。
【0056】
本開示の実施形態によれば、第1のモノマーは、グリシジルアクリレート(glycidyl acrylate)、グリシジルメタクリレート(glycidyl methacrylate、GMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレートグリシジルエーテル(2-hydroxyethyl acrylate glycidyl ether)、2-ヒドロキシエチルメタクリレートグリシジルエーテル (2-hydroxyethyl methacrylate glycidyl ether)、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4-hydroxybutyl acrylate glycidyl ether)、4-ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル(4-hydroxybutyl methacrylate glycidyl ether)、メチルグリシジルアクリレート(methylglycidyl acrylate)、メチルグリシジルメチルアクリレート(methylglycidyl methylacrylate)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(3,4-epoxycyclohexylmethyl acrylate)、または3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(3,4-epoxycyclohexylmethyl methacrylate)であってよい。
【0057】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る第1のポリマー(A1)の重量平均分子量(Mw)は、約500(g/mol)から200000(g/mol)、例えば約1000(g/mol)、2000(g/mol)、5000(g/mol)、10000(g/mol)、20000(g/mol)、50000(g/mol)、または150000(g/mol)であり得る。本開示に係る第1のポリマー(A1)の重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することができる(ポリスチレンを標準品として検量線を作成)。
【0058】
本開示の実施形態によれば、第1の組成物は第1のモノマーおよび開始剤からなるものであってよい。本開示の実施形態によれば、開始剤は、第1のモノマーのアクリレート基(またはメタクリレート基)に重合反応を進行させることができる。例えば、開始剤は、光開始剤、熱開始剤、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、開始剤の含有量は、第1のモノマーの総重量に対し、約0.01wt%から20wt%(例えば、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、11wt%、12wt%、13wt%、14wt%、15wt%、16wt%、17wt%、18wt%、または19wt%)とすることができる。
【0059】
本開示の実施形態によれば、第1の組成物を20℃から150℃で60分から24時間反応させ、第1の組成物に単独重合反応を進行させることで、第1のポリマー(A1)を得ることができる。
【0060】
本開示の実施形態によれば、第2のポリマー(A2)は、第2の組成物を反応(例えば重合(polymerization)反応)させた生成物であり得る。第2の組成物は第2のモノマーおよび開始剤を含んでいてよく、第2のモノマーは式(IV)に示される構造を有し得る。
【0061】
【0062】
式中R
3は、水素、またはメチル基であってよく、R
4およびR
5はそれぞれ独立にC
1-10アルキル基、C
1-10アルコキシ基、C
4-8シクロアルキル基(cycloalkyl group)、C
4-8シクロアルコキシ基(cycloalkoxy group)、C
5-12シクロアルキルアルキル基(cycloalkylalkyl group)、C
5-12シクロアルキルアルコキシ基(cycloalkylalkoxy group)、置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)、置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)、置換されたもしくは未置換のベンジル基(benzyl group)、または置換されたもしくは未置換のベンジルオキシ基(benzyloxy group)であってよいか、あるいは、R
4が置換されたもしくは未置換のフェニル基(phenyl group)であってよく、R
5が置換されたもしくは未置換のフェノキシ基(phenoxy group)であってよく、かつR
4およびR
5が結合するリン原子と六員環を構成し、Z
3はC
1-10アルカンジイル基、
【化18】
であってよく、Z
4、Z
5、およびZ
6はそれぞれ独立にC
1-10アルカンジイル基であってよく、m≧1(例えば、5000≧m≧1、3000≧m≧1、2000≧m≧1、1000≧m≧1、または500≧m≧1)であり、i≧1(例えば、5000≧i≧1、3000≧i≧1、2000≧i≧1、1000≧i≧1、または500≧i≧1)である。本開示の実施形態によれば、第2のポリマー(A2)は、第2のモノマーより作製して得られるホモポリマー(homopolymer)である。
【0063】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る第2のポリマー(A2)の重量平均分子量(Mw)は、約500(g/mol)から200000(g/mol)、例えば約1000(g/mol)、2000(g/mol)、5000(g/mol)、10000(g/mol)、20000(g/mol)、50000(g/mol)、または150000(g/mol)であり得る。本開示に係る第2のポリマー(A2)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる(ポリスチレンを標準品として検量線を作成)。
【0064】
本開示の実施形態によれば、第2の組成物は第2のモノマーおよび開始剤からなるものであってよい。本開示の実施形態によれば、開始剤は、第2のモノマーのアクリレート基(メタクリレート基、またはアルケニル基)に重合反応を進行させることができる。例えば、開始剤は、光開始剤、熱開始剤、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、開始剤の含有量は、第2のモノマーの総重量に対し、約0.01wt%から10wt%(例えば、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、または9wt%)とすることができる。
【0065】
本開示の実施形態によれば、第2の組成物を20℃から150℃で60分から24時間反応させ、第2の組成物に単独重合反応を進行させて、第2のポリマー(A2)を得ることができる。
【0066】
本開示の実施形態によれば、第2のモノマーは、ジエチルアリルフォスフェート(diethyl allyl phosphate)、ジエチルアリルフォスフォネート(diethyl allyl phosphonate) 、ジエチル2-(アクリロイルオキシ)エチルフォスフェート(diethyl 2-(acryloyloxy)ethyl phosphate)、ジエチル2-(メタクリロイルオキシ)エチルフォスフェート(diethyl 2-(methacryloyloxy)ethyl phosphate)、ジブチル2-(アクリロイルオキシ)エチルフォスフェート(dibutyl 2-(acryloyloxy)ethyl phosphate)、ジブチル2-(メタクリロイルオキシ)エチルフォスフェート(dibutyl 2-(methacryloyloxy)ethyl phosphate)、ジフェニル2-(アクリロイルオキシ)エチルフォスフェート(diphenyl 2-(acryloyloxy)ethyl phosphate)、ジフェニル2-(メタクリロイルオキシ)エチルフォスフェート(diphenyl 2-(methacryloyloxy)ethyl phosphate)、(6-オキシド-6H-ジベンズ[c,e][1,2]オキサホスホリン-6-イル)メチルアクリレート((6-Oxido-6H-dibenz[c,e][1,2]oxaphosphorin-6-yl)methyl acrylate)、または(6-オキシド-6H-ジベンズ[c,e][1,2]オキサホスホリン-6-イル)メチルメタクリレート((6-Oxido-6H-dibenz[c,e][1,2]oxaphosphorin-6-yl)methyl methacrylate)であり得る。
【0067】
本開示の実施形態によれば、第3のポリマー(A3)は、第3の組成物を反応(例えば共重合(copolymerization)反応)させた生成物であり得る。第3の組成物は第1のモノマー、第2のモノマーおよび開始剤を含んでいてよい。本開示の実施形態によれば、第3のポリマー(A3)は、第1のモノマーおよび第2のモノマーより作製して得られるコポリマー(copolymer)である。
【0068】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る第3のポリマー(A3)の重量平均分子量(Mw)は、約500(g/mol)から500000(g/mol)、例えば約1000(g/mol)、2000(g/mol)、5000(g/mol)、10000(g/mol)、20000(g/mol)、50000(g/mol)、150000(g/mol)、200000(g/mol)、300000(g/mol)、または400000(g/mol)とすることができる。本開示に係る第3のポリマー(A3)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる(ポリスチレンを標準品として検量線を作成)。
【0069】
本開示の実施形態によれば、第3の組成物は、第1のモノマー、第2のモノマーおよび開始剤からなるものであってよい。本開示の実施形態によれば、開始剤は、第1のモノマーのアクリレート基(メタクリレート基、もしくはアルケニル基)または/および第2のモノマーのアクリレート基(メタクリレート基、もしくはアルケニル基)に重合反応を進行させることができる。例えば、開始剤は、光開始剤、熱開始剤、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、開始剤の含有量は、第1のモノマーおよびモノマーの総重量に対し、約0.01wt%から20wt%(例えば、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、11wt%、12wt%、13wt%、14wt%、15wt%、16wt%、17wt%、18wt%、または19wt%)とすることができる。
【0070】
本開示の実施形態によれば、第3の組成物を20℃から150℃で60分から24時間反応させ、第3の組成物に共重合反応を進行させて、第3のポリマー(A3)を得ることができる。
【0071】
本開示の実施形態によれば、開始剤はフリーラジカル重合開始剤であり得る。本開示の実施形態によれば、開始剤は、安息香系(benzoin-based)化合物、アセトフェノン系(acetophenone-based)化合物、チオキサントン系(thioxanthone-based)化合物、ケタール(ketal)化合物、ベンゾフェノン系(benzophenone-based)化合物、α-アミノアセトフェノン(α-aminoacetophenone)化合物、アシルホスフィンオキシド(acylphosphineoxide)化合物、ビイミダゾール系(biimidazole-based)化合物、トリアジン系(triazine-based)化合物またはこれらの組み合わせであってよい。安息香系化合物は、例えばベンゾイン(benzoin)、ベンゾインメチルエーテル(benzoin methyl ether)、またはベンジルジメチルケタール(benzyl dimethyl ketal)であり、アセトフェノン系化合物は、例えばp-ジメチルアミノ-アセトフェノン(p-dimethylamino-acetophenone)、α,α’-ジメトキシジメトキシアゾキシ-アセトフェノン(α,α’-dimethoxyazoxy-acetophenone)、2,2’-ジメチル-2-フェニル-アセトフェノン(2,2’-dimethyl-2-phenyl-acetophenone)、p-メトキシ-アセトフェノン(p-methoxy-acetophenone)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノ-1-プロパノン(2-methyl-1-(4-methylthiophenyl)-2-morpholino-1-propanone)、2-ベンジル-2-N,N-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン(2-benzyl-2-N,N-dimethylamino-1-(4-morpholinophenyl)-1-butanone)であり、ベンゾフェノン系化合物は、例えばベンゾフェノン(benzophenone)、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(4,4-bis(dimethylamino)benzophenone)、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(4,4-bis(diethylamino)benzophenone)、2,4,6-トリメチルアミノベンゾフェノン(2,4,6-trimethylaminobenzophenone)、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート(methyl-o-benzoyl benzoate)、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン(3,3-dimethyl-4-methoxybenzophenone)、および3,3,4,4-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(3,3,4,4-tetra(t-butylperoxycarbonyl)benzophenone)であり、チオキサントン系化合物は、例えばチオキサントン(thioxanthone)、2,4-ジエチル-チオキサントン(2,4-diethyl-thioxanthanone)、チオキサントン-4-スルホン(thioxanthone-4-sulfone)であり、ビイミダゾール系化合物は、例えば2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-ビイミダゾール[2,2’-bis(o-chlorophenyl)-4,4’,5,5’-tetraphenyl-biimidazole]、2,2’-ビス(o-フルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-ビイミダゾール[2,2’-bis(o-fluorophenyl)-4,4’,5,5’-tetraphenyl-biimidazole]、2,2’-ビス(o-メチルフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-ビイミダゾール[2,2’-bis(o-methylphenyl)-4,4’,5,5’-tetraphenyl-biimidazole]、2,2’-ビス(o-メトキシフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-ビイミダゾール[2,2’-bis(o-methoxyphenyl)-4,4’,5,5’-tetraphenyl-biimidazole]、2,2’-ビス(o-エチルフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-ビイミダゾール[2,2’-bis(o-ethylphenyl)-4,4’,5,5’-tetraphenyl-biimidazole]、2,2’-ビス(p-メトキシフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-ビイミダゾール[2,2’-bis(p-methoxyphenyl)-4,4’,5,5’-tetraphenyl-biimidazole]、2,2’-ビス(2,2’,4,4’-テトラメトキシフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-ビイミダゾール[2,2’-bis(2,2’,4,4’-tetramethoxyphenyl)-4,4’,5,5’-tetraphenyl-biimidazole]、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-ビイミダゾール[2,2’-bis(2-chlorophenyl)-4,4’,5,5’-tetraphenyl-biimidazole]、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-ビイミダゾール[2,2’-bis(2,4-dichlorophenyl)-4,4’,5,5’-tetraphenyl-biimidazole]であり、ホスフィンオキシド系化合物は、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethylbenzoyl diphenylphosphine oxide)およびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(bis(2,6-dimethoxybenzoyl)-2,4,4-trimethylpentylphosphine oxide)であり、トリアジン系化合物は、例えば3-{4-[2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン-6-イル]ペンチルチオ}プロピオン酸(3-{4-[2,4-bis(trichloromethyl)-s-triazine-6-yl]phenylthio}propionic acid)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル-3-{4-[2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン-6-イル]フェニルチオ}プロピオネート(1,1,1,3,3,3-hexafluoroisopropyl-3-{4-[2,4-bis(trichloromethyl)-s-triazine-6-yl]phenylthio}propionate)、エチル-2-{4-[2,4-ビス(トリクロロメチル-s-トリアジン-6-イル]フェニルチオ}アセテート(ethyl-2-{4-[2,4-bis(trichloromethyl)-s-triazine-6-yl]phenylthio}acetate)、2-エポキシエチル-2-{4-[2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン-6-イル]フェニルチオ}アセテート(2-epoxyethyl-2-{4-[2,4-bis(trichloromethyl)-s-triazine-6-yl]phenylthio}acetate)、シクロヘキシル-2-{4-[2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン-6-イル]フェニルチオ}アセテート(cyclohexyl-2-{4-[2,4-bis(trichloromethyl)-s-triazine-6-yl]phenylthio}acetate)、ベンジル-2-{4-[2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン-6-イル]フェニルチオ}アセテート(benzyl-2-{4-[2,4-bis(trichloromethyl)-s-triazine-6-yl]phenylthio}acetate)、3-{クロロ-4-[2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン-6-イル]フェニルチオ}プロピオン酸(3-{chloro-4-[2,4-bis(trichloromethyl)-s-triazine-6-yl]phenylthio}propionic acid)、3-{4-[2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン-6-イル]フェニルチオ}プロピオンアミド(3-{4-[2,4-bis(trichloromethyl)-s-triazine-6-yl]phenylthio}propionamide)、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-p-メトキシスチリル-S-トリアジン(2,4-bis(trichloromethyl)-6-p-methoxystyryl-s-triazine)、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(1-p-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタンジエニル-s-トリアジン(2,4-bis(trichloromethyl)-6-(1-p-dimethylaminophenyl)-1,3,-butadienyl-s-triazine)、または2-トリクロロメチル-4-アミノ-6-p-メトキシスチリル-s-トリアジン(2-trichloromethyl-4-amino-6-p-methoxystyryl-s-triazine)である。
【0072】
本開示の実施形態によれば、開始剤は、アゾ類(azo)化合物、シアノ吉草酸系(cyanovaleric-acid-based)化合物、過酸化物(peroxide)またはこれらの組み合わせであってよい。アゾ類化合物は例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(2,2’-azobis(2,4-dimethyl valeronitrile))、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-プロピオン酸メチル)(dimethyl 2,2’-azobis(2-methylpropionate))、2,2-アゾイソブチロニトリル(2,2-azobisisobutyronitrile,以下AIBNと略称)、2,2-アゾビス(2-メチルイソブチロニトリル)(2,2-azobis(2-methylisobutyronitrile))、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)(1,1’-azobis(cyclohexane-1-carbonitrile))、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド](2,2’-azobis[N-(2-propenyl)-2-methylpropionamide])、1-[(シアノ-1-メチルエチル)-アゾ]ホルムアミド(1-[(cyano-1-methylethyl)azo]formamide)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)(2,2’-azobis(N-butyl-2-methylpropionamide))、または2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)(2,2’-azobis(N-cyclohexyl-2-methylpropionamide))である。過酸化物は例えば、過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide)、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(1,1-bis(tert-butylperoxy)cyclohexane)、2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルシクロヘキサン(2,5-bis(tert-butylperoxy)-2,5-dimethylcyclohexane)、2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチル-3-シクロヘキシン(2,5-bis(tert-butylperoxy)-2,5-dimethyl-3-cyclohexyne)、ビス(1-(tert-ブチルパーオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン(bis(1-(tert-butylpeorxy)-1-methy-ethyl)benzene)、tert-ブチルハイドロパーオキシド(tert-butyl hydroperoxide)、tert-ブチルパーオキシド(tert-butyl peroxide)、tert-ブチルパーオキシベンゾエート(tert-butyl peroxybenzoate)、クメンハイドロパーオキシド(cumene hydroperoxide)、シクロヘキサノンパーオキシド (cyclohexanone peroxide)、ジクミルパーオキシド(dicumyl peroxide)、またはラウロイルパーオキシド(lauroyl peroxide)である。
【0073】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物が式(I)で示される繰り返し単位を有するポリマーを含むため、本開示に係る電解質組成物に加熱プロセスを行って開環重合反応を進行させた後に、立体網目状構造を有するポリマーを形成することができる。上述に基づくと、本開示に係る電解質組成物において、ポリマー(成分(A))を過度に添加する必要なく、後続の加熱プロセスにてリチウム塩および溶媒を吸着し易い擬固体電解質を得ることができる。よって、ポリマー添加量が過度に多いことによる電解質の界面インピーダンスの増加および電解質のイオン伝導率の低下を回避することができる。本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物が式(II)で示される繰り返し単位を有するポリマーを含むため、本開示に係る電解質組成物に開環重合反応を行った後に得られる擬固体電解質に燃焼抑制性が備わるようになる。本開示の実施形態によれば、成分(A)の含有量は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の総重量に対し、1wt%から10wt%(例えば2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、または9wt%)とすることができる。成分(A)の含有量が多すぎると、得られる擬固体電解質のイオン伝導率が比較的低くなり、かつ界面インピーダンスが比較的高いものとなる。成分(A)の含有量が少なすぎると、得られる擬固体電解質の固化していない残液の量が増し、かつ燃焼抑制性が高まらなくなってしまう。
【0074】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物は、成分(A)の他に、その他のポリマーは含まない。本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物は、成分(A)、成分(B)および成分(C)からなる。
【0075】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物は反応性モノマーを含まない。反応性モノマーとは、重合反応によりポリマーを形成することのできるモノマーのことを指す。本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物は、式(I)で示される繰り返し単位を有するポリマーを形成するのに用いることのできるモノマーを含まず、かつ本開示に係る電解質組成物は、式(II)で示される繰り返し単位を有するポリマーを形成するのに用いることのできるモノマーを含まない。
【0076】
本開示の実施形態によれば、リチウム塩(成分(B))と溶媒(成分(C))の重量比は1:19から7:13、例えば約2:18、3:17、4:16、5:15、または6:14であってよい。本開示の実施形態によれば、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(lithium hexafluorophosphate,LiPF6)、過塩素酸リチウム(lithium perchlorate,LiClO4)、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(bis(fluorosulfonyl)imide lithium,LiN(SO2F)2)(LiFSI)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(lithium difluoro(oxalato)borate,LiBF2(C2O4))(LiDFOB)、テトラフルオロホウ酸リチウム(lithium tetrafluoroborate,LiBF4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(lithium trifluoromethanesulfonate,LiSO3CF3)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム(bis(trifluoromethane)sulfonimide lithium,LiN(SO2CF3)2)(LiTFSI)、リチウムビスパーフルオロエタンスルホンイミド(lithium bis perfluoroethanesulfonimide,LiN(SO2CF2CF3)2)、ヘキサフルオロひ酸リチウム(LiAsF6)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF6)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、テトラクロロガリウム酸リチウム(LiGaCl4)、硝酸リチウム(LiNO3)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(tris(trifluoromethanesulfonyl)methyllithium,LiC(SO2CF3)3)、チオシアン酸リチウム水和物(lithium thiocyanate hydrate,LiSCN)、LiO3SCF2CF3、LiC6F5SO3、LiO2CCF3、リチウムフルオロスルホネート(lithiumfluorosulfonate,LiSO3F)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸リチウム(Lithium tetrakis(pentafluorophenyl)borate,LiB(C6H5)4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(lithium bis(oxalato)borate、LiB(C2O4)2)(LiBOB)、LiFePO4、LiLaTi2O6、Li2.9PO3.3N0.46、Li3PO4、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO4)3、Li3.6Si0.6P0.4O4、Li5La3Ta2O12、またはこれらの組み合わせである。
【0077】
本開示の実施形態によれば、溶媒は有機溶媒、例えばエステル類溶媒、ケトン類溶媒、炭酸エステル類溶媒、エーテル類溶媒、アルカン類溶媒、アミド類溶媒、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、溶媒は、1,2-ジエトキシエタン(1,2-diethoxyethane)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)、1,2-ジブトキシエタン(1,2-dibutoxyethane)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide,DMAc)、N-メチルピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone,NMP)、酢酸メチル(methyl acetate)、酢酸エチル(ethyl acetate)、酪酸メチル(methyl butyrate)、酪酸エチル(ethyl butyrate)、プロピオン酸メチル(methyl proionate)、プロピオン酸エチル(ethyl proionate)、酢酸プロピル(propyl acetate,PA)、ブチロラクトン(γ-butyrolactone,GBL)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate,DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate,EMC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate,DMC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate)、1,3-プロパンスルトン(1,3-propanesultone)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate)、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0078】
本開示の実施形態によれば、リチウム塩(成分(B))の溶媒(成分(C))中における濃度は約0.5Mから6M、例えば約0.7M、0.8M、0.9M、1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、2M、3M、4M、または5Mである。
【0079】
本開示の実施形態によれば、電解質組成物の作製方式は、成分(A)、成分(B)、および成分(C)を混合するステップを含む。本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物が開環重合反応によって確実に擬固体電解質に変わるようにするため、本開示に係る電解質組成物は成分(D)をさらに含んでよく、成分(D)は開環重合開始剤であってよく、成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)の総重量に対し、成分(D)の含有量を0.1wt%から20wt%(例えば0.2wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、11wt%、12wt%、13wt%、14wt%、15wt%、16wt%、17wt%、18wt%、または19wt%)とすることができる。本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物は成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)からなる。
【0080】
本開示の実施形態によれば、開環重合開始剤はイオン化合物であってよく、かつ開環重合開始剤と成分(B)であるリチウム塩とは異なるものである。本開示の実施形態によれば、イオン化合物のカチオンはNa+、Li+、K+、Ag+、またはNH4
+であってよく、イオン化合物のアニオンはH3COO-、OH-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、N(SO2F)2
-、N(SO2CF3)2
-、N(SO2CF2CF3)2
-、BF2(C2O4)-、AsF6
-、またはSbF6
-であってよい。
【0081】
本開示の実施形態によれば、成分(B)であるリチウム塩が、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(lithium trifluoromethanesulfonate,LiSO3CF3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、テトラクロロガリウム酸リチウム(LiGaCl4)、硝酸リチウム(LiNO3)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(tris(trifluoromethanesulfonyl)methyllithium,LiC(SO2CF3)3)、チオシアン酸リチウム水和物(lithium thiocyanate hydrate,LiSCN)、LiO3SCF2CF3、LiC6F5SO3、LiO2CCF3、リチウムフルオロスルホネート(lithiumfluorosulfonate,LiSO3F)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸リチウム(Lithium tetrakis(pentafluorophenyl)borate,LiB(C6H5)4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(lithium bis(oxalato)borate,LiB(C2O4)2)(LiBOB)、LiFePO4、LiLaTi2O6、Li2.9PO3.3N0.46、Li3PO4、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO4)3、Li3.6Si0.6P0.4O4、またはLi5La3Ta2O12を含む場合、本開示に係る電解質組成物は成分(D)をさらに含んでいてよい。
【0082】
本開示の実施形態によれば、成分(B)であるリチウム塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム(lithium hexafluorophosphate,LiPF6)、過塩素酸リチウム(lithium perchlorate,LiClO4)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(lithium difluoro(oxalato)borate,LiBF2(C2O4))(LiDFOB)、テトラフルオロホウ酸リチウム(lithium tetrafluoroborate,LiBF4)、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(bis(fluorosulfonyl)imide lithium,LiN(SO2F)2)(LiFSI)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム(bis(trifluoromethane)sulfonimide lithium,LiN(SO2CF3)2)(LiTFSI)、リチウムビスパーフルオロエタンスルホンイミド(lithium bis perfluoroethanesulfonimide,LiN(SO2CF2CF3)2)、ヘキサフルオロひ酸リチウム(LiAsF6)、またはヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF6)を含む場合は、本開示に係る電解質組成物は成分(D)を含まなくてよい。
【0083】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物は、成分(E)をさらに含んでよく、成分(E)は充填材であってよく、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(E)の総重量(または成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、もしくは成分(E)の総重量)に対し、成分(E)の含有量は0.1wt%から30wt%(例えば0.5wt%、1wt%、2wt%、4wt%、6wt%、8wt%、10wt%、12wt%、14wt%、16wt%、18wt%、20wt%、22wt%、24wt%、26wt%、28wt%または29wt%)とすることができる。本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物は成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、および成分(E)からなる。
【0084】
本開示の実施形態によれば、本開示に係る電解質組成物に充填材を加える目的は、電解質の機械強度を増強し、イオン伝導率を高め、安全性を改善することである。充填材は酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、リチウムランタンジルコネート(lithium lanthanum zirconate,LLZO)、リチウムランタンチタネート(lithium lanthanum titanate,LLTO)、リチウムアルミニウムゲルマニウムホスフェート(LAGP)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LATP)、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0085】
本開示の実施形態によれば、本開示は擬固体電解質も提供し、それは本開示に係る電解質組成物に開環重合反応を行った生成物である。本開示に係る擬固体電解質の作製方法は、本開示に係る電解質組成物に加熱プロセスを行って(温度は20℃から150℃であってよく、時間は60分から24時間であってよい)、式(I)の繰り返し単位を有するポリマー(例えば第1のポリマー(A1)または第3のポリマー(A3))を開環重合反応させて、本開示に係る擬固体電解質を得るステップを含み得る。
【0086】
本開示の実施形態に基づいて、上記擬固体電解質を含むリチウムイオン電池も提供する。
図1を参照されたい。リチウムイオン電池100は負極10、正極20、およびセパレータ30を含み、負極10はセパレータ30により正極20と隔てられている。本開示の実施形態によれば、電池100は擬固体電解質40を含んでいてよく、かつ電解質40は負極10と正極20との間に配置される。つまり、負極10、セパレータ30および正極20の相互スタック構造は、擬固体電解質40中に位置する。本開示の実施形態によれば、擬固体電解質は電池100全体の中に分布される。本開示の実施形態によれば、本開示に係るリチウムイオン電池の作製方法は以下のステップを含み得る。先ず、負極10、正極20、およびセパレータ30から構成される積層を電池チャンバー内に入れる。次いで、本開示に係る電解質組成物を電池チャンバーに注入する。最後に、電解質組成物に加熱プロセスを行って、電解質組成物を擬固体電解質40に変える。
【0087】
本開示の実施形態によれば、負極10は負極活性層を含み、負極活性層は負極活物質を含む。本開示の実施形態によれば、負極活物質はリチウム金属、リチウム合金、遷移金属酸化物、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、コークス、グラファイト(例えば人造グラファイト、天然グラファイト)、カーボンブラック、カーボンファイバー、メソフェーズカーボンマイクロビーズ、グラッシーカーボン、リチウム含有化合物、ケイ素含有化合物、スズ、スズ含有化合物、またはこれらの組み合わせであり得る。本開示の実施形態によれば、リチウム含有化合物には、LiAl、LiMg、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sb、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、LiC6、Li3FeN2、Li2.6Co0.4N、またはLi2.6Cu0.4Nが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、ケイ素含有化合物には、酸化ケイ素、炭素修飾酸化ケイ素、シリコンカーボンもしくは純シリコン材料、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、スズ含有化合物には、スズアンチモン合金(SnSb)およびスズ酸化物(SnO)が含まれ得る。本開示の実施形態によれば、遷移金属酸化物には、Li4Ti5O12、またはTiNb2O7が含まれ得る。本開示の実施形態によれば、リチウム合金は、例えばアルミニウムリチウム含有合金(aluminum-lithium-containing alloy)、リチウムマグネシウム含有合金(lithium-magnesium-containing alloy)、リチウム亜鉛含有合金(lithium-zinc-containing alloy)、リチウム鉛含有合金(lithium-lead-containing alloy)、またはリチウムスズ含有合金(lithium-tin-containing alloy)であり得る。
【0088】
本開示の実施形態によれば、負極活性層は導電添加剤をさらに含んでいてよく、導電添加剤は例えば、カーボンブラック、導電性グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、またはグラフェンであり得る。本開示の実施形態によれば、負極活性層はバインダーをさらに含んでいてよく、バインダーには、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレンブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリエチルアクリレート、ポリビニルクロリド、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリアクリル酸、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0089】
本開示の実施形態によれば、負極10は負極集電層をさらに含んでいてよく、負極活性層は負極集電層の上に配置される。本開示の実施形態によれば、負極活性層は、セパレータと負極集電層との間に配置されてよい。本開示の実施形態によれば、負極集電層は、導電性炭素基材、金属箔、または多孔構造を有する金属材料、例えばカーボンクロス、カーボンフェルト、もしくはカーボンペーパー、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ニッケルメッシュ、銅メッシュ、モリブデンメッシュ、発泡ニッケル、発泡銅、もしくは発泡モリブデンであり得る。本開示の実施形態によれば、多孔構造を有する金属材料の気孔率は、約10%から99.9%(例えば、約60%または70%)とすることができる。
【0090】
本開示の実施形態によれば、負極活性層は、負極スラリーで作製し、得ることができる。本開示の実施形態によれば、負極スラリーは、負極活物質、導電添加剤、バインダー、および溶媒を含んでいてよく、負極活物質、導電添加剤、バインダーは溶媒中に分散される。負極スラリーの固形分は40wt%から80wt%とすることができる。本開示の実施形態によれば、負極の作製方式は以下のステップを含んでいてよい。先ず、負極スラリーを塗布プロセスにより負極集電層の表面に形成し、コーティング層を形成する。次いで、そのコーティング層に乾燥プロセスを行い(プロセス温度は50℃から180℃とすることができる)、負極活性層を有する負極を得る。本開示の実施形態によれば、溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ピロリドン(pyrrolidone)、N-ドデシルピロリドン(N-dodecylpyrrolidone)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、水(water)、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、塗布プロセスは、スクリーン印刷、スピンコート法(spin coating)、バー塗布法(bar coating)、ブレード塗布法(blade coating)、ローラー塗布法(roller coating)、溶媒キャスト法(solvent casting)、または浸漬塗布法(dip coating)とすることができる。
【0091】
本開示の実施形態によれば、負極活性層中、負極活物質、導電添加剤、およびバインダーの総重量に対し、負極活物質の重量パーセントは約80wt%から99.8wt%、導電添加剤の重量パーセントは約0.1wt%から10wt%、バインダーの重量パーセントは約0.1wt%から10wt%とすることができる。
【0092】
本開示の実施形態によれば、正極20は正極活性層を含み、正極活性層は正極活物質を含む。本開示の実施形態によれば、正極活物質は、硫黄、有機硫化物、硫黄炭素複合体(sulfur-carbon composite)、金属含有酸化リチウム、金属含有硫化リチウム、金属含有セレン化リチウム、金属含有テルル化リチウム、金属含有リン化リチウム、金属含有ケイ化リチウム、金属含有ホウ化リチウム、またはこれらの組み合わせであってよい。このうち、金属は、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、銅、モリブデン、ニオブ、鉄、ニッケル、コバルト、およびマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1つである。本開示の実施形態によれば、正極活物質は、酸化リチウムコバルト(lithium cobalt oxide)、酸化リチウムニッケル(lithium nickle oxide)、酸化リチウムマンガン(lithium manganese oxide)、酸化リチウムコバルトマンガン(lithium cobalt manganese oxide)、酸化リチウムニッケルコバルト(lithium nickel cobalt oxide)、酸化リチウムマンガンニッケル(lithium nickle manganese oxide)、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(lithium nickle manganese cobalt oxide)、リン酸リチウムコバルト(lithium cobalt phosphate)、酸化リチウムマンガンクロム(lithium-chromium-manganese oxide)、酸化リチウムニッケルバナジウム(lithium-nickel-vanadium oxide)、酸化リチウムマンガンニッケル(lithium-manganese-nickel oxide)、酸化リチウムコバルトバナジウム(lithium-cobalt-vanadium oxide)、酸化リチウムニッケルコバルトアルミニウム(lithium-nickle-cobalt-aluminum oxide)、リン酸リチウム鉄(lithium iron phosphate)、リン酸リチウムマンガン鉄(lithium manganese iron phosphate)、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0093】
本開示の実施形態によれば、正極活性層は導電添加剤をさらに含んでいてよく、導電添加剤は例えば、カーボンブラック、導電性グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、またはグラフェンであり得る。本開示の実施形態によれば、正極活性層はバインダーをさらに含んでいてよく、バインダーには、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレンブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリエチルアクリレート、ポリビニルクロリド、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリアクリル酸、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0094】
本開示の実施形態によれば、正極は正極集電層をさらに含んでいてよく、正極活性層は正極集電層の上に配置される。本開示の実施形態によれば、正極活性層は、セパレータと正極集電層との間に配置されてよい。本開示の実施形態によれば、正極集電層は、導電性炭素材、金属箔、または多孔構造を有する金属材料、例えばカーボンクロス、カーボンフェルト、またはカーボンペーパー、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ニッケルメッシュ、銅メッシュ、モリブデンメッシュ、発泡ニッケル、発泡銅、または発泡モリブデンであってよい。本開示の実施形態によれば、多孔構造を有する金属材料の気孔率は、約10%から99.9%(例えば約60%または70%)とすることができる。
【0095】
本開示の実施形態によれば、正極活性層は、正極スラリーで作製し、得ることができる。本開示の実施形態によれば、正極スラリーは、正極活物質、導電添加剤、バインダー、および溶媒を含んでいてよく、正極活物質、導電添加剤、バインダーは溶媒中に分散される。正極スラリーの固形分は40wt%から80wt%とすることができる。本開示の実施形態によれば、正極の作製方式は以下のステップを含んでいてよい。先ず、正極スラリーを塗布プロセスにより正極集電層の表面に形成し、コーティング層を形成する。次いで、そのコーティング層に乾燥プロセスを行い(プロセス温度は90℃から180℃とすることができる)、正極活性層を有する正極を得る。本開示の実施形態によれば、溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ピロリドン(pyrrolidone)、N-ドデシルピロリドン(N-dodecylpyrrolidone)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、塗布プロセスは、スクリーン印刷、スピンコート法(spin coating)、バー塗布法(bar coating)、ブレード塗布法(blade coating)、ローラー塗布法(roller coating)、溶媒キャスト法(solvent casting)、または浸漬塗布法(dip coating)とすることができる。
【0096】
本開示の実施形態によれば、正極活性層中、正極活物質、導電添加剤、およびバインダーの総重量に対し、正極活物質の重量パーセントは約80wt%から99.8wt%、導電添加剤の重量パーセントは約0.1wt%から10wt%、バインダーの重量パーセントは約0.1wt%から10wt%とすることができる。
【0097】
本開示の実施形態によれば、セパレータ30は絶縁材料、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(polypropylene,PP)、ポリテトラフルオロエチレン膜、ポリアミド膜、ポリビニルクロリド膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ポリアニリン膜、ポリイミド膜、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリスチレン(polystyrene,PS)、セルロース(cellulose)、またはこれらの組み合わせであってよい。例を挙げると、セパレータは例えばPE/PP/PE多層複合構造であってよい。本開示の実施形態によれば、セパレータの厚さに特に限定はなく、当該技術分野において通常の知識を有する者は、実際の必要性に応じて調整することができる。本開示の実施形態によれば、例として、セパレータ30の厚さは約1μmから1000μm(例えば約10μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、または900μm)とすることができる。セパレータの厚さが厚すぎると、電池のエネルギー密度が低下してしまう。セパレータの厚さが薄すぎると、膜材の機械強度が不十分となり、正負極間のショートのリスクが高まると共に、電池の自己放電現象が増加し、かつ電池のサイクル安定性に影響が出る。
【0098】
以下に、当該技術分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、添付の図面を参照としながら例示的な実施例を詳細に説明する。本発明概念は、ここに示される例示的な実施例に限定されることなく、様々な形式で具体化され得る。明確とするために既知の部分の説明は省き、全体を通して、類似する参照番号は類似する構成要素を指すものとする。
【実施例0099】
ポリマーの作製
【0100】
作製例1
【0101】
グリシジルメタクリレート(glycidyl methacrylate,GMA)100重量部をメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone,MEK)100重量部中に溶解し、アゾイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を開始剤として加えて混合物を得た。次いで、その混合物に加熱プロセスを行って(プロセス温度は70℃)、グリシジルメタクリレートにフリーラジカル重合反応を進行させた。反応24時間後に得られたものを室温まで冷却し、得られたものとジエチルエーテル(diethyl ether)とを混合した(得られたものとジエチルエーテルとの体積比は1:20)。十分に混合し静置した後、沈殿した固体を収集して乾燥し、ポリマー(1)を得た。
【0102】
得られたポリマー(1)の重量平均分子量を測定したところ、ポリマー(1)の重量平均分子量は約24000(g/mol)であることがわかった。重量平均分子量の測定にはゲル浸透クロマトグラフィー装置(GPC)(型番RI Model 2414)を用いた。次いで、核磁気共鳴分光法によりポリマー(1)を分析した。得られたスペクトルデータは次に示す通りであった:1H NMR(CDCl3,500MHz)4.23-4.51(m),3.72-3.92(m),3.12-3.35(s),2.79-2.93(s),2.58-2.74(s),0.78-2.18(m)。
【0103】
作製例2
【0104】
リン酸ジエチルメタクリロイルオキシエチル(diethyl 2-(methacryloyloxy)ethyl phosphate、構造は
【化19】
)100重量部を、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone,MEK)100重量部中に溶解し、アゾイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を開始剤として加えて混合物を得た。次いで、その混合物に加熱プロセスを行って(プロセス温度は70℃)、リン酸ジエチルメタクリロイルオキシエチルにフリーラジカル重合反応を進行させた。反応24時間後に得られたものを室温まで冷却し、得られたものとジエチルエーテル(diethyl ether)とを混合した(得られたものとジエチルエーテルとの体積比は1:20)。十分に混合し静置した後、沈殿した固体を収集して乾燥し、ポリマー(2)を得た。
【0105】
得られたポリマー(2)の重量平均分子量を測定したところ、ポリマー(2)の重量平均分子量は約6000(g/mol)であることがわかった。次いで、核磁気共鳴分光法によりポリマー(2)を分析した。得られたスペクトルデータは次に示す通りであった:1H NMR(CDCl3,500MHz)4.09-4.27(m),0.78-2.18(m)。
【0106】
作製例3
【0107】
リン酸ジフェニルメタクリロイルオキシエチル(diphenyl 2-(methacryloyloxy)ethyl phosphate、構造は
【化20】
)100重量部を、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone,MEK)100重量部中に溶解し、アゾイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を開始剤として加えて混合物を得た。次いで、その混合物に加熱プロセスを行って(プロセス温度は70℃)、リン酸ジフェニルメタクリロイルオキシエチルにフリーラジカル重合反応を進行させた。反応24時間後に得られたものを室温まで冷却し、得られたものとジエチルエーテル(diethyl ether)とを混合した(得られたものとジエチルエーテルとの体積比は1:20)。十分に混合し静置した後、沈殿した固体を収集して乾燥し、ポリマー(3)を得た。
【0108】
作製例4
【0109】
(6-オキシド-6H-ジベンズ[c,e][1,2]オキサホスホリン-6-イル)メチルメタクリレート((6-Oxido-6H-dibenz[c,e][1,2]oxaphosphorin-6-yl)methyl methacrylate、構造は
【化21】
)100重量部を、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone,MEK)100重量部中に溶解し、アゾイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を開始剤として加えて混合物を得た。次いで、その混合物に加熱プロセスを行って(プロセス温度は70℃)、(6-オキシド-6H-ジベンズ[c,e][1,2]オキサホスホリン-6-イル)メチルメタクリレートにフリーラジカル重合反応を進行させた。反応24時間後に得られたものを室温まで冷却し、得られたものとジエチルエーテル(diethyl ether)とを混合した(得られたものとジエチルエーテルとの体積比は1:20)。十分に混合し静置した後、沈殿した固体を収集して乾燥し、ポリマー(4)を得た。
【0110】
作製例5
【0111】
グリシジルメタクリレート(glycidyl methacrylate,GMA)50重量部、およびリン酸ジエチルメタクリロイルオキシエチル(diethyl 2-(methacryloyloxy)ethyl phosphate、構造は
【化22】
)50重量部を、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone,MEK)100重量部中に溶解し、アゾイソブチロニトリル(AIBN)3重量部を開始剤として加えて混合物を得た。次いで、その混合物に加熱プロセスを行って(プロセス温度は70℃)、グリシジルメタクリレートおよびリン酸ジエチルメタクリロイルオキシエチルにフリーラジカル重合反応を進行させた。反応24時間後に得られたものを室温まで冷却し、得られたものとジエチルエーテル(diethyl ether)とを混合した(得られたものとジエチルエーテルとの体積比は1:20)。十分に混合し静置した後、沈殿した固体を収集して乾燥し、ポリマー(5)を得た。
【0112】
得られたポリマー(5)の重量平均分子量を測定したところ、ポリマー(5)の重量平均分子量は約22000(g/mol)であることがわかった。次いで、核磁気共鳴分光法によりポリマー(5)を分析した。得られたスペクトルデータは次に示す通りであった:1H NMR(CDCl3,500MHz)4.23-4.51(m),4.09-4.27(m),3.72-3.92(m),3.12-3.35(s),2.79-2.93(s),2.58-2.74(s),0.78-2.18(m)。
【0113】
電解液組成物の作製
【0114】
実施例1
【0115】
電解液(LiPF6、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate,EMC)、およびジエチルカーボネート(diethyl carbonate,DEC)を含む。LiPF6の濃度は1M、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比は3:5:2)93重量部、開環重合開始剤(Li BF2(C2O4))2重量部、ポリマー(1)2重量部、ならびにポリマー(2)3重量部を混合し、電解質組成物(1)を得た。
【0116】
実施例2
【0117】
電解液(LiPF6、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate,EMC)、およびジエチルカーボネート(diethyl carbonate,DEC)を含む。LiPF6の濃度は1M、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比は3:5:2)93重量部、開環重合開始剤(Li BF2(C2O4))2重量部、ポリマー(1)2重量部、ならびにポリマー(3)3重量部を混合し、電解質組成物(2)を得た。
【0118】
実施例3
【0119】
電解液(LiPF6、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate,EMC)、およびジエチルカーボネート(diethyl carbonate,DEC)を含む。LiPF6の濃度は1M、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比は3:5:2)93重量部、開環重合開始剤(Li BF2(C2O4))2重量部、ポリマー(1)2重量部、ならびにポリマー(4)3重量部を混合し、電解質組成物(3)を得た。
【0120】
実施例4
【0121】
電解液(LiPF6、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate,EMC)、およびジエチルカーボネート(diethyl carbonate,DEC)を含む。LiPF6の濃度は1M、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比は3:5:2)95重量部、開環重合開始剤(Li BF2(C2O4))2重量部、ならびにポリマー(5)3重量部を混合し、電解質組成物(4)を得た。
【0122】
比較例1
【0123】
電解液(LiPF6、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate,EMC)、およびジエチルカーボネート(diethyl carbonate,DEC)を含む。LiPF6の濃度は1M、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比は3:5:2)96重量部、開環重合開始剤(Li BF2(C2O4))2重量部、ならびにポリマー(1)2重量部を混合し、電解質組成物(5)を得た。
【0124】
擬固体電解質の作製
【0125】
電解質組成物(1)、(2)および(5)に対しそれぞれ加熱プロセスを行って(プロセス温度55℃、時間14時間)、組成物中のポリマー(1)に開環重合反応を進行させ、擬固体電解質(1)~(3)をそれぞれ得た。
【0126】
自己消火時間試験
【0127】
擬固体電解質(1)~(3)を1グラムずつ取り、直径47mmの容器にそれぞれ入れた。次いで、擬固体電解質(1)~(3)に着火して燃焼させ、各擬固体電解質の着火から火が消えるまでの時間(自己消火時間(self-extinguish time,SET)(単位は秒/グラム(sec/g))を記録した。結果は表1に示すとおりである。文献J.of Electrochem.Soc.2002,149,A6225によれば、SET>20は可燃性材料、6<SET<20は燃焼抑制性材料、SET<6は耐炎性材料である。
【0128】
【0129】
表1からわかるように、電解質組成物が本開示に係る第1のポリマー(即ち電解質組成物(5))のみを含む場合、得られた擬固体電解質の自己消火時間は、純粋な電解液と差がなかった。電解質組成物が本開示に係る第1のポリマーおよび第2のポリマー(即ち、電解質組成物(1)および(2))を同時に含む場合、得られた擬固体電解質が燃焼を抑制する効果を明らかに有していた。
【0130】
リチウムイオン電池の作製
【0131】
実施例5
【0132】
標準リチウムイオン電池の正極スラリー(97.3wt%のNMC811(LiNiiMnjCokO2;但し、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;k:0.11~0.12)(商品コードはNMC811-S85E、寧波容百新能源科技社製)、1wt%のSuper-P(導電炭素粉末、Timcalより購入)、1.4wt%のPVDF-5130、および0.3wt%のカーボンナノチューブ(商品コードはTUBALL(登録商標)BATT、OCSiAlより購入)を含む。NMC811-S85E、Super-P、PVDF-5130、カーボンナノチューブはN-メチルピロリドン中に均一に分散されている)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(安全企業より購入。厚さ12マイクロメーター)に塗布した。乾燥後、正極を得た。次いで、グラファイト電極(集電基板上に配置される活物質を含む。集電基板は炭素繊維ペーパーであり、活物質は天然グラファイトである)を準備し、負極とした。次いで、セパレータ(型番はCelgard 2320、AsahiKasei)を準備した。次いで、負極/セパレータ/正極の順で並べて積層を得ると共に、アルミニウムプラスチックフィルムでその積層を包装して封止してから、乾燥オーブンに入れて80℃で2時間乾燥させた。そして、乾燥プロセスが完了したパウチ電池(pouch cell)を取り出し、アルゴンを充填したグローブボックス中で電解質組成物(1)を注入した。封止後、55℃の恒温オーブンに14時間置き、リチウムイオン電池(1)を得た。
【0133】
実施例6
【0134】
標準リチウムイオン電池の正極スラリー(97.3wt%のNMC811(LiNiiMnjCokO2;但し、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;k:0.11~0.12)(商品コードはNMC811-S85E、寧波容百新能源科技社製)、1wt%のSuper-P(導電炭素粉末、Timcalより購入)、1.4wt%のPVDF-5130、および0.3wt%のカーボンナノチューブ(商品コードはTUBALL(登録商標)BATT、OCSiAlより購入)を含む。NMC811-S85E、Super-P、PVDF-5130、カーボンナノチューブはいずれもN-メチルピロリドン中に分散されている)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(安全企業より購入。厚さ12マイクロメーター)に塗布した。乾燥後、正極を得た。次いで、グラファイト電極(集電基板上に配置される活物質を含む。集電基板は炭素繊維ペーパー、活物質は天然グラファイトである)を準備し、負極とした。次いで、セパレータ(型番はCelgard 2320、AsahiKasei)を準備した。次いで、負極/セパレータ/正極の順で並べて積層を得ると共に、アルミニウムプラスチックフィルムでその積層を包装して封止してから、乾燥オーブンに入れて80℃で2時間乾燥させた。そして、乾燥プロセスが完了したパウチ電池(pouch cell)を取り出し、アルゴンを充填したグローブボックス中で電解質組成物(2)を注入した。封止後、55℃の恒温オーブンに14時間置き、リチウムイオン電池(2)を得た。
【0135】
実施例7
【0136】
標準リチウムイオン電池の正極スラリー(97.3wt%のNMC811(LiNiiMnjCokO2;但し、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;k:0.11~0.12)(商品コードはNMC811-S85E、寧波容百新能源科技社製)、1wt%のSuper-P(導電炭素粉末、Timcalより購入)、1.4wt%のPVDF-5130、および0.3wt%のカーボンナノチューブ(商品コードはTUBALL(登録商標)BATT、OCSiAlより購入)を含む。NMC811-S85E、Super-P、PVDF-5130、カーボンナノチューブはN-メチルピロリドン中に均一に分散されている)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(安全企業より購入。厚さ12マイクロメーター)に塗布した。乾燥後、正極を得た。次いで、グラファイト電極(集電基板上に配置される活物質を含む。集電基板は炭素繊維ペーパー、活物質は天然グラファイトである)を準備し、負極とした。次いで、セパレータ(型番はCelgard 2320、AsahiKasei)を準備した。次いで、負極/セパレータ/正極の順で並べて積層を得ると共に、アルミニウムプラスチックフィルムでその積層を包装して封止してから、乾燥オーブンに入れて80℃で2時間乾燥させた。そして、乾燥プロセスが完了したパウチ電池(pouch cell)を取り出し、アルゴンを充填したグローブボックス中で電解質組成物(4)を注入した。封止後、55℃の恒温オーブンに14時間置き、リチウムイオン電池(3)を得た。
【0137】
比較例2
【0138】
標準リチウムイオン電池の正極スラリー(97.3wt%のNMC811(LiNiiMnjCokO2;ただし、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;k:0.11~0.12)(商品コードはNMC811-S85E、寧波容百新能源科技社製)、1wt%のSuper-P(導電炭素粉末、Timcalより購入)、1.4wt%のPVDF-5130、および0.3wt%のカーボンナノチューブ(商品コードはTUBALL(登録商標)BATT、OCSiAlより購入)を含む。NMC811-S85E、Super-P、PVDF-5130、カーボンナノチューブはN-メチルピロリドン中に均一に分散されている)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(安全企業より購入。厚さ12マイクロメーター)に塗布した。乾燥後、正極を得た。次いで、グラファイト電極(集電基板上に配置される活物質を含む。集電基板は炭素繊維ペーパー、活物質は天然グラファイトである)を準備し、負極とした。次いで、セパレータ(型番はCelgard 2320、AsahiKasei)を準備した。次いで、負極/セパレータ/正極の順で並べて積層を得ると共に、アルミニウムプラスチックフィルムでその積層を包装して封止してから、乾燥オーブンに入れて80℃で2時間乾燥させた。そして、乾燥プロセスが完了したパウチ電池(pouch cell)を取り出し、アルゴンを充填したグローブボックス中で電解液(LiPF6、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、およびジエチルカーボネート(diethyl carbonate,DEC)を含む。LiPF6の濃度は1M、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)の体積比は3:5:2)を注入した。封止後、55℃の恒温オーブンに14時間置き、リチウムイオン電池(4)を得た。
【0139】
比較例3
【0140】
標準リチウムイオン電池の正極スラリー(97.3wt%のNMC811(LiNiiMnjCokO2;但し、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;k:0.11~0.12)(商品コードはNMC811-S85E、寧波容百新能源科技社製)、1wt%のSuper-P(導電炭素粉末、Timcalより購入)、1.4wt%のPVDF-5130、および0.3wt%のカーボンナノチューブ(商品コードはTUBALL(登録商標)BATT、OCSiAlより購入)を含む。NMC811-S85E、Super-P、PVDF-5130、カーボンナノチューブはN-メチルピロリドン中に均一に分散されている)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(安全企業より購入。厚さ12マイクロメーター)に塗布した。乾燥後、正極を得た。次いで、グラファイト電極(集電基板上に配置される活物質を含む。集電基板は炭素繊維ペーパー、活物質は天然グラファイトである)を準備し、負極とした。次いで、セパレータ(型番はCelgard 2320、AsahiKasei)を準備した。次いで、負極/セパレータ/正極の順で並べて積層を得ると共に、アルミニウムプラスチックフィルムでその積層を包装して封止してから、乾燥オーブンに入れて80℃で2時間乾燥させた。そして、乾燥プロセスが完了したパウチ電池(pouch cell)を取り出し、アルゴンを充填したグローブボックス中で電解質組成物(5)を注入した。封止後、55℃の恒温オーブンに14時間置き、リチウムイオン電池(5)を得た。
【0141】
比較例4
【0142】
標準リチウムイオン電池の正極スラリー(97.3wt%のNMC811(LiNiiMnjCokO2;但し、i:0.83~0.85;j:0.4~0.5;k:0.11~0.12)(商品コードはNMC811-S85E、寧波容百新能源科技社製)、1wt%のSuper-P(導電炭素粉末、Timcalより購入)、1.4wt%のPVDF-5130、および0.3wt%のカーボンナノチューブ(商品コードはTUBALL(登録商標)BATT、OCSiAlより購入)を含む。NMC811-S85E、Super-P、PVDF-5130、カーボンナノチューブはN-メチルピロリドン中に均一に分散されている)を、アルミニウム箔(正極集電層となる)(安全企業より購入。厚さ12マイクロメーター)に塗布した。乾燥後、正極を得た。次いで、グラファイト電極(集電基板上に配置される活物質を含む。集電基板は炭素繊維ペーパー、活物質は天然グラファイトである)を準備し、負極とした。次いで、セパレータ(型番はCelgard 2320、AsahiKasei)を準備した。次いで、負極/セパレータ/正極の順で並べて積層を得ると共に、アルミニウムプラスチックフィルムでその積層を包装して封止してから、乾燥オーブンに入れて80℃で2時間乾燥させた。そして、乾燥プロセスが完了したパウチ電池(pouch cell)を取り出し、アルゴンを充填したグローブボックス中で電解質組成物(2)を注入した。封止後(加熱プロセスは行わない)、リチウムイオン電池(6)を得た。
【0143】
次いで、実施例5~6および比較例2~3で得られたリチウムイオン電池(1)、(2)、(4)および(5)の0.5/2Cにおけるレート放電容量、および放電維持率(2C/0.5C)をそれぞれ測定した。結果は表2に示されるとおりである。また、実施例5~6および比較例2~3で得られたリチウムイオン電池(1)、(2)、(4)および(5)の容量維持率(%)をそれぞれ測定した。結果は表2に示されるとおりである。容量維持率については、1C/1の充放電レート(45℃下)で、電池の1サイクル目および450サイクル目の放電比容量をそれぞれ測定し、450サイクル目の容量維持率(%)を算出した。
【0144】
【0145】
表2からわかるように、本開示に係る擬固体電解質を用いたリチウムイオン電池(例えばリチウムイオン電池(1)および(2))の2Cにおける放電容量は依然として1.5Ahよりも大きく、かつ放電維持率(2C/0.5C)は90%よりも高かった。また、本開示に係る擬固体電解質を用いたリチウムイオン電池(例えばリチウムイオン電池(1)および(2))の450サイクル目の容量維持率は依然として85%よりも高く、リチウムイオン電池のサイクル寿命延長という目的が達せられる。
【0146】
次いで、実施例6および比較例4で得られたリチウムイオン電池(2)および(6)の0.5/2Cにおけるレート放電容量、および放電維持率(2C/0.5C)をそれぞれ測定した。結果は表3に示されるとおりである。また、実施例6および比較例4で得られたリチウムイオン電池(2)および(6)に電池直流内部抵抗(DCIR)の測定を行った。結果は表3に示されるとおりである。直流内部抵抗(DCIR)の測定は、電池を1Cの電流で満充電にし、1時間静置した後、1Cの電流で3秒放電し、電圧差から電池のインピーダンスを算出することで行った。
【0147】
【0148】
実施例6では、パウチ電池に注入する電解質組成物(2)に加熱プロセスを行って、ポリマー(1)の反応官能基に開環重合を進行させた。一方、比較例4では、パウチ電池に注入される電解質組成物(2)に加熱プロセスを行っていない。表3からわかるように、実施例6と比較して、比較例4で得られたリチウムイオン電池(6)の放電容量維持率は約84.7%まで低下し、かつ直流内部抵抗は約61.5mOhmsに増えていた。
【0149】
次いで、実施例5、実施例7、および比較例2で得られたリチウムイオン電池(1)、(3)および(4)の0.5/2Cにおけるレート放電容量、および放電維持率(2C/0.5C)をそれぞれ測定した。結果は表4に示されるとおりである。次いで、電池内部抵抗計測器で実施例5、実施例7、および比較例2で得られたリチウムイオン電池(1)、(3)および(4)に対して電池の交流内部抵抗(ACIR)測定を行った。結果は表4に示されるとおりである。また、実施例5、実施例7、および比較例2で得られたリチウムイオン電池(1)、(3)および(4)に対し、高電圧酸化電流測定を行った。結果は表4に示されるとおりである。高電圧酸化電流は、電気化学測定法であるリニアスイープボルタンメトリー(linear sweep voltammetry,LSV)により電池を測定したものである。測定の条件は、走査速度10mV/s、電圧範囲3.0Vから5.5Vとし、5.5Vの電流値を記録した。
【0150】
【0151】
表4からわかるように、本開示に係る擬固体電解質を用いたリチウムイオン電池(例えばリチウムイオン電池(1)および(3))の2Cにおける放電容量は依然1.5Ahよりも大きく、放電維持率(2C/0.5C)は90%より高く、かつ交流内部抵抗は13mΩよりも小さくなっている。また、比較例2(本開示に係る擬固体電解質を使用していないリチウムイオン電池)と比較して、本開示に係る擬固体電解質を用いたリチウムイオン電池(例えばリチウムイオン電池(1)および(3))の酸化電流は明らかに低かった。
【0152】
上述によれば、本開示に係る特定の組成を有する擬固体電解質は、より優れた燃焼抑制性を確実に備えており、かつ良好な電気特性と高電圧酸化反応を抑えることのできる効果を有している。これにより、リチウムイオン電池の高電圧動作、レート性能および安全性をさらに改善させることができると共に、リチウムイオン電池のサイクル寿命を延長することもできる。
【0153】
開示された方法および物質に各種変更および変化を加え得るということは、明らかであろう。明細書および実施例は単なる例示とみなされるよう意図されており、本開示の真の範囲は、以下の請求項およびそれらの均等物によって示される。