(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016323
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用圧力解放弁
(51)【国際特許分類】
H01M 50/333 20210101AFI20230126BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20230126BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20230126BHJP
【FI】
H01M50/333
H01G11/78
H01M50/317 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120559
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮前 仁志
【テーマコード(参考)】
5E078
5H012
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078HA24
5H012BB01
5H012CC01
5H012DD02
(57)【要約】
【課題】ケース内部空間に生じた気体をスムーズに排気して、ケース内部空間の圧力を迅速に低減することができる、蓄電デバイス用圧力解放弁を提供する。
【解決手段】この蓄電デバイス用圧力解放弁10は、ケース1に固定されると共に、通気孔22及び弁座45を有するベース部材15と、ベース部材15にスライド可能に支持され、弁座45に接離して通気孔22を開閉する弁部材50と、弁部材50を弁座45に近接する方向に付勢して、常時は通気孔22を閉じる付勢手段と、ケース内部空間の圧力によって、付勢手段の付勢力に抗して、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開く途中で、付勢手段の付勢力を減少させる、付勢力降下手段とを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスが収容されるケースに取付けられる、蓄電デバイス用圧力解放弁であって、
前記ケースに固定され、ケース内部空間及びケース外部空間を連通させる通気孔、及び、該通気孔の周縁部に設けられた弁座を有する、ベース部材と、
前記ベース部材にスライド可能に支持され、前記弁座に接離して前記通気孔を開閉する弁部材と、
該弁部材を前記弁座に近接する方向に付勢して、常時は前記通気孔を閉じる付勢手段と、
前記ケース内部空間の圧力によって、前記付勢手段の付勢力に抗して、前記弁部材が前記弁座から離反して前記通気孔を開いていく途中で、前記付勢手段の付勢力を減少させる、付勢力降下手段とを有していることを特徴とする蓄電デバイス用圧力解放弁。
【請求項2】
前記付勢手段は、第1付勢手段と第2付勢手段とを有しており、
前記付勢力降下手段は、前記第2付勢手段の付勢力が減少するように構成されている請求項1記載の蓄電デバイス用圧力解放弁。
【請求項3】
前記弁部材は、前記弁座に接離する弁体と、該弁体を、前記ベース部材にスライド可能に支持する支軸とを有しており、
前記付勢手段は、前記支軸に対して交差する方向にスライドし、前記支軸を押圧する押圧部材を有しており、
前記付勢力降下手段は、前記支軸と前記押圧部材との間に設けられたカム機構であり、
該カム機構は、前記支軸又は前記押圧部材の一方に形成されたカム面と、前記支軸又は前記押圧部材の他方に形成されたカム当接部とからなり、前記押圧部材の押圧力を、前記弁体が前記弁座に近接する方向への付勢力に変換するように構成されており、
前記弁部材が前記弁座から離反して前記通気孔を開いていく途中で、前記弁体が前記弁座に近接する方向への付勢力が減少するように、前記カム面の、前記押圧部材のスライド方向に対する角度が変化する請求項1又は2記載の蓄電デバイス用圧力解放弁。
【請求項4】
前記カム面は、前記支軸の軸方向に平行な平行面を有しており、
前記弁部材が前記弁座から最大限離反した状態において、前記カム当接部が前記平行面に圧接されるように構成されている請求項3記載の蓄電デバイス用圧力解放弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスが収容されるケースに取付けられて、ケース内圧が所定値以上に高まった際に、ケース内の圧力を解放する、蓄電デバイス用圧力解放弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド車や電気自動車には、バッテリーやコンデンサ等の蓄電デバイスが用いられるが、これらの蓄電デバイスは、車両内に設置されたケース内に収容配置される。そして、蓄電デバイスが、例えば、リチウムイオン電池等のバッテリーの場合、電解液の化学反応でガスが生じて、ケース内の圧力が上昇する場合がある。この場合、ケース内の圧力を低下させるための圧力解放弁が、ケース開口に取付けられることがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、筐体に設置されその内圧を調圧するものであって、内圧が一定圧力以上で筐体のガスを排出して調圧する調圧部と、筐体に接して調圧部を密封状態に維持するカバー部とを備える、調圧弁が記載されている。
【0004】
調圧部は、筐体の開口部に取付けられるベース部を有しており、該ベース部は、開口部内に挿入されて固定される脚部と、その内側に設けられた軸受部と、脚部の先端外周から突出した弁座部とを有している。また、カバー部は、その裏側中央から軸部が突出しており、該軸部は、ベース部の軸受部内に挿入されている。その結果、カバー部は、ベース部に対してスライド可能となっている。更に、軸部外周にはスプリングが外装されており、カバー部が弁座部に当接する方向に付勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の調圧弁の場合、カバー部は、スプリングにより、弁座部に当接する方向に付勢され、ベース部の開口部を閉じている。そのため、筐体内の圧力が上昇して、カバー部が、スプリングの付勢力に抗して弁座部から離れ、ベース部の開口部が一旦開いた後に、筐体内の圧力がスプリングの付勢力よりも低下すると、スプリングによって、再度カバー部が付勢されて、ベース開口部が閉じられてしまうことになり、ガスを筐体内から排気するのに、時間がかかっていた。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ケース内部空間に生じた気体を迅速に排気することができる、蓄電デバイス用圧力解放弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、蓄電デバイスが収容されるケースに取付けられる、蓄電デバイス用圧力解放弁であって、前記ケースに固定され、ケース内部空間及びケース外部空間を連通させる通気孔、及び、該通気孔の周縁部に設けられた弁座を有する、ベース部材と、前記ベース部材にスライド可能に支持され、前記弁座に接離して前記通気孔を開閉する弁部材と、該弁部材を前記弁座に近接する方向に付勢して、常時は前記通気孔を閉じる付勢手段と、前記ケース内部空間の圧力によって、前記付勢手段の付勢力に抗して、前記弁部材が前記弁座から離反して前記通気孔を開いていく途中で、前記付勢手段の付勢力を減少させる、付勢力降下手段とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケース内部空間の圧力が高まると、付勢手段の付勢力に抗して、弁部材がベース部材の弁座から離反して、通気孔が開き、ケース内部空間のガス等の気体がケース外部空間へと排気される。この際、弁部材が弁座から離反して開いていく途中で、付勢力降下手段により、付勢手段の付勢力が減少するので、弁部材を開いた状態に維持しやすくでき、ケース内部空間の気体をケース外部空間へと迅速に排気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第1実施形態を示す分解斜視図である。
【
図2】同蓄電デバイス用圧力解放弁の、各部材を組付けた状態の斜視図である。
【
図3】同蓄電デバイス用圧力解放弁を構成するベース本体の平面図である。
【
図5】同蓄電デバイス用圧力解放弁を構成するシール部材の平面図である。
【
図7】同蓄電デバイス用圧力解放弁を構成する弁部材の正面図である。
【
図8】同弁部材について、
図1のD-D矢視線における断面図である。
【
図9】
図9Aは、蓄電デバイス用圧力解放弁を構成する支持部材の平面図、
図9Bは、
図9AのE-E矢視線における断面図である。
【
図11】同蓄電デバイス用圧力解放弁の組付け工程を示す説明図である。
【
図12】同蓄電デバイス用圧力解放弁において、弁部材が閉じた状態の断面説明図である。
【
図13】
図12に示す状態から、弁部材が開いた際の断面説明図である。
【
図14】
図13に示す状態から、弁部材が更に開いた際の断面説明図である。
【
図15】本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第2実施形態を示しており、弁部材が閉じた状態の断面説明図である。
【
図16】
図15に示す状態から、弁部材が開いた際の断面説明図である。
【
図17】本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第3実施形態を示しており、弁部材が閉じた状態の断面説明図である。
【
図18】
図17に示す状態から、弁部材が開いた際の断面説明図である。
【
図19】本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第4実施形態を示しており、弁部材が閉じた状態の断面説明図である。
【
図20】
図19に示す状態から、弁部材が開いた際の断面説明図である。
【
図21】
図20に示す状態から、第1ばね支持部材から第2ばね支持部材が外れた状態の断面説明図である。
【
図22】
図21に示す状態から、弁部材が更に開いた際の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(蓄電デバイス用圧力解放弁の第1実施形態)
以下、
図1~14を参照して、本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第1実施形態について説明する。
【0012】
図12~14に示すように、この蓄電デバイス用圧力解放弁10(以下、単に「解放弁10」ともいう)は、図示しない蓄電デバイスが収容されるケース1に取付けられて、ケース内の圧力が上昇したときに、その圧力を解放(低下)させるためのものである。
【0013】
上記蓄電デバイスとしては、例えば、プラグインハイブリッド車を含むハイブリッド車や、電気自動車等に用いられる、バッテリー(リチウムイオンバッテリー等)、コンデンサ、キャパシタなどが挙げられるが、蓄電可能なデバイスであれば、特に限定されない。
【0014】
また、
図12に示すように、ケース1にはケース開口3が形成されている。更に
図12~14に示すように、ケース1の内部空間が、ケース内部空間R1をなしており(図中、上方の空間)、ケース1の外部空間が、ケース外部空間R2をなしている(図中、下方の空間)。
【0015】
図1や
図12に示すように、この実施形態における解放弁10は、ケース1に固定され、ケース1に形成されたケース開口3と共に、ケース内部空間R1及びケース外部空間R2を連通させる通気孔22、及び、通気孔22の周縁部に設けられた弁座45を有する、ベース部材15と、ベース部材15にスライド可能に支持され、弁座45に接離して通気孔22を開閉する弁部材50と、弁部材50を弁座45に近接する方向に付勢して、常時は通気孔22を閉じる付勢手段と、ケース内部空間R1の圧力によって、付勢手段の付勢力に抗して、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開いていく途中で、付勢手段の付勢力を減少させる、付勢力降下手段とを有している。
【0016】
また、この実施形態の解放弁10は、
図1に示すように、略四角枠状をなした支持部材70と、該支持部材70にスライド可能に支持される押圧部材80とを有している。
【0017】
更に、上記付勢手段は、第1付勢手段と第2付勢手段とを有している。この実施形態の場合、線材を所定ピッチで巻回してなる第1コイルばねS1,第2コイルばねS2を有しており(
図1参照)、第1コイルばねS1が「第1付勢手段」をなしている。また、第2コイルばねS2と、上記押圧部材80とが、「第2付勢手段」を構成している。
【0018】
また、この実施形態におけるベース部材15は、ベース本体20と、該ベース本体20に装着されるシール部材40とからなる。
【0019】
まず、
図1,3,4,11等を参照して、ベース本体20について説明する。
【0020】
この実施形態におけるベース部材15は、略円筒状をなした周壁21と、該周壁21の軸方向の基端部外周から径方向外方に向けて広がる環状をなしたフランジ部23とを有している。周壁21は、ケース1のケース開口3の内側(ケース内部空間R1側)から挿入されて、ケース開口3の外側開口から挿出され、フランジ部23は、ケース1のケース開口3の、ケース内部空間R1側の周縁(以下、単に「ケース開口3の内部側周縁」ともいう)に当接して配置される(
図12参照)。また、周壁21の内側の空間が、通気孔22をなしている(
図4参照)。更に、周壁21の軸方向の先端部21aの外周には、環状の凹状をなした係止凹部21bが形成されている。
【0021】
また、ベース本体20の周壁21の内側には、周壁21の軸方向に沿って延びる(通気孔22の開口方向に沿って延びる)略四角枠状をなした第1支持枠25が、複数のリブ24を介して配置されている(
図1参照)。この第1支持枠25は、その内部に弁部材50の支軸53が挿入されて、同支軸53を軸方向にスライド可能に支持する(
図12~14参照)。また、この第1支持枠25は、その底部側(周壁21の先端部21a側)が、周壁21の先端部21aよりもやや軸方向内側に配置されていると共に、周壁21の基端部側から所定長さ突出している(
図4参照)。
【0022】
また、第1支持枠25は、互いに平行配置された一対の側壁26,26と、該一対の側壁26,26の正面側であって周壁21の先端部21a側に配置される正面壁27と、一対の側壁26,26の背面側であって周壁21の先端部21a側に配置された背面壁28とから構成されている。更に、第1支持枠25の天井側には、天井開口25aが設けられている。また、正面壁27側には、正面開口27aが設けられており、背面壁28側には、背面開口28aが設けられている。更に
図4に示すように、背面壁28の上端からは、支持壁28bが背面側(後述の第2支持枠30側)に延設されており、該支持壁28bは、支持部材70の支持部分の一つとなっている(
図12参照)。
【0023】
上記第1支持枠25の背面側には、第2支持枠30が連設されている。この第2支持枠30は、前記第1支持枠25に対して交差して(ここでは直交)横向き(周壁21の軸方向に交差する向き)に延びる略四角枠状をなしている。この第2支持枠30は、その内部に、支持部材70が挿入されて、同支持部材70が支持されるようになっている。
【0024】
また、第2支持枠30は、互いに平行配置された一対の側壁31,31と、該一対の側壁31,31の上端どうしを連結する天井壁32とからなり、正面側が開口すると共に、背面側に、矩形孔状の背面開口33を設けた形状となっている。
図4に示すように、天井壁32には、矩形孔状の天井開口32аが形成されており、また、
図3,4に示すように、前記背面開口33の、フランジ部23側の内周縁部には、凹状の係止凹部33аが形成されている。そして、
図12に示すように、支持部材70の一方の係止爪75が、天井開口32аの内周縁に係止し、他方の係止爪75が係止凹部33аに係止するようになっている。更に
図3,4に示すように、上記係止凹部33аに隣接した位置であって、周壁21の内周からは、支持リブ34が設けられており、該支持リブ34は、前記支持壁28bと共に、支持部材70を支持する(
図12参照)。
【0025】
次に、
図1,5,7,11等を参照して、ベース本体20に装着されるシール部材40について説明する。
【0026】
このシール部材40は、例えば、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料から形成されるものであって、略円筒状をなし、ベース本体20の周壁21の外側に配置される、周壁41を有している。この周壁41の軸方向の先端部41аの内側には、周方向に均等な間隔をあけて複数(ここでは4個)の係止突部41bが突設されており、これらの係止突部41bが、ベース本体20の周壁21の係止凹部21bに係止することで、ベース本体20にシール部材が外装されるようになっている(
図11参照)。
【0027】
また、周壁41の軸方向の基端部側の外周には、段状をなした係止段部43が設けられており、更に、周壁41の基端部外周からは、径方向外方に広がるフランジ部44が延設されている。そして、
図12に示すように、フランジ部44が、ケース1のケース開口3の内部側周縁に、内側周縁部に弾性的に当接すると共に、係止段部43が、ケース開口3の、ケース外部空間R2側の周縁(以下、単に「ケース開口3の外部側周縁」ともいう)に係止することで、シール部材40がケース開口3に固定され、ひいてはベース部材15を介して、解放弁10全体がケース1に取付けられるようになっている。
【0028】
なお、フランジ部44は、解放弁10がケース1に取付けられた状態で、ベース本体20のフランジ部23とケース1との間に配置され(
図12参照)、フランジ部23とケース1との隙間をシールする。
【0029】
また、周壁41の先端部41аの先端面からは、環状突起状をなした弁座45が突設されている(
図6参照)。この弁座45は、ベース本体20にシール部材40が装着された状態で、ベース本体20の通気孔22の外周縁部に位置する。そして、弁座45に、弁部材50が接離することで、ベース本体20の通気孔22が開閉するようになっている。
【0030】
次に、
図1,7,8,11等を参照して、弁部材50について説明する。
【0031】
この弁部材50は、弁座45に接離する弁体51と、該弁体51を、ベース部材15にスライド可能に支持する支軸53とを有している。この実施形態の弁体51は、略円形板状をなしており、その外周縁部51аよりも内径側であって、内面(ベース部材15側に向く面)からは、隆起部51bが隆起している。なお、弁体51の外周縁部51аが、弁座45に接離する部分となっている(
図12~14参照)。
【0032】
また、弁体51の隆起部51bの内面中央部から、支軸53が突出している。この支軸53は、互いに平行に長板状に延びる一対の側壁54,54と、一対の側壁54,54の正面側であって側壁54の軸方向先端部側に配置された正面壁55と、一対の側壁54,54の背面側であって側壁54の軸方向先端部側に配置された第1背面壁56と、一対の側壁54,54の軸方向基端部に配置された天井壁57とを有している。
【0033】
上記支軸53は、ベース部材15を構成するベース本体20の第1支持枠25内にスライド可能に挿入されて、同第1支持枠25によってスライド支持されるようになっている。また、
図1に示すように、支軸53の各角部には、支軸53の軸方向に沿って延びる、複数のガイド突条53аが突設されている。これらのガイド突条53аが、ベース本体20の第1支持枠25の内周に摺接可能とされており、支軸53のスライドガイドをなしている。
【0034】
更に、一対の側壁54,54の軸方向途中であって、正面壁55及び背面壁56の上端には、支軸53の軸方向に直交した連結壁58が配置されており、該連結壁58を介して、各壁54,55,56が連結されて(
図8参照)、支軸53の剛性向上が図られている。更に
図12に示すように、連結壁58は、支持部材70の板状部74の厚さ方向一端面側に近接配置されるようになっており、支軸53の過度のスライド移動を規制する役割も果たす。
【0035】
また、正面壁55側には、略長孔状をなした正面開口55аが設けられており、この正面開口55аから、支軸53内に、第1コイルばねS1を挿入配置可能となっている(
図11参照)。
図12に示すように、第1コイルばねS1は、軸方向の一端部(下端部)が、支持部材70の板状部74に当接し、軸方向の他端部(上端部)が、上記天井壁57に当接して、圧縮された状態でもって、支軸53の軸方向に沿った姿勢で支持されるようなっている(縦向きに支持される)。その結果、弁部材50は、第1コイルばねS1によって、ベース部材15の弁座45に近接する方向に付勢されて、常時はベース部材15の通気孔22を閉じるようになっている。すなわち、第1コイルばねS1の付勢力F1によって、弁体51が弁座45に近接する方向に付勢されて、弁体51が弁座45に当接して通気孔22を閉塞するようになっている。
【0036】
更に
図1,8に示すように、天井壁57の背面側縁部からは、支軸53の軸方向先端部側に向けて、第2背面壁59が延設されている。この第2背面壁59は、その幅方向両側が一対の側壁54,54に連結されている。また、第2背面壁59は、第1背面壁56よりも、支軸53の径方向内側寄りに配置されており、支軸53の軸方向に平行に延びている。
【0037】
更に
図1,7に示すように、第2背面壁59の延出方向先端であって、その幅方向両側からは、二股状をなした一対のカム当接部60,60が延設されている。このカム当接部60と、後述する押圧部材80に設けたカム面87(
図10参照)とが、付勢力降下手段をなす「カム機構」となっている。これについては後で詳述する。なお、各カム当接部60の幅方向外側は、側壁54の内面に連結されている。更に、第2背面壁59から延出した一対のカム当接部60,60と、連結壁58と、一対の側壁54,54との間には、押圧部材80が入り込んだり抜き出たりする(出没する)、カム出没口61が設けられている。
【0038】
また、第2背面壁59の延出方向の先端面であって、一対のカム当接部60,60の間は、ストッパー面59aをなしている。このストッパー面59aは、支持部材70の板状部74に当接可能となっており、弁部材50が弁座45からの最大限開いたときに当接して、弁部材50がそれ以上開くことを規制する。
【0039】
図8に示すように、各カム当接部60は、第2背面壁59の先端面から延びる基部60аと、該基部60аに連設されると共に、支軸53の正面壁55側に屈曲した形状をなした屈曲部60bとを有している。そして、各カム当接部60の外面(背面壁56,59の外面寄りの面)が、押圧部材80のカム面87が当接して押圧される部分をなしている。
図8,12に示すように、各カム当接部60の外面は、支軸53の軸方向に平行な平行面60cと、該平行面60cよりも支軸53の軸方向先端部側に配置され、支軸53の正面壁55側に向けて所定角度で傾斜した傾斜面60dと、両面60c,60dとの間に配置され、両面60c,60dの角度を変化させる、円弧状に丸みを帯びた形状をなす変曲部60eとから構成されている。
【0040】
また、
図7,8に示すように、第2背面壁59の幅方向中央であって、その内面側には、薄肉板状のばね支持リブ62が突設している。
図12に示すように、ばね支持リブ62は、支軸53内に収容支持された第1コイルばねS1の外周に隣接配置されて、同第1コイルばねS1の傾きを抑制して姿勢を安定させる。
【0041】
次に、
図1,9,11等を参照して、支持部材70について説明する。
【0042】
この支持部材70は、ベース本体20の第2支持枠30内に挿入配置されるものである。また、この支持部材70は、第2支持枠30の背面開口33に適合する外形状でもって所定長さで延びる略四角筒状の周壁72と、その背面側を閉塞する背面壁73とからなり、全体として正面側が開口した略四角箱状をなした本体71を有している。この本体71の内部には、第2コイルばねS2が収容されると共に、押圧部材80がスライド可能に挿入されるようになっている。更に、本体71の周壁72の天井部側及び底部側には、略コ字状をなしたスリット75aを介して、撓み変形可能な係止爪75がそれぞれ形成されている。
【0043】
また、本体71の周壁72の底部側の正面からは、板状をなした板状部74が所定長さで延出している。この板状部74は、押圧部材80のスライドガイドをなすと共に、第1コイルばねS1の一端部を支持する。
【0044】
そして、支持部材70は、本体71が、背面開口33から第2支持枠30内に挿入され、一方の係止爪75が天井開口32aの内周縁に係止し、他方の係止爪75が係止凹部33aに係止することで、第2支持枠30内に固定される(
図12参照)。この状態で、板状部74は、第1支持枠25の背面開口28a、支軸53のカム出没口61、支軸53の内部空間を順次通過して、支軸53の正面開口55aから挿出されると共に、支軸53の天井壁57に対向配置されるようになっている(
図12参照)。なお、支持部材70は、その軸方向が、弁部材50の支軸53の軸方向に交差(ここでは直交)するように配置されている(
図12参照)。
【0045】
また、
図9Aに示すように、板状部74の延出方向途中であって、幅方向両側には、一対の切欠き74a,74aが形成されている。これらの切欠き74a,74aは、弁部材50が弁座45から開く際に、支軸53に設けた一対のカム当接部60,60を通過可能とする部分となっている。
【0046】
次に、
図1,10,12等を参照して、押圧部材80について説明する。
【0047】
この押圧部材80は、弁部材50の支軸53に対して交差する方向にスライドし、支軸53を軸方向に交差する方向から押圧して、弁部材50の弁体51を、ベース部材15の弁座45に近接する方向に付勢するものである。また、この押圧部材80には、支軸53を押圧するカム面87が設けられ、このカム面87は、変曲部87cを介して、押圧部材80のスライド方向に対する角度が変化する面を有している。
【0048】
具体的に説明すると、この実施形態における押圧部材80は、支持部材70内にスライド可能に挿入される本体81を有している。この本体81は、支持部材70の本体71に適合する形状をなしており、具体的には、一対の側壁82,82と、該一対の側壁82,82の底部側に配置された底壁83と、一対の側壁82,82の天井部側に配置された天井壁84と、各壁82,83,84の正面側に配置された正面壁85とからなり、背面側が開口した略四角箱状を呈している。
【0049】
上記本体81と、支持部材70の本体71との間には、第2コイルばねS2が介装されている。具体的には、
図11に示すように、第2コイルばねS2は、軸方向の一端部(図中、右側の端部)が、支持部材70の本体71の背面壁73に当接し、軸方向の他端部(図中、左側の端部)が、本体81の正面壁85に当接して、圧縮された状態でもって、弁部材50の支軸53の軸方向に直交した姿勢で支持されるようになっている(横向きに支持される)。また、押圧部材80は、支持部材70の軸方向に沿ってスライドするように、すなわち、弁部材50の支軸53の軸方向に対して交差する方向(ここでは直交する方向)にスライドするように構成されている(
図12~14参照)。更に
図12の矢印Mで示すように、、押圧部材80と支持部材70との間に圧縮状態で介装された第2コイルばねS2の付勢力によって、押圧部材80は、支持部材70の本体71の背面壁73から離反する方向(支軸53に近接する方向とも言える)に付勢されるようになっている。
【0050】
また、本体81の正面壁85側には、カム形成突部86が連設されている。
図10Bに示すように、このカム形成突部86は、正面壁85の、天井壁84側の部分から、底壁83側に向けて斜め外方に突出した傾斜部分86aと、該傾斜部分86aの先端側に設けられた先端部分86bとからなる。
【0051】
そして、上記のカム形成突部86に、上記カム面87が設けられている。このカム面87は、ベース部材15のカム出没口61に入り込んだり抜き出たりして、カム出没口61に対して出没可能となっている。
【0052】
この実施形態の場合、弁部材50の支軸53に設けた一対のカム当接部60,60に対応して、カム形成突部86の外面側であって、その幅方向両側部に、薄肉突起状をなした一対のカム突起が突設されており、各カム突起の外面に、カム面87がそれぞれ設けられている。
図10Bに示すように、各カム面87は、押圧部材80のスライド方向(
図12に示す付勢力Mに沿った方向)に対して所定角度で傾斜した(ここでは鋭角)第1カム面87aと、該第1カム面87aよりも押圧部材80の軸方向先端部側に配置され、押圧部材80のスライド方向に対して、第1カム面87aよりも大きな角度とされた(ここでは90°)第2カム面87bと、両面87а,87bとの間に配置され、両面87а,87bの角度を変化させる、円弧状に丸みを帯びた形状をなす変曲部87cとから構成されている。上記の第1カム面87aと第2カム面87bとが、「変曲部を介して押圧部材のスライド方向に対する角度が変化する面」をなしている。
【0053】
なお、第1カム面87aの、スライド方向に対する角度は、支軸53のカム当接部60の傾斜面60dの傾斜角度に適合する角度で形成されており、カム面87を設けたカム突起がカム出没口61内に入り込んだときに、第1カム面87aと、傾斜面60dとが密接するようになっている(
図12参照)。また、上記の一対のカム面87,87は、弁部材50の支軸53の対応する一対のカム当接部60,60にそれぞれ当接して、これを押圧する部分となっている(その際の作用については後述する)。
【0054】
更に
図1に示すように、押圧部材80の外周の角部(本体81及びカム形成突部86を含めた部分)には、押圧部材80の軸方向に沿って延びる、複数のガイド突条88が突設されている。これらのガイド突条88が、支持部材70の本体71の内周に摺接可能とされており、押圧部材80のスライドガイドをなしている。
【0055】
そして、この解放弁10は、以下のようにして、付勢手段及び付勢力降下手段が構成されている。この実施形態の場合、付勢手段は、支軸53に対して交差する方向にスライドし、支軸53を押圧する押圧部材80を有しており、付勢力降下手段は、支軸53と押圧部材80との間に設けられたカム機構であり、このカム機構は、押圧部材80側に形成されたカム面87と、支軸53側に形成されたカム当接部60とからなり、押圧部材80の押圧力を、弁体51が弁座45に近接する方向への付勢力に変換するように構成されており、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開いていく途中で、弁体51が弁座45に近接する方向への付勢力が減少するように、カム面87の、押圧部材80のスライド方向に対する角度が変化するように構成されている。また、カム面87は、支軸53の軸方向に平行な平行面87eを有しており、弁部材50が弁座45から最大限離反した状態において、カム当接部60が平行面87eに圧接されるように構成されている(
図14参照)。
【0056】
すなわち、
図12に示すように、常時は(ケース1の内部空間R1の圧力が所定値以下の場合)、押圧部材80は、第2コイルばねS2の付勢力Mによって、支軸53に近接する方向に付勢されて、カム面57を設けたカム突起が、支軸53のカム出没口61内に入り込んで、各カム面87の第1カム面87aが、対応するカム当接部60の傾斜面60dに当接した状態となっている。この場合、
図12の部分拡大図に示すように、押圧部材80に付与されている第2コイルばねS2からの付勢力Mが、第1カム面87а及びカム当接部60の傾斜面60dによって斜め方向の付勢力F1´となる。なお、この付勢力F1´は、第1カム面87аと傾斜面60dとの当接箇所を起点として、第1カム面87а及びカム当接部60の傾斜面60dに直交する方向の力となっており、そのベクトル量は第2コイルばねS2のベクトル量と同一である。
【0057】
そして、この付勢力F1´は、支軸53の軸方向に直交する方向(水平方向)の分力F2と、支軸53の軸方向に沿った方向(鉛直方向)の分力F3とに分解される。すなわち、第2コイルばねS2の横向き(水平方向)の付勢力Mが、カム機構を介して斜め方向の付勢力F1´となり、更にこの付勢力F1´が分解されて、弁部材50を弁座45に近接させる方向の付勢力である、縦向き(鉛直方向)の付勢力(分力F3)に変換される。また、弁部材50の支軸53には、第1コイルばねS1による支軸53の軸方向に沿った付勢力F1(弁部材50を弁座45に近接させる方向の付勢力)も付与されている。
【0058】
したがって、
図12に示される状態では、弁部材50の支軸53には、第1コイルばねS1からの付勢力F1と、支軸53のカム当接部60及び押圧部材80のカム面87(カム機構)を介して作用する第2コイルばねS2の付勢力F1´の分力F3との合力(以下、「弁部材閉じ力」ともいう)によって、弁部材50が通気孔22を閉じる方向に付勢されて、弁体51が弁座45に当接して、通気孔22を閉塞するようになっている。
【0059】
上記の
図12に示す状態で、ケース内部空間R1の圧力が上昇して、弁部材閉じ力を超えると、弁部材50の弁体51が、弁部材閉じ力に抗して、弁座45から離反する方向に移動していく。すると、支軸53側のカム当接部60の傾斜面60dによって、カム面87の第1カム面87aが下向きに押圧されて、押圧部材80が第2コイルばねS2の付勢力F1´に抗して、支軸53から離反する方向にスライド移動する。それによって、
図13に示すように、カム当接部60の変曲部60eとカム面87の変曲部87cとが摺接しつつ、カム面87を設けたカム形成突起が、支軸53のカム出没口61から抜け出る。
【0060】
すると、
図13に示すように、押圧部材80に付与されている第2コイルばねS2からの付勢力Mが、カム当接部60の変曲部60eとカム面87の変曲部87cとの当接箇所を起点として、同当接箇所の図示しない接線に直交する斜め方向の付勢力F1´となる。なお、カム当接部60の変曲部60eとカム面87の変曲部87cとの当接箇所は、カム当接部60の変曲部60eの頂部(平行面60c及び傾斜面60dの端部どうしが交わる境界部分)と、カム面87の変曲部87cの頂部(両カム面87а,87bの端部どうしが交わる境界部分)となっている。
【0061】
この際、
図13に示す付勢力F1´の、押圧部材80のスライド方向に対する傾斜角度は、
図12に示す付勢力F1´の、押圧部材80のスライド方向に対する傾斜角度よりも小さい(
図13の付勢力F1´の方が、
図12の付勢力F1´よりも鋭角)。また、
図13に示す付勢力F1´は、支軸53の軸方向に直交する方向の分力F2と、支軸53の軸方向に沿った方向の分力F3とに分解されるが、上記のように、
図13に示す付勢力F1´の傾斜角度が、
図12に示す付勢力F1´の傾斜角度よりも小さい関係から、
図13に示す分力F3は、
図12に示す分力F3よりも小さくなる。
【0062】
したがって、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開く途中で、第1コイルばねS1からの付勢力F1は維持されるものの、カム機構を介して作用する、第2コイルばねS2の付勢力F1´の分力F3が減少するので、上記の弁部材閉じ力が降下するようになっている。
【0063】
図13に示す状態から、更にケース内部空間R1の圧力が上昇すると、カム面87の変曲部87cを超えて、
図14に示すように、カム面87の第2カム面87bが、支軸53のカム当接部60の平行面60cに圧接された状態となると共に、弁部材50の弁体51が、弁座45から更に離れる。
【0064】
この状態では、
図12に示す状態と同様に、第1コイルばねS1からの付勢力F1は維持されるものの、支軸53の軸方向に沿って平行なカム当接部60の平行面60cとカム面87の第2カム面87bとが圧接されているため、押圧部材80に付与されている第2コイルばねS2からの付勢力Mは、そのまま支軸53の軸方向に直交する方向の付勢力F1´となり、
図12,13のような分力は生じない。
【0065】
したがって、この場合は、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開く途中で、第1コイルばねS1からの付勢力F1は維持されるものの、カム機構を介して作用する、第2コイルばねS2の付勢力F1´の分力F3が消失し、カム面87の第2カム面87bとカム当接部60の平行面60cとの圧接による摩擦力のみが作用するだけの状態となるため、上記の弁部材閉じ力は降下するようになっている。
【0066】
すなわち、この実施形態の場合、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開いていく途中で、弁体51が弁座45に近接する方向への付勢力を減少するように、カム面87の、押圧部材80のスライド方向に対する角度が変化する(第1カム面87aから、変曲部87cを介して第2カム面87bへと変化する)構成となっている。また、この実施形態の場合、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開いていく途中で、カム面87の、支軸53を押圧する面が、変曲部87cを介して変化する(第1カム面87aから、変曲部87cを介して第2カム面87bへと変化する)と共に、カム当接部60の、カム面87から押圧力を受ける面が、変曲部60eを介して変化して(傾斜面60dから、変曲部87cを介して平行面60cへと変化する)、弁体51が弁座45に近接する方向への付勢力を減少させるように構成されている。更に、押圧部材80は、そのスライド時にカム面87の変曲部87cを超えると、その超えた位置の面(第2カム面87b)が、支軸53の平行面60cに圧接されるように構成されている。
【0067】
なお、弁体51は、ストッパー面59aが、支持部材70の板状部74に当接するまで、弁座45から離反可能となっており、ストッパー面59aが板状部74に当接した位置が、弁部材50が弁座45から最大限開いた状態となる(第1コイルばねS1が存在しないとき)。ただし、この実施形態では、第1コイルばねS1を備えるので、
図14に示すように、第1コイルばねS1が最大限圧縮されて、変形の余地がなくなったとき(線材間が互いに当接したとき)が、弁部材50が弁座45から最大限開いた状態となる。
【0068】
上記のように、この解放弁10は、弁部材50を弁座45に近接する方向に付勢して、常時は通気孔22を閉じる付勢手段と、ケース1内の圧力によって、付勢手段の付勢力に抗して、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開いていく途中で、付勢手段の付勢力を減少させる、付勢力降下手段とを有しているが、この実施形態における付勢手段は、第1付勢手段(第1コイルばねS1)と第2付勢手段(第2コイルばねS2及びその付勢力Mを変換するカム機構)とを有しており、付勢力降下手段は、弁部材50が弁座45から開いていく途中で、第2付勢手段の付勢力が減少するように構成されている(ここでは、カム機構を介して変換される、第2コイルばねS2の付勢力F1´の分力F3が減少又は消失する構成となっている)。
【0069】
なお、上記のように、押圧部材80は、第2付勢手段である第2コイルばねS2の付勢力F1´を、弁部材50を弁座45に近接する方向の付勢力(分力F3)へと変換するものであり、第2付勢手段の一部をなしているが、同時に付勢力降下手段の一部ともなっており、押圧部材80は付勢手段と付勢力降下手段とを兼ねている、とも言える。
【0070】
(変形例)
以上説明した実施形態では、ケース開口3は丸穴状をなしているが、ケース開口としては、矩形や、角形、楕円形等をなしていてもよく、解放弁を取付け可能な形状であればよい。
【0071】
また、圧力解放弁を構成する、ベース部材、ベース本体、シール部材、弁部材、支持部材、押圧部材等の、形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。
【0072】
例えば、ベース本体20やシール部材40の周壁21,41は、略円筒状をなしているが、この部分としては、楕円筒状や、角筒状等であってもよい。また、弁部材50の弁体51は、上記のベース本体20やシール部材40の周壁21,41の形状に対応して、その外周が円形状をなしているが、弁体としては、例えば、楕円形状や、角形状等であってもよく、弁座に接離して、通気孔を開閉可能な形状であればよい。
【0073】
更に、この実施形態では、ベース本体20とシール部材40とは別体とされているが、例えば、両部材を二色成形等によって一体形成してもよい。
【0074】
また、この実施形態では、支軸53側にカム当接部60を設け、押圧部材80側にカム面87を設け、これらをカム機構としたが、支軸側にカム面を設け、押圧部材側にカム当接部を設けて、これらをカム機構としてもよい(これについては第2実施形態で説明する)。更に、この実施形態では、支軸53側に一対のカム当接部60,60を設け、押圧部材80側に一対のカム突起を形成してカム面87,87を設けて、これらが互いに当接するように構成したが、これらのカム当接部や、カム突起及びカム面は、1個でもよく、3個以上であってもよい。また、カム当接部60は、平行面60c、傾斜面60d、変曲部60eを有し、カム面87は、第1カム面87а、第2カム面87b、変曲部87cを有しているが、カム当接部やカム面の形状は、これらに限定されない。例えば、カム面を傾斜角度の異なる複数の傾斜面としたり(これについては第2実施形態で説明する)、カム当接部を傾斜面や平行面からなる形状としたり(これについては第3実施形態で説明する)、更には、カム面やカム当接部を複数の円弧状面の組み合わせ等としたりしてもよい。
【0075】
また、この実施形態における付勢手段は、第1コイルばねS1と、第2コイルばねS2及びその付勢力の向きを変換する押圧部材80とからなるが、コイルばねを1個だけ用いたり(これについては第2実施形態で説明する)、複数のコイルばねと、押圧部材ではない部材との組み合わせとしたり(これについては第4実施形態で説明する)してもよく、特に限定されない。更に、付勢力降下手段の形状や構造等についても、特に限定はされない。なお、この実施形態における付勢力降下手段は、弁部材の開き途中で、第2コイルばねの付勢力を減少させ且つ消失させる構造となっているが(複数のコイルばねのうち、所定のコイルばねの付勢力を突如として消失させる構造)、例えば、複数のコイルばねのうち、所定のコイルばねの付勢力を徐々に降下させるような構造としてもよい。
【0076】
(作用効果)
次に、上記構成からなる本発明に係る解放弁10の作用効果について説明する。
まず、解放弁10の組付け工程について説明する。
【0077】
まず、支持部材70の本体71内に、第2コイルばねS2を挿入し、その一端部を背面壁73に当接支持させると共に、本体71の正面開口側から、押圧部材80を背面側から挿入して、第2コイルばねS2の他端部を、押圧部材80の正面壁85に当接支持させることで、支持部材70と、押圧部材80と、第2コイルばねS2とを組付ける(
図11参照)。
【0078】
その後、
図11の図中右側の矢印に示すように、支持部材70等からなる組立体を、板状部74から、ベース本体20の第2支持枠30の背面開口33に挿入して押し込む。すると、
図12に示すように、板状部74が、ベース本体20の第1支持枠25の背面開口28а、支軸53のカム出没口61、支軸53の内部空間を順次通過して、支軸53の正面開口55aから挿出されると共に、支持部材70の本体71が、背面開口33から第2支持枠30内に挿入され、一方の係止爪75が天井開口32aの内周縁に係止し、他方の係止爪75が係止凹部33aに係止して、上記の支持部材70等からなる組立体が、ベース部材15に抜け止め固定される。
【0079】
その後、
図11の図中左側の矢印に示すように、ベース本体20の第1支持枠25の正面開口27аから、第1コイルばねS1を挿入して、支軸53の正面開口55аを介して支軸53内に挿入し、
図12に示すように、第1コイルばねS1の一端部を、支持部材70の板状部74に当接支持させ、他端部を天井壁57に当接支持させることで、第1コイルばねS1が圧縮状態で保持されて、解放弁10を得ることができる。
【0080】
この状態では、押圧部材80の、カム面87を設けたカム突起がが、支軸53のカム出没口61内に入り込んで、各カム面87の第1カム面87aが、対応するカム当接部60の傾斜面60dに当接しており、その結果、
図12に示すように、弁部材50の支軸53に、第1コイルばねS1からの付勢力F1と、押圧部材80を介して作用する第2コイルばねS2の付勢力Mの分力F3との合力(弁部材閉じ力)が作用して、弁部材50が通気孔22を閉じる方向に付勢されて、弁体51が弁座45に当接して、通気孔22を閉塞されるようになっている。
【0081】
そして、蓄電デバイスによる、駆動源や電装部品への電力供給や、蓄電デバイスが収容されたケース1の外部環境や内部環境等によって、蓄電デバイスを起因として、ケース内に気体が生じる(例えば、リチウムイオンバッテリー等の蓄電デバイスが、モータ等の駆動によって電力を供給すると、電解液の化学反応でガスが生じる)と、以下のように動作する。
【0082】
すなわち、ケース1の内部空間R1の圧力が上昇して、弁部材閉じ力を超えると、弁部材50の弁体51が、弁部材閉じ力に抗して、弁座45から離反する方向に移動する。その結果、弁体51が開くので、開口した通気孔22からガス等の気体を、ケース外部空間R2へと排気することができる(
図13参照)。また、弁体51が弁座45から離反する方向に移動すると、それに伴って、カム当接部60を介して押圧部材80が押圧されて、同押圧部材80が第2コイルばねS2の付勢力Mに抗して、支軸53から離反する方向にスライド移動し、
図13に示すように、カム面87を設けたカム突起が、支軸53のカム出没口61から抜け出る。その結果、支軸53には、第1コイルばねS1による付勢力F1のみが作用して、カム機構経由の第2コイルばねS2の付勢力F1´の分力F3が、
図12に示す分力F2よりも小さくなり、弁部材閉じ力が降下する。
【0083】
図13に示す状態から、更にケース内部空間R1の圧力が上昇すると、カム面87の変曲部87cを超えて、
図14に示すように、カム面87の第2カム面87bが、支軸53のカム当接部60の平行面60cに圧接された状態となると共に、弁部材50の弁体51が、弁座45から更に離れる。その結果、
図12に示す状態と同様に、第1コイルばねS1からの付勢力F1は維持されるものの、カム機構経由の第2コイルばねS2の付勢力F1´の分力F3は消失し、カム面87の第2カム面87bとカム当接部60の平行面60cとの圧接による摩擦力のみが作用した状態となり、弁部材閉じ力は降下する。また、弁体51の、弁座45に対する開き量が、
図13の場合よりも大きくなるので(
図14参照)、通気孔22からの気体の、ケース外部空間R2への排気量を増大させることができる。
【0084】
このように、この解放弁10においては、ケース内部空間R1の圧力が高まると、付勢手段の付勢力に抗して、弁部材50がベース部材15の弁座45から離反して、通気孔22が開き、ケース内部空間R1の気体がケース外部空間R2へと排気されるが、この際、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開いていく途中で、付勢力降下手段によって、付勢手段の付勢力が減少するので、弁部材50を開いた状態に維持しやすくでき、ケース内部空間R1の気体をケース外部空間R2へと迅速に排気することができる。その結果、ケース内部空間R1の圧力を速やかに低減することができる。
【0085】
また、この実施形態においては、
図12に示すように、付勢手段は、第1付勢手段(ここでは第1コイルばねS1)と第2付勢手段(ここでは第2コイルばねS2及び押圧部材80)とを有しており、付勢力降下手段は、前記第2付勢手段の付勢力が減少するように構成されている。
【0086】
上記態様によれば、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開いていく途中で、第2付勢手段の付勢力が減少することにより、付勢手段全体の付勢力(上記の弁部材閉じ力)を減少させることができる。
【0087】
更に、この実施形態においては、弁部材50は、弁座45に接離する弁体51と、弁体を51、ベース部材15にスライド可能に支持する支軸53とを有しており、付勢手段は、支軸53に対して交差する方向にスライドし、支軸53を押圧する押圧部材80を有しており、付勢力降下手段は、支軸53と押圧部材80との間に設けられたカム機構であり、このカム機構は、押圧部材80側に形成されたカム面87と、支軸53側に形成されたカム当接部60とからなり、押圧部材80の押圧力を、弁体51が弁座45に近接する方向への付勢力に変換するように構成されており、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開いていく途中で、弁体51が弁座45に近接する方向への付勢力が減少するように、カム面87の、押圧部材80のスライド方向に対する角度が変化するように構成されている。
【0088】
上記態様によれば、常時は、押圧部材80が、弁部材50の支軸53を軸方向に交差する方向から押圧して、弁体51が弁座45に近接する方向に付勢して、ベース部材15の通気孔22を閉じており、ケース内部空間R1の圧力が高まり、弁部材50の弁体51が気体の圧力を受けると、付勢手段の付勢力に抗して、押圧部材80をスライドさせながら、弁部材50がベース部材15の弁座45から離反して、通気孔22が開き、ケース内部空間R1のガス等の気体がケース外部空間R2へと排気される。
【0089】
このとき、上述したように、付勢力降下手段は、支軸53と押圧部材80との間に設けられたカム機構であり、このカム機構は、押圧部材80側に形成されたカム面87と、支軸53側に形成されたカム当接部60とからなり、押圧部材80の押圧力を、弁体51が弁座45に近接する方向への付勢力に変換するように構成され、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開いていく途中で、弁体51が弁座45に近接する方向への付勢力が減少するように、カム面87の、押圧部材80のスライド方向に対する角度が変化するように構成されているので、弁部材50の弁体51を開いた状態に維持しやすくできる。
【0090】
また、付勢力降下手段を、押圧部材80を利用して容易に設けることができると共に、機械的な構造である押圧部材80を用いて、付勢力降下手段を構成したので、付勢手段の付勢力降下を確実且つ安定して達成することができる(電磁アクチュエータ等を用いて、付勢力降下手段を構成することもできるが、車両の電気系統が不調・故障時に動作に支障をきたすおそれがある)。
【0091】
また、この実施形態においては、カム面87は、支軸53の軸方向に平行な平行面87eを有しており、弁部材50が弁座45から最大限離反した状態において、カム当接部60が平行面87eに圧接されるように構成されている(
図14参照)。
【0092】
上記態様によれば、
図14に示すように、弁部材50が弁座45から最大限離反した状態において、カム当接部60が平行面87eに圧接されるように構成されているので、弁部材50が弁座45から最大限離反した状態での、押圧部材80による、弁体51を弁座45に近接する方向への付勢力が消失するので(カム面87の第2カム面87bと、支軸53の平行面60cとの、摩擦力のみとなる)、弁部材50を閉じるために必要な最低限の閉じ力(ここでは第1コイルばねS1による付勢力F1と、上記摩擦力)だけを残して、弁部材50を開くことができ、弁部材50を弁座45開いた状態に、より維持しやすくできる。
【0093】
(蓄電デバイス用圧力解放弁の第2実施形態)
図15及び
図16には、本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0094】
この実施形態の蓄電デバイス用圧力解放弁10A(以下、単に「解放弁10A」ともいう)は、第1コイルばねS1を備えず、付勢手段及び付勢力降下手段の構造が、前記実施形態と異なっている。
【0095】
図15に示すように、この解放弁10Aにおいては、支軸53側にカム面が形成されており、押圧部材80側にカム当接部が形成されており、これらが「カム機構」を構成している。
【0096】
すなわち、弁部材50Aのカム面は、支軸53の正面壁55から、背面壁56の軸方向基端側(上端側)に向けて斜めに延びる第1カム面63と、該第1カム面63の延出方向先端から、背面壁56の軸方向基端側(上端側)に向けて、第1カム面63とは異なる角度で斜めに延びる第2カム面64とを有している。また、第2カム面64の、押圧部材80のスライド方向に対する傾斜角度は、第1カム面63の、押圧部材80のスライド方向に対する傾斜角度よりも大きく形成されている。言い換えると、第2カム面64の、支軸53の軸方向に対する傾斜角度は、第1カム面63の、支軸53の軸方向に対する傾斜角度よりも小さく形成されており、第2カム面64の方が、第1カム面63よりも急勾配となっている。
【0097】
一方、押圧部材80側には、その先端部にカム当接部89が設けられており、このカム当接部89の外面に、傾斜面89аが形成されている。
【0098】
そして、この実施形態における解放弁10Aは、以下のようにして、付勢手段及び付勢力降下手段を構成している。
【0099】
すなわち、
図15に示すように、常時は、押圧部材80は、第2コイルばねS2の付勢力Mによって、支軸53に近接する方向に付勢されて、カム当接部89が支軸53内に入り込んで、その傾斜面89аが、カム面の第1カム面63に当接した状態となっている。この場合、押圧部材80に付与されている第2コイルばねS2からの付勢力Mが、カム機構(カム当接部89の傾斜面89а及びカム面の第1傾斜面63)を介して、斜め方向の付勢力F1となる。
【0100】
この付勢力F1は、カム当接部89の傾斜面89аとカム面の第1カム面63との当接箇所を起点として、傾斜面89а及び第1カム面63に直交する力となり、また、この付勢力F1は、支軸53の軸方向に直交する方向(水平方向)の分力F2と、支軸53の軸方向に沿った方向(鉛直方向)の分力F3とに分解される。すなわち、第2コイルばねS2の横向き(水平方向)の付勢力Mが、カム機構を介して斜め方向の付勢力F1となり、更にこの付勢力F1が分解されて、縦向き(鉛直方向)の付勢力(分力F3)に変換される。
【0101】
そして、弁部材50の支軸53には、押圧部材80を介して作用する第2コイルばねS2の付勢力Mの分力F3(弁部材閉じ力)によって、弁部材50が通気孔22を閉じる方向に付勢されて、弁体51が弁座45に当接して、通気孔22が閉塞される。
【0102】
図15に示す状態で、ケース内部空間R1の圧力が上昇して、上記の弁部材閉じ力を超えると、弁部材50の弁体51が、弁部材閉じ力に抗して、弁座45から離反する方向に移動していく。すると、カム面の第1カム面63によって、カム当接部89の傾斜面89аが下向きに押圧されて、押圧部材80が第2コイルばねS2の付勢力F1に抗して、支軸53から離反する方向にスライド移動して、
図16に示すように、カム当接部89の傾斜面89が、カム面の第2カム面64に当接するようになる。
【0103】
この場合、
図16に示すように、押圧部材80に付与されている第2コイルばねS2からの付勢力Mが、カム当接部89の傾斜面89аと、カム面の第2カム面64との当接箇所を起点として、第2カム面64に直交する斜め方向の付勢力F1となる。
【0104】
この際、
図16に示す付勢力F1の、押圧部材80のスライド方向に対する傾斜角度は、
図15に示す付勢力F1の、押圧部材80のスライド方向に対する傾斜角度よりも小さい(
図16の付勢力F1の方が、
図15の付勢力F1よりも鋭角)。また、
図16に示す付勢力F1は、支軸53の軸方向に直交する方向の分力F2と、支軸53の軸方向に沿った方向の分力F3とに分解されるが、上記のように、
図16に示す付勢力F1の傾斜角度が、
図15に示す付勢力F1の傾斜角度よりも小さい関係から、
図16に示す分力F3は、
図15に示す分力F3よりも小さくなる。
【0105】
したがって、弁部材50が弁座45から離反して通気孔22を開く途中で、第1コイルばねS1からの付勢力F1は維持されるものの、カム機構を介して作用する、第2コイルばねS2の付勢力F1の分力F3が減少することで、上記の弁部材閉じ力が降下するようになっている。
【0106】
このように、この解放弁10Aにおいても、弁部材50Aが弁座45から最大限離反する途中で、付勢力降下手段によって、付勢手段の付勢力が減少するので、弁部材50Aを開いた状態に維持しやすくできる、という第1実施形態と同様の効果が得られる。また、この第2実施形態では、第1実施形態のような第1コイルばねS1が不要となるので、部品点数を減らして、構造を簡素化できるという効果も得られる。
【0107】
(蓄電デバイス用圧力解放弁の第3実施形態)
図17及び
図18には、本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0108】
前記第1実施形態の解放弁10が、ケース内部空間R1側に、第1コイルばねS1や、第2コイルばねS2、押圧部材80等が配置されているのに対し、この実施形態の蓄電デバイス用圧力解放弁10B(以下、単に「解放弁10B」ともいう)は、ケース外部空間R2側に、第1コイルばねS1や、第2コイルばねS2、押圧部材80等が配置されている点が異なっている。
【0109】
この実施形態のベース部材15Bのベース本体20Bは、第2支持枠30をケース外部空間R2側に向けて配置されている。また、ベース本体20Bの基端部外側には、カバー部材16が装着されている。更に、ベース本体20Bの先端側外周には、シール部材40Bが装着されており、このシール部材40Bの先端部内周に、弁座形成部材17が装着されている。弁座形成部材17の内部空間が通気孔22をなしており、同弁座形成部材17の内面側であって、通気孔22の外周縁部内面側に弁座45が形成されている。また、シール部材40Bの外周には、取付部材18が外装されており、この取付部材18の基端部外周に、フランジ部材19が装着されている。
図17に示すように、取付部材18の基端側フランジ部18а及び先端側爪部18bが、ケース開口3周縁の壁部3аを挟持することで、ケース開口3に取付部材18が取付けられ、解放弁10B全体がケース1に取付けられるようになっている。
【0110】
また、
図17に示すように、押圧部材80Bの先端部に位置するカム突起に設けられたカム面87は、傾斜面87dと平行面87eとを有しており、常時は、弁部材50Bの支軸53のカム当接部60に設けた傾斜面60dに当接している。この状態では、第1実施形態の解放弁10と同様に、支軸53には、第1コイルばねS1からの付勢力と、押圧部材80Bを介して作用する第2コイルばねS2の付勢力の分力(縦向きの分力)との合力(弁部材閉じ力)によって、弁部材50が通気孔22を閉じる方向に付勢されて、弁体51が弁座45に当接して、通気孔22を閉塞している。
【0111】
上記の
図17に示す状態で、ケース1の内部空間R1の圧力が上昇して、弁部材閉じ力を超えると、弁部材50の弁体51が、弁部材閉じ力に抗して、弁座45から離反する方向に移動すると共に、カム機構(カム当接部60の傾斜面60d及びカム面87の傾斜面87d)を介して押圧部材80Bが押圧されて、同押圧部材80Bが第2コイルばねS2の付勢力に抗して、支軸53から離反する方向にスライド移動し、
図18に示すように、カム面87の平行面87eが、支軸53のカム当接部60の平行面60cに圧接された状態となるので、上記の弁部材閉じ力は降下する。
【0112】
したがって、この解放弁10Bにおいても、弁部材50Bが弁座45から離反して通気孔を開いていく途中で、付勢力降下手段によって、付勢手段の付勢力が減少するので、弁部材50Bを開いた状態に維持しやすくできる、という第1,第2実施形態と同様の効果が得られる。また、この第3実施形態では、ケース外部空間R2側に、第1コイルばねS1や、第2コイルばねS2、押圧部材80等が配置されているので、ケース内部空間R1のスペースに余裕がない場合でも適用することができる。
【0113】
(蓄電デバイス用圧力解放弁の第4実施形態)
図19~22には、本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0114】
この実施形態の蓄電デバイス用圧力解放弁10B(以下、単に「解放弁10B」ともいう)は、押圧部材を用いない付勢力降下手段を有する点で、前記第1~第3実施形態と異なっている。なお、この実施形態の付勢手段は、第1実施形態と同様に、第1付勢手段と第2付勢手段とを有しており、第1コイルばねS1が「第1付勢手段」をなし、第2コイルばねS2が「第2付勢手段」をなしている。また、第1コイルばねS1は、その線径が、第2コイルばねS2の線径よりも細く、軸方向長さが、第2コイルばねS2の軸方向長さよりも長く形成されている。
【0115】
ベース部材15Cを構成するベース本体20Cは、底部35を有しており、該底部35の内面であって、その中央部からは第1筒状部35аが立設しており、その外周に第2筒状部35bが同心状に立設している。また、底部35は、リブ35cを介して周壁21に連結されている。なお、図示はしないが、周壁21は複数に分割されており、これに対応してリブ35cも複数のものとなっており、隣接するリブ間に、図示しない通気孔が形成されている。更に、各周壁21の先端内側からは、ストッパー突部36が突設されている。
【0116】
また、弁部材50Cの、支軸53の先端面には、外周に装着溝65аを形成した、突出部65が突設されている。
【0117】
上記装着溝63аには、第1ばね支持部材90が装着されるようになっている。この第1ばね支持部材90は、板状の基部91と、該基部91の外周縁から延出した複数の撓み可能な弾性片93とを有している。また、各弾性片93の延出方向の先端外面からは、係合爪93аが突設されている。更に、基部91の中央部には、装着スロット91аが形成されており、該装着スロット91аに、支軸53の突出部65が差し込まれて、装着溝65аに装着スロット91аが挿入されることで、支軸53に第1ばね支持部材90が抜け止め保持された状態で装着されるようになっている。
【0118】
また、
図19に示すように、第1コイルばねS1は、ベース本体20Cの第1筒状部35аの外周に配置されて、その一端部(下端部)がベース本体20Cの底部35に当接し、他端部(上端部)が、第1ばね支持部材90の基部91の内面に当接して、圧縮状態で支持されるようになっている。
【0119】
更に、この解放弁10Bは、第1ばね支持部材90に対して係脱可能に装着される第2ばね支持部材95を有している。この第2ばね支持部材95は、所定厚さの周壁96を有しており、この周壁96の厚さ方向一端部(下端部)の内周からは、係合突部96аが突設されている。この係合突部96аには、第1ばね支持部材90の係合爪93аに係脱可能に係止する。
【0120】
また、
図19に示すように、第2コイルばねS2は、ベース本体20Cの第2筒状部35bの外周に配置されて、その一端部がベース本体20Cの底部35に当接し、他端部が、第2ばね支持部材95の周壁96の厚さ方向の一端面に当接して、圧縮状態で支持されるようになっている。
【0121】
そして、この解放弁10Cは、
図19に示す状態では、第1コイルばねS1の付勢力F1と、第2コイルばねS2の付勢力F2との合力が、弁部材閉じ力となって、弁部材50Cが通気孔を閉じる方向に付勢されて、弁体51が弁座45に当接して、図示しない通気孔を閉塞している。また、この状態では、第1ばね支持部材90の係合爪93аは、第2ばね支持部材95の係合突部96аの外面側周縁部に係合可能となっており、両ばね支持部材90,95が装着されて一体化されている。なお、第2コイルばねS2により付勢される、第2ばね支持部材95は、その厚さ方向他端面(上端面)が、ベース本体20Cのストッパー突部36に係止するので、ベース本体20Cからの抜け外れが防止されている。
【0122】
図19に示す状態で、ケース内部空間R1の圧力が上昇して、上記の弁部材閉じ力を超えると、
図20に示すように、弁部材50の弁体51が、上記弁部材閉じ力に抗して、弁座45から離反する方向に移動していく。
【0123】
更にケース内部空間R1の圧力が上昇すると、第1ばね支持部材90の弾性片93が内方に撓み変形しつつ、その係合爪93аが、第2ばね支持部材95の周壁96の厚さ方向一端面から抜け出て、
図21に示すように、係合突部96аの内面側周縁部に係合して、一体化された両ばね支持部材90,95が分離される。その結果、弁部材50Cには、第1コイルばねS1による付勢力F1は依然として作用するものの、第2コイルばねS2による付勢力F2は作用しなくなるので、上記の弁部材閉じ力が降下するようになっている。なお、第2ばね支持部材95は、第2コイルばねS2によって付勢されるが、その厚さ方向他端面が、ベース本体20Cのストッパー突部36に係止するので、ベース本体20Cから抜け外れることはない(第2ばね支持部材95の吹っ飛び防止)。
【0124】
その後、ケース内部空間R1の圧力が更に上昇し、第1コイルばねS1の付勢力F1のみとなった、上記弁部材閉じ力に打ち勝つと、
図22に示すように、弁体51が弁座45から更に大きく離れて、開き量を増大させることが可能となっている。
【0125】
なお、この実施形態における付勢力降下手段は、第1ばね支持部材90の弾性片93の係合爪93аと、第2ばね支持部材95の係合突部96аとであり、両ばね支持部材90,95が着脱可能とされて、第2コイルばねS2の付勢力F2を消失させることが可能な構成となっている。
【0126】
以上のように、この解放弁10Cにおいても、弁部材50Bが弁座45から最大限離反する途中で、付勢力降下手段によって、付勢手段の付勢力が減少するので、弁部材50Bを開いた状態に維持しやすくできる、という第1~第3実施形態と同様の効果が得られる。また、この第4実施形態では、付勢力降下手段として、押圧部材を用いずに、第1ばね支持部材90や第2ばね支持部材95を利用したため、圧力解放弁全体として径方向に嵩張る形状となることを抑制して(押圧部材が支軸の軸方向に交差する方向にスライドする構造の場合、解放弁全体が径方向に嵩張りやすい)、圧力解放弁10Cを比較的コンパクトにしやすい。
【0127】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1 ケース
3 ケース開口
10,10A,10B,10C 蓄電デバイス用圧力解放弁(解放弁)
15,15B,15C ベース部材
20,20B,20C ベース本体
25 第1支持枠
30 第2支持枠
40,40B シール部材
45 弁座
50,50A,50B,50C 弁部材
60,60A カム当接部
70 支持部材
80,80B 押圧部材
87 カム押圧部
87a 第1カム面
87b 第2カム面
87c 変曲部
90 第1バネ支持部材
95 第2バネ支持部材