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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163276
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】物品搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 54/02 20060101AFI20231102BHJP
   B65G 47/86 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B65G54/02
B65G47/86 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074049
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】細木 大輔
【テーマコード(参考)】
3F021
3F072
【Fターム(参考)】
3F021AA01
3F021BA02
3F021CA06
3F021DA00
3F021DA01
3F021DA04
3F021DA06
3F072AA06
3F072GC04
3F072GG03
3F072KA15
3F072KA33
3F072KA40
3F072KC01
3F072KC09
3F072KD01
3F072KD13
3F072KD14
3F072KD21
(57)【要約】
【課題】グリッパで保持可能な物品の兼用範囲を広くして汎用性が高い物品搬送装置を提供する。
【解決手段】リニア搬送装置6は、グリップ片3A、3Bが設けられた多数の可動子16A、16Bを備え、隣り合う一対のグリップ片3A、3Bによって容器2を保持するグリッパ3が構成される。
隣り合う一方のグリップ片3Aは、それを設けた可動子16Aの軸心に対して搬送方向の上流側に偏心させてあり、隣り合う他方のグリップ片3Bは、それを設けた可動子16Bの軸心に対して搬送方向の下流側に偏心させてある。
最小の容器2を保持する場合には、グリップ片3Aの第2保持面3Adbとグリップ片3Bの第1保持面3Bdaからなる第1モードで保持し、最大の容器2を保持する場合には、グリップ片3Aの第1保持面3Adaとグリップ片3Bの第2保持面3Bdbからなる第2モードで保持する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って配置された多数の可動子と、上記各可動子を搬送経路に沿ってリニア駆動させるための固定子と、隣り合う2つの可動子のうちの一方の可動子に設けられた一方のグリップ片と、他方の可動子に設けられた他方のグリップ片とを備え、
上記隣り合う2つの可動子のグリップ片によって物品を保持するグリッパが構成されるとともに、上記隣り合う2つの可動子を同期して移動させてグリッパに保持した物品を上記搬送経路に沿って搬送するようにした物品搬送装置において、
上記各グリップ片は、物品の搬送方向の上流側に形成された第1保持面と、搬送方向の下流側に形成された第2保持面を有し、
隣り合う一方のグリップ片の第1保持面および第2保持面は、当該グリップ片を設けた可動子に対して搬送方向の上流側に偏心させて設けられ、隣り合う他方のグリップ片の第1保持面および第2保持面は、当該グリップ片を設けた可動子に対して搬送方向の下流側に偏心させて設けられるとともに、
上記一方のグリップ片と他方のグリップ片とを上記搬送経路に交互に配置し、
上記一方のグリップ片を設けた一方の可動子を搬送方向上流側、上記他方のグリップ片を設けた他方の可動子を搬送方向下流側に位置させて、上記一方のグリップ片の第2保持面と、上記他方のグリップ片の第1保持面とで物品を保持する第1モードと、
上記他方のグリップ片を設けた他方の可動子を搬送方向上流側、上記一方のグリップ片を設けた一方の可動子を搬送方向下流側に位置させて、上記他方のグリップ片の第2保持面と、上記一方のグリップ片の第1保持面とで物品を保持する第2モードとに切り換え可能としたことを特徴とする物品搬送装置。
【請求項2】
隣り合う可動子の一方には、搬送方向に沿って延びる第1連結シャフトが設けられるとともに搬送方向に沿った第1貫通孔が穿設されており、
隣り合う可動子の他方には、搬送方向に沿って延びる第2連結シャフトが設けられるとともに搬送方向に沿った第2貫通孔が穿設されており、
上記一方の可動子の第1連結シャフトが他方の可動子の第2貫通孔に貫通可能であるとともに、上記他方の可動子の第2連結シャフトが一方の可動子の第1貫通孔に貫通可能であることを特徴とする請求項1に記載の物品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品搬送装置に関し、より詳しくは、リニアモータを用いた物品搬送装置であって、隣り合う一対の可動子にわたって設けたグリッパによって物品を保持して搬送する物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リニアモータを用いて物品を搬送するようにしたリニア搬送装置は知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。こうした従来のリニア搬送装置においては、1つの可動子に1つのグリップ片を取り付け、隣り合う1対のグリップ片からなるグリッパ(保持手段)によって物品の前後を保持しながら物品を搬送するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6334556号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0176659号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のリニア搬送装置において、搬送方向における寸法が異なる物品を兼用して保持しようとする際には、隣り合う可動子の間隔を調整することで、隣り合う1対のグリップ片の間隔を変更して物品の寸法に合わせるようにしている。具体的には、搬送方向の寸法が小さい物品をグリッパで保持する際には、隣り合う一対のグリップ片、すなわち隣り合う可動子の間隔を狭く設定し、搬送方向の寸法が大きい物品をグリッパで保持する際には、隣り合う一対のグリップ片、すなわち可動子の間隔を広く設定する必要がある。
ところで、上記グリップ片は可動子に設けられているため、小さい物品をグリッパで保持する場合には隣り合う可動子同士が干渉しない位置が限界となっていた。
また、例えば物品が容器であって、1対のグリップ片からなる複数のグリッパで保持した容器を充填装置の位置へ搬送して液の充填を行う場合には、充填装置における隣り合う充填ノズルのピッチに対して隣り合う容器のピッチを合わせる必要がある。そのため、グリッパで大きい容器を保持する場合には、隣の容器を保持するグリッパの可動子と干渉しない位置が限界であった。この場合、可動子の移動範囲を大きくすれば充填ノズルのピッチも大きくなるため、充填装置自体が大型化して製造コストが高くなり、好ましくない。
そこで、本発明の目的は、グリッパを設けた隣り合う可動子の移動範囲に制限があっても、保持する物品の兼用範囲を広くできるグリッパを備えた物品搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、本発明は、所定の搬送経路に沿って配置された多数の可動子と、上記各可動子を搬送経路に沿ってリニア駆動させるための固定子と、隣り合う2つの可動子のうちの一方の可動子に設けられた一方のグリップ片と、他方の可動子に設けられた他方のグリップ片とを備え、
上記隣り合う2つの可動子のグリップ片によって物品を保持するグリッパが構成されるとともに、上記隣り合う2つの可動子を同期して移動させてグリッパに保持した物品を上記搬送経路に沿って搬送するようにした物品搬送装置において、
上記各グリップ片は、物品の搬送方向の上流側に形成された第1保持面と、搬送方向の下流側に形成された第2保持面を有し、
隣り合う一方のグリップ片の第1保持面および第2保持面は、当該グリップ片を設けた可動子に対して搬送方向の上流側に偏心させて設けられ、隣り合う他方のグリップ片の第1保持面および第2保持面は、当該グリップ片を設けた可動子に対して搬送方向の下流側に偏心させて設けられるとともに、
上記一方のグリップ片と他方のグリップ片とを上記搬送経路に交互に配置し、
上記一方のグリップ片を設けた一方の可動子を搬送方向上流側、上記他方のグリップ片を設けた他方の可動子を搬送方向下流側に位置させて、上記一方のグリップ片の第2保持面と、上記他方のグリップ片の第1保持面とで物品を保持する第1モードと、
上記他方のグリップ片を設けた他方の可動子を搬送方向上流側、上記一方のグリップ片を設けた一方の可動子を搬送方向下流側に位置させて、上記他方のグリップ片の第2保持面と、上記一方のグリップ片の第1保持面とで物品を保持する第2モードとに切り換え可能としたものである。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、容器の大きさに応じてグリッパを上記第1モードと第2モードに切り換えることにより、グリッパで保持可能な物品の兼用範囲を広くできる。したがって、汎用性が高い物品搬送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例を示す全体の平面図。
図2図2(a)は図1の要部の拡大図、図2(b)は図1の要部の背面図、図2(c)は図1の要部の縦断面図である。
図3図1の要部の拡大図。
図4図2のグリッパによって容器を保持した状態を示す平面図であり、図4(a)は最小の容器を第1モードのグリッパで保持した状態を示し、図4(b)は最大の容器を第2モードのグリッパで保持した状態を示している。
図5図5(a)は従来のグリッパによって最小の容器を保持する場合を示した平面図、図5(b)は従来のグリッパによって最大の容器を保持する場合を示した平面図である。
図6図6(a)は本発明の第1モードのグリッパによって最小の容器を保持する場合を示した平面図、図6(b)は本発明の第2モードのグリッパによって最大の容器を保持する場合を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1ないし図2において1は容器2内に液体を充填する充填システムである。この充填システム1は、容器2を保持する多数のグリッパ3を循環搬送経路Rに沿って矢印方向に循環走行させるようになっており、供給位置Aで停止させたグリッパ3に供給ロボット4によって容器2を供給して保持させた後、グリッパ3に保持された容器2が充填位置Bまで搬送されて停止されると、そこで充填装置5によって容器2内に所定量の液体が充填されるようになっている。
充填システム1は、容器2をグリッパ3で保持して搬送する物品搬送装置としてのリニア搬送装置6と、リニア搬送装置6の循環搬送経路Rにおける供給位置Aに配置されて、空の容器2をグリッパ3に供給する供給ロボット4と、循環搬送経路Rにおける供給位置Aの下流側となる充填位置Bに配置されて容器2内に液体を充填する充填装置5と、循環搬送経路Rにおける充填位置Bの下流側となるキャッピング位置Cに設けられたキャッピング装置7と、その下流側の検査位置Dに設けられて容器2の検査を行う検査装置8と、検査位置Dの下流側となる排出位置Eに設けられた排出ロボット9と、これらの構成要素等の作動を制御する制御装置11を備えている。
【0009】
図1には図示されていないが、供給位置Aから搬送方向下流側の排出位置Eにわたって、容器2の底部を支持するフェリプレート12が配置されており、グリッパ3に保持されて搬送される容器2はフェリプレート12に支持されてその表面を摺動するようになっている。フェリプレート12の下部にはナット部材13が連結されており、このナット部材13は、鉛直方向に配置されたボールねじ14に螺合している(図2(c)参照)。ボールねじ14はサーボモータM1によって回動されるようになっており、このサーボモータM1は制御装置11によって作動を制御されるようになっている。処理対象となる容器2の高さや形状が変更された場合には、制御装置11によってサーボモータM1が所要量回動されることで、フェリプレート12の高さを変更できるようになっている。それにより、容器2の胴部の好適な高さ位置をグリッパ3で保持できるようになっている。
供給位置Aの循環搬送経路Rと平行に直線状の供給コンベヤ15が配置されており、正立状態で縦一列となった空の容器2が供給コンベヤ15によって供給装置Aへ供給されて停止されるようになっている。供給装置Aには供給ロボット4が配置されており、供給ロボット4は供給コンベヤ15上の空の容器2を把持して、隣り合う容器2同士の間隔を広げてから供給位置Aのフェリプレート12上に停止している8個のグリッパ3に容器2を保持させるようになっている。
後に詳述するが、グリッパ3は、隣り合う一方の可動子16Aに設けられたグリップ片3Aと、隣り合う他方の可動子16Bに設けられたグリップ片3Bとからなり、これら隣り合う一対のグリップ片3A、3Bによって容器2の胴部が搬送方向の前後から保持されるようになっている(図3参照)。そして、前述したように、グリッパ3に保持された容器2はフェリプレート12に支持されて、その表面上を摺動するようになっている。液体が充填される容器2は、胴部と上端口部を備えており、上端口部から液体が内部に充填されるようになっている。
なお、フェリプレート12を配置せずに容器2をグリッパ3によってのみで保持する構成であっても良い。
【0010】
物品搬送装置としてのリニア搬送装置6は、無端状の循環搬送経路Rに沿って配置された上下一対のレール17と、これら上下のレール17の間の循環搬送経路Rの全域にわたって配置されるとともに、内部に多数の電磁コイルが所定間隔に設けられた電磁コイルユニット18と、電磁コイルユニット18に隣接させて配置されるとともにレール17に案内されて循環搬送経路Rに沿って移動する多数の可動子16A、16Bとを備えている。電磁コイルユニット18が、可動子16A、16Bに対するリニアモータの固定子を構成している。また、各可動子16Aと16Bは同一寸法であって、循環搬送経路Rに沿って交互に一列で配置されている。これにより、グリップ片3A、グリップ片3Bも循環搬送経路Rに沿って交互に配置されることになる。
これら可動子16A、16Bには電磁コイルユニット18に対向させて永久磁石19A、19Bが埋設されるとともに、上下のレール17のガイド面に沿って転動する上下位置の複数のローラ16Aa、16Baが回転自在に設けられている。
電磁コイルユニット18内に設けられている多数の電磁コイルは制御装置11によって所要のタイミングで個別に励磁されるようになっている。制御装置11は、隣り合う一対の可動子16A、16Bを同期させて循環搬送経路Rに沿って移動させることで、それら一対の可動子16A、16Bに設けたグリップ片3A、3Bからなる各グリッパ3を循環搬送経路Rに沿って移動させるとともに、移動の際の移動位置と移動速度を個別に制御できるようになっている。
制御装置11が循環搬送経路Rに沿った所要位置の電磁コイルを励磁することで、隣り合う一対の可動子16A、16Bにわたって設けられたグリッパ3を循環走行経路Rに沿った各位置A~Eを所定速度で循環走行させるとともに、所要位置で停止させることができる。これにより、グリッパ3に保持された状態の容器2を供給位置Aから排出位置Eまでリニア搬送装置6によって搬送するようになっている。また、制御装置11によって、隣り合う一対の可動子16A、16Bの搬送方向における間隔を調整することにより、一対のグリップ片3A、グリップ片3Bの間隔を調整することでき、それによって大きさが異なる容器2をグリッパ3で兼用して保持できるようになっている。なお、リニア駆動により可動子を移動させるリニア搬送装置の基本構成は従来公知であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0011】
ここで、先ず図1を参照してリニア搬送装置6のグリッパ3による容器2の搬送と各位置A~Eで行われる処理の概略について説明する。
供給位置Aのフェリプレート12の上方に8個のグリッパ3が停止された状態において、正立状態の空の容器2が供給コンベヤ15によって供給装置Aへ供給されると、供給ロボット4は供給コンベヤ15上の空の容器2を把持した後に、隣り合う容器2同士の間隔を広げてから供給位置Aで停止中の8個のグリッパ3に容器2を保持させるようになっている。この時、前述した様に容器2の底部はフェリプレート12に支持される。
供給位置Aで容器2がグリッパ3に保持されると、空の容器2を保持した6個のグリッパ3が充填位置Bまで移動されて停止されるようになっている。充填装置5には、容器2の搬送方向に沿って等ピッチで6つの充填ノズル(図示せず)が設けられており、6個のグリッパ3に保持されて充填位置Bに停止した容器2は、6つの各充填ノズルの下方側に位置する。そして、充填装置5の充填ノズルによって6本の容器2内に所定量の液体が充填されるようになっている。
この後、液体が充填された容器2を保持した6個のグリッパ3は、キャッピング位置Cまで搬送されて、そこで停止される。キャッピング位置Cにはキャッピング装置7が配置されており、6本の容器2の上端口部にキャッピング装置7によってキャップが取り付けられて閉鎖されるようになっている。
この後、キャップが取り付けられた容器2を保持したグリッパ3は検査位置Dへ搬送されて停止される。検査位置Dには検査装置8が配置されており、検査装置8は、4本毎の容器2について異物の有無やキャッピング不良等を検査するようになっている。
検査位置Dにおける検査装置8の検査が終了した容器2は、その後、排出装置Eへ搬送されて停止される。排出位置Eには、排出ロボット9が配置されるとともに排出コンベヤ21が配置されており、排出ロボット9は、排出位置Eにおいて停止したグリッパ3から4本ずつ容器2を取り出して排出コンベヤ21上に受け渡すようになっている。
排出コンベヤ21上に受け渡された容器2は下流へ搬送されるようになっている。他方、排出位置Eで容器2が取り出されて空になったグリッパ3は、供給位置Aまで移動されて、再度そこで停止されるようになっている。なお、検査装置8による検査の結果で不良と判定された容器2は排出コンベヤ21に受け渡された後に、図示しないリジェクト装置によって排出コンベヤ21上からリジェクトされるようになっている。
このように、本実施例の充填システム1は、リニア搬送装置6のグリッパ3に保持した容器2を供給位置A~排出位置Eまで循環搬送経路Rに沿って順次搬送して、容器2内への液体の充填とその後のキャッピング及び所要の検査を行うようになっている。
【0012】
以下、図2ないし図4を参照して、搬送方向において隣り合う一対の可動子16A、16Bとそれらに設けられたグリッパ3のグリップ片3A、3Bの構成等について説明する。
各可動子16A、16Bの上部にはそれぞれベース部材22A、22Bが水平に連結されており、このベース部材22A、22Bの上面に回転軸23A、23Bが鉛直上方を向けて固定されている。
各グリップ片3A、3Bは同一寸法であって、四角柱状の基部3Aa、3Baとその先端側に一体に設けられた保持部3Ab、3Bbとからなり、グリップ片3A、3Bの基部3Aa、3Baには鉛直方向の貫通孔3Ac、3Bcが穿設されている。
隣り合う一方の可動子16Aの回転軸23Aの上方小径部をグリップ片3Aの貫通孔3Acに回転自在に貫通させてあり、隣り合う他方の可動子16Bの回転軸23Bの上方小径部をグリップ片3Bの貫通孔3Bcに回転自在に貫通させている。
これにより、隣り合うグリップ片3A、3Bは同じ高さで水平に支持されており、かつ、それらは各々回転軸23A、23Bに対して回転可能となっている。
グリップ片3Aの保持部3Abにおける搬送方向上流側を向けた側面には平面視でV字形をした第1保持面3Adbが形成され、搬送方向下流側に向けた側面には平面視でV字形をした第2保持面3Adaが形成されている。
また、グリップ片3Bの保持部3Bbにおける搬送方向上流側を向けた側面には平面視でV字形をした第1保持面3Bdbが形成され、搬送方向下流側に向けた側面には平面視でV字形をした第2保持面3Bdaが形成されている。
このように、各グリップ片3A、3Bの搬送方向上流側の側面と下流側の側面の両方にそれぞれ第1保持面3Adb、3Bdbおよび第2保持面3Ada、3Bdaが形成されていることにより、図4(a)のようにグリップ片3Aを搬送方向下流側、グリップ片3Bを搬送方向上流側に配置して、グリップ片3Aの第1保持面3Adbとグリップ片3Bの第2保持面3Bdaとによって容器2を保持する第1モードのグリッパ3を構成することができるとともに、図4(b)のようにグリップ片3Aを搬送方向上流側、グリップ片3Bを搬送方向下流側に配置して、グリップ片3Aの第2保持面3Adaとグリップ片3Bの第1保持面3Bdbとによって容器2を保持する第2モードのグリッパ3を構成できるようになっている。
また、本実施例においては、グリップ片3Aの保持部3Abの搬送方向における中心は、当該グリップ片3Aを設けた可動子16Aの軸心に対して搬送方向上流側へ所定寸法だけ(例えば10mm)偏心させている。つまり、グリップ片3Aにおける搬送方向上流側を向けた第1保持面3Adb及び搬送方向下流側を向けた第2保持面3Adaは、可動子16Aに対して所定寸法だけ搬送方向上流側へ偏心させている。
他方、グリップ片3Bの保持部3Bbの搬送方向における中心は、当該グリップ片3Bを設けた可動子16Bの軸心に対して搬送方向下流側へ所定寸法だけ(例えば10mm)偏心させている。つまり、グリップ片3Bにおける搬送方向上流側を向けた第1保持面3Bdb及び搬送方向下流側を向けた第2保持面3Bdaは、可動子16Bに対して所定寸法だけ搬送方向下流側へ偏心させている。
これにより、図4(a)に示すように、小さな容器2を保持する場合には、グリップ片3Aを搬送方向下流側、グリップ片3Bを搬送方向上流側に配置して、グリップ片3Aの第1保持面3Adbとグリップ片3Bの第2保持面3Bdaとによって容器2を保持するようになっており(第1モードのグリッパ3)、他方、図4(b)に示すように、大きな容器2をグリッパ3で保持する場合には、グリップ片3Aを搬送方向上流側、グリップ片3Bを搬送方向下流側に配置して、グリップ片3Aの第2保持面3Adaとグリップ片3Bの第1保持面3Bdbとによって容器2を保持するようになっている(第2モードのグリッパ3)。つまり、本実施例においては、制御装置11によって隣り合う一対の可動子16A、16Bの配置を上流側と下流側へ切り換えることにより、グリップ片3Aの第1保持面3Adbとグリップ片3Bの第2保持面3Bdaとによって容器2を保持する第1モードのグリッパ3と、グリップ片3Aの第2保持面3Adaとグリップ片3Bの第1保持面3Bdbとによって容器2を保持する第2モードのグリッパ3とに切り換えることができるようになっている。
【0013】
また、本実施例においては、上記グリップ片3A、3Bを設けた隣り合う可動子16A、16Bは、上記グリップ片3A、3Bにそれぞれ設けられた連結シャフト25A、25Bを介して相互に連結可能であり、かつ連結状態を解除できるようになっている。
グリップ片3Aの基部3Aaには、第1連結シャフト25Aの下流側の端部が連結されており、この第1連結シャフト25Aは搬送方向上流側に向けて水平に支持されている。また、グリップ片3Aの基部3Aaには第1連結シャフト25Aの下方側に搬送方向に沿った水平方向の貫通孔3Aeが穿設されている。
グリップ片3Bの基部3Baには、第2連結シャフト25Bの下流側の端部が連結されており、この第2連結シャフト25Bは搬送方向上流側に向けて水平に支持されている。また、グリップ片3Bの基部3Baには第2連結シャフト25Bの上方側に搬送方向に沿った水平方向の貫通孔3Beが穿設されている。
グリップ片3Aの第1連結シャフト25Aの自由端は、隣接上流位置のグリップ片3Bの貫通孔3Beに摺動自在に貫通可能となっている。また、グリップ片3Bの第2連結シャフト25Bの自由端は、隣接上流位置のグリップ片3Aの貫通孔3Aeに摺動自在に貫通可能となっている。
このような構成により、グリップ片3Aを搬送方向下流側、グリップ片3Bを搬送方向上流側に配置する第1モードのグリッパ3の場合は、図2(b)で示すように第1連結シャフト25Aによって両グリップ片3A、3Bを連結可能とし、グリップ片3Aを搬送方向上流側、グリップ片3Bを搬送方向下流側に配置する第2モードのグリッパ3の場合は、第2連結シャフト25Bによって両グリップ片3A、3Bを連結可能としている。
循環搬送経路Rにおける直線状となる搬送経路(上記各位置A~E)においては、図2ないし図4に示すように、グリップ片3Aの第1連結シャフト25Aが隣接上流位置のグリップ片3Bの貫通孔3Beに摺動自在に嵌合されるようになっている。これにより、隣り合う可動子16A、16Bが連結された状態となって同期して近接または離隔できるようになっており、それら一対の可動子16A、16Bに設けられた一対のグリップ片3A、3Bが平行状態を維持して搬送方向において近接し、或いは離隔可能となっている。それによって、隣り合う一対の可動子16A、16Bに設けられた一対のグリップ片3A、3Bの対向する第1保持面3Adb、3Bdbと第2保持面3Ada、3Bdaによって異なる大きさの容器2を保持できるようになっている。
ところで、前述したように、グリップ片3A、3Bの貫通孔3Ac、3Bcには回転軸23A、23Bの上部小径部が回転自在に嵌合されているので、回転軸23A、23Bとその下方側となる可動子16A、16Bに対してグリップ片3A、3Bが揺動可能となっている。
図3に示すように、本実施例においては、一対のグリップ片3A、3Bからなるグリッパ3が容器2を保持した状態で循環搬送経路Rにおける直線部分を移動される際には、隣り合うグリッパ3間の間隔を狭くしており、搬送方向下流側に位置するグリップ片3Bの第2連結シャフト25Bが搬送方向上流側に位置するグリップ片3Aの貫通孔3Aeに貫通した状態であるとともに、湾曲部分を移動される際には、その直前に隣り合うグリッパ3同士の間隔を拡大させることで、第2連結シャフト25Bを貫通孔3Aeから抜き取るようにしている。
それにより、容器2を保持したグリッパ3が循環搬送経路Rのコーナー部分を移動する際には、後続のグリッパ3との連結が解除されるとともに、回転軸23A、23Bに対してグリップ片3A、3Bが容器2と第1連結シャフト25Aとの平行状態を保つように回転されながら湾曲部分を円滑に移動されるようになっている。
なお、上記第1連結シャフト25A、第2連結シャフト25Bは搬送方向上流側へ向けて設けているが、それらは搬送方向下流側へ向けて伸びるように形成してもよく、その場合には、下流側となるグリップ片に上記第1連結シャフト25A、第2連結シャフト25Bとが摺動自在に貫通する貫通孔を穿設すればよい。
【0014】
以上のように構成されたリニア搬送装置6とそのグリッパ3によって大きさが異なる容器2を保持する場合の具体例を示したものが図4(a)、図4(b)である。
保持可能な最小の容器2を保持する場合には、図4(a)に示すように、グリップ片3Aを搬送方向下流側、グリップ片3Bを搬送方向上流側に配置して、グリップ片3Aの第1保持面3Adbとグリップ片3Bの第2保持面3Bdaによって容器2を保持するようになっている(第1モード)。
他方、保持可能な最大の容器2を保持する場合は、図4(b)に示すように、グリップ片3Aを搬送方向上流側、グリップ片3Bを搬送方向下流側に配置して、グリップ片3Aの第2保持面3Adaとグリップ片3Bの第1保持面3Bdbによって容器2を保持するようになっている(第2モード)。
また、保持可能な最小と最大の容器2の間の中間の大きさの各容器2をグリッパ3で保持する場合には、上記第1モード又は第2モードのグリッパ3において隣り合う一対の可動子16、16が隔てた間隔を調整するようにしている。それにより、グリッパ3を構成する一対のグリップ片3A、3Bの間隔を変更することで、中間の大きさの容器2を円滑にグリッパ3で保持することができる。なお、図4(a)、図4(b)においては第1連結シャフト25Aと第2連結シャフト25Bの関係が理解しやすいように第2連結シャフト25Bの位置を第1連結シャフト25Aの真下ではなく、少しずらした位置で記載している。
【0015】
以上のように構成された本実施例のリニア搬送装置6によれば、隣り合う可動子にわたってグリッパを設けた従来技術と比較して保持可能な容器2の兼用性を拡大することができる。
ここで、図5図6を用いて従来技術のグリッパと本実施例のグリッパ3について、複数の充填ノズルを備えた充填装置で液を充填する場合の違いを比較して説明する。これら図5図6において容器2は左から右へ搬送されるものとする。
図5は従来技術を示しており、図5(a)は隣り合う可動子16A、16Bを最大限、接近させて保持可能な最小の容器2をグリッパ3で保持した状態を示している。また、図5(b)は隣り合う可動子16A、16Bを最大限、離隔させて保持可能な最大の容器2をグリッパ3で保持した状態を示している。
なお、従来技術のグリッパ3は、グリップ片3A、3Bの相互に対向する対向する一面にのみ容器2を保持する保持面が形成されており、隣り合う一対のグリップ片3Aと3Bとからなるグリッパ3で容器2を保持する構成となっている。
ここで、充填装置における隣り合う充填ノズルのピッチがLmmであって、各可動子16A、16Bの寸法は同じであり、隣り合う可動子16A、16Bが最接近した場合の位置と最大限に離隔した場合の位置は同じとする。
従来のグリッパ3において、グリップ片3A、3Bは各可動子16A、16Bの中央(搬送方向の中心)に固定して配置されているとすると、グリップ片3Aとグリップ片3Bとで保持可能な容器2は最小で図5(a)に破線で示す大きさであり、最大で図5(b)に破線で示す大きさとなる。
このような従来技術に対して、本実施例のグリッパ3においては、搬送方向下流側に配置したグリップ片3Aにおける搬送方向の中心を、それを設けた可動子16Aの軸心に対して搬送方向上流側へ所定寸法だけ偏心させるとともに、搬送方向上流側に配置したグリップ片3Bにおける搬送方向の中心を、それを設けた可動子16Bの軸心に対して搬送方向下流側へ所定寸法だけ偏心させている。
グリップ片3Aの第1保持面3Adbとグリップ片3Bの第2保持面3Bdaとで容器2を保持する第1モードのグリッパ3の場合には、図6(a)に示すように、破線で示した従来技術で保持可能な最小の容器2に対して実線で示したさらに小さい容器2を保持することができる。つまり、グリップ片3A、3Bをそれらの可動子16A、16Bに偏心させた寸法だけ、従来よりも小さな容器2を保持することができる。
また、図6(b)に示すように、グリップ片3Aの第2保持面3Adaとグリップ片3Bの第1保持面3Bdbとで容器2を保持する第2モードのグリッパ3の場合には、破線で示した従来技術で保持可能な最大の容器2に対して実線で示したさらに大きな容器2を保持することができる。つまり、グリップ片3A、3Bをそれらの可動子16A、16Bに偏心させた寸法だけ、従来よりも大きな容器2を保持することができる。
したがって、本実施例のリニア搬送装置6によれば、隣り合う一対のグリップ片3A、3Bを移動させる可動子16A、16Bの移動範囲に制限があっても、容器2の大きさに応じて第1モードと第2モードのグリッパ3に切り換えて容器2を保持することにより、保持する容器2の兼用範囲を広くできるので、汎用性が高いリニア搬送装置6を提供することができる。
【0016】
なお、上記実施例はリニア搬送装置6のグリッパ3によって容器2を保持して搬送し、容器2内に液を充填する場合について説明しているが、容器2に限らずその他の物品をグリッパ3で保持して搬送する場合にも本実施例のリニア搬送装置6を用いることができる。
また、グリップ片3Aの第1保持面3Adbと第2保持面3Ada、グリップ片3Bの第1保持面3Bdbと第2保持面3Bdaの形状はすべて同じにする必要はなく、グリップ片3Aの第1保持面3Adbと第2保持面3Adaの形状を異ならせるとともに、グリップ片3Bの第1保持面3Bdbと第2保持面3Bdaの形状を異ならせても良い。ただし、その場合であってもグリップ片3Aの第1保持面3Adbとグリップ片3Bの第2保持面3Bdaおよびグリップ片3Aの第2保持面3Adaとグリップ片3Bの第1保持面3Bdbの形状は同じにする必要がある。
【符号の説明】
【0017】
2…容器(物品) 3…グリッパ
3A…グリップ片 3B…グリップ片
6…リニア搬送装置(物品搬送装置) 16A、16B…可動子
3Adb、3Bdb…第1保持面 3Ada、3Bda…第2保持面
18…電磁コイルユニット(固定子) R…循環搬送経路

図1
図2
図3
図4
図5
図6