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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163307
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ヨークカバー
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/26 20060101AFI20231102BHJP
   F16D 1/08 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F16D3/26 X
F16D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074117
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小池 康男
(57)【要約】
【課題】ヨークを構成するヨーク基部のうち、軸方向に関して1対のヨーク腕部と反対側の端面の周縁部が人の手や足などに触れることを防止できるヨークカバーを提供する。
【解決手段】ヨークカバー1は、第1カバー板部29と、それぞれの基端部が第1カバー板部29の幅方向両側の端部に揺動可能に接続され、かつ、該揺動に基づいてそれぞれの先端部を互いに遠近動させることが可能な1対の第2カバー板部30a、30bとを備える。1対の第2カバー板部30a、30bの先端部を互いに近づけて係合させることにより、第1カバー板部29と1対の第2カバー板部30a、30bとが筒状に連結された筒体をなし、径方向内側に配置空間が形成される閉状態と、1対の第2カバー板部30a、30bの先端部を互いに遠ざけて配置空間を開放する開状態とを取ることができる。閉状態において、配置空間内にヨーク基部14の軸方向他方側部分が配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの先端部の外周面と嵌合する内周面を有する筒状のヨーク基部と、該ヨーク基部の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から該ヨーク基部の軸方向一方側に伸長する1対のヨーク腕部とを備え、前記ヨーク基部は、周方向1箇所において径方向両側および軸方向他方側に開口するスリットと、軸方向他方側部分において前記スリットを挟んで対向する1対のヨークフランジ部と、該1対のヨークフランジ部を貫通する1対のボルト孔とを有し、前記1対のボルト孔にボルトの軸部が挿通または螺合され、かつ、前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面の一部である、前記1対のヨークフランジ部を構成する一方のヨークフランジ部の幅方向外側面に前記ボルトの頭部が当接する自在継手用ヨークに組み付けられる、ヨークカバーであって、
第1カバー板部と、それぞれの基端部が前記第1カバー板部の幅方向両側の端部に揺動可能に接続され、かつ、該揺動に基づいてそれぞれの先端部を互いに遠近動させることが可能な1対の第2カバー板部とを備え、
前記1対の第2カバー板部の先端部を互いに近づけて係合させることにより、前記第1カバー板部と前記1対の第2カバー板部とが筒状に連結された筒体をなし、径方向内側に配置空間が形成される閉状態と、前記1対の第2カバー板部の先端部を互いに遠ざけて前記配置空間を開放する開状態とを取ることができ、
前記閉状態において、前記配置空間内に前記ヨーク基部の軸方向他方側部分が配置される、
ヨークカバー。
【請求項2】
前記閉状態において、前記第1カバー板部は、前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面のうち、前記1対のボルト孔の開口部の間に位置する周方向部分を覆い、前記1対の第2カバー板部は、該外周面のうち、残りの周方向部分を覆う、請求項1に記載のヨークカバー。
【請求項3】
前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面のうち、前記1対のボルト孔の開口部の間に位置する周方向部分が、前記1対のヨークフランジ部の径方向外側面である、請求項2に記載のヨークカバー。
【請求項4】
前記第1カバー板部の軸方向両側の端部のうちの少なくともいずれか一方の端部において、該端部に接続されたストッパ部を備え、
前記閉状態において、前記ストッパ部は、前記1対のヨークフランジ部のうち、前記ヨーク基部の軸方向一方側部分よりも径方向外側に張り出した1対の張出部と軸方向に係合する、
請求項3に記載のヨークカバー。
【請求項5】
前記第1カバー板部に接続され、かつ、前記閉状態において前記スリット内に進入するスリット進入部を備え、
前記スリット進入部は、前記ヨーク基部の径方向内側に開口し、かつ、前記軸部と係合する切り欠き状のボルト係合部を有する、
請求項3に記載のヨークカバー。
【請求項6】
前記1対の第2カバー板部のうち、前記ボルトの軸方向に関して前記頭部側に配置される第2カバー板部は、前記頭部が挿入される頭部挿入部を有する、請求項2に記載のヨークカバー。
【請求項7】
前記頭部挿入部の前記閉状態における幅方向内側は、前記頭部が挿入される凹形状を有し、前記頭部挿入部の前記閉状態における幅方向外側は、凸形状を有する、請求項6に記載のヨークカバー。
【請求項8】
前記1対の第2カバー板部のうち、前記ボルトの軸方向に関して前記頭部と反対側に配置される第2カバー板部は、前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面の一部である、前記1対のヨークフランジ部のうちの他方のヨークフランジ部の幅方向外側面のうち前記ボルト孔の周囲部分において突出したボス部および/または該ボルト孔から突出した前記軸部の先端部、あるいは、前記軸部の先端部および該先端部に螺合して前記他方のヨークフランジ部の幅方向外側面に当接するナットにより構成される、凸部が挿入される凸部挿入部を有する、請求項2に記載のヨークカバー。
【請求項9】
前記凸部挿入部の前記閉状態における幅方向内側は、前記凸部が挿入される凹形状を有し、前記凸部挿入部の前記閉状態における幅方向外側は、凸形状を有する、請求項8に記載のヨークカバー。
【請求項10】
前記第1カバー板部および前記1対の第2カバー板部のそれぞれは、前記閉状態において前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面に対して周方向に沿う形状を有する、請求項1~9のいずれかに記載のヨークカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のステアリング装置に組み込まれる自在継手を構成するヨークを覆うヨークカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のステアリング装置では、同一直線上に配置されていないステアリングシャフトと中間シャフトとのそれぞれの端部同士が、自在継手により接続されている。該自在継手を構成するヨークのうち、ステアリングシャフトの前端部に結合される後側のヨークとして、たとえば、金属製の素材に鍛造加工および切削加工などを施して造られた、ピンチボルトタイプのヨークが用いられる。
【0003】
該ヨークは、ヨーク基部と、1対のヨーク腕部とを備える。ヨーク基部は、シャフトの先端部の外周面と嵌合する内周面を有し、筒状に構成されている。1対のヨーク腕部は、ヨーク基部の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から、ヨーク基部の軸方向一方側に伸長している。また、ヨーク基部は、周方向1箇所において径方向両側および軸方向他方側に開口するスリットと、スリットを挟んで対向する1対のヨークフランジ部と、1対のヨークフランジ部を貫通する1対のボルト孔とを有する。
【0004】
このようなヨークに対してステアリングシャフトの前端部を結合する際には、ステアリングシャフトの前端部をヨーク基部の内側に、ヨーク基部の軸方向他方側から挿入する。そして、1対のボルト孔に挿通または螺合したボルトを締め付けることで、ヨーク基部の内周面を縮径し、該内周面をステアリングシャフトの前端部の外周面に圧接させる。
【0005】
従来、ヨークに対してシャフトの先端部を正規の位置関係で組み付けられるようにするために用いられるヨークカバーの構造が、各種提案されている(たとえば、特開2008-202742号公報、特開2009-108875号公報、特許第5223914号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-202742号公報
【特許文献2】特開2009-108875号公報
【特許文献3】特許第5223914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乗用車用のステアリング装置では、ステアリングシャフトと中間シャフトとを接続する自在継手は、通常、ステアリングコラムのアンダーカバーなどの内側に配置されており、車室内側に露出していない。このため、該自在継手が、たとえば運転者の足に触れたり、車室内の清掃時に人の手に触れたりすることはない。
【0008】
これに対し、商用車用のステアリング装置では、ステアリングシャフトと中間シャフトとを接続する自在継手が、車室内側に露出して配置されるケースがある。近年、このようなケースにおいて、特に、ステアリングシャフトの前端部に結合される後側のヨークのうち、ヨーク基部の軸方向他方側の端面の周縁部に存在する角部に対して、運転者の足などが触れることを十分に防止することが提案されている。
【0009】
具体的な防止策として、ヨークに組み付けられるヨークカバーを用いる方法が考えられる。しかしながら、従来構造のヨークカバーは、ヨークに対するシャフトの端部の誤組み付けを防止することに特化した構造を有しており、ヨーク基部の軸方向他方側の端面の周縁部に存在する角部に対して、運転者の足などが触れることを十分に防止できる構造を有していない。すなわち、従来構造のヨークカバーをヨークに組み付けた状態では、ヨーク基部の軸方向他方側の端面の周縁部に存在する角部のうち、少なくとも周方向の一部分が、ヨークカバーの外部に露出する。
【0010】
本発明は、ヨークを構成するヨーク基部のうち、軸方向に関して1対のヨーク腕部と反対側の端面の周縁部が人の手や足などに触れることを防止できるヨークカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様のヨークカバーが組み付けられる自在継手用ヨークは、シャフトの先端部の外周面と嵌合する内周面を有する筒状のヨーク基部と、該ヨーク基部の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から該ヨーク基部の軸方向一方側に伸長する1対のヨーク腕部とを備え、前記ヨーク基部は、周方向1箇所において径方向両側および軸方向他方側に開口するスリットと、軸方向他方側部分において前記スリットを挟んで対向する1対のヨークフランジ部と、該1対のヨークフランジ部を貫通する1対のボルト孔とを有し、前記1対のボルト孔にボルトの軸部が挿通または螺合され、かつ、前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面の一部である、前記1対のヨークフランジ部を構成する一方のヨークフランジ部の幅方向外側面に前記ボルトの頭部が当接する。
【0012】
本発明の一態様のヨークカバーは、第1カバー板部と、それぞれの基端部が前記第1カバー板部の幅方向両側の端部に揺動可能に接続され、かつ、該揺動に基づいてそれぞれの先端部を互いに遠近動させることが可能な1対の第2カバー板部とを備える。該ヨークカバーは、前記1対の第2カバー板部の先端部を互いに近づけて係合させることにより、前記第1カバー板部と前記1対の第2カバー板部とが筒状に連結された筒体をなし、径方向内側に配置空間が形成される閉状態と、前記1対の第2カバー板部の先端部を互いに遠ざけて前記配置空間を開放する開状態とを取ることができる。前記閉状態において、前記配置空間内に前記ヨーク基部の軸方向他方側部分が配置される。
【0013】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記閉状態において、前記第1カバー板部は、前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面のうち、前記1対のボルト孔の開口部の間に位置する周方向部分を覆う。前記1対の第2カバー板部は、該外周面のうち、残りの周方向部分を覆う。
【0014】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記閉状態において、前記第1カバー板部は、前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面のうち、前記1対のヨークフランジ部の径方向外側面を覆う。前記1対の第2カバー板部は、該外周面のうち、残りの周方向部分、すなわち、前記1対のヨークフランジ部の幅方向外側面、および、前記1対のヨークフランジ部から周方向に外れた部分を覆う。
【0015】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記閉状態において、前記第1カバー板部は、前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面のうち、前記1対のヨークフランジ部から周方向に外れた部分を覆う。前記1対の第2カバー板部は、該外周面のうち、残りの周方向部分、すなわち、前記1対のヨークフランジ部の幅方向外側面、および、前記1対のヨークフランジ部の径方向外側面を覆う。
【0016】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記第1カバー板部の軸方向両側の端部のうちの少なくともいずれか一方の端部において、該端部に接続されたストッパ部を備える。前記閉状態において、前記ストッパ部は、前記1対のヨークフランジ部のうち、前記ヨーク基部の軸方向一方側部分よりも径方向外側に張り出した1対の張出部と軸方向に係合する。
【0017】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記第1カバー板部に接続され、かつ、前記閉状態において前記スリット内に進入するスリット進入部を備える。前記スリット進入部は、前記ヨーク基部の径方向内側に開口し、かつ、前記軸部と係合する切り欠き状のボルト係合部を有する。
【0018】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記1対の第2カバー板部のうち、前記ボルトの軸方向に関して前記頭部側に配置される第2カバー板部は、前記頭部が挿入される頭部挿入部を有する。
【0019】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記頭部挿入部の前記閉状態における幅方向内側は、前記頭部が挿入される凹形状を有し、前記頭部挿入部の前記閉状態における幅方向外側は、凸形状を有する。
【0020】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記1対の第2カバー板部のうち、前記ボルトの軸方向に関して前記頭部と反対側に配置される第2カバー板部は、前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面の一部である、前記1対のヨークフランジ部のうちの他方のヨークフランジ部の幅方向外側面のうち前記ボルト孔の周囲部分において突出したボス部および/または該ボルト孔から突出した前記軸部の先端部、あるいは、前記軸部の先端部および該先端部に螺合して前記他方のヨークフランジ部の幅方向外側面に当接するナットにより構成される、凸部が挿入される凸部挿入部を有する。
【0021】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記凸部挿入部の前記閉状態における幅方向内側は、前記凸部が挿入される凹形状を有し、前記凸部挿入部の前記閉状態における幅方向外側は、凸形状を有する。
【0022】
本発明の一態様のヨークカバーでは、前記第1カバー板部および前記1対の第2カバー板部のそれぞれは、前記閉状態において前記ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面に対して周方向に沿う形状を有する。
【0023】
本発明は、上述した各一態様のヨークカバーの構成を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様のヨークカバーによれば、ヨークを構成するヨーク基部のうち、軸方向に関して1対のヨーク腕部と反対側の端面の周縁部が人の手や足などに触れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例のヨークカバーが組み付けられるステアリング装置を模式的に示す図である。
図2図2は、第1例のヨークカバーおよびボルトを組み付けたヨークを軸方向一方側から見た斜視図である。
図3図3は、第1例のヨークカバーおよびボルトを組み付けたヨークを、図2の反対側から見た斜視図である。
図4図4(a)は、第1例のヨークカバーおよびボルトを組み付けたヨークの側面図であり、図4(b)は、該ヨークを図4(a)の反対側から見た側面図である。
図5図5(a)は、図4(a)の上側から見た図であり、図5(b)は、図4(a)の下側から見た図である。
図6図6(a)は、図4(a)のA-A断面図であり、図6(b)は、図4(a)の右側(軸方向他方側)から見た図である。
図7図7は、第1例のヨークカバーを軸方向一方側から見た斜視図である。
図8図8は、第1例のヨークカバーを展開して示す斜視図である。
図9図9(a)は、第1例のヨークカバーを展開して示す平面図であり、図9(b)は、該ヨークカバーを図9(a)の下方から見た図である。
図10図10は、本発明の実施の形態の第2例に関する、図3の左側半部に相当する図である。
図11図11は、本発明の実施の形態の第3例に関する、図3の左側半部に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1図9(b)を用いて説明する。
【0027】
図1は、本例のヨークカバー1(図2図6(b)参照)が組み付けられる自動車用のステアリング装置2を模式的に示す図である。
【0028】
本例における以下の説明において、前後方向は、車両の前後方向を意味し、上下方向は、車両の上下方向を意味し、左右方向は、車両の幅方向を意味する。
【0029】
本例のステアリング装置2は、ステアリングホイール3と、ステアリングシャフト4と、ステアリングコラム5と、1対の自在継手6a、6bと、中間シャフト7と、ステアリングギヤユニット8とを備える。
【0030】
運転者が回転操作するステアリングホイール3は、ステアリングシャフト4の後端部に取り付けられている。ステアリングシャフト4は、車体に支持されたステアリングコラム5の内側に、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト4の前端部は、自在継手6a、中間シャフト7、および別の自在継手6bを介して、ステアリングギヤユニット8のピニオンシャフト9に接続されている。ピニオンシャフト9は、ステアリングギヤユニット8のラック10に噛合している。このため、運転者がステアリングホイール3を回転操作すると、ステアリングホイール3の回転は、ピニオンシャフト9に伝達される。そして、ピニオンシャフト9の回転が、ラック10の直線運動に変換される。この結果、ラック10の両端部に連結された1対のタイロッド11が押し引きされ、左右の操舵輪12にステアリングホイール3の回転操作量に応じた舵角が付与される。
【0031】
図示は省略するが、ステアリング装置2は、ステアリングホイール3の回転操作に必要な力を軽減するために、ステアリングシャフト4、ピニオンシャフト9、ラック10などのいずれかの操舵力伝達部材に、電動式あるいは油圧式のアシスト装置からアシスト駆動力を付与することができる。
【0032】
本例のヨークカバー1は、自在継手6aを構成する一方のヨーク13、具体的には、ステアリングシャフト4の前端部に接続される一方のヨーク13に組み付けられる。自在継手6aは、一方のヨーク13と、中間シャフト7の後端部に接続される不図示の他方のヨークとを、不図示の十字軸を介して接続することにより構成される。
【0033】
ヨーク13およびヨークカバー1に関する以下の説明において、軸方向一方側は、図4(a)、図5(a)、図5(b)の左側であり、軸方向他方側は、これらの図の右側である。
【0034】
本例のヨーク13は、図2図6(b)に示すように、金属製の素材に鍛造加工および切削加工を施すことにより造られており、筒状のヨーク基部14と、1対のヨーク腕部15とを備える。1対のヨーク腕部15は、ヨーク基部14の軸方向一方側の端部の径方向反対側となる2箇所から、ヨーク基部14の軸方向一方側に伸長している。1対のヨーク腕部15を構成するそれぞれのヨーク腕部15は、先端部に互いに同軸に配置された円孔16を有する。これらの円孔16の内側には、前記十字軸の端部がニードル軸受を介して回転自在に支持される。
【0035】
ヨーク基部14は、ステアリングシャフト4(図4(a)、図4(b)参照)の先端部である前端部の外周面17と嵌合する内周面18を有する。本例では、ステアリングシャフト4の前端部の外周面17に雄セレーションが形成されており、かつ、ヨーク基部14の内周面18に、該雄セレーションと係合可能な雌セレーションが形成されている。
【0036】
ヨーク基部14は、軸方向他方側の半部の周方向1箇所において、径方向両側および軸方向他方側に開口するスリット19を有する。
【0037】
ヨーク基部14は、スリット19を挟んで対向する1対のヨークフランジ部20a、20bを有する。1対のヨークフランジ部20a、20bは、径方向外側部に、ヨーク基部14の軸方向一方側の半部よりも径方向外側に張り出した1対の張出部21a、21bを有する。
【0038】
ヨーク基部14は、1対のヨークフランジ部20a、20bを貫通する1対のボルト孔22a、22bを有する。一方(図5(b)の下側、図6(a)の左側、図6(b)の右側)のヨークフランジ部20aを貫通する一方のボルト孔22a、および、他方(図5(b)の上側、図6(a)の右側、図6(b)の左側)のヨークフランジ部20bを貫通する他方のボルト孔22bは、互いに同軸に配置されている。1対のボルト孔22a、22bの少なくとも一部分は、1対の張出部21a、21bに形成されており、ヨーク基部14の軸方向一方側の半部よりも径方向外側に位置している。本例では、一方のボルト孔22aは、ボルト23の軸部24を挿通するための通孔により構成されている。他方のボルト孔22bは、ボルト23の軸部24を螺合するための雌ねじ孔により構成されている。
【0039】
ヨーク基部14の軸方向他方側部分の外周面の一部である、一方のヨークフランジ部20aの幅方向(図6(a)、図6(b)の左右方向)外側面のうち、一方のボルト孔22aの開口部の周囲部分は、ボルト23の頭部25の内側面が当接する座面として用いられる。他方のヨークフランジ部20bは、幅方向外側面のうち、他方のボルト孔22bの周囲部分に、他の部分よりもボルト孔22bの軸方向に突出した円筒状のボス部26を有する。
【0040】
本発明のヨークカバーを取り付けるヨークとして、1対のボルト孔を構成するそれぞれのボルト孔が通孔により構成されたヨークを用いることもできる。この場合には、他方のヨークフランジの幅方向外側面のうち、他方のボルト孔の開口部の周囲部分にボス部を設けず、他方のボルト孔から突出したボルトの軸部の先端部に、ナットを螺合する。そして、他方のヨークフランジの幅方向外側面のうち、他方のボルト孔の開口部の周囲部分を、ナットの内側面が当接する座面として用いる。本発明のヨークカバーを取り付けるヨークとして、ヨーク基部の周方向に関する1対のヨーク腕部の配置の位相が、本例のヨーク13に対して任意の角度(たとえば90゜程度)ずれたヨークを用いることもできる。
【0041】
ヨーク13にステアリングシャフト4(図4(a)、図4(b)参照)の前端部が結合された状態で、ステアリングシャフト4の前端部は、ヨーク基部14の内側に、ヨーク基部14の軸方向他方側から挿入されている。ステアリングシャフト4の前端部の外周面の周方向1箇所に備えられた切り欠き状のボルト係合部27が、1対のボルト孔22a、22bに整合する位置に配置されている。1対のボルト孔22a、22bに、ボルト23の軸部24が挿通または螺合されている。具体的には、一方のボルト孔22aに挿通したボルト23の軸部24が、他方のボルト孔22bに螺合されている。軸部24の中間部が、ボルト係合部27に係合している。これにより、ステアリングシャフト4の前端部がヨーク基部14の内側から軸方向に抜け出ることを阻止されている。ボルト23の頭部25の内側面が、一方のヨークフランジ部20aの幅方向外側面に当接した状態で、ボルト23が締め付けられている。これにより、ヨーク基部14の内周面18が縮径し、該内周面18がステアリングシャフト4の前端部の外周面17に圧接している。具体的には、内周面18に備えられた雌セレーションが外周面17に備えられた雄セレーションに強く係合している。これにより、ヨーク13にステアリングシャフト4の前端部がトルク伝達可能に結合されている。
【0042】
さらに、この状態で、図5(a)、図5(b)、図6(a)、図6(b)に示すように、ボルト23の軸部24の先端部がボス部26の外側に少しだけ突出している。本例では、これらのボス部26および軸部24の先端部が凸部28を構成する。なお、本発明を実施する場合には、ボス部26を省略し、他方のボルト孔22bから突出した軸部24の先端部により、凸部を構成することもできる。さらに、本発明を実施する場合で、前述したように、ボルトの軸部の先端部にナットを螺合する構成を採用する場合には、これらの軸部の先端部およびナットが凸部を構成する。
【0043】
本例のヨークカバー1は、図2図6(b)に示すように、ヨーク13に取り付けられる。図7図9(b)は、本例のヨークカバー1を、単品の状態で示す図である。
【0044】
本例のヨークカバー1は、全体が合成樹脂または合成ゴムにより一体に造られている。ヨークカバー1は、第1カバー板部29と、それぞれの基端部が第1カバー板部29の幅方向(図9(a)、図9(b)の左右方向)両側の端部に揺動可能に接続され、かつ、該揺動に基づいてそれぞれの先端部を互いに遠近動させることが可能な1対の第2カバー板部30a、30bとを備える。ヨークカバー1は、1対の第2カバー板部30a、30bの先端部を互いに近づけて係合させることにより、第1カバー板部29と、1対の第2カバー板部30a、30bを構成する、一方の第2カバー板部30aおよび他方の第2カバー板部30bとが筒状に連結された筒体をなし、径方向内側に配置空間Sが形成される閉状態(図7参照)と、1対の第2カバー板部30a、30bの先端部を互いに遠ざけて配置空間Sを開放する開状態(図8図9(b)参照)とを取ることができる。ヨークカバー1は、図2図6(b)に示すように、閉状態でヨーク13に取り付けられる。この状態で、配置空間S内にヨーク基部14の軸方向他方側部分(軸方向他方側の端面31を含む)が配置される。
【0045】
本例では、第1カバー板部29は、図8図9(b)に示すように、矩形平板形状を有する。
【0046】
一方の第2カバー板部30aは、第1カバー板部29に近い側である基端側の半部に、平板状のストレート部32aを有する。ストレート部32aの基端部は、第1カバー板部29の幅方向一方側(図9(a)、図9(b)の左側)の端部に、任意の構造により揺動可能に接続されている。本例では、ストレート部32aの基端部と第1カバー板部29の幅方向一方側の端部との接続部を折り曲げることにより、換言すれば、該接続部をヒンジ部として機能させることにより、第1カバー板部29に対して一方の第2カバー板部30aを揺動させることが可能となっている。本例では、該接続部の肉厚は、第1カバー板部29および一方の第2カバー板部30aのそれぞれの肉厚と同じである。本発明を実施する場合には、該接続部の肉厚を第1カバー板部および一方の第2カバー板部のそれぞれの肉厚よりも小さくして、該接続部を折り曲げやすくすることもできる。
【0047】
一方の第2カバー板部30aは、第1カバー板部29から遠い側である先端側の半部に、前記閉状態(図7参照)で径方向内側に配置される内側面(図8図9(b)の上側面)側が凹となる、部分円筒状のカーブ部33aを有する。
【0048】
一方の第2カバー板部30aは、互いに連続するストレート部32aおよびカーブ部33aの軸方向両側の端部に、内側面側に向けて直角に折れ曲がった鍔部34aを有する。一方の第2カバー板部30aは、これらの鍔部34aによって補強されている。
【0049】
一方の第2カバー板部30aは、ストレート部32aのほぼ中央に位置する部分に、ボルト23の頭部25が挿入される頭部挿入部35を有する。頭部挿入部35の閉状態における幅方向内側、すなわち内側面側は、頭部25が挿入される凹形状を有し、頭部挿入部35の閉状態における幅方向外側、すなわち外側面側は、凸形状を有する。本例では、このような頭部挿入部35は、有底筒状(図示の例では有底円すい筒状)に構成されている。
【0050】
一方の第2カバー板部30aは、カーブ部33aの先端部の軸方向中央部に、一方側係合部36を備える。一方側係合部36は、カーブ部33aの径方向外側に張り出すように配置されている。一方側係合部36は、カーブ部33aの先端面よりも該先端面の法線方向に突出したスナップフィット片37を有する。
【0051】
他方の第2カバー板部30bは、第1カバー板部29に近い側である基端側の半部に、平板状のストレート部32bを有する。一方の第2カバー板部30aと同様に、ストレート部32bの基端部は、第1カバー板部29の幅方向他方側(図9(a)、図9(b)の右側)の端部に、揺動可能に連結されている。
【0052】
他方の第2カバー板部30bは、第1カバー板部29から遠い側である先端側の半部に、前記閉状態(図7参照)で径方向内側に配置される内側面(図8図9(b)の上側面)側が凹となる、部分円筒状のカーブ部33bを有する。
【0053】
他方の第2カバー板部30bは、互いに連続するストレート部32bおよびカーブ部33bの軸方向両側の端部に、内側面側に向けて直角に折れ曲がった鍔部34bを有する。他方の第2カバー板部30bは、これらの鍔部34bによって補強されている。
【0054】
他方の第2カバー板部30bは、ストレート部32bのほぼ中央に位置する部分に、凸部28が挿入される凸部挿入部38を有する。凸部挿入部38の閉状態における幅方向内側、すなわち内側面側は、凸部28が挿入される凹形状を有し、凸部挿入部38の閉状態における幅方向外側、すなわち外側面側は、凸形状を有する。本例では、このような凸部挿入部38は、有底筒状(図示の例では有底円すい筒状)に構成されている。
【0055】
他方の第2カバー板部30bは、カーブ部33bの先端部の軸方向中央部に、他方側係合部39を備える。他方側係合部39は、カーブ部33bの径方向外側に張り出すように配置されている。他方側係合部39は、スナップフィット片37を挿通可能な通孔40を有する。
【0056】
一方側係合部36と他方側係合部39とは、互いに係脱可能である。一方側係合部36と他方側係合部39とを係合させる際には、一方側係合部36のスナップフィット片37を他方側係合部39の通孔40に挿通し、かつ、通孔40から突出したスナップフィット片37の先端部に備えられた爪を、通孔40の開口周縁部に係合させる。一方側係合部36と他方側係合部39との係合を外す際には、通孔40の開口周縁部に対するスナップフィット片37の爪の係合を外し、スナップフィット片37を通孔40から抜き出す。
【0057】
本例のヨークカバー1は、1対のストッパ部41をさらに備える。1対のストッパ部41は、第1カバー板部29の軸方向両側の端部において、該端部に接続されている。より具体的には、1対のストッパ部41は、第1カバー板部29の軸方向両側の端部から、第1カバー板部29のうち前記閉状態(図7参照)で径方向内側に配置される内側面(図8図9(b)の上側面)側に向けて直角に折れ曲がった平板状に構成されている。本発明を実施する場合には、1対のストッパ部を構成するそれぞれのストッパ部の形状として、任意の形状を採用することができる。本発明を実施する場合には、1対のストッパ部のうちの少なくともいずれか一方を省略することもできる。
【0058】
本例のヨークカバー1は、スリット進入部42をさらに備える。スリット進入部42は、第1カバー板部29に接続されている。より具体的には、スリット進入部42は、第1カバー板部29の内側面の幅方向の中央部に接続されている。スリット進入部42は、軸方向および該内側面の法線方向に伸長した平板状に構成されている。スリット進入部42の軸方向両側の端部は、1対のストッパ部41の幅方向中央部に接続されている。スリット進入部42は、軸方向中間部に、前記閉状態(図7参照)で径方向内側となる先端側に開口する切り欠き状のボルト係合部43を有する。本発明を実施する場合には、スリット進入部を省略することもできる。
【0059】
本例のヨークカバー1では、第1カバー板部29に対し1対の第2カバー板部30a、30bを揺動させることに基づいて、一方の第2カバー板部30aの先端部と、他方の第2カバー板部30bの先端部とを、互いに遠近動させることが可能である。
【0060】
ヨークカバー1は、図8から図7の順に示すように、1対の第2カバー板部30a、30bを互いに近づき合う方向に揺動させることにより、1対の第2カバー板部30a、30bの先端部を互いに突き合わせ、かつ、一方側係合部36と他方側係合部39とを係合させることにより、第1カバー板部29と、一方の第2カバー板部30aと、他方の第2カバー板部30bとが筒状に連結された筒体をなし、径方向内側に配置空間Sが形成される閉状態を取ることができる。
【0061】
ヨークカバー1は、図7から図8の順に示すように、一方側係合部36と他方側係合部39との係合を外すことにより、1対の第2カバー板部30a、30bを互いの先端部が遠ざかる方向に揺動させることで、配置空間Sを開放する開状態を取ることができる。
【0062】
本発明を実施する場合には、1対の第2カバー板部の先端部を係脱可能に係合させるための構造として、任意の構造を採用することができる。
【0063】
本例では、閉状態において、ヨークカバー1の軸方向他方側の端部は、軸方向他方側から見て、全周にわたり尖った角部を有していない。
【0064】
具体的には、閉状態でのヨークカバー1の軸方向他方側の端部は、軸方向他方側から見て、すなわち、図6(b)において、下端部の左右方向両側の端部に、角部を有している。ただし、これらの角部は尖っておらず、曲率半径が大きいR形状を有している。該R形状の曲率半径は、1.0mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。
【0065】
閉状態でのヨークカバー1の軸方向他方側の端部において、それぞれがヨークカバー1の外周面と軸方向他方側の端面との接続部である、一方の第2カバー板部30aの外側面と鍔部34aの軸方向他方側の側面との接続部、他方の第2カバー板部30bの外側面と鍔部34bの軸方向他方側の側面との接続部、および、第1カバー板部29の外側面とストッパ部41の軸方向他方側の側面との接続部には、それぞれR形状の面取り部が備えられている。該R形状の曲率半径は、1.0mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。
【0066】
本例の構造では、ヨーク13に対してステアリングシャフト4の前端部を、ボルト23を用いて結合した後に、ヨーク13にヨークカバー1を組み付けることができる。
【0067】
ヨーク13にヨークカバー1を組み付ける際には、まず、ヨークカバー1の開状態(図8図9(b)参照)において、スリット進入部42をスリット19内に進入させ、スリット進入部42のボルト係合部43に、ボルト23の軸部24の中間部を係合させる。同時に、1対のストッパ部41を、1対のヨークフランジ部20a、20bを構成する1対の張出部21a、21bを軸方向両側から挟み込む位置に配置する。そして、第1カバー板部29により、ヨーク基部14の軸方向他方側部分の外周面のうち、1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側面(図6(a)、図6(b)の下側面)を覆う。スリット進入部42は、ヨーク基部14の内周面18よりも径方向内側に突出しない。
【0068】
本例では、この状態で、スリット進入部42のボルト係合部43がボルト23の軸部24に係合すること、および/または、1対のストッパ部41と1対の張出部21a、21bとが軸方向に係合することに基づいて、ヨーク13に対してヨークカバー1が軸方向に位置決めされる。また、第1カバー板部29の内側面、および/または、1対のストッパ部41のうち軸方向一方側のストッパ部41の先端部が、1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側面に当接することに基づいて、ヨーク13に対して第1カバー板部29が径方向に位置決めされる。
【0069】
次いで、1対の第2カバー板部30a、30bを、互いに近づき合う方向に揺動させることにより、ボルト23の頭部25を頭部挿入部35の凹形状部分に挿入し、かつ、凸部28を凸部挿入部38の凹形状部分に挿入する。これとともに、1対の第2カバー板部30a、30bの先端部を互いに突き合わせ、かつ、一方側係合部36と他方側係合部39とを係合させることで、ヨークカバー1を閉状態とする。これにより、図2図6(b)に示すように、ヨークカバー1の配置空間S内に、ヨーク基部14の軸方向他方側部分(軸方向他方側の端面31を含む)を配置する。
【0070】
本例では、閉状態において、1対の第2カバー板部30a、30bは、ヨーク基部14の軸方向他方側部分の外周面のうち、残りの周方向部分(=第1カバー板部29により覆われた1対のヨークフランジ部20a、20bの径方向外側面から外れた周方向部分)、具体的には、1対のヨークフランジ部20a、20bの幅方向外側面、および、1対のヨークフランジ部20a、20bから周方向に外れた部分を覆う。
【0071】
すなわち、一方の第2カバー板部30aは、ヨーク基部14の軸方向他方側部分の外周面の前記残りの周方向部分のうち、ボルト23の軸方向に関して頭部25側の半部(図6(a)において鎖線αよりも左側の部分、図6(b)において鎖線αよりも右側の部分)を覆う。具体的には、一方の第2カバー板部30aのストレート部32aは、前記半部のうち、一方のヨークフランジ部20aの幅方向外側面である平坦面部を覆う。一方の第2カバー板部30aのカーブ部33aは、前記半部のうち、周方向に関して該平坦面部よりもスリット19から遠い側に位置する円筒状凸面部を覆う。また、頭部挿入部35は、頭部25を覆う。
【0072】
これに対し、他方の第2カバー板部30bは、ヨーク基部14の軸方向他方側部分の外周面の前記残りの周方向部分のうち、ボルト23の軸方向に関して頭部25と反対側の半部(図6(a)において鎖線αよりも右側の部分、図6(b)において鎖線αよりも左側の部分)を覆う。具体的には、他方の第2カバー板部30bのストレート部32bは、前記半部のうち、他方のヨークフランジ部20bの幅方向外側面である平坦面部を覆う。他方の第2カバー板部30bのカーブ部33bは、前記半部のうち、周方向に関して該平坦面部よりもスリット19から遠い側に位置する円筒状凸面部を覆う。また、凸部挿入部38は、凸部28を覆う。
【0073】
本例では、閉状態で、1対の第2カバー板部30a、30bの軸方向一方側の端部に位置する鍔部34a、34bの先端部が、それぞれヨーク基部14の外周面のうち、前記円筒状凸面部に当接することに基づいて、ヨーク13に対して1対の第2カバー板部30a、30bが径方向に位置決めされる。
【0074】
すなわち、本例では、閉状態で、ヨークカバー1は、ヨーク基部14の軸方向他方側部分に、がたつきなく外嵌された状態となる。
【0075】
本例では、第1カバー板部29および1対の第2カバー板部30a、30bのそれぞれは、図6(a)および図6(b)に示すように、閉状態においてヨーク基部14の軸方向他方側部分の外周面に対して周方向に沿う形状を有する。
【0076】
ヨーク13からヨークカバー1を取り外す際には、一方側係合部36と他方側係合部39との係合を外して、1対の第2カバー板部30a、30bを、互いに遠ざける方向に揺動させる。これにより、ヨークカバー1を開状態とすることで、ヨーク13からヨークカバー1を取り外す。
【0077】
本発明を実施する場合、ヨークカバーの閉状態において、第1カバー板部および1対の第2カバー板部のそれぞれが、ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面のうち、周方向のどの部分を覆うかについては、任意に決定することができる。たとえば、本発明を実施する場合には、ヨーク基部の軸方向他方側部分の外周面のうち、1対のヨークフランジ部から周方向に外れた部分を、第1カバー板部により覆い、該外周面の残りの周方向部分である、1対のヨークフランジ部の幅方向外側面、および、1対のヨークフランジ部の径方向外側面を、1対の第2カバー板部により覆うこともできる。
【0078】
本例のヨークカバー1によれば、ヨーク13を構成するヨーク基部14の軸方向他方側の端面31の周縁部に存在する角部44(図4図6参照)が人の手や足などに触れることを防止できる。
【0079】
すなわち、ヨーク13の製造において、端面31は切削加工により仕上げられるため、端面31の周縁部に存在する角部44は、尖った角部になる。したがって、このような角部44が人の手や足などに触れることを防止できるようにすることが望ましい。本例では、ヨークカバー1をヨーク13に取り付けた状態で、ヨーク基部14の軸方向他方側部分(軸方向他方側の端面31を含む)は、ヨークカバー1の径方向内側に存在する配置空間S内に配置される。このため、ヨーク基部14の軸方向他方側の端面31の周縁部に存在する角部44が、ヨークカバー1の外部に露出しない。したがって、該角部44が人の手や足などに触れることを防止できる。具体的には、該角部44が、運転者の足に触れたり、車室内の清掃時に人の手に触れたりすることを防止できる。
【0080】
本例では、ヨークカバー1がヨーク13に取り付けられた閉状態において、ヨークカバー1の軸方向他方側の端部は、尖った角部を有していない。このため、ヨークカバー1の軸方向他方側の端部に運転者の足などが触れた場合の安全性を確保することができる。
【0081】
本例のヨークカバー1は、ボルト23の頭部25を覆う頭部挿入部35を備える。このため、頭部25に、運転者の足などが触れることを防止できる。
【0082】
本例のヨークカバー1は、凸部28を覆う凸部挿入部38を備える。このため、凸部28に、運転者の足などが触れることを防止できる。本発明を実施する場合には、底部を有しない筒状の凸部挿入部、あるいは、他方の第2カバー板部を貫通する通孔により構成された凸部挿入部を採用することもできる。
【0083】
本例では、ヨークカバー1をヨーク13に取り付けた状態で、ヨークカバー1により、ヨーク13のスリット19の径方向外側の開口部が覆われる。このため、運転者の足などが、スリット19の径方向外側の開口縁部に触れることを防止できる。すなわち、ヨーク13の製造において、スリット19は切削加工により仕上げられるため、スリット19の径方向外側の開口縁部は、尖った角部になる。本例のヨークカバー1によれば、このような角部に運転者の足などが触れることを防止できる。
【0084】
本例の構造は、ボルト23の頭部25と頭部挿入部35との係合部、凸部28と凸部挿入部38との係合部、1対の張出部21a、21bと1対のストッパ部41との係合部、および、ボルト23の軸部24の中間部とスリット進入部42のボルト係合部43との係合部を有しており、これらの係合部のそれぞれに基づいて、ヨーク13に対するヨークカバー1の軸方向移動を防ぐことができる。
【0085】
本例では、第1カバー板部29および1対の第2カバー板部30a、30bのそれぞれは、閉状態においてヨーク基部14の軸方向他方側部分の外周面に対して周方向に沿う形状を有する。このため、閉状態において、ヨークカバー1を小型に構成することができる。
【0086】
[第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図10を用いて説明する。
【0087】
本例では、ヨークカバー1aを構成する頭部挿入部35aが、円すい筒状または円筒状に構成されている。本例では、頭部挿入部35aがボルト23の頭部25の周囲に配置されるため、頭部25に運転者の足などがぶつかることを有効に防ぐことができる。
【0088】
本例の構造では、ヨークカバー1aをヨーク13に組み付けた後も、ヨークカバー1aの外部から、頭部挿入部35aの開口部を通じて、ボルト23の頭部25を目視により確認することができる。このため、車両の出荷前検査などを行う際に、ヨークカバー1aの外部から、ボルト23の組み付け忘れの有無を目視により確認することができる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0089】
[第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、図11を用いて説明する。
【0090】
本例では、ヨークカバー1bを構成する頭部挿入部35bが、一方の第2カバー板部30aを貫通する通孔により構成されている。本例では、ヨークカバー1bをヨーク13に組み付けた状態で、頭部挿入部35bを通じてボルト23の頭部25がヨークカバー1bの外部に突出する。このため、車両の出荷前検査などを行う際に、ヨークカバー1aの外部から、ボルト23の組み付け忘れの有無を目視により確認することができる。
【0091】
さらに、本例の構造では、頭部挿入部35bを通じてボルト23の頭部25がヨークカバー1bの外部に突出するため、ヨークカバー1bをヨーク13に組み付けた後に、ボルト23を用いて、ヨーク13にステアリングシャフトの前端部を結合することもできる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【符号の説明】
【0092】
1、1a、1b ヨークカバー
2 ステアリング装置
3 ステアリングホイール
4 ステアリングシャフト
5 ステアリングコラム
6a、6b 自在継手
7 中間シャフト
8 ステアリングギヤユニット
9 ピニオンシャフト
10 ラック
11 タイロッド
12 操舵輪
13 ヨーク
14 ヨーク基部
15 ヨーク腕部
16 円孔
17 外周面
18 内周面
19 スリット
20a、20b ヨークフランジ部
21a、21b 張出部
22a、22b ボルト孔
23 ボルト
24 軸部
25 頭部
26 ボス部
27 ボルト係合部
28 凸部
29 第1カバー板部
30a、30b 第2カバー板部
31 端面
32a、32b ストレート部
33a、33b カーブ部
34a、34b 鍔部
35、35a、35b 頭部挿入部
36 一方側係合部
37 スナップフィット片
38 凸部挿入部
39 他方側係合部
40 通孔
41 ストッパ部
42 スリット進入部
43 ボルト係合部
44 角部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11