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  • 特開-ボイラ及びボイラの腐食抑制方法 図1
  • 特開-ボイラ及びボイラの腐食抑制方法 図2
  • 特開-ボイラ及びボイラの腐食抑制方法 図3
  • 特開-ボイラ及びボイラの腐食抑制方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163282
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ボイラ及びボイラの腐食抑制方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/48 20060101AFI20231102BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20231102BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20231102BHJP
   F22B 37/10 20060101ALI20231102BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20231102BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20231102BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20231102BHJP
   F23J 1/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F23G5/48
F23G5/46 A
F22B37/38 E
F22B37/10 602Z
F22B1/18 M
F23G5/50 N
F23J15/00 B
F23J1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074056
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 翔太
(72)【発明者】
【氏名】北川 尚男
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 朝子
【テーマコード(参考)】
3K062
3K065
3K070
3K161
【Fターム(参考)】
3K062AC01
3K062BA02
3K062BB04
3K062BB05
3K062CB09
3K062DA26
3K062DB02
3K065AB01
3K065AC01
3K065BA03
3K065JA05
3K065JA18
3K070DA03
3K070DA15
3K070DA26
3K161AA03
3K161AA15
3K161EA01
(57)【要約】
【課題】ボイラより後段への負担を抑えてボイラ内の腐食を防ぐ。
【解決手段】廃棄物焼却炉から流通する排ガスの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管を備えた放射室、及び、前記排ガスと伝熱管との熱交換により蒸気を過熱する対流伝熱室を備えるボイラであって、排ガスに含まれる二酸化硫黄の酸化を促進する酸化触媒を少なくとも前記放射室又は前記対流伝熱室に供給する供給装置を有する。腐食の抑制のために硫黄化合物をボイラに導入しないため、ボイラより後段の負担を減らすことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却炉から流通する排ガスの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管を備えた放射室、及び、前記排ガスと伝熱管との熱交換により蒸気を過熱する対流伝熱室を備えるボイラであって、
前記排ガスに含まれる二酸化硫黄の酸化を促進する酸化触媒を少なくとも前記放射室又は前記対流伝熱室に供給する供給装置
を有するボイラ。
【請求項2】
前記二酸化硫黄の酸化を促進した前記酸化触媒を回収するホッパ
を有する請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記放射室の硫黄酸化物の濃度を測定するセンサを有し、
前記供給装置は、供給する前記酸化触媒の量を前記センサの測定結果に応じて調整する
請求項1又は請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
廃棄物焼却炉から流通する排ガスの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管を備えた放射室、及び、前記排ガスと伝熱管との熱交換により蒸気を過熱する対流伝熱室を備えるボイラにおいて、
前記排ガスに含まれる二酸化硫黄の酸化を促進する酸化触媒を少なくとも前記放射室又は前記対流伝熱室に供給する
ボイラの腐食抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ及びボイラの腐食抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却炉における発電は、焼却炉でのごみの燃焼から得られる高温の排ガスからボイラにて所定の温度・圧力の蒸気を発生させてタービン発電機に導入することにより行われている。ごみ焼却炉で発生する排ガス中には塩素や硫黄が含まれており、これらの成分は、燃焼過程で金属塩化物や硫化物などに変化し、ボイラの伝熱管に付着することにより伝熱管の腐食を引き起こす。
【0003】
ボイラの腐食を防ぐ発明としては、例えば特許文献1、2に開示された発明がある。特許文献1、2に開示された発明は、温度プローブによって測定したボイラ内の温度によってボイラ内の腐食量を観測する。そして、観測した腐食量に応じて硫黄化合物を導入することにより、塩素ガスおよび固体の形の腐食された金属の硫酸塩を維持し、ボイラ内の金属表面の腐食を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5165556号公報
【特許文献2】特許第5406895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に開示された発明は、ボイラに投入されて未反応の硫黄化合物が回収されずにボイラより後段へ流通し、ボイラより後段にある処理設備の負担を増大させてしまう。また、導入する硫黄化合物の量に応じて飛灰の処理量も増加してしまい、飛灰処理の負担が増大してしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ボイラより後段への負担を抑えてボイラ内の腐食を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るボイラは、廃棄物焼却炉から流通する排ガスの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管を備えた放射室、及び、前記排ガスと伝熱管との熱交換により蒸気を過熱する対流伝熱室を備えるボイラであって、前記排ガスに含まれる二酸化硫黄の酸化を促進する酸化触媒を少なくとも前記放射室又は前記対流伝熱室に供給する供給装置を有する。
【0008】
また、本発明に係るボイラにおいては、前記二酸化硫黄の酸化を促進した前記酸化触媒を回収するホッパを有するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明に係るボイラにおいては、前記放射室の硫黄酸化物の濃度を測定するセンサを有し、前記供給装置は、供給する前記酸化触媒の量を前記センサの測定結果に応じて調整するようにしてもよい。
【0010】
本発明に係るボイラの腐食抑制方法は、廃棄物焼却炉から流通する排ガスの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管を備えた放射室、及び、前記排ガスと伝熱管との熱交換により蒸気を過熱する対流伝熱室を備えるボイラにおいて、前記排ガスに含まれる二酸化硫黄の酸化を促進する酸化触媒を少なくとも前記放射室又は前記対流伝熱室に供給する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボイラより後段への負担を抑えてボイラ内の腐食を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る焼却炉とボイラの構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るボイラの内部を示す図である。
図3図3は、変形例に係るボイラの構成を示す図である。
図4図4は、テールエンド型のボイラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。
【0014】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る焼却炉1とボイラ2の構成を示す図である。焼却炉1は、例えば廃棄物を焼却する焼却炉である。焼却炉1にはボイラ2が接続されており、焼却炉1で発生した排ガスは、ボイラ2へ流通する。ボイラ2には、排ガスの流れを屈曲させる屈曲部21と屈曲部22が設けられている。ボイラ2には、屈曲部21と屈曲部22とによって排ガスの流路の上流側から第1放射室11、第2放射室12、対流伝熱室13が形成される。なお、焼却炉1内の廃棄物を燃焼した後に排出される排ガスは、第1放射室11を下方から上方へ、第2放射室12を上方から下方へ、対流伝熱室13を下方から上方へ流れる。
【0015】
図2は、ボイラ2の内部を示す図である。第2放射室12には、排ガスからの放射熱を受けて蒸気を発生させる伝熱管40が放射伝熱面として配置されている。対流伝熱室13には、排ガスの流路の上流側からスクリーン管32、2次過熱器34、3次過熱器36、1次過熱器38が設けられている。また、対流伝熱室13の下方には、排ガス中の飛灰を補集するホッパ15が設けられている。なお、対流伝熱室13には、必要に応じてエコノマイザを設けてもよい。
【0016】
2次過熱器34、3次過熱器36、1次過熱器38は、それぞれ、水平方向に配列した複数の伝熱管40を上下方向に多段に設けた伝熱管群を備えている。この伝熱管群は、対流伝熱面を構成しており、第2放射室12の伝熱管40で発生した蒸気を排ガスとの熱交換により更に過熱するようにされている。スクリーン管32には伝熱管40が設けられている。スクリーン管32は、対流伝熱室13に導入される排ガスを冷却し、排ガスに含まれるダスト成分を固体化してダストとして排ガスから分離する。対流伝熱室13には、図示省略したエコノマイザが接続されており、1次過熱器38を通過した排ガスはエコノマイザへ流通する。また、エコノマイザより後段には図示省略したバグフィルタが接続されており、排ガスに含まれている有毒物質、有毒ガス、ばいじんがバグフィルタにより除去される。
【0017】
第2放射室12の上部には吹込み口14が設けられている。供給装置60は、酸化触媒50を吹込み口14に供給する装置である。第2放射室12の内部には、二酸化硫黄を三酸化硫黄に変化させる酸化触媒50が吹込み口14から吹き込まれる。吹込み口4から吹き込まれる酸化触媒50は、例えば、五酸化バナジウムである。
【0018】
吹込み口14から吹き込まれる五酸化バナジウムが触媒となり、排ガスに含まれる二酸化硫黄から三酸化硫黄が式(1)に示す反応で生成される。
2SO+O→2SO・・・(1)
【0019】
また、式(1)の反応で生成される三酸化硫黄が対流伝熱室13を流通することにより、伝熱管40に付着した塩化物と三酸化硫黄とが反応し、硫酸カリウムと塩化水素が式(2)に示す反応で生成される。
2KCl+SO+HO→KSO+2HCl・・・(2)
【0020】
三酸化硫黄と塩化物とが反応して生成された塩化水素や硫黄酸化物は、図示省略した後段のバグフィルタにより除去される。バグフィルタにより無害化された排ガスは、図示省略した煙突から大気へ放出される。なお、第2放射室12を流通した酸化触媒50はホッパ15により回収される。回収された酸化触媒50は、飛灰と分離されて吹込み口14に搬送されて再利用される。
【0021】
本実施形態によれば、ボイラ2に吹き込まれた酸化触媒50はボイラ2が有するホッパ15で回収されてボイラ2より後段のバグフィルタには流通しないため、ボイラ2より後段の負担を減らすことができる。また、硫黄化合物をボイラ2より後段に導入しないため、硫黄化合物を導入する特許文献1、2に開示された発明と比較して、ボイラ2より後段の負担を減らすことができる。
【0022】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0023】
上述した実施形態においては、吹込み口14が第2放射室12の上部に設けられているが、第2放射室12の上部以外に設けられていてもよい。例えば、第1放射室11の上部や対流伝熱室13の側面に設けられていてもよい。
【0024】
上述した実施形態においては、排ガス中に含まれる硫黄酸化物の濃度を測定し、吹込み口14へ供給する酸化触媒50の量を測定結果に応じて調整してもよい。図3は、変形例に係るボイラ2Aの構成を示す図である。変形例に係るボイラ2Aにおいては、第1放射室11の上部に硫黄酸化物の濃度を測定するセンサ61が設置されている。センサ61は、供給装置60に接続されている。供給装置60は、酸化触媒50を吹込み口14に供給する装置である。供給装置60は、吹込み口14へ供給する酸化触媒50の量をセンサ61の測定結果に応じて調整する。例えば供給装置60は、センサ61で測定される硫黄酸化物の濃度が濃くなるにつれて酸化触媒50の供給量を増やす。この構成によれば、焼却炉1から流通してきた排ガス中の二酸化硫黄の濃度の変化に応じて排ガス中の二酸化硫黄を減らすことができる。
【0025】
上述した実施形態においては、ボイラ2及びボイラ2Aは過熱器が縦に配置されたインテグラル型であるが、焼却炉1に連なるボイラはテールエンド型であってもよい。図4は、本発明の変型例に係るテールエンド型のボイラ2Bの構成を示す図である。焼却炉1で発生した排ガスは、ボイラ2Bへ流通する。ボイラ2Bには、排ガスの流れを屈曲させる屈曲部21aと屈曲部22aが設けられている。ボイラ2Bには、屈曲部21aと屈曲部22aとによって排ガスの流路の上流側から第1放射室11a、第2放射室12a、対流伝熱室13aが形成される。なお、焼却炉1内の廃棄物を燃焼した後に排出される排ガスは、第1放射室11aを下方から上方へ、第2放射室12aを上方から下方へ、対流伝熱室13aを地面と平行に流れる。
【0026】
第1放射室11aと第2放射室12aのケーシングは、水冷壁管41から構成される。第1放射室11aと第2放射室12aは、排ガスからの放射熱を受けて水冷壁管41で蒸気を発生させる。第2放射室12aの上部には吹込み口14aが設けられている。第2放射室12aの内部には、供給装置60により供給される酸化触媒50が吹込み口14aから吹き込まれる。
【0027】
対流伝熱室13aには、排ガスと熱交換して蒸気を過熱する過熱器30が配置される。過熱器30は、対流伝熱室13aの天井部から吊り下げられる吊下げ式の過熱器である。過熱器30が過熱した蒸気は、蒸気タービン80に送られる。また、対流伝熱室13aの下方には、排ガス中の飛灰を補集するホッパ15aが設けられている。対流伝熱室13aの後段には、エコノマイザ70が設けられており、対流伝熱室13aを通過した排ガスはエコノマイザ70へ流通する。また、エコノマイザ70より後段には図示省略したバグフィルタが接続されており、排ガスに含まれている有毒物質、有毒ガス、ばいじんがバグフィルタにより除去される。バグフィルタにより無害化された排ガスは、図示省略した煙突から大気へ放出される。
【0028】
ボイラ2Bにおいては、吹込み口14aから吹き込まれる五酸化バナジウムが触媒となり、排ガスに含まれる二酸化硫黄から三酸化硫黄が生成される。また、生成される三酸化硫黄が対流伝熱室13aを流通することにより、過熱器30を構成する伝熱管に付着した塩化物と三酸化硫黄とが反応し、硫酸カリウムと塩化水素が生成される。生成された塩化水素や硫黄酸化物は、図示省略した後段のバグフィルタにより除去される。バグフィルタにより無害化された排ガスは、図示省略した煙突から大気へ放出される。なお、酸化触媒50はホッパ15aにより回収される。回収された酸化触媒50は、飛灰と分離されて吹込み口14aに搬送されて再利用される。なお、ボイラ2Bにおいてもセンサ61を設け、吹込み口14へ吹き込む酸化触媒50の量をセンサ61の測定結果に応じて調整してもよい。
【0029】
本変形例によれば、酸化触媒50はホッパ15aで回収されて後段のバグフィルタには流通しないため、テールエンド型のボイラ2Bより後段の負担を減らすことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 焼却炉
2、2A、2B ボイラ
11、11a 第1放射室
12、12a 第2放射室
13、13a 対流伝熱室
14、14a 吹込み口
15、15a ホッパ
21、21a、22、22a 屈曲部
30 過熱器
32 スクリーン管
34 2次過熱器
36 3次過熱器
38 1次過熱器
40 伝熱管
50 酸化触媒
60 供給装置
61 センサ
70 エコノマイザ
図1
図2
図3
図4