(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163308
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
G06K7/10 264
G06K7/10 240
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074119
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗山 哲
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 功一
(72)【発明者】
【氏名】京谷 浩平
(72)【発明者】
【氏名】原 和規
(57)【要約】
【課題】RFIDタグを用いた在庫判定の確度が高い貯蔵庫を提供する。
【解決手段】回転式の扉によって前面が開閉される回転扉貯蔵室と、前記回転扉貯蔵室の下方に位置し、引出式の扉によって前面が開閉される第1の引出扉貯蔵室と、前記第1の引出扉貯蔵室の下方に位置し、引出式の扉によって前面が開閉される第2の引出扉貯蔵室と、を備えた貯蔵庫であって、前方に電波を放射して貯蔵庫外に存在する食材に貼付されたRFIDタグと無線通信する第1の庫外アンテナが、前記第1の引出扉貯蔵室の引出式の扉の前側に設置され、前記第1の庫外アンテナから放射される電波の強度は、前記第2の引出扉貯蔵室が開放されたときよりも、前記回転扉貯蔵室が開放されたときの方が大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式の扉によって前面が開閉される回転扉貯蔵室と、
前記回転扉貯蔵室の下方に位置し、引出式の扉によって前面が開閉される第1の引出扉貯蔵室と、
前記第1の引出扉貯蔵室の下方に位置し、引出式の扉によって前面が開閉される第2の引出扉貯蔵室と、
を備えた貯蔵庫であって、
前方に電波を放射して貯蔵庫外に存在する食材に貼付されたRFIDタグと無線通信する第1の庫外アンテナが、前記第1の引出扉貯蔵室の引出式の扉の前側に設置され、
前記第1の庫外アンテナから放射される電波の強度は、前記第2の引出扉貯蔵室が開放されたときよりも、前記回転扉貯蔵室が開放されたときの方が大きいことを特徴とする貯蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の貯蔵庫において、
前記第2の引出扉貯蔵室の下方に位置し、引出式の扉によって前面が開閉される第3の引出扉貯蔵室をさらに備え、
前記第1の庫外アンテナから放射される電波の強度は、前記第2の引出扉貯蔵室が開放されたときよりも、前記第3の引出扉貯蔵室が開放されたときの方が大きいことを特徴とする貯蔵庫。
【請求項3】
請求項2に記載の貯蔵庫において、
下方に電波を放射することで食材に貼付されたRFIDタグと無線通信する第1の庫内アンテナが、前記第2の引出扉貯蔵室の内側上部に設置され、
下方に電波を放射することで食材に貼付されたRFIDタグと無線通信する第2の庫内アンテナが、前記第3の引出扉貯蔵室の内側上部に設置されていることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項4】
請求項3に記載の貯蔵庫において、
前記第2の引出扉貯蔵室及び前記第3の引出扉貯蔵室は、
前記引出式の扉の後方に取り付けられて当該扉と共に引き出される下段容器と、
前記下段容器の上方にあって前記下段容器に対して前後に相対移動し得る上段容器と、を有し、
前記第3の引出扉貯蔵室の上段容器は、前記第2の引出扉貯蔵室の上段容器と比べて、扉が引き出されたときの引出量が大きく、
前記第1の庫内アンテナから放射される電波の強度よりも、前記第2の庫内アンテナから放射される電波の強度の方が大きいことを特徴とする貯蔵庫。
【請求項5】
請求項4に記載の貯蔵庫において、
前記第3の引出扉貯蔵室の上段容器は、扉が閉鎖された状態で前記第2の庫内アンテナの鉛直投影下方を含む部分が切欠かれていることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項6】
請求項3に記載の貯蔵庫において、
前記第2の引出扉貯蔵室及び前記第3の引出扉貯蔵室は、
前記引出式の扉の後方に取り付けられて当該扉と共に引き出される下段容器と、
前記下段容器の上方にあって前記下段容器に対して前後に相対移動し得る上段容器と、を有し、
前記第2の引出扉貯蔵室の上段容器は、前記第3の引出扉貯蔵室の上段容器と比べて、扉が引き出されたときの引出量が大きく、
前記第2の庫内アンテナから放射される電波の強度よりも、前記第1の庫内アンテナから放射される電波の強度の方が小さいことを特徴とする貯蔵庫。
【請求項7】
請求項6に記載の貯蔵庫において、
前記第2の引出扉貯蔵室の上段容器は、扉が閉鎖された状態で前記第1の庫内アンテナの鉛直投影下方を含む部分が切欠かれていることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項8】
請求項3に記載の貯蔵庫において、
前記第1の庫外アンテナと前記第1の庫内アンテナでの前記RFIDタグの読取結果を用いて、前記第2の引出扉貯蔵室に入庫又は出庫される食材の在庫が管理され、
前記第1の庫外アンテナと前記第2の庫内アンテナでの前記RFIDタグの読取結果を用いて、前記第3の引出扉貯蔵室に入庫又は出庫される食材の在庫が管理されることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項9】
請求項1に記載の貯蔵庫において、
前記第2の引出扉貯蔵室には、扉の開閉を検知するセンサが設置され、
前記センサの検知情報に基づいて、前記第1の庫外アンテナからの電波の放射が開始又は停止されることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項10】
請求項3に記載の貯蔵庫において、
前記第2および第3の引出扉貯蔵室には、扉の開閉を検知するセンサが設置され、
前記センサの検知情報に基づいて、前記第1および第2の庫内アンテナからの電波の放射が開始又は停止されることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項11】
請求項1に記載の貯蔵庫において、
少なくとも前記回転扉貯蔵室に収納される食材の画像を取得するカメラをさらに備え、
前記カメラが取得した画像に含まれるユーザーの姿勢に応じて、前記第1の庫外アンテナから放射される電波の強度が設定されることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項12】
回転式の扉によって前面が開閉される回転扉貯蔵室と、
前記回転扉貯蔵室の下方に位置し、引出式の扉によって前面が開閉される第5の引出扉貯蔵室と、
を備えた貯蔵庫であって、
前方斜め下方の電波を放射して貯蔵庫外に存在する食材に貼付されたRFIDタグと無線通信する第2の庫外アンテナが、前記回転扉貯蔵室の上部に設置され、
前記第2の庫外アンテナから放射される電波の強度は、前記回転扉貯蔵室が開放されたときよりも、前記第5の引出扉貯蔵室が開放されたときの方が大きいことを特徴とする貯蔵庫。
【請求項13】
請求項12に記載の貯蔵庫において、
前記回転扉貯蔵室の内側下部に、引出式の扉によって前面が開閉される第4の引出扉貯蔵室をさらに備え、
前記第2の庫外アンテナから放射される電波の強度は、前記第4の引出扉貯蔵室が開放されたときと比べて、前記回転扉貯蔵室が開放されたときの方が小さく、前記第5の引出扉貯蔵室が開放されたときの方が大きいことを特徴とする貯蔵庫。
【請求項14】
請求項12に記載の貯蔵庫において、
前記第5の引出扉貯蔵室には、扉の開閉を検知するセンサが設置され、
前記センサの検知情報に基づいて、前記第2の庫外アンテナからの電波の放射が開始又は停止されることを特徴とする貯蔵庫。
【請求項15】
請求項12に記載の貯蔵庫において、
少なくとも前記回転扉貯蔵室内の食材の画像を取得するカメラをさらに備え、
前記カメラが取得した画像に含まれるユーザーの姿勢に応じて、前記第2の庫外アンテナから放射される電波の強度が設定されることを特徴とする貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
貯蔵対処物にRFID(Radio Frequency Identifier)タグを貼付し、そのタグを用いて在庫管理をする貯蔵庫が提案されている。例えば、特許文献1には、アンテナと引き出し部との相対位置関係に応じて、アンテナの指向性や送信出力を制御する技術が開示されている(要約等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、紙面書類等を収容する矩形のファイルを貯蔵することを想定したものであり、同様の構造の引き出し部が上下に複数設けられている。しかし、家庭用冷蔵庫等の食材を貯蔵する貯蔵庫には、回転式の扉によって前面が開閉される回転扉貯蔵室と、その下方に位置し、引出式の扉によって前面が開閉される引出扉貯蔵室と、を備えたものがある。このような貯蔵庫では、上方に位置する回転扉貯蔵室に対して食材を入出庫する場合と、下方に位置する引出扉貯蔵室に対して食材を入出庫する場合とでは、ユーザーの姿勢が異なることに発明者らは着目した。すなわち、床面に近い引出扉貯蔵室に食材を入出庫する場合、ユーザーの上体の前傾斜が高まり、ユーザーの身体で引き出された容器の上方を覆う形となるため、引出扉貯蔵室の上方にあるアンテナから放射された電波の遮蔽量が大きくなる。遮蔽量が大きくなると、アンテナから放射される電波の減衰の程度も大きくなるので、貯蔵室外に存在するRFIDタグの読取性能が劣化する。このように、アンテナからの距離だけでなく、ユーザーの姿勢によっても、RFIDタグの読取性能が劣化し、食材の在庫判定を誤る可能性のあることが、発明者らの検討の結果、明らかとなった。
【0005】
本発明の目的は、RFIDタグを用いた在庫判定の確度が高い貯蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明は、回転式の扉によって前面が開閉される回転扉貯蔵室と、前記回転扉貯蔵室の下方に位置し、引出式の扉によって前面が開閉される第1の引出扉貯蔵室と、前記第1の引出扉貯蔵室の下方に位置し、引出式の扉によって前面が開閉される第2の引出扉貯蔵室と、を備えた貯蔵庫であって、前方に電波を放射して貯蔵庫外に存在する食材に貼付されたRFIDタグと無線通信する第1の庫外アンテナが、前記第1の引出扉貯蔵室の引出式の扉の前側に設置され、前記第1の庫外アンテナから放射される電波の強度は、前記第2の引出扉貯蔵室が開放されたときよりも、前記回転扉貯蔵室が開放されたときの方が大きい。
【0007】
また、本発明は、回転式の扉によって前面が開閉される回転扉貯蔵室と、前記回転扉貯蔵室の下方に位置し、引出式の扉によって前面が開閉される第5の引出扉貯蔵室と、を備えた貯蔵庫であって、前方斜め下方の電波を放射して貯蔵庫外に存在する食材に貼付されたRFIDタグと無線通信する第2の庫外アンテナが、前記回転扉貯蔵室の上部に設置され、前記第2の庫外アンテナから放射される電波の強度は、前記回転扉貯蔵室が開放されたときよりも、前記第5の引出扉貯蔵室が開放されたときの方が大きい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、RFIDタグを用いた在庫判定の確度が高い貯蔵庫を提供できる。
【0009】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施例1に係る貯蔵庫において扉開閉検知に関係する構造を示した鳥観図
【
図3】実施例1に係る貯蔵庫の在庫管理の動作を示したフロー図
【
図4A】実施例1に係る貯蔵庫の第2の引出扉貯蔵室に食材を入出庫する途中における、ユーザーの姿勢および庫外アンテナの電波放射領域を示した図
【
図4B】実施例1に係る貯蔵庫の第3の引出扉貯蔵室に食材を入出庫する途中における、ユーザーの姿勢および庫外アンテナの電波放射領域を示した図
【
図5A】実施例1に係る貯蔵庫の第2の引出扉が閉鎖された状態における第1の庫内アンテナの電波放射領域を示した図
【
図5B】実施例1に係る貯蔵庫の第2の引出扉が開放された状態における第1の庫内アンテナの電波放射領域を示した図
【
図6A】実施例1に係る貯蔵庫の第3の引出扉が閉鎖された状態における第2の庫内アンテナの電波放射領域を示した図
【
図6B】比較例として、第2の庫内アンテナの電波強度を第1の庫内アンテナと同じとした場合、第3の引出扉が開放された状態における第2の庫内アンテナの電波放射領域を示した図
【
図6C】実施例1として、第2の庫内アンテナの電波強度を第1の庫内アンテナより大きくした場合、第3の引出扉が開放された状態における第2の庫内アンテナの電波放射領域を示した図
【
図7】実施例2に係る貯蔵庫の第1の回転扉貯蔵室に食材を入出庫する途中における、ユーザーの姿勢および庫外アンテナの電波放射領域を示した図
【
図9A】実施例3に係る貯蔵庫の第2の回転扉貯蔵室に食材を入出庫する途中における、ユーザーの姿勢および庫外アンテナの電波放射領域を示した図
【
図9B】実施例3に係る貯蔵庫の第4の引出扉貯蔵室に食材を入出庫する途中における、ユーザーの姿勢および庫外アンテナの電波放射領域を示した図
【
図9C】実施例3に係る貯蔵庫の第5の引出扉貯蔵室に食材を入出庫する途中における、ユーザーの姿勢および庫外アンテナの電波放射領域を示した図
【
図10A】実施例4に係る貯蔵庫の構造を示した鳥観図
【
図10B】実施例4に係る貯蔵庫の構造を上から見た平面図
【
図11】実施例5に係る貯蔵庫の構造を示した鳥観図
【
図12】実施例6に係る貯蔵庫の在庫管理の動作を示したフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0012】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【実施例0013】
本発明の実施例1に係る貯蔵庫の構造ついて、
図1および2を用いて説明する。
【0014】
図1は実施例1に係る貯蔵庫の構造を示した鳥観図である。1aは第1の貯蔵庫であり、20は第1の回転扉貯蔵室であり、30は第1の引出扉貯蔵室であり、40は第2の引出扉貯蔵室であり、50は第3の引出扉貯蔵室であり、100aは第1の庫外アンテナであり、200aは第1の庫内アンテナであり、201aは第2の庫内アンテナであり、202aは第3の庫内アンテナである。第1の貯蔵庫1aは、外箱と内箱の間に発砲断熱材や真空断熱材を配置してなる断熱箱体で構成されており、その内部が前述した複数の貯蔵室に区画されている。
【0015】
第1の回転扉貯蔵室20は、冷蔵温度帯に設定された冷蔵室であり、回転式の扉である第1の回転扉20aによって前面が開閉される。なお、第1の回転扉20aは、左右2つの扉からなる観音扉であっても良いし、1つの扉であっても良い。第1の引出扉貯蔵室30は、冷凍温度帯に設定された製氷室であり、第1の回転扉貯蔵室20の下方に位置し、引出式の扉である第1の引出扉30aによって前面が開閉される。なお、第1の引出扉貯蔵室30は、左右方向の一方に製氷室として形成され、左右方向の他方に急速冷凍室として形成されても良い。第2の引出扉貯蔵室40は、冷凍温度帯に設定された冷凍室であり、第1の引出扉貯蔵室30の下方に位置し、引出式の扉である第2の引出扉40aによって前面が開閉される。第3の引出扉貯蔵室50は、冷蔵温度帯に設定された野菜室であり、第2の引出扉貯蔵室40の下方に位置し、引出式の扉である第3の引出扉50aによって前面が開閉される。なお、第1の引出扉貯蔵室30、第2の引出扉貯蔵室40および第3の引出扉貯蔵室50の温度帯は、前述に限られず、少なくとも1つの貯蔵室の温度帯は冷蔵温度帯から冷凍温度帯まで切り替えられるものであっても良い。
【0016】
第1の庫外アンテナ100aは、第1の貯蔵庫1aの外部に存在する食材に貼付されたRFIDタグと無線通信するために、第1の引出扉貯蔵室30の第1の引出扉30aの外側(扉内部の真空断熱材より前側)に設置され、第1の貯蔵庫1aの前方に放射領域を有する。第1の庫外アンテナ100aは、他の貯蔵室の扉に設置されても良いが、第1の引出扉貯蔵室30は製氷室であり、貯蔵対象の氷(水)は在庫管理が不要であるため、第1の引出扉30aに設置されるのが望ましい。
【0017】
第1の庫内アンテナ200aは、第2の引出扉貯蔵室40の内側上部、すなわち、第2の引出扉貯蔵室40を区画する箱体壁面のうち天井の真空断熱材より下側、に設置され、下方、すなわち、第2の引出扉40aの後方の収納容器内に向けて電波を放射する。これにより、第1の庫内アンテナ200aは、第2の引出扉40aに支持された収納容器の内部に存在する食材に貼付されたRFIDタグと無線通信できる。第2の庫内アンテナ201aは、第3の引出扉貯蔵室50の内側上部、すなわち、第3の引出扉貯蔵室50を区画する箱体壁面のうち天井の真空断熱材の下側、に設置され、下方、すなわち、第3の引出扉50aの後方の収納容器内に向けて電波を放射する。これにより、第2の庫内アンテナ201aは、第3の引出扉50aに支持された収納容器の内部に存在する食材に貼付されたRFIDタグと無線通信できる。第3の庫内アンテナ202aは、第1の回転扉貯蔵室20の内側上部、すなわち、第1の回転扉貯蔵室20を区画する箱体壁面のうち天井の真空断熱材の下側、に設置され、下方に向けて電波を放射する。これにより、第3の庫内アンテナ202aは、第1の回転扉貯蔵室20内または第1の回転扉20aの内面に形成されたドアポケット内に存在する食材に貼付されたRFIDタグと無線通信できる。なお、第1の回転扉20aが開放された場合、ドアポケットは、第1の庫外アンテナ100aの放射領域および第3の庫内アンテナ202aの放射領域の両方に含まれる。
【0018】
図2は実施例1に係る貯蔵庫において扉開閉検知に関係する構造を示した鳥観図である。300aおよび300bは磁気センサであり、310aおよび310bは磁石である。磁気センサ300aおよび300bは、磁気検知範囲に磁石が存在する場合、磁石が存在しない場合に比べて高い電圧を出力する特性を有する。磁石310aは、第2の引出扉40aの後面に設置される。磁気センサ300aは、第2の引出扉貯蔵室40の開口部の縁部前面、かつ、その磁気検知範囲内に第2の引出扉40aが閉鎖されたときの磁石310aが存在するような位置、に設置される。磁石310bは、第3の引出扉50aの後面に設置される。磁気センサ300bは、第3の引出扉貯蔵室50の開口部の縁部前面、かつ、その磁気検知範囲内に第3の引出扉50aが閉鎖されたときの磁石310bが存在するような位置、に設置される。以上の磁気センサおよび磁石の構造により、磁気センサ300aおよび300bから出力される電圧値を計測することで、第2の引出扉40aおよび第3の引出扉50aの開閉情報を取得できる。
【0019】
次に、本発明の実施例1に係る貯蔵庫の在庫管理の動作について、
図3を用いて説明する。
図3は、実施例1に係る貯蔵庫の在庫管理の動作を示したフロー図である。ユーザー10が第2の引出扉40aを開放すると、磁気センサ300aから出力される電圧情報をトリガとして、第1の庫外アンテナ100aから電波が放射されRFIDタグの読取が開始されると同時に、第1の庫内アンテナ200aから電波が放射されRFIDタグの読取が開始される(ステップS10a~ステップS30)。ユーザー10が第2の引出扉40aを閉鎖すると、磁気センサ300aから出力される電圧情報をトリガとして、第1の庫外アンテナ100aからの電波放射が停止されRFIDタグの読取を終了すると同時に、第1の庫内アンテナ200aからの電波放射が停止されRFIDタグの読取を終了する(ステップS40a~ステップS60)。前述の通り第1の庫外アンテナ100aの電波放射領域は第1の貯蔵庫1aの外部であり、第1の庫内アンテナ200aの電波放射領域は第2の引出扉40aに支持された収納容器の内部である。よって、在庫判定(ステップS70)にて、RFIDタグを最後に読み取ったアンテナが第1の庫内アンテナ200aである場合には「庫内」、RFIDタグを最後に読み取ったアンテナが第1の庫外アンテナ100aである場合には「庫外」と判定される(ステップS71~ステップS73)。第3の引出扉貯蔵室50に関する在庫判定動作は、前述した第2の引出扉貯蔵室40の場合と同様である。
【0020】
本発明の実施例1に係る貯蔵庫の庫外アンテナの電波放射領域および電波強度について、
図4Aおよび
図4Bを用いて説明する。
図4Aは、実施例1に係る貯蔵庫の第2の引出扉貯蔵室に食材を入出庫する途中における、ユーザーの姿勢および庫外アンテナの電波放射領域を示した図である。
図4Bは、実施例1に係る貯蔵庫の第3の引出扉貯蔵室に食材を入出庫する途中における、ユーザーの姿勢および庫外アンテナの電波放射領域を示した図である。10はユーザーの身体であり、11はRFIDタグが貼付された食材であり、110aおよび110bは第1の庫外アンテナ100aの電波放射領域である。
【0021】
図4Aおよび4Bに示したように、第3の引出扉貯蔵室50は第2の引出扉貯蔵室40より下方に位置するため、第3の引出扉貯蔵室50に入出庫される食材11の移動経路は第2の引出扉貯蔵室40に入出庫される食材11の移動経路より低い位置となる。つまり、第3の引出扉貯蔵室50に入出庫される食材11の移動経路と第1の庫外アンテナ100aとの距離は、第2の引出扉貯蔵室40に入出庫される食材11の移動経路と第1の庫外アンテナ100aとの距離より長くなる。また、第2の引出扉貯蔵室40の内部に貯蔵された食材11と第1の庫外アンテナ100aとの距離は、第3の引出扉貯蔵室50の内部に貯蔵された食材11と第1の庫外アンテナ100aとの距離よりも短くなる。
【0022】
さらに、
図4Aおよび4Bに示したように、第3の引出扉貯蔵室50は第2の引出扉貯蔵室40より下方に位置するため、第3の引出扉貯蔵室50に入出庫する場合、第2の引出扉貯蔵室40に入出庫する場合と比べて、ユーザー10の上体は、前傾角が深くなり、引き出された第3の引出式扉50aの後方にある収納容器の上方に覆い被さるような姿勢となる。具体的には、第2の引出扉貯蔵室40に入出庫する場合、
図4Aに示したように、第1の庫外アンテナ100aと食材11との間に存在するユーザー10の人体は、食材11を持つ手または腕である。一方、第3の引出扉貯蔵室50に入出庫する場合、
図4Bに示したように、第1の庫外アンテナ100aと食材11との間に存在するユーザー10の人体は、食材11を持つ手または腕に加えて、頭を含む上半身の一部となる。
【0023】
発明者らの検討により、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波は人体により遮蔽されるため、同周波数帯を用いる一般的なRFIDタグと、その読取用アンテナとの間にユーザー10の上体が存在すると、RFIDタグを読取れない場合のあることが分かった。つまり、第1の庫外アンテナ100aから放射されて第3の引出扉貯蔵室50に入出庫される途中の(貯蔵室の外部に存在する)食材11に達するまでに減衰する電波の量は、第1の庫外アンテナ100aから放射されて第2の引出扉貯蔵室40に入出庫される途中の(貯蔵室の外部に存在する)食材11に達するまでに減衰する電波の量より大きくなると考えられる。したがって、発明者らは、距離に応じた電波の減衰量に加えて、ユーザー10の人体の遮蔽に応じた減衰量も考慮する必要があることを見出した。
【0024】
第1の庫外アンテナ100aからの距離およびユーザー10の姿勢を考慮すれば、第2の引出扉貯蔵室40を開放したときと、第3の引出扉貯蔵室50を開放したときと、では、第1の庫外アンテナ100aから放射する電波の強度を次の(式1)の関係とするのが良い。
【0025】
Po_50≧Po_40+Pdist+Pbody・・・(式1)
ここで、Po_40は第2の引出扉貯蔵室40を開放した場合に第1の庫外アンテナ100aから放射される電波強度であり、Po_50は第3の引出扉貯蔵室50を開放した場合に第1の庫外アンテナ100aから放射される電波強度であり、Pdistは距離に応じた電波の減衰量であり、Pbodyはユーザー10の上体で遮蔽される電波の減衰量である。
【0026】
本発明の実施例1に係る貯蔵庫の庫内アンテナの電波放射領域および電波強度について、
図5A~
図6Cを用いて説明する。
【0027】
図5Aは、実施例1に係る貯蔵庫の第2の引出扉40aが閉鎖された状態における第1の庫内アンテナの電波放射領域を示した図、
図5Bは、実施例1に係る貯蔵庫の第2の引出扉40aが開放された状態における第1の庫内アンテナの電波放射領域を示した図である。210aは第2の引出扉40aが閉鎖された状態での第1の庫内アンテナ200aの電波放射領域であり、210bは第2の引出扉40aが開放された状態での第1の庫内アンテナ200aの電波放射領域である。41は第2の引出扉40aの後方に取り付けられて当該扉と共に引き出される下段容器であり、42は下段容器41の上方にあって下段容器41に対して前後に相対移動し得る上段容器である。
【0028】
第2の引出扉貯蔵室40は、前述のとおり冷凍室であり、特に上段容器42に収納される食材は急速冷凍が必要となる場合もあるため、第2の引出扉40aが開放されても、可能な限り庫内側に留まることで、外気に触れて温度上昇するのを防ぐのが望ましい。したがって、上段容器42は、第2の引出扉40aが閉鎖された状態では、第2の引出扉貯蔵室40を区画する箱体の側壁に形成されたレール(図示せず)に支持され、第2の引出扉40aと共に下段容器41が引き出されても第2の引出扉貯蔵室40内に留まる構造となっている。なお、第2の引出扉40aを全開にするときは、上段容器42が、途中から下段容器41の左右両側の縁に支持されながら、一定量、前方へ引き出されても良い。
【0029】
図6Aは、実施例1に係る貯蔵庫の第3の引出扉50aが閉鎖された状態における第2の庫内アンテナの電波放射領域を示した図である。
図6Bは、比較例として、第2の庫内アンテナの電波強度を第1の庫内アンテナと同じとした場合、第3の引出扉50aが開放された状態における第2の庫内アンテナの電波放射領域を示した図である。
図6Cは、実施例1として、第2の庫内アンテナの電波強度を第1の庫内アンテナより大きくした場合、第3の引出扉50aが開放された状態における第2の庫内アンテナの電波放射領域を示した図である。211aは
図6Aの場合における第2の庫内アンテナ201aの電波放射領域であり、211bは
図6Bの場合における第2の庫内アンテナ201aの電波放射領域であり、211cは
図6Cの場合における第2の庫内アンテナ201aの電波放射領域である。51は第3の引出扉50aの後方に取り付けられて当該扉と共に引き出される下段容器であり、52aは下段容器51の上方にあって下段容器51に対して前後に相対移動し得る第1の上段容器である。
【0030】
第3の引出扉貯蔵室50は、前述のとおり野菜室であり、特に下段容器51に収納される食材は乾燥抑制が必要となる場合もあるため、第3の引出扉50aが開放されたとき、第1の上段容器52aも引き出されることで、下段容器51の上方を覆い密閉性を維持するのが望ましい。したがって、第1の上段容器52aは、第3の引出扉50aと共に下段容器51が引き出されると、下段容器51の左右両側の縁に支持された状態で、一緒に引き出される構造となっている。すなわち、第3の引出扉貯蔵室50の第1の上段容器52aは、第2の引出扉貯蔵室40の上段容器42と比べ、引出扉が引き出されたときの引出量が大きくなっている。
【0031】
ここで、アンテナの電波放射領域は実際にはサイドローブを持つ複雑な形状を有するが、ここでは説明の簡便化のため、ビーム半値幅と等しい中心角を持つ扇形で示している。また、
図5A~
図6Bにおいて、第1の庫内アンテナ200aおよび第2の庫内アンテナ201aから放射される電波強度は同等である。さらに、第2の引出扉40aおよび第3の引出扉50aは、グラスウール等の芯材を金属製フィルム等の外包材で封止して真空引きすることで得られる真空断熱材が内蔵されているため、電波を遮る。したがって、
図5Aおよび
図6Aに示したように、各引出扉が閉鎖された状態では、第1の庫内アンテナ200aおよび第2の庫内アンテナ201aから放射された電波は、各引出扉貯蔵室の外部には漏洩しない。
【0032】
図5Bに示したように、第2の引出扉40aが開放される場合、第1の庫内アンテナ200aの電波放射領域210bは、第2の引出扉貯蔵室40aが開放される距離に応じて前方に拡張され、下段容器41の内部のほぼ全領域をカバーする。
【0033】
一方、
図6Bに示したように、第3の引出扉50aが開放される場合、第2の庫内アンテナ201aの電波放射領域211bは、第3の引出扉50aが開放される距離に応じて前方に拡張されるものの、下段容器51の内部は一部しかカバーできない。これは、下段容器51の上方に位置する第1の上段容器52aに収納された食材に含まれる水分によって、第2の庫内アンテナ201aからの電波が減衰するためと考えられる。第2の庫内アンテナ201aからの電波が下段容器51の内部に届き難くなると、下段容器51内に存在するRFIDタグの読取性能が劣化し、RFIDタグを用いた食材の在庫判定を誤る可能性がある。
【0034】
以上のような貯蔵室ごとの特徴を考慮すれば、次の(式2)に示すとおり、第1の庫内アンテナ200aから放射される電波の強度よりも、第2の庫内アンテナ201aから放射される電波の強度の方が大きくなるようにするのが良い。
【0035】
Pi_50≧Pi_40+(Pred_50―Pred_40)・・・(式2)
ここで、Pi_40は第2の引出扉40aを開放した場合に第1の庫内アンテナ200aから放射される電波強度であり、Pi_50は第3の引出扉50aを開放した場合に第2の庫内アンテナ201aから放射される電波強度であり、Pred_40は第2の引出扉貯蔵室40の上段容器42内に収納される食材に含まれる水分による電波減衰量であり、Pred_50は第3の引出扉貯蔵室50の第1の上段容器52a内に収納される食材に含まれる水分による電波減衰量である。
【0036】
本実施例によれば、引出扉貯蔵室の位置に応じて、ユーザーの姿勢による電波遮蔽の影響も考慮して庫外アンテナから放射する電波強度が制御されるため、貯蔵室外部に存在するRFIDタグの読取性能を確保でき、RFIDタグを用いた在庫判定の確度が向上する効果が得られる。また、引出扉貯蔵室の容器の構造上の違い(上段容器の引出量の違い)に応じて、庫内アンテナから放射する電波強度が制御されるため、容器内に存在するRFIDタグの読取性能を確保でき、RFIDタグを用いた在庫判定の確度が向上する効果が得られる。
第1の庫外アンテナ100aからの距離およびユーザー10の姿勢を考慮すれば、第1の庫外アンテナ100aから放射する電波の強度は、次の(式3)に示すとおり、第1の回転扉貯蔵室20を開放したときの方が、第2の引出扉貯蔵室40を開放したときよりも大きくなるようにするのが良い。
なお、第1の回転扉貯蔵室20も、前述した第2の引出扉貯蔵室40および第3の引出扉貯蔵室50と同様に、磁気センサおよび磁石を用いることで、第1の回転扉20aの開閉情報を取得できる。
本実施例によれば、引出扉貯蔵室だけでなく回転扉貯蔵室の位置にも応じて、庫外アンテナから放射する電波強度が制御されるため、貯蔵室外部に存在するRFIDタグの読取性能を確保でき、RFIDタグを用いた在庫判定の確度が向上する効果が得られる。