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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016325
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】材料試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/24 20060101AFI20230126BHJP
   F16D 65/00 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
G01N3/24
F16D65/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120562
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 大輔
【テーマコード(参考)】
2G061
3J058
【Fターム(参考)】
2G061AA11
2G061AB01
2G061BA01
2G061CB13
2G061CC01
2G061DA16
2G061EA01
2G061EA10
2G061EB05
3J058AA07
3J058AA13
3J058AA17
3J058CA06
3J058CA07
3J058CD40
(57)【要約】
【課題】完成品のブレーキシューのせん断強度を、直接かつ精度良く測定する材料試験機を提供すること。
【解決手段】材料試験機1は、ブレーキシューTPを固定する固定具32と、前記固定具32に固定された前記ブレーキシューTPのブレーキライニングTP2に試験力を与える試験力付与具34と、を有した試験治具16を備える。前記固定具32は、前記ブレーキシューTPのリムTP3及びウェブTP4を下側から支持する固定ブロックユニット53と、前記ウェブTP4を前記固定ブロックユニット53に上側から押し付けて固定する押付部材52と、を備える。そして、前記固定ブロックユニット53は、前記ブレーキシューTPのリムTP3の下端部TP3Cを支持する第1ブロック54を含み、当該第1ブロック54が交換自在に設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に湾曲したリムと、前記リムの内周面に設けられたウェブと、前記リムの外周面に設けられたブレーキライニングとを有するブレーキシューを試験する材料試験機であって、
前記ブレーキシューを固定する固定具と、
前記固定具に固定された前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングに試験力を与える試験力付与具と、
を有した試験治具を備え、
前記固定具は、
前記ブレーキシューの前記リム及び前記ウェブを下側から支持する固定ブロックユニットと、
前記ブレーキシューの前記ウェブを前記固定ブロックユニットに上側から押し付けて固定する押付部材と、
を備え、
前記固定ブロックユニットは、
前記ブレーキシューの前記リムの下端部を支持する第1ブロックを含み、当該第1ブロックが交換自在に設けられている、材料試験機。
【請求項2】
前記固定ブロックユニットは、
前記第1ブロックの上端に交換自在に結合され、当該第1ブロックに前記リムの下端部が支持された前記ブレーキシューの前記ウェブを下側から支持する第2ブロックを備える、
請求項1に記載の材料試験機。
【請求項3】
前記固定ブロックユニットは、
前記第1ブロックの下端に交換自在に結合され、前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングの高さ位置を調整可能にする第3ブロックを備える、
請求項1または請求項2に記載の材料試験機。
【請求項4】
前記試験力付与具は、
前記固定具に固定された前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングの表面に接触するライニングサポートと、
前記ブレーキライニングの厚みに応じて前記ライニングサポートの位置を調整するためのスペーサと、
を備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載の材料試験機。
【請求項5】
円弧状に湾曲したリムと、前記リムの内周面に設けられたウェブと、前記リムの外周面に設けられたブレーキライニングとを有するブレーキシューを試験する材料試験機であって、
前記ブレーキシューを固定する固定具と、
所定軌道に沿って移動し、前記固定具に固定された前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングに試験力を与える試験力付与具と、
前記試験力付与具の前記所定軌道に沿った移動をガイドするガイド具と、
を有した試験治具を備える、材料試験機。
【請求項6】
前記ガイド具は、
前記所定軌道に沿って延びるリニアガイドレールと、
前記試験力付与具に連結され、転動体の転がり運動によって前記リニアガイドレールに沿って移動するリニアガイドスライダと、
を備える、請求項5に記載の材料試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
円弧状のリムの外周面にブレーキライニングが設けられたブレーキシューのせん断強度を測定する技術が知られている(例えば、特許文献1、及び非特許文献2参照)。また、非特許文献2には、完成品のブレーキシューのせん断強度を測定することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-33052号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ISO (International Organization for Standardization) 6312 : 2010(E)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、完成品のブレーキシューは、リムやブレーキライニング等の寸法の違いによって複数の種類の製品が存在する。
しかしながら、従来、かかる複数の種の完成品のブレーキシューを保持可能であり、完成品のブレーキシューのせん断強度を測定する装置は知られていない。
このため、一般に、完成品のブレーキシューに代えて、所定寸法の直方形状のブロック片にブレーキライニングを接着した試験片が測定に用いられており、現状では、完成品のブレーキシューのせん断強度を、直接かつ精度良く測定することは行われていない。
【0006】
本発明は、完成品のブレーキシューのせん断強度を、直接かつ精度良く測定する材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、円弧状に湾曲したリムと、前記リムの内周面に設けられたウェブと、前記リムの外周面に設けられたブレーキライニングとを有するブレーキシューを試験する材料試験機であって、前記ブレーキシューを固定する固定具と、前記固定具に固定された前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングに試験力を与える試験力付与具と、を有した試験治具を備え、前記固定具は、前記ブレーキシューの前記リム及び前記ウェブを下側から支持する固定ブロックユニットと、前記ブレーキシューの前記ウェブを前記固定ブロックユニットに上側から押し付けて固定する押付部材と、を備え、前記固定ブロックユニットは、前記ブレーキシューの前記リムの下端部を支持する第1ブロックを含み、当該第1ブロックが交換自在に設けられている。
【0008】
本発明の他の態様は、円弧状に湾曲したリムと、前記リムの内周面に設けられたウェブと、前記リムの外周面に設けられたブレーキライニングとを有するブレーキシューを試験する材料試験機であって、前記ブレーキシューを固定する固定具と、所定軌道に沿って移動し、前記固定具に固定された前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングに試験力を与える試験力付与具と、前記試験力付与具の前記所定軌道に沿った移動をガイドするガイド具と、を有した試験治具を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のこれらの態様によれば、完成品のブレーキシューのせん断強度を、直接かつ精度良く測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る材料試験機を示す正面図である。
図2】試験治具の構成を示す図である。
図3図2のIII-III線断面から試験治具を視た図である。
図4図2のIV-IV線断面から試験治具を平面視した図である。
図5図3の符号Vで示した範囲の拡大図である。
図6】ブレーキシューの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る材料試験機1を示す正面図である。
材料試験機1は、完成品のブレーキシューTP(以下、単に「ブレーキシューTP」という)を保持可能に構成され、当該ブレーキシューTPに試験力を与えることで、ブレーキシューTPのせん断強度を直接かつ正確に測定する装置である。また、本実施形態の材料試験機1は、寸法が異なる複数の種類のブレーキシューTPを保持可能に構成されており、寸法の違いに依らずに、直接、ブレーキシューTPのせん断強度を測定可能に構成されている。
【0012】
かかる材料試験機1は、図1に示すように、ブレーキシューTPに対して試験力を与える材料試験機本体2と、材料試験機本体2の動作を制御するとともに試験力に対するブレーキシューTPの物理的変化に基づいて、当該ブレーキシューTPのせん断強度を求める制御装置4と、を備える。
【0013】
材料試験機本体2は、テーブル6と、一対のねじ棹8、9と、クロスヘッド10と、負荷機構12と、ロードセル14と、を備え、また複数の種類のブレーキシューTPを保持可能に構成された試験治具16を備える。
【0014】
テーブル6は、天面6Aが水平面に形成され、内部に負荷機構12を収納する箱体である。
一対のねじ棹8、9は、互いに所定の間隔を空けてテーブル6の天面6Aに立設され、鉛直方向DAに延びる柱状部材である。一対のねじ棹8、9は、下端部8A、9Aがテーブル6の天面6Aを貫通して負荷機構12に接続され、当該負荷機構12によって回転駆動される。
【0015】
クロスヘッド10は、一対のねじ棹8、9の間に架け渡され、天面6Aに平行に延びる略直方形状の部材である。クロスヘッド10の両端は、一対のねじ棹8、9に螺合し、各ねじ棹8、9の回転に伴ってクロスヘッド10が鉛直方向DAに移動する。
なお、以下では、クロスヘッド10の延在方向を幅方向DBと定義する。
【0016】
試験治具16は、寸法が異なる複数の種類のブレーキシューTPを保持可能な保持部48と、クロスヘッド10の移動に従動して試験力をブレーキシューTPに与える試験力付与具34と、を備えた装置である。
かかる試験治具16は、テーブル6の天面6Aにボルトで固定され、また、試験力付与具34がクロスヘッド10に着脱自在に取り付けられる。なお、試験治具16の具体的な構成は後述する。
【0017】
ロードセル14は、クロスヘッド10と試験力付与具34との間に設けられ、クロスヘッド10に従動する試験力付与具34によってブレーキシューTPに与えられる試験力を検出し、当該試験力に応じた試験力測定信号SG1を出力するセンサである。
【0018】
負荷機構12は、一対のねじ棹8、9を回転させることでクロスヘッド10を鉛直方向DAに移動(すなわち昇降)させる機構であり、当該負荷機構12と一対のねじ棹8、9とによって、クロスヘッド10を駆動する機械要素(いわゆるアクチュエータ)が構成されている。
かかる負荷機構12は、動力源であるサーボモータ20と、当該サーボモータ20の回転出力が伝達可能に連結されたウォーム減速機18、19と、サーボモータ20の回転量を検出し、当該回転量に応じた回転測定信号SG2を出力するロータリエンコーダ22と、を備える。各ねじ棹8、9の下端部8A、9Aはウォーム減速機18、19に連結されており、これらウォーム減速機18、19を介してサーボモータ20の回転が下端部8A、9Aに伝達されることで、一対のねじ棹8、9が互いに同期して回転する。かかる回転によってクロスヘッド10が鉛直方向DAに移動する。
【0019】
制御装置4は、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAM等のメモリデバイスとを有したコンピュータを備え、メモリデバイスに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより、材料試験機本体2の制御機能や、データ処理機能といった、材料試験機1によるせん断強度測定に必要な各種の機能を実現する装置である。
かかる制御装置4は、互いに信号を送受信可能に材料試験機本体2に接続される。制御装置4が材料試験機本体2から受信する信号は、試験力測定信号SG1や回転測定信号SG2、各種の制御や試験に要する適宜の信号である。制御装置4は、これらの信号に基づく演算等のデータ処理により、ブレーキシューTPに与えられた試験力や、ブレーキシューTPのせん断強度などを求める。
【0020】
次いで、上述した試験治具16の構成について詳述する。
図2は試験治具16の構成を示す図であり、図1の紙面奥側から試験治具16を視た図である。図3図2のIII-III線断面から試験治具16を視た図である。また図4図2のIV-IV線断面から試験治具16を平面視した図である。なお、図2及び図3には、試験治具16に加え、テーブル6とクロスヘッド10とが一点鎖線で図示されている。
【0021】
図3に示すように、試験治具16は、テーブル6の天面6Aに固定される台座30と、当該台座30に固定されブレーキシューTPを固定する固定具32と、クロスヘッド10に連結され、当該クロスヘッド10に従動して鉛直方向DAに移動することで試験力をブレーキシューTPに与える上記試験力付与具34と、試験力付与具34の鉛直方向DAの移動をガイドし、当該試験力付与具34の移動時の軌道の逸れを防止するガイド具36と、を備える。
【0022】
台座30は、平面視矩形の平板状部材であり、テーブル6の天面6Aに複数のボルトで強固に固定される。
固定具32は、図3に示すように、台座30の上面30Aに移動自在に結合された固定具本体40と、固定具本体40の位置を調整する位置調整機構41と、を備え、固定具本体40が、複数の種類のブレーキシューTPを保持可能な上述の保持部48を備えている。
かかる保持部48は、図3に示すように、鉛直方向DAに平行な側面48Aを有し、この側面48Aに形成され、ブレーキシューTPの後述するウェブTP4が挿入される凹部50と、この凹部50に内設され、ブレーキシューTPを下側から支持する固定ブロックユニット53と、を備えている。なお、保持部48のこれらの構成については、後に詳述する。
【0023】
位置調整機構41は、図4に示すように、台座30の上面30A内を移動可能に当該台座30に結合された平板状の移動プレート42と、ユーザ操作に応じて移動プレート42を移動する調整操作部44と、を備え、移動プレート42に上記固定具本体40が固定されている。
さらに詳述すると、移動プレート42には、複数の長孔43が形成され、各長孔43に通されたボルト45によって台座30の上面30Aに固定され、また、各ボルト45が緩められることで、長孔43の長軸方向に移動プレート42が移動可能となっている。
調整操作部44は、ユーザ操作に応じて移動プレート42を押し引きする調整ボルト47と、台座30に固定され、調整ボルト47を支持する支持体46と、を備える。この支持体46には、貫通孔のねじ孔が形成されており、調整ボルト47は、ねじ孔に螺合することで支持体46に支持される。この支持状態において、調整ボルト47は、移動プレート42の長孔43の長手方向と略平行に延び、先端47Aが固定具32に結合されており、ユーザの回転操作に伴って調整ボルト47が支持体46から押し引きされることで固定具32が長孔43に沿って移動し、固定具32の位置調整が行われる。
かかる試験治具16は、長孔43の長軸方向を、クロスヘッド10の延在方向である上記幅方向DBに対して直交する方向(すなわち、図1における紙面の奥行き方向DC:図4)に向けた姿勢でテーブル6に固定される。これにより、位置調整機構41を用いることで、固定具32に保持されたブレーキシューTPの奥行き方向DCにおける位置をユーザが調整可能になっている。
【0024】
試験力付与具34は、図3に示すように、鉛直方向DAに略直線状に延びるアーム80と、当該アーム80の下端部80Aに取り付けられたポンチ82と、当該アーム80の上端部80Bに固定され、クロスヘッド10に連結される取付具84と、を備え、クロスヘッド10と一体となってアーム80が鉛直方向DAに移動することで、ポンチ82がブレーキシューTPに当接し、当該ブレーキシューTPに試験力を与える。
【0025】
ガイド具36は、図3に示すように、台座30に固定されたガイド具本体86と、ガイド具本体86に固定されたリニアガイド37と、を有する。当該リニアガイド37は、リニアガイドレール38と、当該リニアガイドレール38に沿って移動する複数(本実施形態では2つ)のリニアガイドスライダ39と、を備える。かかるリニアガイド37は、リニアガイドスライダ39が転動体(球)の転がり運動によってリニアガイドレール38に沿って移動する、いわゆるLMガイド(登録商標)であり、リニアガイド37の移動時の摩擦抵抗が非常に小さく抑えられている。
【0026】
リニアガイド37は、リニアガイドレール38が試験力付与具34のアーム80の近傍で鉛直方向DAに延在し、また、各リニアガイドスライダ39がアーム80に連結される。
そして、ガイド具36は、各リニアガイドスライダ39がアーム80の移動に従動してリニアガイドレール38を移動することで、アーム80(試験力付与具34)の鉛直方向DAの移動をガイドし、また、当該鉛直方向DAに沿った軌道からの試験力付与具34の逸れを防止する。かかるガイド具36においては、リニアガイドスライダ39の移動時の摩擦抵抗は非常に小さいため、リニアガイドスライダ39がアーム80に連結されている場合でも、アーム80の移動、すなわち試験力への影響が十分に無視でき、測定精度の低下が抑えられる。
【0027】
次いで、固定具32の保持部48の構成について詳述する。
【0028】
図5は、図3の符号Vで示した範囲の拡大図である。
保持部48は、上述の通り、複数の種類のブレーキシューTPを保持可能な部位である。
ブレーキシューTPは、図4に示すように、所定長の平板材を円弧状に湾曲させたリムTP3、及び、当該リムTP3の内周面TP3Aに設けたウェブTP4を有するシュー本体TP1と、リムTP3の外周面TP3Bに接着されたブレーキライニングTP2と、を備える。
ウェブTP4は、図4の平面視において、リムTP3の内周面TP3Aに沿って延在し、かつ、当該内周面TP3AからリムTP3の内径方向に突出した板状部材である。リムTP3の内周面TP3AからウェブTP4が突出することで、図6の断面図に示すように、シュー本体TP1が断面Tの字状に形成されている。かかるブレーキシューTPは、リムTP3の曲率、リムTP3の下端部TP3CからウェブTP4までの高さh1、ブレーキライニングTP2の高さh2、リムTP3の厚みt1、ブレーキライニングTP2の厚みt2、及びウェブTP4の厚みt3などの違いによって複数の種類の完成品が存在している。
【0029】
かかる複数の種類のブレーキシューTPを保持可能な保持部48は、上述のように、ブレーキシューTPのウェブTP4が挿入される凹部50と、当該凹部50に内設され、ウェブTP4及びリムTP3を下側から支持する固定ブロックユニット53と、を備え、さらに、ウェブTP4を固定ブロックユニット53に押し付けて固定する押付部材52、を備える。
【0030】
さらに詳述すると、図5の断面視において、凹部50は、ウェブTP4の突出量K(図6)よりも十分に深い断面矩形状に形成されており、この凹部50の底面50Aには、上記固定ブロックユニット53が着脱自在に載置される。固定ブロックユニット53は、水平な平面でありブレーキシューTPのウェブTP4が載置される上面53Aと、リムTP3の下端部TP3Cを支える肩部53Bと、を有し、これら上面53A及び肩部53BによってブレーキシューTPが下側から支持される。
【0031】
押付部材52は、凹部50の天面50Bから当該凹部50内に進入した先端部52Aで、ウェブTP4を上側から固定ブロックユニット53に押し付け、固定するボルトである。すなわち、保持部48の上面48Bには、鉛直方向DAに凹部50に貫通するねじ孔51が形成され、このねじ孔51に押付部材52が通されており、例えばレンチ等を用いて押付部材52を回転操作することで、押付部材52が鉛直方向DAに移動し、先端部52Aが固定ブロックユニット53に対して離接する。
【0032】
固定ブロックユニット53は、第1ブロック54と、当該1ブロック54の上端に交換自在にねじ58によって結合された第2ブロック57と、当該第1ブロック54の下端に交換自在に結合された第3ブロック62と、を備える。
【0033】
第1ブロック54は、上端の縁部が上記肩部53Bとして用いられるブロック材である。また第2ブロック57は、リムTP3の下端部TP3CからウェブTP4までの高さh1に等しい高さ寸法のブロック材である。したがって、リムTP3の下端部TP3Cが第1ブロック54の肩部53Bに支持されたときに、ウェブTP4も第2ブロック57の上面53Aによって支持されることとなる。
【0034】
この第2ブロック57は、図5に示すように、奥行き方向DCにおいて、凹部50の深さと略同じ寸法を有する。すなわち、第2ブロック57が凹部50に収められた状態において、第2ブロック57の側面57Aと、保持部48の側面48Aと、が面一となっている。これにより、ブレーキシューTPのウェブTP4を凹部50に挿入したときに、リムTP3の内周面TP3Aを、保持部48の側面48Aと第2ブロック57の側面57Aとの両方に当接させることで、ブレーキライニングTP2の高さh2の方向を鉛直方向DAに簡単に一致させることができる。
【0035】
上述した第1ブロック54は、図5に示すように、リムTP3の厚みt1以下の突出量で凹部50から突出することで上記肩部53Bが形成される。この肩部53Bの平面視形状は、リムTP3と同じ曲率の円弧状であり、これにより、リムTP3の下端部TP3Cのうちの凹部50に挿入された部分は、その部分の全範囲が肩部53Bに支えられる。
【0036】
第3ブロック62は、第1ブロック54の肩部53Bに支持されているブレーキシューTPのブレーキライニングTP2の上端部TP2Aを、鉛直方向DAにおける規定の高さ位置に配置するためのブロック材である。規定の高さ位置は、例えば、せん断強度試験において、試験力付与具34のポンチ82と、ブレーキライニングTP2とを当接させる規定の位置である。
【0037】
本実施形態の固定ブロックユニット53は、上述の通り、第1ブロック54、第2ブロック57、及び第3ブロック62がそれぞれ交換自在に結合されているため、ブレーキシューTPの寸法に合わせて、それぞれを適切な寸法のものに交換することで、寸法が異なるブレーキシューTPであっても固定できる。
【0038】
具体的には、リムTP3の曲率が異なる場合でも、肩部53Bの平面視形状の曲率がリムTP3の曲率に対応した第1ブロック54に交換することで、当該リムTP3の下端部TP3Cを確実に肩部53Bで支えることができる。
また、ウェブTP4の高さh1が異なる場合でも、このウェブTP4の高さh1に応じた高さ寸法の第2ブロック57に交換することで、肩部53BでリムTP3を支持しつつウェブTP4を第2ブロック57で支持し、この状態で押付部材52によってウェブTP4を固定することで、ブレーキシューTPを固定できる。
さらにまた、ブレーキライニングTP2の高さh2が異なる場合でも、この高さh2に応じた高さ寸法の第3ブロック62に交換することで、ブレーキライニングTP2の上端部TP2Aを規定の高さ位置に配置できる。
【0039】
次いで、試験力付与具34の構造について説明する。
【0040】
試験力付与具34は、上述の通り、クロスヘッド10に従動するアーム80と、当該アーム80の下端部80Aに取り付けられたポンチ82と、有する。
ポンチ82は、直方体状の部材であり、ねじ74によってアーム80に交換自在に固定されており、ポンチ82の底面が、ブレーキライニングTP2に当接して押圧する押圧面83となっている。図3に示すように、保持部48に保持されたブレーキシューTPのブレーキライニングTP2は、ロードセル14の鉛直方向DAの直下に配置され、この位置でポンチ82の押圧面83がブレーキライニングTP2に当接して試験力を加えることで、ロードセル14に偏心加重が加わらないようになっている。
この場合において、リムTP3の厚みt1の違いに起因して、ブレーキライニングTP2の位置がロードセル14の鉛直方向DAの直下から外れる場合には、位置調整機構41を用いて奥行き方向DCに固定具32を移動することで、ブレーキライニングTP2の位置をロードセル14の鉛直方向DAの直下に合わせる。これにより、リムTP3の厚みt1が変わる場合でも、ロードセル14に偏心加重がかかることを防止し、測定精度の低下を防止できる。
【0041】
また、本実施形態の試験力付与具34は、図5に示すように、ブレーキライニングTP2の表面に接触することで当該ブレーキライニングTP2をサポートするライニングサポート77を有する。ライニングサポート77は、一側面がブレーキライニングTP2の表面に接触する接触面78となる直方体状の弾性部材である。図3に示すように、アーム80の下端部80Aには、ポンチ82に対応する箇所以外が鉛直方向DAの下方にさらに延びた延在部80A1が設けられており、この延在部80A1の側面87に、シート状のスペーサ76を挟んでライニングサポート77が取り付けられている。スペーサ76は、交換自在に側面87に設けられた部材であり、ブレーキライニングTP2の厚みt2が変わった場合には、当該厚みt2に応じたスペーサ76に交換することで、ライニングサポート77の接触面78がブレーキライニングTP2の表面に適切に接触する位置に調整可能となる。
【0042】
ここで、せん断強度測定時には、アーム80の鉛直方向DAの移動によりポンチ82がブレーキライニングTP2を押圧することで約50kN程度の試験力が発生するため、何ら対策を施さなければ、ポンチ82がブレーキシューTPから離れる方向に逸れてしまい、これにより、ロードセル14に偏心荷重が発生する虞がある。
これに対し、本実施形態の試験治具16は、試験力付与具34の鉛直方向DAの移動をガイドするガイド具36を備えるため、ポンチ82がブレーキシューTPから離れる方向に逸れることがなく、ロードセル14に偏心荷重が発生することがない。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば次の効果を奏する。
【0044】
すなわち、本実施形態の材料試験機1は、円弧状に湾曲したリムTP3と、当該リムTP3の内周面TP3Aに設けられたウェブTP4と、当該リムTP3の外周面TP3Bに設けられたブレーキライニングTP2とを有するブレーキシューTPを試験する。また、当該材料試験機1は、ブレーキシューTPを固定する固定具32と、当該固定具32に固定されたブレーキシューTPのブレーキライニングTP2に試験力を与える試験力付与具34と、を有した試験治具16を備える。また、固定具32は、ブレーキシューTPのリムTP3及びウェブTP4を下側から支持する固定ブロックユニット53と、ブレーキシューTPのウェブTP4を固定ブロックユニット53に上側から押し付けて固定する押付部材52と、を備える。そして、固定ブロックユニット53は、ブレーキシューTPのリムTP3の下端部TP3Cを支持する第1ブロック54を含み、当該第1ブロック54が交換自在に設けられている。
【0045】
この構成によれば、リムTP3の寸法が異なるブレーキシューTPを固定具32に固定する場合でも、当該リムTP3の寸法に応じた第1ブロック54に交換することで、リムTP3を確実に固定することができる。
したがって、リムTP3の寸法が異なる複数の種類のブレーキシューTPを固定し、当該ブレーキシューTPのせん断強度を直接、測定することができる。また、これらのいずれの種類のブレーキシューTPを固定する場合でも、リムTP3の固定が確実に行われるため、ガタなどを抑えて正確にせん断強度を測定できる。
【0046】
本実施形態の材料試験機1において、固定ブロックユニット53は、第1ブロック54の上端に交換自在に結合され、当該第1ブロック54にリムTP3の下端部TP3Cが支持されたブレーキシューTPのウェブTP4を下側から支持する第2ブロック57を備える。
この構成によれば、リムTP3の下端部TP3CからウェブTP4の高さh1が異なるブレーキシューTPを固定具32に固定する場合でも、当該高さh1に応じた高さの第2ブロック57に交換することで、リムTP3の下端部TP3CとウェブTP4とを確実に支持できる。
したがって、ウェブTP4の高さh1が異なる複数の種類のブレーキシューTPを固定し、当該ブレーキシューTPのせん断強度を直接、測定することができる。また、これらのいずれの種類のブレーキシューTPを固定する場合でも、リムTP3の下端部TP3CとウェブTP4とを確実に支持できるため、材料試験機1は、ガタなどを抑えて正確にせん断強度を測定できる。
【0047】
本実施形態の材料試験機1において、固定ブロックユニット53は、第1ブロック54の下端に交換自在に結合され、ブレーキシューTPのブレーキライニングTP2の高さ位置を調整可能にする第3ブロック62を備える。
この構成によれば、ブレーキライニングTP2の高さh2が異なるブレーキシューTPを固定具32に固定する場合でも、当該高さh2に応じた高さの第3ブロック62に交換することで、ブレーキライニングTP2の高さ位置を規定の位置に確実に配置できる。
したがって、ブレーキライニングTP2の高さh2が異なる複数の種類のブレーキシューTPを固定し、当該ブレーキシューTPのせん断強度を直接、測定することができる。また、これらのいずれの種類のブレーキシューTPを固定する場合でも、ブレーキライニングTP2を規定の高さ位置に確実に配置できるため、材料試験機1は、高さ位置による測定のバラツキを抑えて正確にせん断強度を測定できる。
【0048】
本実施形態の材料試験機1において、試験力付与具34は、固定具32に固定されたブレーキシューTPのブレーキライニングTP2の表面に接触するライニングサポート77と、ブレーキライニングTP2の厚みt2に応じてライニングサポート77の位置を調整するためのスペーサ76と、を備える。
この構成によれば、ブレーキライニングTP2の厚みt2が異なるブレーキシューTPを固定具32に固定する場合でも、厚みt2に応じたスペーサ76に交換することで、ライニングサポート77を適切な位置に配置することができ、ライニングサポート77の接触状態に起因した測定のバラツキを抑えて正確にせん断強度を測定できる。
【0049】
本実施形態の材料試験機1は、円弧状に湾曲したリムTP3と、当該リムTP3の内周面TP3Aに設けられたウェブTP4と、当該リムTP3の外周面TP3Bに設けられたブレーキライニングTP2とを有するブレーキシューTPを試験する。また、当該材料試験機1は、ブレーキシューTPを固定する固定具32と、当該固定具32に固定されたブレーキシューTPのブレーキライニングTP2に試験力を与える試験力付与具34と、試験力付与具34の鉛直方向DAの軌道に沿った移動をガイドするガイド具36と、を有した試験治具16を備える。
この構成によれば、固定具32にブレーキシューTPを固定して、当該ブレーキシューTPのせん断強度を直接、測定することができる。また、ガイド具36によって、試験力付与具34の移動時の軌道の逸れが防止されるため、正確にせん断強度を測定できる。
【0050】
本実施形態の材料試験機1において、ガイド具36は、鉛直方向DAの上記軌道に沿って延びるリニアガイドレール38と、試験力付与具34に連結され、転動体の転がり運動によってリニアガイドレール38に沿って移動するリニアガイドスライダ39と、を備える。
この構成によれば、ガイド具36の移動時の摩擦抵抗を非常に小さく抑えることができるため、ガイド具36が試験力付与具34に連結されている場合でも、測定精度の低下が抑えられる。
【0051】
なお、上述した実施形態は、本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0052】
上述した例示的な実施形態、及び変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0053】
(第1項)
一態様に係る材料試験機は、円弧状に湾曲したリムと、前記リムの内周面に設けられたウェブと、前記リムの外周面に設けられたブレーキライニングとを有するブレーキシューを試験する材料試験機であって、前記ブレーキシューを固定する固定具と、前記固定具に固定された前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングに試験力を与える試験力付与具と、を有した試験治具を備え、前記固定具は、前記ブレーキシューの前記リム及び前記ウェブを下側から支持する固定ブロックユニットと、前記ブレーキシューの前記ウェブを前記固定ブロックユニットに上側から押し付けて固定する押付部材と、を備え、前記固定ブロックユニットは、前記ブレーキシューの前記リムの下端部を支持する第1ブロックを含み、当該第1ブロックが交換自在に設けられてもよい。
【0054】
第1項に記載の材料試験機によれば、完成品のブレーキシューのせん断強度を、直接かつ精度良く測定できる。
【0055】
(第2項)
第1項に記載の材料試験機において、前記固定ブロックユニットは、前記第1ブロックの上端に交換自在に結合され、当該第1ブロックに前記リムの下端部が支持された前記ブレーキシューの前記ウェブを下側から支持する第2ブロックを備えてもよい。
【0056】
第2項に記載の材料試験機によれば、リムの下端部からウェブまでの高さが異なるブレーキシューを固定具に固定する場合でも、当該高さに応じた第2ブロックに交換することでブレーキシューを固定できる。
【0057】
(第3項)
第1項または第2項に記載の材料試験機において、前記第1ブロックの下端に交換自在に結合され、前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングの高さ位置を調整可能にする第3ブロックを備えてもよい。
【0058】
第3項に記載の材料試験機によれば、リムの高さが異なるブレーキシューを固定具に固定する場合でも、当該高さに応じた第3ブロックに交換することで、ブレーキシューの高さ位置、より具体的には、ブレーキライニングの高さ位置を規定の位置に配置できる。
【0059】
(第4項)
第1項から第3項に記載のいずれかの材料試験機において、前記試験力付与具は、前記固定具に固定された前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングの表面に接触するライニングサポートと、前記ブレーキライニングの厚みに応じて前記ライニングサポートの位置を調整するためのスペーサと、を備える。
【0060】
第4項に記載の材料試験機によれば、ブレーキライニングの厚みが異なるブレーキシューを固定具に固定する場合でも、当該厚みに応じたスペーサに交換することで、ライニングサポートを適切な位置に配置できる。
【0061】
(第5項)
一態様に係る材料試験機は、円弧状に湾曲したリムと、前記リムの内周面に設けられたウェブと、前記リムの外周面に設けられたブレーキライニングとを有するブレーキシューを試験する材料試験機であって、前記ブレーキシューを固定する固定具と、所定軌道に沿って移動し、前記固定具に固定された前記ブレーキシューの前記ブレーキライニングに試験力を与える試験力付与具と、前記試験力付与具の前記所定軌道に沿った移動をガイドするガイド具と、を有した試験治具を備えてもよい。
【0062】
第5項に記載の材料試験機によれば、完成品のブレーキシューを固定具に固定して直接、測定することができ、また、ガイド具のガイドによって所定軌道からの試験力付与具の逸れが防止されるため測定を正確に行うことができる。
【0063】
(第6項)
第5項に記載の材料試験機において、前記ガイド具は、前記所定軌道に沿って延びるリニアガイドレールと、前記試験力付与具に連結され、転動体の転がり運動によって前記リニアガイドレールに沿って移動するリニアガイドスライダと、を備えてもよい。
【0064】
第6項に記載の材料試験機によれば、ガイド具が試験力付与具に連結されている場合でも、測定精度の低下が抑えられる。
【符号の説明】
【0065】
1 材料試験機
2 材料試験機本体
10 クロスヘッド
12 負荷機構
14 ロードセル
16 試験治具
32 固定具
34 試験力付与具
36 ガイド具
37 リニアガイド
38 リニアガイドレール
39 リニアガイドスライダ
41 位置調整機構
48 保持部
52 押付部材
53 固定ブロックユニット
54 第1ブロック
57 第2ブロック
62 第3ブロック
76 スペーサ
77 ライニングサポート
80 アーム
82 ポンチ
83 押圧面
DA 鉛直方向
TP ブレーキシュー
TP3 リム
TP4 ウェブ
TP2 ブレーキライニング
図1
図2
図3
図4
図5
図6