(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016329
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】超音波診断用の無線通信ユニット、超音波画像表示装置および無線超音波プローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120573
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西沢 昇
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE10
4C601GB18
4C601GB20
4C601GB21
4C601GB22
4C601GD04
4C601LL21
4C601LL26
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、無線超音波プローブと画像表示装置との間の距離を適切な範囲とすることである。
【解決手段】画像表示装置16は、ペアリング要求信号を送信した後に(SA1)、ペアリング応答信号を受信したときに(SA2)、無線超音波プローブ12との間に通信状況条件が成立したと判定する。画像表示装置16は、測距信号を無線超音波プローブ12に送信し(SA3)、無線超音波プローブ12から送信された測距応答信号を受信し(SA4)、測距信号を送信してから測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、無線超音波プローブ12までの隔離距離を測定する。画像表示装置16は、隔離距離が所定範囲内にあるときに、無線超音波プローブ12との間に距離条件が成立したと判定する。無線通信部は、通信状況条件および距離条件が成立したときに、無線超音波プローブ12との間でペアリングを完了する(SA5)。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線超音波プローブとの間でIR-UWB方式の無線通信を行う超音波診断用の無線通信ユニットにおいて、
ペアリング要求信号を送信した後に、前記無線超音波プローブから送信されたペアリング応答信号を受信したときに、前記無線超音波プローブとの間に第1条件が成立したと判定する第1判定処理と、
測距信号を前記無線超音波プローブに送信し、前記無線超音波プローブから送信された測距応答信号を受信し、前記測距信号を送信してから前記測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、前記無線超音波プローブまでの隔離距離を測定する測距処理と、
前記隔離距離が所定範囲内にあるときに、前記無線超音波プローブとの間に第2条件が成立したと判定する第2判定処理と、を実行し、
前記第1条件および前記第2条件が成立したときに、前記無線超音波プローブとの間でペアリングを完了することを特徴とする超音波診断用の無線通信ユニット。
【請求項2】
無線超音波プローブから送信された画像データ信号に基づく画像を表示する超音波画像表示装置において、
前記画像データ信号を、IR-UWB方式の無線通信部によって受信する画像データ受信処理と、
前記無線通信部に測距信号を送信させ、前記無線超音波プローブから送信された測距応答信号を前記無線通信部に受信させ、前記無線通信部が前記測距信号を送信してから前記無線通信部が前記測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、前記無線超音波プローブまでの隔離距離を測定する測距処理と、を実行し、
前記超音波画像表示装置は、
前記画像データ受信処理によって、所定データ量の前記画像データを受信するごとに、前記測距処理を実行することを特徴とする超音波画像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波画像表示装置において、
前記画像データ信号に基づく画像を表示し、
前記隔離距離を示す情報を表示することを特徴とする超音波画像表示装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の超音波画像表示装置において、
前記隔離距離を示す情報を前記無線通信部によって送信することを特徴とする超音波画像表示装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の超音波画像表示装置において、
前記隔離距離が予め定められた範囲内にないときに、ユーザに注意を促す警告処理を実行することを特徴とする超音波画像表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波画像表示装置において、
前記警告処理は、
ユーザに注意を促す処理を実行させる警告指令情報を、前記無線通信部によって前記無線超音波プローブに送信する処理を含むことを特徴とする超音波画像表示装置。
【請求項7】
制御部と、IR-UWB方式の無線通信を画像表示装置との間で行う無線通信部と、を備え、
前記制御部は、
前記画像表示装置から送信されたペアリング要求信号が前記無線通信部で受信されたときに、前記無線通信部によってペアリング応答信号を前記画像表示装置に送信するペアリング応答処理と、
前記画像表示装置から送信された測距信号が前記無線通信部で受信されたときに、測距応答信号を前記無線通信部によって前記画像表示装置に送信する測距応答処理と、を実行し、
前記ペアリング応答信号および前記測距応答信号に基づいて、前記画像表示装置がペアリングのための条件が成立すると判定した場合に、前記画像表示装置との間でペアリングを完了することを特徴とする無線超音波プローブ。
【請求項8】
信号処理/制御部と、IR-UWB方式の無線通信を画像表示装置との間で行う無線通信部と、トランスデューサとを備え、
前記信号処理/制御部は、
前記トランスデューサに対する送信信号を生成し、前記トランスデューサで受信された超音波に基づき画像データ信号を生成し、前記無線通信部によって前記画像データ信号を前記画像表示装置に送信する画像データ送信処理と、
前記画像表示装置から送信された測距信号が前記無線通信部で受信されたときに、前記無線通信部によって測距応答信号を前記無線超音波プローブに送信する測距応答処理と、を実行することを特徴とする無線超音波プローブ。
【請求項9】
請求項8に記載の無線超音波プローブにおいて、
前記画像表示装置は、前記測距信号を送信してから前記測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、前記無線超音波プローブまでの隔離距離を求め、前記隔離距離を示す情報を送信し、
前記信号処理/制御部は、
前記隔離距離を示す情報を前記無線通信部によって受信し、前記隔離距離に応じた表示動作を実行することを特徴とする無線超音波プローブ。
【請求項10】
請求項8に記載の無線超音波プローブにおいて、
前記画像表示装置は、前記測距信号を送信してから前記測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、前記無線超音波プローブまでの隔離距離を求め、前記隔離距離が予め定められた範囲内にないときに警告指令情報を送信し、
前記信号処理/制御部は、
前記警告指令情報を前記無線通信部によって受信し、前記警告指令情報に応じてユーザに注意を促す処理を実行することを特徴とする無線超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断用の無線通信ユニット、超音波画像表示装置および無線超音波プローブに関し、特に、無線超音波プローブとの間で行われる無線通信に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断システムが広く用いられている。超音波診断システムは、一般に超音波プローブと本体装置とを備えている。超音波プローブは、被検体に対し超音波を送信し、被検体で反射した超音波を受信する。本体装置は、超音波プローブから取得した受信信号によって、被検体の超音波画像データを生成し、超音波画像データに基づく画像を表示する。
【0003】
近年では、超音波画像データを生成するための機能を超音波プローブに集約し、超音波プローブとは別に設けられた画像表示装置に超音波画像を表示する超音波診断システムが開発されている。超音波プローブは、受信した超音波に基づき超音波画像データを生成し、画像表示装置に無線送信する。画像表示装置は、受信した超音波画像データに基づく画像を表示する。画像表示装置には、例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等が用いられる。
【0004】
以下の特許文献1には、超音波プローブと、画像表示を行う端末装置との間で無線通信を行う超音波診断システムが記載されている。この超音波診断システムでは、超音波プローブと端末装置とが、WiFi(登録商標)等の無線ネットワークを介して接続されている。特許文献2には、超音波スキャナ(超音波プローブ)、画像化システム、およびワイヤレスディスプレイ(画像表示装置)を備える超音波画像化装置が記載されている。画像化システムは、超音波スキャナから得られた信号に基づき画像データを生成し、ワイヤレスディスプレイに無線送信する。ワイヤレスディスプレイは、画像データに基づく画像を表示する。
【0005】
画像化システムとワイヤレスディスプレイとの間の通信は、UWB(Ultra Wide-Band)の規格に従って行われる。ここで、UWBの規格は、信号の周波数スペクトラムを広帯域とし、単位周波数当たりの電力を抑制する通信規格である。UWBの規格としてIEEE 802.15.3が参照されている。特許文献3および非特許文献1には、本願発明に関連する技術として、IR-UWB方式に関する記載がある。IR-UWB方式は、UWBの規格に従うと共に、搬送波を用いずにパルスによって信号を伝送する通信方式である。非特許文献1では、IR-UWB方式に関する規格であるIEEE 802.15.4zが参照されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2021/005637号
【特許文献2】特表2008-513084号公報
【特許文献3】特開2010-233195号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Petr Sedlacek, Martin Slanina, and Pavel Masek, “ An Overbview of the IEEE 802.15.4z Standard and its Comparison to the Existing UWB Standards “, 2019 29th International Conference Radioelektronika (RADIOELEKTRONIKA)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
超音波画像データを画像表示装置に無線送信する無線超音波プローブでは、画像表示装置との間の距離が長くなると、画像表示装置との間の通信状況が劣化し、画像表示装置に画像を表示することが困難となることがある。
【0009】
本発明の目的は、無線超音波プローブと画像表示装置との間の距離を適切な範囲とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、無線超音波プローブとの間でIR-UWB方式の無線通信を行う超音波診断用の無線通信ユニットにおいて、ペアリング要求信号を送信した後に、前記無線超音波プローブから送信されたペアリング応答信号を受信したときに、前記無線超音波プローブとの間に第1条件が成立したと判定する第1判定処理と、測距信号を前記無線超音波プローブに送信し、前記無線超音波プローブから送信された測距応答信号を受信し、前記測距信号を送信してから前記測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、前記無線超音波プローブまでの隔離距離を測定する測距処理と、前記隔離距離が所定範囲内にあるときに、前記無線超音波プローブとの間に第2条件が成立したと判定する第2判定処理と、を実行し、前記第1条件および前記第2条件が成立したときに、前記無線超音波プローブとの間でペアリングを完了することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、無線超音波プローブから送信された画像データ信号に基づく画像を表示する超音波画像表示装置において、前記画像データ信号を、IR-UWB方式の無線通信部によって受信する画像データ受信処理と、前記無線通信部に測距信号を送信させ、前記無線超音波プローブから送信された測距応答信号を前記無線通信部に受信させ、前記無線通信部が前記測距信号を送信してから前記無線通信部が前記測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、前記無線超音波プローブまでの隔離距離を測定する測距処理と、を実行し、前記超音波画像表示装置は、前記画像データ受信処理によって、所定データ量の前記画像データを受信するごとに、前記測距処理を実行することを特徴とする。
【0012】
望ましくは、前記画像データ信号に基づく画像を表示し、前記隔離距離を示す情報を表示する。
【0013】
望ましくは、前記隔離距離を示す情報を前記無線通信部によって送信する。
【0014】
望ましくは、前記隔離距離が予め定められた範囲内にないときに、ユーザに注意を促す警告処理を実行する。
【0015】
望ましくは、前記警告処理は、ユーザに注意を促す処理を実行させる警告指令情報を、前記無線通信部によって前記無線超音波プローブに送信する処理を含む。
【0016】
また、本発明は、制御部と、IR-UWB方式の無線通信を画像表示装置との間で行う無線通信部と、を備え、前記制御部は、前記画像表示装置から送信されたペアリング要求信号が前記無線通信部で受信されたときに、前記無線通信部によってペアリング応答信号を前記画像表示装置に送信するペアリング応答処理と、前記画像表示装置から送信された測距信号が前記無線通信部で受信されたときに、測距応答信号を前記無線通信部によって前記画像表示装置に送信する測距応答処理と、を実行し、前記ペアリング応答信号および前記測距応答信号に基づいて、前記画像表示装置がペアリングのための条件が成立すると判定した場合に、前記画像表示装置との間でペアリングを完了することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、信号処理/制御部と、IR-UWB方式の無線通信を画像表示装置との間で行う無線通信部と、トランスデューサとを備え、前記信号処理/制御部は、 前記トランスデューサに対する送信信号を生成し、前記トランスデューサで受信された超音波に基づき画像データ信号を生成し、前記無線通信部によって前記画像データ信号を前記画像表示装置に送信する画像データ送信処理と、前記画像表示装置から送信された測距信号が前記無線通信部で受信されたときに、前記無線通信部によって測距応答信号を前記無線超音波プローブに送信する測距応答処理と、を実行する。
【0018】
望ましくは、前記画像表示装置は、前記測距信号を送信してから前記測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、前記無線超音波プローブまでの隔離距離を求め、前記隔離距離を示す情報を送信し、前記信号処理/制御部は、前記隔離距離を示す情報を前記無線通信部によって受信し、前記隔離距離に応じた表示動作を実行する。
【0019】
望ましくは、前記画像表示装置は、前記測距信号を送信してから前記測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、前記無線超音波プローブまでの隔離距離を求め、前記隔離距離が予め定められた範囲内にないときに警告指令情報を送信し、前記信号処理/制御部は、前記警告指令情報を前記無線通信部によって受信し、前記警告指令情報に応じてユーザに注意を促す処理を実行する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、無線超音波プローブと画像表示装置との間の距離を適切な範囲とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】無線超音波プローブの構成例を示す図である。
【
図3】無線超音波プローブの構成例を示す図である。
【
図5】外付けIR-UWB無線通信部の構成例を示す図である。
【
図6】IR-UWB無線通信部を内蔵した画像表示装置の構成例を示す図である。
【
図7】IR-UWB方式の無線信号のデータシンボルの構造を示す図である。
【
図8】ペアリング処理のシーケンスチャートである。
【
図9】画像表示装置が送信する測距信号のパケットと、画像表示装置が受信する測距応答信号のパケットを示す図である。
【
図10】画像表示装置と2つの無線超音波プローブとの間で実行されるペアリング処理のシーケンスチャートである。
【
図11】距離Lを隔てて配置された2つの画像表示装置を備える超音波診断システムの構成を示す図である。
【
図12】超音波診断処理のシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示されている同一の事項については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0023】
図1には、本発明の実施形態に係る超音波診断システム100の構成が示されている。超音波診断システム100は、無線超音波プローブ12および超音波画像表示装置16(以下、超音波画像表示装置を単に画像表示装置という。)を備えている。無線超音波プローブ12には、超音波画像データを生成するための機能が超音波プローブに集約されている。超音波診断が行われるときは、無線超音波プローブ12の超音波送受信面14が被検体に当接するように無線超音波プローブ12が支持される。
【0024】
無線超音波プローブ12は、被検体に超音波を送信し、被検体で反射した超音波を受信する。無線超音波プローブ12は受信した超音波に基づく受信信号を生成し、その受信信号に基づいて超音波画像の情報を含む画像データ信号を生成する。ここで、画像データ信号は、最終的な超音波画像データでなくてもよく、超音波画像を表示するための情報を含む信号であればよい。無線超音波プローブ12は、さらに、画像データ信号を画像表示装置16に無線送信する。画像表示装置16は、無線超音波プローブ12から無線送信された画像データ信号を受信し、画像データ信号に基づいて、ディスプレイ48に超音波画像を表示する。なお、以下の説明では、無線超音波プローブ12から画像表示装置16に信号が無線送信されること、および画像表示装置16から無線超音波プローブ12に信号が無線送信されることについては、単に「送信」の用語が用いられることがある。
【0025】
画像表示装置16は、ペアリングを完了した無線超音波プローブ12との間で、画像表示のための無線通信を行う。ペアリングとは、無線装置が、他の無線装置との間で互いにID(Identification)の認証を行う処理をいう。ペアリング完了のための条件には、画像表示装置16と無線超音波プローブ12との間の通信状況が良好であるという通信状況条件(第1条件)がある。通信状況条件は、ペアリングのための通信(ペアリング通信)が可能であることで満たされる。
【0026】
本実施形態に係る超音波診断システム100では、通信状況条件の他、画像表示装置16と無線超音波プローブ12との間の隔離距離が所定の判定距離範囲内であるという距離条件(第2条件)がペアリングを完了するための条件となっている。判定距離範囲は、例えば、画像表示装置16までの距離が、下限距離DN以上、上限DF以下であるというように定義されてよい。
【0027】
画像表示装置16の周囲に複数の無線超音波プローブ12がある場合、画像表示装置16は、複数の無線超音波プローブ12のうち、ペアリング通信が可能であり、距離条件を満たすものとの間でペアリングを完了する。通信状況条件および距離条件を満たす無線超音波プローブ12が複数ある場合には、例えば、最も先にペアリング通信を終了したものとの間でペアリングが完了する。また、1台の画像表示装置16が複数の無線超音波プローブ12との間でペアリングを完了してもよい。この場合、画像表示装置16は、例えば、ユーザの操作による動作の切り替えによって、複数の無線超音波プローブ12に対して個別に画像表示等を行う。
【0028】
図2には、無線超音波プローブ12の構成例が示されている。無線超音波プローブ12は、医師等のユーザが手に持って被検体としての生体Pの所望位置の皮膚に当て、画像データ信号を得る。
【0029】
トランスデューサ20は、超音波振動子アレイを有し、生体Pの接触部に向けて超音波を送出し、また生体Pからの反射波を受信する。トランスデューサ20には、パルス/スイッチ部22が接続されている。このパルス/スイッチ部22は、トランスデューサ20が超音波を送出するためのパルス状の送信信号を生成して、これをトランスデューサ20に供給する。トランスデューサ20の超音波振動子アレイが送信信号に応じて振動することで、パルス状の超音波が生体Pに向けて送出される。生体P内で得られたパルス状の反射波は、トランスデューサ20の超音波振動子アレイで受信信号に変換され、パルス/スイッチ部22に供給される。
【0030】
パルス/スイッチ部22には、AMP/ADC部24が接続されており、ここにおいて、受信信号が増幅されると共にデジタル信号に変換される。得られたデジタル信号は、デジタル信号処理部26に供給される。デジタル信号処理部26は、デジタル信号について各種処理を施し、画像データ信号を生成する。なお、デジタル信号処理部26には、受信信号だけでなく送信信号もデジタル信号として供給されており、遅延時間やドプラシフト等の情報も得る。
【0031】
デジタル信号処理部26には、IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線通信部28が接続されており、画像表示装置16に画像データ信号を送信する。無線超音波プローブ12には、制御部30が設けられており、各部の動作が制御部30により制御される。また、無線超音波プローブ12は、USB(商標)等の外部接続端子32を有する。したがって、この外部接続端子32を介し外部機器と信号を交換したり、外部から充電電力を受け入れたりすることができる。
【0032】
外部接続端子32には、充電部34を介しバッテリ36が接続されており、外部から供給される充電電力によりバッテリ36が充電される。また、バッテリ36には、電源部38が接続されており、電源部38から無線超音波プローブ12内の各部に必要な電力が供給される。
【0033】
無線超音波プローブ12は、発光ダイオード(LED)40を備えている。発光ダイオード40はインジケータとしての機能を有し、制御部30の制御に応じて点灯、消灯または点滅し、無線超音波プローブ12の状態を示す。また、複数の発光ダイオード40が設けられてもよい。この場合、各発光ダイオード40の点灯、消灯または点滅の組み合わせに応じてユーザに伝えられるべき情報が示されてもよい。また、発光ダイオード40と共に、または発光ダイオード40に代えて、ディスプレイが設けられてもよい。
【0034】
図3には、無線超音波プローブ12の構成例が示されている。無線超音波プローブ12の筐体には、インジケータとして複数の発光ダイオード40が設けられている。複数の発光ダイオード40のそれぞれの点灯、点滅、消灯等の点灯状態に応じて、画像表示装置16と無線超音波プローブ12との間の距離が示されてよい。
【0035】
図4には、無線通信機能のない画像表示装置本体18と、外付けIR-UWB無線通信部60とを有する画像表示装置16の構成例が示されている。画像表示装置本体18は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であってよい。画像表示装置本体18は、USB(商標)等の外部接続端子64を有しており、ここに外付けIR-UWB無線通信部60が接続される。外付けIR-UWB無線通信部60は、無線超音波プローブ12から送信された画像データ信号を受信し、画像表示装置本体18に供給する。
【0036】
外部接続端子64には、入出力部44を介して画像表示制御部46が接続され、画像表示制御部46には、画像データ信号に基づく画像を表示する表示部としてのディスプレイ48が接続されている。無線超音波プローブ12から送信される画像データ信号は、外付けIR-UWB無線通信部60、入出力部44を介し画像表示制御部46に供給され、ここで各種信号処理がなされ、ディスプレイ48に供給される。ディスプレイ48は、無線超音波プローブ12によって得た画像データ信号に基づく画像を表示する。なお、ディスプレイ48は、タッチパネルを伴うディスプレイであってよい。また、ディスプレイ48は、画像表示装置本体18の外部に設けられたものであってもよい。
【0037】
外部接続端子64には、スイッチ50および充電部52を介してバッテリ54が接続されている。外部接続端子64に外部電源を接続し、外部電源の電力によりバッテリ54が充電されてもよい。また、バッテリ54には、電源部56が接続されており、ここから画像表示装置本体18内の各部に電力が供給される。また、電源部56が出力する電力は、スイッチ50、外部接続端子64を介し、外付けIR-UWB無線通信部60に供給される。
【0038】
すなわち、スイッチ50は、充電/給電の切り換えスイッチであり、外部接続端子64に外付けIR-UWB無線通信部60が接続されている場合には、電源部56からの電力を外付けIR-UWB無線通信部60に供給し、外部接続端子64に外部電源が接続されている場合には、外部電源からの電力を、充電部52を介しバッテリ54に供給する。
【0039】
図5には、外付けIR-UWB無線通信部60の構成例が示されている。外付けIR-UWB無線通信部60は、入出力インターフェース61、通信制御部62およびIR-UWB無線回路63を備えている。入出力インターフェース61は、無線通信機能のない画像表示装置本体18の外部接続端子64に接続される。IR-UWB無線回路63は、通信制御部62の制御に従って、IR-UWB方式の信号を送信し、または受信する。通信制御部62は、IR-UWB無線回路63と共に、無線超音波プローブ12までの距離を測定する測距処理を含んだペアリング処理を実行する。
【0040】
図6には、IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線通信部58を内蔵した画像表示装置16の構成例が示されている。無線超音波プローブ12から送信された画像データ信号はIR-UWB無線通信部58で受信されて、画像表示制御部46に供給される。IR-UWB無線通信部58の構成は、
図5に示される外付けIR-UWB無線通信部60と、
図4に示される入出力部44とを併せたものと同様である。画像表示制御部46の処理およびディスプレイ48の表示等は
図4に示されている画像表示装置本体18と同様である。
【0041】
また、外部接続端子42は、入出力部44を介し画像表示制御部46に接続されており、外部とのデータのやり取りが可能になっている。また、外部接続端子42には、充電部52を介して、バッテリ54が接続されており、外部からの充電が可能であり、電源部56から画像表示装置16内の各部に電力が供給される。
【0042】
このような無線通信機能を内蔵した画像表示装置16においても、外付けIR-UWB無線通信部60を利用した場合と同様の動作が可能である。
【0043】
図7には、IR-UWB方式の無線信号のデータシンボルの構造が示されている(非特許文献1)。データシンボルは、時間軸上に連なった2つのハーフシンボル68から構成され、各ハーフシンボル68は、バースト列70およびガードインターバル72から構成されている。バースト列70は、複数のバースト74から構成されており、各バースト74は、複数のパルス76から構成されている。例えば、1つのバースト74には8個のパルス76が含まれてよく、バースト列70には8個のバースト74が含まれてよい。パルス76はインパルス状の波形を有している。1つのパルス76の時間長はns未満のオーダーであってよい。時間長は、例えば、信号の大きさがピーク値の半分まで立ち上がってから、ピーク値の半分まで立ち下がるまでの時間として定義される。バースト74に含まれる情報は、バースト74に含まれる複数のパルス76のそれぞれの極性によって表される。
【0044】
画像表示装置16と無線超音波プローブ12との間で実行されるペアリング処理について、
図8のシーケンスチャートを参照して説明する。画像表示装置16は、自らのID(以下、画像表示装置IDという)を含むペアリング要求信号を送信する(SA1)。ペアリング要求信号を受信した無線超音波プローブ12は、ペアリング要求信号から画像表示装置IDを抽出して記憶すると共に、自らのID(以下、プローブIDという)を含むペアリング応答信号を画像表示装置16に送信する(SA2)。ペアリング応答信号を受信した画像表示装置16は、ペアリング応答信号からプローブIDを抽出して記憶する。なお、画像表示装置IDおよびプローブIDは、それぞれ、画像表示装置16および無線超音波プローブ12のMACアドレスであってよい。
【0045】
画像表示装置16は、ペアリング応答信号を受信した後、測距信号を送信する(SA3)。測距信号を受信した無線超音波プローブ12は、測距応答信号(SA4)を画像表示装置16に送信する。測距応答信号を受信した画像表示装置16は、測距信号を送信してから測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、無線超音波プローブ12までの隔離距離を求める。
【0046】
画像表示装置16は、隔離距離が判定距離範囲内であるか否かを判定する。画像表示装置16は、隔離距離が判定距離範囲内であると判定したときは、先に受信したペアリング応答信号に含まれていたプローブIDを登録プローブIDとして記憶する。画像表示装置16は、無線超音波プローブ12にペアリング完了信号を送信する(SA5)。ペアリング完了信号を受信した無線超音波プローブ12は、先に受信したペアリング要求信号に含まれていた画像表示IDを登録画像表示装置IDとして記憶する。このようにして登録プローブIDが画像表示装置16に記憶され、登録画像表示装置IDが無線超音波プローブ12に記憶されることでペアリングが完了する。ペアリングが完了した後は、登録プローブIDおよび登録画像表示装置IDを用いて、画像表示装置16および無線超音波プローブ12との間の無線通信が行われる。
【0047】
一方、画像表示装置16は、隔離距離が判定距離範囲外であると判定したときは、無線超音波プローブ12に不許可信号を送信し(SA5)、ペアリングを完了させずにペアリング処理を終了する。不許可信号を受信した無線超音波プローブ12は、ペアリングを完了させずに、画像表示装置16による次のペアリング要求信号の送信を待機してもよい。なお、SA1~SA5までの一連の処理は、繰り返し実行されてもよい。
【0048】
図9の上段には、画像表示装置16が送信する測距信号のパケット78と、画像表示装置16が受信する測距応答信号のパケット78が示されている。
図9の下段には、無線超音波プローブ12が受信する測距信号のパケット78と、無線超音波プローブ12が送信する測距応答信号のパケット78が示されている。各パケット78には、パケット内で相対的に定められた固定位置に測距パルス列80が含まれている。測距パルス列80は、予め定められた複数桁の参照符号を表す複数のパルスである。
【0049】
画像表示装置16は、測距信号を送信すると共に、測距信号に含まれる測距パルス列80の送信時刻t1を記憶する。無線超音波プローブ12は、自らが記憶する参照符号と、測距信号に含まれる測距パルス列80が示す符号とを照合することで、測距パルス列80を認識する。無線超音波プローブ12は、測距パルス列80を受信した時刻t2と、測距応答信号に含まれる測距パルス列80を送信する時刻t3を測定し、応答時間trを求める。応答時間trは、測距パルス列80を受信してから測距パルス列80を送信するまでの時間であり、tr=t3-t2に従って求められる。無線超音波プローブ12は、応答時間trを示す情報を含む測距応答信号を送信する。
【0050】
なお、応答時間trが無線超音波プローブ12固有の値として一定である場合には、応答時間trは無線超音波プローブ12に予め記憶されてよい。この場合、無線超音波プローブ12は、予め記憶された応答時間trを示す情報を含む測距応答信号を送信する。
【0051】
画像表示装置16は、自らが記憶する参照符号と、測距応答信号に含まれる測距パルス列80が示す符号とを照合することで、測距応答信号に含まれる測距パルス列80を認識する。画像表示装置16は、測距応答信号に含まれる測距パルス列80を受信した時刻t4を測定し記憶する。
【0052】
画像表示装置16は、無線超音波プローブ12までの隔離距離Dを次の(数1)に従って求める。
【0053】
(数1)D=(t4-t1-tr)・c/2
【0054】
ここで、cは電磁波の伝搬速度である。(数1)は、画像表示装置16と無線超音波プローブ12との間の往復伝搬時間t4-t1-trの半分に、電磁波の伝搬速度cを乗じることで導かれる。
【0055】
なお、無線超音波プローブ12は、時刻t2およびt3を示す情報を含む測距応答信号を画像表示装置16に送信してもよい。この場合、画像表示装置16は、測距応答信号から時刻t2およびt3を示す情報を抽出し、時刻t2およびt3から応答時間trを求める。画像表示装置16は、(数1)のtrをt3-t2に置き換えた式等、(数1)と同一の意義を有する数式に基づいて隔離距離Dを求めてもよい。
【0056】
本実施形態に係る超音波診断システム100では、画像表示装置16と無線超音波プローブ12との間の隔離距離が、測距信号および測距応答信号のそれぞれに含まれる測距パルス列80の伝搬時間に基づいて求められる。測距パルスは時間長がns未満のオーダーであってよい。したがって、画像表示装置16の周辺で、無線超音波プローブ12をユーザが携行する距離範囲内で隔離距離が高分解能で測定される。また、隔離距離が判定距離範囲内である無線超音波プローブ12が、画像表示装置16との間でペアリングを完了する。したがって、無線超音波プローブ12と画像表示装置16との間の隔離距離が適切な範囲となる。
【0057】
上記
図8では、画像表示装置16と、1つの無線超音波プローブ12との間で実行されるペアリング処理が示された。
図10には、画像表示装置16と2つの無線超音波プローブ12-1および12-2との間で実行されるペアリング処理のシーケンスチャートが示されている。
図10に示される例では、無線超音波プローブ12-1については距離条件が満たされて画像表示装置16との間でペアリングが完了し、無線超音波プローブ12-2については距離条件が満たされずにペアリングが未達である。
【0058】
画像表示装置16と、無線超音波プローブ12-1との間で実行されるステップSB1~SB5の処理は、それぞれ、
図8に示されている画像表示装置16と、無線超音波プローブ12との間で実行されるステップSA1~SA5の処理と同様である。ただし、ステップSB1において画像表示装置16から送信されたペアリング要求信号は無線超音波プローブ12-2でも受信されている。
図10には、無線超音波プローブ12-2から送信されたペアリング応答信号が画像表示装置16で受信されてから、画像表示装置16が測距信号を送信するまでの間に(SB2,SB3)、無線超音波プローブ12-2が、ペアリング応答信号を画像表示装置16に送信した場合が示されている(SB6)。
【0059】
画像表示装置16は、無線超音波プローブ12-1との間でペアリングを完了した後(SB5)、無線超音波プローブ12-2に向けて測距信号を送信する(SB7)。測距信号を受信した無線超音波プローブ12-2は、測距応答信号を画像表示装置16に送信する(SB8)。測距応答信号を受信した画像表示装置16は、測距信号を送信してから測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、画像表示装置16と無線超音波プローブ12-2との間の隔離距離を求める。
【0060】
図10に示される例では、画像表示装置16は、隔離距離が判定距離範囲外であると判定し、無線超音波プローブ12-2に不許可信号を送信し(SB9)、ペアリングを未達とする。不許可信号を受信した無線超音波プローブ12-2は、ペアリングが未達な状態で、画像表示装置16による次のペアリング要求信号の送信を待機してもよい。
【0061】
画像表示装置16と無線超音波プローブ12-1との間でペアリングが完了した後は、無線超音波プローブ12-1は、次のペアリング要求信号を受信したとしてもペアリング応答信号を送信しない。一方、無線超音波プローブ12-2は、画像表示装置16との間でペアリングが未達であるため、次のペアリング要求信号を受信したときに画像表示装置16にペアリング応答信号を送信する。
【0062】
図11には、距離Lを隔てて配置された2つの画像表示装置16-1および16-2を備える超音波診断システム102の構成が示されている。
図11に示されている例では、画像表示装置16-1との間で距離条件を満たす無線超音波プローブ12-1A、12-1Bおよび12-1Cが画像表示装置16-1との間でペアリングを完了する。また、画像表示装置16-2との間で距離条件を満たす無線超音波プローブ12-2A、12-2Bおよび12-2Cが画像表示装置16-2との間でペアリングを完了する。
【0063】
すなわち、画像表示装置16-1に対して定められた判定距離範囲は、R11以上、かつR12以下であり、画像表示装置16-1を中心として半径R11以上、かつ半径R12以内の範囲にある無線超音波プローブ12-1A、12-1Bおよび12-1Cが画像表示装置16-1との間でペアリングを完了する。そして、画像表示装置16-2に対して定められた判定距離範囲は、R21以上、かつR22以下であり、画像表示装置16-2を中心として半径R21以上、かつ半径R22以内の範囲にある無線超音波プローブ12-2A、12-2Bおよび12-2Cが画像表示装置16-2との間でペアリングを完了する。
【0064】
画像表示装置16-1と画像表示装置16-2との間の距離Lは、半径R12およびR22を併せた距離を超えている。したがって、画像表示装置16-1に対して定められた判定距離範囲と、画像表示装置16-2に対して定められた判定距離範囲は重ならない。これによって、無線超音波プローブ12-1A、12-1Bおよび12-1Cは、画像表示装置16-2との間でペアリングを未達とし、無線超音波プローブ12-2A、12-2Bおよび12-2Cは、画像表示装置16-1との間でペアリングを未達とする。
【0065】
このように、無線超音波プローブ12は、
図2に示される制御部30およびIR-UWB無線通信部28(無線通信部)が実行する処理によってペアリングモードでの動作を実行する。すなわち、制御部30は、画像表示装置16から送信されたペアリング要求信号がIR-UWB無線通信部28で受信されたときに(SA1,SB1)、IR-UWB無線通信部28によってペアリング応答信号を画像表示装置16に送信するペアリング応答処理を実行する(SA2,SB2)。
【0066】
制御部30は、画像表示装置16から送信された測距信号がIR-UWB無線通信部28で受信されたときに(SA3,SB3,SB7)、測距応答信号をIR-UWB無線通信部28によって画像表示装置16に送信する測距応答処理を実行する(SA4,SB4,SB8)。
【0067】
制御部30は、ペアリング応答信号および測距応答信号に基づいて、画像表示装置16がペアリングのための条件が成立すると判定した場合に、画像表示装置16との間でペアリングを完了する(SA5,SB5)。
【0068】
また、外付けIR-UWB無線通信部60(
図5)およびIR-UWB無線通信部58(
図6)は、無線超音波プローブ12との間でIR-UWB方式の無線通信を行う無線通信ユニット(超音波診断用の無線通信ユニット)としての機能を有する。外付けIR-UWB無線通信部60およびIR-UWB無線通信部58(以下、これらをまとめて無線通信部という)は、ペアリングモードでの動作において次のような処理を実行する。
【0069】
すなわち、無線通信部は、ペアリング要求信号を送信した後に(SA1,SB1)、無線超音波プローブ12から送信されたペアリング応答信号を受信したときに(SA2,SB2)、無線超音波プローブ12との間に通信状況条件(第1条件)が成立したと判定する第1判定処理を実行する。
【0070】
無線通信部は、測距信号を無線超音波プローブ12に送信し(SA3,SB3,SB7)、無線超音波プローブ12から送信された測距応答信号を受信し(SA4,SB4,SB8)、測距信号を送信してから測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、無線超音波プローブ12までの隔離距離を測定する測距処理を実行する。
【0071】
無線通信部は、隔離距離が所定範囲内にあるときに、無線超音波プローブ12との間に距離条件(第2条件)が成立したと判定する第2判定処理を実行する。無線通信部は、第1条件および第2条件が成立したときに、無線超音波プローブ12との間でペアリングを完了する(SA5,SB5)。
【0072】
無線超音波プローブ12が、画像表示装置16との間でペアリングを完了した後の超音波診断処理について説明する。超音波診断処理の動作に含まれる診断モードの動作では、無線超音波プローブ12は、被検体に対して超音波を送信し、被検体で反射した超音波に基づいて画像データ信号を生成し、画像データ信号を画像表示装置16に送信する。画像表示装置16は、無線超音波プローブ12から送信された画像データ信号を受信し、画像データ信号に基づいて、ディスプレイ48に超音波画像を表示する。
【0073】
超音波診断システム100では超音波診断処理の実行時に隔離距離が測定される。すなわち、画像表示装置16が、画像データ信号に基づき所定フレーム数の画像を表示するごとに、無線超音波プローブ12までの隔離距離を測定する。隔離距離は、画像表示装置16のディスプレイ48に表示されてよい。
【0074】
図12には、超音波診断処理のシーケンスチャートが示されている。画像表示装置16は、動作モード設定信号を無線超音波プローブ12に送信する(SC1)。動作モード設定信号は、無線超音波プローブ12に動作モードを診断モードに設定させる信号である。動作モード設定信号を受信した無線超音波プローブ12は、動作モードを診断モードに設定する。無線超音波プローブ12は、設定応答信号を画像表示装置16に送信する。設定応答信号は、無線超音波プローブ12が動作モードを診断モードに設定したことを画像表示装置16に伝える信号である。
【0075】
画像表示装置16は、設定応答信号を受信すると、測距信号を無線超音波プローブ12に送信する(SC3)。測距信号を受信した無線超音波プローブ12は、測距応答信号を画像表示装置16に送信する(SC4)。測距応答信号を受信した画像表示装置16は、測距信号を送信してから測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、画像表示装置16と無線超音波プローブ12との間の隔離距離を求める(SD1)。画像表示装置16は、隔離距離をディスプレイ48に表示してもよい。
【0076】
画像表示装置16は、距離情報/データ要求信号を無線超音波プローブ12に送信する(SC5)。距離情報/データ要求信号は、隔離距離を示す距離情報と、無線超音波プローブ12に診断モードでの動作を実行させ、画像データ信号を要求するデータ要求情報とを含む信号である。距離情報およびデータ要求情報は、別々の信号で送信されてもよい。
【0077】
距離情報/データ要求信号を受信した無線超音波プローブ12は、距離情報/データ要求信号に応じた処理(SD2)として、距離情報に応じた表示動作を実行し、さらに、診断モードでの動作を実行する(SD3)。ここで、距離情報に応じた表示動作は、例えば、複数の発光ダイオード40のそれぞれの点灯状態によって、隔離距離が判定距離範囲内にあるか否かを示す動作であってよい。また、無線超音波プローブ12がディスプレイを備えている場合には、隔離距離が判定距離範囲内にあるか否かを示す情報や、隔離距離がディスプレイに表示されてもよい。また、隔離距離は、必ずしも無線超音波プローブ12で表示されなくてもよい。
【0078】
無線超音波プローブ12は、画像データ信号を繰り返し送信する(SC6)。画像表示装置16は、画像データ信号を受信する度に、画像受領信号を無線超音波プローブ12に送信する(SC7)。画像受領信号は、画像データ信号を受信したことを無線超音波プローブ12に伝える信号である。
【0079】
画像データ信号は、1フレームまたは複数フレームの画像を示すものであってもよいし、1フレームの画像を示す情報が分割された分割信号であってもよい。画像データ信号が分割信号である場合、複数回に亘って送信される画像データ信号が1フレームの画像を示す。
【0080】
画像表示装置16は、画像データ信号に応じて画像表示処理を実行する(SD4)。すなわち、画像表示装置16は、無線超音波プローブ12から送信された画像データ信号が示す画像をディスプレイ48に表示する。また、画像表示装置16は、診断後にユーザが画像を参照したり、画像表示装置16が画像を解析したりするために、画像データ信号を記憶してもよい。
【0081】
画像表示装置16は、所定フレーム数の画像を表示したときに再び、無線超音波プローブ12に測距信号を送信する(SC3)。測距信号を受信した無線超音波プローブ12は、測距応答信号を画像表示装置16に送信する(SC4)。測距応答信号を受信した画像表示装置16は、測距信号を送信してから測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、無線超音波プローブ12までの隔離距離を求める(SD1)。画像表示装置16は、隔離距離をディスプレイ48に表示してもよい。
【0082】
画像表示装置16が隔離距離を求めた後、画像表示装置16および無線超音波プローブ12は、1セットの超音波診断処理(SC5~SC7、SC3およびSC4)を再び実行する。すなわち、画像表示装置16および無線超音波プローブ12は、ステップSC5の処理を実行し、ステップSC6およびSC7の処理を繰り返し実行し、所定フレーム数に相当する画像データ信号が無線超音波プローブ12から画像表示装置16に送信された後、さらに、ステップSC3およびSC4の処理を実行する。画像表示装置16および無線超音波プローブ12は、1セットの超音波診断処理を繰り返し実行してもよい。
【0083】
このように、無線超音波プローブ12は超音波診断処理を実行する。
図2に示されているパルス/スイッチ部22、AMP/ADC部24、デジタル信号処理部26および制御部30は、次のような処理を実行する信号処理/制御部を構成する。信号処理/制御部は、トランスデューサ20に対する送信信号を生成し、トランスデューサ20で受信された超音波に基づき画像データ信号を生成し、IR-UWB無線通信部28によって画像データ信号を画像表示装置16に送信する画像データ送信処理を実行する。
【0084】
信号処理/制御部は、画像表示装置16から送信された測距信号がIR-UWB無線通信部28で受信されたときに、IR-UWB無線通信部28によって測距応答信号を無線超音波プローブ12に送信する測距応答処理を実行する。
【0085】
画像表示装置16(
図4~
図6)は、画像表示制御部46および無線通信部(外付けIR-UWB無線通信部60またはIR-UWB無線通信部58)によって次のような処理を実行する。すなわち、画像表示装置16は、画像データ信号を無線通信部によって受信する画像データ受信処理を実行する。画像表示装置16は、無線通信部に測距信号を送信させ、無線超音波プローブ12から送信された測距応答信号を無線通信部に受信させ、無線通信部が測距信号を送信してから無線通信部が測距応答信号を受信するまでの時間に基づいて、無線超音波プローブ12までの隔離距離を測定する測距処理を実行する。画像表示装置16は、画像データ受信処理によって、所定データ量の画像データを受信するごとに測距処理を実行する。データ量は、例えば、ビットを単位とした情報量で定義される。上記の例において、所定データ量は、所定のフレーム数に相当するデータ量である。
【0086】
画像表示装置16は、隔離距離に応じた処理(SD1)として、隔離距離が判定距離範囲内であるか否かを判定し、隔離距離が判定距離外であるときは警告処理を実行してもよい。警告処理はユーザに注意を促す処理である。画像表示装置16は、警告処理としてアラームを鳴動させてもよいし、ユーザに注意を促す情報をディスプレイ48に表示してもよい。また、画像表示装置16は、距離情報/データ要求信号に警告指令情報を含ませてもよい(SC5)。無線超音波プローブ12は、距離情報/データ要求信号に警告指令情報が含まれているときは、警告処理としてアラームを鳴動してもよいし、ユーザに注意を促す情報を、発光ダイオード40やディスプレイによって表示してもよい。
【符号の説明】
【0087】
12,12-1,12-1A~12-1C,12-2,12-2A~12-2C 無線超音波プローブ、14 超音波送受信面、16,16-1,16-2 画像表示装置(超音波画像表示装置)、18 画像表示装置本体、20 トランスデューサ、22 パルス/スイッチ部、24 AMP/ADC部、26 デジタル信号処理部、28,58 IR-UWB無線通信部、30 制御部、32,42,64 外部接続端子、34,52 充電部、36,54 バッテリ、38,56 電源部、40 発光ダイオード、44 入出力部、46 画像表示制御部、48 ディスプレイ、50 スイッチ、60 外付けIR-UWB無線通信部、62 通信制御部、68 ハーフシンボル、70 バースト列、72 ガードインターバル、74 バースト、76 パルス、78 パケット、80 測距パルス列。