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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163189
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】音出力装置
(51)【国際特許分類】
   G10L 21/0224 20130101AFI20231102BHJP
   G10L 21/0208 20130101ALI20231102BHJP
【FI】
G10L21/0224
G10L21/0208 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073918
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】尾村 洋
(57)【要約】
【課題】出力される音が聞き取り難くなることを抑制しながら、操作部の操作音に起因して発話者の音声に混入する可聴雑音を低減することができる音出力装置を提供する。
【解決手段】音出力装置は、操作部と、音を音信号に変換するマイク部と、前記音信号が入力される制御部と、を備え、前記制御部は、前記操作部の操作が検出された場合に、前記操作部の操作音が前記マイク部で変換された雑音信号に対応する可聴雑音を低減させるように、前記音信号に対して雑音低減処理を実行し、前記雑音低減処理が実行された処理済信号を出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、
音を音信号に変換するマイク部と、
前記音信号が入力される制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記操作部の操作が検出された場合に、前記操作部の操作音が前記マイク部で変換された雑音信号に対応する可聴雑音を低減させるように、前記音信号に対して雑音低減処理を実行し、
前記雑音低減処理が実行された処理済信号を出力する、
音出力装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記雑音信号のレベルを低下させる雑音低減信号を記憶する記憶部と、
前記雑音低減処理において、前記音信号と前記雑音低減信号とを合成する合成部と、を含む、
請求項1に記載の音出力装置。
【請求項3】
モード設定操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記モード設定操作部が操作されると、前記雑音低減信号を前記記憶部に記憶させる書込モード、または、前記音信号と前記雑音低減信号とを合成する読出モードに設定される、
請求項2に記載の音出力装置。
【請求項4】
前記音の大きさが閾値よりも小さいか否かを判定する音量判定部をさらに備え、
前記制御部は、
前記音の大きさが前記閾値よりも小さい場合に、前記雑音信号を前記記憶部に記憶させる書込モードに設定され、かつ、
前記音の大きさが前記閾値以上である場合に、前記音信号と前記雑音低減信号とを合成する読出モードに設定される、
請求項2に記載の音出力装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記雑音低減処理において、特定の周波数の範囲内の前記雑音信号のレベルを低下させるフィルタを含む、
請求項1に記載の音出力装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記雑音低減処理において、前記雑音信号を可聴周波数帯域よりも高い周波数を有する高周波信号へ置換する高周波化部を含む、
請求項1に記載の音出力装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記音信号を出力する第1状態または前記処理済信号を出力する第2状態に切り替えられる状態スイッチング素子を含み、
前記第1状態と前記第2状態との間の切替えが前記音信号または前記処理済信号の出力に間に合うように、前記音信号または前記処理済信号を遅延させる遅延素子を含む、
請求項1に記載の音出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に開示されているように、音出力装置は、操作部と、音を音信号に変換するマイク部と、音信号が入力される制御部と、を備えている。このような音出力装置においては、操作部の操作音がマイク部で変換されることに起因して、操作音に対応する雑音信号が音信号に重ね合わされてしまう。そのため、雑音信号に基づいた可聴雑音を含む音が音出力装置から出力されてしまう。この可聴雑音を除去するために、特許文献1に開示されている技術によれば、ユーザーが音声を発していないサイレンス状態において操作部の操作が検出された場合、アクティブ状態へ移行することを禁止する。それにより、音出力装置は、音信号に対応する音が所定時間だけ出力されないように、音信号の入力を前述の所定時間だけ無効化する。そのため、サイレンス状態において操作部の操作音が出力されることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-235032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に開示された技術によれば、操作音の入力が無効化されているサイレンス状態においては、音声または音楽等の音が音出力装置から全く出力されない。そのため、音出力装置から出力される音声または音楽等の音は、途切れてしまうため、聞き取り難くなる。
【0005】
一方、上記した特許文献1に開示された技術によれば、ユーザーが音声を発しているアクティブ状態において操作部が操作された場合には、音出力装置は、ユーザーの音声が途切れることを防止するために、アクティブ状態からサイレンス状態へ移行しない。つまり、音出力装置は、操作音に起因した雑音信号を含む音信号の入力の無効化を行わない。そのため、その操作音に対応する可聴雑音が音出力装置から出力されるユーザーの音声に混入する。その結果、ユーザーの音声が聞き取り難くなる。
【0006】
本開示は、上述の問題に鑑みなされたものである。本開示の目的は、出力音が途切れることを抑制しながら、操作部の操作音に起因して出力音に混入した可聴雑音を低減することができる音出力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の音出力装置は、操作部と、音を音信号に変換するマイク部と、前記音信号が入力される制御部と、を備え、前記制御部は、前記操作部の操作が検出された場合に、前記操作部の操作音が前記マイク部で変換された雑音信号に対応する可聴雑音を低減させるように、前記音信号に対して雑音低減処理を実行し、前記雑音低減処理が実行された処理済信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の音出力装置が使用されている状況の一例を示す図である。
図2】実施の形態1の音出力装置の斜視図である。
図3】実施の形態1の音出力装置の機能ブロック図である。
図4】実施の形態1の音出力装置の制御部において伝送される各信号のタイミングチャートである。
図5】実施の形態2の音出力装置の機能ブロック図である。
図6】実施の形態2の音出力装置の制御部において伝送される各信号のタイミングチャートである。
図7】実施の形態3の音出力装置の機能ブロック図である。
図8】実施の形態3の音出力装置の制御部において伝送される各信号のタイミングチャートである。
図9】実施の形態4の音出力装置の機能ブロック図である。
図10】実施の形態4の音出力装置の制御部において伝送される各信号のタイミングチャートである。
図11】実施の形態4の音出力装置の制御部のフィルタが可聴雑音を低減することを説明するための図である。
図12】実施の形態5の音出力装置の機能ブロック図である。
図13】実施の形態5の音出力装置の制御部において伝送される各信号のタイミングチャートである。
図14】実施の形態5の音出力装置の高周波化を説明するための図である。
図15】実施の形態6の音出力装置の機能ブロック図である。
図16】実施の形態6の音出力装置の制御部において伝送される各信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態の音出力装置を、図面を参照しながら説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、同一の符号が付された要素の構成および機能についての重複する説明は繰り返さない。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の音出力装置1が使用されている状況の一例を示す図である。
【0011】
図1に示される状況から分かるように、音出力装置1は、人H1と人H2とが透明なアクリル板APを互いの間に挟んで会話をするときに用いられる。より具体的には、アクリル板APの一方側の話し手(たとえば、H1)の音声をアクリル板APの他方側の聞き手(たとえば、H2)に伝達し易くするために用いられる。人H1と人H2とは、アクリル板APが互いの間に存在するため、互いの音声、すなわち、空気中を伝播するアナログ音を聞き取り難い状態にある。そのため、人H1と人H2とは、音出力装置1を利用して会話を行う。なお、本実施の形態の音出力装置1は、図1に示されるように、設置面上に置く形式のものであるが、肩掛け式等の音出力装置など、人が身に着けることができるウェアラブル装置であってもよい。この場合、遠隔に存在する複数の人がウェアラブル装置である音出力装置1を身に着けた状態で、通信回線を経由して、会話をすることができる。
【0012】
図2は、実施の形態1の音出力装置1の斜視図である。
【0013】
図2に示されるように、音出力装置1は、その正面に、マイク部1-aおよび操作部1-cを備えている。操作部1-cは、音出力装置1の側面にも設けられている。2つの音出力装置1同士は、互いに電気配線EWで接続されている。一方の音出力装置1のマイク部1-aが受け取った音声が電気信号に変換される。一方の音出力装置1によって変換された電気信号は、電気配線EWを経由して、他方の音出力装置1へ伝達される。それにより、他方の音出力装置1の正面側の筐体の内部に設けられたスピーカー部(図に符号を付さず)から電気信号に対応する音声が発せられる。
【0014】
図3は、実施の形態1の音出力装置1の機能ブロック図である。
【0015】
図3に示されるように、音出力装置1は、マイク部1-a、A/D変換部1-b、操作部1-c、および制御部1-hを備えている。制御部1-hは、記憶部1-d、合成/非合成スイッチング素子1-e、合成部1-f、および操作検出部1-gを備えている。
【0016】
マイク部1-aは、音を音信号に変換する。具体的には、マイク部1-aは、電子回路を含み、その電子回路が発話者の音声および楽器等のアナログ音をアナログ波形の電気信号へ変換する。マイク部1-aは、変換されたアナログ波形の電気信号をA/D変換部へ送信する。
【0017】
A/D変換部1-bは、マイク部1-aから送信されてきたアナログ波形の電気信号を受信する。A/D変換部1-bは、電子回路を含み、その電子回路がアナログ波形の電気信号を前述のアナログ音に対応するデジタルの音信号へ変換する。A/D変換部1-bは、デジタルの音信号を制御部1-hにおける合成部1-fへ送信する。なお、操作部1-cの操作音に対応する雑音信号が音声に対応する音信号に含まれている場合、雑音信号を含む音信号が合成部1-fへ送信される。
【0018】
制御部1-hは、プロセッサにより構成されている。プロセッサは、プログラムを記憶している。制御部1-hは、プログラムにしたがって、記憶部1-d、合成/非合成スイッチング素子1-e、合成部1-f、および操作検出部1-gを制御する。
【0019】
操作部1-cは、音出力装置1のユーザーにより操作される。操作部1-cは、たとえば、電源スイッチまたは音量調節スイッチ等の各種のスイッチを含んでいる。操作部1-cは、ユーザーの発話により、ユーザーの音声がマイク部1-aによってその音声に対応するアナログ波形の電気信号に変換されているときに操作され得るものである。したがって、マイク部1-aは、ユーザーの発話の音声だけでなく、操作部1-cの操作音も、アナログ波形の電気信号へ変換する。
【0020】
記憶部1-dは、予め作成されたデジタル値の雑音低減信号を記憶している。雑音低減信号は、操作部1-cの操作音に対応する雑音信号のレベルを低下させるために用いられる。本実施の形態においては、デジタル値の雑音低減信号に対応するアナログ波形と、操作部1-cの操作音に対応するデジタル値の雑音信号に対応するアナログ波形とは、互いに極性が逆である。
【0021】
操作検出部1-gは、操作部1-cの押下および解放のそれぞれの操作を検出する。具体的には、操作部1-cが押下されてから解放されるまでの間、操作部波形が操作部1-cから操作検出部1-gへ送信される。
【0022】
合成/非合成スイッチング素子1-eは、通常、オフ「H」になっているが、操作部1-cの押下された後の所定期間および操作部1-cが解放された後の所定期間だけ、オン「L」される。それにより、これらの所定期間のそれぞれにおいて、記憶部1-dに記憶されたデジタル値の雑音低減信号が合成部1-fへ送信される。それにより、操作検出部1-gは、操作部1-cが押下された後の所定期間および操作部1-cが解放された後の所定時間のそれぞれにおいて、パルス波形のデジタル信号を出力する。それにより、合成部1-fにおいて、パルス波形のデジタル信号のパルス幅に対応する期間だけ、雑音低減処理が実行される。
【0023】
合成部1-fは、操作部1-cの操作音に対応する雑音信号が音信号に含まれていない場合、A/D変換部1-bから送信された音信号のデジタル値を出力する。しかしながら、マイク部1-aで変換された操作部1-cの操作音に対応する雑音信号を含む音信号が合成部1-fへ送信される場合がある。この場合、合成部1-fにおいて、雑音低減処理が実行される。雑音低減処理では、合成部1-fは、A/D変換部1-bから送信された雑音信号を含む音信号と記憶部1-dから送信された雑音低減信号とが合成される。具体的には、記憶部1-dから送信された雑音低減信号のデジタル値がA/D変換部1-bから送信された雑音信号を含む音信号のデジタル値から減算される。それにより、合成部1-fは、音信号に混入している雑音信号が雑音低減信号の分だけ低減された処理済信号を出力する。
【0024】
本実施の形態においては、雑音信号と雑音低減信号とは、互いに極性が逆であるため、打ち消し合う。そのため、雑音信号と雑音低減信号との合成によって、理論上、本来の音声または楽器等の音に対応する音信号に全く悪影響を与えることなく、雑音信号を完全に除去することができる。したがって、音出力装置1から出力される音が聞き難くなることを抑制しながら、可聴雑音を低減することができる。
【0025】
図4は、本実施の形態の音出力装置1の制御部1-hにおいて伝送される各信号のタイミングチャートである。図4を用いて、発話の音声に混入した操作部1-cの操作音を聞こえ難くするための方法の詳細を説明する。以下、本明細書においては、「H」は、閾値以上よりも高い状態の「ハイ」を意味し、「L」は、前述の閾値以下である「ロー」を意味するものとする。
【0026】
図4の2-aに示されるように、操作部1-cが操作されていない期間においては、操作部1-cから操作検出部1-gへ出力される操作部波形は、「H」に設定されている。この状態で、操作部1-cが、押下された後、解放される。それにより、操作部1-cが押下されてから解除されるまでの期間において、操作部1-cから操作検出部1-gへ出力される操作部波形は、「L」に設定される。
【0027】
図4の2-bに示されるように、操作部1-cが操作されていない期間においては、操作検出部1-gから出力される操作検出部出力は、「H」に設定されている。この状態で、操作検出部1-gは、操作部1-cの押下および解放のそれぞれから所定期間だけ、操作部1-cの押下および解放のそれぞれに対応するパルス波形を出力する。つまり、操作部波形が「H」から「L」へ変化してから所定期間、および、操作部波形が「L」から「H」へ変化してから所定期間においてのみ、操作検出部出力は、「L」に設定される。合成/非合成スイッチング素子1-eは、通常、オフ「H」に設定されているが、操作検出部1-gからパルス波形が出力されている所定期間のみ、オン「L」に設定される。
【0028】
図4の2-cから分かるように、前述の所定期間にのみ、音信号に含まれる雑音信号2-c1,2-c2(実線)を低減するように、記憶部1-dから雑音低減信号2-c1x,2-c2x(破線)が合成/非合成スイッチング素子1-eへ送信される。
【0029】
なお、記憶部1-dは、操作音に対応する雑音信号2-c1,2-c2(実線)を低減するための雑音低減信号2-c1x,2-c2x(破線)を予め記憶している。本実施の形態においては、雑音信号2-c1(実線)と雑音低減信号2-c1x(破線)とは、互いに極性が逆の波形であり、雑音信号2-c2(実線)と雑音低減信号2-c2x(破線)とは、互いに極性が逆の波形である。
【0030】
ただし、実際には、雑音信号2-c1,2-c2(実線)、および、雑音低減信号2-c1x,2-c2x(破線)は、いずれも、デジタル値である。雑音信号2-c1(実線)と雑音低減信号2-c1x(破線)とは、正負の符号が逆の異なるデータ列である。また、雑音信号2-c2(実線)と雑音低減信号2-c2x(破線)とは、正負の符号が逆の異なるデータ列である。
【0031】
図4の2-dで示されるように、ユーザーが音声等の音を発すると、その音声がマイク部1-aによってアナログ波形の音信号に変換される。
【0032】
図4の2-eに示されるように、ユーザーが音声等の音を発している期間に、操作部1-cが操作されると、操作部1-cの操作音もマイク部1-aによって音信号に変換されてしまう。この場合、音信号に雑音信号2-e1および2-e2が混入する。そのため、操作音混入音声に対応する雑音信号を含む音信号が合成部1-fへ送信される。
【0033】
雑音信号2-e1,2-e2が音信号に混入している期間においては、記憶部1-dから図4の2-cに示される雑音低減信号2-c1x,2-c2xが合成部1-fへ送信される。その結果、合成部1-fでは、図4の2-eに示される操作音混入音声に対応する雑音信号を含む音信号と雑音低減信号2-c1x,2-c2xとが合成される。
【0034】
具体的には、図4の2-eに示される雑音信号2-e1,2-e2を含む音信号のデジタル値から雑音低減信号2-c1x,2-c2xのデジタル値が減算される。それにより、図2-fに示されるように、雑音信号2-e1,2-e2を含む音信号から雑音信号2-e1,2-e2が除去された処理済信号が合成部1-fから出力される。
【0035】
以上の方法により、音出力装置1から出力される音が途切れることを抑制しながら、操作部1-cの操作音に起因して発話者の音声に混入した可聴雑音を低減することができる。
【0036】
(実施の形態2)
図5および図6を用いて、実施の形態2の音出力装置1を説明する。なお、下記において実施の形態1の音出力装置1と同様である点についての説明は繰り返さない。本実施の形態の音出力装置1は、以下の点で、実施の形態1の音出力装置1と異なる。
【0037】
図5は、本実施の形態の音出力装置1の機能ブロック図である。
【0038】
図5に示されるように、音出力装置1は、モード設定操作部21-cを備えている。モード設定操作部21-cがユーザーに操作されると、制御部1-hは、雑音低減信号を記憶部1-dに記憶させる書込モード、または、雑音信号を含む音信号と雑音低減信号とを合成する読出モードのいずれかに設定される。
【0039】
書込モードにおいては、スイッチング素子21-bが「H」に設定される。それにより、スイッチング素子21-aは、スイッチング素子21-bの出力値にしたがって開閉する。音出力装置1の周辺で音が発生していない状態で、操作部1-cの押下および解放のそれぞれの操作がなされる。それにより、操作部1-cの操作音に対応するアナログ波形の雑音信号2-c1,2-c2が、マイク部1-aおよびA/D変換部1-bによって、デジタル値の雑音信号2-c1,2-c2に変換される。また、スイッチング素子21-aがオン「L」の期間、記憶部1-dは、デジタル値の雑音信号2-c1,2-c2を雑音低減信号2-c1x,2-c2xとして記憶する。
【0040】
一方、読出モードにおいては、スイッチング素子21-bが「L」に設定される。それにより、スイッチング素子21-aもオフ「H」に設定される。この状態で、操作部1-cの操作を操作検出部1-gが検出した場合、所定期間だけ、合成/非合成スイッチング素子1-eがオン「L」に設定される。それにより、記憶部1-dに記憶されている雑音低減信号が合成部1-fへ送信される。このときに、音声等の音がマイク部1-aで音信号に変換され、音信号が合成部1-fへ送信されると、合成部1-fにおいて、音信号と雑音低減信号とが合成される。それにより、制御部1-hから合成部1-fで生成された処理済信号が出力される。
【0041】
このような構成は、多数の音出力装置1の工場での製造工程で、それぞれの操作部1-cの操作音をそれぞれの音出力装置1の記憶部1-dに個別に記憶させる場合に有用である。
【0042】
たとえば、多数の音出力装置1のそれぞれごとの操作部1-cの操作音の音量のばらつき、または、多数の音出力装置1のそれぞれごとの筐体の組立精度のばらつきに起因して、マイク部1-aに入力される操作音のレベル/波形に差がある場合がある。この場合、音出力装置1のそれぞれごとに操作部1-cの操作音に起因して音信号に混入した雑音信号を低減することが好ましい。
【0043】
したがって、音出力装置1の製造時にモード設定操作部21-cを書込モードに設定する一方で、音出力装置1の使用時にモード設定操作部21-cを読出モードに設定する。
【0044】
図6は、本実施の形態の音出力装置1の制御部1-hにおいて伝送される各信号のタイミングチャートである。
【0045】
図6の2-a、2-b、2-c、2-e、および2-fは、それぞれ、図4の2-a、2-b、2-c、2-e、および2-fと同一であるが、操作部1-cの押下および解放が繰り返されている点において異なる。
【0046】
書込モードにおいては、操作部1-cの操作音を記憶部1-dに記憶させるために、モード設定操作部21-cが書込モードに設定される。このとき、図6の22-aに示されるように、モード設定操作部21-cから出力されるモード設定信号が「H」に設定されている。そのため、スイッチング素子21-bがオン「L」になっている。
【0047】
この状態で、図6の2-aに示されるように、操作部1-cが、押下された後、解放されると、図6の2-bに示されるように、操作検出部1-gがパルス波形を出力する。それにより、図6の2-cに示されるように、操作部1-cの押下および解放の操作音に対応する雑音信号2-c1,2-c2が記憶部1-dへ順次送信される。
【0048】
それにより、記憶部1-dは、押下時記憶部保持音として、図6の22-bに示される雑音信号2-c1を記憶し、その後、解放時記憶部保持音として、図6の22-bに示される雑音信号2-c2を記憶する。雑音信号2-c1および雑音信号2-c2は、それぞれ、記憶部1-dに記憶された後においては、図6の22-cに示されるように、雑音低減信号2-c1x,2-c2xとして機能する。
【0049】
一方、図6の22-aに示されるように、読出モードにおいては、音出力装置1のユーザーが音声を発している期間に、モード設定操作部21-cから出力されるモード設定信号が「L」に設定される。このとき、スイッチング素子21-aはオフ「H」されている。
【0050】
この状態で、操作部1-cの操作とともに、音声等の音が発せられると、図6の2-eに示されるように、マイク部1-aおよびA/D変換部1-bは、操作音に対応する雑音信号2-e1,2-e2が混入した音信号を合成部1-fへ送信する。
【0051】
このとき、操作部1-cの押下および解放が操作検出部1-gで検出されると、操作検出部1-gからの操作検出部出力により合成/非合成スイッチング素子1-eがオン「L」に変化する。それにより、記憶部1-dから雑音低減信号2-c1x,2-c2x(図4の2-c参照)が合成部1-fへ送信される。それにより、合成部1-fにおいては、雑音信号が混入した音信号と雑音低減信号とが合成される。その結果、図6の2-fに示されるように、合成部1-fから出力される処理済信号においては、発話者の音声等の音から操作部1-cの操作音に起因した雑音が除去されている。
【0052】
上記したように、本実施の形態においては、モード設定操作部21-cを有することにより、記憶部1-dに記憶される雑音低減信号を音出力装置1ごとの操作部1-cの操作音に応じて異ならせることができる。そのため、音出力装置1ごとに操作部1-cの操作音にバラツキがある場合であっても、個々の音出力装置1の操作部1-cの操作音を正確に除去することができる。
【0053】
(実施の形態3)
図7および図8を用いて、実施の形態3の音出力装置1を説明する。なお、下記において実施の形態2の音出力装置1と同様である点についての説明は繰り返さない。本実施の形態の音出力装置1は、以下の点で、実施の形態2の音出力装置1と異なる。
【0054】
図7は、本実施の形態の音出力装置1の機能ブロック図である。
【0055】
図7に示されるように、本実施の形態の音出力装置1は、音の大きさが閾値よりも小さいか否かを判定する音量判定部31-aを備えている。制御部1-hは、音の大きさが閾値よりも小さい場合に、雑音信号を記憶部1-dに記憶させる書込モードに設定される。また、制御部1-hは、音の大きさが閾値以上である場合に、雑音信号を含む音信号と雑音低減信号とを合成する読出モードに設定される。本実施の形態の音出力装置1の構成は、モード設定操作部21-cの代わりに、音量判定部31-aを備えている点以外においては、実施の形態2の音出力装置の構成と同一である。
【0056】
前述の実施の形態2の音出力装置1は、工場で製造される過程において、操作部1-cの操作音を記憶部1-dに記憶させる。しかしながら、本実施の形態の音出力装置1は、ユーザーが音出力装置1を利用しているときに、操作部1-cの操作音を記憶部1-dに自動的に記憶させる。そのため、本実施の形態の音出力装置1は、操作部1-cの操作音を記憶部1-dに記憶させるときに、音量判定部31-aがマイク部1-aで変換された音声等の音量を判定する。
【0057】
本実施の形態の音出力装置1は、音量判定部31-aが音の大きさが閾値よりも小さいと判定した場合に、その音が操作音であると認識し、その操作音に対応する雑音信号のデジタル値を雑音低減信号として記憶部1-dに自動的に記憶させる。言い換えると、音量判定部31-aは、ユーザーが音出力装置1を使用している期間に、発話があるか否かを判定し、発話がない状態で、操作部1-cの操作音が発せられたと判定した場合のみ、制御部1-hは、その操作音を記憶部1-dに記憶させる。また、音量判定部31-aは、ユーザーが音出力装置1を使用している期間に、発話がある状態で、操作部1-cの操作音が発せられたと判定した場合のみ、制御部1-hは、記憶部1-dから合成部1-fへ雑音低減信号2-c1x,2-c2xを送信する。
【0058】
図8は、本実施の形態の音出力装置1の制御部1-hにおいて伝送される各信号のタイミングチャートである。図8の2-a、2-b、2-c、2-e、および2-fは、それぞれ、図4の2-a、2-b、2-c、2-e、および2-fとほぼ同様であるが、操作部1-cの押下および解放のそれぞれが繰り返されている点において異なる。
【0059】
図8の32-aに示されるように、音量判定部31-aは、マイク部1-aにより音信号へ変換された音の音量が閾値よりも小さい場合に「H」を出力する。それにより、音出力装置1は、書込モードに設定される。一方、音量判定部31-aは、マイク部1-aにより音信号へ変換された音の音量が閾値以上である場合に「L」を出力する。それにより、音出力装置1は、読出モードに設定される。これ以外の点については、本実施の形態の音出力装置1の動作は、この点以外においては、実施の形態2の音出力装置1の動作と同一である。
【0060】
本実施の形態の音出力装置1によれば、実施の形態2の音出力装置1と同様に、音出力装置1ごとの操作部1-cの操作音の音量ばらつき、または、音出力装置1の筐体の組立精度のばらつきに応じて異なる雑音低減信号を記憶部1-dに記憶させることができる。また、記憶部1-dに記憶されている操作音に対応する雑音低減信号は、各音出力装置1が使用されている時点での各音出力装置1に固有の波形である。その結果、音出力装置1の経年変化があっても、雑音を正確に除去することができる。
【0061】
(実施の形態4)
図9図11を用いて、実施の形態4の音出力装置を説明する。なお、下記において実施の形態1の音出力装置1と同様である点についての説明は繰り返さない。本実施の形態の音出力装置は、以下の点で、実施の形態1の音出力装置と異なる。
【0062】
図9は、本実施の形態の音出力装置1の機能ブロック図である。
【0063】
本実施の形態の制御部1-hは、実施の形態1の記憶部1-dおよび合成部1-fの代わりに、フィルタ41-aおよびフィルタスイッチング素子41-bを含んでいる。フィルタ41-aは、雑音低減処理において、特定の周波数の範囲内の雑音信号のレベルを低下させる。より具体的には、フィルタ41-aは、A/D変換部1-bで変換された音信号のデジタル値に混入した雑音信号のデジタル値を低下させる。フィルタスイッチング素子41-bは、フィルタ41-aを通過した処理済信号のデジタル値を制御部1-hから出力させるのか、それとも、A/D変換部1-bで変換された音信号のデジタル値を制御部1-hから出力させるのかを切り替える。
【0064】
本実施の形態の音出力装置1は、実施の形態1の音出力装置1と異なり、記憶部1-d、合成/非合成スイッチング素子1-e、および合成部1-fを有していない。そのため、本実施の形態の音出力装置1は、操作音に対応する雑音信号から記憶部1-dに記憶された雑音低減信号を減算するのではない。本実施の形態の音出力装置1は、常時動作する操作部1-cの操作音の周波数成分を除去するフィルタ41-aを有し、操作部1-cが操作された期間のみにおいて、スイッチング素子41-bによって音声信号がフィルタ41-aを通過するのか否かを切り替える。この場合、操作音に起因した雑音が混入した音声等の音から操作部1-cの雑音を完全に除去することは困難であるかもしれないが、音声等の音を途切れさせることなく、音声等の音に混入した雑音の低減を図ることは可能である。
【0065】
図10は、本実施の形態の音出力装置1の制御部1-hにおいて伝送される各信号のタイミングチャートである。図10の2-a、2-b、および2-eは、それぞれ、図4の2-a、2-b、および2-eと同一の波形である。
【0066】
フィルタ41-aは、マイク部1-aで変換された音信号に混入した操作音に対応する雑音信号2-e1,2-e2の大部分を除去する。フィルタスイッチング素子41-bは、操作検出部1-gから出力された操作検出部出力が「H」のときに、フィルタ41-aを通過することなく、A/D変換部1-bから送信されてきた音信号を出力する状態になっている。一方、フィルタスイッチング素子41-bは、操作検出部1-gから出力された操作検出部出力が「L」のときに、フィルタ41-aを通過した雑音信号を含む音信号の雑音信号が低減された処理済信号を出力する状態になっている。
【0067】
図10の42-aに示されるように、フィルタ41-aを通過したフィルタ通過音の波形は、音信号に含まれる雑音信号2-e1,2-e2が低減された波形になっている。その後、図10の42-bに示されるフィルタ41-aを通過した処理済信号がスイッチ41―bを経由して外部へ通過する。このとき、パルス波形が「H」の期間における図10の2-eの雑音信号を含む音信号の波形とパルス波形が「L」の期間における図10の42-aのフィルタ通過音の波形とが組み合わせられる。それにより、図10の42-bの処理済信号の波形が形成される。そのため、処理後音声(処理済信号)は、操作部1-cの操作音のレベルが低減されているため、聞き取り易い音になっている。
【0068】
図11は、実施の形態4の音出力装置1の制御部のフィルタ41-aが可聴雑音を低減することを説明するための図である。
【0069】
図11の43-aに示されるように、フィルタ41-aを通過する雑音信号、すなわち、操作音は、一般に、所定の周波数帯の音のスペクトルで表現される。フィルタ41-aは、図11の43-bに示されるように、所定の周波数帯の音のスペクトルに対応する音信号の通過を制限する。その結果、フィルタ41-aを通過した音信号は、図11の43-cに示されるように、フィルタ41-aによって、雑音信号が低減された処理済信号に変換される。
【0070】
(実施の形態5)
図12図14を用いて、実施の形態5の音出力装置1を説明する。なお、下記において実施の形態1の音出力装置1と同様である点についての説明は繰り返さない。本実施の形態の音出力装置1は、以下の点で、実施の形態1の音出力装置1と異なる。
【0071】
図12は、本実施の形態の音出力装置1の機能ブロック図である。
【0072】
図12に示されるように、本実施の形態の制御部1-hは、実施の形態1の記憶部1-dおよび合成部1-fの代わりに、高周波化部51-aおよびスイッチング素子51-bを含んでいる。高周波化部51-aは、雑音低減処理において、雑音信号を可聴周波数帯域よりも高い周波数を有する高周波信号へ置換する。
【0073】
より具体的には、高周波化部51-aは、A/D変換部1-bで変換された音信号のデジタル値に混入した雑音信号2-e1,2-e2のデジタル値の周波数を人が聞き取れない程度の周波数まで高める。スイッチング素子51-bは、高周波化部51-aを通過した処理済信号のデジタル値を制御部1-hから出力させるのか、それとも、A/D変換部1-bで変換された音信号のデジタル値を制御部1-hから出力させるのかを切り替える。
【0074】
人間の耳が聞きとれる音は、つまり、可聴周波数の音であり、例えば、20Hzから20,000Hzまでの範囲の周波数の音であると言われている。可聴周波数よりも低い周波数の音、つまり周波数が20Hz以下の音を人は聞き取ることができない。そのような音は、低周波と呼ばれている。また、20,000Hz以上の高い周波数の音を人は聞き取ることができない。このような音は、超音波と呼ばれている。
【0075】
本実施の形態の音出力装置1は、実施の形態1に記載のように、記憶部1-dに記憶された雑音低減信号を用いて操作音に対応する雑音を除去したり、実施の形態4に記載のように、フィルタによって雑音を低減させたりするのではない。本実施の形態においては、制御部1-hは、操作部1-cが押下された期間および操作部1-cが解放された期間のみ、マイク部1-aによって変換された雑音信号2-e1,2-e2を含む音信号を高周波数(20kHz以上)の高周波信号に変換する。この場合の高周波は、人が聞き取ることが出来ない程度のものであれば、いかなるものであってもよい。つまり、本実施の形態の制御部1-hは、操作音に対応する雑音信号が音信号に混入している期間のみの、雑音がスピーカーによって再生されないように、雑音を高周波化する。
【0076】
本実施の形態の音出力装置1は、実施の形態4のフィルタ41-aの代わりに、高周波化部51-aを備えている。高周波化部51-aは、マイク部1-aから入力された音信号に対して、高周波化処理を行う。それにより、高周波化部51-aは、図52-aに示されるように、音声等のアナログ音に対応する音信号を人が聞き取ることができない高周波数の音に対応する高周波信号に変換する。また、アナログ音に対応する音信号に操作部1-cの操作音に対応する雑音信号が混入している期間だけ、音信号と高周波信号とを置換する。その結果、音出力装置1から出力される処理済信号は、操作音に対応する雑音信号は高周波に変換されている。したがって、制御部1-hから出力される処理済信号に対応する音が図示しないスピーカーから出力される時点では、途切れることなく、人が聞き取り易くなっている。
【0077】
図13は、本実施の形態の音出力装置1の制御部1-hにおいて伝送される各信号のタイミングチャートである。図13の2-a、2-b、および2-eは、それぞれ、図4の2-a、2-b、および2-eと同一の波形である。
【0078】
本実施の形態においては、高周波化部51-aを通過した雑音信号2-e1,2-e2を含む音信号は、図13の52-aに示されるように高周波化されている。図13の2-aに示される操作部1-cの押下および解放のそれぞれの後の所定期間においては、図2-bに示される操作検出部1-gが「L」のパルス波形を出力している。この所定期間において、図13の52-bに示されるように、雑音信号2-e1,2-e2を含む音信号と高周波信号とが置換される。それにより、制御部1-hは、人が聞き取ることができる音に対応する音信号として、図2-gに示される処理済信号を出力する。
【0079】
図14は、本実施の形態の音出力装置1の高周波化を説明するための図である。図14に示されるように、高周波化部51-aが実行する高周波化処理としては、次のような方法が考えられる。
【0080】
たとえば、まず、図52-cに示される操作音波形から1サンプルおきに、サンプルを抽出する。次に、図14の52-dに示されるように、48khzの周期でサンプリングされた音信号52-d1,52-d2,52-d3,52-d4を、1サンプルおきにサンプルの符号の正負を反転させる。それにより、図14の52-eに示されるように、高周波化された高周波波形が生成される。具体的には、24khz周期の反転波形が得られる。
【0081】
(実施の形態6)
図15および図16を用いて、実施の形態6の音出力装置1を説明する。なお、下記において実施の形態4の音出力装置1と同様である点についての説明は繰り返さない。本実施の形態の音出力装置1は、以下の点で、実施の形態4の音出力装置1と異なる。
【0082】
図15は、本実施の形態の音出力装置1の機能ブロック図である。
【0083】
本実施の形態の制御部1-hは、実施の形態4の制御部1-hの構成に加えて、遅延素子61-a1および61-a2ならびに状態スイッチング素子61-bを含んでいる。図15の2-eに示さる波形に混入する雑音成分2-e1および2-e2が、操作部1-dが生成するLパルス期間よりも時間的に先行する場合がある。この場合でも、遅延素子61-a1または61-a2は、第1状態と第2状態との間の切替えが音信号または処理済信号の出力に間に合うように、音信号または処理済信号を遅延させる。第1状態においては、制御部1-hは、音信号を出力する。第2の状態においては、制御部1-hは、処理済信号を出力する。
【0084】
遅延素子61-a1は、状態スイッチング素子61-bの第2状態から第1状態への切替えが音信号の雑音部分の切り替えに間に合うように、音信号を遅延させる。また、遅延素子61-a2は、状態スイッチング素子61-bの第1状態から第2状態への切替えが処理済信号の出力に間に合うように、処理済信号を遅延させる。
【0085】
なお、遅延素子61-a1および61-a2のそれぞれは、音信号または処理済信号を、何等かの手段で再現できる形式で、一定の規則にしたがって変換するエンコーダであってもよいし、単なる遅延素子でもよい。状態スイッチング素子61-bは、制御部1-hを、音信号を出力する第1状態または処理済信号を出力する第2状態のいずれかに切り替える。
【0086】
言い換えると、遅延素子61-a1,61-a2によって、エンコード処理が行われると、音信号または処理済信号の伝送は遅延する。この音信号または処理済信号の遅延時間が利用されることにより、状態スイッチング素子61-bの切替タイミングが音信号または処理済信号の雑音部分の切り替えタイミングに間に合うようになる。
【0087】
本実施の形態の音出力装置1は、操作部1-cの操作音の周波数成分を除去するフィルタ41-aを有する点においては、実施の形態4の音出力装置1と同様である。しかしながら、本実施の形態の音出力装置1は、操作部1-cが押下または解放された後、マイク部1-aに操作音が到達するまでの時間が極めて短い場合がある。この場合、状態スイッチング素子61-bによる切替えが、音信号および処理済信号のいずれかの出力のタイミングに、間に合わないおそれがある。
【0088】
そのため、信号伝送経路における状態スイッチング素子61-bの上流側に遅延素子61-a1が設けられている。遅延素子61-a1は、音信号または処理済信号が状態スイッチング素子61-bに到達する時間を遅延させる。それにより、状態スイッチング素子61-bが音信号を出力させる第1状態と状態スイッチング素子61-bが処理済信号を出力させる第2状態との切り替えが、音信号または処理済信号の適切な出力タイミングに間に合わなくなることを防止することができる。
【0089】
本実施の形態の音出力装置1によっても、音声等の音に混入した操作音を完全に除去することは困難であるかもしれないが、音声等の音を途切れさせることなく、操作音の低減を図ることが可能である。
【0090】
図16は、本実施の形態の音出力装置1の制御部1-hにおいて伝送される各信号のタイミングチャートである。図16の2-a、2-b、および2-eは、それぞれ、図10の2-a、2-b、および2-eと同一の波形である。図16の41-aおよび42-bは、それぞれ、図10の41-aおよび42-bと同一の波形である。
【0091】
実施の形態4の音出力装置1では、図16の2-bと図16の2-eとを対比すれば分かるように、操作音混入音声の波形のうちの雑音信号2-e1,2-e2の波形が、操作検出部出力のパルス波形よりも早く状態スイッチング素子61-bに到達する場合がある。言い換えると、操作検出部出力のパルス波形が、操作音混入音声の雑音信号2-e1,2-e2の波形よりも遅く状態スイッチング素子61-bに到達する場合がある。これらの場合、図16の42-aに示されるように、操作検出部出力のパルス波形が、フィルタ通過音の雑音信号42-a1,42-a2の波形に対して遅れて状態スイッチング素子61-bに到達する。その結果、操作音混入音声としての音信号に含まれる雑音信号2-e1,2-e2の除去に状態スイッチング素子61-bの切り替えが間に合わない。
【0092】
しかしながら、本実施の形態の音出力装置1においては、図16の62-aに示されるように、遅延素子61-a1が、雑音信号62-a1,62-a2を含む音信号を遅延させる。そのため、状態スイッチング素子61-bは、音信号の出力に間に合うように、「H」に切り替えられる。また、図16の62-bに示されるように、遅延素子61-a2が、雑音信号62-b1,62-b2を含む処理済信号を遅延させる。そのため、状態スイッチング素子61-bは、雑音信号62-b1,62-b2が除去された処理済信号の出力に間に合うように、「L」に切り替えられる。その結果、操作音混入音声としての音信号に含まれる雑音信号2-e1,2-e2の除去に状態スイッチング素子61-bの切り替えが間に合う。
【0093】
上記のような本実施の形態の音出力装置1によっても、実施の形態4の音出力装置1と同様に、音声等の音に混入した操作音のレベルが低減されることにより、聞き取り易い音が音出力装置1から出力される。加えて、状態スイッチング素子61-bの切り替えが制御部1-hからの音信号または処理済信号の出力に間に合わないという事態の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 音出力装置
1-a マイク部
1-c 操作部
1-d 記憶部
1-f 合成部
1-h 制御部
21-c モード設定操作部
31-a 音量判定部
41-a フィルタ
51-a 高周波化部
61-a1,61-a2 遅延素子
61-b 状態スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16