(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016321
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】順送プレス装置および順送プレス方法
(51)【国際特許分類】
B30B 13/00 20060101AFI20230126BHJP
B21D 43/00 20060101ALI20230126BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20230126BHJP
H02K 15/02 20060101ALN20230126BHJP
【FI】
B30B13/00 M
B21D43/00 E
B21D28/02 C
H02K15/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120556
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】今定 啓
(72)【発明者】
【氏名】林 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】早田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀一
【テーマコード(参考)】
4E090
5H615
【Fターム(参考)】
4E090AA01
4E090AB01
4E090EA01
4E090EB01
4E090EC05
4E090FA02
4E090HA04
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS03
(57)【要約】
【課題】ワークの振動の影響を低減した順送プレス装置および順送プレス方法を提供する。
【解決手段】上型及び下型120を備え、シート状のワークを搬送方向へ送りながら少なくとも打ち抜き加工する順送プレス装置であって、下型120は、ワークの幅方向の両側に搬送方向に沿って延び、ワークの幅方向の移動を規制するガイド部124と、少なくとも一方のガイド部124よりもワークの幅方向の内側に突出した抑え部126a,126bと、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型を備え、シート状のワークを搬送方向へ送りながら少なくとも打抜加工する順送プレス装置であって、
前記下型は、
前記ワークの幅方向の両側に搬送方向に沿って設けられ、前記ワークの幅方向の移動を規制するガイド部と、
少なくとも一方の前記ガイド部よりも前記ワークの幅方向の内側に突出した抑え部と、を有する、順送プレス装置。
【請求項2】
前記抑え部は、打ち抜かれずに残った前記ワークと対向する位置に設けられている、請求項1の順送プレス装置。
【請求項3】
前記抑え部は、打ち抜かれずに残った前記ワークの複数個所と対向する、請求項2に記載の順送プレス装置。
【請求項4】
搬送方向から見ると、前記抑え部が前記ワークの幅方向寸法の30%以上と対向する、請求項1に記載の順送プレス装置。
【請求項5】
最終打抜加工部と、前記最終打抜加工部の直前の打抜加工部との間に前記抑え部が設けられている、請求項1に記載の順送プレス装置。
【請求項6】
最終打抜加工部の後に、ワークをスクラップに処理するスクラップ処理部が設けられており、
前記最終打抜加工部と前記スクラップ処理部との間に前記抑え部が設けられている、請求項1に記載の順送プレス装置。
【請求項7】
搬送方向に沿ってのびる少なくとも第一列と第二列の加工部が設けられており、
第一列の前記最終打ち抜き加工部は、第二列の前記最終打抜加工部よりも上流に設けられており、
少なくとも第一列の前記最終打抜加工部と第一列の前記スクラップ処理部との間に、前記抑え部が設けられている、請求項1に記載の順送プレス装置。
【請求項8】
前記抑え部は、前記ワークの幅方向の両端を跨ぐように設けられている、請求項1~7のいずれか1項に記載の順送プレス装置。
【請求項9】
前記抑え部は、
前記ワークの幅方向の第一端部側に位置する第一部と、
幅方向の前記第一端部とは反対側の第二端部側に位置する第二部と、を有し、
前記第一部と前記第二部とは搬送方向の異なる位置に設けられている、請求項1~8のいずれか一項に記載の順送プレス装置。
【請求項10】
前記上型は、前記下型との間に位置するストリッパを有し、
前記上型を下降させたときに前記抑え部を収容する収容部が前記ストリッパに設けられている、請求項1~9のいずれか一項に記載の順送プレス装置。
【請求項11】
上型及び下型により、シート状のワークを搬送方向へ送りながら少なくとも打抜加工する順送プレス方法であって、
下型に設けられたガイド部によって前記ワークの搬送方向と交差する幅方向の移動を規制し、かつ、前記ガイド部よりも前記ワークの幅方向の内側に突出している抑え部によって前記ワークの上下方向の移動を規制しながら前記ワークを搬送する、順送プレス方法。
【請求項12】
前記抑え部は、打ち抜かれずに残った前記ワークの上下方向の移動を規制する、請求項11に記載の順送プレス方法。
【請求項13】
打ち抜かれずに残った前記ワークの複数個所は、前記抑え部により上下方向の移動が規制されている、請求項12に記載の順送プレス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順送プレス装置および順送プレス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のような順送プレス装置および順送プレス方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
順送プレス装置は上型に設けられたパンチを下型に設けられたダイに向けて昇降させることでワークを加工する。順送プレス装置において、加工品の性能の向上などを目的として、より薄いワークを加工する需要がある。また、順送プレス装置において、生産性向上のため、より高速でワークを順送し、加工することが求められている。
【0005】
しかし、従来の順送プレス装置において、より薄いワークをより高速で順送および加工すると、ワークが上下方向に振動することがある。ワークの振動が大きくなると、下型のダイ孔にワークが入り込むなどワークとツールが干渉し、ワークのスムーズな順送が行えない。この点で、加工品の高性能化および生産性の向上のために、ワークの振動をより低減する点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、ワークの振動を低減した順送プレス装置および順送プレス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る順送プレス装置は、
上型及び下型を備え、シート状のワークを搬送方向へ送りながら少なくとも打抜加工する順送プレス装置であって、
前記下型は、
前記ワークの幅方向の両側に搬送方向に沿って設けられ、前記ワークの幅方向の移動を規制するガイド部と、
少なくとも一方の前記ガイド部よりも前記ワークの幅方向の内側に突出した抑え部と、
を有する。
【0008】
上記構成によれば、ガイド部と、ガイド部よりもワークの幅方向の内側に突出した抑え部を有するので、ワークの幅方向の振動に加えて、ワークの上下方向の振動も効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明の一側面に係る順送プレス方法は、
上型及び下型により、シート状のワークを搬送方向へ送りながら少なくとも打抜加工する順送プレス方法であって、
下型に設けられたガイド部によって前記ワークの搬送方向と交差する幅方向の移動を規制し、かつ、前記ガイド部よりも前記ワークの幅方向の内側に突出している抑え部によって前記ワークの上下方向の移動を規制しながら前記ワークを搬送する。
【0010】
上記の順送プレス方法によれば、ガイド部と、ガイド部よりもワークの幅方向の内側に突出した抑え部を有するので、ワークの幅方向の振動に加えて、ワークの上下方向の振動も効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワークの振動の影響を低減した順送プレス装置および順送プレス方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、固定子積層鉄心の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、順送プレス装置の断面概略図である。
【
図3】
図3は、電磁鋼板MSが打抜加工されるときの下型および電磁鋼板を上方から見た図である。
【
図4】
図4は、
図2の破線断面をIV方向から見た矢視図である。
【
図5】
図5は、上型のストリッパを下方向から見た図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る順送プレス装置の下型と電磁鋼板とを上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態として、順送プレス装置100および順送プレス方法について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0014】
図1は、固定子積層鉄心1の一例を示す斜視図である。固定子積層鉄心1は、ヨーク部2とティース部3とを備える。ヨーク部2は、中心軸Axを中心とした円環状である。つまり、ヨーク部2の中心には貫通孔1aが設けられている。ティース部3は複数設けられ、各ティース部3は、ヨーク部2の内縁から中心軸Axに向かって延びる。本実施形態においては、ティース部3は48個設けられている。周方向に隣り合うティース部3の間には、それぞれティース部3の間隔が略等間隔に並ぶように、スロット4が設けられている。
【0015】
固定子積層鉄心1は、打抜部材Wを複数枚積層することにより作製される。打抜部材Wは、第一実施形態に係る順送プレス装置100および順送プレス方法によって板状の電磁鋼板MSを打抜加工することにより一体的に形成される。
【0016】
図2は、順送プレス装置100の断面概略図である。順送プレス装置100は、ローラ90によって搬送されてきたシート状の電磁鋼板MSを打抜加工することにより、打抜部材Wを作成する装置である。電磁鋼板MSは、本実施形態におけるワークに相当する。
【0017】
以降の説明において、説明の便宜上、「幅方向」、「搬送方向」、「反搬送方向」、「上下方向」について適宜言及する。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「搬送方向」は、電磁鋼板MSがローラ90によって上流側から下流側へ搬送される方向であり、「反搬送方向」は「搬送方向」とは逆の方向である。以降に説明する図中に示した符号Uは上方向を示す。符号Dは下方向を示す。符号Fは搬送方向を示す。符号Bは反搬送方向を示す。符号Lは幅方向の一端側を示す。符号Rは幅方向の他端側を示す。また、「水平方向」は、「幅方向」と「搬送方向」と「反搬送方向」とを含む方向である。
本実施形態においては、順送プレス装置による打ち抜き方向は上下方向である。搬送方向、反搬送方向および上下方向に直交する方向が幅方向である。
【0018】
図2に示したように、本実施形態の順送プレス装置100は、幅方向に3列同時に打抜加工できるように構成されている。順送プレス装置100は、駆動部110と、下型120と、上型130と、を有する。駆動部110は、上型130の上方に配置されていて、上型130を上下方向に昇降させるように構成されている。
【0019】
下型120は、複数のダイD1~D4と、複数のリフタ121と、複数のガイドポスト122と、基台部123と、を備える。基台部123は、床面上に載置されて、ダイD1~D4、リフタ121、および、ガイドポスト122を保持する。1列分の打抜加工が行われるダイD1~D4は、搬送方向に並んで基台部123の上面に配置されている。本実施形態においてダイD1~D4は1列あたり4個設けられており、同様の打抜加工が3列分同時に行われるので、ダイD1~D4は合計12個設けられている。なお、歩留まりをよくするために、打抜加工が行われるダイD1~D4は、隣の列のダイD1~D4と比較して搬送方向にずれて設けられても良い(
図3も参照)。
【0020】
ダイD1,D2における打抜加工により、電磁鋼板MSから積層鉄心のスロット4に相当する部分が打ち抜かれる。ダイD3では、ヨーク部2の中心の貫通孔1aに相当する部分が打ち抜かれる。ダイD4では積層鉄心の打抜部材Wの外形部分が打ち抜かれる。
図示の例では、ダイD4によって電磁鋼板MSから打抜部材Wが最終的に打ち抜かれるため、ダイD4を最終打抜加工部と呼ぶことがある。また、ダイD3は、ダイD4による最終打抜加工の直前の加工を行うので、「最終打抜加工部の直前の打抜加工部」と呼ぶことがある。
【0021】
リフタ121は、基台部123の上面に上下方向に移動可能に設けられる。上型130によって電磁鋼板MSが基台部123に押さえつけられているときは、リフタ121は沈み込んでいる。上型130が電磁鋼板MSから離れると、リフタ121の下部に備えられたバネ(図示せず)の復元力によって、リフタ121は上方に浮き上がる。これにより、リフタ121は電磁鋼板MSを上方に持ち上げ、電磁鋼板MSを基台部123から離隔した状態で保持する。ガイドポスト122は、基台部123から上型130に向かって延びる円柱状の部材である。ガイドポスト122は、上型130が水平方向に移動することを規制しつつ、上下方向へ移動することを許容している。
【0022】
上型130は、パンチホルダ131と、ストリッパ132と、を有する。パンチホルダ131は複数のパンチP1~P4を有する。パンチP1~P4は、基台部123に設けられたダイD1~D4と対応する位置に設けられており、電磁鋼板MSを打抜加工する。ストリッパ132は、打抜加工時に電磁鋼板MSを基台部123に押さえつける部材である。ストリッパ132は、接続部材によってパンチホルダ131と接続されている。ストリッパ132が電磁鋼板MSを押さえつけた状態でパンチP1~P4が電磁鋼板MSを打ち抜き、ストリッパ132が電磁鋼板MSを押さえつけた状態でパンチP1~P4が引き抜かれることで、パンチP1~P4を電磁鋼板MSから引き剥がす。
【0023】
図3は、電磁鋼板MSが打抜加工されるときの下型120および電磁鋼板MSを上方から下方向へ見た図である。
図4は、
図2の破線断面を上流側からIV方向へ見た矢視図である。
図3、
図4に示すように、下型120はさらにガイド部124を有する。ガイド部124は、立壁部124aと、阻止部124bと、を有する。ガイド部124は、搬送方向から見るとL字型の部材である。つまり、立壁部124aは上下方向に延びており、阻止部124は立壁部124aの上端から幅方向の中央側に延びている。
立壁部124aは、電磁鋼板MSの幅方向両側に搬送方向に沿って点在している。立壁部124aは、電磁鋼板MSの幅方向の端部に接触可能であり、電磁鋼板MSが幅方向に移動することを規制する。
【0024】
阻止部124bは、電磁鋼板MSの幅方向の一端部および幅方向の他端部に接触可能であり、電磁鋼板MSはパンチP1~P4の昇降によって必要以上に浮き上がることを阻止する。阻止部124bは立壁部124aの上端から、電磁鋼板MS上に幅方向の内側に延びている。阻止部124bは、下型120に設けられた図示しないパイロット孔まで延びていてもよい。
【0025】
電磁鋼板MSの厚さが0.2~0.3mm、基台部123の上面からのリフタ121の高さが9mmであるとすると、基台部123の上面から阻止部124bの下面までの長さは10mm程度であることが望ましい。これにより、上型130によって電磁鋼板MSが基台部123に押さえつけられていない場合は、電磁鋼板MSは基台部123の上面から9mm離れた状態を維持することができる。
【0026】
下型120は、さらに抑え部126を備える。抑え部126は、電磁鋼板MSの幅方向の内側に突出している部材である。図示の例では、抑え部126はガイド部124とは別体の部材である。抑え部126は、電磁鋼板MSと略平行に延びて電磁鋼板MSと対向している。抑え部126は、搬送方向および幅方向に延びる面内のうち、上型130が昇降してもパンチP1~P4が当たらない領域に形成されうる。また、下型120の上面から抑え部126の下面までの長さは、阻止部124bと同じ程度である。
【0027】
次に、
図2~
図4を参照して、本実施形態に係る順送プレス装置100の打抜加工について説明する。順送プレス装置100の打抜加工は、次の(1)~(4)の4工程を繰り返すことにより行われる。(1)上型130のストリッパ132が電磁鋼板MSを押さえつける、(2)パンチホルダ131が下降し、パンチP1~P4がダイ孔に挿入されて電磁鋼板MSを加工する、(3)パンチP1~P4がダイ孔から抜かれてストリッパ132が電磁鋼板MSから離れる、(4)リフタ121が電磁鋼板MSを基台部123から持ち上げ、ローラ90が電磁鋼板MSを1ピッチだけ搬送する。
【0028】
電磁鋼板MSのある一部分のみについて搬送されていく様子を見ると、まず該部分が最上流に位置するパンチおよびダイにて打ち抜き加工され、搬送されて行くに連れて、順次各々のパンチおよびダイにて打ち抜き加工されていく。最も下流側に位置するパンチおよびダイにて打抜加工されると、電磁鋼板MSから打抜部材Wが打ち抜かれる。
【0029】
ところで、固定子等に用いられる積層鉄心を作成する場合、同じ容積の積層鉄心であっても、より薄い打抜部材を重ねた積層鉄心の方が高性能であることが知られている。さらに、より薄い打抜部材Wを重ねるので、1つの積層鉄心を作製するために必要な打抜部材の個数も増加する。このような事情から、より薄い電磁鋼板をより高速で打抜加工できる順送プレス装置および順送プレス方法が求められていた。
【0030】
より高速で加工するために、パンチP1~P4やストリッパ132が高速で昇降し、搬送も高速で行われる。しかし、特許文献1に記載の順送プレス装置を用いて単に高速で順送および打抜加工を行うと、上記の(1)~(4)の工程が行われるたびに、電磁鋼板が上下に波打つように振動することがある。特に、電磁鋼板がより薄くなる場合は振動の振幅がより大きくなる。
【0031】
特許文献1に記載の装置に搭載されているガイド部の阻止部は電磁鋼板の幅方向両端において、電磁鋼板が浮き上がることを規制できる。しかし、電磁鋼板の幅方向における中央付近では、電磁鋼板の上下方向の振動は抑制できない。搬送速度が高速になると、電磁鋼板の幅方向における中央部での上下方向の振動は無視できないほど大きくなる。電磁鋼板の振動が大きくなると、電磁鋼板がダイ孔に入り込んで引っかかることがある。電磁鋼板がダイ孔に引っかかると、スムーズに電磁鋼板を搬送することができないので、高速で搬送することが達成できない。このため、より薄い電磁鋼板をより高速で打抜加工するために、特許文献1に記載の装置は改善の余地があった。
【0032】
本実施形態に係る順送プレス装置100は、ガイド部124に加えて、ガイド部124よりもワーク(電磁鋼板MS)の幅方向の内側に突出した抑え部126を有するので、電磁鋼板MSの幅方向の振動のみならず、電磁鋼板MSの上下方向の振動を抑制することができる。これにより、電磁鋼板MSの振動を低減して電磁鋼板MSを高速で加工しやすくなる。
【0033】
本実施形態に係る順送プレス方法は、ガイド部124によってワークである電磁鋼板MSの搬送方向と交差する幅方向の移動を規制し、かつ、ガイド部124とは異なる抑え部126によって電磁鋼板MSの上下方向の移動を規制しながら電磁鋼板MSを搬送する。これにより、電磁鋼板MSを搬送する際に電磁鋼板MSが上下方向に振動した場合であっても、電磁鋼板MSの振動の振幅を低減することができる。
【0034】
図4に示したように、抑え部126は電磁鋼板MSの上方にあり、上流側から搬送方向へ見たときに、抑え部126は、電磁鋼板MSの幅方向の30%以上と対向している。
本実施形態に係る順送プレス装置100は、搬送方向から見ると、抑え部126が電磁鋼板MSの幅方向寸法の30%以上と対向するので、電磁鋼板MSのより広い範囲において、振動の振幅を制限することができる。これにより、さらに電磁鋼板MSの振動の影響を低減することができる。
【0035】
なお、抑え部126が別体に複数設けられている場合は、必ずしも単一の抑え部126が電磁鋼板MSの幅方向の30%以上と対向する必要はなく、すべての抑え部126全体でみたときに、抑え部126全体が電磁鋼板MSの幅方向の30%以上と対向していればよい。またガイド部124の阻止部124bと抑え部126との全体が、電磁鋼板MSの幅方向の30%以上と対向していてもよい。
【0036】
図3に戻って、前述の通り、1列の打抜加工あたり4個のダイD1~D4が搬送方向に並んでいる。それぞれの4個のダイD1~D4において打抜加工が行われるので、ダイD1~D4は打抜加工部に相当する。また、それぞれの打抜加工の列において最も下流側にあるダイD4は最終打抜加工部に相当する。ここで、各打抜加工の列において、最も下流側にあるダイD4と最も下流側にあるダイD4の直前にあるダイD3との間に抑え部126が設けられている。
【0037】
通常、加工が進むほど、電磁鋼板において打抜加工されずに残る部分が少なくなる。つまり、各打抜加工の列において、最も下流側にあるダイと最も下流側にあるダイの直前にあるダイとの間にある電磁鋼板は、打抜加工されずに残っている部分が少なくなる。打抜加工されずに残っている部分が少なくなると、電磁鋼板の剛性が低下するので、振動の振幅はより大きくなる傾向にある。
【0038】
本実施形態に係る順送プレス装置100は、最終打抜加工部に相当するダイD4と、最終打抜加工部の直前の打抜加工部に相当するダイD3との間に抑え部126が設けられている。このため、振動が大きくなりやすい部位での電磁鋼板MSの振動を効果的に抑制できる。
【0039】
図2、
図3に示すように、パンチホルダ131は、さらに、各列の打抜加工を行うパンチP1~P4の中で最も下流側にあるパンチP4(ダイD4とともに最終打抜加工部に相当する)の下流側にカッターC(スクラップ処理部)を備える。工程(2)において、パンチP1~P4とともにカッターCは降下し、パンチP1~P4がダイD1~D4孔に挿入されるとともに、カッターCは電磁鋼板MSを裁断する。カッターCが打抜加工された電磁鋼板MSを裁断することで、スクラップ排出口128から裁断された電磁鋼板MSが排出される。なお、
図3における二点鎖線が、カッターCによる電磁鋼板MSの裁断位置CLを示している。
【0040】
最終打抜加工部であるダイよりも下流側の電磁鋼板は、これ以上の打抜加工は行われないが、電磁鋼板の中で打抜加工されずに残っている部分が最も少ない。このため、最終打抜加工部よりも下流側の電磁鋼板においては、特に振動が大きくなりやすい。なお、電磁鋼板MS自体は最下流から最上流まで一つの材料としてつながっている。このため、最終打抜加工部であるダイよりも下流側の電磁鋼板で発生した振動は、それより上流側の電磁鋼板に伝わり、最終打抜加工部であるダイよりも上流側の電磁鋼板が搬送しにくくなることがある。
【0041】
本実施形態に係る順送プレス装置100は、最終打抜加工部に相当するダイD4とスクラップ処理部に相当するカッターCとの間に抑え部126が設けられているので、電磁鋼板MSがスクラップに加工される直前まで振幅を低減して電磁鋼板MSを搬送することができる。
【0042】
換言すれば、最終打抜加工部よりも下流側に設けられる抑え部126は、最終打抜加工部により加工された電磁鋼板MSのうち、打ち抜かれずに残った電磁鋼板MSと対向する位置に設けられている。これにより、特に振動しやすい電磁鋼板MSである、最終打抜加工部よりも下流側の電磁鋼板MSの振動の振幅を抑えることができる。
最終打抜加工部よりも下流側の電磁鋼板MSに限らず、最終打抜加工部よりも上流側の電磁鋼板MSにおいても、打ち抜かれずに残った電磁鋼板MSと対向する位置に設けられていてもよい。これにより、打ち抜かれずに残った電磁鋼板MSの上下方向の移動を規制することができるので、電磁鋼板MSの振動の振幅を抑えることができる。
【0043】
本実施形態に係る順送プレス方法の抑え部126は、最終打抜加工部により加工された電磁鋼板MSのうち、打ち抜かれずに残った電磁鋼板MSの上下方向の移動を規制する。これにより、特に振動しやすい電磁鋼板MSである、最終打抜加工部よりも下流側の電磁鋼板MSにおいて、電磁鋼板MSの振動の振幅を低減することができる。
最終打抜加工部よりも下流側の電磁鋼板MSに限らず、最終打抜加工部よりも上流側の電磁鋼板MSにおいても、打ち抜かれずに残った電磁鋼板MSの上下方向の移動が規制されても良い。これにより、打ち抜かれずに残った電磁鋼板MSの振動の振幅を低減できる。
【0044】
図3に示すように、抑え部126は、打ち抜かれずに残った電磁鋼板MSを複数個所と対向するように設けられている。これにより、電磁鋼板MSの振動の振幅をより低減することができる。
【0045】
本実施形態に係る順送プレス方法において、打ち抜かれずに残った電磁鋼板MSの複数個所における上下方向の移動が抑え部126によって規制されている。これにより、電磁鋼板MSの振動の振幅をより低減することができる。
【0046】
最終打抜加工部よりも下流側において、打ち抜かれずに残った電磁鋼板MSのうち最も細く残っている部分と対向するように抑え部126が設けられることが望ましい。これにより、特に激しく振動しやすい部分の電磁鋼板MSの上下方向の移動を規制することができる。なお、すべての最も細く残っている部分の電磁鋼板MSと抑え部126とが対向している必要はない。
【0047】
本実施形態のように、順送プレス装置100の隣り合う列の打抜加工部を電磁鋼板MSの搬送方向にずらすことがある。例えば、
図3に示すように、本実施形態の順送プレス装置100は3列の打抜加工部を備えている。そして、電磁鋼板MSの幅方向における中央の列の打抜加工部が最も上流側にずれて配置されている。これにより、電磁鋼板MSの幅方向における中央の列(第一列の一例)の最終打抜加工部であるダイD4は、他の2列(第二列の一例)のダイD4よりも上流側に配置される。これにより、電磁鋼板MSの幅方向における中央の列の打抜加工部において、ダイD4からカッターCまでの距離が長い。
【0048】
前述の通り、最終打抜加工部に相当するダイからカッターまでは、電磁鋼板の中で打抜加工されずに残っている部分が最も少ない。このとき、最終打抜加工部に相当するダイからカッターまでの距離が最も長い打抜加工部の列で、特に電磁鋼板の振動が大きくなりやすい。
【0049】
本実施形態の順送プレス装置100は、第一列に相当する幅方向における中央の列のダイD4とカッターCとの間に抑え部126が設けられているので、特に振動が大きくなりやすい部分の電磁鋼板MSにおいて、振動の振幅を抑えることができる。
【0050】
なお、第二列に相当する打抜加工部において、最終打抜加工部とスクラップ処理部との間に抑え部は設けられても設けられなくても良い。例えば、本実施形態においては、幅方向における中央の列以外のダイD4は、ともに幅方向における中央の列のダイD4よりも下流側に配置されている。しかし、幅方向の一端側の打抜加工部の列において、ダイD4とスクラップ処理部との間に抑え部は設けられていないが、幅方向の他端側の列の打抜加工部においては、ダイD4とスクラップ処理部との間に抑え部126が設けられている。
【0051】
抑え部126は、下型120の幅方向の両端に跨るように設けられていてもよい。
本実施形態において、抑え部126は、第一抑え部126aと、第二抑え部126bと、を含む。第一抑え部126aは、下型120の幅方向両端に跨って設けられる部材である。なお、第一抑え部126aは一体的に成形された1つの部材で形成されているが、別体の部材を連結することで形成されてもよい。
【0052】
本実施形態の順送プレス装置100において、第一抑え部126aは下型120の幅方向の両端に跨るように設けられている。このとき、第一抑え部126aは幅方向の両端で支持されるので、抑え部が片持ちで支持される場合と比較して、抑え部126の取り付け強度が向上する。
【0053】
図5は上型130のストリッパ132を下方から上方向へ見た図である。
図2および
図5に示すように、ストリッパ132には、パンチ孔H1~H4が設けられ、ストリッパ132の下面には収容部136が設けられている。パンチ孔H1~H4は、ストリッパ132に対してパンチP1~P4を昇降させることが可能に構成されている。
【0054】
収容部136は、ストリッパ132が電磁鋼板MSに向かって降下したときに、下型120に設けられた抑え部126を収容可能に構成された溝である。パンチ孔H1~H4はダイ孔D1~D4に対して鏡合せとなるように配置されている。収容部136は、ガイド部124および抑え部126と鏡合せとなるように設けられている。なお、収容部136の溝の幅は、抑え部126の幅よりも若干広いことが望ましい。
【0055】
本実施形態の順送プレス装置100のストリッパ132には、抑え部126を収容する収容部136が設けられている。これにより、上型130が降下した際に、ストリッパ132と抑え部126とが干渉しない。
【0056】
(変形例)
本実施形態に係る順送プレス装置100の変形例について説明する。
図6は、変形例に係る順送プレス装置の下型220と電磁鋼板MSとを上方から見た図である。
図6に示すように、本実施形態の順送プレス装置100と比較して、変形例に係る抑え部は、第一抑え部226aと、第二抑え部226bと、第三抑え部226cとを有する点が異なっている。第一抑え部226a~第三抑え部226cは別体に形成されている。第一抑え部226aは、下型220の幅方向の一端部(第一端部の一例)で支持される(第一部に相当)。第二抑え部226bは、下型120の幅方向の他端部(第二端部の一例)で支持される(第二部に相当)。第一抑え部226aは、第二抑え部226bより、搬送方向の上流側に配置されている。なお、第一部に相当する抑え部と第二部に相当する抑え部とのどちらが上流側にあるかは、変形例の例に限られない。
【0057】
変形例に係る順送プレス装置の抑え部は、下型220の幅方向の一端部で支持される第一抑え部226a(第一部)と、下型220の幅方向の他端部で支持される第二抑え部226b(第二部)とを有している。そして、第一部と第二部とは搬送方向の異なる位置に設けられている。このとき、抑え部226は、搬送方向に沿って、より広い範囲の電磁鋼板MSを抑えることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0059】
例えば、本実施形態においては、3列の打抜加工部を備えた順送プレス装置について説明したが、打抜加工部の列の数は本実施形態に限られない。例えば、1列の打抜加工部のみを備えた順送プレス装置であってもよい。
【0060】
本実施形態においては、1列の打抜加工部につき、4つのパンチおよびダイを備えた順送プレス装置について説明したが、パンチおよびダイの個数は本実施形態の例示に限定されない。
【0061】
さらに、本実施形態においては打抜加工を行う順送プレス装置について説明したが、順送プレス装置が実施する加工は打抜加工に限られない。
【符号の説明】
【0062】
1 固定子積層鉄心
1a 貫通孔
2 ヨーク部
3 ティース部
4 スロット
90 ローラ
100 順送プレス装置
110 駆動部
120,220 下型
121 リフタ
122 ガイドポスト
123 基台部
124 ガイド部
124a 立壁部
124b 阻止部
126 抑え部
126a,226a 第一抑え部
126b,226b 第二抑え部
128 スクラップ排出口
130 上型
131 パンチホルダ
132 ストリッパ
136 収容部
226c 第三抑え部
Ax 中心軸
W 打抜部材
MS 電磁鋼板
D1~D4 ダイ
P1~P4 パンチ
H1~H4 パンチ孔
C カッター
CL 裁断位置