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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163275
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20231102BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/165
B41J2/175 121
B41J2/175 153
B41J2/165 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074046
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 一太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA20
2C056JA01
2C056JA06
2C056JA13
2C056JA21
2C056JA27
2C056JB04
2C056JB15
2C056KB14
2C056KB15
2C056KB20
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】洗浄液を通すチューブの絡まりを防止し、チューブの損傷や洗浄液の漏れを防止できる手段を提供する。
【解決手段】プリンタ10は、ヘッド30と、筐体11内をサブタンク空間133とメンテナンス空間134とに区画し、貫通孔132を有するフレーム131と、サブタンク空間133とメンテナンス空間134との間でヘッド30のメンテナンスに用いられる洗浄液を通す複数のチューブ161~167と、フレーム131の貫通孔132に嵌合するガイド部材140とを備えている。ガイド部材140は、複数のチューブ161~167に対応する複数のチューブ孔141~147を有し、複数のチューブ161~167は、それぞれ、対応するチューブ孔に挿通されている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
筐体内を第1空間と第2空間とに区画し、貫通孔を有する壁部材と、
上記第1空間と上記第2空間との間で上記ヘッドのメンテナンスに用いられる洗浄液を通す複数のチューブと、
上記壁部材の貫通孔に嵌合するガイド部材とを備え、
上記ガイド部材は、上記複数のチューブに対応する複数のチューブ孔を有し、
上記複数のチューブは、それぞれ、対応する上記チューブ孔に挿通されている液体吐出装置。
【請求項2】
上記ガイド部材は、上記貫通孔のエッジ部分に対応するフランジを有する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
上記複数のチューブ孔は、複数の列に配列されており、上記複数の列は、第1方向に沿うものであり、
上記複数の列には、上記チューブ孔の上記第1方向の位置が互いに異なる列が含まれている請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
上記複数の列には、上記チューブ孔の上記第1方向の位置が同じ列が含まれている請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
上記ガイド部材は、表面に、上記チューブ孔に挿通すべき上記チューブの種類を示す位置表示部を有する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
上記ガイド部材は、上記壁部材を挟むフックを有する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体を通す第2チューブをさらに備え、
上記第2チューブは、上記ガイド部材の、上記チューブ孔とは別の第2チューブ孔に挿通されている請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
複数のハーネスをさらに備え、
上記複数のハーネスは、上記ガイド部材の、上記チューブ孔及び上記第2チューブ孔とは別の貫通孔に挿通されている請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
温度センサをさらに備え、
上記温度センサは、上記ガイド部材の載置部に載置されている請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
液体を貯留する液体サブタンクと、
洗浄液を貯留する洗浄液サブタンクと、
洗浄液を貯留する洗浄液カートリッジが装着される装着ケースとをさらに備え、
上記ガイド部材は、上記液体サブタンクと上記洗浄液サブタンクとの間、且つ上記装着ケースに装着された上記洗浄液カートリッジより上に位置する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
上記チューブは、ウレタン系材料で形成されている請求項1に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドのノズルから液体を吐出し、洗浄液を用いてヘッドのメンテナンスを行う液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドのワイパを洗浄液で洗浄するインクジェットプリンタの例が記載されている。このプリンタは、洗浄液の供給を制御するために、複数のポンプや複数のバルブを備えている。さらに、このプリンタは、洗浄液を通す複数のチューブや、ポンプ及びバルブに電気信号を供給する複数のハーネスを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-198988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗浄液を用いてヘッドのメンテナンスを行う液体吐出装置を小型化するために、洗浄液を通す複数のチューブを最短経路で配置した場合、チューブやハーネスが互いに複雑に絡まることがある。チューブ取り付け作業中にチューブが絡まると、チューブに予期しない方向の力がかかり、チューブが損傷することがある。また、画像記録中にチューブが絡まると、チューブが接続先から抜けて洗浄液が漏れることがある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗浄液を通すチューブの絡まりを防止し、チューブの損傷や洗浄液の漏れを防止できる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、筐体内を第1空間と第2空間とに区画し、貫通孔を有する壁部材と、上記第1空間と上記第2空間との間で上記ヘッドのメンテナンスに用いられる洗浄液を通す複数のチューブと、上記壁部材の貫通孔に嵌合するガイド部材とを備えている。上記ガイド部材は、上記複数のチューブに対応する複数のチューブ孔を有し、上記複数のチューブは、それぞれ、対応する上記チューブ孔に挿通されている。
【0007】
上記液体吐出装置によれば、ガイド部材の各チューブ孔に対応するチューブを挿通し、ガイド部材を壁部材に固定することにより、チューブの絡まりを防止し、チューブの損傷や洗浄液の漏れを防止できる。
【0008】
(2) 好ましくは、上記ガイド部材は、上記貫通孔のエッジ部分に対応するフランジを有していてもよい。
【0009】
(3) 好ましくは、上記複数のチューブ孔は、複数の列に配列されており、上記複数の列は、第1方向に沿うものであり、上記複数の列には、上記チューブ孔の上記第1方向の位置が互いに異なる列が含まれていてもよい。
【0010】
(4) 好ましくは、上記複数の列には、上記チューブ孔の上記第1方向の位置が同じ列が含まれていてもよい。
【0011】
(5) 好ましくは、上記ガイド部材は、表面に、上記チューブ孔に挿通すべき上記チューブの種類を示す位置表示部を有していてもよい。
【0012】
(6) 好ましくは、上記ガイド部材は、上記壁部材を挟むフックを有していてもよい。
【0013】
(7) 好ましくは、上記液体吐出装置は、液体を通す第2チューブをさらに備え、上記第2チューブは、上記ガイド部材の、上記チューブ孔とは別の第2チューブ孔に挿通されていてもよい。
【0014】
(8) 好ましくは、上記液体吐出装置は、複数のハーネスをさらに備え、上記複数のハーネスは、上記ガイド部材の、上記チューブ孔及び上記第2チューブ孔とは別の貫通孔に挿通されていてもよい。
【0015】
(9) 好ましくは、上記液体吐出装置は、温度センサをさらに備え、上記温度センサは、上記ガイド部材の載置部に載置されていてもよい。
【0016】
(10) 好ましくは、上記液体吐出装置は、液体を貯留する液体サブタンクと、洗浄液を貯留する洗浄液サブタンクと、洗浄液を貯留する洗浄液カートリッジが装着される装着ケースとをさらに備え、上記ガイド部材は、上記液体サブタンクと上記洗浄液サブタンクとの間、且つ上記装着ケースに装着された上記洗浄液カートリッジより上に位置してもよい。
【0017】
(11) 好ましくは、上記チューブは、ウレタン系材料で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、洗浄液を通すチューブの絡まりを防止し、チューブの損傷や洗浄液の漏れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ10の外観斜視図である。
図2図2は、図1のII-II断面を示す断面図である。
図3図3は、プリンタ10のブロック図である。
図4図4(A)は、ヘッド30のノズル面31を示す模式図であり、図4(B)は、メンテナンス部60の上面を示す模式図である。
図5図5(A)は、第1支持部40が傾斜位置に回動した状態を示す図であり、図5(B)は、メンテナンス部60が第1支持部40上に移動した状態を示す図である。
図6図6(A)は、キャップ61が吐出部32を覆う状態を示す図であり、図6(B)は、メンテナンス部60のワイパが吐出部32を拭く状態を示す図である。
図7図7は、インク/洗浄液循環部110の構成を示す図である。
図8図8は、筐体11内を2つの空間に区画するフレーム131を示す図である。
図9図9(A)は、ガイド部材140の外観斜視図であり、図9(B)は、ガイド部材140の左側面図であり、図9(C)は、ガイド部材140の右側面視図であり、図9(D)は、ガイド部材140の背面図である。
図10図10(A)は、ガイド部材140の使用状態を示す図であり、図10(B)は、図10(A)のIII-III断面を示す断面図である。
図11】ガイド部材140にチューブ161~167を挿通した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、プリンタ10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、プリンタ10の排出口13が形成された面を前面として前後方向8が定義され、プリンタ10を前面から視て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、及び左右方向9は、互いに直交している。
【0021】
[プリンタ10の概要]
本実施形態に係るプリンタ10は、インクジェット印刷方式でシートに対してインク(液体の一例)を吐出する液体吐出装置の一例である。プリンタ10は、シートにブラックのインクを吐出するモノクロプリンタである。
【0022】
図1に示されるように、プリンタ10は、概ね直方体の形状を有する筐体11を備える。筐体11は、例えば、卓上に載置可能なサイズを有する。プリンタ10は、卓上、床面、或いはラックに載置されて使用される。
【0023】
筐体11の前面12には、排出口13、操作パネル14、及び表示部15が位置する。排出口13は、左右方向9に長いスリット状である。排出口13からは、画像記録済みのシートS(図2参照)が排出される。操作パネル14は、プリンタ10のユーザによって操作される。ユーザは、操作パネル14を操作することにより、プリンタ10に対して各種の指示や設定等を入力する。表示部15は、プリンタ10の状態等を表示する。表示部15は、例えば、プリンタ10でエラーが発生した旨を表示する。
【0024】
[プリンタ10の内部構成]
図2に示されるように、筐体11内には、ホルダ21、テンショナ22、搬送ローラ対23、搬送ローラ対24、支持部25、ワイパクリーニング部26、カッター27、ヘッド30、第1支持部40、第2支持部50、メンテナンス部60、及び装着ケース71が位置する。図2には記載されていないが、筐体11内には、制御部100(図3参照)、インク/洗浄液循環部110、インクサブタンク74、洗浄液カートリッジ76が装着される装着ケース75、洗浄液サブタンク77(図7参照)等が位置する。
【0025】
筐体11内において、ホルダ21は、左右方向9に延伸する。ホルダ21には、芯管(図示せず)に長尺のシートSが巻回されたロール体Rが取り付けられる。ホルダ21は、ロール体Rが芯管の周方向に回転可能となるようにロール体Rを支持する。ホルダ21は、搬送モータ81(図3参照)から駆動力が伝達されて回転する。ホルダ21の回転に伴い、ホルダ21に支持されているロール体Rも回転する。
【0026】
シートSは、ロール体Rの後端から上方に引き出され、テンショナ22へ案内される。テンショナ22の前方には、搬送ローラ23Aとピンチローラ23Bとを含む搬送ローラ対23が位置する。搬送ローラ対23の前方には、搬送ローラ24Aとピンチローラ24Bとを含む搬送ローラ対24が位置する。
【0027】
搬送ローラ23A、24Aは、搬送モータ81(図3参照)から駆動力が伝達されて回転する。搬送ローラ対23は、テンショナ22から前向きに延びるシートSをニップしながら回転することにより、シートSを前向きに送り出す。搬送ローラ対24は、搬送ローラ対23から送り出されたシートSをニップしながら回転することにより、シートSをさらに前向きに送り出す。搬送ローラ対24から送り出されたシートSは、排出口13の近傍に位置するカッター27によって所望の長さに切断され、排出口13から排出される。図2の二点鎖線は、シートSの搬送路28を示す。
【0028】
ヘッド30は、搬送路28の上方において、搬送ローラ対23より搬送向きの下流側に位置する。ヘッド30の下面は、ノズル面31と称される。ノズル面31は、下向きに開口する複数のノズル33を有する。複数のノズル33から、搬送ベルト41(後述)に支持されたシートSへ向かって、インクが下向きに吐出される。これにより、シートSに画像が記録される。
【0029】
第1支持部40は、ヘッド30の下方に位置し、ヘッド30と対向している。第1支持部40は、搬送ベルト41、駆動ローラ42、従動ローラ43、及びギヤ44、45を有する。搬送ベルト41は、搬送ローラ対23によって搬送されてヘッド30の直下に位置するシートSを支持する。搬送ベルト41は、支持しているシートSを前向きに搬送する。後述されるように、第1支持部40は、メンテナンス部60を支持可能である。
【0030】
駆動ローラ42及び従動ローラ43は、前後方向8に離れた位置に位置する。搬送ベルト41は、無端ベルトであり、駆動ローラ42及び従動ローラ43に張架される。搬送ベルト41は、左右方向9において、搬送路28内に配置されている。
【0031】
駆動ローラ42は、搬送モータ81(図3参照)から駆動力が伝達されて回転し、搬送ベルト41を回動させる。従動ローラ43は、搬送ベルト41の回動に伴い回転する。搬送ベルト41の外周面における上側部分は、シートSの搬送面46として機能する。搬送面46は、搬送ローラ対23、24の間で搬送されるシートSを下方から支持しながら、シートSに搬送力を与える。これにより、搬送路28に位置するシートSは、前向きに搬送される。
【0032】
第1支持部40は、左右方向9に延伸する軸47を有する。軸47は、筐体11によって回転可能に支持されている。軸47は、駆動ローラ42より搬送向きの上流側、且つ搬送ローラ対23より下方に位置する。軸47は、軸モータ84(図3参照)から駆動力が伝達されて回転する。軸47が回転することにより、第1支持部40は軸47を中心として回動し、ヘッド30のノズル面31に平行な水平位置(図2参照)と、第2支持部50の上面に平行な傾斜位置(図5(A)参照)との間で移動する。
【0033】
ギヤ44、45は、第1支持部40によって回転可能に支持されている。ギヤ45は、直接的に又は他のギヤ等を介して第1モータ85(図3参照)から駆動力が伝達されて回転する。
【0034】
支持部25は、ヘッド30及び第1支持部40より搬送路28の下流側、且つ搬送ローラ24Aの下方に位置する。支持部25の下面は、斜め方向6と平行である。斜め方向6は、左右方向9に直交し、且つ前方へ向かうに従い下方へ向かう方向である。ワイパクリーニング部26は、支持部25の下面に位置する。ワイパクリーニング部26には、インク/洗浄液循環部110によって、洗浄液カートリッジ76及び洗浄液サブタンク77から洗浄液が供給される(詳細は後述)。
【0035】
第2支持部50は、支持部25の下方、且つ斜め後方に位置する。第2支持部50は、ギヤ51~53を有する。第2支持部50は、全体として斜め方向6に延びた状態で配置されている。第2支持部50は、待機中のメンテナンス部60を支持する。
【0036】
第2支持部50を斜め方向6及び左右方向9に直交する方向(以下、直交方向と称される)に移動するために、第2支持部50はボールネジ54のナット部材に取り付けられている。ボールネジ54のネジ軸は、筐体11によって、直交方向に沿った軸周りに回転可能に支持されている。ネジ軸は、上下駆動モータ83(図3参照)から駆動力が伝達されて回転する。ボールネジ54のナット部材は、ネジ軸の回転によって直交方向に沿って斜め上向き又は斜め下向きに移動する。これにより、第2支持部50は、直交方向に沿って、ワイパクリーニング部26に近い位置、及びワイパクリーニング部26から離れた位置に移動する。第2支持部50が前者の位置に位置するときに、ワイパクリーニング部26は、メンテナンス部60のワイパ(後述)をクリーニングする。
【0037】
ギヤ51~53は、第2支持部50に回転可能に支持されている。ギヤ53は、ギヤ51、52に噛合している。ギヤ53は、直接的に又は他のギヤ等を介して第2モータ86(図3参照)から駆動力を付与されて回転する。ギヤ53が回転すると、ギヤ51、52は同じ方向に回転する。ギヤ51、52は、対向する位置にあるメンテナンス部60の下面に位置するラック64と噛合可能である。
【0038】
装着ケース71は、筐体11の前下方に位置し、前方を向いて開口する箱形状である。装着ケース71は、インクニードル72を有する。装着ケース71には、インクカートリッジ73が後向きに装着される。インクカートリッジ73は、顔料等を含むインクを貯留している。装着ケース71にインクカートリッジ73が装着されるときに、インクカートリッジ73のインク流出口にはインクニードル72が挿入される。インクニードル72は、図7に示されるインク/洗浄液循環部110に接続されている。装着ケース71に装着されたインクカートリッジ73に貯留されているインクは、インクサブタンク74(図7参照)に供給され、インクサブタンク74からインク/洗浄液循環部110を経由してヘッド30のノズル33に供給される。
【0039】
[ヘッド30]
図2及び図4(A)に示されるように、ヘッド30のノズル面31には、3つの吐出部32A~32Cが位置する。吐出部32A~32Cは、それぞれ、2次元上に並んだ複数のノズル33を有する。吐出部32A~32Cは、左右方向9において搬送路28内に配置される。吐出部32A、32Bは、前後方向8において同じ位置に、且つ左右方向9に間隔を空けて配置される。吐出部32Cは、吐出部32A、32Bより前、且つ左右方向9において吐出部32A、32Bの間に配置される。吐出部32Cの左端は、吐出部32Aの右端より左に位置する。吐出部32Cの右端は、吐出部32Bの左端より右に位置する。なお、ヘッド30が有する吐出部32の個数は、3つに限らず、任意でよい。
【0040】
ヘッド30を上下方向7に移動するために、ヘッド30はボールネジ34のナット部材に取り付けられている。ボールネジ34のネジ軸は、筐体11によって、上下方向7に沿った軸周りに回転可能に支持されている。ネジ軸は、ヘッドモータ82(図3参照)から駆動力が伝達されて回転する。ボールネジ34のナット部材は、ネジ軸の回転によって上向き又は下向きに移動する。これにより、ヘッド30は、上下方向7に沿って、図2に示される記録位置、図6(A)に示される被キャップ位置、図6(B)に実線で示される被ワイプ位置、及び図6(B)に破線で示されるアンキャップ位置に移動する。
【0041】
[メンテナンス部60]
メンテナンス部60は、ヘッド30のメンテナンスを行うための部材である。メンテナンス部60は、移動可能に構成されている。メンテナンス部60は、待機中は第2支持部50によって支持される(図2及び図5(A)参照)。ヘッド30のメンテナンスが行われるときには、メンテナンス部60は、第1支持部40によって支持され、ヘッド30の直下に移動される(図5(B)及び図6参照)。
【0042】
図2及び図4(B)に示されるように、メンテナンス部60の上面には、3つのキャップ61A~61C、3つのスポンジワイパ62A~62C、及び3つのゴムワイパ63A~63Cが位置する。キャップ61A~61Cは、ゴムやシリコン等の弾性体で構成されており、上方が開放された箱形形状を有する。キャップ61A~61Cは、ヘッド30が被キャップ位置に位置し、且つメンテナンス部60がメンテナンス位置(後述)に位置するときに、吐出部32A~32Cを覆う位置に配置される。キャップ61A~61Cには、インク/洗浄液循環部110によって、洗浄液カートリッジ76及び洗浄液サブタンク77から洗浄液が供給される(詳細は後述)。
【0043】
スポンジワイパ62A~62Cは、スポンジによって形成されている。ゴムワイパ63A~63Cは、ゴムによって形成されている。スポンジワイパ62A~62C及びゴムワイパ63A~63Cは、左右方向9に長い形状を有する。スポンジワイパ62A~62Cの左右方向9の長さは、それぞれ、吐出部32A~32C内のノズル33の配置領域の左右方向9の長さより長い。ゴムワイパ63A~63Cの左右方向9の長さは、それぞれ、スポンジワイパ62A~62Cの左右方向9の長さと同等である。ゴムワイパ63A~63Cの高さは、それぞれ、スポンジワイパ62A~62Cの左右方向9の高さと同等である。図4(B)に示されるように、スポンジワイパ62A~62Cは、それぞれ、キャップ61A~61Cの後方に、キャップ61A~61Cの後方の辺と平行に配置される。ゴムワイパ63A~63Cは、それぞれ、スポンジワイパ62A~62Cの後方に、スポンジワイパ62A~62Cと平行に配置される。
【0044】
メンテナンス部60の下面の一部には、ラック64が位置する。第1支持部40のギヤ44、及び第2支持部50のギヤ51、52は、ラック64に噛合可能である。ラック64とギヤ51、52の少なくとも一方が噛合した状態でギヤ53が回転することにより、メンテナンス部60は第2支持部50の上面に沿って移動する。ラック64とギヤ44とが噛合した状態でギヤ45が回転することにより、メンテナンス部60は第1支持部40の上面に沿って移動する。また、第1支持部40が傾斜位置に位置するとき、第1支持部40の前端は第2支持部50の後端の近傍に位置し、第1支持部40の上面と第2支持部50の上面とは同一平面上に位置する(図5(A)参照)。したがって、メンテナンス部60は、図2及び図5(A)に示される待機位置、図6(B)に破線で示される待避位置、図6(A)に示されるメンテナンス位置、及び図6(B)に実線で示されるワイプ位置に移動可能である。
【0045】
[ヘッド30のメンテナンス処理]
プリンタ10は、ヘッド30のメンテナンス処理として、パージ処理、キャップ洗浄処理、及びワイプ処理を実行する。パージ処理及びキャップ洗浄処理は、ヘッド30が被キャップ位置に位置し、且つメンテナンス部60がメンテナンス位置に位置する状態(図6(A)に示される状態)で実行される。パージ処理は、メンテナンス部60のキャップ61A~61Cによってヘッド30の吐出部32A~32Cをそれぞれ覆った状態で、吸引ポンプ(図示せず)によってノズル33からインクを吸引する処理である。キャップ洗浄処理は、同じ状態で、キャップ61に供給した洗浄液によってヘッド30のノズル面31を洗浄する処理である。ワイプ処理は、ヘッド30が被ワイプ位置に位置し、且つメンテナンス部60がワイプ位置に位置する状態(図6(B)に示される状態)で実行される。ワイプ処理は、メンテナンス部60のスポンジワイパ62A~62C及びゴムワイパ63A~63Cによってヘッド30のノズル面31を拭く処理である。
【0046】
[制御部100]
図3に示されるように、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104、及びASIC105を備えている。CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104、及びASIC105は、内部バス106によって相互に接続されている。ROM102は、CPU101が各種の処理を実行するためのプログラム等を記憶している。RAM103は、CPU101がプログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM104は、電源オフ後も保持すべき情報を記憶している。
【0047】
ASIC105は、プリンタ10内のセンサから信号を受け取り、CPU101からの制御に従いプリンタ10内のモータ及びバルブを制御する。制御部100は、ASIC105を通じて各モータを駆動することにより、各モータを回転させ、各モータに接続された部材を回動させる。また、制御部100は、ASIC105を通じてヘッド30の駆動素子(図示せず)に駆動信号を出力することにより、ヘッド30のノズル33からインクを吐出させる。ASIC105は、ノズル33から吐出すべきインクの量に応じた駆動信号を出力する。ASIC105には、操作パネル14、表示部15、及び温湿度センサ159(図9参照)が接続されている。
【0048】
[インク/洗浄液循環部110]
以下、図7が参照されて、プリンタ10のインク/洗浄液循環部110について説明される。図7に示されるインク/洗浄液循環部110は、正圧ポンプ111、負圧ポンプ112、3つのキャップ用ポンプ113A~113C、ワイパ用ポンプ114、補給バルブ115、負圧調整バルブ116、大気開放バルブ117、排気バルブ121、パージ遮断バルブ122、パージバイパスバルブ123、洗浄液補給バルブ124、キャップ洗浄バルブ125、ワイパ洗浄バルブ126、メンテナンス大気バルブ127、サブタンク連結バルブ128、及び、これらの要素を接続する複数のチューブを含んでいる。
【0049】
上述されたように、インクカートリッジ73は、顔料等を含むインクを貯留している。インクカートリッジ73は、装着ケース71に装着される。インクサブタンク74は、インクカートリッジ73に貯留されているインクを一時的に貯留する。洗浄液カートリッジ76は、ヘッド30のメンテナンスに使用される洗浄液を貯留している。洗浄液カートリッジ76は、装着ケース75に装着される。洗浄液サブタンク77は、洗浄液カートリッジ76に貯留されている洗浄液を一時的に貯留する。
【0050】
インク/洗浄液循環部110は、装着ケース71に装着されたインクカートリッジ73に貯留されているインクをインクサブタンク74に供給し、インクサブタンク74とヘッド30のノズル33との間でインクを循環させる。また、インク/洗浄液循環部110は、装着ケース75に装着された洗浄液カートリッジ76に貯留されている洗浄液を洗浄液サブタンク77に供給し、洗浄液サブタンク77とキャップ61A~61Cとの間、及び洗浄液サブタンク77とワイパクリーニング部26との間で洗浄液を循環させる。
【0051】
インクサブタンク74は、5つの接続口C11~C15を有する。洗浄液サブタンク77は、5つの接続口C21~C25を有する。ヘッド30の吐出部32A~32Cは、それぞれ、2つの接続口C1、C2を有する。なお、インクサブタンク74は、液体サブタンクの一例である。
【0052】
図7の左側部分は、インクの循環に関する部分である。補給バルブ115の一端は、インクカートリッジ73の接続口に接続される。補給バルブ115の他端は、インクサブタンク74の接続口C15に接続される。負圧調整バルブ116の一端、及び大気開放バルブ117の一端は、インクサブタンク74の接続口C12に接続される。負圧調整バルブ116の他端、及び大気開放バルブ117の他端は、大気開放される。
【0053】
正圧ポンプ111の一端は、インクサブタンク74の接続口C11に接続される。正圧ポンプ111の他端は、吐出部32A~32Cの接続口C1、排気バルブ121の一端、及びパージバイパスバルブ123の一端に接続される。吐出部32A~32Cの接続口C2、及び排気バルブ121の他端は、パージ遮断バルブ122の一端に接続される。パージ遮断バルブ122の他端、及びパージバイパスバルブ123の他端は、インクサブタンク74の接続口C13に接続される。
【0054】
図7の右側部分は、洗浄液の循環に関する部分である。洗浄液補給バルブ124の一端は、洗浄液カートリッジ76の接続口に接続される。洗浄液補給バルブ124の他端は、洗浄液サブタンク77の接続口C25に接続される。キャップ洗浄バルブ125の一端は、洗浄液サブタンク77の接続口C23に接続される。キャップ洗浄バルブ125の他端は、メンテナンス大気バルブ127の一端、及びメンテナンス部60のキャップ61A~61Cの一端に接続される。キャップ61A~61Cの他端は、それぞれ、キャップ用ポンプ113A~113Cの一端に接続される。キャップ用ポンプ113A~113Cの他端、及び負圧ポンプ112の一端は、廃液槽78の接続口に接続される。
【0055】
ワイパ洗浄バルブ126の一端は、洗浄液サブタンク77の接続口C24に接続される。ワイパ洗浄バルブ126の他端は、ワイパクリーニング部26の一端に接続される。ワイパクリーニング部26の他端は、ワイパ用ポンプ114の一端に接続される。ワイパ用ポンプ114の他端は、洗浄液サブタンク77の接続口C21に接続される。
【0056】
メンテナンス大気バルブ127の他端は、洗浄液サブタンク77の接続口C22、及びサブタンク連結バルブ128の一端に接続される。サブタンク連結バルブ128の他端、及び負圧ポンプ112の他端は、インクサブタンク74の接続口C14に接続される。
【0057】
正圧ポンプ111は、ポンプモータ87(図3参照)から駆動力が伝達されて回転する。正圧ポンプ111は、回転することにより、インク/洗浄液循環部110内のインク流路にインクを押し出す。負圧ポンプ112は、ポンプモータ88(図3参照)から駆動力が伝達されて回転する。負圧ポンプ112は、回転してインクサブタンク74に負圧を与えることにより、インク/洗浄液循環部110内のインク流路にあるインクを空気を介して引き込む。
【0058】
キャップ用ポンプ113A~113Cは、ポンプモータ89(図3参照)から駆動力が伝達されて回転する。キャップ用ポンプ113A~113Cは、回転することにより、洗浄液サブタンク77からキャップ61A~61Cを経由して廃液槽78に至る流路に洗浄液を流す。ワイパ用ポンプ114は、ポンプモータ90(図3参照)から駆動力が伝達されて回転する。ワイパ用ポンプ114は、回転することにより、洗浄液サブタンク77からワイパクリーニング部26を経由して洗浄液サブタンク77に至る流路に洗浄液を流す。
【0059】
[フレーム131]
図8に示されるように、筐体11内には、上下方向7及び前後方向8に延びるフレーム131が位置する。フレーム131の上下方向7のサイズは、例えば、筐体11の上下方向7のサイズの1/4以上1/2以下である。フレーム131の前後方向8のサイズは、例えば、筐体11の前後方向8のサイズの1/2以上3/4以下である。筐体11内を上下方向7に3つの部分に分けたときに、フレーム131は、上下方向7において中央の部分に位置する。フレーム131は、前後方向8において、前辺が筐体11の前面12の近傍に位置するように配置される。フレーム131の左右方向9の位置は、筐体11の左面と左右方向9の中央との間である。なお、フレーム131のサイズ及び位置は、上記の例に限定されない。
【0060】
フレーム131の左側の空間はサブタンク空間133と称され、フレーム131の右側の空間はメンテナンス空間134と称される。サブタンク空間133内の前方部分には、洗浄液サブタンク77が位置する。サブタンク空間133内の後方部分には、インクサブタンク74が位置する。メンテナンス空間134内には、メンテナンス部60が位置する。フレーム131は、筐体11内をサブタンク空間133とメンテナンス空間134とに区画する。フレーム131は、壁部材の一例である。
【0061】
サブタンク空間133及びメンテナンス空間134の下方には、左右方向9に並んだ2つの空間135、136が位置する。左側の空間135内には、インクカートリッジ73が装着される装着ケース71が位置する。装着ケース71に装着されたインクカートリッジ73は、空間135内に位置する。右側の空間136には、洗浄液カートリッジ76が装着される装着ケース75、及び廃液槽78が位置する。装着ケース75に装着された洗浄液カートリッジ76、及び廃液槽78は、空間136内に位置する。
【0062】
[貫通孔132とチューブ161~167]
サブタンク空間133内のインクサブタンク74及び洗浄液サブタンク77と、メンテナンス空間134内のメンテナンス部60のキャップ61A~61C、及びワイパクリーニング部26と、空間136内の洗浄液サブタンク77及び廃液槽78との間で洗浄液を循環させるために、サブタンク空間133とメンテナンス空間134との間には、洗浄液を通す7本のチューブが位置する。
【0063】
図7に示されるように、7本のチューブは、インクサブタンク74の接続口C13及びC14と、パージ遮断バルブ122の他端、パージバイパスバルブ123の他端、負圧ポンプ112の他端、及びサブタンク連結バルブ128の他端とを接続するチューブ161、廃液槽78の接続口と負圧ポンプ112の一端とを接続するチューブ162、洗浄液サブタンク77の接続口C24とワイパ洗浄バルブ126の一端とを接続するチューブ163、洗浄液カートリッジ76の接続口と洗浄液補給バルブ124の一端とを接続するチューブ164、洗浄液サブタンク77の接続口C21とワイパ用ポンプ114の他端とを接続するチューブ165、洗浄液サブタンク77の接続口C22とメンテナンス大気バルブ127の他端とを接続するチューブ166、及び洗浄液サブタンク77の接続口C23とキャップ洗浄バルブ125の一端とを接続するチューブ167である。
【0064】
チューブ161~167は、例えば、ウレタン系材料で形成されている。なお、チューブ161~167の材料は、ウレタン系材料には限定されない。以下、チューブ161~167の種類は、順に「WC」、「S」、「K」、「Y」、「C」、「W」、及び「M」であるとする。チューブ161~167の種類を表す文字又は文字列は、便宜的に付けられたものであり、特に意味を有しない。
【0065】
サブタンク空間133とメンテナンス空間134との間で7本のチューブ161~167を通すために、フレーム131は貫通孔132を有する。貫通孔132は、フレーム131の下方、且つやや後方寄りに位置する。貫通孔132は、前後方向8において、インクサブタンク74と洗浄液サブタンク77との間に位置する。なお、貫通孔132の位置は、上記の位置に限定されない。
【0066】
[ガイド部材140]
特段の工夫を行うことなく、フレーム131の貫通孔132に7本のチューブ161~167を挿通すると、チューブ161~167の絡まりやキンクが発生する。チューブ161~167の絡まりやキンクを防止するために、プリンタ10は、図9及び図10に示されるガイド部材140を備えている。ガイド部材140は、メンテナンス空間134側からフレーム131の貫通孔132に嵌合される。以下、ガイド部材140について説明するときには、図10の上、下、左、及び右を、それぞれ上、下、左、及び右という。
【0067】
図9に示されるように、ガイド部材140は、7つのチューブ孔141~147、貫通孔148、149、フランジ151~153、フック154、155、位置表示部156、157、及び載置部158を有する。図11に示されるように、チューブ161~167は、それぞれ、チューブ孔141~147に挿通されている。すなわち、チューブ161~167は、それぞれ、チューブ孔141~147のうち、対応するチューブ孔に挿通されている。
【0068】
チューブ孔141~147は、ガイド部材140において互いに近い位置に配置されている。チューブ孔141~147は、複数の列に配列されている。複数の列は、ガイド部材140の上下方向に沿うものである。具体的には、チューブ孔141~147は、第1列から第3列に配置される。チューブ孔141、142は第1列に配列され、チューブ孔143~145は第2列に配列され、チューブ孔146、147は第3列に配列される。第2列は第1列の右に位置し、第3列は第2列の右に位置する。第2列内のチューブ孔143~144の上下方向7の位置は、それぞれ、第1列内のチューブ孔141、142の上下方向7の位置と同じである。一方、第3列内のチューブ孔146、147の上下方向7の位置は、第2列内のチューブ孔143~145の上下方向7の位置とは異なる。このように第1列から第3列には、チューブ孔の上下方向7の位置が互いに同じ列と、チューブ孔の上下方向7の位置が互いに異なる列とが含まれている。なお、ガイド部材140の上下方向は、第1方向の一例である。
【0069】
チューブ孔141~147の配置は、チューブ孔141、142に挿通されたチューブ161、162は、サブタンク空間133内を後方に延び、サブタンク空間133内の後方部分に位置するインクサブタンク74に接続され、チューブ孔143~147に挿通されたチューブ163~167は、サブタンク空間133内を前方に延び、サブタンク空間133内の前方部分に位置する洗浄液サブタンク77に接続されることに基づき、決定されたものである。サブタンク空間133内を後方に延びるチューブ161、162をチューブA、サブタンク空間133内を前方に延びるチューブ163~167をチューブBとしたとき、チューブA同士、及びチューブB同士は絡まる可能性が高い一方、チューブAとチューブBとは絡まる可能性が低い。
【0070】
そこで、絡まる可能性が高いチューブを上下方向7の位置が異なるチューブ孔に挿通することにより、チューブ163~167の絡まりやキンクを防止できる。また、絡まる可能性が低いチューブを上下方向7の位置が同じチューブ孔に挿通することにより、チューブ161~167を揃えて配置できる。また、チューブ孔141~147を互いに近い位置に配置することにより、プリンタ10を組み立てる作業者(以下、「作業者」と称される)は、チューブ孔141~147に挿通されたチューブ161~167をまとめて容易に扱うことができる。
【0071】
図9に示されるように、フランジ151~153は、ガイド部材140のエッジ部分に位置する。具体的には、フランジ151は、ガイド部材140の右上エッジ部分に位置する。フランジ152は、ガイド部材140の右下エッジ部分に位置する。フランジ153は、ガイド部材140の左下エッジ部分に位置する。このようにガイド部材140は、エッジ部分にフランジ151~153を有する。フランジ151~153を有するガイド部材140によれば、チューブ孔141~147に挿通されるチューブ161~167がフレーム131のバリ面に振れることを防止できる。
【0072】
図9及び図10(B)に示されるように、フック154、155は、ガイド部材140の側面に位置する。具体的には、フック154は、ガイド部材140の左側面に位置する。フック155は、ガイド部材140の右側面に位置する。フック154、155は、ガイド部材140がフレーム131に嵌合されたときに、フレーム131を左右方向9に挟む。作業者は、ガイド部材140をフレーム131の貫通孔132に嵌合するときに、ガイド部材140をメンテナンス空間134側から貫通孔132に挿入し、フック154、155を用いて、ガイド部材140をフレーム131に容易に固定できる。
【0073】
図9(A)、図9(D)、及び図10(A)に示されるように、位置表示部156、157は、ガイド部材140の表面に位置する。具体的には、位置表示部156は、ガイド部材140の正面側の面(貫通孔132に嵌合した状態でサブタンク空間133側の面)の右上に位置する(図9(A)参照)。位置表示部157は、ガイド部材140の背面側の面(貫通孔132に嵌合した状態でメンテナンス空間134側の面)に、位置表示部156と面対称に位置する(図9(D)参照)。位置表示部156、157は、チューブ孔141~147に挿通すべきチューブの種類を示す。
【0074】
位置表示部156、157は、それぞれ7個の記号を含む。7個の記号は、チューブ孔141~147に挿通されるチューブ161~167の種類を示し、チューブ孔141~147と同じ態様に配置される。位置表示部156内で左上に位置する記号「WC」は、チューブ孔141~147のうち左上に位置するチューブ孔141に、種類「WC」のチューブ161を挿通すべきことを示す。位置表示部156内で左下に位置する記号「S」は、チューブ孔141~147のうち左下に位置するチューブ孔142に、種類「S」のチューブ162を挿通すべきことを示す。同様に、記号「K」は、チューブ孔143に種類「K」のチューブ163を挿通すべきことを示す。記号「Y」は、チューブ孔144に種類「Y」のチューブ164を挿通すべきことを示す。記号「C」は、チューブ孔145に種類「C」のチューブ165を挿通すべきことを示す。記号「W」は、チューブ孔146に種類「W」のチューブ166を挿通すべきことを示す。記号「M」は、チューブ孔147に種類「M」のチューブ167を挿通すべきことを示す。
【0075】
載置部158は、ガイド部材140の左上部分に位置する。載置部158は、部品を載置可能な平面と、その上部の空間とからなる。図9(A)、図9(D)、及び図10(A)に示されるように、載置部158には、温湿度センサ159が載置される。載置部158はネジ穴(図示せず)を有する。温湿度センサ159を搭載した基板は、載置部158にネジ止めされる。温湿度センサ159は、周囲温度(筐体11内の温度)及び周囲湿度(筐体11内の湿度)を検知し、検知した温度及び湿度を示す信号を制御部100に対して出力する。制御部100は、温湿度センサ159から出力された信号が示す温度及び湿度に応じて、画像記録、ヘッド、及びインクの循環を制御する。なお、温湿度センサ159は、温度センサの一例である。また、載置部158には、温湿度センサ159に代えて、温度センサが載置されることとしてもよい。
【0076】
貫通孔148、149は、チューブ孔141~147とは別の貫通孔である。図9(A)、図9(D)、及び図10(A)に示されるように、貫通孔148は、ガイド部材140の左下部分に位置する。貫通孔149は、ガイド部材140の右下部分に位置する。貫通孔148、149には、インクを通すチューブ、又は複数のハーネスが挿通される。例えば、図10(A)では、貫通孔148にはインクを通すチューブ168が挿通され、貫通孔149には複数のハーネス169が挿通されている。なお、チューブ168は、第2チューブの一例である。貫通孔148は、第2チューブ孔の一例である。貫通孔149は、別の貫通孔の一例である。
【0077】
作業者は、ガイド部材140をフレーム131に取り付けるときに、7本のチューブ161~167を7つのチューブ孔141~147にそれぞれ挿通した後に、ガイド部材140をメンテナンス空間134側からフレーム131の貫通孔132に嵌合し、フック154、155を用いて、ガイド部材140をフレーム131に固定する。図11に示されるように、ガイド部材140を通過したチューブ161~167のうち、チューブ161、162は、サブタンク空間133内を後方に延び、サブタンク空間133内の後方部分に位置するインクサブタンク74に接続される。チューブ163~167は、サブタンク空間133内を前方に延び、サブタンク空間133内の前方部分に位置する洗浄液サブタンク77に接続される(図8参照)。
【0078】
図11において、種類[WC」のチューブ161は、ガイド部材140のチューブ孔141に挿通されている。種類「S]のチューブ162は、ガイド部材140のチューブ孔142に挿通されている。同様に、種類「K」、「Y」、「C」、「W」、及び「M」のチューブ163~167は、それぞれ、チューブ孔143~147に挿通されている。
【0079】
[実施形態の作用効果]
以上に示されるように、本実施形態に係るプリンタ10は、ヘッド30と、筐体11内をサブタンク空間133とメンテナンス空間134とに区画し、貫通孔132を有するフレーム131と、サブタンク空間133とメンテナンス空間134との間でヘッド30のメンテナンスに用いられる洗浄液を通す複数のチューブ161~167と、フレーム131の貫通孔132に嵌合するガイド部材140とを備えている。ガイド部材140は、複数のチューブ161~167に対応する複数のチューブ孔141~147を有している。複数のチューブ161~167は、対応するチューブ孔に挿通されている。
【0080】
上記液体吐出装置によれば、ガイド部材140のチューブ孔141~147にチューブ161~167をそれぞれ挿通し、ガイド部材140をフレーム131に固定することにより、チューブ161~167の絡まりを防止し、チューブ161~167の損傷や洗浄液の漏れを防止できる。
【0081】
また、ガイド部材140は、貫通孔132のエッジ部分に対応するフランジ151~153を有する。したがって、チューブ161~167がフレーム131のバリ面に触れることを防止し、チューブ161~167の損傷を防止できる。
【0082】
また、チューブ孔141~147は、第1列から第3列に配列されており、第1列から第3列は、上下方向7に沿うものである。第1列から第3列の中には、チューブ孔の上下方向7の位置が互いに異なる列(第2列と第3列)と、チューブ孔の上下方向7の位置が同じ列(第1列と第2列)とが含まれている。したがって、絡まる可能性が高いチューブを上下方向7の位置が異なるチューブ孔に挿通することにより、チューブ161~167の絡まりやキンクを防止できる。また、絡まる可能性が低いチューブを上下方向7の位置が同じチューブ孔に挿通することにより、チューブ161~167を揃えて配置できる。
【0083】
また、ガイド部材140は、表面に位置表示部156、157を有する。したがって、チューブ孔141~147に対応するチューブ161~167を挿通する作業のミスを防止できる。作業ミスによりチューブを対応しないチューブ孔に挿通すると、チューブ161~167が絡まるおそれがある。作業ミスを防止して、例えば、上方に繋がるチューブを上側のチューブ孔に挿通し、下方に繋がるチューブを下側のチューブ孔に挿通することにより、チューブ161~167の絡まりを防止できる。
【0084】
また、ガイド部材140は、フック154、155を有する。したがって、ガイド部材140をフレーム131に容易に着脱できる。ヘッド30のメンテナンス部60が故障し、キャップ61A~61C、スポンジワイパ62A~62C、ゴムワイパ63A~63Cを交換するときには、洗浄液を通すチューブ161~167も交換する必要がある。このときに、ガイド部材140をフレーム131から容易に取り外し、複数のチューブ161~167やハーネスを同時に取り外すことができる。
【0085】
また、図10(A)では、インクを通すチューブ168は、ガイド部材140の、チューブ孔141~147とは異なる貫通孔148に挿通されている。したがって、洗浄液の経路とインクの経路とを容易に区別できる。また、図10(A)では、複数のハーネス169は、ガイド部材140の、チューブ孔141~147及び貫通孔148とは別の貫通孔149に挿通されている。したがって、複数のハーネス169を束状態でガイド部材140の貫通孔149に挿通できる。また、プリンタ10では、温湿度センサ159は、ガイド部材140の載置部158に載置されている。したがって、温湿度センサ159で検知された温度に応じて画像記録、ヘッド、及びインクの循環を制御できる。
【0086】
また、プリンタ10では、ガイド部材140は、インクサブタンク74と洗浄液サブタンク77との間、且つ装着ケース75に装着された洗浄液カートリッジ76より上に位置する。このようにガイド部材140は洗浄液カートリッジ76と洗浄液サブタンク77とを結ぶ経路上に位置するので、洗浄液を通すチューブの長さを短くし、流路抵抗を小さくできる。また、チューブ161~167は、ウレタン系材料で形成されている。チューブ161~167がウレタン系材料で形成されていて絡まりやすい場合でも、チューブ161~167の絡まりを防止できる。
【0087】
[変形例]
上記実施形態に係るプリンタ10については、各種の変形例を構成できる。例えば、実施形態に係るプリンタ10はモノクロプリンタであることとしたが、変形例に係るプリンタはシートに複数種類のカラーインクを吐出するカラープリンタであってもよい。また、プリンタ10は、特定の構成を有するメンテナンス部60を用いて、ヘッド30のメンテナンス処理として、パージ処理、キャップ洗浄処理、及びワイプ処理を実行することとしたが、変形例に係るプリンタは、上記以外の構成を有するメンテナンス部を用いて、ヘッドのメンテナンス処理として、上記の処理及び/又は他の処理を実行してもよい。
【0088】
また、プリンタ10のガイド部材140は、洗浄液を通す7本のチューブ161~167に対応して、7つのチューブ孔141~147を有することとしたが、変形例に係るプリンタのガイド部材は、2本以上6本以下、又は8本以上のチューブに対応して、2つ以上6つ以下、又は8つ以上のチューブ孔を有していてもよい。変形例に係るプリンタでも、複数のチューブは、ガイド部材の複数のチューブ孔にそれぞれ挿通されている。
【0089】
プリンタ10では、ガイド部材140のチューブ孔141~147は、互いに近い位置に配置され、複数の列に配列されていることとしたが、変形例に係るプリンタのガイド部材では、複数のチューブ孔は互いに離れた位置に配置されていてもよい。また、図10(A)では、貫通孔148にはインクを通すチューブ168が挿通され、貫通孔149には複数のハーネス169が挿通されることとしたが、貫通孔148、149には、インクを通すチューブ及び複数のハーネスの両方を挿通してもよく、インクを通すチューブ及び複数のハーネスのいずれか一方を挿通してもよい。また、ガイド部材140は、チューブ孔141~147以外に貫通孔を1つだけ有していてもよく、チューブ孔141~147以外の貫通孔を有していなくてもよい。また、プリンタ10のガイド部材140は、温湿度センサ159が載置される載置部158を有することとしたが、変形例に係るプリンタのガイド部材は載置部を有しておらず、変形例に係るプリンタは温度センサ及び温湿度センサを備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10・・・プリンタ(液体吐出装置)
11・・・筐体
30・・・ヘッド
33・・・ノズル
74・・・インクサブタンク(液体サブタンク)
75・・・装着ケース
76・・・洗浄液カートリッジ
77・・・洗浄液サブタンク
131・・・フレーム(壁部材)
132・・・貫通孔
133・・・サブタンク空間(第1空間)
134・・・メンテナンス空間(第2空間)
140・・・ガイド部材
141~147・・・チューブ孔
148・・・貫通孔(第2チューブ孔)
149・・・貫通孔(別の貫通孔)
151~153・・・フランジ
154、155・・・フック
156、157・・・位置表示部
158・・・載置部
159・・・温湿度センサ(温度センサ)
161~167・・・チューブ
168・・・チューブ(第2チューブ)
169・・・ハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11