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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163260
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】アンテナ取付具及びアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20231102BHJP
   B60R 11/02 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
H01Q1/22 B
B60R11/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074024
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】畠山 豊
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 久
(72)【発明者】
【氏名】岸上 良文
(72)【発明者】
【氏名】若原 忍
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓人
【テーマコード(参考)】
3D020
5J047
【Fターム(参考)】
3D020AB01
3D020BA13
5J047AA09
5J047EB01
(57)【要約】
【課題】アンテナ取付具の組立工程における作業性を向上することである。
【解決手段】アンテナ取付具60は、移動体に設置されるアンテナ装置のアンテナ本体部に螺合され、頭部85及び螺子山部84と、頭部85及び螺子山部84の間に設けられ、頭部85及び螺子山部84よりも断面が小さい中間部と、を有する雄螺子部80と、雄螺子部80の一部を通す穴部72を有する脚付きワッシャ70と、を備える。穴部72は、互いに大きさの異なる穴721,722を重ねた形状を有する。穴721は、頭部85及び螺子山部84を通さず、中間部を通す形状を有する。穴722は、頭部85を通さず、螺子山部84及び中間部を通す形状を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設置されるアンテナ装置のアンテナ本体部に螺合され、頭部及び螺子山部と、当該頭部及び当該螺子山部の間に設けられ、当該頭部及び当該螺子山部よりも断面が小さい中間部と、を有する雄螺子部と、
前記雄螺子部の一部を通す穴部を有する座金部と、を備え、
前記穴部は、互いに大きさの異なる第1の穴及び第2の穴を重ねた形状を有し、
前記第1の穴は、前記頭部及び前記螺子山部を通さず、前記中間部を通す形状を有し、
前記第2の穴は、前記頭部を通さず、前記螺子山部及び前記中間部を通す形状を有するアンテナ取付具。
【請求項2】
前記穴部は、前記第2の穴に前記中間部が挿入された状態で前記雄螺子部を前記第1の穴にスライド可能な形状を有する請求項1に記載のアンテナ取付具。
【請求項3】
前記第1の穴及び前記第2の穴の少なくとも一方の形状は、円である請求項1又は2に記載のアンテナ取付具。
【請求項4】
前記中間部は、円筒部である請求項1又は2に記載のアンテナ取付具。
【請求項5】
前記第1の穴の位置は、前記アンテナ本体部の雌螺子部に対応する位置である請求項1又は2に記載のアンテナ取付具。
【請求項6】
前記座金部は、前記アンテナ本体部に前記アンテナ取付具が仮留めされた状態で前記移動体の設置対象物の固定用開口に挿入された後に、前記雄螺子部が螺合されて当該設置対象物を当該アンテナ本体部との間で挟む脚部を有する請求項1又は2に記載のアンテナ取付具。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のアンテナ取付具と、
前記アンテナ本体部と、を備えるアンテナ装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ取付具及びアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両のルーフに設置される車載のアンテナ装置として、雄螺子(ボルト)を含むアンテナ取付具を用いて、当該ルーフに取り付けられる構造のアンテナ装置が知られている。より具体的には、アンテナ取付具の雄螺子部をアンテナ装置のアンテナベース部の雌螺子に所定量螺合して仮留めし、アンテナ取付具をルーフの固定用開口に挿入して雄螺子部を増し締めすることにより、アンテナ取付具とベースとでルーフが挟み込まれてアンテナ装置がルーフに固定されて取り付けられる。
【0003】
例えば、アンテナ取付具として、貫通穴を有する固定金具と、当該貫通穴に挿入される雄螺子と、を備える固定構造が知られている(特許文献1参照)。固定構造の貫通穴には、内縁に対向する2つの突起部(爪部)が備えられており(特許文献1の図4(b))、突起部に雄螺子の螺子山が掛ることで、固定金具からの雄螺子の抜け落ち対策が取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4214399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定金具からの雄螺子の抜け落ち対策として、特許文献1の固定構造に加えて、貫通穴の内縁に3以上の突起部を歯車状に備え、雄螺子を複数の突起部に螺合させたうえで固定金具に組み付けるという構成も考えられる。しかし、特許文献1の固定構造や上記歯車状の突起部の構成では、雄螺子の軸方向が貫通穴の平面に対し斜め方向になって噛んでしまう斜め掛かりが発生するなど、雄螺子の抜け落ちとの背反事項が生じるおそれがある。このため、組み付け性(作業性)という観点からは改善度合いが小さかった。
【0006】
また、一般的にアンテナ装置を車両へ取り付ける際、車両から外れることを抑制するために、アンテナ取付具に樹脂製の仮留め部品を別途組み付けているが、特許文献1の固定構造や、上記歯車状の突起部の構成では、仮留め部品がなく、アンテナ取付具に仮留め機能を付与することが考えられる。
【0007】
より具体的には、仮留め時の雄螺子の高さを規定するためにネジロック剤(ネジ緩み止め剤)を雄螺子の螺子山に塗布し、ある一定以上のトルクがかからなければ雄螺子が螺合しないように構成することにより、仮留め機能を付与する。ネジロック剤は、螺子に緩みが生じないように締結部を固めてしまうナイロンなどの樹脂の溶液であり、螺子山への塗布後に固体化する。
【0008】
しかし、上記仮留め機能を有する従来の固定構造では、雄螺子に塗布されたネジロック剤が貫通穴の突起部にこすれて剥がれるおそれがあった。
【0009】
本発明の課題は、アンテナ取付具の組立工程における作業性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のアンテナ取付具は、
移動体に設置されるアンテナ装置のアンテナ本体部に螺合され、頭部及び螺子山部と、当該頭部及び当該螺子山部の間に設けられ、当該頭部及び当該螺子山部よりも断面が小さい中間部と、を有する雄螺子部と、
前記雄螺子部の一部を通す穴部を有する座金部と、を備え、
前記穴部は、互いに大きさの異なる第1の穴及び第2の穴を重ねた形状を有し、
前記第1の穴は、前記頭部及び前記螺子山部を通さず、前記中間部を通す形状を有し、
前記第2の穴は、前記頭部を通さず、前記螺子山部及び前記中間部を通す形状を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンテナ取付具の組立工程における作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態の仮留め前のアンテナ装置のアンテナ取付具とアンテナ本体部とを分けた分解斜視図である。
図2】アンテナ取付具仮留め後及び固定用開口に通す前のアンテナ装置の側面図である。
図3】アンテナ取付具の斜視図である。
図4】脚付きワッシャの上面図である。
図5】雄螺子部の側面図である。
図6】(a)は、螺子山部を第2の穴に通す前の状態のアンテナ取付具の斜視図である。(b)は、螺子山部及び円筒部を第2の穴に通した後の状態のアンテナ取付具を示す斜視図である。(c)は、円筒部を第1の穴にスライドした後の状態のアンテナ取付具を示す斜視図である。
図7】(a)は、アンテナ取付具を固定用開口に通している最中の仮留め状態のアンテナ装置の側面図である。(b)は、アンテナ取付具を固定用開口に通した後の仮留め状態のアンテナ装置の側面図である。図7(c)は、雄螺子部を締結後の取付状態のアンテナ装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0014】
図1図7を参照して、本発明に係る実施の形態のアンテナ装置1を説明する。まず、図1図5を参照して、アンテナ装置1の装置構成を説明する。図1は、本実施の形態の仮留め前のアンテナ装置1のアンテナ取付具60とアンテナ本体部M1とを分けた分解斜視図である。図2は、アンテナ取付具60仮留め後及び固定用開口F1に通す前のアンテナ装置1の側面図である。図3は、アンテナ取付具60の斜視図である。図4は、脚付きワッシャ70の上面図である。図5は、雄螺子部80の側面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態のアンテナ装置1は、自動車などの車両のルーフR1(図2)の設置面の固定用開口F1(図2)に取り付けられるいわゆるシャークフィンアンテナの車載アンテナ装置である。
【0016】
アンテナ装置1は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)衛星からGNSS信号を受信するアンテナ部(図示略)を内部に備えるアンテナ装置であるものとする。ただし、アンテナ装置1が備えるアンテナ部は、これに限定されるものではなく、AMラジオ放送(周波数帯:MW(LW)帯)/FMラジオ放送(周波数帯:VHF帯)、セルラー方式の通信(LTE(Long Term Evolution)など)、デジタルラジオ放送、サテライトラジオ(SXM(Sirius XM)など)などの通信を行うアンテナ部を備えるアンテナ装置、あるいは複数の通信方式の複数のアンテナ部を備える複合アンテナ装置としてもよい。
【0017】
図1に示すように、アンテナ装置1は、アンテナ本体部M1と、アンテナ取付具60と、を備える。アンテナ本体部M1は、アンテナカバー部10と、アンテナベース部20と、パッド部50と、を備える。アンテナ取付具60は、座金部としての脚付きワッシャ70と、雄螺子部80と、を有する。また、アンテナ本体部M1は、アンテナカバー部10とアンテナベース部20との間に形成される空間に、さらに、基板部30と、アンテナ部40と、を備える。
【0018】
後述するように、アンテナ装置1は、アンテナカバー部10、アンテナベース部20、基板部30、アンテナ部40及びパッド部50を組み立てたアンテナ本体部M1の状態(図1)において、アンテナベース部20にアンテナ取付具60を仮留めする仮留めの状態(図2)にしてから、固定用開口F1に取り付けられる。図1図2及び以降の図において、アンテナ装置1が取り付けられた車両を基準として3次元のx軸(車両の前後方向の軸)、y軸(車両の左右方向の軸)、z軸(高さ方向の軸)をとるものとする。
【0019】
アンテナカバー部10は、アンテナベース部20に取り付けられ、前方(+x方向)から後方(-x方向)に向けて流線型状に隆起して形成され、車両の外観が損なわれないように、低姿勢のシャークフィン形状に形成されているアウターケースである。アンテナカバー部10は、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂などの電波透過性及び絶縁性を有する合成樹脂などからなり、下面が開放された成形品とされる。アンテナカバー部10の下面開口は、アンテナベース部20などが取り付けられたときに、基板部30、アンテナ部40などの収納空間が形成されるようになっている。
【0020】
アンテナベース部20は、アンテナ装置1の土台部であり、基板部30を支持するとともに、車両の設置面の固定用開口F1に取り付けられる構造を有する。アンテナベース部20は、アルミ、亜鉛などの金属のダイカストで構成されたアンテナベース部であり、平板部21、螺子穴部22と、コネクタ用穴部23と、を有する。
【0021】
平板部21は、略平板形状のベース部である。平板部21は、マーク211を有する。マーク211は、矢印のマークであり、当該矢印がアンテナ装置1の取付方向として車両の前方(+x方向)を指している。なお、平板部21は、鋼板などの板金で構成したものでもよい。コネクタ用穴部23は、z方向に貫通された穴部であり、後述するコネクタ部31が挿通される。
【0022】
螺子穴部22は、平板部21から-z方向(地表方向(固定用開口F1の外側から見た車両の内部方向))に凸状に延在し、アンテナ取付具60が取り付けられる。螺子穴部22は、雌螺子部221を有する。雌螺子部221は、+z軸方向に雌螺子が切られた雌螺子部であり、雄螺子部80が螺合される。
【0023】
基板部30は、例えば、平面が水平面(xy平面)に配置されたPCB(Printed Circuit Board)であり、アンテナ部40及び各種回路素子が実装される。基板部30は、コネクタ部31を有する。コネクタ部31は、基板部30の基板に実装された基板実装型コネクタであり、アンテナ部40で受信した信号を、ケーブルを介して車両の車室内の機器に接続するためのコネクタである。アンテナ部40は、例えばGNSS通信用のパッチアンテナである。
【0024】
パッド部50は、発泡ウレタンなどの弾性体製のパッキンからなり、パッド51,52を有する。パッド51は、平板部21のうち、螺子穴部22及びコネクタ用穴部23を囲むように設けられた防水パッドである。パッド52は、平板部21の外周に設けられた予備防水パッドである。パッド52は、アンテナカバー部10とルーフR1の設置面との間に配置され、挟まれて圧縮されることにより、一次防水/防塵の機能を実現する。パッド51は、アンテナベース部20とルーフR1の設置面との間に配置され、挟まれて圧縮されることにより、パッド52の一次防水/防塵を通過した水・粉塵の防水/防塵の機能を実現する。
【0025】
アンテナ取付具60の脚付きワッシャ70は、例えば、SUS(Steel Use Stainless)(例えば、硬度の高いSUS304)などのバネ性を有する金属の板金により構成され、雄螺子部80を通すとともに、アンテナ取付具60をアンテナベース部20及びルーフR1の設置面に固定する機能を有する座金部である。
【0026】
アンテナ取付具60の雄螺子部80は、例えば、SUSにより構成され、螺子穴部22の雌螺子部221に螺合されるボルトである。
【0027】
図3図4に示すように、脚付きワッシャ70は、平板部71と、穴部72と、脚部としての固定脚部73、可動脚部74と、を有する。図3図5に示すように、雄螺子部80は、中間部としての円筒部83と、螺子山部84と、頭部85と、を有する。
【0028】
平板部71は、脚付きワッシャ70の基体としてxy平面の矩形の平板部であり、その平面の中心部分に穴部72が形成されている。平板部71は、凹部711を有する。凹部711は、穴部72の後述する穴721の周囲に配置された凹部であり、穴721(平板部71)の強度を増すために設けられている。
【0029】
穴部72は、径が異なる大小2つの円を重ねた形状の貫通孔であり、穴721,722を有する。穴721は、穴722と重なり、穴722と比較して小さい円形の穴であり、その中心点が平板部71の中心点(図4上の一点鎖線の中心線の交点)となる位置に配置されている。穴722は、穴721と重なり、穴721と比較して大きい円形の穴であり、その中心点が穴721の中心点より-x方向にずれた位置に配置されている。
【0030】
固定脚部73は、平板部71のx軸方向の両端に対向して接続され、+z方向に延在する固定された2つの脚部である。各固定脚部73は、2つの脚731と、スリット732と、を有する。脚731は、+z方向に延在する脚である。スリット732は、脚731に形成されz軸方向に延在し、アンテナベース部20に形成された突起部(図示略)が嵌合されるスリットである。アンテナベース部20の突起部に固定されたスリット732は、雄螺子部80の締結時に、脚付きワッシャ70が雄螺子部80を中心にしてxy平面で回転することを防ぐ。
【0031】
可動脚部74は、平板部71のy軸方向の両端に対向して接続され、+z方向及び+y方向の合成方向、又は+z方向及び-y方向の合成方向に延在する可動の1組の脚部である。各組の可動脚部74は、2つの脚741と、バネ部742と、切欠部743と、爪部744と、凹部745と、スリット746と、突起部747と、接続部748と、を有する。脚741は、+z方向及び+y方向の合成方向、又は+z方向及び-y方向の合成方向に延在し、バネ部742を中心とするyz平面の回転方向に可動する(固定脚部73に対して開く又は閉じる)脚である。
【0032】
バネ部742は、平板部71と脚741とを接続し、かつバネ性を有する2つの板バネ部である。切欠部743は、各バネ部742のバネ性の強さを調整するための切欠部である。切欠部743の大きさが大きいほど、変形したバネ部742の反発力(復元力)が小さくなるので、バネ部742のバネ性の強さが適切になるように、切欠部743の大きさが設定されている。
【0033】
爪部744は、各脚741の先端に設けられている2つの爪部である。アンテナ装置1が車両のルーフR1の固定用開口F1に取り付けられる場合に、爪部744が、ルーフR1の表面の塗装を突き抜けて中の金属部分に食い込むように接触する。車両のグラウンド電位を有するルーフR1の金属部分から爪部744を含むアンテナ取付具60を介して、アンテナ装置1のグラウンド電位がとられている。
【0034】
凹部745は、脚741の強度を増すために設けられたリブである。スリット746は、凹部745の先端に設けられ、アンテナベース部20(ルーフR1)に対する爪部744の高さ(+z方向の長さ)を調整する機能を有する。各脚741に2つの爪部744が設けられており、アンテナベース部20に対する全ての爪部744の高さは、設計値としては同じになるが、製造ばらつきにより実際の部品では同じにはならない。そのため、1つの可動脚部74の2つの脚741は、凹部745があるため剛性があるが、スリット746を設ける事で、先端の4つの爪部744のそれぞれがある程度の自由度(遊び)を持つことができ、ルーフR1に取り付ける際に例えば1か所だけ爪部744が刺さらないというような不良を防ぐ。
【0035】
突起部747は、各脚741の+x方向及び-x方向に延在する1組の突起部であり、アンテナベース部20に形成されたスリット(図示略)に嵌合されて固定される。アンテナベース部20のスリットにより固定された突起部747は、アンテナ本体部M1へのアンテナ取付具60の取り付け時に、可動脚部74が当該スリットで規定された位置より広がることを防ぐ。接続部748は、突起部747を脚741に接続する略三角形状の接続部である。
【0036】
雄螺子部80の円筒部83は、螺子山部84及び頭部85の間に位置し、螺子切りがされていない軸部である。螺子山部84は、雄螺子部80の-z方向側に位置し、雄螺子の螺子切りがされて螺子山を有し-z方向に延在する軸部である。
【0037】
頭部85は、雄螺子部80の+z方向側に位置し、作業員が有するボルト用の工具により回転される雄螺子部80の頭部であり、+z方向側の略六角柱部と-z方向側の略円板部とからなる。
【0038】
図4に示すように、穴721の断面(xy平面)の直径をφ1とし、穴722の断面(xy平面)の直径を直径φ2とする。図5に示すように、円筒部83の軸方向(z軸方向)に直交する断面(xy平面)の直径を直径φ3とし、螺子山部84の軸方向(z軸方向)に直交する断面(xy平面)の直径を直径φ4とし、頭部85の略円板部の軸方向(z軸方向)に直交する断面(xy平面)の直径を直径φ5とする。ここで、穴721の直径φ1は、次式(1)の関係を有する。
φ3<φ1<φ4 …(1)
穴722の直径φ2は、次式(2)の関係を有する。
φ4<φ2<φ5 …(2)
【0039】
式(1)、式(2)により、円筒部83が穴721及び穴722を接触せずに通すことが可能である。螺子山部84は、穴722を接触せずに通すことが可能であるものの穴721を通らない。頭部85は、穴721も穴722も通らない。また、穴部72は、穴722を通された円筒部83を穴721にスライドすることが可能な形状を有する。このため、雄螺子部80において、螺子山部84が穴722を通され、円筒部83も穴722を通された後、円筒部83を穴721へ+x方向にスライドすることが可能となり、スライド後に、螺子山部84が穴721から-z方向に抜けなくなる。
【0040】
つぎに、図6(a)~図7(c)を参照して、車両のルーフR1の固定用開口F1へのアンテナ装置1の取り付け方法を説明する。図6(a)は、螺子山部84を穴722に通す前の状態のアンテナ取付具60の斜視図である。図6(b)は、螺子山部84及び円筒部83を穴722に通した後の状態のアンテナ取付具60を示す斜視図である。図6(c)は、円筒部83を穴721にスライドした後の状態のアンテナ取付具60を示す斜視図である。図7(a)は、アンテナ取付具60を固定用開口F1に通している最中の仮留め状態のアンテナ装置1の側面図である。図7(b)は、アンテナ取付具60を固定用開口F1に通した後の仮留め状態のアンテナ装置1の側面図である。図7(c)は、雄螺子部80を締結後の取付状態のアンテナ装置1の側面図である。
【0041】
車両のルーフR1の設置面の固定用開口F1へのアンテナ装置1の取り付けまでの作業工程は、(P1)アンテナ装置1のアンテナカバー部10及びパッド52を除くアンテナ本体部M1の組立→(P2)アンテナ取付具60の組立→(P3)アンテナ本体部M1へのアンテナ取付具60の取り付け(仮留め)→(P4)アンテナ本体部M1へのアンテナカバー部10及びパッド52の取り付け→(P5)固定用開口F1へのアンテナ装置1の取り付け→(P6)アンテナ取付具60の締結、の各工程により行われる。各工程を順に説明する。
【0042】
工程P1のアンテナカバー部10及びパッド52を除くアンテナ本体部M1の組立と、工程P2のアンテナ取付具60の組立と、を説明する。作業員は、アンテナ本体部M1の組立と、アンテナ取付具60の組立と、を行う。アンテナカバー部10及びパッド52を除くアンテナ本体部M1の組立は、従来と同様であり、説明を省略する。アンテナ取付具60の組立について、まず、図3に示すように、作業員は、脚付きワッシャ70と、雄螺子部80と、を用意する。雄螺子部80の螺子山部84には、予めネジロック剤が塗布されて固体化されているものとする。
【0043】
そして、図6(a)に示すように、作業員は、雄螺子部80の螺子山部84を脚付きワッシャ70の穴722の上方向(-z方向側)に位置させる。
【0044】
そして、図6(b)に示すように、作業員は、螺子山部84及び円筒部83を+z方向に移動し、穴722に挿入する。穴722の直径φ2は、式(2)の関係を有するので、穴722に直径φ4の螺子山部84が挿入されても、穴722への螺子山部84の接触が軽減され、螺子山部84のネジロック剤の剥離も軽減される。そして、円筒部83が穴722に挿入され、頭部85が平板部71に接触して止められる。つまり、円筒部83と平板部71との高さ(z軸方向の位置)が同じにされる。
【0045】
そして、図6(c)に示すように、作業員は、雄螺子部80の円筒部83を、穴722から穴721へ+x方向にスライドして、アンテナ取付具60の組立(脚付きワッシャ70への雄螺子部80の組付け)を完了する。穴721の直径φ1の式(1)の関係と、穴部72の形状とにより、円筒部83を穴721にスライドできる。円筒部83は、螺子山がないので、穴721の内縁との接触を少なくし、容易にスライドできる。加えて、雄螺子部80がスライドされたアンテナ取付具60において、作業員が、雄螺子部80を-z方向に引っ張ったり、-z方向が重力方向になるようにアンテナ取付具60の姿勢をとったとしても、式(1)により螺子山部84の直径φ4が穴721の直径φ1より大きいため、雄螺子部80がアンテナ取付具60(脚付きワッシャ70)から外れない。
【0046】
ついで、工程P3のアンテナ本体部M1へのアンテナ取付具60の取り付け(仮留め)を説明する。作業員は、組立後のアンテナ取付具60の雄螺子部80を、組立後のアンテナ本体部M1のアンテナベース部20の雌螺子部221に所定量螺合して、アンテナ装置1を仮留め状態にする。当該螺合する所定量は、アンテナ取付具60がアンテナ本体部M1から外れなく、かつアンテナ取付具60がアンテナベース部20に組付けられて固定されない量である。また、式(1)により、円筒部83の直径φ3が穴721の直径φ1よりも小さいので、円筒部83が穴721に引っ掛かることなく、雄螺子部80を螺合(回転)できる。工程P4のアンテナカバー部10及びパッド52を除くアンテナ本体部M1へのアンテナカバー部10及びパッド52の取り付けは、従来と同様であり、説明を省略する。
【0047】
ついで、工程P5の固定用開口F1への仮留め状態のアンテナ装置1の取り付けを説明する。まず、図2に示すように、作業員は、仮留め状態のアンテナ装置1を車両のルーフR1の設置面の固定用開口F1の上方(+z方向側)に位置させる。
【0048】
そして、図7(a)に示すように、作業員は、仮留め状態のアンテナ装置1の可動脚部74を-z方向に移動する。このとき、可動脚部74は、固定用開口F1の内縁に押下されて閉じた状態になる。作業員は、可動脚部74が閉じた状態のアンテナ取付具60を固定用開口F1に挿通させる。
【0049】
そして、図7(b)に示すように、固定用開口F1へアンテナ取付具60を通した後に、可動脚部74にかかる圧力が解放されて可動脚部74が広がる解放状態となる。この解放状態では、作業員がアンテナ装置1を+z方向に引っ張っても、広がった可動脚部74がルーフR1に引っ掛かり、抜けない。
【0050】
ついで、工程P6のアンテナ取付具60の締結を説明する。図7(c)に示すように、作業員は、固定用開口F1を挿通された可動脚部74の解放状態のアンテナ装置1について、雄螺子部80をインパクトドライバなどにより増し締めして締結し、固定用開口F1へのアンテナ装置1の取り付けを終了する。脚付きワッシャ70のスリット732、突起部747により、脚付きワッシャ70を回転することなく、アンテナ装置1をルーフR1の取付対象位置へ固定して雄螺子部80を締結できる。
【0051】
以上、本実施の形態によれば、アンテナ取付具60は、車両のルーフR1の固定用開口F1に設置されるアンテナ装置1のアンテナ本体部M1に螺合され、頭部85及び螺子山部84と、頭部85及び螺子山部84の間に設けられ、頭部85及び螺子山部84よりも断面が小さい(直径φ3<直径φ4,φ5の)円筒部83と、を有する雄螺子部80と、雄螺子部80の一部を通す穴部72を有する脚付きワッシャ70と、を備える。穴部72は、互いに大きさの異なる穴721,722を重ねた形状を有する。穴721は、頭部85及び螺子山部84を通さず、円筒部83を通す形状を有する。穴722は、頭部85を通さず、螺子山部84及び円筒部83を通す形状を有する。穴部72は、穴722に円筒部83が挿入された状態で雄螺子部80を穴721にスライド可能な形状を有する。
【0052】
このため、作業員が雄螺子部80を穴722に挿入して穴721にスライドするという簡単な作業により、アンテナ取付具60からの雄螺子部80の抜け落ちを防止でき、スライド時に雄螺子部80の軸方向を雌螺子部221の軸方向(z軸方向)に合わせることができるので、雄螺子部80の斜め掛かりを防ぐことができ、アンテナ取付具60の組立工程における作業性を向上できる。このように、斜め掛かりなど意図せぬ組み付けが発生した際、アンテナ取付具60などの部品(最悪の場合、アンテナ装置1の製品)を廃棄する必要があるが、そのリスクを低減できる。また、螺子山部84を(直径φ4<φ2の)穴722に通し、また雄螺子部80のスライドにおいて、雄螺子部80のうちの円筒部83が穴部72の内縁に接触しうるので、螺子山部84に塗布されたネジロック剤の剥離を軽減できる。
【0053】
さらに、従来の固定構造のように脚付きワッシャ70と雄螺子部80とが噛みこむおそれがないため、作業員が車両のルーフR1からアンテナ装置1を取り外す場合や、アンテナ装置1を交換する場合に、取り外し工程の作業性が向上する。
【0054】
また、穴721,722の形状は、円である。このため、穴721,722に雄螺子部80を適切に通すことができ、かつ脚付きワッシャ70の強度を高めることができる。
【0055】
また、頭部85及び螺子山部84の間に設けられた中間部は、円筒部83である。このため、穴722に円筒部83が挿入された状態で雄螺子部80を穴721に容易にスライドできる。
【0056】
また、脚付きワッシャ70は、アンテナ本体部M1にアンテナ取付具60が仮留めされた状態で車両のルーフR1の固定用開口F1に挿入された後に、雄螺子部80が螺合されてルーフR1をアンテナ本体部M1との間で挟む固定脚部73及び可動脚部74を有する。このため、アンテナ装置1を容易に車両のルーフR1に取り付けることができる。
【0057】
また、アンテナ装置1は、アンテナ取付具60と、アンテナ本体部M1と、を備える。このため、アンテナ取付具60からの雄螺子部80の抜け落ち及び斜め掛かりを防止でき、アンテナ取付具60の組立工程、取り外し工程における作業性を良化でき、螺子山部84に塗布されたネジロック剤の剥離を軽減できるアンテナ装置1を構成できる。
【0058】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係るアンテナ取付具及びアンテナ装置の一例であり、これに限定されるものではない。
【0059】
例えば、上記実施の形態の脚付きワッシャ70では、穴部72を、断面の大きさとして直径の異なる2つの同じ形状としての円の穴を重ね合わせた構成としたが、これに限定されるものではない。脚付きワッシャの穴部として、重ねる穴の形状は、四角、三角など、他の形状としてもよい。また、重ねる穴の形状は、互いに異なる種類の形状としてもよい(例えば、大きい辺の正方形の穴と、小さい直径の円の穴とが重ねられた穴部)。
【0060】
また、上記実施の形態の脚付きワッシャ70では、平板部71の中心点に、小さい直径φ1の穴部72の穴721の中心点が位置する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、平板部71の中心点に、大きい直径φ2の穴722の中心点が位置する構成としてもよい。このように、アンテナ装置1の取り付け時の小さい方の穴の位置は、平板部71の任意の位置にとる構成としてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態のアンテナ装置1では、アンテナ装置1が、車両のルーフR1に取り付けられる構成としたが、これに限定されない。アンテナ装置1が、車両などの移動体の他の場所に取り付けられる構成としてもよい。例えば、アンテナ装置1が、車両のバンパーの一部や、ルーフの下側のフレーム(車両内部側)に取り付けられる構成としてもよい。
【0062】
その他、上記実施の形態におけるアンテナ装置1の細部構成及び詳細動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 アンテナ装置
M1 アンテナ本体部
10 アンテナカバー部
20 アンテナベース部
21 平板部
211 マーク
221 雌螺子部
22 螺子穴部
23 コネクタ用穴部
30 基板部
31 コネクタ部
40 アンテナ部
50 パッド部
51,52 パッド
60 アンテナ取付具
70 脚付きワッシャ
71 平板部
711 凹部
72 穴部
721,722 穴
73 固定脚部
731 脚
732 スリット
74 可動脚部
741 脚
742 バネ部
743 切欠部
744 爪部
745 凹部
746 スリット
747 突起部
748 接続部
80 雄螺子部
83 円筒部
84 螺子山部
85 頭部
R1 ルーフ
F1 固定用開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7