(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163185
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】フィルムが貼付された物品及び積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/14 20060101AFI20231102BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20231102BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231102BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231102BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20231102BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20231102BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20231102BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B32B27/14
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
C09J7/38
C09J133/04
E04F13/02 C
E04F13/08 A
E04B1/94 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006654
(22)【出願日】2021-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】ユーミ ピュン
(72)【発明者】
【氏名】近藤 紳介
(72)【発明者】
【氏名】リン イー. ロリモー
(72)【発明者】
【氏名】古沢 正明
【テーマコード(参考)】
2E001
2E110
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2E001DE01
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2E110GB62X
4F100AA01B
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4J040NA12
(57)【要約】
【課題】高い難燃性を有する、フィルムが貼付された物品、及びそのような物品の製造に使用することのできる積層体を提供する。
【解決手段】一実施態様のフィルムが貼付された物品は、フィルム層と、ガラス粒子含有層と、被着体とをこの順で含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム層と、
ガラス粒子含有層と、
被着体と
をこの順で含む、フィルムが貼付された物品。
【請求項2】
前記物品は、前記ガラス粒子含有層と前記被着体との間に接着剤層を更に含み、
前記ガラス粒子含有層は、前記フィルム層と前記接着剤層とに接触するバッファー層であり、
前記バッファー層は、バインダーと前記バインダー中に分散したガラス粒子とを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記バインダーが、アクリル系樹脂である、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記物品は、前記フィルム層と前記ガラス粒子含有層との間に接着剤層を更に含み、
前記ガラス粒子含有層は、前記被着体と前記接着剤層とに接触するプライマー層であり、
前記プライマー層は、バインダーと前記バインダー中に分散したガラス粒子とを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記バインダーが、無機バインダーである、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記ガラス粒子含有層は、前記被着体に接触する接着剤層である、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記接着剤層がアクリル系粘着剤を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記ガラス粒子が、ガラスフリットである、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記ガラス粒子の軟化点が、300℃~900℃である、請求項1~8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記フィルム層は、ポリ塩化ビニルを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記被着体は、石膏ボード、ケイカル板、難燃合板、及びモルタルからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記ガラス粒子含有層の厚さが、10μm~220μmである、請求項1~11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
フィルム層と、前記フィルム層の上に配置されたガラス粒子含有層とを含む積層体。
【請求項14】
前記ガラス粒子含有層は、
前記ガラス粒子含有層は、ガラス粒子と、被着体に前記積層体を貼り付けるための接着剤とを含む、請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
前記ガラス粒子が、ガラスフリットである、請求項13又は14のいずれかに記載の積層体。
【請求項16】
前記ガラス粒子の軟化点が、300℃~900℃である、請求項13~15のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はフィルムが貼付された物品及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷などにより模様が付与された装飾フィルムが、建築物の内壁及び外壁などの装飾用途に広く使用されている。特に建築用途に使用される装飾フィルムは不燃性又は難燃性であることが望まれる。例えば、建築物の内装に使用される装飾フィルムについては、各国の建築基準法等に基づく認証を受けることが要求されている。
【0003】
装飾フィルムの難燃性を高める方法として、装飾フィルムの裏面側にある接着剤に難燃剤を添加する方法が知られている。
【0004】
特許文献1(特開2010-229327号公報)は、「熱可塑性樹脂シート(ア)の下面に粘着剤層(イ)を有する不燃性化粧シートであって、前記粘着剤層(イ)が、質量平均分子量が20万~150万である(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対し、臭素系難燃剤(B)15~60質量部、三酸化アンチモン(C)5~20質量部、タッキファイヤー(D)5~30質量部およびポリイソシアネート系硬化剤(E)0.5~5質量部を配合してなり、かつ建築基準法第2条第9号および建築基準法施行令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、総発熱量が8MJ/m2以下であることを特徴とする不燃性化粧シート」を記載している。
【0005】
特許文献2(特開2018-192792号公報)は、「基材フィルム10と、前記基材フィルム10の少なくとも一方の側に設けられた粘着剤層20と、を備えた化粧シート1であって、前記粘着剤層が、粘着剤とリン系難燃剤及び臭素系難燃剤とを含み、発熱性試験において、試験片として、両表面に原紙を有する石膏ボードと前記石膏ボードの輻射熱の与えられる側に積層された前記化粧シートとを有する積層体を用いたときの前記試験片の20分間の試験時間での総発熱量が7.2MJ/m2以下であり、初期粘着力試験において、初期粘着力が5℃環境下で、5N/25mm以上、23℃、50%RH環境下で、15N/25mmであり、かつ、定荷重性試験において、定荷重性が5mm以下である化粧シート1」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-229327号公報
【特許文献2】特開2018-192792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
難燃剤は難燃性を高める上で効果的であるが、内装用装飾フィルムのように居住環境で使用される物品には難燃剤を使用しないことが望ましい。
【0008】
本開示は、高い難燃性を有する、フィルムが貼付された物品、及びそのような物品の製造に使用することのできる積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、フィルムが貼付された物品を構成する層としてフィルム層とは別にガラス粒子含有層を使用することで、難燃剤を必要とせずに建築基準法等の規格が要求する防火性能を実現できることを見出した。
【0010】
一実施態様によれば、フィルム層と、ガラス粒子含有層と、被着体とをこの順で含む、フィルムが貼付された物品が提供される。
【0011】
別の実施態様によれば、フィルム層と、前記フィルム層の上に配置されたガラス粒子含有層とを含む積層体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、フィルムが貼付された物品において、難燃剤を使用しなくても高い難燃性を実現することができる。
【0013】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施態様の物品及び一実施態様の積層体の概略断面図である。
【
図3】第3実施態様の物品及び別の実施態様の積層体の概略断面図である。
【
図4】例12及び対照の発熱速度と時間の関係を表すグラフである。
【
図5】例13、例14、及び対照の発熱速度と時間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0016】
本開示において「フィルム」には「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0017】
本開示において「感圧接着」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲において、短時間わずかな圧力を加えただけで様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。
【0018】
本開示において「粘着(性)」は「感圧接着」と相互に交換可能に使用される。
【0019】
本開示において「上に配置される」とは、直接的に上に配置される場合のみならず、間接的に、すなわち他の材料又は層を介して上に配置される場合も含む。
【0020】
一実施態様のフィルムが貼付された物品は、フィルム層と、ガラス粒子含有層と、被着体とをこの順で含む。フィルム層と被着体との間に位置するガラス粒子含有層は、高温で軟化又は溶融して被着体とフィルム層の間にガラス薄膜を形成する。形成されたガラス薄膜が、バリア層として被着体とフィルム層との間の酸素、可燃性ガスなどの流通を遮断又は抑制することにより、フィルムが貼付された物品を全体として難燃性にすることができる。ガラス粒子含有層をフィルム層とは別個に設けることにより、フィルム層の外観(表面光沢度、透明度など)、及び機械的特性(引張強度、曲げ強度など)に悪影響を及ぼすことなく、物品に難燃性を付与することができる。
【0021】
被着体は、フィルムを貼付することができる物品であれば、材質及び形状に限定はない。被着体としては、例えば、石膏ボード、モルタル、セメント、コンクリート、木材、石、紙、布、ガラス、プラスチック、多孔質セラミックス、レンガ、岩綿吸音板、及びケイカル板が挙げられる。石膏ボードはその片面又は両面が紙で被覆されていてもよい。被着体は、壁材のような板状の形状に限られず、棒状、フィルム状、球状、不定形状、その他の立体形状を有するものであってもよい。
【0022】
一実施態様では、被着体は、石膏ボード、ケイカル板、難燃合板、及びモルタルからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。この実施態様では、物品を防火壁装材料として使用することができる。
【0023】
フィルム層の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリカーボネート、セルロース、及びポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、並びにこれらのブレンドが挙げられる。
【0024】
一実施態様では、フィルム層はポリ塩化ビニルを含む。ポリ塩化ビニルは難燃性に特に優れており、物品の防火性能をより高めることができる。
【0025】
フィルム層は、その他の任意成分、例えばフィラー、顔料及び染料などの着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含んでもよい。
【0026】
フィルム層は単層であってもよく、複数の層の積層体であってもよい。フィルム層は、エンボス処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理などが施されていてもよく、印刷層、めっき層、蒸着層などの装飾層、ハードコート層などの表面保護層を更に有してもよい。
【0027】
フィルム層の厚さは、例えば、約10μm以上、約30μm以上、又は約50μm以上、約400μm以下、約300μm以下、又は約200μm以下とすることができる。フィルム層の厚さを上記範囲とすることで、難燃性に優れた物品を得ることができる。
【0028】
ガラス粒子含有層に含まれるガラス粒子としては、特に限定されないが、例えば、ガラスフリット、ガラスバルーン、及びガラスビーズが挙げられる。ガラス粒子はガラスフリットであることが種々の軟化点材料を選択できる点で有利である。
【0029】
ガラス粒子としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、酸化リン(P2O5)、又は酸化ホウ素(B2O3)を第1成分として含むものを使用することができる。ガラス粒子は、任意に、第1成分に含まれる元素とは異なる、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Zn、B、Al、Pb、及びPからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含んでもよい。ガラス粒子の材料として、具体的には、ソーダライムガラス、ホウ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、リン酸ガラス、及びアルミノリン酸ガラスが挙げられる。ガラス粒子は、鉛を含まないことが好ましい。
【0030】
ガラス粒子の軟化点は、例えば、約300℃以上、約320℃以上、又は約340℃以上、約900℃以下、約850℃以下、又は約800℃以下とすることができる。ガラス粒子の軟化点を約300℃以上とすることで、火炎が生じない程度の比較的高温域での物品の形状安定性を担保することができる。ガラス粒子の軟化点を約900℃以下とすることで、火炎への暴露環境のような高温下でガラス薄膜を速やかに形成することができる。
【0031】
ガラス粒子の平均粒径は、例えば、約1μm以上、約3μm以上、又は約5μm以上であり、約60μm以下、約50μm以下、又は約40μm以下とすることができる。ガラス粒子の平均粒径を約1μm以上とすることで、樹脂分散性を高めることができる。ガラス粒子の平均粒径を約60μm以下とすることで、物品の表面平滑性を担保することができる。ガラス粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される累積体積50%粒子径(D50)である。
【0032】
ガラス粒子含有層のガラス粒子の含有量は、例えば、約4質量%以上、約6質量%以上、又は約8質量%以上、約85質量%以下、約70質量%以下、又は約50質量%以下とすることができる。ガラス粒子含有層のガラス粒子の含有量を約4質量%以上とすることで、物品に難燃性能を付与することができる。ガラス粒子含有層のガラス粒子の含有量を約85質量%以下とすることで、物品の層間密着性を担保することができる。
【0033】
ガラス粒子含有層の厚さは、例えば、約10μm以上、約15μm以上、又は約20μm以上、約220μm以下、約100μm以下、又は約50μm以下とすることができる。ガラス粒子含有層の厚さを約10μm以上とすることで、物品の層間密着性を担保することができる。ガラス粒子含有層の厚さを約220μm以下とすることで、物品の表面平滑性を担保することができる。
【0034】
ガラス粒子含有層のガラス粒子の単位面積あたりの含有量を約30g/m2以上、約45g/m2以上、又は約60g/m2以上、約600g/m2以下、約300g/m2以下、又は約150g/m2以下とすることが有利である。これにより、ガラス粒子含有層に対応する領域に所望の防火性能を物品に付与するのに必要な厚さのガラス薄膜を、少量のガラス粒子で効果的に形成することができる。
【0035】
ガラス粒子含有層は、バインダーを含んでもよく、接着剤を含んでもよい。
【0036】
バインダーとしては、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、又はこれらのブレンドなどの有機バインダーを使用することができる。バインダーとして、ポリリン酸アンモニウム、層状ケイ酸塩鉱物粘土、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、又はこれらのブレンドなどの無機バインダーを使用することもできる。
【0037】
接着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、若しくは酢酸ビニル系樹脂、又はこれらのブレンドを使用することができる。接着剤は粘着性ポリマーを含む感圧接着剤であってもよい。接着剤はアクリル系粘着剤を含むことが、耐候性、及び透明性の点で有利である。
【0038】
バインダー又は接着剤は、その他の任意成分、例えばフィラー、顔料及び染料などの着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含んでもよい。これらの任意成分はバインダー又は接着剤の中に溶解又は分散させることができる。一実施態様では、バインダー又は接着剤は酸化チタンなどの白色顔料を含む。この実施態様では被着体表面を隠蔽することができる。
【0039】
第1実施態様では、物品は、ガラス粒子含有層と被着体との間に接着剤層を更に含み、ガラス粒子含有層は、フィルム層と接着剤層とに接触するバッファー層であり、バッファー層は、バインダーとバインダー中に分散したガラス粒子とを含む。
【0040】
図1に第1実施態様の物品の概略断面図を示す。物品10は、フィルム層12と、ガラス粒子含有層14と、被着体16とを含み、ガラス粒子含有層14と被着体16との間に接着剤層18を更に含む。ガラス粒子含有層14は、フィルム層12と接着剤層18とに接触するバッファー層24である。バッファー層24は、バインダー144とバインダー中に分散したガラス粒子142とを含む。
【0041】
接着剤層は、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、若しくは酢酸ビニル系樹脂、又はこれらのブレンドを含んでもよい。接着剤層は粘着性ポリマーを含む感圧接着層であってもよい。接着剤層はアクリル系粘着剤を含むことが、耐候性、及び透明性の点で有利である。接着剤層は、バッファー層が含むようなガラス粒子を含まなくてもよく、更に含んでもよい。
【0042】
接着剤層の厚さは、例えば、約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約200μm以下、約100μm以下、又は約50μm以下とすることができる。接着剤層の厚さを約5μm以上とすることで、種々の基材への接着性を担保することができる。接着剤層の厚さを約200μm以下とすることで、経済的かつ効率的に接着剤層を形成することができる。
【0043】
バッファー層(ガラス粒子含有層)に含まれるガラス粒子及びバインダーについては上記のとおりである。フィルム層及び接着剤層の両方との密着性に優れることから、バインダーは、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル樹脂又はこれらのブレンドなどの有機バインダーであることが好ましく、アクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0044】
バッファー層(ガラス粒子含有層)の厚さは、例えば、約10μm以上、約15μm以上、又は約20μm以上、約100μm以下、約70μm以下、又は約50μm以下とすることができる。バッファー層の厚さを約10μm以上とすることで、物品の層間密着性を担保することができる。バッファー層の厚さを約100μm以下とすることで、物品の表面平滑性をより効果的に担保することができる。
【0045】
第2実施態様では、物品は、フィルム層とガラス粒子含有層との間に接着剤層を更に含み、ガラス粒子含有層は、被着体と接着剤層とに接触するプライマー層であり、プライマー層は、バインダーとバインダー中に分散したガラス粒子とを含む。
【0046】
図2に第2実施態様の物品の概略断面図を示す。物品10は、フィルム層12と、ガラス粒子含有層14と、被着体16とを含み、フィルム層12とガラス粒子含有層14との間に接着剤層18を更に含む。ガラス粒子含有層14は、被着体16と接着剤層18とに接触するプライマー層34である。プライマー層34は、バインダー144とバインダー中に分散したガラス粒子142とを含む。
【0047】
接着剤層は第1実施態様において説明したとおりである。
【0048】
プライマー層(ガラス粒子含有層)に含まれるガラス粒子及びバインダーについては上記のとおりである。被着体が石膏ボードなどのように無機材料を含む場合、バインダーは、ポリリン酸アンモニウム、層状ケイ酸塩鉱物粘土、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液、又はこれらのブレンドなどの無機バインダーであることが好ましい。
【0049】
プライマー層(ガラス粒子含有層)の単位面積当たりの重量は、例えば、約10g/m2以上、約15g/m2以上、又は約20g/m2以上、約70g/m2以下、約60g/m2以下、又は約50g/m2以下とすることができる。プライマー層の単位面積当たりの重量を約10g/m2以上とすることで、安定した燃焼抑制効果を得ることができる。プライマー層の厚さを約70g/m2以下とすることで、経済的かつ効率的にプライマー層を形成することができる。
【0050】
プライマー層(ガラス粒子含有層)の厚さは、例えば、約10μm以上、約15μm以上、又は約20μm以上、約100μm以下、約70μm以下、又は約50μm以下とすることができる。プライマー層の厚さを約10μm以上とすることで、物品の層間密着性を担保することができる。プライマー層の厚さを約100μm以下とすることで、物品の表面平滑性をより効果的に担保することができる。
【0051】
第3実施態様では、ガラス粒子含有層は、被着体に接触する接着剤層である。
【0052】
図3に第3実施態様の物品の概略断面図を示す。物品10は、フィルム層12と、ガラス粒子含有層14と、被着体16とを含む。ガラス粒子含有層14は、被着体16に接触する接着剤層18である。
【0053】
接着剤層(ガラス粒子含有層)の材質は第1実施態様において説明したとおりである。ガラス粒子は接着剤中に均一に分散されていることが望ましい。
【0054】
接着剤層(ガラス粒子含有層)の厚さは、例えば、約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約100μm以下、約70μm以下、又は約50μm以下とすることができる。接着剤層の厚さを約5μm以上とすることで、種々の基材への接着性を担保することができる。接着剤層の厚さを約100μm以下とすることで、経済的かつ効率的に接着剤層を形成することができる。
【0055】
一実施態様では、フィルム層と、フィルム層の上に配置されたガラス粒子含有層とを含む積層体が提供される。積層体は、上記物品の製造に用いることができる。フィルム層及びガラス粒子含有層については、上記物品について説明したとおりである。
【0056】
積層体は、フィルム層とは反対側のガラス粒子含有層の上に配置された接着剤層を更に含んでもよい。接着剤層については、上記物品について説明したとおりである。
【0057】
図1には被着体16に貼り付けられた状態の積層体100が示されている。積層体100は、フィルム層12と、フィルム層12の上(図面では下側)に配置されたガラス粒子含有層14と、接着剤層18とを含む。
【0058】
ガラス粒子含有層は、ガラス粒子と、被着体に積層体を貼り付けるための接着剤とを含んでもよい。この実施態様において、積層体のガラス粒子含有層の表面を剥離ライナーで保護してもよい。
【0059】
図3には被着体16に貼り付けられた状態の積層体100が示されている。積層体100は、フィルム層12と、ガラス粒子含有層14とを含み、ガラス粒子含有層14は、ガラス粒子142と接着剤を含む接着層18である。
【0060】
フィルムが貼付された物品は、例えば、以下の工程を含む方法によって製造することができる。ガラス粒子と、バインダー又は接着剤と、必要に応じて溶剤、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、染料などの追加成分とを含むガラス粒子含有組成物を、フィルム層の上に塗布し、必要に応じて加熱することにより乾燥して、フィルム層と、フィルム層の上に配置されたガラス粒子含有層とを含む積層体を形成する。ガラス粒子含有組成物の調製は、ホモミキサー、プラネタリーミキサーなどの混合装置を用いて成分を混合することにより行うことができる。
【0061】
ガラス粒子含有層がバインダーを含むバッファー層である場合、接着剤と、必要に応じて溶剤、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、染料などの追加成分とを含む接着剤組成物を、ガラス粒子含有層の上に塗布し、必要に応じて加熱することにより乾燥して、フィルム層とは反対側のガラス粒子含有層の上に接着剤層を形成する。
【0062】
ガラス粒子含有組成物及び接着剤組成物の塗布は、例えば、ナイフコーター、グラビコーター、ロールコーター、ダイコーター、又はバーコーターを用いて行うことができる。塗布後の加熱乾燥は、例えば温度60℃~120℃で数十秒~10分間行うことができる。
【0063】
ガラス粒子含有層の形成前に、必要に応じて、フィルム層をプライマー処理してもよく、フィルム層にコロナ処理、フレーム処理などの表面処理を施してもよい。
【0064】
その後、積層体の接着剤層と、被着体とを対向させて貼り合わせることで、フィルムが貼付された物品を製造することができる。貼り合わせ時に積層体をローラーなどで被着体表面に対して押し付けてもよく、手で擦ってもよい。
【0065】
フィルムが貼付された物品は、例えば、以下の工程を含む方法によっても製造することができる。ガラス粒子と、バインダー若しくは溶剤又はそれらの両方と、必要に応じて粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの追加成分とを含むプライマー組成物を被着体の上に塗布し、必要に応じて加熱することにより乾燥して、被着体の上にプライマー層を形成する。
【0066】
プライマー組成物の塗布は、例えば、ナイフコーター、グラビコーター、ロールコーター、ダイコーター、又はバーコーターを用いて行うことができる。塗布後の加熱乾燥は、例えば温度60℃~120℃で数十秒~10分間行うことができる。
【0067】
その後、フィルム層及び接着剤層を有する積層体の接着剤層と、被着体の上に形成されたプライマー層とを対向させて貼り合わせることで、フィルムが貼付された物品を製造することができる。貼り合わせ時に積層体をローラーなどで被着体表面に対して押し付けてもよく、手で擦ってもよい。
【0068】
一実施態様の物品において、ISO5660-1:2015コーンカロリメータ試験に準拠して測定される総発熱量は、20分間の合計で、約8MJ/m2以下、約7.8MJ/m2以下、又は約7.5MJ/m2以下である。
【0069】
一実施態様の物品において、ISO5660-1:2015コーンカロリメータ試験に準拠して測定される発熱速度が200kW/m2を超える総時間は、合計で約10秒以下、約8秒以下、又は約5秒以下である。
【0070】
本開示のフィルムが貼付された物品及び積層体は、難燃性が要求される様々な分野、例えば、建築物、自動車、飛行機、船舶、列車及び電気電子機器に使用することができる。
【実施例0071】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0072】
積層体及び物品の作製に使用した材料を表1に示す。
【0073】
【0074】
例1
分散剤1(D1)及びガラスフリット5(GL5)を含むスラリーを調製した。D1とGL5の質量比は不揮発分基準で100:500であった。スラリーをフィルム1(FL1)の上にナイフコーターで塗工した。スラリー層を65℃で3分間乾燥した。乾燥後に厚さ39μmのバッファー層が得られた。
【0075】
粘着性ポリマー1(ADH1)及び架橋剤1(CL1)を混合して接着剤混合溶液を得た。ADH1とCL1の質量比は不揮発分基準で100:0.25であった。接着剤混合溶液をシリコーン処理ポリエチレンラミネート紙ライナーの上にナイフコーターで塗工した。接着剤層を95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ38μmの接着剤層が得られた。接着剤層とFL1の上のバッファー層とを貼り合わせて例1の積層体を得た。
【0076】
比較例1
バッファー層をFL1の上に形成せずに、接着剤層とFL1とを直接貼り合わせた以外は、例1と同様の手順で比較例1の積層体を得た。
【0077】
例2
ADH1及びガラスフリット1(GL1)を含む接着剤混合溶液を調製した。ADH1とGL1の質量比は不揮発分基準で100:30であった。CL1を接着剤混合溶液に添加して混合した。ADH1とCL1の質量比は不揮発分基準で100:0.18であった。接着剤混合溶液をシリコーン処理ポリエチレンラミネート紙ライナーの上にナイフコーターで塗工した。接着剤層を95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ45μmの接着剤層が得られた。接着剤層とFL1とを貼り合わせて例2の積層体を得た。
【0078】
例3~例11
ガラスフリットの種類及び配合量を表3に記載のとおり変更した以外は、例2と同様の手順で例3~例11の積層体を得た。
【0079】
比較例2
GL1を使用しなかった以外は、例2と同様の手順で比較例2の積層体を得た。
【0080】
防火性能試験1
3M(登録商標)DI-NOC(登録商標)プライマーDP900N3(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区))を石膏ボード(厚さ12.5mm、100mm角)に塗工した。積層体を石膏ボードのプライマー塗工面に適用した。ISO5660-1:2015に従って、コーンカロリメータ(東洋精機製作所(日本国東京都北区))を用いて放射熱50kW/m2の条件下で発熱速度(kW/m2)及び総発熱量(MJ/m2)を測定した。発熱速度が200kW/m2を超える時間が合計で10秒以下であり、2分間の総発熱量が8MJ/m2以下である場合に「合格」、その他の場合を「不合格」とした。
【0081】
例1及び比較例1の結果を表2に示す。
【0082】
【0083】
接着力
積層体を幅25mm、長さ150mmの長方形に切断して試験片を作製した。試験片を、リン酸コーティングを有する電気亜鉛めっき鋼板(SECC-P、厚さ1mm、株式会社パルテック(日本国神奈川県平塚市))に20℃で貼り付けた。貼り付け方法はJIS Z 0237:2009 10.2.4に準拠した。試験片を20℃で24時間放置した。引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ(日本国東京都豊島区))を用いて温度20℃、剥離速度300mm/分で90度剥離を行ったときの接着力を測定した。
【0084】
例2~例11及び比較例2の結果を表3に示す。
【0085】
【0086】
例12
粘着性ポリマー2(ADH2)及び架橋剤2(CL2)を混合して接着剤混合溶液を得た。ADH2とCL2の質量比は不揮発分基準で97:3であった。フィルム2(FL2)の上に接着剤混合溶液を塗工することにより、厚さ25μmの接着剤層が形成された接着フィルムを用意した。ガラスフリット9(GL9)及びWP-2000を混合することにより、固形分74質量%のプライマー組成物を調製した。シリンジ及びスパチュラを用いてプライマー組成物を石膏ボード(厚さ12.5mm、100mm角)の上に塗工して、室温で24時間乾燥することにより、質量0.48gのプライマー層が形成された石膏ボードを作製した。石膏ボードのプライマー層の上に接着フィルムを適用して、例12の物品を作製した。
【0087】
例13
ガラスフリット10(GL10)、Cloisite 20A、AP420及び水を混合することにより、プライマー組成物を調製した。GL10、Cloisite 20A、AP420及び水の質量比は、2:2:5:10であった。シリンジ及びスパチュラを用いてプライマー組成物を石膏ボード(厚さ12.5mm、100mm角)の上に塗工して、室温で24時間乾燥することにより、質量0.2gのプライマー層が形成された石膏ボードを作製した。石膏ボードのプライマー層の上に例12で作製した接着フィルムを適用して、例13の物品を作製した。
【0088】
例14
例13のプライマー組成物を石膏ボードの上に塗工してプライマー層を形成し、その上に同様の手順でプライマー層をさらに2層塗工して、例13のプライマー層の約3倍の質量を有するプライマー層が形成された石膏ボードを作製した。石膏ボードのプライマー層の上に例12で作製した接着フィルムを適用して、例14の物品を作製した。
【0089】
防火性能試験2
例12~例14で作製した物品について、ISO5660-1:2015に従って、コーンカロリメータ(Fire Testing Technology Limited(East Grinstead, West Sussex, UK))を用いて放射熱50kW/m2の条件下で発熱速度(kW/m2)及び総発熱量(MJ/m2)を測定した。ピーク発熱速度をピーク到達時間で割ることにより、火炎成長速度(FIGRA)を算出した。プライマー層が形成されていない石膏ボードに例12の接着フィルムが貼り付けられた物品を対照として、同様に発熱速度及び総発熱量を測定し、火炎成長速度を算出した。例12~例14、及び対照の結果を表4に示す。
【0090】
【0091】
図4は例12及び対照の発熱速度と時間の関係を表すグラフである。
図5は例13、例14、及び対照の発熱速度と時間の関係を示すグラフである。