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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016331
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】導電性ペーストおよび半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20230126BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
H01L21/52 E
H01B1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120582
(22)【出願日】2021-07-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】日下 慶一
【テーマコード(参考)】
5F047
5G301
【Fターム(参考)】
5F047AA11
5F047AA17
5F047BA21
5F047BA33
5F047BA34
5F047BA35
5F047BA36
5F047BA53
5F047BB11
5F047BB16
5G301DA03
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】高い導電性を有するとともに、リードフレーム等の支持部材に対する密着性が改善され、よって半導体素子と支持部材とを強固に接着することができる導電性ペーストを提供する。
【解決手段】(A)オレイン酸およびソルビタン酸から選択される少なくとも1つの脂肪酸で表面処理された銀粉と、(B)希釈剤と、を含む導電性ペーストであって、前記希釈剤(B)が、(メタ)アクリルモノマーを含み、前記脂肪酸の量が、前記銀と前記脂肪酸との合計量に対して、0.30質量%以上0.70質量%以下である、導電性ペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オレイン酸およびソルビタン酸から選択される少なくとも1つの脂肪酸で表面処理された銀粉と、
(B)希釈剤と、
を含む導電性ペーストであって、
前記希釈剤(B)が、(メタ)アクリルモノマーを含み、
前記脂肪酸の量が、前記銀と前記脂肪酸との合計量に対して、0.30質量%以上0.70質量%以下である、導電性ペースト。
【請求項2】
前記希釈剤(B)中に溶解または分散された遊離オレイン酸も遊離ソルビタン酸も含まない、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記脂肪酸で表面処理された銀粉(A)の平均一次粒子径が、0.1μm以上10μm以下である、請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記脂肪酸で表面処理された銀粉(A)が、当該導電性ペースト全体に対して、40質量%以上95質量%以下の量である、請求項1乃至3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記(メタ)アクリルモノマーが、単官能(メタ)アクリルモノマーまたは多官能(メタ)アクリルモノマー、あるいはこれらの組み合わせを含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記希釈剤(B)が、グリコールモノマー、エポキシモノマー、マレイミドモノマー、およびイミドモノマーから選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】
熱硬化性樹脂(C)をさらに含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂(C)が、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂から選択される少なくとも1つを含む、請求項7に記載の導電性ペースト。
【請求項9】
硬化剤をさらに含む、請求項1乃至8のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項10】
支持部材と、
前記支持部材上に接着層を介して搭載された半導体素子と、を備え、
前記接着層は、請求項1乃至9のいずれかに記載の導電性ペーストからなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストおよび半導体装置に関する。より詳細には、本発明は、半導体素子を金属フレームなどの支持部材上に接着、固定するために用いられる半導体搭載用ダイアタッチペーストとして使用される導電性ペースト、および当該導電性ペーストを用いて製造された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置は、半導体チップなどの半導体素子をダイボンディング材によりリードフレームやガラスエポキシ配線板等の支持部材に接着して製造される。このようなダイボンディング材としては、導電性フィラーがバインダー樹脂中に分散された加熱硬化タイプの導電性ペースト、およびバインダー樹脂を含まない焼結タイプの銀ペーストが知られている。
【0003】
一般に、加熱硬化タイプの導電性ペーストは、焼結タイプの銀ペーストに比べて、20~200℃程度の比較的低温領域で硬化させることができる。しかし一方で、加熱硬化タイプの導電性ペーストを用いて得られた導電膜は、焼結タイプの銀ペーストを用いて得られる導電膜に比べて、電気抵抗率が高く、導電性が低いという問題がある。すなわち、焼結タイプの銀ペーストを加熱して得られた導電膜は、加熱によって銀粉同士が結合しているため、バルクの銀と同程度の低い電気抵抗率を有する。これに対して、加熱硬化タイプの導電性ペーストを加熱して得られた導電膜は、金属粉同士の接触によって導電路が形成されているため、比較的高い電気抵抗率を有する。
【0004】
このような加熱硬化タイプの導電性ペーストにおける上記問題に対し、低い電気抵抗率を有する導電膜を得るための技術として、たとえば特許文献1および特許文献2では、液状の脂肪酸で表面処理された銀粉を含む導電性ペーストを用いることが提案されている。特許文献1および特許文献2には、脂肪酸で表面処理された銀粉は、銀粉同士の接触面積が大きく、よって電気抵抗率の低減された導電膜が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5916633号
【特許文献2】特許第6174106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の加熱硬化タイプの導電性ペーストは、リードフレームやガラスエポキシ配線板等に対する接着強度が十分でない場合や、接着界面の近傍に空隙が集中し、接着強度が低くなる場合があった。このため、導電性ペーストを用いて半導体素子をリードフレーム等にダイボンディングして半導体装置を製造し、この半導体装置を基板上に実装した状態で基板を加熱して基板に接合する時(リフローソルダリング時)に、当該ペーストからなる導電層が剥離することがあった。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、高い導電性を有するとともに、リードフレーム等の支持部材に対する密着性が改善され、よって半導体素子と支持部材とを強固に接着することができる導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、脂肪酸で表面処理された銀粉が有する脂肪酸の量を調整することにより、導電性と基材に対する密着性とのバランスが高度に改善された導電性ペーストが得られることを見出した。さらに本発明者らは、このような導電性ペーストを用いて得られる半導体装置は、信頼性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、
(A)オレイン酸およびソルビタン酸から選択される少なくとも1つの脂肪酸で表面処理された銀粉と、
(B)希釈剤と、
を含む導電性ペーストであって、
前記希釈剤(B)が、アクリルモノマーを含み、
前記脂肪酸の量が、前記銀と前記脂肪酸との合計量に対して、0.30質量%以上0.70質量%以下である、導電性ペーストが提供される。
【0010】
また本発明によれば、
支持部材と、
前記支持部材上に接着層を介して搭載された半導体素子と、を備え、
前記接着層は、上記導電性ペーストからなる、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電性と基材に対する密着性とのバランスが高度に改善された導電性ペースト、およびこのような導電性ペーストを用いて得られる信頼性に優れた半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る電子装置の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態に係る電子装置の一例を示す断面図である。
図3】実施例におけるチップ剥離強度の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
(導電性ペースト)
本実施形態の導電性ペーストは、半導体素子等の電子部品を、リードフレームまたは配線基板等の支持部材に接着するためのダイアタッチ層を形成するために用いられるダイアタッチペーストである。本実施形態の導電性ペーストは、
(A)オレイン酸およびソルビタン酸から選択される少なくとも1つの脂肪酸で表面処理された銀粉と、
(B)希釈剤と、を含む。
本実施形態の導電性ペーストにおいて、希釈剤(B)は、(メタ)アクリルモノマーを含む。また、上記脂肪酸で表面処理された銀粉(a)において、脂肪酸は銀粒子の表面に物理的に吸着されて存在する。上記脂肪酸の量は、銀と脂肪酸との合計量に対して、0.30質量%以上0.70質量%以下である。すなわち、上記脂肪酸で表面処理された銀粉(A)の脂肪酸含有量は、0.30質量%以上0.70質量%以下である。
【0016】
本実施形態の導電性ペーストは、導電性金属粉である銀粉と希釈剤である(メタ)アクリルモノマーとを組み合わせて含み、銀粉は特定の脂肪酸で表面処理されている。これにより、本実施形態の導電性ペーストを熱処理して得られるダイアタッチ層は、優れた熱伝導性を有するとともに、支持部材に対する高い密着性を有する。脂肪酸は、希釈剤に容易に溶解する。このため、導電性ペーストを加熱したときに、銀粉の表面に存在する脂肪酸は、希釈剤とともに容易に蒸発する。この結果、本発明の導電性ペーストを加熱して得られたダイアタッチ層は、銀粉の表面の露出している部分の面積が大きくなっており、銀粉同士の接触面積が大きくなっている。さらに、導電性ペーストを加熱して得られたダイアタッチ層は、銀粉同士の接触状態が良好であり、銀粉の少なくとも一部が融着して一体化している。このような銀粉同士が凝集して形成された銀粒子連結構造は、高い導電性を有する。
【0017】
本実施系チアの導電性ペーストは、導電性金属粒子として、銀粉を含む。これにより、導電性ペーストを加熱して得られるダイアタッチ層は、優れた導電性を有する。
さらに、本実施形態の導電性ペーストに配合される銀粉は、特定量の脂肪酸で表面処理された銀粉である。このような銀粉を含むことにより、本実施形態の導電性ペーストは、特に、支持部材に対する高い密着性を有する。ここで、導電性ペーストが適用される支持部材には、その表面にブリードアウト防止剤や応力緩和剤などの表面処理剤が施されている。この表面処理剤は、銀粒子と支持部材との密着を妨げるように作用し得る。しかし、脂肪酸で表面処理された銀粉を使用することにより、導電性ペーストの加熱により希釈剤中に溶解した脂肪酸が、支持部材の表面に対して施された表面処理剤に作用して、密着性の低減が緩和される。これにより、導電性ペーストを加熱して得られるダイアタッチ層と支持部材との密着性が向上し得る。
【0018】
本実施形態の導電性ペーストに用いられる各成分について、以下に説明する。
(銀粉(A))
本実施形態の導電性ペーストに含まれる銀粉は、オレイン酸およびソルビタン酸から選択される少なくとも1つの脂肪酸で表面処理されており、脂肪酸は銀粒子の表面に物理的に吸着している。この脂肪酸で表面処理処理された銀粉(A)の脂肪酸含有量(銀粉(A)の表面に吸着された脂肪酸の量)は、銀粉(A)全体に対して、0.30質量%以上0.70質量%以下である。このような脂肪酸処理銀粉(A)は、導電性ペーストに対して熱処理が施されることにより、凝集して、導電性や熱伝導性、支持部材への密着性において優れた銀粒子連結構造を形成する。
【0019】
銀粉(A)がオレイン酸で表面処理された銀粒子である場合、オレイン酸の含有量は、銀粉(A)全体に対して、0.30質量%以上0.70質量%以下であり、好ましくは、0.32質量%以上0.65質量%以下であり、より好ましくは、0.35質量%以上0.62質量%以下である。
銀粉(A)がソルビタン酸で表面処理された銀粒子である場合、ソルビタンの含有量は、銀粉(A)全体に対して、0.30質量%以上0.70質量%以下であり、好ましくは、0.35質量%以上0.55質量%以下、より好ましくは、0.37質量%以上0.52質量%以下である。
【0020】
銀粉(A)の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、フレーク状、および鱗片状等を挙げることができる。本実施形態においては、銀粉が球状粒子を含むことがより好ましい。これにより、銀粉の凝集の均一性を向上させることができる。また、コストを低減させる観点からは、銀粉がフレーク状粒子を含む態様を採用することもできる。さらには、コストの低減と凝集均一のバランスを向上させる観点から、銀粉が球状粒子とフレーク状粒子の双方を含んでいてもよい。
【0021】
銀粉(A)の平均一次粒径(D50)は、例えば、0.1μm以上10μm以下である。銀粉の平均一次粒径が上記下限値以上であることにより、比表面積の過度な増大を抑制し、接触熱抵抗による熱伝導性の低下を抑えることが可能となる。また、銀粉の平均粒径が上記上限値以下であることにより、銀粉間の銀粒子連結構造体の形成性を向上させることが可能となる。また、導電性ペーストのディスペンス性を向上させる観点から、銀粉の平均一次粒径(D50)は、0.6μm以上2.7μm以下であることがより好ましく、0.6μm以上2.0μm以下であることが特に好ましい。なお、銀粉の平均粒径(D50)は、例えば、市販のレーザー式粒度分布計(例えば、株式会社島津製作所製、SALD-7000等)を用いて測定することができる。
【0022】
また、銀粉(A)の最大一次粒径は、特に限定されないが、例えば、1μm以上50μm以下とすることができ、3μm以上30μm以下であることがより好ましく、4μm以上18μm以下であることが特に好ましい。これにより、銀粉の凝集の均一性とディスペンス性のバランスをより効果的に向上させることが可能となる。ここで導電性ペーストのディスペンス性とは、この導電性ペーストが支持部材上に塗布して使用するのに必要な粘度や硬化性等の特性を指す。
【0023】
上記脂肪酸で表面処理された銀粉(A)は、銀粒子を、特定の脂肪酸を用いる表面処理工程に供することにより、得ることができる。表面処理方法としては、溶剤に希釈した脂肪酸を、銀粒子と共にボールミル等で処理した後に溶剤を乾燥させる方法などを使用することができる。銀粉の表面処理工程に用いられる脂肪酸の量は、銀粒子100質量部に対して、好ましくは1~50質量部であり、より好ましくは1~20質量部である。表面処理に用いる脂肪酸の量を調整することにより、得られる銀粉(A)の脂肪酸含有量を制御することができる。
【0024】
導電性ペースト中における銀粉(A)の含有量は、導電性ペースト全体に対して、例えば、40質量%以上90質量%以下であり、好ましくは、50質量%以上80質量%以下である。上記下限値以上とすることにより、導電性ペーストを熱処理して得られるダイアタッチペースト層の熱伝導性と導電性の向上に寄与することが可能となる。一方で、上記上限値以下とすることにより、得られる導電性ペーストのディスペンス性(塗布作業性)や、導電性ペーストを熱処理して得られるダイアタッチペースト層の機械強度等の向上に寄与することができる。
【0025】
本実施形態の導電性ペーストに用いられる銀粉は、オレイン酸またはソルビタン酸以外の脂肪酸で表面処理された銀粉を含んでもよい。オレイン酸またはソルビタン酸以外の脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、パルミトレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0026】
オレイン酸またはソルビタン酸以外の脂肪酸で表面処理された銀粒子を用いる場合、その量は、用いる銀粉全体に対して、例えば、0.05質量%以上1質量%以下、好ましくは、0.2質量%以上0.7質量%以下である。
【0027】
本実施形態の導電性ペーストは、上述の銀粉に加え、他の導電性金属粉を含んでもよい。ほかの導電性金属粉としては、金粉、白金粉、パラジウム粉、銅粉、またはニッケル粉、あるいはこれらの合金を用いることができる。他の導電性金属粉を用いる場合、上記銀粉(A)に対して、例えば、0.05質量%以上1質量%以下、好ましくは、0.2質量%以上0.7質量%以下である。上記範囲内の量で他の導電性金属粉を用いることにより、銀粉(A)と他の導電性金属粉とが金属粒子連結構造体を良好に形成し得る。
【0028】
本実施形態の導電性ペーストにおいて、脂肪酸は、銀粒子の表面に物理的に吸着された状態で存在し、以下に説明する希釈剤中に溶解または分散されていないことが好ましい。脂肪酸が、遊離脂肪酸として存在しないことにより、加熱により銀粒子連結構造体が良好に形成される。
【0029】
(希釈剤)
本実施形態の導電性ペーストは、希釈剤として(メタ)アクリルモノマーを含む。本実施形態の導電性ペーストは、上記のとおり、特定の脂肪酸で表面処理された銀粉(A)を含み、この銀粉(A)の表面に存在する脂肪酸は、加熱により、(メタ)アクリルモノマーに容易に溶解する。そのため、本発明の導電性ペーストを加熱した得られたダイアタッチ層は、銀粉同士の接触状態が良好であり、銀粉の少なくとも一部が融着して一体化している。このような銀粉同士が凝集して形成された銀粒子連結構造は、高い導電性を有する。また加熱により(メタ)アクリルモノマー中に溶解した脂肪酸は、支持部材の表面に対して施された表面処理剤に作用してする。支持部材の表面に対して施された表面処理剤に作用して、密着性の低減が緩和される。その結果、導電性ペーストを加熱して得られるダイアタッチ層と支持部材との密着性が向上し得る。上記の効果は、銀粉(A)がオレイン酸またはソルビタン酸で処理された銀粒子であり、かつ希釈剤が(メタ)アクリルモノマーである場合に特に顕著に発現する。
【0030】
またさらに本実施形態の導電性ペーストは、希釈剤を含むことにより、支持部材への塗布性や細部への充填性を得るのに適切な粘度を有する。
【0031】
本実施形態において、導電性ペースト中における(メタ)アクリルモノマーの含有量は、導電性ペースト全体に対して3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストの塗布作業性や、得られるダイアタッチ層の平坦性をより効果的に向上させることができるとともに、得られるダイアタッチ層と支持部材との密着性を向上することができる。一方で、導電性ペースト中における(メタ)アクリルモノマーの含有量は、導電性ペースト全体に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。これにより、塗布作業中における液だれの発生等を抑制して、塗布作業性の向上を図ることができるとともに、得られるダイアタッチ層と支持基材との密着性を向上することができる。また、導電性ペーストの硬化性を向上させることも可能となる。
【0032】
本実施形態において、(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル基を1つのみ有する単官能(メタ)アクリルモノマー、または(メタ)アクリル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリルモノマーが用いられる。
【0033】
単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングルコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、グリシジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、および2-(メタ)アクロイロキシエチルアシッドホスフェートなどを挙げることができる。単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、上記具体例のうち、2-フェノキシエチルメタクリレートを用いることが好ましい。これにより、得られる導電性ペーストの支持部材への密着性を向上することができる。
【0035】
多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アタクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヘキサン-1,6-ジオールビス(2-メチル(メタ)アクリレート)、4,4'-イソプロピリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、1,4-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ブタン、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサン、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、N,N'-ジ(メタ)アクリロイルエチレンジアミン、N,N'-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、又は1,4-ビス((メタ)アクリロイル)ピペラジンなどが挙げられる。
【0036】
好ましい実施形態において、本発明の導電性ペーストは、希釈剤として、単官能(メタ)アクリルモノマーと多官能(メタ)アクリルモノマーとを組み合わせて含む。単官能/多官能(メタ)アクリルモノマーの組み合わせを含む場合、これらの割合は、例えば、単官能:多官能のモル比で、9:1~1:9であり、好ましくは、9:1~5:5、より好ましくは、9:1~6;4である。上記割合の単官能/多官能(メタ)アクリルモノマー混合物を用いることにより、得られる導電性ペーストの支持部材への密着性をより向上させることができる。
【0037】
本実施形態の導電性ペーストは、上述の(メタ)アクリルモノマーに加え、他の希釈剤を含んでもよい。他の希釈剤としては、反応性希釈剤または非反応性溶剤を用いることができる。ここで、反応性希釈剤とは、加熱処理により硬化して、銀粒子の凝集を促進させる重合性単量体、または導電性ペーストにバインダー樹脂としての熱硬化性樹脂が含まれる場合には、この樹脂との架橋反応に関与する反応性基を有する化合物を意味する。非反応性溶剤とは、重合性または架橋性を有する反応基を有していない、加熱処理により揮発し得る溶剤を意味する。
【0038】
反応性希釈剤として用いられる重合性単量体としては、例えば、グリコールモノマー、エポキシモノマー、マレイミドモノマー、およびイミドモノマー等が挙げられる。
【0039】
重合性単量体として用いられるグリコールモノマーとしては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、テトラエチレングリコール、テトラチレングリコールモノメチル、テトラチレングリコールモノエチル、テトラエチレングリコールモノn-ブチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテルなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
導電性ペーストを熱処理した場合、これに含まれる銀粒子同士が凝集して銀粒子連結構造を良好に形成する観点より、グリコールモノマーとしては、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルまたはエチレングリコールモノ-n-ブチルアセテートを用いることが好ましい。
【0041】
重合性単量体として用いられるエポキシモノマーとしては、エポキシ基を1つのみ有する単官能エポキシモノマー、またはエポキシ基を2つ以上備える多官能エポキシモノマーを用いることができる。
【0042】
単官能エポキシモノマーとしては、4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、m,p-クレジルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。単官能エポキシモノマーとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
多官能エポキシモノマーとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体;水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体;ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオールまたはこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの;トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などをエポキシ化した多官能のものなどが挙げられる。多官能エポキシモノマーとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
重合性単量体として用いられるマレイミドモノマーとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール-ジ(2-マレイミドアセテート)等が挙げられる。
【0045】
重合性単量体として用いられるイミドモノマーとしては、ピロメリット酸二無水物等の酸無水物、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル等のジアミン等が挙げられる。
【0046】
本実施形態の導電性ペーストが、上記他の希釈剤を含む場合、導電性ペースト中における他の希釈剤の含有量は、導電性ペースト全体に対して3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストの塗布作業性や、得られる接着層の平坦性をより効果的に向上させることができる。一方で、導電性ペースト中における他の希釈剤の含有量は、導電性ペースト全体に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。これにより、塗布作業中における液だれの発生等を抑制して、塗布作業性の向上を図ることができる。また、導電性ペーストの硬化性を向上させることも可能となる。
【0047】
本実施形態の導電性ペーストは、非反応性溶剤を含んでもよい。非反応性溶剤を含むことにより、得られる導電性ペーストの流動性を調整して、取扱い性や作業性を向上することができる。非反応性溶剤としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α-ターピネオール、β-ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはグリセリン等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-オクタノン、イソホロン(3、5、5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン)もしくはジイソブチルケトン(2、6-ジメチル-4-ヘプタノン)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジルもしくはリン酸トリペンチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2-ビス(2-ジエトキシ)エタンもしくは1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;酢酸2-(2ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;2-(2-メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類;トルエン、キシレン、n-パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシンもしくは軽油等の炭化水素類;アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;アセトアミドもしくはN,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;低分子量の揮発性シリコーンオイル、または揮発性有機変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0048】
本実施形態の導電性ペーストは、非反応性溶剤を含まなくてもよい。ここで非反応性溶剤を含まないとは、実質的に含まないことを意味し、導電性ペースト全体に対する非反応性溶剤の含有量が0.1質量%以下である場合を指す。
【0049】
(熱硬化性樹脂)
本実施形態の導電性ペーストは、必要に応じて、バインダー樹脂としての熱硬化性樹脂を含んでもよい。熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂から選択される一種または二種以上を用いることができる。中でも、導電性ペーストの支持部材に対する密着性を向上させる観点から、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
熱硬化性樹脂として用いられるエポキシ樹脂としては、1分子内にグリシジル基を2つ以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。本実施形態で用いられるエポキシ樹脂としては、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、たとえばグリシジル基を1分子内に2つ以上含む化合物のうちの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオールまたはこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、を用いることも可能である。熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂は、上記に例示されたものから選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0051】
これらの中でも、得られる導電性ペーストの塗布作業性や接着性を向上させる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むことがより好ましく、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含むことが特に好ましい。また、本実施形態においては、導電性ペーストの塗布作業性をより効果的に向上させる観点からは、室温(25℃)において液状である液状エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0052】
本実施形態の導電性ペーストにおいて、熱硬化性樹脂が配合される場合、熱硬化性樹脂の含有量の下限値は、導電性ペースト全体に対して、例えば、1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。これにより、導電性ペーストの取扱い性を良好にすることができる。また導電性ペーストの粘度を使用に適切な程度にすることができる。また、熱硬化性樹脂の含有量の上限値は、導電性ペースト全体に対して、例えば、15質量%以下であり、好ましくは12質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。これにより、導電性ペーストの導電性、支持部材に対する密着性等の諸特性のバランス向上を図ることができる。
【0053】
(硬化剤)
本実施形態の導電性ペーストは、硬化剤を含んでもよい。これにより、導電性ペーストの硬化性を向上させることができる。硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、およびフェノール化合物から選択される一種または二種以上を用いることができる。これらの中でも、ジシアンジアミドおよびフェノール化合物のうちの少なくとも一方を含むことが、製造安定性を向上させる観点から特に好ましい。
【0054】
硬化剤として用いられるジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p-オキシ安息香酸ジヒドラジドなどのカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。また、硬化剤として用いられる酸無水物としてはフタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体等が挙げられる。
【0055】
硬化剤として用いられるフェノール化合物は、1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物である。より好ましい1分子内のフェノール性水酸基の数は2~5であり、特に好ましい1分子内のフェノール性水酸基数は2つまたは3つである。これにより、導電性ペーストの塗布作業性をより効果的に向上させることができるとともに、硬化時に架橋構造を形成して導電性ペーストの硬化物特性を優れたものとすることができる。上記フェノール化合物は、たとえばビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類およびその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類およびその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体または3核体がメインのものおよびその誘導体から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、ビスフェノール類を含むことがより好ましく、ビスフェノールFを含むことが特に好ましい。
【0056】
また、本実施形態において、硬化剤としてのビフェニル骨格を有する樹脂としては、ビフェニル骨格を有するフェノール樹脂(フェノール化合物)を用いることができる。これにより、導電性ペーストの導電性および支持部材に対する密着性を向上させることができる。ビフェニル骨格を有するフェノール樹脂としては、その分子構造内にビフェニル骨格を有し、かつ、フェノール基を2個以上有するものであれば、その構造は特に限定するものではない。
【0057】
本実施形態において、導電性ペースト中における硬化剤の含有量は、熱伝導性ペースト全体に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストの硬化性を、より効果的に向上させることができる。一方で、導電性ペースト中における硬化剤の含有量は、導電性ペースト全体に対して10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストを用いて形成される接着層の、低熱膨張性や耐湿性を向上させることができる。
【0058】
(その他の成分)
本実施形態の導電性ペーストは、上述の成分に加え、必要に応じて、当該分野で通常用いられる種々のさらなる成分を含み得る。さらなる成分としては、シランカップリング剤、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤、低応力剤、無機フィラー等が挙げられるが、これらに限定されず、所望の性能に応じて選択することができる。
【0059】
シランカップリング剤は、導電性ペーストと支持部材との密着性を向上するために用いられる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン等が挙げられる。
【0060】
硬化促進剤は、重合性単量体として用いられるエポキシモノマー、またはバインダー樹脂として用いられるエポキシ樹脂と、硬化剤との反応を促進させるために用いられる。硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等のアミジンや3級アミン;上記アミジンまたは上記3級アミンの4級アンモニウム塩等の窒素原子含有化合物などが挙げられる。
【0061】
ラジカル重合開始剤としては、具体的には、アゾ化合物、過酸化物などを用いることができる。
【0062】
低応力剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーン化合物;ポリブタジエン無水マレイン酸付加体などのポリブタジエン化合物;アクリロニトリルブタジエン共重合化合物等を用いることができる。
【0063】
無機フィラーとしては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ等の溶融シリカ;結晶シリカ、非晶質シリカ等のシリカ;二酸化ケイ素;アルミナ;水酸化アルミニウム;窒化珪素;および窒化アルミ等が挙げられる。
【0064】
(導電性ペーストの調製)
本実施形態の導電性ペーストは、
(i)オレイン酸またはソルビタン酸により、銀粒子を表面処理する工程、および
(ii)表面処理後の銀粉および希釈剤、ならびに必要に応じて上述の成分を混合する工程により、製造することができる。上記(ii)の混合は、上述した各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練を行い、さらに真空脱泡する手法を用いることができる。この際、たとえば予備混合を減圧下にて行う等、調製条件を適切に調整することによって、導電性ペーストの長期作業性を向上することができる。
【0065】
本実施形態の導電性ペーストは、用途に応じて粘度を調整することができる。導電性ペーストの粘度は、用いるバインダー樹脂の種類、希釈剤の種類、それらの配合量等を調整することにより制御することができる。本実施形態の導電性ペーストの粘度の下限値は、例えば、10Pa・s以上であり、好ましくは20Pa・s以上であり、より好ましくは30Pa・s以上である。これにより、導電性ペーストの作業性を向上させることができる。一方で、導電性ペーストの粘度の上限値は、例えば、1×10Pa・s以下であり、好ましくは5×10Pa・s以下であり、より好ましくは2×10Pa・s以下である。これにより、塗布性を向上させることができる。
【0066】
(用途)
本実施形態の導電性ペーストの用途について説明する。
本実施形態に係る導電性ペーストは、例えば、基板と、半導体素子とを接着するために用いられる。ここで、半導体素子としては、例えば、半導体パッケージ、LEDなどが挙げられる。
本実施形態に係る導電性ペーストは、従来のペースト状接着剤組成物と比べて、接続信頼性と外観とが向上できる。これにより、発熱量が大きい半導体素子を基板に搭載する用途に好適に用いることができる。なお、本実施形態において、LEDとは、発光ダイオード(Light Emitting Diode)を示す。
【0067】
LEDを用いた半導体装置としては、具体的には、砲弾型LED、表面実装型(Surface Mount Device:SMD)LED、COB(Chip On Board)、Power LEDなどが挙げられる。
【0068】
なお、上記半導体パッケージの種類としては、具体的には、CMOSイメージセンサ、中空パッケージ、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FC-BGA(Flip Chip BGA)、MAP-BGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの種類が挙げられる。
【0069】
以下に、本実施形態に係る導電性ペーストを用いた半導体装置の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
本実施形態に係る半導体装置100は、支持部材30と、導電性ペーストの硬化物である接着剤層10を介して支持部材30上に搭載された半導体素子20とを備える。半導体素子20と支持部材30は、たとえばボンディングワイヤ40等を介して電気的に接続される。また、半導体素子20は、たとえば封止樹脂50により封止される。
【0070】
ここで、接着剤層10の厚さの下限値は、例えば、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストの硬化物の熱容量を向上し、放熱性を向上できる。また、接着剤層10の厚さの上限値は、例えば、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストが、放熱性を向上した上で好適な密着力を発現できる。
【0071】
図1において、支持部材30は、例えば、リードフレームである。この場合、半導体素子20は、ダイパッド32または支持部材30上に接着剤層10を介して搭載されることとなる。また、半導体素子20は、例えば、ボンディングワイヤ40を介してアウターリード34(支持部材30)へ電気的に接続される。リードフレームである支持部材30は、例えば、42アロイ、Cuフレームにより構成される。
【0072】
支持部材30は、有機基板や、セラミック基板であってもよい。有機基板としては、たとえばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等によって構成されるものが好ましい。なお、支持部材30の表面は、例えば、銀、金などの金属により被膜されていてもよい。これにより、接着剤層10と、支持部材30との接着性を向上できる。
【0073】
図2は、図1の変形例であり、本実施形態に係る半導体装置100の一例を示す断面図である。本変形例に係る半導体装置100において、支持部材30は、たとえばインターポーザである。インターポーザである支持部材30のうち、半導体素子20が搭載される一面と反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール52が形成される。この場合、半導体装置100は、半田ボール52を介して他の配線基板へ接続されることとなる。
【0074】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する。
まず、支持部材30の上に、導電性ペーストを塗工し、次いで、その上に半導体素子20を配置する。すなわち、支持部材30、ペースト状接着剤組成物、半導体素子20がこの順で積層される。導電性ペーストを塗工する方法としては限定されないが、具体的には、ディスペンシング、印刷法、インクジェット法などを用いることができる。
【0075】
次いで、導電性ペーストを前硬化、続いて後硬化することで、導電性ペーストを硬化させる。前硬化および後硬化といった熱処理により、導電性ペースト中の銀粒子が凝集し、複数の銀粒子同士の界面が消失してなる熱伝導層が接着剤層10中に形成される。これにより、接着剤層10を介して、支持部材30と、半導体素子20とが接着される。次いで、半導体素子20と支持部材30を、ボンディングワイヤ40を用いて電気的に接続する。次いで、半導体素子20を封止樹脂50により封止する。これにより半導体装置を製造することができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0077】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
実施例1~7および比較例1~3では、以下の表1に示す配合および配合量で、導電性ペーストを調製した。
各実施例および比較例において、使用した銀粉の平均一次粒径および脂肪酸含有量(処理後の銀粉の表面に存在する脂肪酸の量、質量%)を測定した。平均一次粒径は、レーザー式粒度分布計(株式会社島津製作所製、SALD-7000等)を使用して測定した。脂肪酸含有量は、TG/DTA測定を使用し、銀粉を800℃で30分間焼成した後の残分の質量から算出した。
【0079】
(銀粉1)
・銀粒子形状:フレーク状
・平均一次粒径:3.06μm
・オレイン酸含有量(銀粉1の表面に存在するオレイン酸の量):0.37質量%
【0080】
(銀粉2)
・銀粒子形状:フレーク状
・平均一次粒径:2.52μm
・オレイン酸含有量(銀粉2の表面に存在するオレイン酸の量):0.61質量%
【0081】
(銀粉3)
・銀粒子形状:フレーク状
・平均一次粒径:2.72μm
・オレイン酸含有量(銀粉3の表面に存在するオレイン酸の量):0.73質量%
【0082】
(銀粉4)
・銀粒子形状:フレーク状
・平均一次粒径:3.71μm
・ソルビタン酸含有量(銀粉4の表面に存在するソルビタン酸の量):0.37質量%
【0083】
(銀粉5)
・銀粒子形状:フレーク状
・平均一次粒径:3.90μm
・ソルビタン酸含有量(銀粉5の表面に存在するソルビタン酸の量):0.51質量%
【0084】
(銀粉6)
・銀粒子形状:フレーク状
・平均一次粒径:3.44μm
・ソルビタン酸含有量(銀粉6の表面に存在するソルビタン酸の量):0.71質量%
【0085】
(銀粉7)
・銀粒子形状:フレーク状
・平均一次粒径:3.25μm
・オレイン酸含有量(銀粉7の表面に存在するオレイン酸の量):0.35質量%
【0086】
(銀粉8)
銀粉8として、未処理銀粉を使用した。
・平均一次粒径:1.23μm
・脂肪酸含有量:0.00質量%
【0087】
さらに実施例および比較例で用いた成分を以下に示す。
(希釈剤)
・希釈剤1:2-フェノキシエチルメタクリレート(単官能メタクリルモノマー)、共栄社化学株式会社製、「ライトエステルPO」
・希釈剤2:1.6ヘキサンジオールジメタクリレート(2官能(メタ)アクリルモノマー)、共栄社化学社製、「ライトエステル1,6Hx」
(低応力剤)
・低応力剤1:エポキシ化ポリブタジエン、ダイセル社製
・低応力剤2:アクリル酸系重合物、東亜合成株式会社製
・低応力剤3:アリル樹脂、関東化学社製
(熱硬化性樹脂)
・熱硬化性樹脂1:ビスフェノール-F-ジグリシジルエーテル、日本化薬社製、「RE-303SL」
(硬化触媒)
・硬化触媒1:イミダゾール、四国化成工業社製、「キュアゾール2PZ-PW」
(ラジカル重合開始剤)
・ラジカル重合開始剤1:ジーアルファークミルパーオキサイド、化薬アクゾ社製、「パーカドックスBC」
【0088】
[実施例1~7、比較例1~3]
(ワニス状樹脂組成物の作製)
まず表1の「ワニス組成」に記載の配合量の成分を、常温で、3本ロールミルで混練することにより、ワニス状混合物を作製した。次いで、得られたワニス状混合物を、表1の「ペースト組成」に記載の配合量で用い、銀粉を混合し、常温で、3本ロールミルで混練することにより、ペースト状の組成物(導電性ペースト)を得た。
【0089】
(導電性ペーストの物性測定)
各実施例及び各比較例の導電性ペーストを、以下の物性について測定し、導電性ペーストの支持部材に対する密着性を評価した。
【0090】
<弾性率(室温)>
上記で得られた導電性ペーストを、テフロン板上に塗布し、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間熱処理した。これにより、厚さ0.3mmの、導電性ペーストの熱処理後の試験片を得た。
得られた熱処理体をテフロン板から剥がして、測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、DMS6100)にセットし、引張モード、周波数1Hzでの動的粘弾性測定(DMA)を行った。これにより、25℃における貯蔵弾性率E'(MPa)を測定した。
<弾性率(250℃)>
室温下の弾性率の測定方法と同様の条件で試験片を作製し、250℃における貯蔵弾性率を測定した。
【0091】
<吸湿後ダイシェア強度(長さ5mm×幅5mm×厚み350μmシリコンチップ)>
硬化条件:上記で得られた導電性ペーストを、銅フレーム上に塗布し、その上に、長さ2mm×幅2mmのシリコンチップをマウントし、20μm厚にした。その後窒素雰囲気下で175℃、30分間で昇温し、5時間放置(1時間硬化とポストモールドキュア)して、試験片を得た。
吸湿条件:得られた試験片を、温度120℃、相対湿度100%の環境に24時間放置し、取り出したサンプルを260℃のリフロー工程に3度通した。
ダイシェア強度の測定条件:吸湿処理後の試験片を、260℃のプレート上に20秒間置き、その状態でボンドテスター(DAGE 4000P型)によりチップ剥離強度を測定した。図3は、チップ剥離強度の測定方法を示す模式図である。シリコンチップ220は、ブリードアウト防止剤で表面処理された銅フレーム200の上に導電性ペースト210を介して接着されている。シリコンチップ220の側面に治具230を押し当て、測定速度50μm/秒、測定高さ50μmの条件で、図3に示した矢印方向に力を加えたときの最大応力としてダイシェア強度を測定して、これを接着強度とした。ダイシェア強度を表1に示す。ダイシェア強度の単位は「N」である。ダイシェア強度の値が大きいほど、シリコンチップと銅フレームとが強固に接着されていることを示す。
【0092】
<信頼性(パッケージ剥離試験)>
上記で得られた導電性ペーストを、銅フレーム上に塗布し、その上に、長さ8mm×幅8mmの200μm厚のシリコンチップをマウントし、20μm厚にした。その後窒素雰囲気下で175℃、30分間で昇温し、1時間放置して、試験片を得た。試験片は、7個作製した。その後エポキシモールディングコンパウンドで封止しパッケージを得た。その後ポストモールドキュアを175℃で4時間行い、パッケージ構造物を得た。このパッケージ構造物は長さ14mm、幅14mm、厚み0.8mmである。その後得られたパッケージ構造物を、以下の環境下に投入した。
環境1:温度85℃、相対湿度85%、168時間
環境1の条件に晒されたパッケージ構造物を取り出し、パッケージ構造物における銅フレームからのシリコンチップの剥離の有無を確認した。剥離が観察されたパッケージ構造物の個数を剥離数として表1に示す。
信頼性を、以下の評価基準で表1に示す。
剥離数0個:◎(良好)
剥離数1個~3個:○(やや劣るが、使用に問題なし)
剥離数4個~7個:△(劣る)
【0093】
【表1】
【0094】
実施例および比較例の導電性ペーストは、ダイアタッチペーストとして使用可能な導電性を有していた。実施例中、オレイン酸含有量が0.30~0.70質量%の銀粉1、2または7を使用した実施例1、2、6および7は、オレイン酸含有量が0.73質量%である銀粉3を使用した比較例1や、オレイン酸含有量が0.00質量%である未処理の銀粉8を使用した比較例3に比べ、パッケージ剥離試験における信頼性が良好であった。ソルビタン酸含有量が0.30~0.70質量%である銀粉4または5を使用した実施例3および4は、ソルビタン酸含有量が0.71質量%である銀粉を使用した比較例2や、ソルビタン酸含有量が0.00質量%である未処理の銀粉8を使用した比較例3に比べ、パッケージ剥離試験における信頼性が良好であった。
【符号の説明】
【0095】
100 半導体装置
10 接着剤層
20 半導体素子
30 支持部材
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ボンディングワイヤ
50 封止樹脂
52 半田ボール
200 銅フレーム
210 導電性ペースト
220 シリコンチップ
230 治具
図1
図2
図3