(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163302
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】車両用通信制御システム、および、車両用通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20231102BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
B60R16/023 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074099
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】福永 浩之
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA09
5K033BA06
5K033CB06
5K033CB08
5K033DA06
(57)【要約】
【課題】車載装置が車載ネットワークを利用して情報の取得を可能にする。
【解決手段】情報通信装置5はゲートウェイ1および車載通信機3を介して情報通信機器IDおよび要求データIDを、車載通信機3は車両IDを、データセンタ6へ送信し(S1~S4)、データセンタ6はこれらのIDの対応付けを確認した場合(S5)、データセンタ6はゲートウェイ1および車載通信機3を介してCANの利用を可能にする車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報)を情報通信機器5へ送信して情報通信機器5は車載通信情報を受信し(S6,S7,S9)、データセンタ6は車載通信機3を介してルーティング変更要求をゲートウェイ1へ送信してゲートウェイ1は情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報をルーティングテーブルに登録する(S6~S8)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置と、
前記車両に搭載され、前記車載装置と通信可能に接続される中継装置と、
前記車両に搭載され、前記中継装置と通信可能に接続されるとともに、車両外に設置されている車外通信機と通信可能な車載通信機と
を備える車両用通信制御システムであって、
前記車載装置は、当該車載装置を識別するための車載装置識別情報を前記中継装置および前記車載通信機を介して前記車外通信機宛に送信し、
前記中継装置は、前記車外通信機が行う前記車載装置識別情報に基づく所定の処理の結果に基づいて当該車外通信機から送信されるルーティング変更要求に応じて前記車載装置に関わるデータのルーティングが可能になるようにルーティング情報を登録し、
前記車載装置は、前記所定の処理の結果に基づいて前記車外通信機から送信される、前記中継装置を含んで構築される車載ネットワークの利用を可能にする車載通信情報を受信する
ことを特徴とする車両用通信制御システム。
【請求項2】
前記車載装置は、前記車両に後付け設置可能であることを特徴とする請求項1に記載の車両用通信制御システム。
【請求項3】
車両に搭載される車載装置と、
前記車両に搭載され、前記車載装置と通信可能に接続される中継装置と、
前記車両に搭載され、前記中継装置と通信可能に接続されるとともに、車両外に設置されている車外通信機と通信可能な車載通信機と
を備える車両用通信制御システムにおいて行われる車両用通信制御方法であって、
前記車載装置は、当該車載装置を識別するための車載装置識別情報を前記中継装置および前記車載通信機を介して前記車外通信機宛に送信し、
前記中継装置は、前記車外通信機が行う前記車載装置識別情報に基づく所定の処理の結果に基づいて当該車外通信機から送信されるルーティング変更要求に応じて前記車載装置に関わるデータのルーティングが可能になるようにルーティング情報を登録し、
前記車載装置は、前記所定の処理の結果に基づいて前記車外通信機から送信される、前記中継装置を含んで構築される車載ネットワークの利用を可能にする車載通信情報を受信する
ことを特徴とする車両用通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデータセンタなどの車外の機器(車外通信機)を利用する車両用通信制御システム、および、車両用通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載された通信機器とデータセンタとの間で通信を行う車両用通信制御システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両には、CAN(Controller Area Network)などを含む車載LAN(Local Area Network)が構築されており、車載LANでは、ディスプレイオーディオ(D/A)やナビなどの情報通信機器、および、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)それぞれがゲートウェイに接続されて、情報通信機器とECUとがゲートウェイを介して通信を行う。情報通信機器がゲートウェイを介して通信を行うためには、情報通信機器に対して、車載LANの利用を可能にする車載通信情報(CAN ID、LSB(Least Significant Bit)などのスケーリング情報など)の設定が必要であり、ゲートウェイに情報通信機器とECUとの間のデータのルーティングを可能にするルーティング情報の設定が必要である。
【0005】
ディスプレイオーディオ(D/A)やナビなどの情報通信機器には、車両メーカが部品メーカに対して車載通信情報を開示して開発される情報通信機器(純正品)や、販売後の車両にユーザが後付けする情報通信機器(サードパーティー製の製品(社外品))などがあり、社外品を後付けするユーザも多い。このため、情報通信機器に対して製品の相違(純正品、社外品など)の影響を抑えて車両にて同等の機能を実現したいというニーズが高まっている。
【0006】
しかしながら、純正品には車載通信情報が事前に設定されることが可能であるとともに、ゲートウェイには純正品とECUとに関わるルーティング情報を事前に設定されることが可能であるため、純正品は例えばゲートウェイに接続されたECUと通信を行って当該ECUから車両情報(例えば、車速、吸気量など)を取得することができる。一方で、社外品には車載通信情報が事前に設定し得ず、ゲートウェイには社外品とECUとに関わるルーティング情報が事前に設定し得ない場合もあるため、社外品は例えばゲートウェイに接続されたECUと通信を行って当該ECUから車両情報を取得することができず、純正品と比べて機能面で劣ってしまう。
【0007】
そこで、社外品を開発する社外品メーカに対して車載通信情報を開示して社外品に車載通信情報を設定し、ゲートウェイに社外品とECUとに関わるルーティング情報を設定することが考えられる。しかしながら、車両情報の保護の観点から、多数ある社外品メーカ全てに対して機密性の高い車載通信情報を開示することは現実的ではない。また、販売後の車両にユーザが後付けすることが可能な全ての社外品に関して社外品とECUとに関わるルーティング情報をゲートウェイに設定するためには、メモリの使用容量が大きくなってしまう。さらに、車両の販売後に開発された社外品に対しては対応できない。
【0008】
本発明の目的は、車両に搭載される車載装置が車両に構築された車載ネットワークを利用して情報の取得を可能にする車両用通信制御システム、および、車両用通信制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両用通信制御システムは、車両に搭載される車載装置と、前記車両に搭載され、前記車載装置と通信可能に接続される中継装置と、前記車両に搭載され、前記中継装置と通信可能に接続されるとともに、車両外に設置されている車外通信機と通信可能な車載通信機とを備える車両用通信制御システムであって、前記車載装置は、当該車載装置を識別するための車載装置識別情報を前記中継装置および前記車載通信機を介して前記車外通信機宛に送信し、前記中継装置は、前記車外通信機が行う前記車載装置識別情報に基づく所定の処理の結果に基づいて当該車外通信機から送信されるルーティング変更要求に応じて前記車載装置に関わるデータのルーティングが可能になるようにルーティング情報を登録し、前記車載装置は、前記所定の処理の結果に基づいて前記車外通信機から送信される、前記中継装置を含んで構築される車載ネットワークの利用を可能にする車載通信情報を受信することを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、中継装置は、車外通信機により所定の処理が行われて当該所定の処理の結果に基づいて当該車外通信機から送信されるルーティング変更要求に応じて車載装置に関わるデータのルーティングが可能になるようにルーティング情報を登録し、車載装置は、前記所定の処理の結果に基づいて車外通信機から送信される、中継装置を含んで構築される車載ネットワークの利用を可能にする車載通信情報を受信する。このため、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置を開発するメーカに対して機密性の高い車載通信情報を開示することなく、また、車載装置に対する車載通信情報の事前設定や中継装置に対する車載装置に関わるデータのルーティングを可能にするルーティング情報の事前設定をメモリに対して行うことなく、車載装置は車載ネットワークを利用して中継装置に接続された機器から車両情報の取得が可能になる。また、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置が車両の販売後または車両の開発完了後などに開発された車載装置であっても中継装置に接続された機器から車両情報を取得することができる。
【0011】
また、前記車載装置は、前記車両に後付け設置可能であるとしてもよい。
【0012】
この構成によれば、車載装置が車両に後付け設置された場合であっても、車載装置は車載ネットワークを利用して中継装置に接続された機器から車両情報の取得が可能になる。
【0013】
また、本発明に係る車両用通信制御方法は、車両に搭載される車載装置と、前記車両に搭載され、前記車載装置と通信可能に接続される中継装置と、前記車両に搭載され、前記中継装置と通信可能に接続されるとともに、車両外に設置されている車外通信機と通信可能な車載通信機とを備える車両用通信制御システムにおいて行われる車両用通信制御方法であって、前記車載装置は、当該車載装置を識別するための車載装置識別情報を前記中継装置および前記車載通信機を介して前記車外通信機宛に送信し、前記中継装置は、前記車外通信機が行う前記車載装置識別情報に基づく所定の処理の結果に基づいて当該車外通信機から送信されるルーティング変更要求に応じて前記車載装置に関わるデータのルーティングが可能になるようにルーティング情報を登録し、前記車載装置は、前記所定の処理の結果に基づいて前記車外通信機から送信される、前記中継装置を含んで構築される車載ネットワークの利用を可能にする車載通信情報を受信することを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、中継装置は、車外通信機により所定の処理が行われて当該所定の処理の結果に基づいて当該車外通信機から送信されるルーティング変更要求に応じて車載装置に関わるデータのルーティングが可能になるようにルーティング情報を登録し、車載装置は、前記所定の処理の結果に基づいて車外通信機から送信される、中継装置を含んで構築される車載ネットワークの利用を可能にする車載通信情報を受信する。このため、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置を開発するメーカに対して機密性の高い車載通信情報を開示することなく、また、車載装置に対する車載通信情報の事前設定や中継装置に対する車載装置に関わるデータのルーティングを可能にするルーティング情報の事前設定をメモリに対して行うことなく、車載装置は車載ネットワークを利用して中継装置に接続された機器から車両情報の取得が可能になる。また、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置が車両の販売後または車両の開発完了後などに開発された車載装置であっても中継装置に接続された機器から車両情報を取得することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中継装置は、車外通信機により所定の処理が行われて当該所定の処理の結果に基づいて当該車外通信機から送信されるルーティング変更要求に応じて車載装置に関わるデータのルーティングが可能になるようにルーティング情報を登録し、車載装置は、前記所定の処理の結果に基づいて車外通信機から送信される、中継装置を含んで構築される車載ネットワークの利用を可能にする車載通信情報を受信する。このため、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置を開発するメーカに対して機密性の高い車載通信情報を開示することなく、また、車載装置に対する車載通信情報の事前設定や中継装置に対する車載装置に関わるデータのルーティングを可能にするルーティング情報の事前設定をメモリに対して行うことなく、車載装置は車載ネットワークを利用して中継装置に接続された機器から車両情報の取得が可能になる。また、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置が車両の販売後または車両の開発完了後などに開発された車載装置であっても中継装置に接続された機器から車両情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用通信制御システムの構成を示すシステム構成図である。
【
図2】
図1の車両用通信制御システムにおいて行われる情報通信機器がECUから車両情報を取得する通信シーケンスを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
1.車両用通信制御システムのシステム構成
本発明の一実施形態に係る車両用通信制御システムSのシステム構成について
図1を参照しつつ説明する。
【0019】
車両Mには、CANなどを含む車載LANが構築されている。
図1に示す車両用通信制御システムSは、車両Mに搭載されるシステムであり、CANなどを含む車載LANに含まれる、ゲートウェイ1と、DLC(Data Link Connector)2と、車載通信機3と、ECU4と、情報通信機器5とを備える。また、
図1に示すデータセンタ6は、車両Mの外部に設置されている機器であり、車両用通信制御システムSが備える車載通信機3と例えば無線通信を含んで通信可能になっている。なお、ゲートウェイ1は、本発明の「中継装置」に相当し、車載通信機3は、本発明の「車載通信機」に相当し、情報通信機器5は、本発明の「車載装置」に相当し、データセンタ6は、本発明の「車外通信機」に相当し、車載LANは、本発明の「車載ネットワーク」に相当する。
【0020】
ゲートウェイ1は、通信プロトコルが異なるネットワーク間などの通信を中継する機能を備えるものである。本実施形態のゲートウェイ1は、多チャネル対応のゲートウェイであり、ゲートウェイ1には、DLC2、車載通信機3、ECU4、および、情報通信機器5が接続されている。ゲートウェイ1は、情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報(どのチャネルを利用するかなど)などの各機器間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報を登録するルーティングテーブルをメモリ(不図示)に記憶しており、メモリ(不図示)に記憶されているルーティングテーブルに登録されているルーティング情報に基づいてデータの中継を行う。本実施形態では、ゲートウェイ1は、後述するように、車載通信機3を介してデータセンタ6からルーティング変更要求を受信すると、メモリ(不図示)に記憶しているルーティングテーブルの変更を行う。
【0021】
DLC2は、ダイアグツールである車両診断機(不図示)などが接続されるコネクタであり、ゲートウェイ1に接続されている。
【0022】
車載通信機3は、例えば、車専用の通信機であるDCM(Data Communication Module)により構築されており、ゲートウェイ1に接続されているとともに、車両Mの外部に設置されているデータセンタ6などと通信を行うものである。
【0023】
ECU4は、例えば、ボディECU、VSC(Vehicle Stability Control) ECU、メータECU、ステレオカメラECU、EFI(Electronic Fuel Injection) ECUなどであり、ゲートウェイ1に接続されている。本実施形態では、ECU4は、情報通信機器5が車両情報を取得する取得先のECUであり、情報通信機器5からゲートウェイ1を介して要求された車両情報を、ゲートウェイ1を介して情報通信機器5宛に送信する。なお、ボディECU、VSC ECU、メータECU、ステレオカメラECU、EFI ECUは一般的なものであり、その詳細な説明は省略する。
【0024】
情報通信機器5は、例えば、ディスプレイオーディオ(D/A)やナビなどの車載装置であり、ゲートウェイ1に接続されている。本実施形態の情報通信機器5は、販売後の車両Mにユーザが後付けする後付け機器(社外品)である。
【0025】
情報通信機器5が車両Mに後付けされた時点では、情報通信機器5には、情報通信機器5がCANを含む車載LANの利用を可能にする車載通信情報(CAN ID、LSB(Least Significant Bit)などのスケーリング情報など)の設定が行われておらず、また、ゲートウェイ1のルーティングテーブルにはゲートウェイ1が情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報が登録されていない。このため、情報通信機器5が車両Mに後付けされた時点では、情報通信機器5とECU4とはゲートウェイ1を介しての通信を行うことができず、情報通信機器5はゲートウェイ1を介してECU4から車両情報を取得することができない。
【0026】
本実施形態では、情報通信機器5がECU4とゲートウェイ1を介して通信を行って、ゲートウェイ1を介してECU4から車両情報の取得を可能にするために、次の処理が行われる。本実施形態では、情報通信機器5はECUの車両情報としてどのようなものがあるかは分かるようになっている。
【0027】
情報通信機器5は、情報通信機器5が車両Mに後付けされた後、ペアリングスイッチの操作(データセンタ6に対して情報通信機器5および車両Mに関わるデータベースを用いた照合を要求する操作)を検出すると、ゲートウェイ1および車載通信機3を介して、情報通信機器IDおよび要求データIDをデータセンタ6宛に送信する。なお、ゲートウェイ1は情報通信機器5と車載通信機3との間のデータの中継は可能になっている。情報通信機器IDおよび要求データIDが、情報通信機器5からゲートウェイ1および車載通信機3を介してデータセンタ6へ送信される際に、車載通信機3は車両IDをデータセンタ6へ送信する。これにより、データセンタ6は、情報通信機器IDと要求データIDと車両IDとを受信することになる。ここで、情報通信機器IDは、情報通信機器5を識別するためのIDであり、本発明の「車載装置識別情報」に相当する。また、要求データIDは、ECU4を識別するとともにECU4から取得する情報を識別するためのIDである。また、車両IDは、車両MのVIN(Vehicle Identification Number:車両識別番号)である。
【0028】
データセンタ6は、受信した車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとがデータセンタ6が備えるメモリ(不図示)のデータベースに対応付けて記憶されているか否かを確認する。なお、この確認の処理が、本発明の「所定の処理」に相当する。データセンタ6は、受信した車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとがデータベースに対応付けて記憶されていることを確認できた場合には、上記の車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)、および、ルーティング変更要求(情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報をルーティングテーブルに登録してルーティングテーブルを変更する要求)を送信する。車載通信情報は、データセンタ6から車載通信機3およびゲートウェイ1を介して情報通信機器5宛に送信される。また、ルーティング変更要求は、データセンタ6から車載通信機3を介してゲートウェイ1宛に送信される。
【0029】
ゲートウェイ1は、車載通信機3を介してデータセンタ6からルーティング変更要求を受信すると、メモリ(不図示)に記憶しているルーティングテーブルにゲートウェイ1が情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報を登録して、ルーティングテーブルの変更を行う。
【0030】
情報通信機器5は、データセンタ6から、車載通信機3およびゲートウェイ1を介して、上記の車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)を受信する。
【0031】
以上が、情報通信機器5がECU4とゲートウェイ1を介して通信を行って、ゲートウェイ1を介してECU4から車両情報の取得を可能にするための一連の処理である。
【0032】
情報通信機器5は、ゲートウェイ1を介してECU4から情報を取得する場合、車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)を用いて、ゲートウェイ1を介してECU4に対して車両情報を要求する。ECU4は、ゲートウェイ1を介して情報通信機器5から要求された車両情報を、ゲートウェイ1を介して情報通信機器5宛に送信し、情報通信機器5は、ECU4に要求した車両情報を、ゲートウェイ1を介してECU4から受信する。
【0033】
データセンタ6は、上述したように、車両Mの外部に設置されている機器である。本実施形態では、データセンタ6が備えるメモリ(不図示)には、車両Mなどの車両に搭載された情報通信機器5などの情報通信機器に対して、どのECUのどの車両情報の公開を許可するかに関わる情報が記憶されている。具体的には、データセンタ6が備えるメモリ(不図示)には、車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとを対応付けたデータベースが記憶されている。
【0034】
データセンタ6は、車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとを受信し、受信した車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとがデータベースに対応付けて記憶されているか否かを確認する。つまり、車両IDで識別される車両に搭載された情報通信機器IDで識別される情報通信機器に対して、要求データIDで識別されるECUの当該要求データIDで識別される車両情報の公開を許可するか否かを確認する。
【0035】
データセンタ6は、受信した車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとが対応付けてデータベースに記憶されていることを確認できた場合、つまり、車両IDで識別される車両に搭載された情報通信機器IDで識別される情報通信機器に対して、要求データIDで識別されるECUの当該要求データIDで識別される車両情報の公開を許可することを確認した場合、上記の車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)を情報通信機器5宛に送信し、上記のルーティング変更要求をゲートウェイ1宛に送信する。
【0036】
一方、データセンタ6は、受信した車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとが対応付けてデータベースに記憶されていることを確認できなかった場合、つまり、車両IDで識別される車両に搭載された情報通信機器IDで識別される情報通信機器に対して、要求データIDで識別されるECUの当該要求データIDで識別される車両情報の公開を許可しないことを確認した場合、上記の車載通信情報、および、ルーティング変更要求を送信せず、例えば認証失敗を送信する。このため、受信した車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとがデータベースに対応付けて記憶されていることを確認できた場合のように、ゲートウェイ1はルーティングテーブルを変更することなく、情報通信機器5は上記の車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)を取得できない。
【0037】
2.車両用通信制御システムの通信シーケンス
図1の車両用通信制御システムSにおいて行われる情報通信機器5がECU4から情報を取得する通信シーケンスについて
図2を参照しつつ説明する。
【0038】
図2の通信シーケンスが開始された時点では、情報通信機器5には車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)が設定されておらず、ゲートウェイ1のルーティングテーブルには情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報が登録されていない。
【0039】
情報通信機器5は、ペアリングスイッチの操作を検出する(ステップS1)と、情報通信機器5を識別するための情報通信機器ID、および、ECU4を識別するとともにECU4から取得する車両情報を識別するための要求データIDを、データセンタ6宛に送信する。情報通信機器IDおよび要求データIDは、情報通信機器5からゲートウェイ1へ送信されてゲートウェイ1により受信され(ステップS2)、ゲートウェイ1から車載通信機3へ送信されて車載通信機3により受信される(ステップS3)。
【0040】
ゲートウェイ1から情報通信機器IDおよび要求データIDが送られてきた車載通信機3は、当該情報通信機器IDおよび当該要求データIDに加えて、車両Mを識別するための車両IDをデータセンタ6宛に送信する。車両ID、情報通信機器IDおよび要求データIDは、車載通信機3からデータセンタ6へ送信されてデータセンタ6により受信される(ステップS4)。
【0041】
データセンタ6は、ステップS4で受信した車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとが、データセンタ6が備えるメモリ(不図示)のデータベースに対応付けて記憶されているか否かを確認する(ステップS5)。
図2の通信シーケンスでは、ステップS4で受信した車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとがデータベースに対応付けて記憶されていることを確認する。つまり、車両Mに搭載された情報通信機器5に対して、当該情報通信機器5により要求されたECU4の車両情報の公開を許可することを確認する。
【0042】
データセンタ6は、ステップS4で受信した車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとの対応付けがデータベースに記憶されていることを確認できた場合、つまり、車両Mに搭載された情報通信機器5に対して、当該情報通信機器5により要求されたECU4の車両情報の公開を許可することを確認した場合、車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)を情報通信機器5宛に送信し、ルーティング変更要求をゲートウェイ1宛に送信する。車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)、および、ルーティング変更要求は、データセンタ6から車載通信機3へ送信されて車載通信機3により受信され(ステップS6)、車載通信機3からゲートウェイ1へ送信されてゲートウェイ1により受信される(ステップS7)。
【0043】
ゲートウェイ1は、ステップS7で受信したルーティング変更要求に基づいて、ゲートウェイ1が備えるメモリ(不図示)に記憶しているルーティングテーブルにゲートウェイ1が情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報を登録して、ルーティングテーブルの変更を行う(ステップS8)。
【0044】
また、ゲートウェイ1は、ステップS7で受信した車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)を情報通信機器5宛に送信する。車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)は、ゲートウェイ1から情報通信機器5へ送信されて情報通信機器5により受信される(ステップS9)。
【0045】
情報通信機器5は、ステップS9で受信した車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)に基づいて、ECU4に対して要求する車両情報を示す情報をECU4宛に送信する。当該車両情報を示す情報は、情報通信機器5からゲートウェイ1へ送信されてゲートウェイ1により受信される(ステップS10)。
【0046】
ゲートウェイ1は、情報通信機器5がECU4に対して要求する車両情報を示す情報の送受信に関わるCAN IDが正しいCAN IDであるか否かを確認する。
図2の通信シーケンスではCAN IDが正しいことを確認する。そして、ゲートウェイ1は、ルーティングテーブルに登録されているルーティング情報に基づいて、ステップS10で受信した車両情報を示す情報をECU4へ送信する。当該車両情報を示す情報は、ゲートウェイ1からECU4へ送信されてECU4により受信される(ステップS11)。なお、ゲートウェイ1は、CAN IDが正しいCAN IDでない場合には、ステップS10で受信した車両情報を示す情報をECU4へ送信しない。
【0047】
ECU4は、ステップS11で受信した情報により示される車両情報のデータ値を入手して情報通信機器5に対して応答する処理を行う(ステップS12)。ECU4は、例えばダイアグ通信などにより、車両情報のデータ値を情報通信機器5宛に送信する。当該車両情報のデータ値は、ECU4からゲートウェイ1に送信されてゲートウェイ1により受信され(ステップS13)、ルーティングテーブルに登録されているルーティング情報に基づいて、ゲートウェイ1から情報通信機器5へ送信されて情報通信機器5により受信される(ステップS14)。
【0048】
3.効果
上記した実施形態によれば、情報通信機器5は情報通信機器IDおよび要求データIDをゲートウェイ1および車載通信機3を介してデータセンタ6宛に送信し、この際、車載通信機3は車両IDをデータセンタ6宛に送信する。データセンタ6は、車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとを対応付けてデータベースに記憶されていることを確認できた場合(車両IDで識別される車両Mに搭載された情報通信機器IDで識別される情報通信機器5に対して、要求データIDで識別されるECU4の当該要求データIDで識別される車両情報の公開を許可することを確認した場合)、車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)を情報通信機器5宛に送信し、ルーティング変更要求をゲートウェイ1宛に送信する。ゲートウェイ1は、情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報をルーティングテーブルに登録し、情報通信機器5は車載通信情報を取得する。このため、情報通信機器5に対する車載通信情報の事前設定、および、ゲートウェイ1に対する情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報の事前設定を行わなくても、ゲートウェイ1の制御により、情報通信機器5はゲートウェイ1を介してECU4から車両情報を取得することができる。
【0049】
また、情報通信機器5が社外品などの車両Mに後付け可能な後付け品であっても、情報通信機器5は車載通信情報を取得することができ、ゲートウェイ1は、情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報をルーティングテーブルに登録することができる。このため、情報通信機器5に対する車載通信情報の事前設定、および、ゲートウェイ1に対する情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報の事前設定を行わなくても、ゲートウェイ1の制御により、情報通信機器5はゲートウェイ1を介してECU4から車両情報を取得することができる。
【0050】
また、情報通信機器5を開発するメーカに対してECUの車両情報としてどのようなものがあるかを公開すれば(要求データIDを公開すれば)、機密性の高い車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)を公開しなくても、情報通信機器5はゲートウェイ1を介してECU4から車両情報を取得することができる。このように、社外品などの情報通信機器5へのECU4からの車両情報の提供を、情報通信機器5の開発メータに対する気密性の高い車載通信情報などの情報の開示を抑えて実現することができる。
【0051】
また、データセンタ6のデータベースに車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとが対応付けて記憶されていない場合、情報通信機器5は車載通信情報を取得できず、ゲートウェイ1が情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報がゲートウェイ1には登録されず、情報通信機器5はECU4の車両情報を取得することができない。このように、例えば不正品などの情報通信機器5はゲートウェイ1の制御により当該情報通信機器5に公開を許可されていないECU4の車両情報を取得することができず、車両情報の保護が図られる。
【0052】
また、情報通信機器5が車両Mの販売後または車両Mの開発完了後などに開発された社外品などの情報通信機器であっても、データセンタ6のデータベースに車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとを対応付けて記憶することにより、情報通信機器5は車載通信情報を取得することができ、ゲートウェイ1は情報通信機器5とECU4との間で授受されるデータのルーティングを可能にするルーティング情報をルーティングテーブルに登録することができる。このため、情報通信機器5はECU4から車両情報を取得することができる。
【0053】
また、情報通信機器5に関して純正品と同等の機能を実現できる社外品を充実させることができ、車両用通信制御システムSを搭載する車両Mそのものの魅力を向上させることができる。
【0054】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、データセンタ6は、車両IDと情報通信機器IDと要求データIDとを対応付けたデータベースをメモリ(不図示)に記憶するとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、車両IDと情報通信機器IDとを対応付けたデータベースをメモリ(不図示)に記憶するようにしてもよく、これは情報通信機器単位でゲートウェイ1によるルーティング情報の変更や情報通信機器5による車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)の取得を行うものである。この場合、情報通信機器5は情報通信機器IDをゲートウェイ1および車載通信機3を介してデータセンタ6宛に送信する。そして、データセンタ6は、データベースに車両ID(車載通信機3がデータセンタ6宛に送信する車両ID)と情報通信機器ID(情報通信機器5がデータセンタ6宛に送信する情報通信機器ID)とが対応付けて記憶されているか否かを確認して、データベースに車両IDと情報通信機器IDとが対応付けて記憶されていることを確認できた場合にルーティング変更要求をゲートウェイ1宛に送信し、車載通信情報(CAN ID、スケーリング情報など)を情報通信機器5宛に送信する。
【0056】
また、上記の実施形態で説明した内容や上記の変形例で説明した内容を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0057】
本発明は、例えばデータセンタなどの車外の機器(車外通信機)を利用する車両用通信制御システム、および、車両用通信制御方法に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
S:車両用通信制御システム
M:車両
1:ゲートウェイ
3:車載通信機
4:ECU
5:情報通信機器
6:データセンタ