(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163306
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ヨークカバー
(51)【国際特許分類】
F16D 3/26 20060101AFI20231102BHJP
F16D 1/08 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F16D3/26 X
F16D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074116
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
(57)【要約】
【課題】ヨークを構成するヨーク基部のうち、軸方向に関して1対のヨーク腕部と反対側の端面の周縁部が人の手や足などに触れることを防止できるヨークカバーを提供する。
【解決手段】ヨークカバー1は、
ヨーク基部14の軸方向他方側部分の周囲に配置され、かつ、少なくとも該ヨーク基部14の軸方向他方側の端部を周方向に覆うカバー外周部29と、カバー外周部29の軸方向他方側の端部から径方向内側に向けて伸長し、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面31に当接するストッパ部30とを備える。カバー外周部29は、1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側に配置される部分に、軸方向一方側に向けて伸長するスナップフィット片36を有する。スナップフィット片36は、軸方向一方側の端部から径方向内側に向けて突出し、かつ、1対の張出部21a、21bに対して軸方向一方側から係合する爪部37を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの先端部の外周面と嵌合する内周面を有する筒状のヨーク基部と、該ヨーク基部の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から該ヨーク基部の軸方向一方側に伸長する1対のヨーク腕部とを備え、前記ヨーク基部は、周方向1箇所において径方向両側および軸方向他方側に開口するスリットと、軸方向他方側部分において前記スリットを挟んで対向する1対のヨークフランジ部と、該1対のヨークフランジ部を貫通する1対のボルト孔とを有し、前記1対のヨークフランジ部は、前記ヨーク基部の軸方向一方側部分よりも径方向外側に張り出した1対の張出部を有し、前記1対のボルト孔にボルトの軸部が挿通または螺合され、かつ、前記1対のヨークフランジ部を構成する一方のヨークフランジ部の外側面に前記ボルトの頭部が当接する自在継手用ヨークに組み付けられる、ヨークカバーであって、
前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の周囲に配置され、かつ、少なくとも該ヨーク基部の軸方向他方側の端部を周方向に覆うカバー外周部と、
前記カバー外周部の軸方向他方側の端部から径方向内側に向けて伸長し、前記ヨーク基部の軸方向他方側の端面に当接するストッパ部と、を備え、
前記カバー外周部は、前記1対のヨークフランジ部の径方向外側に配置される部分に、軸方向一方側に向けて伸長するスナップフィット片を有し、
前記スナップフィット片は、軸方向一方側の端部から径方向内側に向けて突出し、かつ、前記1対の張出部に対して軸方向一方側から係合する爪部を有する、
ヨークカバー。
【請求項2】
前記爪部の径方向内側面のうち軸方向一方側部分が、軸方向一方側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した一方側傾斜面により構成されている、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項3】
前記爪部の径方向内側面のうち軸方向他方側部分が、軸方向他方側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した他方側傾斜面により構成されている、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項4】
前記カバー外周部は、前記1対のヨークフランジ部を構成する他方のヨークフランジ部の外側面のうち前記ボルト孔の周囲部分において突出したボス部および/または該ボルト孔から突出した前記軸部の先端部、あるいは、前記軸部の先端部および該先端部に螺合して前記他方のヨークフランジ部の外側面に当接するナットにより構成される、凸部と整合する位置に、該凸部を径方向外側から覆う凸部覆い部を有する、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項5】
前記カバー外周部は、前記ボルトの軸方向から見て、前記ボルトの前記頭部の周囲に配置され、かつ、径方向外側面が該頭部よりも径方向外側に配置される頭部周囲部を有する、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項6】
前記カバー外周部は、軸方向一方側の端面のうち、周方向の少なくとも1箇所に、周方向に隣接する部分に比べて径方向幅が大きい幅広部を有する、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項7】
前記カバー外周部は、軸方向他方側の端部の径方向外端部に、全周にわたり尖った角部を有していない、請求項1~6のいずれかに記載のヨークカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のステアリング装置に組み込まれる自在継手を構成するヨークを覆うヨークカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のステアリング装置では、同一直線上に配置されていないステアリングシャフトと中間シャフトとのそれぞれの端部同士が、自在継手により接続されている。該自在継手を構成するヨークのうち、ステアリングシャフトの前端部に結合される後側のヨークとして、たとえば、金属製の素材に鍛造加工および切削加工などを施して造られた、ピンチボルトタイプのヨークが用いられる。
【0003】
該ヨークは、ヨーク基部と、1対のヨーク腕部とを備える。ヨーク基部は、シャフトの先端部の外周面と嵌合する内周面を有し、筒状に構成されている。1対のヨーク腕部は、ヨーク基部の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から、ヨーク基部の軸方向一方側に伸長している。また、ヨーク基部は、周方向1箇所において径方向両側および軸方向他方側に開口するスリットと、スリットを挟んで対向する1対のヨークフランジ部と、1対のヨークフランジ部を貫通する1対のボルト孔とを有する。
【0004】
このようなヨークに対してステアリングシャフトの前端部を結合する際には、ステアリングシャフトの前端部をヨーク基部の内側に、ヨーク基部の軸方向他方側から挿入する。そして、1対のボルト孔に挿通または螺合したボルトを締め付けることで、ヨーク基部の内周面を縮径し、該内周面をステアリングシャフトの前端部の外周面に圧接させる。
【0005】
従来、ヨークに対してシャフトの先端部を正規の位置関係で組み付けられるようにするために用いられるヨークカバーの構造が、各種提案されている(たとえば、特開2008-202742号公報、特開2009-108875号公報、特許第5223914号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-202742号公報
【特許文献2】特開2009-108875号公報
【特許文献3】特許第5223914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乗用車用のステアリング装置では、ステアリングシャフトと中間シャフトとを接続する自在継手は、通常、ステアリングコラムのアンダーカバーなどの内側に配置されており、車室内側に露出していない。このため、該自在継手が、たとえば運転者の足に触れたり、車室内の清掃時に人の手に触れたりすることはない。
【0008】
これに対し、商用車用のステアリング装置では、ステアリングシャフトと中間シャフトとを接続する自在継手が、車室内側に露出して配置されるケースがある。近年、このようなケースにおいて、特に、ステアリングシャフトの前端部に結合される後側のヨークのうち、ヨーク基部の軸方向他方側の端面の周縁部に存在する角部に対して、運転者の足などが触れることを十分に防止することが提案されている。
【0009】
具体的な防止策として、ヨークに組み付けられるヨークカバーを用いる方法が考えられる。しかしながら、従来構造のヨークカバーは、ヨークに対するシャフトの端部の誤組み付けを防止することに特化した構造を有しており、ヨーク基部の軸方向他方側の端面の周縁部に存在する角部に対して、運転者の足などが触れることを十分に防止できる構造を有していない。すなわち、従来構造のヨークカバーをヨークに組み付けた状態では、ヨーク基部の軸方向他方側の端面の周縁部に存在する角部のうち、少なくとも周方向の一部分が、ヨークカバーの外部に露出する。
【0010】
本発明は、ヨークを構成するヨーク基部のうち、軸方向に関して1対のヨーク腕部と反対側の端面の周縁部が人の手や足などに触れることを防止できるヨークカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様のヨークカバーが組み付けられる自在継手用ヨークは、シャフトの先端部の外周面と嵌合する内周面を有する筒状のヨーク基部と、該ヨーク基部の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から該ヨーク基部の軸方向一方側に伸長する1対のヨーク腕部とを備え、前記ヨーク基部は、周方向1箇所において径方向両側および軸方向他方側に開口するスリットと、軸方向他方側部分において前記スリットを挟んで対向する1対のヨークフランジ部と、該1対のヨークフランジ部を貫通する1対のボルト孔とを有し、前記1対のヨークフランジ部は、前記ヨーク基部の軸方向一方側部分よりも径方向外側に張り出した1対の張出部を有し、前記1対のボルト孔にボルトの軸部が挿通または螺合され、かつ、前記1対のヨークフランジ部を構成する一方のヨークフランジ部の外側面に前記ボルトの頭部が当接する。
【0012】
本発明の一態様のヨークカバーは、前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の周囲に配置され、かつ、少なくとも該ヨーク基部の軸方向他方側の端部を周方向に覆うカバー外周部と、前記カバー外周部の軸方向他方側の端部から径方向内側に向けて伸長し、前記ヨーク基部の軸方向他方側の端面に当接するストッパ部とを備える。前記カバー外周部は、前記1対のヨークフランジ部の径方向外側に配置される部分に、軸方向一方側に向けて伸長するスナップフィット片を有する。前記スナップフィット片は、軸方向一方側の端部から径方向内側に向けて突出し、かつ、前記1対の張出部に対して軸方向一方側から係合する爪部を有する。
【0013】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記爪部の径方向内側面のうち軸方向一方側部分が、軸方向一方側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した一方側傾斜面により構成されている。
【0014】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記爪部の径方向内側面のうち軸方向他方側部分が、軸方向他方側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した他方側傾斜面により構成されている。
【0015】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記カバー外周部は、前記1対のヨークフランジ部を構成する他方のヨークフランジ部の外側面のうち前記ボルト孔の周囲部分において突出したボス部および/または該ボルト孔から突出した前記軸部の先端部、あるいは、前記軸部の先端部および該先端部に螺合して前記他方のヨークフランジ部の外側面に当接するナットにより構成される、凸部と整合する位置に、該凸部を径方向外側から覆う凸部覆い部を有する。
【0016】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記カバー外周部は、前記ボルトの軸方向から見て、前記ボルトの前記頭部の周囲に配置され、かつ、径方向外側面が該頭部よりも径方向外側に配置される頭部周囲部を有する。
【0017】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記カバー外周部は、軸方向一方側の端面のうち、周方向の少なくとも1箇所に、周方向に隣接する部分に比べて径方向幅が大きい幅広部を有する。
【0018】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記カバー外周部は、軸方向他方側の端部の径方向外端部に、全周にわたり尖った角部を有していない。すなわち、該一態様のヨークカバーでは、前記カバー外周部は、軸方向他方側の端部の径方向外端部に角部を有していないか、あるいは、角部を有する場合でも、該角部はR形状を有する。該R形状の曲率半径は、1.0mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。
【0019】
本発明は、上述した各一態様のヨークカバーの構成を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様のヨークカバーによれば、ヨークを構成するヨーク基部のうち、軸方向に関して1対のヨーク腕部と反対側の端面の周縁部が人の手や足などに触れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の第1例のヨークカバーが組み付けられるステアリング装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1例のヨークカバーおよびボルトを組み付けたヨークを軸方向一方側から見た斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、第1例のヨークカバーおよびボルトを組み付けたヨークの側面図であり、
図3(b)は、該ヨークを
図3(a)の反対側から見た側面図である。
【
図4】
図4(a)は、
図3(a)の上側から見た図であり、
図4(b)は、
図3(a)の下側から見た図である。
【
図5】
図5(a)は、
図3(a)のA-A断面図であり、
図5(b)は、
図3(a)の右側(軸方向他方側)から見た図である。
【
図6】
図6は、第1例のヨークカバーを軸方向一方側から見た斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、第1例のヨークカバーの側面図であり、
図7(b)は、該ヨークカバーを
図7(a)の反対側から見た側面図である。
【
図8】
図8(a)は、
図7(a)の上側から見た図であり、
図8(b)は、
図7(a)の下側から見た図である。
【
図9】
図9(a)は、
図7(a)の左側(軸方向一方側)から見た図であり、
図9(b)は、
図7(a)の右側(軸方向他方側)から見た図である。
【
図10】
図10(a)および
図10(b)は、第1例のヨークカバーを射出成形により造る作業を工程順に示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態の第2例のヨークカバーおよびボルトを組み付けたヨークを軸方向一方側から見た斜視図である。
【
図12】
図12(a)は、第2例に関する、
図3(a)の右半部に相当する図であり、
図12(b)は、第2例に関する、
図5(a)に相当する図である。
【
図13】
図13は、第2例のヨークカバーを軸方向一方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、
図1~
図10を用いて説明する。
【0023】
図1は、本例のヨークカバー1(
図2~
図5(b)参照)が組み付けられる自動車用のステアリング装置2を模式的に示す図である。
【0024】
本例における以下の説明において、前後方向は、車両の前後方向を意味し、上下方向は、車両の上下方向を意味し、左右方向は、車両の幅方向を意味する。
【0025】
本例のステアリング装置2は、ステアリングホイール3と、ステアリングシャフト4と、ステアリングコラム5と、1対の自在継手6a、6bと、中間シャフト7と、ステアリングギヤユニット8とを備える。
【0026】
運転者が回転操作するステアリングホイール3は、ステアリングシャフト4の後端部に取り付けられている。ステアリングシャフト4は、車体に支持されたステアリングコラム5の内側に、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト4の前端部は、自在継手6a、中間シャフト7、および別の自在継手6bを介して、ステアリングギヤユニット8のピニオンシャフト9に接続されている。ピニオンシャフト9は、ステアリングギヤユニット8のラック10に噛合している。このため、運転者がステアリングホイール3を回転操作すると、ステアリングホイール3の回転は、ピニオンシャフト9に伝達される。そして、ピニオンシャフト9の回転が、ラック10の直線運動に変換される。この結果、ラック10の両端部に連結された1対のタイロッド11が押し引きされ、左右の操舵輪12にステアリングホイール3の回転操作量に応じた舵角が付与される。
【0027】
図示は省略するが、ステアリング装置2は、ステアリングホイール3の回転操作に必要な力を軽減するために、ステアリングシャフト4、ピニオンシャフト9、ラック10などのいずれかの操舵力伝達部材に、電動式あるいは油圧式のアシスト装置からアシスト駆動力を付与することができる。
【0028】
本例のヨークカバー1は、自在継手6aを構成する一方のヨーク13、具体的には、ステアリングシャフト4の前端部に接続される一方のヨーク13に組み付けられる。自在継手6aは、一方のヨーク13と、中間シャフト7の後端部に接続される不図示の他方のヨークとを、不図示の十字軸を介して接続することにより構成される。
【0029】
ヨーク13およびヨークカバー1に関する以下の説明において、軸方向一方側は、
図3(a)、
図4(a)、
図4(b)、
図7(a)、
図8(a)、および
図8(b)の左側であり、軸方向他方側は、これらの図の右側である。
【0030】
本例のヨーク13は、
図2~
図5(b)に示すように、金属製の素材に鍛造加工および切削加工を施すことにより造られており、筒状のヨーク基部14と、1対のヨーク腕部15とを備える。1対のヨーク腕部15は、ヨーク基部14の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から、ヨーク基部14の軸方向一方側に伸長している。1対のヨーク腕部15を構成するそれぞれのヨーク腕部15は、先端部に互いに同軸に配置された円孔16を有する。これらの円孔16の内側には、前記十字軸の端部がニードル軸受を介して回転自在に支持される。
【0031】
ヨーク基部14は、ステアリングシャフト4(
図3(a)参照)の先端部である前端部の外周面17と嵌合する内周面18を有する。本例では、ステアリングシャフト4の前端部の外周面17に雄セレーションが形成されており、かつ、ヨーク基部14の内周面18に、該雄セレーションと係合可能な雌セレーションが形成されている。
【0032】
ヨーク基部14は、軸方向他方側の半部の周方向1箇所において、径方向両側および軸方向他方側に開口するスリット19を有する。
【0033】
ヨーク基部14は、スリット19を挟んで対向する1対のヨークフランジ部20a、20bを有する。1対のヨークフランジ部20a、20bは、径方向外側部に、ヨーク基部14の軸方向一方側の半部よりも径方向外側に張り出した1対の張出部21a、21bを有する。
【0034】
ヨーク基部14は、1対のヨークフランジ部20a、20bを貫通する1対のボルト孔22a、22bを有する。一方(
図4(a)の下側、
図5(a)の右側、
図5(b)の左側)のヨークフランジ部20aを貫通する一方のボルト孔22aおよび他方(
図4(a)の上側、
図5(a)の左側、
図5(b)の右側)のヨークフランジ部20bを貫通する他方のボルト孔22bは互いに同軸に配置されている。1対のボルト孔22a、22bの少なくとも一部分は、1対の張出部21a、21bに形成されており、ヨーク基部14の軸方向一方側の半部よりも径方向外側に位置している。本例では、一方のボルト孔22aは、ボルト23の軸部24を挿通するための通孔により構成されている。他方のボルト孔22bは、ボルト23の軸部24を螺合するための雌ねじ孔により構成されている。
【0035】
一方のヨークフランジ部20aの外側面のうち、一方のボルト孔22aの開口部の周囲部分は、ボルト23の頭部25の内側面が当接する座面として用いられる。他方のヨークフランジ部20bは、外側面のうち、他方のボルト孔22bの周囲部分に、他の部分よりもボルト孔22bの軸方向に突出した円筒状のボス部26を有する。
【0036】
本発明のヨークカバーを取り付けるヨークとして、1対のボルト孔を構成するそれぞれのボルト孔が通孔により構成されたヨークを用いることもできる。この場合には、他方のヨークフランジの外側面のうち、他方のボルト孔の開口部の周囲部分にボス部を設けず、他方のボルト孔から突出したボルトの軸部の先端部に、ナットを螺合する。そして、他方のヨークフランジの外側面のうち、他方のボルト孔の開口部の周囲部分を、ナットの内側面が当接する座面として用いる。本発明のヨークカバーを取り付けるヨークとして、ヨーク基部の周方向に関する1対のヨーク腕部の配置の位相が、本例のヨーク13に対して任意の角度(たとえば90゜程度)ずれたヨークを用いることもできる。
【0037】
ヨーク13にステアリングシャフト4(
図3(a)参照)の前端部が結合された状態で、ステアリングシャフト4の前端部は、ヨーク基部14の内側に、ヨーク基部14の軸方向他方側から挿入されている。ステアリングシャフト4の前端部の外周面の周方向1箇所に備えられた切り欠き状のボルト係合部27が、1対のボルト孔22a、22bに整合する位置に配置されている。1対のボルト孔22a、22bに、ボルト23の軸部24が挿通または螺合されている。具体的には、一方のボルト孔22aに挿通したボルト23の軸部24が、他方のボルト孔22bに螺合されている。軸部24の中間部が、ボルト係合部27に係合している。これにより、ステアリングシャフト4の前端部がヨーク基部14の内側から軸方向に抜け出ることを阻止されている。ボルト23の頭部25の内側面が、一方のヨークフランジ部20aの外側面に当接した状態で、ボルト23が締め付けられている。これにより、ヨーク基部14の内周面18が縮径し、該内周面18がステアリングシャフト4の前端部の外周面17に圧接している。具体的には、内周面18に備えられた雌セレーションが外周面17に備えられた雄セレーションに強く係合している。これにより、ヨーク13にステアリングシャフト4の前端部がトルク伝達可能に結合されている。
【0038】
さらに、この状態で、
図4(a)、
図4(b)、
図5(a)、
図5(b)に示すように、ボルト23の軸部24の先端部がボス部26の外側に少しだけ突出している。本例では、これらのボス部26および軸部24の先端部が凸部28を構成する。なお、本発明を実施する場合には、ボス部26を省略し、他方のボルト孔22bから突出した軸部24の先端部により、凸部を構成することもできる。さらに、本発明を実施する場合で、前述したように、ボルトの軸部の先端部にナットを螺合する構成を採用する場合には、これらの軸部の先端部およびナットが凸部を構成する。
【0039】
本例のヨークカバー1は、
図2~
図5(b)に示すように、ヨーク13に取り付けられる。
図6(a)~
図9(b)は、本例のヨークカバー1を、単品の状態で示す図である。
【0040】
本例のヨークカバー1は、全体が合成樹脂により一体に造られており、カバー外周部29と、ストッパ部30とを備える。
【0041】
カバー外周部29は、ヨーク基部14の軸方向他方側部分の周囲に配置され、かつ、少なくともヨーク基部14の軸方向他方側の端部を周方向に覆う。本発明を実施する場合、カバー外周部は、少なくともヨーク基部14の軸方向他方側の端部を全周にわたり覆っていることが好ましい。ただし、カバー外周部のうち、ヨーク基部の軸方向他方側の端部を周方向に覆う部分の一部に、切り欠きや孔などを形成することもできる。ストッパ部30は、カバー外周部29の軸方向他方側の端部から径方向内側に向けて伸長し、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面31に当接することで、ヨーク13に対するヨークカバー1の軸方向位置決めを図る部分である。
【0042】
本例では、カバー外周部29は、全体が筒状に構成されている。カバー外周部29は、軸方向から見て、ヨーク基部14の外周面に概ね沿った形状、すなわち、スリット19側が略矩形で、スリット19と反対側が半円筒形である形状を有する。カバー外周部29は、ボルト23が取り付けられたヨーク13の軸方向他方側部分に、がたつきなく外嵌される。
【0043】
カバー外周部29は、軸方向他方側の端部に、全周にわたりつながった環状部32を有する。環状部32は、ヨーク基部14の軸方向他方側の端部の周囲を全周にわたり覆うように配置され、より具体的には、ヨーク基部14の軸方向他方側の端縁まで覆うように配置されている。本例では、環状部32は、ヨーク基部14の軸方向他方側部分のうち、ボルト23の頭部25よりも軸方向他方側に位置する部分を全周にわたり覆っている。本発明を実施する場合には、ヨーク基部14の軸方向他方側部分のうち、環状部により径方向外側から全周にわたり覆う部分の軸方向範囲を、本例よりも広く、または、狭くすることもできる。本例では、環状部32の軸方向他方側の端部は、外周面に後述する面取り部51を有し、かつ、1/4円弧形の断面形状を有する湾曲部により構成されている。該湾曲部の軸方向他方側の端縁、すなわち、カバー外周部29の軸方向他方側の端縁は、ヨーク基部14の軸方向他方側の端縁よりも軸方向他方側に配置される。
【0044】
カバー外周部29は、環状部32よりも軸方向一方側に位置する軸方向範囲の周方向2箇所に、それぞれが軸方向一方側に開口する切り欠き33、34を有する。
【0045】
一方の切り欠き33は、周方向に関して、一方のヨークフランジ部20aの径方向外側面の幅方向外側部に整合する位置から、ボルト23の頭部25に整合する位置までの、広い周方向範囲に存在する。ボルト23の頭部25は、一方の切り欠き33の内側に配置される。一方の切り欠き33の軸方向他方側の端部である奥端部のうち、ボルト23の頭部25と整合する部分は、頭部25の外周部に沿って湾曲した円弧状の凹部35により構成されている。頭部25の一部は、凹部35の内側に配置されている。
【0046】
他方の切り欠き34は、周方向に関して、他方のヨークフランジ部20bの径方向外側面の幅方向中間部に整合する位置に存在する。
【0047】
カバー外周部29は、1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側に配置される部分であって、2つの切り欠き33、34の間に挟まれた部分に、軸方向一方側に向けて伸長するスナップフィット片36を有する。スナップフィット片36は、軸方向一方側の端部から径方向内側に向けて突出する爪部37を有する。爪部37は、1対のヨークフランジ部20a、20bの1対の張出部21a、21bに対して、軸方向一方側から係合する。これにより、ヨークカバー1が、ヨーク13に対し軸方向他方側に変位して脱落することを防止される。
【0048】
本発明を実施する場合、スナップフィット片の爪部の形状は、1対の張出部に対して軸方向一方側から係合させることができる限り任意であるが、本例では、爪部37は、ボルト23の軸方向から見て、
図3(a)に示すように、三角形状を有する。
【0049】
すなわち、爪部37の径方向内側面のうち、軸方向一方側部分は、軸方向一方側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した一方側傾斜面38により構成されている。本例では、一方側傾斜面38は、平坦面により構成されているが、凹曲面または凸曲面により構成することもできる。一方側傾斜面38は、カバー外周部29をヨーク基部14の周囲に軸方向他方側から差し込む際に、爪部37が1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側面に乗り上がるための案内面として機能する部分である。
【0050】
爪部37の径方向内側面のうち、軸方向他方側部分は、軸方向他方側に向かうにしたがって径方向外側に向かう方向に傾斜した他方側傾斜面39により構成されている。他方側傾斜面39の軸方向他方側の端部は、スナップフィット片36の径方向内側面のうち、爪部37よりも軸方向他方側に位置する部分の軸方向一方側の端部に接続されている。本例では、他方側傾斜面39は、凹曲面により構成されているが、平坦面または凸曲面により構成することもできる。本例では、他方側傾斜面39が、1対のヨークフランジ部20a、20bの1対の張出部21a、21bに対して当接する。本例では、一方側傾斜面38と他方側傾斜面39とが互いに隣接して配置されているが、一方側傾斜面38と他方側傾斜面39との間に、軸方向に伸長する平坦面などを設けることもできる。
【0051】
本例では、カバー外周部29は、凸部28と整合する位置に、凸部28を径方向外側から覆う凸部覆い部40を有する。
図5(a)および
図5(b)に示すように、凸部覆い部40は、カバー外周部29のうち、周方向に隣接する部分に比べて径方向外側に張り出している。本発明を実施する場合、凸部覆い部の形状は、凸部を径方向外側から覆うことができる限り任意であるが、本例では、凸部覆い部40は、軸方向から見て、台形形状を有する。本発明を実施する場合には、凸部覆い部40を省略し、凸部28をヨークカバー1の外部に露出させることもできる。
【0052】
本例では、カバー外周部29は、軸方向一方側の端面のうち、スナップフィット片36と径方向反対側に位置する部分に、周方向に隣接する部分に比べて径方向幅が大きい幅広部41を有する。幅広部41は、周方向に隣接する部分に比べて、径方向外側にのみ張り出している。本例では、幅広部41を構成するために、カバー外周部29の軸方向一方側の端部のうち、スナップフィット片36と径方向反対側に位置する部分から径方向外側に向けて突出する突起50を設けている。そして、この突起50の軸方向一方側の端面を、幅広部41の一部としている。突起50の径方向外側面は、
図3(a)に示すように、軸方向他方側に向かうにしたがって径方向内側に向かう方向に傾斜している。本例では、幅広部41を、後述する押し出しピンにより押圧する箇所として用いる。本発明を実施する場合には、軸方向一方側の端面に幅広部を構成する要素については任意の構造を採用できる。たとえば、突起50に代えて、径方向内側に向けて突出し、かつ、軸方向に伸長する突条を設けて、該突条の軸方向一方側の端面を幅広部の一部とすることもできる。
【0053】
本発明を実施する場合には、カバー外周部として、環状部32、および、環状部32の周方向一部から軸方向一方側に伸長するスナップフィット片36のみからなる構成を採用することもできる。
【0054】
本例では、ストッパ部30は、カバー外周部29の軸方向他方側の端部の全周から径方向内側に向けて伸長した内向フランジ状に構成されている。ストッパ部30は、軸方向から見て、スリット19側が略矩形で、スリット19と反対側が半円形の内周形状を有する。本発明を実施する場合には、ストッパ部を、周方向の1箇所または複数箇所にのみ設けることもできる。ストッパ部の形状は、ステアリングシャフトの前端部との干渉を避けることができる限り、任意の形状を採用することができる。
【0055】
本例では、カバー外周部29は、軸方向他方側の端部の径方向外端部に、全周にわたり尖った角部を有していない。
【0056】
具体的には、本例では、カバー外周部29の外周面は、軸方向他方側から見て、すなわち、
図5(b)において、上端部の左右方向両側の端部、および、凸部覆い部40の先端部(右端部)の上下両側の端部に、角部を有している。ただし、これらの角部は尖っておらず、曲率半径が大きいR形状を有している。該R形状の曲率半径は、2.5mm以上であることが好ましく、5.0mm以上であることがより好ましい。
【0057】
カバー外周部29を構成する環状部32の外周面の軸方向他方側の端部に、曲率半径が大きいR形状を有する面取り部51が設けられている。該R形状の曲率半径は、1.0mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。面取り部51の径方向内端部は、ストッパ部30の軸方向他方側の側面の径方向外端部に接続されている。
【0058】
本例の構造では、たとえば、ヨーク13にヨークカバー1を組み付けた後に、ヨーク13に対してステアリングシャフト4の前端部を、ボルト23を用いて結合することができる。
【0059】
ヨーク13にヨークカバー1を組み付ける際には、カバー外周部29を、ヨーク基部14の周囲に軸方向他方側から差し込む。そして、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面31にストッパ部30を当接させ、かつ、爪部37を、1対のヨークフランジ部20a、20bの1対の張出部21a、21bに対して、軸方向一方側から係合させる。
【0060】
本例では、カバー外周部29を、ヨーク基部14の周囲に軸方向他方側から差し込む際に、スナップフィット片36は、爪部37の一方側傾斜面38が1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側面の軸方向他方側の端縁部に案内されることで径方向外側に弾性変形し、爪部37が1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側面に乗り上がる。このため、カバー外周部29をヨーク基部14の周囲に軸方向他方側から差し込む作業を容易に行うことができる。スナップフィット片36は、爪部37が1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側面を軸方向に通過した段階で、径方向内側に弾性的に復元する。これにより、爪部37が、1対のヨークフランジ部20a、20bの1対の張出部21a、21bに対して、軸方向一方側から係合する。
【0061】
本発明を実施する場合には、爪部が、差し込み時の案内面となる一方側傾斜面を備えていない構成を採用することもできる。この場合には、たとえば、カバー外周部をヨーク基部の周囲に軸方向他方側から差し込む際に、作業者の手でスナップフィット片を径方向外側に弾性変形させることができる。
【0062】
ヨークカバー1が組み付けられたヨーク13に対して、ステアリングシャフト4の前端部を結合する際には、まず、ステアリングシャフト4の前端部を、ヨーク基部14の内側に軸方向他方側から挿入し、ステアリングシャフト4の前端部の外周面の周方向1箇所に備えられたボルト係合部27を、1対のボルト孔22a、22bに整合する位置に配置する。次いで、一方のボルト孔22aに挿通したボルト23の軸部24を、他方のボルト孔22bに螺合し、かつ、軸部24の中間部を、ステアリングシャフト4のボルト係合部27に係合させる。そして、ボルト23の頭部25の内側面を、一方のヨークフランジ部20aの外側面に当接させた状態で、ボルト23を締め付ける。これにより、ヨーク基部14の内周面18を縮径させ、内周面18に備えられた雌セレーションを、外周面17に備えられた雄セレーションに強く係合させる。
【0063】
なお、本例のヨークカバー1は、ヨーク13に対してステアリングシャフト4の前端部を、ボルト23を用いて結合した後に、ヨーク13に対して取り付けることもできる。この場合には、予め、ステアリングシャフト4のうち、前端部よりも後側に位置する部分の周囲に、ヨークカバー1を配置しておく。そして、ヨーク13に対してステアリングシャフト4の前端部を、ボルト23を用いて結合した後、カバー外周部29を、ヨーク基部14の周囲に軸方向他方側から差し込むことで、ヨークカバー1をヨーク13に対して取り付ける。
【0064】
本例のヨークカバー1は、たとえば、
図10(a)に示すような、第1金型42および第2金型43を備えた射出成形装置を用いて造ることができる。第1金型42は、ヨークカバー1の内形形状(切り欠き33、34の内周縁形状を含む)を成形する凸形状の内形成形部44を有する。第2金型43は、ヨークカバー1の外形形状を成形する凹形状の外形成形部45を有する。第1金型42と第2金型43とは、ヨークカバー1の軸方向に関する相対移動が可能である。
【0065】
ヨークカバー1の射出成形を行う際には、まず、
図10(a)に示すように、第1金型42の内形成形部44と第2金型43の外形成形部45との間に画成されたヨークカバー1を成形するためのキャビティ内に、不図示のゲートを通じて、加熱溶融した樹脂を流し込む。そして、該樹脂をキャビティ内で冷却固化させることにより、ヨークカバー1を成形する。
【0066】
次いで、
図10(b)に示すように、第2金型43を第1金型42に対して軸方向に遠ざける(あるいは、第1金型42を第2金型43に対して軸方向に遠ざける)ことにより離型する。本例では、ヨークカバー1のうち、軸方向に関してストッパ部30と爪部37との間に挟まれた部分がアンダーカット部46となっている。このため、離型後のヨークカバー1は、アンダーカット部46と内形成形部44との係合に基づいて、内形成形部44側に残る。
【0067】
次いで、第1金型42に備えられた不図示の押し出しピンにより、ヨークカバー1を軸方向他方側に向けて押圧することにより、ヨークカバー1を内形成形部44に対し軸方向他方側に移動させることで、ヨークカバー1を内形成形部44から分離する。
【0068】
このようなヨークカバー1の分離作業を行う際に、押し出しピンによりヨークカバー1を押圧する箇所は、該作業においてヨークカバー1が破損するなどの不都合が生じない限り、特に限定されない。本例では、押し出しピンによりヨークカバー1を押圧する箇所を、
図9(a)において、黒丸で示した複数箇所(P部)としている。特に、本例では、該箇所の1つとして、カバー外周部29の軸方向一方側の端面を選択している。より具体的には、カバー外周部29の軸方向一方側の端面のうち、幅広部41を選択している。このため、押し出しピンにより押圧される力によって、カバー外周部29の軸方向一方側の端部が変形するなどの不都合が生じることを防止できる。なお、押し出しピンによりヨークカバー1を押圧する箇所として、カバー外周部29の軸方向一方側の端面の周方向複数箇所を選択することもできる。この場合には、これらの箇所のそれぞれに幅広部を設けることができる。
【0069】
本例では、上述のようにヨークカバー1を内形成形部44に対し軸方向他方側に移動させる際に、スナップフィット片36は、爪部37の他方側傾斜面39が、内形成形部44のアンダーカット部成形部47の軸方向一方側の端部に案内されることで径方向外側に弾性変形し、爪部37がアンダーカット部成形部47の径方向外側面に乗り上がる。このため、ヨークカバー1を内形成形部44に対し軸方向他方側に移動させる作業を円滑に行うことができる。したがって、本例のヨークカバー1は、簡単な金型構造で成形することができ、その分、製造コストを抑えることができる。
【0070】
本発明を実施する場合には、爪部が他方側傾斜面を備えておらず、爪部の軸方向他方側の端部に、軸方向他方側を向いた段差面を有する構成を採用することもできる。この場合には、ヨークカバーを内形成形部に対し軸方向他方側に移動させる際に、治具などを用いて、スナップフィット片を径方向外側に弾性変形させることで、爪部をアンダーカット部成形部の径方向外側面に乗り上がらせればよい。
【0071】
本例のヨークカバー1によれば、ヨーク13を構成するヨーク基部14の軸方向他方側の端面31の周縁部に存在する角部52(
図3~
図5参照)が人の手や足などに触れることを防止できる。
【0072】
すなわち、ヨーク13の製造において、端面31は切削加工により仕上げられるため、端面31の周縁部に存在する角部52は、尖った角部になる。したがって、このような角部52が人の手や足などに触れることを防止できるようにすることが望ましい。本例のヨークカバー1は、ヨーク基部14の軸方向他方側の端部の周囲を全周にわたり覆い、かつ、軸方向他方側の端面がヨーク基部14の軸方向他方側の端面よりも軸方向他方側に位置するように配置されるカバー外周部29を備える。このため、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面31の周縁部に存在する角部52が、カバー外周部29の外部に露出せず、カバー外周部29の径方向内側に配置される。したがって、該角部52が人の手や足などに触れることを防止できる。具体的には、該角部52が、運転者の足に触れたり、車室内の清掃時に人の手に触れたり、ヨーク13にヨークカバー1を組み付けた後、ヨーク13に対してステアリングシャフト4の前端部を結合する作業者の手に触れたりすることを防止できる。
【0073】
本例では、カバー外周部29は、軸方向他方側の端部の径方向外端部に、全周にわたり尖った角部を有していない。このため、カバー外周部29の軸方向他方側の端部の径方向外端部に運転者の足などが触れた場合の安全性を確保することができる。
【0074】
本例では、カバー外周部29は、凸部28と整合する位置に、凸部28を径方向外側から覆う凸部覆い部40を有する。このため、凸部28に、運転者の足などが触れることを防止できる。なお、本発明を実施する場合には、カバー外周部29における切り欠き33の周縁部のうち、ボルト23の頭部25の周囲に位置する部分からボルト23の軸方向に関して外側に突出する壁板部を設けることもできる。そして、該壁板部の存在に基づいて、運転者の足などが頭部25に触れにくくすることもできる。
【0075】
本例では、ヨークカバー1の環状部32およびスナップフィット片36により、ヨーク13のスリット19の径方向外側の開口部が覆われる。このため、ヨーク13にヨークカバー1を組み付けた後、ヨーク13に対してステアリングシャフト4の前端部を結合する作業者の手が、スリット19の径方向外側の開口縁部に触れたりすることを防止できる。すなわち、ヨーク13の製造において、スリット19は切削加工により仕上げられるため、スリット19の径方向外側の開口縁部は、尖った角部になる。本例のヨークカバー1によれば、このような角部に作業者の手が触れることを防止できる。
【0076】
特開2008-202742号公報には、ヨークに対するヨークカバーの軸方向他方側への抜け止めを行うために、ヨークカバーの軸方向他方側部分から軸方向一方側に向けて伸長するスナップフィット片の先端部の爪部を、ヨーク基部の軸方向一方側の端縁部のうち、1対のヨーク腕部から周方向に外れた部分に軸方向一方側から係合させる構造が記載されている。しかしながら、この構造では、スナップフィット片の長さが長くなり、また、ヨーク基部に対する1対のヨーク腕部の周方向位置が変わると、これに応じて、スナップフィット片の周方向位置を変更する必要がある。これに対して、本例では、ヨーク13に対するヨークカバー1の軸方向他方側への抜け止めを行うために、ヨークカバー1の軸方向他方側部分から軸方向一方側に向けて伸長するスナップフィット片36の先端部の爪部37を、1対のヨークフランジ部20a、20bの1対の張出部21a、21bに対して、軸方向一方側から係合させる。このため、特開2008-202742号公報に記載された構造に比べて、スナップフィット片36の長さを小さくすることができる。また、ヨーク基部14に対する1対のヨーク腕部15の周方向位置が異なる複数のヨークに対して、スナップフィット片36の周方向位置を変更することなく、ヨークカバー1を取り付けることができる。
【0077】
[第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、
図11~
図14(b)を用いて説明する。
【0078】
本例では、ヨークカバー1aのカバー外周部29aのうち、スナップフィット片36に対してボルト23の頭部25側に隣接する切り欠き33aは、一方のヨークフランジ部20aの径方向外側面の幅方向中間部に整合する位置に存在する。すなわち、本例では、該切り欠き33aの周方向幅が第1例に比べて小さい。
【0079】
本例では、カバー外周部29aは、ボルト23の頭部25と整合する位置に、軸方向一方側に開口する切り欠き48を有する。
図12(a)に示すように、ボルト23の軸方向から見て、頭部25は、切り欠き48の内側に位置し、カバー外周部29aによって径方向外側から覆われていない。カバー外周部29aは、切り欠き48の周囲部分に、ボルト23の軸方向から見て、ボルト23の頭部25の周囲に配置される頭部周囲部49を有する。頭部周囲部49は、
図12(b)に示すように、径方向外側面が頭部25よりも径方向外側に配置される。このため、本例では、頭部周囲部49の存在に基づいて、頭部25に、運転者の足などがぶつかることを防止できる。
【0080】
本例のヨークカバー1aを射出成形により造る際も、カバー外周部29aの軸方向一方側の端面の周方向複数箇所、たとえば
図14(b)に示した複数のα部を、押し出しピンによる押圧部とすることができる。この場合、α部のそれぞれに幅広部を設けることができる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【符号の説明】
【0081】
1、1a ヨークカバー
2 ステアリング装置
3 ステアリングホイール
4 ステアリングシャフト
5 ステアリングコラム
6a、6b 自在継手
7 中間シャフト
8 ステアリングギヤユニット
9 ピニオンシャフト
10 ラック
11 タイロッド
12 操舵輪
13 ヨーク
14 ヨーク基部
15 ヨーク腕部
16 円孔
17 外周面
18 内周面
19 スリット
20a、20b ヨークフランジ部
21a、21b 張出部
22a、22b ボルト孔
23 ボルト
24 軸部
25 頭部
26 ボス部
27 ボルト係合部
28 凸部
29、29a カバー外周部
30 ストッパ部
31 端面
32 環状部
33、33a 切り欠き
34 切り欠き
35 凹部
36 スナップフィット片
37 爪部
38 一方側傾斜面
39 他方側傾斜面
40 凸部覆い部
41 幅広部
42 第1金型
43 第2金型
44 内形成形部
45 外形成形部
46 アンダーカット部
47 アンダーカット部成形部
48 切り欠き
49 頭部周囲部
50 突起
51 面取り部
52 角部