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  • 特開-光起電力素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163155
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】光起電力素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20231101BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20231101BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20231101BHJP
【FI】
H10K30/50
H01G9/20 113A
H01G9/20 301
H01G9/20 307
H10K85/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071219
(22)【出願日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2022073031
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹本 明寿也
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 伸博
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA03
3K107EE68
5F251AA11
5F251CB14
5F251FA04
5F251XA01
5F251XA43
5F251XA53
(57)【要約】      (修正有)
【課題】LED光などの可視光を主とする屋内照明環境下においても高い出力電力が得られる光起電力素子を提供すること。
【解決手段】少なくとも陽極6と陰極2の間に光電変換層4を有する光起電力素子であって、該光電変換層が、少なくとも下記一般式(1)で表される部分構造と下記一般式(2)で表される部分構造とを有する有機化合物、特定の一般式(3)および(4)で表される構造を有する有機化合物を含有する光起電力素子。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも陽極と陰極の間に光電変換層を有する光起電力素子であって、該光電変換層が、少なくとも下記一般式(1)で表される部分構造と下記一般式(2)で表される部分構造とを有する有機化合物、下記一般式(3)で表される構造を有する有機化合物、および、下記一般式(4)で表される構造を有する有機化合物を含有する光起電力素子。
【化1】
(上記一般式(1)~(4)中、R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。XおよびXは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子またはハロゲン原子を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される部分構造が下記一般式(5)で表される部分構造であり、前記一般式(2)で表される部分化学構造が下記一般式(6)で表される部分構造である請求項1記載の光起電力素子。
【化2】
(上記一般式(5)~(6)中、R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
【請求項3】
前記一般式(3)で表される構造が下記一般式(8)で表される構造であり、前記一般式(4)で表される構造が下記一般式(9)で表される構造である請求項1または2記載の光起電力素子。
【化3】
(上記一般式(8)~(9)中、R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
【請求項4】
請求項1または2記載の光起電力素子を有する光電変換デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光起電力素子およびそれを用いた光電変換デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、現在深刻さを増すエネルギー問題に対して有力な環境に優しいエネルギー源として注目されている。現在、太陽電池の光起電力素子の半導体材料としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体などの無機物が使用されている。しかし、無機半導体を用いて製造される太陽電池は、火力発電などの発電方式と比べてコストが高いために、一般家庭に広く普及するには至っていない。コスト高の要因は、主として真空かつ高温下で半導体薄膜を形成するプロセスにある。そこで、製造プロセスの簡略化が期待される半導体材料として、共役系高分子や有機結晶などの有機半導体や有機色素を用いた有機太陽電池が検討されている。このような有機太陽電池においては、半導体材料層を塗布法で作製することが可能なため、製造プロセスを大幅に簡略化することができる。
【0003】
有機太陽電池の発電性能の向上技術として、従来、主に太陽光に対する光電変換効率を高めるために、可視光から近赤外まで満遍なく光起電できる発電層材料が開発されてきた。例えば、主に波長500~600nm付近の光を吸収する電子供与性半導体と、非フラーレン系有機半導体などの主に波長800~900nm付近の近赤外光を吸収する電子受容性半導体を組み合わせることが提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0004】
近年、有機太陽電池の用途として、無線センサの自立型電源が注目されている。無線センサは、屋外にとどまらず屋内でも利用されるため、Light-Emitting-Diode(LED)光などの、太陽光よりも低照度で可視光を多く含んだ光環境下(例えば、色温度5,000K付近)において、高い出力電力が求められる(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報第2020/052194号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「サイエンスバレットイン(Science Bulletin)」、2021年、66巻、p.1641-1648
【非特許文献2】「アドバンスドエナジーマテリアルズ(Advanced Energy Materials)」、2021年、11巻、200313号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1~2に開示される光起電力素子は、太陽光の下では高い発電性能を示すものの、太陽光よりも低照度の可視光を主とする屋内照明環境下においては、出力電力がなお不十分である課題があった。
【0008】
本発明は、LED光などの可視光を主とする屋内照明環境下においても高い出力電力が得られる光起電力素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、主として以下の構成を有する。
[1]少なくとも陽極と陰極の間に光電変換層を有する光起電力素子であって、該光電変換層が、少なくとも下記一般式(1)で表される部分構造と下記一般式(2)で表される部分構造とを有する有機化合物、下記一般式(3)で表される構造を有する有機化合物、および、下記一般式(4)で表される構造を有する有機化合物を含有する光起電力素子である。
【0010】
【化1】
【0011】
上記一般式(1)~(4)中、R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。XおよびXは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子またはハロゲン原子を示す。
[2]前記一般式(1)で表される部分構造が後述する一般式(5)で表される部分構造であり、前記一般式(2)で表される部分化学構造が後述する一般式(6)で表される部分構造である[1]記載の光起電力素子。
[3]前記一般式(3)で表される構造が後述する一般式(8)で表される構造であり、前記一般式(4)で表される構造が後述する一般式(9)で表される構造である[1]または[2]記載の光起電力素子。
[4][1]~[3]のいずれか記載の光起電力素子を有する光電変換デバイス。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光起電力素子により、可視光を主とする屋内照明環境下においても高い出力電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の光起電力素子の一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の光起電力素子について説明する。
【0015】
本発明の光起電力素子は、少なくとも陽極と陰極の間に光電変換層を有する。さらに、必要に応じて、正孔取出し層や電子取出し層、バリア層、反射防止層などを有してもよい。電子取出し層および/または電子取出し層を有することにより、キャリアを取り出すために適した界面状態を形成できるとともに、電極間の短絡を抑制することができる。
【0016】
図1に、本発明の光起電力素子の一態様の断面図を示す。図1の光起電力素子は、基板1上に、陰極2、電子取出し層3、光電変換層4、正孔取出し層5および陽極6をこの順に有する。本発明の光起電力素子の別の一態様として、基板上に、陽極、正孔取出し層、光電変換層、電子取出し層および陰極をこの順に有する構造も挙げられる。
【0017】
本発明の光起電力素子は、1つ以上の電荷再結合層を介して2層以上の光電変換層を積層(タンデム化)して直列接合を形成してもよい。例えば、基板/陽極/第1の正孔取出し層/第1の光電変換層/第1の電子取出し層/電荷再結合層/第2の正孔取出し層/第2の光電変換層/第2の電子取出し層/陰極の積層構成や、基板/陰極/第1の電子取出し層/第1の光電変換層/電荷再結合層/第2の電子取出し層/第2の光電変換層/陽極の積層構成などが挙げられる。この場合、電荷再結合層は隣接する光電変換層の陰極および陽極を兼ねていると考えることができる。このように積層することにより、開放電圧を向上させることができる。
【0018】
本発明においては、光電変換層が、少なくとも下記一般式(1)で表される部分構造と下記一般式(2)で表される部分構造とを有する有機化合物(以下、「有機化合物(1)(2)」と略記する場合がある)、下記一般式(3)で表される構造を有する有機化合物(以下、「有機化合物(3)」と略記する場合がある)、および、下記一般式(4)で表される構造を有する有機化合物(以下、「有機化合物(4)」と略記する場合がある)を含有する。光電変換層が、下記一般式(1)で表される部分構造と下記一般式(2)で表される部分構造とを有する有機化合物を含むことにより、深いHOMO準位と高い電荷移動度が得られ、開放電圧(Voc)と短絡電流(Isc)を高めることができる。さらに、本発明においては、有機化合物(3)と有機化合物(4)を組み合わせることを特徴とする。有機化合物(3)は、主に波長800~900nm付近の近赤外光を吸収する特性を有する。有機化合物(4)は、インダセノジチオフェン-ベンゾチアジアゾール構造を有するため、可視光を多く吸収し、高い開放電圧が得られる特性を有する。本発明者らの検討により、前述の主に波長500~600nm付近の光を吸収する有機化合物(1)(2)と、主に波長800~900nm付近の近赤外光を吸収する有機化合物(3)に、インダセノジチオフェン‐ベンゾチアジアゾール構造を有する有機化合物(4)を組み合わせることにより、特異的に、可視光を多く含む屋内照明環境下(色温度5,000K付近)においても高い出力電力を得ることができることを見出した。
【0019】
【化2】
【0020】
上記一般式(1)~(4)中、R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。XおよびXはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子またはハロゲン原子を示す。
【0021】
次に、各層について説明する。
【0022】
〔基板〕
基板としては、光電変換材料の種類や用途に応じて、電極材料や有機半導体層が積層できるものを選択することが好ましく、例えば、無アルカリガラス、石英ガラス、アルミニウム、鉄、銅、ステンレスなどの合金等の無機材料;ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレンポリメチルメタクリレート、エポキシ樹脂やフッ素系樹脂等の有機材料から任意の方法によって作製されたフィルムや板などが挙げられる。基板側から光を入射して用いる場合は、基板は80%以上の光透過性を有することが好ましい。
【0023】
〔陽極および陰極〕
陽極および陰極を構成する導電性材料としては、例えば、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属、金、白金、銀、銅、鉄、亜鉛、錫、アルミニウム、インジウム、クロム、ニッケル、コバルト、スカンジウム、バナジウム、イットリウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム、モリブデン、タングステン、チタンなどの金属やこれらの合金;インジウム、スズ、モリブデン、ニッケルなどの金属の酸化物;インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)などの複合金属酸化物;グラファイト、グラファイト層間化合物、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの炭素材料;ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体などの有機化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよく、これらの積層構造を有してもよい。
【0024】
陽極に用いられる導電性素材としては、正孔取出し層などの隣接する層とオーミック接合するものが好ましく、陰極に用いられる導電性素材としては、電子取出し層などの隣接する層とオーミック接合するものが好ましい。
【0025】
本発明の光起電力素子においては、陽極または陰極のうち少なくとも一方が光透過性を有することが好ましい。陽極および陰極の両方が光透過性を有してもよい。ここで、光透過性を有するとは、光電変換層に入射光が到達して起電力が発生する程度に光を透過することを意味する。すなわち、光透過率として0%を超える値を有する場合、光透過性を有するという。光透過性を有する電極は、400nm以上900nm以下の全ての波長領域において、60%以上の光透過率を有することが好ましい。また、光透過性を有する電極の厚さは十分な導電性が得られればよく、材料によって異なるが、20nm~300nmが好ましい。なお、光透過性を有しない電極は、導電性があれば十分であり、厚さも特に限定されない。
【0026】
〔電子取出し層〕
電子取出し層を形成する材料としては、例えば、NTCDA、PTCDA、PTCDI-C8H、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ホスフィンスルフィド誘導体、キノリン誘導体、フラーレン化合物、CNT、CN-PPVなどのn型半導体材料;イオン性の置換フルオレン系ポリマー(「アドバンスド マテリアルズ(Advanced Materials)」、2011年、23巻、4636-4643頁;「オーガニック エレクトロニクス(Organic Electronics)」、2009年、10巻、496-500頁)や、イオン性の置換フルオレン系ポリマーと置換チオフェン系ポリマーの組み合わせ(「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー(Journal of American Chemical Society)」、2011年、133巻、8416-8419頁)やアンモニウム塩、アミン塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、ホスホニウム塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、硫酸塩、硝酸塩、アセトナート塩、オキソ酸塩、金属錯体などのイオン性化合物;ポリエチレンオキサイド(「アドバンスド マテリアルズ(Advanced Materials)」、2007年、19巻、1835-1838頁);TiOなどの酸化チタン(TiO)、ZnOなどの酸化亜鉛(ZnO)、SiOなどの酸化ケイ素(SiO)、SnOなどの酸化錫(SnO)、WOなどの酸化タングステン(WO)、Taなどの酸化タンタル(TaO)、BaTiOなどのチタン酸バリウム(BaTi)、BaZrOなどのジルコン酸バリウム(BaZr)、ZrOなどの酸化ジルコニウム(ZrO)、HfOなどの酸化ハフニウム(HfO)、Alなどの酸化アルミニウム(AlO)、Yなどの酸化イットリウム(YOx)、ZrSiOなどのケイ酸ジルコニウム(ZrSi)などの金属酸化物;Siなどの窒化ケイ素(SiN)のような窒化物、CdSなどの硫化カドミウム(CdS)、ZnSeなどのセレン化亜鉛(ZnSe)、ZnSなどの硫化亜鉛(ZnS)、CdTeなどのテルル化カドミウム(CdTe)などの無機半導体材料などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0027】
より具体的には、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルピリジニウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酪酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、ヘプタデカフルオロノナン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、1-ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、リン酸モノドデシルナトリウム、亜鉛アセチルアセトナート、クロム酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、六フッ化ジルコニウム酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、テトラクロロ亜鉛酸アンモニウム、オルトチタン酸テトライソプロピル、ニッケル酸リチウム、過マンガン酸カリウム、銀フェナントロリン錯体、AgTCNQや特開2013-58714記載の電子取出し層に用いられる化合物などが挙げられる。
【0028】
電子取出し層は、単層でも積層構造を有してもよい。電子取出し層の厚さは、10~200nmが好ましい。
【0029】
〔光電変換層〕
光電変換層は、有機化合物(1)(2)、有機化合物(3)および(4)を含有する。必要に応じて、さらに他の有機化合物を含有してもよいし、界面活性剤、バインダー樹脂、フィラー等の他の成分を含有してもよい。
【0030】
〔有機化合物(1)(2)〕
有機化合物(1)(2)は、下記一般式(1)で表される部分構造および下記一般式(2)で表される部分構造を有する。
【0031】
【化3】
【0032】
上記一般式(1)~(2)中、R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。これらの中でも、有機化合物(1)(2)の有機溶媒に対する溶解性や光電変換層中のパッキング性の観点から、アルキル基が好ましい。
【0033】
は、同じでも異なっていてもよく、水素原子またはハロゲン原子を示す。これらの中でも、有機化合物(1)(2)のHOMO準位を深め、光起電力素子の開放電圧を向上させる観点から、ハロゲン原子が好ましい。
【0034】
本発明において、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などの1価の飽和脂肪族炭化水素基であり、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよく、無置換でも置換されていてもよい。有機化合物(1)(2)の有機溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、分岐状であることが好ましい。置換される場合の置換基の例としては、後述するアルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子などが挙げられる。R~Rにおけるアルキル基の炭素数は、有機化合物(1)(2)の有機溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、4以上が好ましい。一方、有機化合物(1)(2)のキャリア移動度をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数は、12以下が好ましい。
【0035】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのエーテル結合を介した1価の脂肪族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素基は無置換でも置換されていてもよい。置換される場合の置換基の例としては、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子などが挙げられる。R~Rにおけるアルコキシ基の好ましい炭素数の範囲は、上述のアルキル基の場合と同じである。
【0036】
ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかである。これらの中でも、電子吸引性が最も強いフッ素は、原子半径が小さく、パッキング性を保つことができるためより好ましく用いられる。
【0037】
広い光吸収波長領域と深いHOMO準位により、屋内照明環境下における出力電力をより高める観点から、前記一般式(1)で表される部分構造は、下記一般式(5)で表されることが好ましく、前記一般式(2)で表される部分構造は、下記一般式(6)で表されることが好ましい。
【0038】
【化4】
【0039】
上記一般式(5)~(6)中、R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。これらの中でも、アルキル基が好ましく、R~Rにおけるアルキル基の炭素数は、10以下が好ましい。
【0040】
有機化合物(1)(2)において、一般式(1)で表される部分構造と一般式(2)で表される部分構造の共重合比率は、40~60:60~40の範囲が好ましく、一般式(5)で表される部分構造と一般式(6)で表される部分構造の共重合比率が、40~60:60~40の範囲であることがより好ましい。
【0041】
有機化合物(1)(2)は、さらに、下記一般式(7)で表される部分構造を有してもよい。下記一般式(7)で表される部分構造を有することにより、有機化合物(1)(2)の溶媒溶解性を向上させて、光電変換層の膜質を向上させることができる。
【0042】
【化5】
【0043】
上記一般式(7)中、Rは、アルキル基を示す。
【0044】
有機化合物(1)(2)が一般式(7)で表される部分構造を有する場合、一般式(1)で表される部分構造と一般式(2)で表される部分構造と一般式(7)で表される部分構造の共重合比率は、50:45~35:5~15が好ましい。
【0045】
〔有機化合物(3)、有機化合物(4)〕
本発明における有機化合物(3)は、下記一般式(3)で表される部分構造を有し、有機化合物(4)は、下記一般式(4)で表される部分構造を有する。
【0046】
【化6】
【0047】
上記一般式(3)~(4)中、R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。これらの中でも、有機化合物(3)や有機化合物(4)の有機溶媒に対する溶解性や光電変換層中のパッキング性の観点から、アルキル基が好ましい。R~Rにおけるアルキル基の炭素数は、有機化合物(3)や有機化合物(4)の有機溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、4以上が好ましい。一方、有機化合物(3)や有機化合物(4)のキャリア移動度をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数は、12以下が好ましい。有機化合物(3)の有機溶媒に対する溶解性を向上させる観点から、アルキル基は分岐状であることが好ましい。
【0048】
は、同じでも異なっていてもよく、水素原子またはハロゲン原子を示す。これらの中でも、ハロゲン原子が好ましい。
【0049】
屋内照明環境下における出力電力をより高める観点から、前記一般式(3)で表される部分構造は、下記一般式(8)で表されることが好ましく、前記一般式(4)で表される部分構造は、下記一般式(9)で表されることが好ましい。
【0050】
【化7】
【0051】
上記一般式(8)~(9)中、R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。これらの中でも、アルキル基が好ましく、R~Rにおけるアルキル基の炭素数は、10以下が好ましい。
【0052】
本発明における光電変換層は、本発明の光起電力素子用材料は、屋内照明環境下で最大出力電力を得るために、上記一般式(3)と(4)で表される有機化合物の2種を含むことが好ましい。さらに、より出力電力を向上させるという観点で、好ましくは、(4)の含有比率が、有機化合物(3)と有機化合物(4)を合わせた総量に対して10~20質量%の範囲であり、より好ましくは、15~20質量%の範囲である。
【0053】
有機化合物(1)(2)ならびに、有機化合物(3)および有機化合物(4)から成る混合有機化合物(以下で、混合有機化合物(3)(4)と略記する場合がある)の含有量は、光電変換層を構成する材料中において共に溶解または分散可能な範囲で、有機化合物(1)(2)と混合有機化合物(3)(4)の質量比として、有機化合物(1)(2):混合有機化合物(3)(4)=1~99:99~1の範囲であることが好ましく、より好ましくは10:90~90:10の範囲であり、さらに好ましくは20~80:80~20の範囲であり、さらに好ましくは20~60:80~40の範囲である。ただし、いずれの質量比であっても、有機化合物(1)(2)と混合有機化合物(3)(4)の質量の和は後述する溶媒の合計に対して0.1~10質量%であることが好ましく、1.0~5.0質量%であることがより好ましい。
【0054】
光電変換層には、前述の有機化合物(1)(2)、有機化合物(3)および(4)とともに、他の有機化合物を含んでもよい。他の有機化合物としては、例えば、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド、N,N’-ジオクチル-3,4,9,10-ナフチルテトラカルボキシジイミド、ペリレン誘導体(3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド、ペリレンジイミド誘導体、ペリレンジイミド2量体、ペリレンジイミド重合体など)、オキサゾール誘導体(2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ジ(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール等)、トリアゾール誘導体(3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等)、フェナントロリン誘導体、フラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体にシアノ基を導入した誘導体(CN-PPV)などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、安定でキャリア移動度の高いn型半導体であることから、フラーレン誘導体が好ましい。
【0055】
フラーレン誘導体としては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94を始めとする無置換のものと、[6,6]-フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル([6,6]-C61-PCBM、またはPC60BM)、[5,6]-フェニル C61 ブチリックアシッドメチルエステル、[6,6]-フェニル C61 ブチリックアシッドヘキシルエステル、[6,6]-フェニル C61 ブチリックアシッドドデシルエステル、フェニル C71 ブチリックアシッドメチルエステル(PC70BM)を始めとする置換誘導体などが挙げられる。これらの中でも、広い光吸収波長領域を有することから、PC70BMがより好ましい。
【0056】
光電変換層は、単層でも、積層構造を有してもよい。積層構造としては、有機化合物(1)(2)から成る層と混合有機化合物(3)(4)から成る層の間に、これらの混合層を有してもよい。
【0057】
光電変換層の厚さは、有機化合物(1)(2)および有機化合物(3)、有機化合物(4)が光吸収によって光起電力を生じる範囲で選択することができる。光電変換層の厚さは、50nm~500nmが好ましい。
【0058】
〔正孔取出し層〕
正孔取出し層を形成する材料としては、例えば、ポリチオフェン系重合体、ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体、ポリフルオレン系重合体、ポリピロール重合体、ポリアニリン重合体、ポリフラン重合体、ポリピリジン重合体、ポリカルバゾール重合体などの導電性高分子;、フタロシアニン誘導体(HPc、CuPc、ZnPcなど)、ポルフィリン誘導体、アセン系化合物(テトラセン、ペンタセンなど)などのp型半導体特性を示す低分子有機化合物;カーボンナノチューブやグラフェン、酸化グラフェンなどの炭素材料や炭素化合物;MoOなどの酸化モリブデン(MoO)、WOなどの酸化タングステン(WO)、NiOなどの酸化ニッケル(NiO)、Vなどの酸化バナジウム(VO)、ZrOなどの酸化ジルコニウム(ZrO)、CuOなどの酸化銅(CuO)、ヨウ化銅、RuOなどの酸化ルテニウム(RuO)、Reなどの酸化ルテニウム(ReO)などの金属酸化物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、ポリチオフェン系重合体であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)やPEDOTにポリスチレンスルホネート(PSS)が添加されたもの、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステンが好ましく用いられる。
【0059】
正孔取出し層は、単層でも積層構造を有してもよい。正孔取出し層の厚さは、10~200nmが好ましい。
【0060】
〔電荷再結合層〕
電荷再結合層は、複数の光電変換層が光吸収するため、光透過性を有することが好ましい。また、電荷再結合層は、十分に正孔と電子が再結合するように設計されていればよいので、必ずしも膜である必要はなく、例えば、光電変換層上に一様に形成された金属クラスターであってもよい。電荷再結合層としては、例えば、金、白金、クロム、ニッケル、リチウム、マグネシウム、カルシウム、錫、銀、アルミニウムなどからなる10-1~10nm厚の薄い金属膜や金属クラスター(合金を含む)、ITO、IZO、AZO、GZO、FTO、酸化チタンや酸化モリブデンなどの光透過性の高い金属酸化物膜やクラスター、PSSが添加されたPEDOTなどの導電性有機材料膜やこれらの複合体膜等が挙げられる。
【0061】
〔光起電力素子の製造方法〕
次に、本発明の光起電力素子の製造方法について、基板上に、陰極、電子取出し層、光電変換層、正孔取出し層および陽極をこの順に有する場合を例に説明する。
【0062】
基板上に、ITOなどの透明電極(この場合陰極に相当)をスパッタリング法などにより形成する。
【0063】
次に、電子取出し層を構成する材料を含む溶液を、陰極上に塗布し、加熱して電子取出し層を形成する。無機材料により電子取出し層を形成する場合は、その金属塩や金属アルコキシドなどの前駆体溶液を塗布した後、加熱して電子取出し層を形成する方法や、ナノ粒子分散液を光電変換層上に塗布して電子取出し層を形成する方法などが挙げられる。このとき、加熱温度や時間、ナノ粒子の合成条件などにより、完全には反応が進行しておらず、部分的に加水分解または縮合した中間生成物となったり、前駆体と中間生成物、最終生成物などの混合物となったりしてもよい。
【0064】
次に、光電変換層を構成する材料を有機溶媒に溶解させた溶液を電子取出し層上に塗布し、加熱して光電変換層を形成する。有機溶媒としては、有機化合物(1)(2)と有機化合物(3),有機化合物(4)が適当に溶解または分散できるものであれば特に限定されないが、取り扱い性の観点から、沸点50℃以上の有機溶媒が好ましい。より具体的には、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、1,3-ジクロロプロパン、1,1,1,2―テトラクロロエタン、1,1,1,3-テトラクロロプロパン、1,2,2,3-テトラクロロプロパン、1,1,2,3-テトラクロロプロパン、ペンタクロロプロパン、ヘキサクロロプロパン、ヘプタクロロプロパン、1-ブロモプロパン、1,2-ジブロモプロパン、2,2-ジブロモプロパン、1,3-ジブロモプロパン、1,2,3-トリブロモプロパン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、1,6-ジブロモヘキサン、1,7-ジブロモヘプタン、1,8-ジブロモオクタン、1-ヨードプロパン、1,3-ジヨードプロパン、1,4-ジヨードブタン、1,5-ジヨードペンタン、1,6-ジヨードヘキサン、1,7-ジヨードヘプタン、1,8-ジヨードオクタンなどのハロゲン炭化水素類などが好ましい。光電変換層の形成方法としては、例えば、スピンコート塗布、ブレードコート塗布、スリットダイコート塗布、スクリーン印刷塗布、バーコーター塗布、鋳型塗布、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、スプレー法、真空蒸着法などの方法が挙げられる。膜厚制御や配向制御など、得ようとする光電変換層の特性に応じて、形成方法を選択することが好ましい。
【0065】
次に、正孔取出し層を構成する材料を含む溶液を、光電変換層上に塗布し、加熱して正孔取出し層を形成する。正孔取出し層の形成方法としては、光電変換層の形成方法として例示した方法が挙げられる。
【0066】
次に、電子取出し層上に、Agなどの金属電極(この場合陽極に相当)を、真空蒸着法やスパッタ法により形成する。電子取出し層に低分子有機材料を用いて真空蒸着した場合は、引き続き、真空を保持したまま金属電極を続けて形成することが好ましい。
【0067】
〔用途〕
本発明の光起電力素子は、光電変換機能、光整流機能などを利用した種々の光電変換デバイスへの応用が可能である。例えば、光電池(太陽電池など)、電子素子(光センサ、光スイッチ、フォトトランジスタなど)、光記録材(光メモリなど)、撮像素子などに有用である。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。また実施例等で用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
Isc:短絡電流密度
Voc:開放電圧
FF:フィルファクター
Pmax:最大出力電力
ITO:インジウム錫酸化物
PM6:下記式で表される構造式を有する有機化合物(1)(2)(共重合比率(1):(2)=50:50)
T1:下記式で表される構造式を有する有機化合物(1)(2)(7)(共重合比率(1):(2):(7)=50:40:10)
Y6:下記式で表される構造式を有する有機化合物(3)
EH-IDTBR:下記式で表される有機化合物(4)
IEICO-4F:下記式で表される有機化合物
IEICO:下記式で表される有機化合物
ITIC:下記式で表される有機化合物
【0069】
【化8】
【0070】
【化9】
【0071】
【化10】
【0072】
各実施例および比較例における最大出力電力の評価方法を以下に示す。
【0073】
各実施例および比較例により得られた光起電力素子の陽極と陰極をケースレー社製2400シリーズソースメータに接続して、大気中、屋内評価用LED光(分光計器(株)製 BLD-100、色温度:5,000K相当、照度:200Lux)をITO層側から照射し、印加電圧を-1Vから+2Vまで変化させたときの電流値を測定した。
【0074】
得られた電流値から、次式により最大出力電力(Pmax)を求めた。
Pmax(μW/cm)=Isc(μA/cm)×Voc(V)×FF
FF=JVmax/(Isc(mA/cm)×Voc(V))
JVmax(mW/cm)は、印加電圧が0Vから開放電圧までの間で電流密度と印加電圧の積が最大となる点における電流密度と印加電圧の積の値である。
【0075】
(実施例1)
クロロホルム(ナカライテスク(株)製、クロロホルムは溶媒に該当)0.2mLを、PM6(ワンマテリアルズ社製)0.9mg、Y6(ワンマテリアルズ社製)0.91mg、EH-IDTBR(ワンマテリアルズ社製)0.19mgの入ったサンプル瓶の中に加え、さらに、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US-2、出力120W)中で30分間超音波照射することにより溶液Aを得た。すなわち、この溶液A中には、電子受容性半導体総量中17質量%をEH-IDTBRが占めている。
【0076】
エタノール溶媒(和光純薬工業(株)製)0.5mLを、酢酸亜鉛2水和物(和光純薬工業(株)製)10mgの入ったサンプル瓶の中に加え、熱溶解し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(和光純薬工業(株)製)を1体積%の割合で加えて電子取出し層形成用の前駆体溶液Bを得た。
【0077】
スパッタリング法により陰極となるITO透明導電層を125nm堆積させたガラス基板を38mm×46mmに切断した後、ITOをフォトリソグラフィー法により38mm×13mmの長方形状にパターニングした。得られた基板の光透過率を日立分光光度計U-3010で測定した結果、400nm~900nmの全ての波長領域において85%以上であった。この基板をアルカリ洗浄液(フルウチ化学(株)製、“セミコクリーン”(登録商標)EL56)で10分間超音波洗浄した後、超純水で洗浄した。
【0078】
この基板を30分間UV/オゾン処理した後に、上記の溶液BをITO層上に滴下し、スピンコート法により3,000rpmで塗布し、ホットプレート上で150℃30分間熱処理することにより、膜厚約30nmの電子取出し層を形成した。
【0079】
次いで、基板を窒素雰囲気下グローブボックスに移し、上記の溶液Aを電子取出し層上に滴下し、スピンコート法により塗布し、ホットプレート上で80℃1分間熱処理することにより、膜厚100nmの光電変換層を形成した。
【0080】
さらに、光電変換層が形成された基板と蒸着用マスクを真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10-3Pa以下になるまで再び排気し、抵抗加熱法によって、正孔取出し層となる三酸化モリブデンを15nmの厚さに蒸着した。
【0081】
その後、正孔取出し層が形成された基板と蒸着用マスクを真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が1×10-3Pa以下になるまで再び排気し、抵抗加熱法によって、陽極となる銀層を200nmの厚さに蒸着した。
【0082】
その後、基板を窒素雰囲気下グローブボックスに移し、光硬化性樹脂(ナガセケムテックス社製XNR5570)を20mm×20mmの大きさのガラス(ガスバリア層基材)に塗布し、基板の中心に貼り付けた。次いで、紫外光(波長365nm,強度100mWcm-2)を1分間照射した後、ホットプレート上で100℃30分間熱処理することにより樹脂を硬化させた。以上のようにして、ストライプ状のITO層と銀層が交差する部分の面積が2mm×2mmである光起電力素子を作製した。
【0083】
前記方法により評価したところ、最大出力電力(Pmax)は、10.0μW/cmであった。
(実施例2)
PM6(ワンマテリアルズ社製)をT1(ワンマテリアルズ社製)に変更したほかは実施例1と同様にして光起電力素子を作製した。前記方法により評価した最大出力電力(Pmax)は9.0μW/cmであった。
【0084】
(比較例1)
EH-IDTBR(ワンマテリアルズ社製)をPC-- 60BMに変更したほかは実施例1と同様にして光起電力素子を作製した。前記方法により評価した最大出力電力(Pmax)は7.6μW/cmであった。
【0085】
(比較例2)
EH-IDTBR(ワンマテリアルズ社製)をIEICO-4F(ワンマテリアルズ社製)に変更したほかは実施例1と同様にして光起電力素子を作製した。前述の方法により評価した最大出力電力(Pmax)は8.4μW/cmであった。
【0086】
(比較例3)
EH-IDTBR(ワンマテリアルズ社製)をIEICO(ワンマテリアルズ社製)に変更したほかは実施例1と同様にして光起電力素子を作製した。前述の方法により評価した最大出力電力(Pmax)は8.6μW/cmであった。
【0087】
(比較例4)
EH-IDTBR(ワンマテリアルズ社製)をITIC(ワンマテリアルズ社製)に変更したほかは実施例1と同様にして光起電力素子を作製した。前述の方法により評価した最大出力電力(Pmax)は8.5μW/cmであった。
【0088】
(比較例5)
EH-IDTBR(ワンマテリアルズ社製)を添加しなかったほかは実施例1と同様にして光起電力素子を作製した。前記方法により評価した最大出力電力(Pmax)は8.9μW/cmであった。
【0089】
実施例および各比較例の主な構成と評価結果を表1に示す。
(比較例6)
EH-IDTBR(ワンマテリアルズ社製)を添加しなかったほかは実施例2と同様にして光起電力素子を作製した。前記方法により評価した最大出力電力(Pmax)は7.8μW/cmであった。
【0090】
【表1】
【符号の説明】
【0091】
1 基板
2 陰極
3 電子取出し層
4 光電変換層
5 正孔取出し層
6 陽極
図1