(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163295
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20231102BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20231102BHJP
B41J 2/19 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/175 121
B41J2/18
B41J2/175 503
B41J2/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074089
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056KA05
2C056KB04
2C056KB11
2C056KB13
2C056KB16
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】インクジェットヘッド内部に入り込んだエアを速やかに排出する。
【解決手段】インクジェットプリンタ1は、インクを収容するサブタンク3と、サブタンク3から供給されたインクを吐出するノズル部24を備えるインクジェットヘッド2と、サブタンク3とインクジェットヘッド2の間でインクを循環させる循環経路CP1と、循環経路CP1に設けられ、インクの逆流を低減するバイパス流路BP1、BP2を備えたポンプ4と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するサブタンクと、
前記サブタンクから供給されたインクを吐出するノズル部を備えるインクジェットヘッドと、
前記サブタンクと前記インクジェットヘッドの間でインクを循環させる循環経路と、
前記循環経路に設けられ、インクの逆流を低減する逆流低減機構を備えたポンプと、を有する、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記ポンプは、
本体部と、
前記本体部に形成されたポンプ室と、
前記ポンプ室の開口を覆うフィルムと、
前記フィルムに取り付けられたピエゾ振動子と、を備える、請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記ポンプ室は、前記本体部の一端面から他端面に貫通して形成され、
前記フィルムは、前記ポンプ室の前記一端面側の開口を覆う第1のフィルムと、前記ポンプ室の前記他端面側の開口を覆う第2のフィルムと、を備え、
前記ピエゾ振動子は、前記第1のフィルムおよび前記第2のフィルムのそれぞれに取り付けられる、請求項2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記ポンプは、
並んで配置された複数の前記本体部を備え、
前記ピエゾ振動子は、隣り合う前記本体部の間に配置され、一方の前記本体部の前記第1のフィルムと、他方の前記本体部の前記第2のフィルムとに取り付けられる、請求項3記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記ポンプは、
前記本体部との間で前記ピエゾ振動子を挟み込んで保持する保持部を有し、
前記保持部には、前記ピエゾ振動子の外縁部を除いた領域を露出させる開口部が形成される、請求項2~4のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記ポンプは、
前記ポンプ室の下側に設けられ、上端において前記ポンプ室に連通し、下端において前記本体部の底面に開口する吸入路と、
前記ポンプ室の上側に設けられ、下端において前記ポンプ室に連通し、上端において前記本体部の上面に開口する吐出路と、を備え、
前記逆流低減機構は、前記吸入路および前記吐出路のいずれか一方または両方に設けられた、メイン流路から分岐するバイパス流路であり、
前記バイパス流路は、前記メイン流路に逆方向のインクの流れが生じた場合に、前記メイン流路から分岐したインクの流れを順方向に変換して前記メイン流路に合流させる、請求項2~4のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記バイパス流路は、前記逆方向のインクの流れにおける上流側で前記メイン流路に接続する上流側分岐路と、下流側で前記メイン流路に接続する下流側分岐路と、を備え、
前記上流側分岐路と前記メイン流路の成す角度は鋭角であり、
前記下流側分岐路と前記メイン流路の成す角度は鈍角である、請求項6記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記ポンプは、
前記ポンプ室の下側に設けられたインクの吸入口と、
前記ポンプ室の上側に設けられたインクの吐出口と、を備え、
前記逆流低減機構は、前記吸入口および前記吐出口に設けられたボール逆止弁である、請求項2~4のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記サブタンクの下側に前記インクジェットヘッドが配置され、前記循環経路は、前記サブタンクから前記インクジェットヘッドにインクを供給する供給経路と、前記インクジェットヘッドから排出されたインクを前記サブタンクに流入させる戻り経路と、を備え、前記ポンプは、前記戻り経路に設けられる、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記サブタンクは、前記インクジェットヘッドから排出されたインクが流入する流入口を備え、
前記ポンプは、前記サブタンクに貯留されるインクの液面高さより低い位置に配置され、前記流入口は、前記液面高さより低い位置に設けられる、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記サブタンクは、インクを収容するインク室と、前記ポンプを収容するポンプ収容室と、を備える、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
インクを収容するサブタンクと、
前記サブタンクから供給されたインクを吐出するノズル部を備えるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに混入するエアを、インクと共に排出する排出経路と、
前記排出経路に設けられ、前記排出経路から前記インクジェットヘッドへのインクの逆流を低減する逆止弁と、を備える、インクジェットプリンタ。
【請求項13】
前記サブタンクから前記インクジェットヘッドに供給されるインクの圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記逆止弁は、前記インクの圧力に応じて前記排出経路を開閉するチェックバルブである、請求項12記載のインクジェットプリンタ。
【請求項14】
前記インクの圧力が、前記チェックバルブのクラッキング圧力より小さい場合、前記ノズル部からインクが排出され、
前記インクの圧力が、前記チェックバルブのクラッキング圧力より大きい場合、前記ノズル部からインクが吐出されると共に、前記排出経路から、エアがインクと共に排出される、請求項13記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドを備える。インクジェットヘッドは、媒体にインクを吐出するノズル部を備える(たとえば、特許文献1参照)。
インクジェットプリンタでは、媒体とインクジェットヘッドを、主走査方向および副走査方向に相対的に移動させながら、ノズル部からインクを吐出することで、媒体に印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットヘッドの内部に入り込んだエアがノズル部のノズルを塞ぐと、ノズル詰まりが起きる可能性がある。ノズル詰まりによりインクがノズルから正常に吐出されないと、印刷品質に影響を与えるおそれがある。
【0005】
インクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドの内部に入り込んだエアを、速やかに排出することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係るインクジェットプリンタは、
(1)インクを収容するサブタンクと、
前記サブタンクから供給されたインクを吐出するノズル部を備えるインクジェットヘッドと、
前記サブタンクと前記インクジェットヘッドの間でインクを循環させる循環経路と、
前記循環経路に設けられ、インクの逆流を低減する逆流低減機構を備えたポンプと、を有する。
【0007】
(2)前記ポンプは、
本体部と、
前記本体部に形成されたポンプ室と、
前記ポンプ室の開口を覆うフィルムと、
前記フィルムに取り付けられたピエゾ振動子と、を備える。
【0008】
(3)前記ポンプ室は、前記本体部の一端面から他端面に貫通して形成され、
前記フィルムは、前記ポンプ室の前記一端面側の開口を覆う第1のフィルムと、前記ポンプ室の前記他端面側の開口を覆う第2のフィルムと、を備え、
前記ピエゾ振動子は、前記第1のフィルムおよび前記第2のフィルムのそれぞれに取り付けられる。
【0009】
(4)前記ポンプは、
並んで配置された複数の前記本体部を備え、
前記ピエゾ振動子は、隣り合う前記本体部の間に配置され、一方の前記本体部の前記第1のフィルムと、他方の前記本体部の前記第2のフィルムとに取り付けられる。
【0010】
(5)前記ポンプは、
前記本体部との間で前記ピエゾ振動子を挟み込んで保持する保持部を有し、
前記保持部には、前記ピエゾ振動子の外縁部を除いた領域を露出させる開口部が形成される。
【0011】
(6)前記ポンプは、
前記ポンプ室の下側に設けられ、上端において前記ポンプ室に連通し、下端において前記本体部の底面に開口する吸入路と、
前記ポンプ室の上側に設けられ、下端において前記ポンプ室に連通し、上端において前記本体部の上面に開口する吐出路と、を備え、
前記逆流低減機構は、前記吸入路および前記吐出路のいずれか一方または両方に設けられた、メイン流路から分岐するバイパス流路であり、
前記バイパス流路は、前記メイン流路に逆方向のインクの流れが生じた場合に、前記メイン流路から分岐したインクの流れを順方向に変換して前記メイン流路に合流させる。
【0012】
(7)前記バイパス流路は、前記逆方向のインクの流れにおける上流側で前記メイン流路に接続する上流側分岐路と、下流側で前記メイン流路に接続する下流側分岐路と、を備え、
前記上流側分岐路と前記メイン流路の成す角度は鋭角であり、
前記下流側分岐路と前記メイン流路の成す角度は鈍角である。
【0013】
(8)前記ポンプは、
前記ポンプ室の下側に設けられたインクの吸入口と、
前記ポンプ室の上側に設けられたインクの吐出口と、を備え、
前記逆流低減機構は、前記吸入口および前記吐出口に設けられたボール逆止弁である。
【0014】
(9)前記サブタンクの下側に前記インクジェットヘッドが配置され、前記循環経路は、前記サブタンクから前記インクジェットヘッドにインクを供給する供給経路と、前記インクジェットヘッドから排出されたインクを前記サブタンクに流入させる戻り経路と、を備える。
【0015】
(10)前記サブタンクは、前記インクジェットヘッドから排出されたインクが流入する流入口を備え、
前記ポンプは、前記サブタンクに貯留されるインクの液面高さより低い位置に配置され、前記流入口は、前記液面高さより低い位置に設けられる。
【0016】
(11)前記サブタンクは、インクを収容するインク室と、前記ポンプを収容するポンプ収容室と、を備える。
【0017】
本発明の別の態様に係るインクジェットプリンタは、
(12)インクを収容するサブタンクと、
前記サブタンクから供給されたインクを吐出するノズル部を備えるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに混入するエアを、インクと共に排出する排出経路と、
前記排出経路に設けられ、前記排出経路から前記インクジェットヘッドへのインクの逆流を低減する逆止弁と、を備える。
【0018】
(13)インクジェットプリンタは、前記サブタンクから前記インクジェットヘッドに供給されるインクの圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記逆止弁は、前記インクの圧力に応じて前記排出経路を開閉するチェックバルブである。
【0019】
(14)前記インクの圧力が、前記チェックバルブのクラッキング圧力より小さい場合、前記ノズル部からインクが排出され、
前記インクの圧力が、前記チェックバルブのクラッキング圧力より大きい場合、前記ノズル部からインクが吐出されると共に、前記排出経路から、エアがインクと共に排出される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、インクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドの内部へのエアの混入を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】インクジェットプリンタの構成を説明する図である。
【
図2】インクジェットプリンタの構成を説明する図である。
【
図3】インクジェットヘッドの内部構造を説明する模式図である。
【
図7】(a)は、ピエゾ振動子の構成を説明する模式図であり、(b)は、ピエゾ振動子の膨張を説明する図であり、(c)は、ピエゾ振動子の収縮を説明する図である。
【
図8】(a)は、吸入路の拡大図であり、(b)は、吐出路の拡大図である。
【
図9】ポンプの逆流低減機構の作用を説明する図である。
【
図10】第1実施形態の変形例1に係るポンプの構成を示す図である。
【
図11】第1実施形態の変形例2に係るポンプの分解斜視図である。
【
図13】変形例2においてピエゾ振動子に供給される電圧波形を示す図である。
【
図14】(a)は、ポンプ室の容積が増加する状態を説明する模式図であり、(b)は、ポンプ室の容積が減少する状態を説明する模式図である。
【
図15】第1実施形態の変形例3に係るポンプの構成例を示す分解斜視図である。
【
図17】(a)および(b)は、変形例3におけるポンプ室の容積の変化を説明する模式図である。
【
図18】変形例3に係るポンプのバリエーションを示す図である。
【
図19】第1実施形態の変形例4に係るインクジェットプリンタの構成を説明する図である。
【
図20】第2実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を説明する図である。
【
図21】チェックバルブの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタを説明する。
図1は、インクジェットプリンタ1(以降、単に「プリンタ1」ともいう)の構成を説明する図である。
図2は、プリンタ1の構成を説明する図である。
図3は、インクジェットヘッドの内部構造を説明する模式図である。
なお、以降の説明において、「Y方向」は、プリンタ1の主走査方向を意味する。主走査方向は、
図1の左右方向である。「X方向」は、副走査方向を意味する。副走査方向は、主走査方向に直交する方向であり、プリンタ1の正面側から奥側に向かう方向である。「Z方向」は、プリンタ1を水平面に置いた場合の鉛直線方向を意味する。Z方向は、X方向およびY方向に直交する方向である。以降の説明において「上側」という場合は「Z方向における上側」を意味し、「下側」という場合は「Z方向における下側」を意味する。
【0023】
図1に示すように、プリンタ1は、インク滴を吐出するインクジェットヘッド2(以下、単に「ヘッド2」ともいう。)と、ヘッド2を搭載するキャリッジ8と、を備える。プリンタ1は、ヘッド2のクリーニングを行うためのメンテナンスユニット12を備える。
プリンタ1は、Y方向に沿って設けられ、キャリッジ8が懸架されたガイドレール10と、ガイドレール10に沿ってキャリッジ8をY方向へ移動させるキャリッジ駆動機構9と、を備える。
【0024】
プリンタ1は、キャリッジ8の下側に配置されたプラテン7を備える。プラテン7には、印刷用の媒体Mが載置される。媒体Mは、例えば、紙、布帛、樹脂製のフィルムとすることができる。図示は省略するが、プリンタ1は、プラテン7に載置された媒体MをX方向に送る送り機構を備える。
【0025】
プリンタ1は、プリンタ1の動作を制御する制御装置11を備える。
制御装置11は、例えば、マイクロコンピュータ等とすることができる。制御装置11は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを備えている。CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、プリンタ1の動作が実行される。
【0026】
制御装置11は、送り機構により媒体MをX方向に送ると共に、キャリッジ駆動機構9によりキャリッジ8をY方向に移動させながら、ヘッド2から媒体Mにインクを吐出させる。これによって、プリンタ1は、媒体Mへの印刷を行う。
【0027】
図2に示すように、プリンタ1は、ヘッド2にインクを供給するサブタンク3と、サブタンク3とヘッド2の間でインクを循環させる循環経路CP1と、を備える。循環経路CP1には、インクを圧送するためのポンプ4が備えられる。ヘッド2はサブタンク3より下側の位置に配置されている。ポンプ4はサブタンク3より下側で、かつヘッド2より上側の位置に配置されている。
図1では図示を省略しているが、サブタンク3およびポンプ4は、ヘッド2と共にキャリッジ8に搭載される。
【0028】
図2に示すように、サブタンク3は、配管P1、P2を介して、サブタンク3にインクを供給するメインタンクMTに接続されている。サブタンク3とメインタンクMTの間にも、インクを循環させる循環経路CP2が形成されている。図示は省略するが、循環経路CP2には、インクを圧送するためのポンプが備えられている。
【0029】
サブタンク3は、内部にインクを貯留するインク室31を備える。
サブタンク3の上面には、エア供給口32、インク流入口33およびインク排出口34が設けられている。
エア供給口32は、空圧回路APC(圧力調整部)に接続される。空圧回路APCは、空圧ポンプ、エアチャンバ、スロットバルブ等を含んで構成されている。空圧回路APCは、エア供給口32を介してインク室31内にエアを供給し、またはインク室31からエアを吸引することで、インク室31内のインクに正圧または負圧を供給する。
【0030】
インク流入口33およびインク排出口34は、配管P1、P2を介してメインタンクMTに接続している。
インク流入口33には、パイプ35が接続されている。パイプ35は、インク流入口33からインク室31内部を下側に延びる。パイプ35は、インク室31内に貯留されるインクに浸からない長さに設定される。
インク排出口34には、パイプ36が接続されている。パイプ36は、インク排出口34からインク室31内部を下側に延びる。パイプ36は、インク室31内に貯留されるインクに浸かる長さに設定される。
インク流入口33および配管P1を介して、メインタンクMTからサブタンク3のインク室31にインクが供給される。
インク排出口34および配管P2を介して、サブタンク3のインク室31からメインタンクMTにインクが排出される。
【0031】
サブタンク3の下面には、インク流出口37が設けられている。インク流出口37は、配管P3を介して後記するヘッド2のインク供給口21に接続する。
サブタンク3の側面には、インク流入口38が設けられている。インク流入口38は、配管P4を介して後記するポンプ4の吐出口42に接続する。
サブタンク3には、インク室31に貯留されるインクの液面高さを検出する液面センサ39が設けられている。制御装置11(
図1参照)は、インク室31が予め設定された液面高さになるように、液面センサ39からの信号に基づいて、循環経路CP1のポンプ4と循環経路CP2のポンプ4を制御する。
プリンタ1の印刷動作時は、インク室31にけるインクの液面高さがH1になるように制御される。後記するインクの初期充填時において、インク室31の液面高さはH2になるように制御される。サブタンク3のインク流入口38は、液面高さH1より低く、液面高さH2より高い位置に設けられている。
【0032】
図2に示すように、ヘッド2は、サブタンク3からインクが供給されるインク供給口21と、サブタンク3に向かってインクを排出するインク排出口22を備える。インク供給口21は、配管P3を介して、サブタンク3のインク流出口37に接続している。インク排出口22は、配管P5を介して、ポンプ4の吸入口41に接続している。配管P3、P4、P5とポンプ4とにより、サブタンク3とヘッド2の間における循環経路CP1が形成されている。配管P3は循環経路CP1における供給経路に対応し、配管P4、P5は循環経路CP1における戻り経路に対応する。
【0033】
図3に示すように、ヘッド2の内部には、インク供給口21とインク排出口22とを接続するインク流路23が形成されている。ヘッド2には、インク滴を吐出するノズル部24が形成されている。ノズル部24は、インク流路23の下部に形成され、インク流路23に連通する複数のノズルNを備える。ノズル部24は、また、ノズルNからインクを吐出させるピエゾ素子25を備えている。
ピエゾ素子25には、不図示の電圧供給部から電圧が印加される。電圧の印加によってピエゾ素子25が変位することで、インク流路23のインクがノズル部24のノズルNに供給され、ノズルNからインクが吐出される。
ヘッド2の上部には、インクを加温する加温機構26が設けられている。
【0034】
なお、プリンタ1は、複数のヘッド2を備えたものとすることができる。その場合は、各ヘッド2に対して、サブタンク3およびメインタンクMT(
図2参照)を設けることができる。
さらに、各ヘッド2は、複数のノズル列を備えるものであっても良い。その場合は、ヘッド2に、各ノズル列に対応するインク流路23、インク供給口21およびインク排出口22を設けることができる。サブタンク3には、各ノズル列に対応する複数のインク室31を設けることができる。さらに、各ノズル列に対応する循環経路CP1を設けることができる。
【0035】
図4は、ポンプ4の斜視図である。
図4では、本体部43の正面431を覆うフィルム47をめくって、正面431の一部を露出させた状態を示している。正面431にはハッチングを付している。
図5は、ポンプ4の平面図である。
図6は、ポンプ4の正面図である。
図6では、フィルム47の図示を省略し、ピエゾ振動子48の輪郭を仮想線で示している。
循環経路CP1に用いられるポンプ4は、ピエゾ振動子48によりインクを圧送するものであり、小型、薄型かつ軽量のポンプである。
図2に示すように、ポンプ4は、ヘッド2より上側の位置に配置されている。
ポンプ4は、少なくとも、サブタンク3の液面高さH1より下側に位置するように配置される。
図2に示すように、ポンプ4全体を、サブタンク3より下側に配置しても良い。
【0036】
図4に示すように、ポンプ4は、本体部43を有する。本体部43は、例えばPP(ポリプロピレン)等の樹脂で形成することができる。
図6に示すように、本体部43は、正面431側から見て長方形状のケーシングである。
図4に示すように、本体部43の長手方向がZ方向に沿って配置され、短手方向である幅方向が、水平方向に沿って配置される。本体部43の長手方向および幅方向に直交する方向を奥行き方向という。
図5に示すように、奥行き方向は、本体部43の正面431から背面434に向かう方向である。
【0037】
図6に示すように、本体部43の正面431(Z方向および幅方向に延在する一端面)には、ポンプ室44、吸入路45および吐出路46が設けられている。
ポンプ室44は、正面431のZ方向における中央部に形成された円形穴から構成される。
吸入路45は、円形穴の下側に形成された溝から構成される。
吐出路46は、円形穴の上側に形成された溝から構成される。
図4に示すように、ポンプ室44、吸入路45および吐出路46は、それぞれ正面431から奥行き方向に掘りこんで形成される。Z方向から見た場合、吸入路45と吐出路46は、ポンプ室44に対してオーバーラップしている。
【0038】
吸入路45は、上端においてポンプ室44に連通し、下端において本体部43の底面432の開口432aに接続する。底面432の開口432aには吸入口41が取り付けられている。吸入口41は、例えばノズル等から構成され、内部に流路41aが形成されている。吸入路45は、開口432aを介して、吸入口41の流路41aに連通する。
吐出路46は、下端においてポンプ室44に連通し、上端において本体部43の上面433の開口433aに接続する。上面433の開口433aには吐出口42が取り付けられている。吐出口42は、例えばノズル等から構成され、内部に流路42aが形成されている。吐出路46は、開口433aを介して、吐出口42の流路42aに連通する。
【0039】
図4に示すように、ポンプ4は、本体部43の正面431を覆うフィルム47を備える。フィルム47は、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性を有する樹脂製のフィルムとすることができる。フィルム47は、たとえば、熱溶着により、本体部43の正面431全体に密着して取り付けられる。ポンプ室44、吸入路45および吐出路46の正面431側の開口は、フィルム47によって塞がれている。
【0040】
ポンプ4は、ピエゾ振動子48を備える。
図5に示すように、ピエゾ振動子48は、フィルム47を間に挟み、奥行き方向においてポンプ室44に対向するように配置されている。
図6に示すように、ピエゾ振動子48は、奥行き方向(紙面手前側から奥側)から見て、ポンプ室44全体を覆っている。
ピエゾ振動子48は、たとえば、接着剤によりフィルム47に取り付けることができる。接着剤は、たとえば変性シリコンを含有する弾性接着剤を用いることができる。図示の例では、ピエゾ振動子48は円形のものを用いているが、例えば、ピエゾ振動子48は矩形であっても良い。
【0041】
図7の(a)は、ピエゾ振動子48の構成を説明する模式図である。
図7の(a)では、本体部43は簡略化して図示している。
図7の(a)に示すように、ピエゾ振動子48は、例えば、金属板481と、金属板481に接合された圧電素子482と、を有する。なお、
図4、
図5等では、ピエゾ振動子48の構成は簡略化して図示している。
図示は省略するが、金属板481と圧電素子482にはそれぞれ電極が設けられ、配線によって電圧供給部PSに接続されている。ピエゾ振動子48は、電圧供給部PSから交流電圧を印加されることで振動する。具体的には、ピエゾ振動子48は、膨張と収縮を交互に繰り返すことにより振動する。
【0042】
図7の(b)は、ピエゾ振動子48の膨張を説明する図である。
図7の(c)は、ピエゾ振動子48の収縮を説明する図である。
図7の(b)および
図7の(c)では、ピエゾ振動子48の構成は簡略化して示している。
ピエゾ振動子48の振動に伴って、ピエゾ振動子48が接着されたフィルム47が変位する。ポンプ室44の開口を覆うフィルム47が変位することで、ポンプ室44の容積が変化する。
図7の(b)に示すように、ピエゾ振動子48の膨張によって、フィルム47が本体部43の背面434から離れる方向に変位すると、ポンプ室44の容積が増加する。
図7の(c)に示すように、ピエゾ振動子48の収縮によって、フィルム47が本体部43の背面434に向かう方向に変位すると、ポンプ室44の容積が減少する。
ポンプ室44の容積が増加するとポンプ室44内にインクが吸入され、ポンプ室44の容積が減少するとポンプ室44からインクが吐出される。
ピエゾ素子25の振動によって、ポンプ室44の容積は、周期的に増加と減少を繰り返し、ポンプ室44ではインクの吸入と吐出が交互に行われる。ポンプ4がインクの吸入と吐出を周期的に行うことで、インクが循環経路CP1(
図2参照)を間欠的に圧送される。
【0043】
図8の(a)は、吸入路45の拡大図である。
図8の(b)は、吐出路46の拡大図である。
図8の(a)に示すように、吸入路45は、Z方向に延びるメイン流路MPと、メイン流路MPに接続する2つのバイパス流路BP1、BP2を備える。バイパス流路BP1、BP2は、いわゆるテスラバルブと呼ばれる、逆流低減機構を構成する。
メイン流路MPは、上端側においてポンプ室44に接続する。メイン流路MPは、下端において吸入口41と接続する。メイン流路MPの幅(幅方向における長さ)は、上端および下端において拡大している。
バイパス流路BP1がメイン流路MPの下側に接続し、バイパス流路BP2がメイン流路MPの上側に接続する。
バイパス流路BP2が、メイン流路MPの幅方向における一端側(図中、右側)に設けられ、バイパス流路BP1が他端側(図中、左側)に設けられる。
【0044】
バイパス流路BP1は、下側においてメイン流路MPに接続する第1分岐路FBPと、上側においてメイン流路MPに接続する第2分岐路SBPを有する。
第1分岐路FBPは、円弧形状の流路である。第1分岐路FBPは、メイン流路MPから離れる方向に湾曲して延び、第2分岐路SBPに接続する。第1分岐路FBPは、メイン流路MPから下側に向かって湾曲して延びた後、上側に向かって湾曲し、第2分岐路SBPに接続する。
第2分岐路SBPは、Z方向に対して傾斜した流路である。第2分岐路SBPは、メイン流路MPに接続する上側から第1分岐路FBPに接続する下側に向かうにつれて、メイン流路MPから離れる方向に傾斜する。
第1分岐路FBPとメイン流路MPの成す角度αは鈍角である。第2分岐路SBPとメイン流路MPの成す角度βは鋭角である。
メイン流路MPは、バイパス流路BP1の第1分岐路FBPの接続点と、第2分岐路SBPの接続点との間に、流路をZ方向に対して傾斜させた傾斜部DPを有する。傾斜部DPは、下側から上側に向かうにつれて、幅方向の他端側(図中、左側)から一端側(図中、右側)に傾斜している。傾斜部DPは、第2分岐路SBPの接続点の近傍に設けられている。
【0045】
バイパス流路BP2も、バイパス流路BP1と同様の構成のメイン流路MP、第1分岐路FBPおよび第2分岐路SBPを有する。
バイパス流路BP2のメイン流路MPにも、第1分岐路FBPの接続点と、第2分岐路SBPの接続点との間に、流路をZ方向に対して傾斜させた傾斜部DPが設けられている。傾斜部DPは、下側から上側に向かうにつれて、幅方向の一端側(図中、右側)から他端側(図中、左側)に傾斜している。傾斜部DPは、第2分岐路SBPとの接続点の近傍に設けられている。
【0046】
図8の(b)に示すように、吐出路46も、吸入路45と同様の構成を備えている。
吐出路46は、Z方向に延びるメイン流路MPと、メイン流路MPに接続する2つのバイパス流路BP1、BP2を備える。
メイン流路MPは、下端側においてポンプ室44に接続する。メイン流路MPは、上端において吐出口42と接続する。メイン流路MPの幅(幅方向における長さ)は、上端および下端において拡大している。
バイパス流路BP1がメイン流路MPの下側に接続し、バイパス流路BP2がメイン流路MPの上側に接続する。
バイパス流路BP1が、幅方向における一端側(図中、右側)に設けられ、バイパス流路BP2が他端側(図中、左側)に設けられる。
【0047】
吐出路46のバイパス流路BP1、BP2は、それぞれ、円弧状の第1分岐路FBPと、傾斜した第2分岐路SBPを有する。第1分岐路FBPとメイン流路MPの成す角度αは鈍角であり、第2分岐路SBPとメイン流路MPの成す角度βは鋭角である。
メイン流路MPの、バイパス流路BP1の第2分岐路SBPとの接続点の近傍に設けられた傾斜部DPは、下側から上側に向かうにつれて、幅方向の一端側(図中、右側)から他端側(図中、左側)に傾斜している。
メイン流路MPの、バイパス流路BP2の第2分岐路SBPとの接続点の近傍に設けられた傾斜部DPは、下側から上側に向かうにつれて、幅方向の他端側(図中、左側)から一端側(図中、右側)に傾斜している。
【0048】
次に、プリンタ1の動作を説明する。
プリンタ1が印刷動作を行う際、
図2に示すように、メインタンクMTから配管P1を介してサブタンク3にインクが供給され、サブタンク3から配管P3を介してヘッド2にインクが供給される。ヘッド2のノズルNから媒体Mにインクを吐出することで、印刷が行われる。
【0049】
プリンタ1の印刷動作時、サブタンク3からヘッド2に供給されるインクは、空圧回路APCによって、微負圧状態に維持されている。これによってノズルNの先端においてインクのメニスカスが形成される。
【0050】
循環経路CP2のポンプ4は常に駆動されており、メインタンクMTとサブタンク3の間でインクが循環されている。
循環経路CP1のポンプ4は、プリンタ1の印刷動作時には停止されている。すなわち、プリンタ1の印刷動作時には、サブタンク3とヘッド2の間でインクは循環していない。サブタンク3の下側にヘッド2が配置されているため、ポンプ4が停止している間も、重力によってサブタンク3から配管P3を介してヘッド2へインクが供給される。
【0051】
プリンタ1が印刷を行っていない印刷待機状態において、循環経路CP1のポンプ4が駆動され、サブタンク3とヘッド2の間でインクが循環される。
前記したように、ヘッド2のインク流路23内のインクは、空圧回路APCによって微負圧状態に制御されている。ただし、様々な要因で圧力状態が変化すると、ノズルNの先端のメニスカスが崩れてインクが流れ落ちると同時に、ヘッド2のインク流路23にエアが入り込むことがある。また、インクをサブタンク3およびヘッド2に初期充填する際に、ヘッド2にエアが残ることがある。
【0052】
インク流路23に入り込んだエアがノズルNを塞ぐと、インクがノズルNから正常に吐出されず、印刷品質に影響を与えるおそれがある。そのため、ヘッド2に入り込んだエアを速やかに排出することが求められる。
この場合の対処の一つとして、ノズルクリーニングを行うことができる。ノズルクリーニングでは、空圧回路APCによりインク流路23内のインクに正圧をかけて、ノズルNからエアを含むインクを排出させる。その後、メンテナンスユニット12(
図1参照)によりノズルNをワイピングすることで、ノズルNの先端のメニスカスを形成させる。
このように、ノズルクリーニングによりヘッド2からエアを排出することができるが、ノズルNからエアと共にインクを多量に排出する必要があるため、インクの消費量が多くなる。
【0053】
第1実施形態では、循環経路CP1により、サブタンク3とヘッド2の間でインクを循環させている。そのため、ヘッド2内に入り込んだエアは、インクごとポンプ4に吸入されて配管P5、P4を通り、サブタンク3に排出される。このように、第1実施形態のプリンタ1は、ノズルクリーニングを行う場合と比較して、インクの消費量を少なくしつつ、ヘッド2からエアを速やかに排出することができる。
【0054】
さらに、インクに含まれる比重の重い顔料が含まれている場合、その顔料がヘッド2内で沈降して、ノズル詰まりの原因になることがある。この場合も、循環経路CP1においてインクを循環させることで、顔料の沈降を低減することができる。
【0055】
また、インクジェットプリンタ1では、UV硬化型のインクを用いることがある。UV硬化型のインクは、UV照射による重合反応で硬化して、媒体M上で定着する。印刷待機状態が長くなり、UV硬化型のインクがヘッド2内で長時間滞留することがある。この場合、インクがヘッド2の加温機構26で加温されることによって重合反応が微量ながら進行し、ゲル化または硬化する。ゲル化または硬化したインクは、ノズル詰まりの原因となることがある。印刷待機状態において循環経路CP1でインクを循環させることで、硬化を低減することができる。
【0056】
このように、プリンタ1に循環経路CP1を設けることで、ヘッド2内に入り込んだエアを排出して、ノズル詰まりを低減することができる。
ただし、プリンタ1に循環経路CP1を設ける場合、インクを圧送するポンプ4を設置する必要がある。
通常、インクの圧送には、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプ等が用いられるが、これらのポンプ4は、ヘッド2、サブタンク3と共にキャリッジ8に搭載可能なほどに小型化するのが難しい。ヘッド2のノズル列を複数とした場合、ノズル列ごとに循環経路CP1を設ける必要があるため、ポンプ4の小型化の要求はさらに厳しくなる。
【0057】
第1実施形態では、循環経路CP1のポンプ4として、ピエゾ振動子48を用いた小型かつ軽量のマイクロポンプを用いている。これにより、ポンプ4をヘッド2、サブタンク3と共にキャリッジ8に搭載することが可能である。
【0058】
ポンプ4によるインクの圧送量は少量であるが、印刷待機状態において継続して循環を行うことで、ヘッド2内からのエアの排出、顔料の沈降やUV硬化型インクの硬化の低減等の目的を果たすには、十分な機能を果たす。
【0059】
さらに、第1実施形態において、循環経路CP1のポンプ4は、逆流低減機構(バイパス流路BP1、BP2)を備える。
図9は、ポンプ4の逆流低減機構の作用を説明する図である。
図9の(a)は、メイン流路MPにおいて順方向Fのインクの流れが生じている状態を示している。
図9の(b)は、メイン流路MPにおいて逆方向Rのインクの流れを示している。
図9では、代表して吐出路46を示しているが、吸入路45でも逆流低減機構は同様に作用する。
【0060】
図9の(a)に示すように、ポンプ4が動作している間、吐出路46のメイン流路MPにおいて、インクは順方向F(下側から上側)に流れる。
図9の(a)に示すように、インクが順方向Fに流れる場合、バイパス流路BP1、BP2において、順方向Fの上流側に第1分岐路FBPが位置し、下流側に第2分岐路SBPが位置する。すなわち、メイン流路MPのインクの流れが順方向Fの場合、インクは第1分岐路FBPからバイパス流路BP1、BP2に分岐して、第2分岐路SBPからメイン流路MPに合流する。
【0061】
バイパス流路BP1、BP2に分岐したインクは、円弧状の第1分岐路FBPのメイン流路MP側において一旦逆方向Rに流れの向きが変わるものの、第2分岐路SBP側で再び順方向Fに変わる。
第2分岐路SBPにおいて、インクはそのまま順方向Fに流れ、メイン流路MPに合流する。そのため、メイン流路MPに合流した第2分岐路SBPのインクの流れは、メイン流路MPのインクの流れを阻害しない。
さらに、メイン流路MPと、第1分岐路FBPの成す角度αは鈍角である(
図8参照)。そのため、順方向Fの流れの場合、メイン流路MPから第1分岐路FBPに流れ込むインクの流量が少ない。そのため、バイパス流路BP1、BP2の流れによって生じる、メイン流路MPの流れに対する抵抗が小さい。このように、ポンプ4の動作中において、メイン流路MPのインクは順方向Fにスムーズに流れる。
【0062】
図9の(b)に示すように、ポンプ4が停止すると、吐出路46のメイン流路MPのインクは、重力によって逆方向R(上側から下側)に流れようとする。
この場合、バイパス流路BP1、BP2において、逆方向Rの上流側に第2分岐路SBPが位置し、下流側に第1分岐路FBPが位置する。すなわち、メイン流路MPのインクに逆方向Rの流れが生じた場合、第2分岐路SBPが上流側分岐路となり、第1分岐路FBPが下流側分岐路となる。メイン流路MPのインクは、第2分岐路SBPからバイパス流路BP1、BP2に分岐し、第1分岐路FBPからメイン流路MPに合流する。
【0063】
第2分岐路SBPに分岐したインクは逆方向Rに流れ、第1分岐路FBPに入る。インクは、円弧状の第1分岐路FBPをメイン流路MPに向かって流れる際に、逆方向Rから順方向Fに流れが変換される。この順方向Fの流れに変換されたインクが、メイン流路MPに合流すると、メイン流路MPの逆方向Rに流れるインクと衝突する。すなわち、バイパス流路BP1、BP2からメイン流路MPに合流するインクが、メイン流路MPの逆方向Rのインクの流れに対する抵抗となる。これによって、メイン流路MPにおける逆方向Rのインクの流れ、すなわちインクの逆流が低減される。
【0064】
さらに、メイン流路MPと上流側分岐路である第2分岐路SBPとが成す角度βは鋭角である(
図8参照)。そのため、逆方向Rの流れの場合、メイン流路MPから第2分岐路SBPに流れ込むインクの流量が大きくなる。すなわち、バイパス流路BP1、BP2の流れによって生じる、メイン流路MPの流れに対する抵抗が大きくなる。これによって、メイン流路MPにおけるインクの逆流が大きく低減される。
【0065】
さらに、メイン流路MPの、バイパス流路BP1、BP2の第2分岐路SBPとの接続点の近傍には傾斜部DPが設けられている。インクがメイン流路MPを逆方向Rに流れる場合、この傾斜部DPに突き当たることで、インクの流れが阻害される。傾斜部DPによってメイン流路MPのインクの流れが阻害されると、近傍に位置するバイパス流路BP1、BP2の第2分岐路SBPにインクが流れ込みやすくなる。結果として、バイパス流路BP1、BP2の流れによる抵抗が大きくなり、メイン流路MPにおけるインクの逆流が低減されやすくなる。
【0066】
ポンプ4の停止時にインクが逆流すると、ヘッド2に接続する配管P4、ポンプ4および配管P5(
図2参照)からインクが抜けて、エアが混入する可能性がある。このエアがヘッド2に入り込むと、前記したようにノズル詰まりの要因となる可能性がある。
第1実施形態では、ポンプ4の吸入路45と吐出路46に、逆流低減機構であるバイパス流路BP1、BP2を設けることで、インクの逆流を低減している。これによって、ポンプ4の停止時においてもポンプ4および配管P4、P5をインクで満たすことができ、ヘッド2へのエアの混入を低減することができる。
【0067】
ここで、逆流低減機構として、ポンプ4の吸入路45と吐出路46に、電磁弁等を設けることもできる。その場合、電磁弁を開閉するための電気部品が必要とされる。一方、バイパス流路BP1、BP2による逆流低減機構は、本体部43に溝を設ければ良く、電気部品を必要としない。そのため、ポンプ4を小型化することができ、さらに設置コストおよび運用コストも低減することができる。
【0068】
次に、サブタンク3およびヘッド2にインクを初期充填する際の制御について、
図2を参照して説明する。
初期充填の際には、ヘッド2とポンプ4にはインクが満たされておらず、エアが存在する。そのため、制御装置11(
図1参照)は、循環経路CP1のポンプ4を動作させ、ヘッド2およびポンプ4からエアを排出しながらインクの充填を行うように制御を行う。
まず、空の状態のサブタンク3に、メインタンクMTからインクを供給すると共に、循環経路CP1のポンプ4を動作させる。これによって、インクがサブタンク3から配管P3、インク供給口21を介してヘッド2に供給される。ヘッド2に供給されたインクは、インク排出口22から配管P5、ポンプ4、配管P4を通過して、サブタンク3に戻る。ヘッド2、ポンプ4および配管P4、P5に存在するエアはインクと共に押し流され、サブタンク3に排出される。
【0069】
ここで、初期充填の段階では、サブタンク3の液面はインク流入口38まで届いていない。そのため、サブタンク3に排出されたエアは、サブタンク3に貯留されるインクに混入されず、上部に溜る。
【0070】
サブタンク3に充填されたインクが液面高さH2に到達するまでポンプ4を駆動させることで、ヘッド2とポンプ4内のエアは排出され、循環経路CP1はほぼインクで満たされる。その後、ポンプ4を停止して、サブタンク3のインクが液面高さH2に到達するまで、メインタンクMTからインクを供給する。初期充填においてこのような制御を行うことで、ヘッド2内にエアが残ることを低減することができる。
【0071】
以上の通り、第1実施形態で説明したインクジェットプリンタ1は、たとえば、以下の構成を有する。
(1)インクジェットプリンタ1は、
インクを収容するサブタンク3と、
サブタンク3から供給されたインクを吐出するノズル部24を備えるインクジェットヘッド2と、
サブタンク3とインクジェットヘッド2の間でインクを循環させる循環経路CP1と、
循環経路CP1に設けられ、インクの逆流を低減するバイパス流路BP1、BP2(逆流低減機構)を備えたポンプ4と、を有する。
【0072】
第1実施形態のインクジェットプリンタ1によれば、ヘッド2の内部へのエアの混入を低減し、印刷品質を向上させることができる。
サブタンク3からヘッド2に供給されるインクは微負圧状態に制御されているが、様々な要因で圧力状態が変化すると、ノズルNの先端のメニスカスが崩れることがある。これによって、インクがノズルNから流れ落ちると同時に、ヘッド2のインク流路23にエアが入り込むことがある。
【0073】
インク流路23に入り込んだエアがノズルNを塞ぐと、インクがノズルNから正常に吐出されず、印刷品質に影響を与えるおそれがある。
第1実施形態では、循環経路CP1により、サブタンク3とヘッド2の間でインクを循環させることによって、ヘッド2のインク流路23に入り込んだエアを、インクと共にサブタンク3に速やかに排出することができる。これによって、ノズルNからエアと共にインクを多量に排出するノズルクリーニングと比較して、インクの消費量を少なくすることができる。
ここで、ポンプ4の停止時にインクが逆流して循環経路CP1からインクが抜けると、ヘッド2にエアが混入する可能性がある。第1実施形態では、ポンプ4に逆流低減機構であるバイパス流路BP1、BP2を設けることで、ポンプ4の停止時のインクの逆流を低減することができる。
このように、サブタンク3とヘッド2の間でインクを循環させる循環経路CP1を設け、さらに循環経路CP1のポンプ4に逆流低減機構を設けることで、エアによるノズル詰まりを低減して、印刷品質を向上させることができる。
【0074】
(2)ポンプ4は、
本体部43と、
本体部43に形成されたポンプ室44と、
ポンプ室44の開口を覆うフィルム47と、
フィルム47に取り付けられたピエゾ振動子48と、を備える。
【0075】
循環経路CP1のポンプ4にピエゾ振動子48を用いることで、ポンプ4を小型、薄型かつ軽量にすることができ、ポンプ4をヘッド2、サブタンク3と共にキャリッジ8に搭載することができる。
【0076】
(3)ポンプ4は、吸入路45および吐出路46を備える。
吸入路45は、ポンプ室44の下側に設けられている。吸入路45は、上端においてポンプ室44に連通し、下端において本体部43の底面432に開口する。具体的には、吸入路45は、下端において本体部43の底面432の開口432aに接続する。
吐出路46は、ポンプ室44の上側に設けられている。吐出路46は、下端においてポンプ室44に連通し、上端において本体部43の上面433に開口する。具体的には、吐出路46は、上端において本体部43の上面433の開口433aに接続する。
逆流低減機構は、吸入路45および吐出路46に設けられたバイパス流路BP1、BP2である。バイパス流路BP1、BP2は、吸入路45および吐出路46のメイン流路MPから分岐する。
バイパス流路BP1、BP2は、メイン流路MPに逆方向Rのインクの流れが生じた場合に、メイン流路MPから分岐したインクの流れを順方向Fに変換してメイン流路MPに合流させる。
【0077】
吸入路45および吐出路46を、ポンプ室44に対してZ方向にオーバーラップするように設けることで、インクが吸入路45、ポンプ室44および吐出路46を通過する際の抵抗が少なくなり、ポンプ4の吸入および吐出性能を向上させることができる。
さらに、吸入路45に逆流低減機構を設けることで、吸入路45の上側のポンプ室44からインクが抜けることを低減することができる。また、吐出路46に逆流低減機構を設けることで、吐出路46に接続する配管P4からのインクの抜けを低減することができる。
【0078】
バイパス流路BP1、BP2において、逆方向Rのインクの流れが順方向Fに変換されてメイン流路MPに合流することで、メイン流路MPのインクの逆方向Rの流れに対する抵抗となる。これによって、メイン流路MPにおけるインクの逆流を低減することができる。
このように、逆流低減機構を、バイパス流路BP1、BP2とすることで、電磁弁のように電気部品を必要としないため、ポンプ4を小型化することができる。また、ポンプ4の設置コストおよび運用コストも低減することができる。
【0079】
また、第1実施形態のポンプ4において、本体部43の正面431に設けた円形穴と溝の開口をフィルム47で覆うことで、ポンプ室44と吸入路45および吐出路46を容易に形成することができる。これにより、ポンプ4の製造コストを低減することができる。
【0080】
なお、第1実施形態では、バイパス流路は、吸入路45および吐出路46のそれぞれに2つ設けたが、それぞれに1つ設けても良く、3つ以上設けても良い。なお、吸入路45と吐出路46の抵抗を同じにするため、吸入路45と吐出路46のそれぞれに設けるバイパス流路の数は同じとすることが望ましい。
【0081】
(4)バイパス流路BP1、BP2は、逆方向Rのインクの流れにおける上流側でメイン流路MPに接続する第2分岐路SBP(上流側分岐路)と、下流側でメイン流路MPに接続する第1分岐路FBP(下流側分岐路)と、を備える。
第2分岐路SBPとメイン流路MPの成す角度βは鋭角であり、
第1分岐路FBPとメイン流路MPの成す角度αは鈍角である。
【0082】
このように構成することで、ポンプ4が停止し、メイン流路MPに逆方向Rのインクの流れが生じた場合、インクは上流側の第2分岐路SBPからバイパス流路BP1、BP2に分岐し、第1分岐路FBPにおいてメイン流路MPに合流する。
第2分岐路SBPとメイン流路MPの成す角度βは鋭角とすることで、逆方向Rの流れの場合は、メイン流路MPから第2分岐路SBPに流れ込むインクの流量が大きくなる。
第1分岐路FBPとメイン流路MPの成す角度αは鈍角とすることで、第1分岐路FBPにおいて、逆方向Rのインクの流れが順方向Fに変換される。
すなわち、バイパス流路BP1、BP2によってメイン流路MPの逆方向Rの流れに対する大きな抵抗を形成することができるため、ポンプ4の停止時のインクの逆方向Rの流れを低減することができる。
一方、ポンプ4が動作して、メイン流路MPにおいてインクが順方向Fに流れている場合は、バイパス流路BP1、BP2はメイン流路MPの流れを阻害しにくい。
このように、本体部43にバイパス流路BP1、BP2となる溝を形成するのみで、ポンプ4の停止時の逆流を低減することができるため、ポンプ4の製造コストを低減することができる。
【0083】
(5)サブタンク3の下側にヘッド2が配置される。循環経路CP1は、サブタンク3からインクジェットヘッド2にインクを供給する配管P3(供給経路)と、インクジェットヘッド2から排出されたインクをサブタンク3に流入させる配管P4、P5(戻り経路)と、を備える。ポンプ4は、戻り経路である配管P4、P5の間に設けられる。
【0084】
サブタンク3の下側にヘッド2を配置することで、ポンプ4の停止時にも、重力によりサブタンク3からヘッド2にインクを供給することができる。また、配管P4、P5の間にポンプ4を設けることで、ヘッド2から排出されたインクを、重力方向の上側のサブタンク3にスムーズに戻すことができる。
【0085】
(6)サブタンク3は、インクジェットヘッド2から排出されたインクが流入するインク流入口38(流入口)を備える。
ポンプ4は、サブタンク3に貯留されるインクの液面高さH1より低い位置に配置される。インク流入口38は、液面高さH1より低い位置に設けられる。
【0086】
これにより、インク流入口38は、サブタンク3に貯留されるインクの液面の下に位置するため、ポンプ4の停止時に、サブタンク3内のエアがインク流入口38を介して配管P4に入り込むことを低減することができる。
【0087】
(第1実施形態の変形例1)
図10は、第1実施形態の変形例1に係るポンプ4Aの構成を示す図である。
ポンプの逆流低減機構は、第1実施形態で説明したバイパス流路BP1、BP2に限定されない。
図10に示すように、変形例1に係るポンプ4Aでは、逆流低減機構として、ボール逆止弁49を設けている。
変形例1では、本体部43AのZ方向の中央にポンプ室44が形成される。ポンプ室44の下側に吸入路45Aが形成される。ポンプ室44の上側に吐出路46Aが形成される。
変形例1の吸入路45Aおよび吐出路46Aは、実施形態の吸入路45および吐出路46(
図6参照)よりも、Z方向の長さが短い。
【0088】
図10に示すように、ボール逆止弁49は、吸入路45Aおよび吐出路46Aに接続する吸入口41A、吐出口42Aにそれぞれ設けられている。吸入口41Aは配管P5を介してヘッド2(
図2参照)に接続し、吐出口42Aは、配管P4を介してサブタンク3(
図2参照)に接続する。
【0089】
図10に示すように、ボール逆止弁49は、Oリング49aと、Oリング49aに嵌る大きさを有するボール49bから構成される。
吸入口41Aの流路41aにおいて、Oリング49aは、流路41aの下端に配置されている。ボール49bは、Oリング49aを流路41aの下端との間で挟み込むように配置される。
【0090】
吐出口42Aの流路42aにおいて、ボール逆止弁49のOリング49aは、流路42aの下端に配置されている。ボール49bは、Oリング49aを流路42aの下端との間で挟み込むように配置される。
【0091】
吸入口41Aおよび吐出口42Aのいずれにおいても、ボール逆止弁49のOリング49aが、ボール49bの下側に配置されている。ポンプ4Aが動作していない場合、ボール49bは重力によってOリング49aに嵌まり込んでいる。これによって、吸入口41Aにおいては、流路41aと配管P5との連通が遮断される。吐出口42Aにおいては、流路42aと吐出路46との連通が遮断される。これによって、ポンプ4Aの停止時に、配管P4からポンプ4A内へのインクの逆流が低減される。また、ポンプ4A内のインクが、配管P5に逆流することも低減される。
【0092】
一方、ポンプ4Aが動作した場合には、ボール逆止弁49は、インクから順方向(下側から上側)への圧力を受ける。これによって、ボール49bがOリング49aから浮き上がることで、ポンプ4Aは配管P4、P5と連通し、インクが順方向に流れる。
【0093】
以上の通り、第1実施形態の変形例1で説明したインクジェットプリンタ1は、たとえば、以下の構成を有する。
(7)ポンプ4Aは、
ポンプ室44の下側に設けられたインクの吸入口41Aと、
前記ポンプ室44の上側に設けられたインクの吐出口42Aと、を備える。
ポンプ4Aの逆流低減機構は、吸入口41Aおよび吐出口42Aに設けられたボール逆止弁49とすることができる。
【0094】
変形例1においても、ボール逆止弁49によりポンプ4Aの停止中のインクの逆流を低減して、ヘッド2にエアが混入することを低減することができる。また、ボール逆止弁49は、ポンプ4A内を流通するインクの圧力によって開閉するため、逆止弁の開閉に電気部品を必要としない。そのため、ポンプ4Aを小型化し、設置コストおよび運用コストを低減することができる。
さらに、変形例1では、吸入路45A、吐出路46Aにバイパス流路BP1、BP2を設けないため、吸入路45A、吐出路46Aを短くすることができる。これによってポンプ4Aをさらに小型化することができる。
【0095】
(第1実施形態の変形例2)
図11~
図12は、第1実施形態の変形例2に係るポンプ4Bを示す図である。
図11は、第1実施形態の変形例2に係るポンプ4Bの分解斜視図である。
図11では、保持ケース50の側面部53を省略し、正面部51と背面部52を分離して示している。
図12は、ポンプ4Bの平面図である。
図14では、保持ケース50の開口部55が設けられた領域をクロスハッチングで示している。また、ピエゾ振動子48の外縁部48aの領域をハッチングで示している。
なお、
図11~
図12において、隠れ線はポンプ4Bの構成の理解に必要な部分だけ示している。
【0096】
図11に示すように、変形例2のポンプ4Bにおいて、ポンプ4Bでは、本体部43Bの正面431側と背面434側のそれぞれに、ピエゾ振動子48が配置される。
変形例2において、ポンプ室44Bは、本体部43Bを奥行き方向に貫通する円形孔として構成される。ポンプ室44Bは、正面431側と背面434側において開口している。
【0097】
吸入路45と吐出路46は、第1実施形態と同様に、正面431を奥行き方向に掘り込んで形成された溝であり、背面434側には貫通していない。
本体部43Bには、ポンプ室44Bの開口を囲む段部435が形成されている。段部435は、本体部43Bの正面431と、図示は省略するが、背面434とに形成されている。段部435は、正面431および背面434を奥行き方向に掘り下げて形成される。
【0098】
段部435は、奥行き方向から見て、環状に形成されている。段部435の内周はポンプ室44Bの外周に接続している。段部435は、吸入路45のメイン流路MPの上端と、吐出路46のメイン流路MPの下端を横切るように設けられている。
【0099】
図11に示すように、本体部43Bの正面431では、全体が矩形のフィルム471(第1フィルム)に覆われている。フィルム471は、正面431側のポンプ室44B、吸入路45と吐出路46の開口を塞ぐ。
【0100】
本体部43Bの背面434では、段部435(不図示)およびポンプ室44Bの開口が、円形のフィルム472(第2フィルム)に覆われている。背面434には吸入路45と吐出路46は開口していないため、フィルム472はポンプ室44Bの開口のみを塞げば良い。そのため、フィルム472は、段部435の直径よりわずかに小さい直径に設定され、段部435に密着して取り付けられる。
フィルム471、472は、第1実施形態と同様に、熱溶着により取り付けることができる。
【0101】
本体部43Bの正面431側と背面434側に配置されるピエゾ振動子48は、第1実施形態と同じ構成(
図7の(a)参照)である。ピエゾ振動子48は、第1実施形態と同様に、接着剤によりフィルム471、472に取り付けることができる。
段部435は、ピエゾ振動子48の外径に整合する大きさに設定される。すなわち、ピエゾ振動子48は、正面431側と背面434側の段部435に嵌まりこんで配置される。ピエゾ振動子48は、フィルム471、472を間に挟んで、奥行き方向においてポンプ室44Bに対向するように配置される。
【0102】
図12に示すように、変形例2に係るポンプ4Bは保持ケース50(保持部)を有する。保持ケース50は、本体部43Bとの間でピエゾ振動子48を挟み込んで、ピエゾ振動子48の脱落を防止するものである。保持ケース50は、奥行き方向に間隔を空けて対向して配置された正面部51および背面部52と、正面部51と背面部52の幅方向における一端同士を接続する側面部53と、を有する。保持ケース50は、上から見て略C字形状である。保持ケース50は、正面部51と背面部52の間で、本体部43Bおよびピエゾ振動子48を挟み込んで保持する。
【0103】
図11に示すように、正面部51は、本体部43Bの正面431に、奥行き方向に対向して配置される。正面部51と正面431の間に、ピエゾ振動子48が挟み込まれる。正面部51のZ方向における中央には、円形の開口部55が形成されている。
開口部55の直径は、ピエゾ振動子48の外径よりも小さい径に設定されている。
そのため、
図12に示すように、ピエゾ振動子48の外縁部48a(ハッチングを付した領域)は、正面部51に奥行き方向にオーバーラップしている。外縁部48aは、たとえば接着剤等により、正面部51に接着される。
一方、ピエゾ振動子48の外縁部48aを除いた領域、すなわち外縁部48aより内周側の領域は、開口部55により露出している。すなわち、外縁部48aより内周側の領域は、保持ケース50の正面部51に接着されていない。前記したようにピエゾ振動子48は電圧の供給により振動する。ピエゾ振動子48の外縁部48aのみが保持ケース50に接着され、外縁部48aを除く領域が開口部55から露出することで、ピエゾ振動子48の振動が保持ケース50によって阻害されることを低減することができる。
【0104】
図11に示すように、背面部52は、本体部43Bの背面434に、奥行き方向に対向して配置される。背面部52と背面434の間に、ピエゾ振動子48が挟み込まれる。背面部52のZ方向における中央には、正面部51と同様に、円形の開口部55が形成されている。ピエゾ振動子48は外縁部48aのみが背面部52に保持され、外縁部48aを除く領域が開口部55から露出する。これによって、ピエゾ振動子48の振動が保持ケース50によって阻害されることを低減することができる。
【0105】
側面部53は、本体部43Bの幅方向における一端面(図中、左側の面)に対向して配置され、接着剤等で取り付けられる。
【0106】
変形例2におけるポンプ4Bの動作を説明する。
図13は、変形例2においてピエゾ振動子48に供給される電圧波形を示す図である。
図13では、本体部43Bの正面431側のピエゾ振動子に符号48Aを付し、背面434側のピエゾ振動子に符号48Bを付して区別する。ピエゾ振動子48Aは、ポンプ室44Bの正面431側の開口を塞ぐフィルム471に取り付けられている。ピエゾ振動子48Bは、ポンプ室44Bの背面434側の開口を塞ぐフィルム472に取り付けられている。
【0107】
ピエゾ振動子48A、48Bは、それぞれ電圧供給部PS(
図7の(a)参照)から交流電圧が供給されることで振動する。
図13に示すように、電圧供給部PSは、ピエゾ振動子48Aに供給する電圧波形の位相とピエゾ振動子48Bに供給する電圧波形の位相を180°反転させる。
【0108】
これによって、ピエゾ振動子48A、48Bは、同じタイミングで逆の動作を行う。すなわち、ピエゾ振動子48Aが膨張するタイミングでピエゾ振動子48Bは収縮し、ピエゾ振動子48Aが収縮するタイミングでピエゾ振動子48Bは膨張する。ピエゾ振動子48A、48Bが取り付けられたフィルム471、472も、互いに逆の方向に変位する。
【0109】
図14の(a)は、ポンプ室44Bの容積が増加する状態を説明する模式図である。
図14の(b)は、ポンプ室44Bの容積が減少する状態を説明する模式図である。
図14の(a)に示すように、ピエゾ振動子48Aが膨張することによって、フィルム471は奥行き方向における手前側(図中、下側)に変位する。同じタイミングでピエゾ振動子48Bが収縮することによって、フィルム472は奥行き方向における奥側(図中、上側)に変位する。すなわち、フィルム471、472は互いに遠ざかる方向に変位する。これによって、ポンプ室44Bの容積は増加する。ポンプ室44Bの容積が増加することで、インクがポンプ室44Bに吸入される。
図14の(b)に示すように、ピエゾ振動子48Aが収縮することによって、フィルム471は奥行き方向における奥側(図中、上側)に変位する。同じタイミングでピエゾ振動子48Bが膨張することによって、フィルム472は奥行き方向における手前側(図中、下側)に変位する。すなわち、フィルム471、472は互いに近づく方向に変位する。これによって、ポンプ室44Bの容積は減少する。ポンプ室44Bの容積が減少することで、インクがポンプ室44Bから吐出される。
【0110】
このように、変形例2に係るポンプ4Bは、第1実施形態のポンプ4と同様に、ポンプ室44Bの容積を増減させることでインクを圧送する。ここで、変形例2では、ポンプ室44Bの容積を変化させるピエゾ振動子48A、48Bが、正面431側と背面434側の両方に配置されている。そのため、変形例2に係るポンプ4Bは、ポンプ室44Bの容積の変化が、第1実施形態のポンプ4よりも大きい。すなわち、ポンプ4Bは、インクの圧送量を増加させることができる。
【0111】
変形例2において、電圧供給部PS(
図7の(a)参照)は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御により、ピエゾ振動子48A、48Bのそれぞれに供給する電圧の波形を制御することができる。さらに、波形におけるパルスのデューティ比を調整することで、ポンプ4Bのインクの圧送量もコントロールすることができる。
【0112】
以上の通り、変形例2に係るインクジェットプリンタは、以下の構成を備える。
(8)ポンプ4Bにおいて、ポンプ室44Bは、本体部43Bの正面431(一端面)から背面434(他端面)に貫通して形成される。
ポンプ4Bは、フィルムとして、ポンプ室44Bの正面431側の開口を覆うフィルム471(第1のフィルム)と、ポンプ室44Bの背面434側の開口を覆うフィルム472(第2のフィルム)と、を備える。
ポンプ4Bは、フィルム471およびフィルム472のそれぞれに取り付けられたピエゾ振動子48(48A、48B)を備える。
【0113】
変形例2に係るポンプ4Bは、第1実施形態のポンプ4と同様に、ポンプ室44の容積を増減させることでインクを圧送する。ここで、変形例2では、本体部43Bを正面431から背面434に貫通してポンプ室44Bを形成し、正面431および背面434のそれぞれの開口を塞ぐフィルム471、472にピエゾ振動子48A、48Bを取り付けている。これによって、ポンプ室44の容積を正面431側と背面434側の両方で変化させることができる。これによってポンプ4Bのインクの圧送量を増加させることができる。また、例えばPWM制御を行うことで、ピエゾ振動子48A、48Bへ供給する電圧波形を変化させることができるため、インクの圧送量を容易に制御することができる。
【0114】
(9)ポンプ4Bは、本体部43Bとの間でピエゾ振動子48を挟み込んで保持する保持ケース50(保持部)を有する。
保持ケース50の正面部51と背面部52には、ピエゾ振動子48の外縁部48aを除いた領域を露出させる開口部55が形成される。
【0115】
保持ケース50が、本体部43Bとの間でピエゾ振動子48を挟み込んで保持することで、ピエゾ振動子48の脱落を低減することができる。さらに、保持ケース50の正面部51と背面部52に開口部55を設けて、ピエゾ振動子48の外縁部48aを保持しつつ、外縁部48aを除いた領域を開口部55から露出させる。これにより、保持ケース50によってピエゾ振動子48の振動が阻害されることを低減することができる。
【0116】
なお、保持ケース50は、第1実施形態のポンプ4に設けても良い。ポンプ4は、本体部43の正面431側のみにピエゾ振動子48が配置されているため、保持ケース50の正面部51のみに開口部55を設け、背面部52は本体部43の背面434に全面的に接着させても良い。
【0117】
(第1実施形態の変形例3)
図15は、第1実施形態の変形例3に係るポンプ4Cの構成例を示す分解斜視図である。
図15では、保持ケース50の側面部53を省略し、正面部51と背面部52を分離して示している。
図16は、ポンプ4Cの平面図である。
図15に示すように、変形例3に係るポンプ4Cは、奥行き方向に並んで配置された複数の本体部430A、430Bを備える。
本体部430Aの背面434と、本体部430Bの正面431が、奥行き方向において向かい合っている。
本体部430A、430Bは、それぞれ、ポンプ4Bの本体部43Bと同様の構成を備える。
すなわち、ポンプ室44Bが、本体部43Bを奥行き方向に貫通する円形孔として構成され、正面431側と背面434側において開口している。吸入路45と吐出路46は、正面431を奥行き方向に掘り込んで形成されており、背面434側には貫通していない。正面431および背面434には、ポンプ室44Bの開口を囲む段部435が形成されている。
正面431の全体がフィルム471に覆われている。背面434は、段部435およびポンプ室44Bの開口が、円形のフィルム472に覆われている。
【0118】
本体部430A、430Bの正面431側と背面434側には、それぞれ、ピエゾ振動子48が配置されている。
ここで、前記したように、本体部430Aの背面434と、本体部430Bの正面431が、奥行き方向において向かい合っている。本体部430Aの背面434と、本体部430Bの正面431の間に、一つのピエゾ振動子48が配置されている。
すなわち、本体部430Aと本体部430Bは、互いの間に配置されたピエゾ振動子48を共用している。
図15の例では、2つの本体部430A、430Bに対して、3つのピエゾ振動子48を用いている。
【0119】
3つのピエゾ振動子48はいずれも同じ構成であるが、
図15では、区別のために、3つのピエゾ振動子にそれぞれ、符号48C、48D、48Eを付す。ピエゾ振動子48Cは、本体部430Aの正面431側に配置されている。ピエゾ振動子48Dは、本体部430Aの背面434と本体部430Bの正面431の間に配置されている。ピエゾ振動子48Eは、本体部430Bの背面434側に配置されている。
【0120】
ピエゾ振動子48Dは、奥行き方向における一端面(図中、手前側の面)が、本体部430Aの背面434に接着されたフィルム472に取り付けられ、他端面(図中、奥側の面)が、本体部430Aの正面431に接着されたフィルム471に取り付けられる。ピエゾ振動子48Dは、本体部430A、430Bに挟み込まれることで、本体部430A、430Bに保持されている。
【0121】
図16に示すように、ポンプ4Cは、変形例2と同様に、保持ケース50を備える。変形例3において、保持ケース50は、ピエゾ振動子48の脱落を防止するとともに、複数の本体部430A、430Bを挟み込むことで、一つのユニットとして保持している。
保持ケース50は、正面部51、背面部52および側面部53を有する。正面部51は、本体部430Aの正面431との間でピエゾ振動子48Cを挟み込んで保持する。背面部52は、本体部430Bの背面434との間でピエゾ振動子48Eを挟み込んで保持する。正面部51および背面部52のZ方向における中央には、円形の開口部55が形成されている。
そのため、ピエゾ振動子48C、48Eは、外縁部48aのみが正面部51および背面部52に接着され、外縁部48aを除く領域は、開口部55から露出している。
【0122】
側面部53は、本体部430A、430Bの幅方向における一端面に、対向して配置され、接着剤等で取り付けられる。
【0123】
変形例3では、ポンプ4Cに複数の本体部430A、430Bを設けている。
図15、
図16の例では、本体部の数を2つとしたが、本体部の数は限定されず、3つ以上設けても良い。
ポンプ4Cでは、本体部430A、430Bのそれぞれでインクを圧送することができる。前記したように、例えば、インクジェットプリンタ1に複数のノズル列を設けた場合等に、複数の循環経路CP1(
図2参照)を設けることができる。
【0124】
その場合、循環経路CP1毎に、ポンプを別個に設けることができるが、変形例3のポンプ4Cを用いることで、複数の循環経路CP1のそれぞれのインクを、一つのポンプ4Cで圧送することができる。
さらに、ポンプ4Cでは、本体部430A、430Bの間に配置されたピエゾ振動子48Dを共用している。そのため、たとえば、変形例2に係るポンプ4Bを循環経路CP1毎に設けた場合に比べて、ピエゾ振動子48の合計点数を減らすことができる。
【0125】
図17の(a)および
図17の(b)は、変形例3におけるポンプ室44Bの容積の変化を説明する模式図である。
図17では、ポンプ室44Bの構成を簡略化し、ポンプ室44Bの開口を塞ぐフィルム471、472の図示は省略している。
【0126】
図16に示すように、ピエゾ振動子48Cは、本体部430Aの正面431側に配置されている。ピエゾ振動子48Eは、本体部430Bの背面434側に配置される。ピエゾ振動子48Dは、本体部430Aの背面434と本体部430Bの正面431の間に配置され、本体部430A、430Bで共用されている。
図17の(a)および
図17の(b)に示すように、本体部430Aのポンプ室44Bは、ピエゾ振動子48C、48Dの振動によって容積が変化する。本体部430Bのポンプ室44Bは、ピエゾ振動子48D、48Eの振動によって容積が変化する。
【0127】
ピエゾ振動子48C、48D、48Eは、それぞれ電圧供給部PS(
図7の(a)参照)から交流電圧が供給されることで振動する。ピエゾ振動子48C、48Eに供給される電圧波形は、同じ位相となるように制御される。ピエゾ振動子48Dに供給される電圧波形は、ピエゾ振動子48C、48Eに供給される電圧波形と位相が180°反転するように制御される。
言い換えると、変形例3では、奥行き方向において隣り合うピエゾ振動子48に対して、互いに位相が反転した電圧が供給される。
【0128】
このように電圧の波形を制御することで、
図17の(a)に示すように、ピエゾ振動子48C、48Dが膨張するタイミングで、ピエゾ振動子48Dが収縮する。これによって、本体部430Aのポンプ室44Bの容積は増加し、インクがポンプ室44Bに吸入される。
一方、本体部430Bのポンプ室44Bの容積は減少し、インクがポンプ室44Bから吐出される。
【0129】
図17の(b)に示すように、ピエゾ振動子48C、48Dが収縮するタイミングで、ピエゾ振動子48Dが膨張する。これによって、本体部430Aのポンプ室44Bの容積が減少し、インクがポンプ室44Bから吐出される。
一方、本体部430Bのポンプ室44Bの容積が増加し、インクがポンプ室44Bに吸入される。
このように、変形例3では、2つの本体部430A、430Bの間で共用されるピエゾ振動子48Dの電圧波形を、他のピエゾ振動子48C、48Eと反転させることで、本体部430A、430Bそれぞれのポンプ室44Bの容積を変化させることができる。また、変形例2と同様に、本体部430A、430Bの正面431側および背面434側のそれぞれにピエゾ振動子48を設けることで、ポンプ室44Bの容積の変化を大きくすることができる。
【0130】
なお、本体部430A、430Bのそれぞれのポンプ室44Bにおいて、インクの吸入と吐出がタイミングをずらした状態で行われるが、本体部430A、430Bのそれぞれは別個にインクを圧送するため、吸入と吐出のタイミングを同期させることは要求されない。
【0131】
図18は、変形例3に係るポンプ4Cのバリエーションを示す図である。
図15~
図17では、ポンプ4Cが2つの本体部430A、430Bを備える例を説明したが、ポンプ4Cは、3つ以上の本体部を備えても良い。
図18では、ポンプ4Cが、4つの本体部430A、430B、430C、430Dを備える例を示している。4つの本体部430A~430Dは、奥行き方向に並んで配置されている。詳細な図示は省略するが、本体部430A~430Dの正面431側と背面434側には、それぞれフィルム471、472が接着され、フィルム471、472にはピエゾ振動子が取り付けられている。また、奥行き方向において隣合う本体部の間ではピエゾ振動子が共用されている。そのため、4つの本体部に対して5つのピエゾ振動子が配置されている。
【0132】
図18の例では、保持ケース50Aは、ボルトBにより本体部430A~430Dに締結されている。保持ケース50Aは、側面部を備えず、正面部51Aと背面部52Aのみを備える。正面部51Aと背面部52Aの間で、本体部430A~430Dおよびピエゾ振動子48が挟み込まれる。ボルトBは、正面部51Aと背面部52Aの4つの角部において締結される。ボルトBは、正面部51A、本体部430A~430Dおよび背面部52Aを奥行き方向に貫通して締結される。
このように、保持ケース50AをボルトBにより本体部430A~430Dに締結することで、本体部の数が増えた場合にも、本体部430A~430Dおよびピエゾ振動子を強固に保持することができる。
もちろん、4つの本体部を設ける場合でも、
図16に示すように、正面部51、背面部52および側面部53を備えた保持ケース50を用いても良い。
【0133】
以上の通り、変形例3に係るインクジェットプリンタは、以下の構成を備える。
(10)ポンプ4Cは、並んで配置された複数の本体部430A、430Bを備える。
ポンプ4Cは、隣り合う一方の本体部430Aと他方の本体部430Bの間に配置されるピエゾ振動子48Dを備える。ピエゾ振動子48Dは、奥行き方向における一端面において本体部430Aに接着されたフィルム472(第2のフィルム)に取り付けられ、他端面において、本体部430Bに接着されたフィルム471(第1のフィルム)に取り付けられる。
【0134】
(第1実施形態の変形例4)
図19は、第1実施形態の変形例4に係るインクジェットプリンタ1Aの構成を説明する図である。
図19に示すように、変形例4では、サブタンク3Aに、循環経路CP1のポンプ4を収容するポンプ収容室31Bを設けている。
サブタンク3Aの内部に隔壁31Cが設けられている。隔壁31Cによって、サブタンク3Aの内部は、インク室31Aとポンプ収容室31Bとに区画されている。
変形例4では、隔壁31Cに、インク流入口38が設けられている。インク流入口38は、ポンプ収容室31Bに配置されたポンプ4の吐出口42と、配管P4を介して接続されている。また、ポンプ4の吸入口41は、配管P5を介して、ヘッド2のインク排出口22に接続されている。図示は省略するが、サブタンク3Aの下面に、配管P5が挿通可能な開口が設けられている。
ポンプ収容室31B内において、ポンプ4とインク流入口38は、サブタンク3Aの液面高さH1より低い位置に配置されている。
【0135】
以上の通り、第1実施形態の変形例4で説明したインクジェットプリンタ1Aは、たとえば、以下の構成を有する。
(11)サブタンク3Aは、インクを収容するインク室31Aと、ポンプ4を収容するポンプ収容室31Bと、を備える。
サブタンク3A内にポンプ収容室31Bを設けることで、ポンプ4をサブタンク3Aと一体にすることができるため、ポンプ4のキャリッジ8における配置を個別に検討する必要が無く、レイアウトが容易となる。
なお、ポンプ収容室31Bに収容するポンプ4は、第1実施形態のポンプ4でも良く、変形例1のポンプ4Aでも良い。
【0136】
(第2実施形態)
図20は、第2実施形態に係るインクジェットプリンタ1Bの構成を説明する図である。
図21は、チェックバルブ63の構成および動作を説明する図である。
図21の(a)は、チェックバルブ63が開いた状態を示し、
図21の(b)は、チェックバルブ63が閉じた状態を示す。
第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付して説明する。
図20に示すように、第2実施形態に係るプリンタ1Bは、第1実施形態の循環経路CP1に代わって、排出経路6を備えている。排出経路6は、ヘッド2のインク排出口22に接続されている。第2実施形態では、ポンプ4、配管P4、P5が設けられていない。また、サブタンク3Bにはインク流入口38が設けられていない。第2実施形態の他の構成については、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0137】
排出経路6は、ヘッド2の内部から、インクと共に、インクに混入しているエアを排出する。
排出経路6は、ヘッド2から排出されたインクを一時的に貯留する中間タンク61と、ヘッド2から排出されたインクが最終的に貯留される廃液タンク62と、を備える。
中間タンク61は、キャリッジ8に搭載されている。
ヘッド2から中間タンク61にインクが流れる方向が、第2実施形態におけるインクの順方向であり、中間タンク61からヘッド2にインクが流れる方向が、逆方向である。
【0138】
中間タンク61は、配管P6、P7を介してヘッド2のインク排出口22に接続されている。配管P6、P7の間には、逆止弁であるチェックバルブ63が設けられている。
廃液タンク62は、配管P8、P9を介して中間タンク61に接続される。配管P8、P9の間には、インクを圧送するポンプ64が設けられている。中間タンク61に貯留されたインクは、ポンプ64を動作させることで、配管P8、P9を通って廃液タンク62に排出される。なお、中間タンク61のインクを廃液タンク62に排出する代わりに、メインタンクMTに戻しても良い。
【0139】
図21の(a)に示すように、チェックバルブ63は、内部に弁室632が形成されたケーシング631を備える。弁室632は、配管P6に接続する入口635と、配管P7に接続する出口636を備える。弁室632内には、入口635に対向して、弁体633が配置されている。弁体633の出口636側には、スプリング634が配置されている。弁室632には、入口635を囲むOリング637が配置されている。スプリング634は一端側(図中、左側)が弁室632の出口636側に支持され、他端側(図中、右側)は弁体633に当接している。スプリング634は、弁体633を入口635側に付勢する。弁体633が入口635に配置されたOリング637に当接すると、弁室632の入口635が閉止される。
【0140】
チェックバルブ63は、弁体633の入口635側と出口636側にかかる圧力差で開閉する逆止弁である。
図21の(a)に示すように、弁体633の入口635側にかかる圧力が、スプリング634の付勢力を含む出口636側にかかる圧力を上回ると、弁体633は出口636側に移動し、弁室632の入口635が開放される。弁体633が出口636側へ移動する最低動作圧力を、クラッキング圧力という。
図21の(b)に示すように、弁体633の入口635側にかかる圧力が、弁体633の出口636側にかかる圧力を下回ると、弁体633は入口635を閉止する。
【0141】
第2実施形態では、サブタンク3Bに接続される空圧回路APC(
図26参照)が供給する圧力を調整することで、チェックバルブ63の開閉を行う。前記したように、空圧回路APCによって、サブタンク3Bからヘッド2に供給されるインクの圧力が調整される。チェックバルブ63の入口635は、配管P6を介してヘッド2と接続する。そのため、サブタンク3Bからヘッド2に供給されるインクの圧力は、チェックバルブ63の入口635側の圧力として作用する。空圧回路APCによって、チェックバルブ63の入口635側にクラッキング圧力を上回る圧力が供給されると、
図21の(a)に示すように、チェックバルブ63が開放される。図において太線で示すように、弁室632の内部に順方向にインクが流れる。これによって、配管P6、P7が接続され、ヘッド2内部のインクが中間タンク61に排出される。
【0142】
図21の(b)に示すように、空圧回路APCから供給される圧力がクラッキング圧力を下回ると、チェックバルブ63が閉止される。これによって、弁室632の内部にはインクが流れず、配管P6、P7の接続が遮断される。ヘッド2内のインクの、排出経路6への排出が停止される。
ここで、排出の停止によって配管P7からインクが抜け、さらに配管P6においてインクがヘッド2側へ逆流すると、配管P6、配管P7にエアが混入する可能性がある。そのエアがヘッド2内に入り込むと、ノズル詰まりが起きる可能性がある。
【0143】
図21の(b)に示すように、第2実施形態では、排出経路6への排出が停止されると、チェックバルブ63の弁体633によって弁室632の入口635が塞がれる。これによって、配管P6と配管P7の接続が遮断されるため、配管P7からインクが抜けてエアが入っても、そのエアが配管P6に混入することが低減される。
さらに、配管P6と弁室632の入口635が遮断されることで、配管P6からヘッド2へのインクの逆流が低減される。これによって、ヘッド2へのエアの混入を低減され、印刷品質を向上させることができる。
【0144】
ここで、第1実施形態でも説明したが、プリンタ1Bの印刷動作時は、空圧回路APCによって、サブタンク3Bからヘッド2に供給されるインクには負圧が供給される。これによってノズル部24を構成するノズルNの先端においてインクのメニスカスが形成される。一方、空圧回路APCがインクに正圧を供給すると、ノズルNからインクが排出される。ノズルNからインクを排出し、メンテナンスユニット12(
図1参照)によりノズルNをワイピングすることで、ノズルクリーニングを行うことができる。
【0145】
第2実施形態では、空圧回路APCが供給する正圧を、クラッキング圧力より大きくした場合、ノズルNからインクが排出されると共に、排出経路6からもインクが排出される。
一方、空圧回路APCが供給する正圧を、クラッキング圧力より小さくした場合、排出経路6からインクは排出されず、ノズルNからのインクの排出のみが行われる。
すなわち、プリンタ1Bの印刷品質の状態に応じて空圧回路APCから供給する正圧を調整することで、ノズルクリーニングのみ行う制御と、ノズルクリーニングに加えて排出経路6からのエア排出を行う制御を切り替えることができる。
【0146】
以上の通り、第2実施形態で説明したインクジェットプリンタ1Bは、たとえば、以下の構成を有する。
(12)インクジェットプリンタ1Bは、
インクを収容するサブタンク3Bと、
サブタンク3Bから供給されたインクを吐出するノズル部24を備えるインクジェットヘッド2と、
インクジェットヘッド2に混入するエアを、インクと共に排出する排出経路6と、
排出経路6に設けられ、排出経路6からインクジェットヘッド2へのインクの逆流を低減するチェックバルブ63(逆止弁)と、を備える。
【0147】
第2実施形態のインクジェットプリンタ1Bによれば、ヘッド2の内部へのエアの混入を低減し、印刷品質を向上させることができる。
第2実施形態では、排出経路6によりヘッド2に混入したエアを、インクと共に排出することができる。さらに、排出経路6にチェックバルブ63を設けることで、排出経路6からヘッド2にインクが逆流して、ヘッド2にエアが混入することを低減することができる。
これによって、ヘッド2におけるエアの混入によるノズル詰まりを低減し、印刷品質を向上させることができる。
また、排出経路6からのインクの排出を定期的に行うことで、インクに含まれる顔料の沈降や、UV硬化型インクのヘッド2内でのゲル化または硬化を低減することができる。
【0148】
(13)インクジェットプリンタ1Bは、サブタンク3Bからインクジェットヘッド2に供給されるインクの圧力を調整する空圧回路APC(圧力調整部)を備える。
逆止弁は、インクの圧力に応じて排出経路6を開閉するチェックバルブ63である。
チェックバルブ63は、サブタンク3Bに接続された空圧回路APCを用いて開閉を制御することができるため、チェックバルブ63を開閉するための部品を別途設ける必要が無く、部品点数を削減し、設置コストを低減することができる。
なお、逆止弁は、チェックバルブ63に限定されず、電磁弁等としても良い。この場合は、ノズルクリーニングと独立して、排出経路6からのエアの排出を行うことができる。
【0149】
(14)インクジェットプリンタ1Bにおいて、インクの圧力が、チェックバルブ63のクラッキング圧力より小さい場合、ノズル部24からインクが排出される。
インクの圧力が、チェックバルブ63のクラッキング圧力より大きい場合、ノズル部24からインクが吐出されると共に、排出経路6から、エアがインクと共に排出される。
【0150】
空圧回路APCからインクに供給する正圧を、チェックバルブ63のクラッキング圧力に応じて調整することで、ノズルクリーニングのみ行う制御と、ノズルクリーニングに加えて排出経路6からのエア排出を行う制御を切り替えることができる。これにより、インクジェットプリンタ1Bの利便性を向上させることができる。
【0151】
本願発明は、上記した実施形態の態様に限定されるものではなく、本願発明の技術的な思想の範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0152】
1、1A、1B:インクジェットプリンタ
2:インクジェットヘッド
3、3A、3B:サブタンク
4、4A、4B、4C:ポンプ
6:排出経路
21:インク供給口
22:インク排出口
23:インク流路
24:ノズル部
31、31A:インク室
32:エア供給口
33:インク流入口
34:インク排出口
37:インク流出口
38:インク流入口
31B:ポンプ収容室
31C:隔壁
41:吸入口
41a:流路
42:吐出口
42a:流路
43:本体部
44:ポンプ室
45:吸入路
46:吐出路
47:フィルム
48:ピエゾ振動子
49:ボール逆止弁
49a:Oリング
49b:ボール
50:保持ケース
61:中間タンク
62:廃液タンク
63:チェックバルブ
64:ポンプ
APC:空圧回路
CP1:循環経路
P1~P9:配管
N:ノズル
MP:メイン流路
BP1、BP2:バイパス流路
FP:第1分岐路
SP:第2分岐路
DP:傾斜部