(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163166
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】効率的、且つ、低プロファイルのワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20231101BHJP
【FI】
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072227
(22)【出願日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】17/660,944
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523157623
【氏名又は名称】エスダブリューアール テクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蕭文卿
(72)【発明者】
【氏名】單聖明
(57)【要約】
【課題】ワイヤレス伝送により、電力を負荷デバイスに提供するシステムを提供する。
【解決手段】システムは、電力送信データユニット(PTDU)、および、電力受信データユニット(PRDU)を有する。PTDUは、入力電力を受信し、且つ、第一共振器を有する。第一共振器は、入力電力にしたがって、電磁波を提供する。PRDUは、負荷デバイスに接続される。PRDUは、第二共振器、および、整流器を有する。第二共振器は、電磁波を受信するとともに、電磁波に従って、電力を提供する。整流器は、電力を、直流(DC)電源に変換して、負荷デバイスに送る。第一共振器は、一次コイルを有し、第二共振器は、二次コイル、および、二次コイルと並列、あるいは、直列で結合される素子を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス伝送により、電力を負荷デバイスに提供するシステムであって、
入力電力を受信し、且つ、前記入力電力にしたがって、電磁波を提供する第一共振器を有する電力送信データユニット(PTDU)と、
前記負荷デバイスに接続され、且つ、前記電磁波を受信するとともに、前記電磁波にしたがって、前記電力を提供する第二共振器、および、前記電力を、直流(DC)電力に変換して、前記負荷デバイスに送る整流器、を有する電力受信データユニット(PRDU)と、を有し、
前記第一共振器は、一次コイルを有し、前記第二共振器は、二次コイル、および、前記二次コイルに結合される素子を有し、
前記二次コイルは、第一インピーダンス振幅を有し、
前記素子が、前記二次コイルと前記整流器間に接続されるとき、前記素子の第二インピーダンス振幅は、前記二次コイルの前記第一インピーダンス振幅の五分の一より小さく、
前記素子が、前記二次コイルに並列接続されるとき 前記素子の前記第二インピーダンス振幅は、前記二次コイルの前記第一インピーダンス振幅の五倍より大きい、ことを特徴とするシステム
【請求項2】
前記第一共振器はさらに、前記一次コイルと直列接続される共振コンデンサーを有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第一共振器はさらに、前記一次コイルと並列接続される共振コンデンサーを有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記一次コイルと前記二次コイル間の結合係数の絶対値は、0.9より大きく、且つ、前記結合係数の前記絶対値は、1より小さい、あるいは、1に等しいことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記一次コイルと前記二次コイル間の結合係数の絶対値は、0より大きく、且つ、0.9より小さいことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電力受信データユニットはさらに、インピーダンス変換装置を有し、前記インピーダンス変換装置は、前記DC電力に従って、出力電力を、前記負荷デバイスに提供することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記インピーダンス変換装置は、DC-DCコンバータであり、且つ、前記DC-DCコンバータは、前記整流器と前記負荷デバイスの間に結合されることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記電力の電圧と電流は、同相で前記整流器に入力されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記入力電力は、DC入力電力であり、且つ、前記電力送信データユニットはさらに、DC-ACコンバータを有し、且つ、前記DC-ACコンバータは、前記入力電力を、前記第一共振器を駆動する動作周波数を有する信号に変換することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
さらに、前記電力送信データユニットと前記電力受信データユニット間に設置されるリピーターユニットを有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
ワイヤレス伝送により、電力を負荷デバイスに提供するシステムであって、
入力電力を受信し、且つ、前記入力電力にしたがって、電磁波を提供する第一共振器を有する電力送信データユニット(PTDU)、および、
前記負荷デバイスに接続され、且つ、前記電磁波を受信するとともに、前記電磁波にしたがって、前記電力を提供する第二共振器を有する電力受信データユニット(PRDU)、を有し、
前記第一共振器は、共振コンデンサーを有し、且つ、前記第二共振器は、コンデンサがないことを特徴とするシステム。
【請求項12】
前記電力受信データユニットはさらに、前記電力を、直流(DC)電力に変換して、前記負荷デバイスに送る整流器を有することを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第一共振器は、一次コイルを有し、前記第二共振器は、二次コイルを有することを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記共振コンデンサーは、前記一次コイルと並列、あるいは、直列接続されることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記一次コイルと前記二次コイル間の結合係数の絶対値は、0.9より大きく、且つ、前記結合係数の前記絶対値は、1より小さいか、あるいは、1に等しいことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記一次コイルと前記二次コイル間の結合係数の絶対値は、0より大きく、且つ、0.9より小さいことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記電力受信データユニットはさらに、インピーダンス変換装置を有し、前記インピーダンス変換装置は、前記DC電力に従って、出力電力を、前記負荷デバイスに提供することを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記インピーダンス変換装置は、DC-DCコンバータであり、且つ、前記DC-DCコンバータは、前記整流器と前記負荷デバイス間に結合されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記入力電力は、DC入力電力であり、且つ、前記電力送信データユニットはさらに、DC-ACコンバータを有し、前記DC-ACコンバータは、前記入力電力を、前記第一共振器を駆動する動作周波数を有する信号に変換することを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
さらに、前記電力送信データユニットと前記電力受信データユニット間に設置されるリピーターユニットを有することを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力伝送に関するものであって、特に、ワイヤレス給電システム(wireless power transfer system)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電力は、物理的に、一装置と配電網(electrical grid)を接続することにより送られる。近年、新しいシステムが発展して、電磁誘導(electromagnetic induction)により、電力を送信している。ワイヤレス給電において、一般的に、非放射技術が用いられるとともに、電力は、誘導結合(inductive coupling)により磁界を通じて、あるいは、容量結合(capacitive coupling)により電界を通じて、短距離で転送される。電磁誘導による電力の送信は、二装置を必要とし、一つは、電磁波送信器、もうひとつは、電磁波受信器である。電力は、空気、あるいは、別の媒体を通じて、電磁波送信器により、電磁波として送信されるとともに、電磁波受信器により、この電磁波を受信するとともに、電力に再度変換する。送信器、および、受信器はそれぞれ、ある周波数で動作する共振器(resonator)を有する。電力の効率的な送信は、送信器の共振器、および、受信器の共振器に用いられる周波数が、同じであるか、あるいは、互いに狭帯域内にあることが求められる。
【0003】
動作周波数が同じであるか、あるいは、狭帯域内にあることが求められるこの要求は、ワイヤレス給電に制約を加える。よって、ワイヤレス給電を改善するシステムを考え出すことが必要不可欠である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤレス給電システムの実装に関する制約、重要な障壁を排除することができる、効率的、且つ、低プロファイルのワイヤレス給電システムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ワイヤレス伝送により、電力を負荷デバイスに提供するシステムの一実施形態が提供される。システムは、電力送信データユニット(PTDU)、および、電力受信データユニット(PRDU)を有する。PTDUは、入力電力を受信し、且つ、第一共振器を有する。第一共振器は、入力電力にしたがって、電磁波を提供する。PRDUは、負荷デバイスに接続される。PRDUは、第二共振器、および、整流器を有する。第二共振器は、電磁波を受信するとともに、電磁波にしたがって、電力を提供する。整流器は、電力を直流(DC)電力に変換して、負荷デバイスに送る。第一共振器は、一次コイルを有し、第二共振器は、二次コイル、および、二次コイルに結合される一素子を有する。二次コイルは、第一インピーダンス振幅を有する。素子が、二次コイルと整流器間に接続されるとき、素子の第二インピーダンス振幅は、二次コイルの第一インピーダンス振幅の五分の一より小さい。素子が、二次コイルに並列接続されるとき、素子の第二インピーダンス振幅は、二次コイルの素子の第一インピーダンス振幅の五倍より大きい。
【0006】
さらに、ワイヤレス伝送により、電力を負荷デバイスに提供するシステムの一実施形態が提供される。システムは、電力送信データユニット(PTDU)、および、電力受信データユニット(PRDU)を有する。PTDUは、入力電力を受信し、且つ、第一共振器を有する。第一共振器は、入力電力にしたがって、電磁波を提供する。PRDUは、負荷デバイスに接続され、且つ、第二共振器を有する。第二共振器は、電磁波を受信し、且つ、電磁波にしたがって、電力を提供する。第一共振器は、共振コンデンサー(resonator capacitor)を有し、第二共振器は、コンデンサーを備えない。
【0007】
添付図面を参照しながら、詳細な記述が、以下の実施形態で与えられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効率的、且つ、低プロファイルのワイヤレス給電システムにより、ワイヤレス給電システムの実装に対する制約、重要な障壁を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、添付図面を参照しながら後続の詳細な説明および実施例を参照することによってさらに十分に理解され得る。
【0010】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システムを示す図である。
【0011】
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システムを示す図である。
【0012】
【
図2】本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電の図式モデルを示す図である。
【0013】
【
図3】本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電の図式モデルを示す図である。
【0014】
【
図4】本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システムを示す図である。
【0015】
【
図5】本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システムを示す図である。
【0016】
【
図6】本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システムを示す図である。
【0017】
【
図7】本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の記述は本発明を実施する最良の態様を説明するものである。この説明は、本発明の一般原則を説明することを目的としてなされているものであって、限定的な意味で参酌されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによって最も規定されるものである。
【0019】
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システム100を示す図である。ワイヤレス給電システム100は、電力送信データユニット(PTDU)110、および、電力受信データユニット(PRDU)130を備える。電力は、PTDU110に接続される電源(図示しない)から、負荷デバイス140が接続されるPRDU130まで、ワイヤレスで伝送される。
【0020】
ワイヤレス給電システム100は、各種アプリケーション、操作、および/または、装置で実行される。たとえば、ワイヤレス給電システム100は、スマートホーム/オフィスアプリケーション、ウェアラブル装置、無人システム (航空、地上、海上)の自律運行、5G無線アクセスアプリケーション、ロボット工学充電運転、自動車用途、危険な環境におけるIOTセンサーの全天候型電力ソリューション、電動自転車/電動バイク充電運転、電気自動車(EV)充電運転等に用いられる。携帯装置、たとえば、スマートフォンにおいて、PRDU130は、スマートフォン内部に実装される。負荷デバイス140、たとえば、家電、自動車のアクセサリ(たとえば、暖房装置、オーバーヘッドディスプレイ、安全装置)、および、充電システム、あるいは、工場機械などにおいては、PRDU130は、負荷デバイス140から分離されるとともに、電力は、ワイヤー、あるいは、ケーブルを通じて、PRDU130から、負荷デバイス140(たとえば、家電)に伝送するようにすることもできる。
【0021】
いくつかの実施形態においては、電力を負荷デバイス140に伝送する一方、データも、負荷デバイス140とPRDU130間のデータリンクにより交換可能である。負荷デバイス140からのデータは、負荷デバイス140の識別情報であってもよい。データは、PRDU130からも送信可能であり、当該データは、PRDU130からのワイヤレス伝送の状態(負荷デバイス140により引き出される電流/電圧)を示す。PRDU130は、PTDU110にデータを送信するとともに、PTDU110からデータを受信するように構成される。PRDU130とPTDU110間のデータリンクは、無線通信を手段とする。このような無線通信の一例は、ISMバンド(工業、科学、および、医学無線帯域)によるものであり、データは、帯域外通信により転送される。また、その他の通信プロトコルを、PTDU110とPRDU130間の通信にも用いることもできる。
【0022】
ワイヤレス給電システム100において、PTDU110は、電源(図示しない)から、入力電力Pin を受信するとともに、電力Pinを、電磁波により、PRDU130に送る。PTDU110は、DC-ACコンバータ112、および、共振器114を有する。このような実施形態において、入力電力Pinは、DC電力信号である。いくつかの実施形態において、入力電力Pinは、AC電力信号である。DC-ACコンバータ112は、入力電力 Pinを、信号VPAに変換して、共振器114を駆動する。このような実施形態において、信号VPAは、AC信号である。共振器114は、信号VPAを受信するとともに、信号VPAに対応して、電磁波を生成する。記述を簡潔にするため、PTDU110とPRDU130間で交換されるデータ(たとえば、電源制御情報、および、ユーザーデータ)に関連するPTDU110中の回路、および、素子は省略される。
【0023】
PRDU130は、PTDU110から、電磁波により、電力を受信するとともに、出力電力Poutを、負荷デバイス140に提供する。PRDU130は、共振器132、および、整流器134を有する。共振器132は、電磁波を受信するとともに、電磁波を、信号VPBに変換する。このような実施形態において、信号VPBは、AC信号である。整流器134は、信号VPBを、DC電力(あるいは、電圧)VDに変換する。PRDU130は、DC電力VDを、出力電力Poutとして、負荷デバイス140に提供する。さらに、出力電力Poutは、直接、負荷デバイス140により用いられる、あるいは、負荷デバイス140内部の充電ユニットを充電するのに用いられる。さらに、負荷インピーダンスZLは、整流器134の入力で見られる等価インピーダンス、たとえば、整流器134で見られる入力インピーダンスを示す。記述を簡潔にするため、PTDU110とPRDU130間で交換されるデータ(たとえば、電源制御情報、および、ユーザーデータ)に関連するPRDU130中の回路、および、素子は省略される。
【0024】
いくつかの実施形態において、PRDU130はさらに、整流器134と負荷デバイス140間に結合されるインピーダンス変換装置、たとえば、
図1BのDC-DCコンバータ136を有する。インピーダンス変換装置は、最適な負荷抵抗RL(すなわち、負荷インピーダンスZLの実部)が得られるように構成される。
【0025】
PTDU110中の共振器114は、共振周波数f1を有し、PRDU130中の共振器132は、共振周波数f2を有する。共振周波数f1は、共振周波数f2と異なっていてもよい。PTDU110中の共振器114は、DC-ACコンバータ112からの信号VPAにより駆動されるとともに、信号VPAは、周波数fsで動作する。PTDU110は、DC-ACコンバータ112にとって、ベストの動作周波数(あるいは、駆動周波数)を決定することができる。いくつかの実施形態において、周波数f1と周波数f2間に関係がない。いくつかの実施形態において、周波数fsは、周波数f1、および、周波数f2と無関係である。
【0026】
PTDU110が、PRDU130から離れて位置するとき、ワイヤレス給電を正しく機能させるため、リピーターユニット(RU)が用いられる。RUは、PTDU110からの電力を受信するとともに、PRDU130に送信する。RUはさらに、双方向の通信をサポートするとともに、PTDU110とPRDU130間のデータを中継する。ワイヤレス給電システム100において、PRDU130が、物理的に、PTDU110から近い距離に位置しているとき、RUは省略することができる。
【0027】
RUの有無にかかわらず、PTDU110とPRDU130間の電力伝送の効率は、伝送ポート(Port1)と受信ポート(Port2)のインピーダンス、および、伝達インピーダンスに基づく。PTDU110とPRDU130間の伝達は、ボックス120で示され、且つ、インピーダンスは以下のように示される。
Z11 = R11 + jX11
Z12 = R12 + jX12
Z21 = R21 + jX21
Z22 = R22 + jX22
Z= R + jX は、Impedance (Z) = Resistance (R) + j*Reactance (X)を意味する。Z11= Port1で見られるインピーダンス、Z12 = Port2からPort1への伝達インピーダンス。Z22= Port2で見られるインピーダンス、Z21 = Port1からPort2への伝達インピーダンス。R11= Port1で見られる抵抗、R12 = Port2からPort1への伝達抵抗。R22= Port2で見られる抵抗、R21= Port1からPort2への伝達抵抗。X11= Port1で見られるリアクタンス、X12 = Port2からPort1への伝達リアクタンス、および、X22= Port2で見られるリアクタンス、X21 = Port1からPort2への伝達リアクタンス。
【0028】
上記のZマトリクスは、一般的な2-portモデル122であり、且つ、任意のシステムを表す。一般的状況において、2-portモデル122は、PTDU共振器、PRDU共振器、および、PTDUとPRDU共振器間の任意のデバイス(たとえば、RU)を表す。よって、それは、任意の回路、機構ハウジング、空気、木、ガラス、および、PTDU共振器とPRDU共振器間のその他の媒体を意味する。Rij、Zij、および、Xijは、PTDUとPRDU共振器、および、PTDUとPRDU共振器間の任意の装置(たとえば、RU)の等価パラメータ値を表す。
【0029】
PTDU共振器の入力中のPort1とPRDU共振器の出力中のPort2間のワイヤレス給電は、
図2に示される配置
図200により簡略化される。配置
図200は、“変圧器 + 直列コンデンサ”モデルとして知られる。配置
図200において、PTDU共振器 (たとえば、
図1A、および、
図1Bの共振器114)は、一次コイルL1、および、共振コンデンサーCS1を有し、且つ、共振コンデンサーCS1、および、一次コイルL1は、直列接続される。さらに、PTDU共振器中の等価抵抗素子は、抵抗R11として表示される。さらに、PRDU共振器(たとえば、
図1A、および、
図1Bの共振器132)は、二次コイルL2、および、共振コンデンサーCS2を有する。共振コンデンサーCS2、および、二次コイルL2は、直列接続されるとともに、共振コンデンサーCS2はさらに、負荷インピーダンスZL(ZL=RL+j*XL)に接続される。(ZL=RL+j*XL)の式中、負荷抵抗RLは、負荷インピーダンスZLの実部であり、負荷リアクタンスXLは、負荷インピーダンスZLの虚部である。さらに、PRDU共振器中の等価抵抗素子は、抵抗R22として示される。
【0030】
このような実施形態において、共振コンデンサーCS1のキャパシタンスは、一次コイルL1のインダクタンス、および、共振周波数f1の角周波数ω1(たとえば、ω1 =2πf1)に従って得られ、すなわち、
である。さらに、共振コンデンサーCS2のキャパシタンスは、二次コイルL2のインダクタンス、および、共振周波数f2の角周波数ω2に従って得られ(たとえば、ω2 =2πf2)、すなわち、
である。
【0031】
このモデル中で、最大効率になる最適な角周波数 ω2_optは、方程式(1)として示される。
(1)
式中、kは、一次コイルL1と二次コイルL2間の結合係数を表し、ωs は、PTDU(たとえば、
図1A、および、
図1B中のPTDU110)中の、動作周波数fsの角周波数であり、たとえば、ωs =2πfsである。このような実施形態において、結合係数kの絶対値は、0より大きく、且つ、1以下、すなわち、0 < |k| ≦ 1である。いくつかの実施形態において、結合係数kの絶対値は、0より大きく、且つ、0.9より小さい、すなわち、 0<|k|<0.9である。いくつかの実施形態において、結合係数kの絶対値は、0.9より大きく、且つ、1以下、すなわち、0.9 < |k| ≦ 1である。
【0032】
最適な角周波数ω2において、効率は、方程式 (2)として示される。
(2)
効率は、その他の設計変数と連動する負荷抵抗RLの関数である。
【0033】
既知の(あるいは、選択された)角周波数ωs、および、結合係数において、素子値(XL、L1、L2、R11、R12)の組み合わせは、以下の方程式(3)を満たすように選択される。
(3)
よって、方程式(3)を方程式 (1)に代入することにより、最適な角周波数 ω2_opt は、0に等しくなる(たとえば、ω2_opt=0)。つまり、共振コンデンサーCS2が無限に等しいとき、換言すれば、共振コンデンサーCS2を設けないとき、最大電力伝送効率が得られる。つまり、PTDU共振器の直列共振周波数 (すなわち、ω1)が、0に等しくないか否かにかかわらず、PRDU共振器の直列共振周波数(すなわち、ω2)は、0に等しくなる。
【0034】
負荷リアクタンスXLが、0に等しいとき(たとえば、信号VPBの電圧と電流が、整流器134への入力において、同相であるとき)、方程式(3)はさらに、方程式(4)として簡略化される。
(4)
これにより、適切な一次コイルL1、二次コイルL2、抵抗R11、および、抵抗R12を設計することにより、所定の結合係数kにおいて、共振コンデンサーCS2なしで、全動作周波数の電力伝送効率を維持することができる。
【0035】
さらに、角周波数ω2 が、最適な角周波数 ω2_optに等しい場合、最適な角周波数 ω2_opt が、0に等しいか否かにかかわらず、最大電力伝送効率にとって、最適な負荷抵抗RL(任意の所定の負荷リアクタンスXL下で、XL=0の条件を含む)は、方程式(5)として表現される。
(5)
さらに、対応する効率は、方程式 (6)として示される。
(6)。
【0036】
いくつかの実施形態において、最適な負荷抵抗RLは、PRDU共振器と負荷デバイスの間のインピーダンス変換装置(たとえば、
図1BのDC-DCコンバータ136)を用いることにより得られる。いくつかの実施形態において、DC-DCコンバータのパルス幅変調(PWM)操作を制御することにより、負荷抵抗RLが調整されて、電力伝送効率をさらに改善する。
【0037】
Port1とPort2間のワイヤレス給電は、
図3に示される配置
図300により簡略化される。配置
図300は、“変圧器 + 並列コンデンサ”モデルとして知られる。配置
図300において、PTDU共振器(たとえば、
図1A、および、
図1Bの共振器114)は、一次コイルL1、および、共振コンデンサーCP1を有する。共振コンデンサーCP1と一次コイルL1は、並列接続される。さらに、PTDU共振器中の等価抵抗素子は、抵抗R11として表示される。さらに、PRDU共振器(たとえば、
図1A、および、
図1Bの共振器132)は、二次コイルL2、および、共振コンデンサーCP2を有する。共振コンデンサーCP2と二次コイルL2は、並列接続される。さらに、PRDU共振器中の等価抵抗素子は、抵抗R22として表示される。
【0038】
このような実施形態において、共振コンデンサーCP1のキャパシタンスは、一次コイルL1のインダクタンス、および、共振周波数f1の角周波数ω1 (たとえば、ω1 =2πf1)に従って得られ、すなわち、
である。さらに、共振コンデンサーCP2のキャパシタンスは、二次コイルL2のインダクタンス、および、共振周波数f2の角周波数ω2 (たとえば、 ω2 =2πf2)に従って得られ、すなわち、
である。
【0039】
配置
図300において、最適な角周波数ω2_opt は、方程式 (7)として表現される:
(7)。
さらに、効率は、方程式(2)として示される。方程式(3)、あるいは、方程式(4)を満たす所定の結合係数kに、適切な一次コイルL1、二次コイルL2、抵抗R11、および、抵抗R12を設計することにより、最適な角周波数ω2_opt は、無限に等しくなる。つまり、共振コンデンサーCP2が、0に等しいとき、換言すると、共振コンデンサーCP2を設けないとき、最大電力伝送効率が得られる。これにより、PTDU共振器の並列共振周波数(すなわち、ω1)が、無限に等しくないかどうかにかかわらず、PRDU共振器の並列共振周波数(すなわち、ω2)は、無限に等しくなる。
【0040】
図4は、本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システム100Aを示す図である。ワイヤレス給電システム100Aは、PTDU110A、および、PRDU130Aを有する。PTDU110Aにおいて、共振器114Aは、直列接続された一次コイルL1、および、共振コンデンサーCS1を有する。PRDU130Aにおいて、共振器132Aは、二次コイルL2だけを有する。共振器114Aと比較すると、共振器132A中に、共振コンデンサー(たとえば、
図2中の共振コンデンサーCS2、および、
図3中の共振コンデンサーCP2)が存在しない。つまり、二次コイルL2は、直接、整流器134に接続される。上記のように、“変圧器 + 直列コンデンサ”モデルにおいて、適当な素子値を選択して、方程式(3)、あるいは、方程式(4)を満たすことにより、最適な角周波数ω2_optは0に等しく、これにより、共振コンデンサーCS2を設けることなく、最大電力伝送効率が得られる。
【0041】
PTDU110Aにおいて、直列共振周波数ω1(すなわち、共振周波数f1の角周波数)は、0に等しくてもよいし、あるいは、0に等しくなくてもよい。いくつかの実施形態において、直列共振周波数ω2(すなわち、共振周波数f2の角周波数)は、PRDU130A(すなわち、“変圧器 + 直列コンデンサ”モデル)で、0に等しい。いくつかの実施形態において、並列共振周波数ω2(すなわち、共振周波数f2の角周波数)は、PRDU130A(すなわち、“変圧器 + 並列コンデンサ”モデル)において、無限に近い。
【0042】
図5は、本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システム100Bを示す図である。ワイヤレス給電システム100Bは、PTDU110A、および、PRDU130Bを有する。PRDU130Bは、共振器132B、および、整流器134を有する。
図4の共振器132Aと比較すると、
図5の共振器132Bはさらに、直列素子150(あるいは、直列装置)を有する。つまり、直列素子150は、二次コイルL2と整流器134間に結合される。
【0043】
いくつかの実施形態において、直列素子150は、一つ以上の受動素子、たとえば、レジスタ、コンデンサ、および/または、インダクタにより形成される。さらに、動作周波数fsにおいて、直列素子150のインピーダンス振幅は、二次コイルL2のインピーダンス振幅の五分の一より小さい。
【0044】
図6は、本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システム100Cを示す図である。ワイヤレス給電システム100Cは、PTDU110A、および、PRDU130Cを有する。PRDU130Cは、共振器132C、および、整流器134を有する。
図4の共振器132Aと比較して、
図6の共振器132Cはさらに、並列素子160(あるいは、並列装置)を有する。つまり、並列素子160は、二次コイルL2と並列接続される。
【0045】
いくつかの実施形態において、並列素子160は、一つ以上の受動素子、たとえば、レジスタ、コンデンサ、および/または、インダクタにより形成される。さらに、動作周波数fsにおいて、並列素子160のインピーダンス振幅は、二次コイルL2のインピーダンス振幅の五倍より大きい。
【0046】
図7は、本発明のいくつかの実施形態によるワイヤレス給電システム100Dを示す図である。ワイヤレス給電システム100Dは、PTDU110B、および、PRDU130Aを有する。PTDU110Bにおいて、共振器114Bは、並列接続された一次コイルL1、および、共振コンデンサーCP1を有する。PRDU130Aにおいて、共振器132Aは、二次コイルL2だけを有する。共振器114Bと比較して、共振器132A中に、共振コンデンサー(たとえば、
図2中の共振コンデンサーCS2、および、
図3中の共振コンデンサーCP2)が存在しない。つまり、二次コイルL2は、整流器134に直接、接続される。
【0047】
PTDU110Bにおいて、並列共振周波数ω1(すなわち、共振周波数f1の角周波数)は、無限に等しくてもよいし、あるいは、無限に等しくなくてもよい。いくつかの実施形態において、直列共振周波数ω2 (すなわち、共振周波数f2の角周波数)は、PRDU130A(すなわち、“変圧器 + 直列コンデンサ”モデル)において、0に等しい。いくつかの実施形態において、並列共振周波数ω2(すなわち、共振周波数f2の角周波数)は、PRDU130A(すなわち、“変圧器 + 並列コンデンサ”モデル)において、無限に近い。
【0048】
いくつかの実施形態において、ワイヤレス給電システム100DのPRDU130Aは、
図5のPRDU130Bで代替することができ、二次コイルL2は、直列素子150により、整流器134に結合される。さらに、動作周波数fsにおいて、直列素子150のインピーダンス振幅は、二次コイルL2のインピーダンス振幅の五分の一より小さい。
【0049】
いくつかの実施形態において、ワイヤレス給電システム100DのPRDU130Aは、
図6のPRDU130Cで代替され、二次コイルL2は、並列素子160、および、整流器134と並列接続される。さらに、動作周波数fsにおいて、並列素子160のインピーダンス振幅は、二次コイルL2のインピーダンス振幅の五倍より大きい。
【0050】
いくつかの実施形態において、直列、および/または、並列共振コンデンサーが、PRDU共振器中に存在しない。いくつかの実施形態において、二次コイルL2のインピーダンスと特定の関係を有するインピーダンスを有する並列素子、あるいは、直列素子が、PRDU共振器中に用いられる。PRDU共振器中の共振器キャパシタンスを消去することにより、低プロファイルワイヤレス給電システムの実装における重要な障壁を排除することができる。
【0051】
好ましい実施形態を参照しながら本発明を記述してきたが、本発明は、それらの詳細な記述に制限されないことを理解されたい。各種代替や修正を、前述の記述中で提示してきたが、当業者であれば、その他の代替や修正を想到することができる。これにより、このようなすべての代替や修正は、請求項で定義される本発明の範囲に含まれる。異なる図面で示される特徴、および、異なる実施形態中の記述は、本発明の範囲中で、簡単に組み合わせることができることを理解されたい。本明細書で開示されるシステムの各構成要素は、ソフトウェア、および、ハードウェアの組み合わせにより実装可能であることを理解されたい。本発明の明細書中で記述される負荷デバイスは、スマート装置、あるいは、任意のその他の電子装置である。
【0052】
本発明の範囲を逸脱しない限り、上述したシステム、および、方法に、修正、追加、あるいは、省略を実施することができる。上述したシステム、および、方法の各構成要素は、特定の要求にしたがって、統合したり、分離することができる。さらに、上述したシステム、および、方法の操作は、本発明の範囲を逸脱しない限り、さらに多くの、より少ない、あるいは、その他の構成要素により実行することができる。
【0053】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。当業者には明らかなように、本発明の範囲は、各種の修正、同様の構成を含むものである。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような全ての修正、同様の構成を含むように、最大限に広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0054】
100、100A、100C、100D…ワイヤレス給電システム
110、110A、110B…電力送信データユニット(PTDU)
112…DC-ACコンバータ
114、114A、114B、132、132A、132B、132C…共振器
120…箱
122…2-portモデル
130、130A、130C…電力受信データユニット(PRDU)
134…整流器
136…DC-DCコンバータ
140…負荷デバイス
150…直列素子
160…並列素子
200、300…配置図
L1…一次コイル
L2…二次コイル
CS1、CS2、CP1、CP2…共振コンデンサー
R11、R22…抵抗
RL…負荷抵抗
ZL…負荷インピーダンス
XL…負荷リアクタンス